JP3164254B2 - 中空軸状鍛造品の製造方法 - Google Patents

中空軸状鍛造品の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は中空軸状鍛造品の製造方
法に関する。この鍛造品は、例えば車両の駆動系部品、
具体的にはサイドギヤシャフト、ディファレンシャルド
ライブピニオン等に適用できる。
【0002】
【従来の技術】中空軸状鍛造品として、車両の駆動系の
サイドギヤシャフトに使用される鍛造品が提供されてい
る。この鍛造品を例にとって従来技術を説明する。この
鍛造品は、段付軸部と、段付軸部の一端に遠心方向に延
設されたフランジ部とをもつ。この鍛造品では、軽量化
に貢献するために、回転時におけるねじり力が作用しに
くい部位に、つまりその軸線にそって有底状の中央軸穴
を形成することにしている。この中央軸穴は、ドリル刃
による切削加工で形成されたり、あるいは、鍛造パンチ
型の押入による鍛造成形で形成されている。
【0003】ところで、細径の中央軸穴をドリル刃によ
る切削加工で形成する場合には、ドリル刃の折損を回避
するため、軸穴の軸長寸法には限界がある。更に、ドリ
ル刃を用いる関係上、軸穴の穴底面と軸穴の内周壁面と
の境界域が不可避的に鋭くなり、応力集中を誘発し、強
度確保上、不利である。また、細径の中央軸穴を鍛造パ
ンチ型で鍛造成形する場合には、同様に、鍛造パンチ型
の折損を回避すべく、軸穴の軸長寸法には限界がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本出願人は、
有底状の中央軸穴をもつ段付軸部を絞って軸方向に延ば
し、軸長寸法の長い細径の絞穴を形成する方法を開発し
た。しかし方法では、大径軸部と小径軸部との境界域で
ある段部付近に穴底面が配置されている場合には、穴底
面の周縁部に逆テーパ状の欠肉部が発生する問題が生じ
る。
【0005】これについて、模式的形態である図14
(A)(B)を参照して説明を加える。即ち、図14
(A)に示す様に、内径α1の中央軸穴900及び穴底
面904をもつ段付軸部901を用い、その外径α2の
外周壁面901aを絞って軸方向に延ばし、図14
(B)に示す軸長寸法の長い絞穴900’を形成する。
この場合、絞穴900’の内径は縮径のためΔd小さく
なる。即ち、絞り前の中央軸穴900を区画する内周壁
面901bは、絞りにより、求心方向つまり図14
(A)に示す矢印X1方向に移行するため、絞穴90
0’において、その穴底面904’の周縁部に逆テーパ
状の欠肉部905が形成される。逆テーパ状の欠肉部9
05は、応力集中の要因となり、駆動部品の強度を確保
する上で好ましくない。
【0006】殊に、段部910の近傍に穴底面904が
配置されている場合において、即ち、中央軸穴900の
口径をα1としたとき、段部910の上方にα1、段部
910の下方にα1でそれぞれ規定された領域L8内に
穴底面904が配置されている場合において、逆テーパ
状の欠肉部905が顕著となる。本発明は上記した実情
に鑑みなされたものであり、その目的は、大径軸部と小
径軸部との境界域である段部付近に穴底面が形成されて
いる段付軸部を備えた鍛造品を対象とし、絞り工程で発
生し易い逆テーパ状の欠肉部を回避でき、強度確保上有
利な中空軸状鍛造品の製造方法を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る中空軸状鍛
造品の製造方法は、外径が大径の大径軸部と大径軸部に
段部を介して連設された小径軸部とを備えた段付軸部
と、段付軸部に形成され大径軸部の軸端面で開口する有
底状の中央軸穴とをもつ鍛造品を得る工程と、鍛造品の
該中央軸穴を非拘束状態とし、段付軸部の大径軸部の外
周面を中央軸穴と共に絞って、中央軸穴を略ストレート
状の絞穴とする絞り工程とを順に実施して中空軸状鍛造
品を製造する方法であり、鍛造品の絞り加工前の中央軸
穴は、その穴底面が、段部を基準として段付軸部の軸方
向の一方向及び他方向にそれぞれ中央軸穴の口径にほぼ
等応する距離で規定された領域内に配置されていると共
に、中央軸穴の穴底面の周縁部の内径が穴底面に向かう
につれて径小となる傾斜面を備え、鍛造品の軸芯を通る
断面において、軸方向における傾斜面の距離をαとし、
軸直角方向における傾斜面の距離をβとしたとき、(α
/β)は1〜15の値であり、絞り工程において、絞り
加工度を増加するにつれて(α/β)の値を小さくする
ようにしたことを特徴とするものである。
【0008】本発明方法では、絞り工程における絞り加
工度は15〜45%が一般的である。なお、絞り加工度
とは、〔{(D8)2 −(D9)2 }/(D8)2 〕×
100を意味する。ここで、D8は絞り前の外径を意味
し、D9は絞り後の外径を意味する。
【0009】
【作用】絞り加工度を増加するにつれて(α/β)の値
を小さくするようにしているので、絞り工程を実施して
も、略ストレート状の絞穴の穴底面の周縁部は、穴底面
に向かうにつれて内径が小さくなる順テーパ状に維持さ
れる。
【0010】
【実施例】本発明方法を駆動部品としてのサイドギヤシ
ャフトの製造に適用した実施例について図1〜図12を
参照して、各工程別に説明する。鍛造品の断面図におい
ては複雑化を避けるためハッチングを略した。 (荒地鍛造工程)この例では、先ず、図1(A)に鎖線
で示す軸端面1a、1b及び外周壁面1cをもつ丸棒素
材1(材質:中炭素鋼 S45C)を用い、その丸棒素
材1を熱間状態(1100〜1250°C程度)でその
軸方向において強圧して潰し、図1(A)に実線で示す
円盤材2とする。円盤材2は軸端面2a、2b及び外周
壁面2cをもつ。次に、図1(B)に鎖線で示す円盤材
2を熱間状態で荒地鍛造し、図1(B)に実線で示す荒
地鍛造品3とする。荒地鍛造品3は、外周壁面30a、
30b、円錐面30c及び軸端面30dで規定された荒
地軸部30と、外周壁面32a、円錐面32bで規定さ
れた荒地フランジ部32とをもつ。
【0011】(仕上鍛造工程)次に、荒地鍛造品3を熱
間状態で仕上鍛造し、図1(C)に実線で示す鍛造品4
を得る。鍛造品4は、段付軸部40と、段付軸部40の
一端に形成された粗形有底穴42と、外バリ部44をも
つ遠心方向にのびるフランジ部46とを備えている。段
付軸部40は、外周壁面40a、40b、円錐面40c
及び軸端面40d、40eで規定されている。粗形有底
穴42は円錐内周壁面42a及び穴底面42bで規定さ
れている。フランジ部46は外周壁面46a及び内周壁
面46bで規定されている。鍛造品4の外バリ部44は
熱間状態で図略のバリ抜き型により除去される。
【0012】(熱間押出し工程)次に、外バリ部44を
除去した鍛造品4を用いて熱間押出し工程を実施し、図
2に実線で示す鍛造品5を得る。図2に示す様に、鍛造
品5は、段付軸部50と、段付軸部50の一端で開口す
る有底状のパンチ成形穴52と、段付軸部50の一端か
ら遠心方向に延設されたフランジ部54とをもつ。この
段付軸部50は、軸端面50a、50bと外周壁面50
c、50dと円錐面50eとで規定されている。ここ
で、外周壁面50dは大径軸部を構成し、外周壁面50
cは小径軸部を構成し、円錐面50eは段部を構成す
る。
【0013】パンチ成形穴52は、円錐状の内周壁面5
2aと直状の内周壁面52bと傾斜面52cと穴底面5
2dとで規定されている。穴底面52dは、段部を構成
する円錐面50eとほぼ同じ高さ位置に配置されてい
る。なお、フランジ部54は、外バリ部44を除去した
後のフランジ部46と実質的に同じ形状、寸法である。
かかる熱間押出し工程を実施するにあたり、図8に示す
熱間押出し型100を用いる。熱間押出し型100は、
下ボルスタ101の保持部102に保持されたキャビテ
ィ103をもつ下型104と、キャビティ103の下部
に装入された軸状のKO型105と、KO型105を押
し上げる押出板106と、上ボルスタ110の保持部1
11に保持された鍛造パンチ型112とを備えている。
鍛造パンチ型112の押入型部112aの外周面は、先
端面111cに向かうにつれて外径が縮径する円錐状を
なしている。
【0014】ここで、図8の左半分(A)は鍛造パンチ
型112が下死点に移行した状態を示し、図8の右半分
(B)は鍛造後の鍛造パンチ型112が上死点に移行し
た状態を示す。そして、熱間状態(950〜1100℃
程度)の鍛造品4の段付軸部40を下型104のキャビ
ティ103にセットした状態で、上ボルスタ110が降
下し、鍛造パンチ型112の先端の押入型部112aが
下降して粗形有底穴42に押入する。これにより粗形有
底穴42の周囲の肉、即ち、段付軸部40を構成する肉
を、鍛造パンチ型112の移行方向と逆方向、即ち、図
8に示す矢印A1方向に向けて押出し、以て粗形有底穴
42をパンチ成形穴52(本発明でいう中央軸穴)とす
る。なお、パンチ成形穴52の穴形状は、鍛造パンチ型
112の押入型部112aの形状と実質的に型対象をな
す。
【0015】この工程は、鍛造パンチ型112の移行方
向と逆方向に肉が押し出される後方押出し法である。こ
こで、この工程において、前方押出しでなく、後方押出
しを採用したのは、材料の変形能が大きく深穴形成に有
利な熱間状態でこの工程を実施するため、くびれ等の不
具合を回避するためである。かかる後方押出しの結果、
図2に実線で示す鍛造品5が得られる。
【0016】(第1段階目の冷間絞り工程)次に、図2
に実線で示す鍛造品5を用いて第1段階目の冷間絞り工
程を実施し、鍛造品5の段付軸部50の外周壁面50d
のうち領域D1の外径を絞り、図3に実線で示す鍛造品
6を得る。図2における領域D1から理解できる様に、
外周壁面50dの全長D3のうち、そのフランジ部54
側の根元領域D2は絞られていない。更に、軸先端側の
外周壁面50cの領域D4も絞られていない。
【0017】かかる冷間絞り工程では、鍛造品5の段付
軸部50の領域D1を構成する筒状肉部は、パンチ成形
穴52と共に、軸方向の前方つまり矢印A2方向に延ば
される。図3に示す様に、冷間絞り工程後の鍛造品6
は、段付軸部60と、段付軸部60の一端で開口する有
底状の第1次絞穴62と、段付軸部60の一端から遠心
方向に延設されたフランジ部64とをもつ。この段付軸
部60は、軸端面60a、60bと、外周壁面60c、
60d、60eと、円錐面60f、60hとで規定され
ている。
【0018】図3に示す様に、第1次絞穴62は、円錐
状の内周壁面62aと直状の内周壁面62bと円錐状の
内周壁面62cと内周壁面62dと穴底面62eとアー
ル面62fとで規定されている。図3から理解できる様
に、アール面62fは、穴底面62eの周縁部の逆テー
パ化を抑えるものであり、内周壁面62dの下端から穴
底面62eの外周縁に向かうにつれて内径が次第に小さ
くなるテーパ状にされている。フランジ部64は、外バ
リ部44を除去したフランジ部46と実質的に同じ形
状、寸法である。
【0019】上記した第1段階目の冷間絞り工程では、
図9に示す第1段階用の絞り装置200を用いる。絞り
装置200は、下ボルスタ201側に保持された型20
2a〜202fと、KOピン203と、上ボルスタ21
0側に保持されたパンチ型211と、連動ロッド212
とを備えている。型202f、202eは型孔206を
形成している。
【0020】ここで、図9の左半分(A)はパンチ型2
11が下死点に移行した状態を示し、図9の右半分
(B)は鍛造後パンチ型211が上死点に移行した状態
を示す。連動ロッド212の一方の係止部212aは下
ボルスタ201側の押出板207に装備された筒部20
8に係止しており、連動ロッド212の他方の係止部2
12bは上ボルスタ210側の保持部214に係止して
いる。また、図9の右半分(B)に示す様に、パンチ型
211は、平坦面211a及び円錐面211bで規定さ
れた押圧突部211cと、リング状の平坦面で形成され
た肩部211dとを備えている。
【0021】かかる第1段階目の冷間絞り工程では、絞
り装置200の型孔206に鍛造品5の段付軸部50の
下部を挿入した状態で、上ボルスタ210がパンチ型2
11と共に下降する。これに伴い、パンチ型211の平
坦面211aで鍛造品5の段付軸部50の軸端面50b
を強圧する。これにより鍛造品5の段付軸部50が型孔
206に強制的に押入され、前述した様に、段付軸部5
0の外周壁面50dの領域D1がパンチ成形穴52と共
に絞られる。
【0022】かかる第1段階目の冷間絞り工程において
は、パンチ型211の平坦面211aは軸端面50bを
押圧するものの、パンチ型211はパンチ成形穴52に
は挿入されないので、パンチ成形穴52は空洞状のまま
であり、非拘束状態である。また、図9の右半分(B)
から理解できる様に、パンチ型211が上死点に上昇す
る際には、上ボルスタ210が上昇し、上ボルスタ21
0側の保持部214が連動ロッド212の係止部212
bを持ち上げるので、連動ロッド212の係止部212
aが筒部208、押出板207を持ち上げ、押出板20
7によりKOピン203が持ち上げられ、KOピン20
3の上端面で鍛造品6の段付軸部60の軸端面60aが
押し上げられ、以て離型が行なわれる。
【0023】(第2段階目の冷間絞り工程)次に、図3
に実線で示す鍛造品6を用い、第2段階目の冷間絞り工
程を実施し、鍛造品6の段付軸部60の外周壁面60d
の領域D1’の外径を絞り、図5に実線で示す鍛造品7
を得る。第2段階目の冷間絞り工程の結果、鍛造品6の
段付軸部60の領域D1’を構成する筒状肉部は、第1
次絞穴62と共に軸方向つまりつまり矢印A2方向に延
ばされる。
【0024】かかる第2段階目の冷間絞り工程において
も、フランジ部64側の根元領域D2は絞らない。同様
に、軸先端側の外周壁面60eの図3に示す領域D4も
絞らない。図5に示す様に第2段階目の冷間絞り工程を
終えた鍛造品7は、段付軸部70と、段付軸部70の一
端で開口する有底状の略ストレート状をなす第2次絞穴
72と、段付軸部70の一端から遠心方向に延設された
フランジ部74とをもつ。この段付軸部70は、軸端面
70a、70bと外周壁面70c、70d、70eと円
錐面70f、70hとで規定されている。第2次絞穴7
2は、円錐状の内周壁面72aと内周壁面72cと穴底
面72eとアール面72fとで規定されている。
【0025】図5から理解できる様に、アール面72f
は、穴底面72eの周縁部の逆テーパ状の欠肉部を抑え
るものであり、内周壁面72cの下端から穴底面72e
の外周に向かうにつれて内径が次第に小さくなる様にさ
れている。上記した第2段階目の冷間絞りの結果、第2
次絞穴72の穴径は、絞られたぶん、第1次絞穴62の
穴径よりも小さくされている。なお、鍛造品7のフラン
ジ部74は、フランジ部46と実質的に同じ形状、寸法
である。
【0026】かかる第2段階目の冷間絞り工程を行うに
あたり、前記した第1段階用の絞り装置と基本的に同様
の構造の絞り装置(図示せず)を用いる。但し、この絞
り装置は、鍛造品6の段付軸部60の外周壁面60dの
外径よりも小さな径をもつ型孔を備えている。そして第
2段階目の冷間絞り工程においても、第1段階目の冷間
絞り工程と同様に、パンチ型が下降して鍛造品6の段付
軸部60の軸端面60bを強圧する。
【0027】かかる第2段階目の冷間絞り工程において
も、第1段階目の冷間絞り工程と同様に、パンチ型は軸
端面60bを押圧するものの、パンチ型は第1次絞穴6
2には挿入されないので、第1次絞穴62は空洞状つま
り非拘束状態である。上記した様にパンチ成形穴52の
内径を順次絞る第1段階目の絞り工程、第2段階目の絞
り工程は共に冷間状態で実施されるので、仕上鍛造工程
で得た鍛造品4のフランジ部46の形状は、第1段階目
の絞り工程、第2段階目の絞り工程においても実質的に
変形しないものである。
【0028】(パンチ成形穴52の変形)ところで、図
4(A)(B)を参照して、第1段階目の冷間絞り工程
におけるパンチ成形穴52の穴形状の変形過程につい
て、更に説明を加える。図4(A)は、図2に実線で示
す形態の主要部の拡大図であり、図4(B)は、図3に
実線で示す形態の主要部の拡大図である。図4(A)に
示す様に、熱間押出し工程を経た鍛造品5では、パンチ
成形穴52の内周壁面52bの内径はdo(21mm程
度)で示され、段付軸部50の外周壁面50dの外径は
Do(47mm程度)で示され、外周壁面50cの外径
はD2 (38mm程度)で示され、軸方向における傾斜
面52cの距離はα(10mm程度)、軸直角方向にお
ける傾斜面52cの距離はβ(2mm程度)で示されて
いる。
【0029】上記した第1段階目の冷間絞り工程によ
り、図4(A)から理解できる様に、鍛造品5の段付軸
部50の内周壁面52bは矢印X2方向に移行して縮径
し、図4(B)に示す内周壁面62dとなるものであ
る。この結果、図4(B)に示す第1次絞穴62におい
て、その穴底面62eの周縁部であるアール面62f
は、穴底面62eに向かうにつれて内径が小さくなる順
テーパ状のまま維持される。即ち、応力集中が誘発され
る逆テーパ状の欠肉部は形成されない。
【0030】ところで、図10は、図4(A)の形態を
模式的に示したものである。図10において、傾斜面5
2cは傾斜直線状に模式化されている。図10におい
て、軸方向における傾斜面52cの距離はα、軸直角方
向における傾斜面52cの距離はβで示されている。ま
た傾斜面52cの上端は点Aで示され、傾斜面52cの
下端は点Qで示され、段部を構成する円錐面50eの径
小端は点Pで示され、点Aから点Pまでの軸方向におけ
る距離はyoで示されている。なお、図10はあくまで
も模式図であり、点A、点Q、点Pは実際にはアール円
弧で規定されるものである。
【0031】ここで、図11の特性線K1の領域は、絞
りにより傾斜面52cをストレート状に変形させる場合
において、傾斜面52cの傾斜度合を示す比(α/β)
と絞り加工度との関係を示す。(α/β)が大きいこと
は、傾斜面52cが急勾配であることを意味し、(α/
β)が小さいことは、傾斜面52cが緩勾配であること
を意味する。特性線K1の領域では、例えば、絞り加工
度が42%程度の場合には(α/β)は2〜5程度と
し、絞り加工度が28%程度の場合には(α/β)は3
〜7程度とし、絞り加工度が15%程度の場合には(α
/β)は10〜15程度とする。即ち、特性線K1は、
絞り加工度が増加するにつれて、(α/β)の値を小さ
くし、傾斜面52cを緩傾斜とすることを意味する。
【0032】図11の特性線K1の領域を満足する条件
で第1段階目の絞り工程を実施すれば、絞り後において
も、傾斜面52cはストレート状となり、傾斜の向きが
逆テーパとはならない。本実施例方法では、特性線K1
の領域を満足する条件よりも(α/β)が緩勾配の状態
で、第1段階目の絞り工程を実施しており、傾斜面52
cは順テーパ状のまま確実に維持され、応力集中が誘発
される逆テーパ状の欠肉部とはならない。
【0033】一般的には、絞り加工前のパンチ成形穴5
2の径比(Do/do)は1.2〜4.0であり、点A
は点Pよりも5〜20mm上方に位置するものである。
また、図12の特性線K3の領域は、順テーパ状の傾斜
面52cを絞りによりストレート状に変形させる場合に
おいて、前記した軸方向における距離yoと絞り加工度
との関係を示す。順テーパ状の傾斜面52cを絞りによ
りストレート状にするには、特性線K3に示す様に、絞
り加工度が増すにつれて、5〜20mmの範囲で距離y
oを大きくすること、即ち、傾斜面52cの上端の位置
Aを上方に設定することが好ましい。
【0034】本実施例方法では、第1段階目の冷間絞り
工程において、特性線K1、K3の領域を満足する条
件、あるいは、余裕を考慮した条件で実施しており、従
って、第1次絞穴62において、その穴底面62eの周
縁部であるアール面62fは順テーパ状のまま維持さ
れ、逆テーパ状にはならない。また本実施例方法では、
特性線K1、K3の領域を満足する条件で、あるいは余
裕を考慮した条件で、第2段階目の冷間絞り工程を実施
しており、従って、第2次絞穴72において、その穴底
面72eの周縁部であるアール面72fは順テーパ状の
まま維持され、応力集中が誘発される逆テーパ状にはな
らない。
【0035】また本実施例ではドリル刃による加工を用
いることなく、第2次絞穴72を形成しているので、鍛
造フロー(流線)の切断もなく、強度確保上有利であ
る。上記の様にして製造された鍛造品7は、焼入れ焼戻
し処理、ブラスト処理、塗装処理を経て、スプライン加
工、ボルト孔加工され、サイドギヤシャフトとなる。 (製品)図6、図7はサイドギヤシャフト8を示す。即
ち、基本的には、第2段階目の冷間絞り工程を経た鍛造
品7の段付軸部70の外周壁面70eにスプライン80
が形成されると共に、鍛造品7のフランジ部74にボル
ト孔82が形成されている。図7に示す様に、段付軸部
70の外周壁面70cには軸受90が嵌め込まれる。
【0036】なお図7から理解できる様に、スプライン
80は、絞穴72が形成されてる領域F1を避けて領域
F2に設けられているものである。 (他の例)上記した実施例では鍛造品5を得るに際して
熱間鍛造が実施されているが、これに限らず、熱間と冷
間との中間温度域で成形する温間鍛造としても良い。
【0037】図13(A)〜(D)は別の他の例を模式
的に示す。この例は駆動部品としてのディファレンシャ
ルドライブピニオンの鍛造品に適用した場合である。こ
の例では、図13(A)に示す荒地鍛造品400(材
質:Cr−Mo肌焼鋼)を用いる。この荒地鍛造品40
0は、丸棒状素材から成形したものであり、有底粗孔を
もつ荒地軸部410とフランジ部としての荒地傘部44
0とをもつ。荒地段付軸部400は、外周壁面400
a、400b、円錐面400c及び軸端面400d、4
00eで規定されている。荒地傘部440は外周壁面4
40a、端面440cで規定されている。
【0038】次に、荒地鍛造品400に鍛造パンチ型を
押入し、図13(B)に示す鍛造品500を得る。鍛造
品500は、段付軸部510と、段付軸部510の一端
で開口する有底状のパンチ成形穴520と、段付軸部5
10の一端から延設された傘部540とをもつ。この段
付軸部510は、軸端面510aと外周壁面510b、
510cと円錐面510dとで規定されている。パンチ
成形穴520は、内周壁面520aと穴底面520eと
傾斜面520fとで規定されている。傘部540は、バ
リ部を除去した後の傘部440と実質的に同じ形状、寸
法である。
【0039】次に、かかる鍛造品500を用いて第1段
階目の冷間絞り工程を実施し、鍛造品500の段付軸部
510の外周壁面510b(本発明でいう大径軸部)の
領域K1の外径を絞り、図13(C)に示す鍛造品60
0を得る。かかる絞り工程において、段付軸部510の
領域K1を構成する筒状肉部は、パンチ成形穴520と
共に、軸方向の前方つまり矢印A2方向に延ばされる。
このとき、段付軸部510のうち、傘部540側の根元
領域K2、軸先端側の外周壁面510cの領域K3は絞
られていない。
【0040】図13(C)に示す様に、この鍛造品60
0は、段付軸部610と、段付軸部610の一端で開口
する有底状の第1次絞穴620と、段付軸部610の一
端から遠心方向に延設された傘部640とをもつ。この
段付軸部610は、軸端面610aと外周壁面610
b、610c、610dと円錐面610e、610fと
で規定されている。第1次絞穴620は段付き穴であ
り、内周壁面620a、620bと穴底面620eとア
ール面620fとで規定されている。傘部640は、傘
部440と実質的に同じ形状、寸法である。
【0041】次に、鍛造品600を用いて第2段階目の
冷間絞り工程を実施し、鍛造品600の段付軸部610
の外周壁面610cの領域K5の外径を絞り、絞り領域
K6とし、図13(D)に示す鍛造品700を得る。こ
のとき、外周壁面610cの領域K5を構成する筒状肉
部は、第1次絞穴620と共に、軸方向の前方つまり矢
印A2方向に延ばされる。
【0042】第2段階目の冷間絞り工程を経た鍛造品7
00は、図13(D)に示す様に、段付軸部710と、
段付軸部710の一端で開口する有底状の第2次絞穴7
20と、段付軸部710の一端から遠心方向に延設され
た傘部740とをもつ。この段付軸部710は、軸端面
710aと外周壁面710b、710c、710d、7
10eと円錐面710f、710h、710iとで規定
されている。第2次絞穴720は段付き穴であり、内周
壁面720a、720b、720cと円錐内周壁面72
0e、720fと穴底面720h、アール面720iと
で規定されている。上記した絞りの結果、第2次絞穴7
20の穴径は、絞られたぶん、第1次絞穴620の穴径
よりも小さくされている。なお、傘部740は、傘部4
40と実質的に同じ形状、寸法である。
【0043】ここで、図13(B)に示すパンチ成形穴
520の穴底面520e付近は、図4(A)に示す形態
と基本的に同様の形態を呈してている。また図13
(C)に示す絞穴620の穴底面620e付近は、図4
(B)に示す形態と基本的に同様の形態を呈している。
従って、第1段階目及び第2段階目の冷間絞り後におい
て、前述同様に、第2次絞穴720において、アール面
720iは、逆テーパ状の欠肉部とならず、穴底面72
0hに向かうにつれて内径が小さくなる様にされてい
る。
【0044】上記の様にして製造された鍛造品700
は、焼ならし処理、ブラスト処理を経て、外周全面切削
加工後、傘部740の外周壁面740aには歯切り加工
によりギヤが形成され、軸部710の外周面710dに
歯切り加工によりスプラインが形成され、ディファレン
シャルドライブピニオンとなる。なお、上記した各例は
サイドギヤシャフト、ディファレンシャルドライブピニ
オンに適用した場合であるが、これに限定されるもので
なく、他のフランジ付き中空軸状鍛造品にも適用できる
ものである。
【0045】
【発明の効果】本発明方法によれば、中央軸穴の穴底面
が段部付近に配置されている場合であっても、応力集中
の要因となる逆テーパ状の欠肉部が発生することを回避
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(C)は丸棒から仕上鍛造した仕上鍛
造品を得るまでの工程を示す断面図である。
【図2】熱間後方押出し工程を実施し、パンチ成形穴を
形成した鍛造品を示す断面図である。
【図3】第1段階目の冷間絞り工程を実施し、第1次絞
穴を形成した鍛造品を示す断面図である。
【図4】(A)(B)はパンチ成形穴の変形過程を説明
する主要部の拡大断面図である。
【図5】第2段階目の冷間絞り工程を実施し、第2次絞
穴を形成した鍛造品を示す断面図である。
【図6】サイドギヤシャフトの平面図である。
【図7】図6のN−N線にそうサイドギヤシャフトの断
面図である。
【図8】熱間後方押出し工程を実施する装置を示す断面
図である。
【図9】冷間前方押出し工程を実施する装置を示す断面
図である。
【図10】絞り工程を実施する前のパンチ成形穴の構成
を説明する主要部の拡大断面図である。
【図11】(α/β)と絞り加工度との関係を示すグラ
フである。
【図12】軸方向距離yoと絞り加工度との関係を示す
グラフである。
【図13】(A)〜(D)は他の例に係り、各工程にお
ける鍛造品を示す断面図である。
【図14】(A)は先行技術に係る絞り前の状態の中央
軸穴付近の断面図、(B)は先行技術に係る絞り後の状
態の絞穴付近の断面図である。
【符号の説明】
図中、4は鍛造品、5は鍛造品、50は段付き軸部、5
2はパンチ成形穴(中央軸穴)、52dは穴底面、6は
鍛造品、62は第1次絞穴、62eは穴底面、72は第
2次絞穴、72eは穴底面を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−190490(JP,A) 特開 昭57−88940(JP,A) 特開 平1−215427(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21J 1/00 - 13/14 B21J 17/00 - 19/04 B21K 1/00 - 31/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】外径が大径の大径軸部と該大径軸部に段部
    を介して連設された小径軸部とを備えた段付軸部と、該
    段付軸部に形成され該大径軸部の軸端面で開口する有底
    状の中央軸穴とをもつ鍛造品を得る工程と、 該鍛造品の該中央軸穴を非拘束状態とし、該段付軸部の
    大径軸部の外周面を該中央軸穴と共に絞って、該中央軸
    穴を略ストレート状の絞穴とする絞り工程とを順に実施
    して中空軸状鍛造品を製造する方法であり、 該鍛造品の絞り加工前の中央軸穴は、その穴底面が、該
    段部を基準として該段付軸部の軸方向の一方向及び他方
    向にそれぞれ該中央軸穴の口径にほぼ等応する距離で規
    定された領域内に配置されていると共に、該中央軸穴の
    穴底面の周縁部の内径が穴底面に向かうにつれて径小と
    なる傾斜面を備え、 該鍛造品の軸芯を通る断面において、軸方向における該
    傾斜面の距離をαとし、軸直角方向における該傾斜面の
    距離をβとしたとき、(α/β)は1〜15の値であ
    り、 該絞り工程において、絞り加工度を増加するにつれて
    (α/β)の値を小さくするようにしたことを特徴とす
    る中空軸状鍛造品の製造方法。
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