JP3161502B2 - 射出成形用金型装置 - Google Patents

射出成形用金型装置

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JP3161502B2 JP18934695A JP18934695A JP3161502B2 JP 3161502 B2 JP3161502 B2 JP 3161502B2 JP 18934695 A JP18934695 A JP 18934695A JP 18934695 A JP18934695 A JP 18934695A JP 3161502 B2 JP3161502 B2 JP 3161502B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば樹脂などの成形
材料によりテーパー部を有する筒体を成形する射出成形
用金型装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図9に示すような筒体Pを成形すること
を考えてみる。この筒体Pは、円筒形状の本体部P1を下
部に有し、この本体部P1の上端部から径方向内方に屈曲
した段差部P2を有するとともに、この段差部P2の内周部
から上方へ突出した薄肉筒状のテーパー部P3を有してい
る。また、このテーパー部P3の内側には、これを径方向
に横切るブリッジ部P4を有している。
【0003】従来の射出成形では、金型装置の固定型と
可動型との間に筒体Pと同形状のキャビティを形成し、
このキャビティ内に成形機から射出した樹脂を充填して
成形を行うことになる。しかし、単に一定形状のキャビ
ティ内に樹脂を充填するのでは、特に薄肉のテーパー部
P3などでは充填不足を生じやすい。そして、冷却による
収縮により、特にブリッジ部P4が繋がっている部分で、
テーパー部P3の外面にひけが生じたりする。
【0004】しかも、キャビティの容積が一定であるか
ら、キャビティ内に充填された樹脂の圧力や量は、基本
的に成形機側の制御によって決定されることになる。そ
のため、成形機側の制御に誤差があれば、そのまま、キ
ャビティ内に充填された樹脂の圧力や量に誤差を生じる
ことになる。この誤差を解消するには、成形機の射出用
のスクリューなどの制御を精密にすることが考えられる
が、誤差の生じる要因は温度、樹脂自体の性質のばらつ
きなど、さまざまである。例えば、スクリューからキャ
ビティまでは長い樹脂通路があるが、この樹脂通路にお
いて発生する誤差があれば、かりにスクリューの制御を
精密にしても、キャビティ内に充填された樹脂の圧力や
量に誤差を生じることになる。すなわち、成形機の制御
のみによって、キャビティで生じる誤差を解消すること
は困難である。
【0005】また、従来より、キャビティ内に樹脂を充
填した後、金型の一部の構成部品を動かしたり、型締力
を切り換えるなどして、キャビティ自体の容積を小さく
することにより、キャビティ内の樹脂を圧縮する射出圧
縮成形が知られており、この射出圧縮成形によれば、充
填不足の問題は解消し得るが、キャビティの容積を小さ
くして樹脂を圧縮することは、キャビティ内に充填され
た樹脂の圧力や量の誤差を解消する作用を有するもので
はない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、薄肉の
テーパー部を有する筒体を成形しようとする場合、従来
のように、一定形状のキャビティ内に樹脂などの成形材
料を充填するのでは、テーパー部などで充填不足が生じ
やすい問題がある。これとともに、従来の射出成形で
は、成形機側の制御によってキャビティに充填される成
形材料の圧力や量を制御していたため、この成形材料の
圧力や量を正確に制御しにくい問題があった。射出圧縮
成形でも、前者の充填不足の問題は解消できたとして
も、後者の問題は解消できない。
【0007】本発明は、このような問題点を解決しよう
とするもので、薄肉のテーパー部を有する筒体を成形す
るにあたって、キャビティ内に充填される成形材料の圧
力や量を正確に制御できるようにし、品質の安定した高
精度の製品を得られるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、前記
目的を達成するために、薄肉のテーパー部を有する筒体
の射出成形用金型装置であって、互いに開閉し型閉時に
相互間に前記筒体形状のキャビティを形成する一対の型
体を備え、これら型体の開閉方向は、前記筒体形状の軸
方向と一致させる。そして、一方の型体は、基体と、こ
の基体に両型体の開閉方向に移動可能に支持され他方の
型体に突き当たって閉じる移動体と、この移動体を基体
に対して他方の型体の方へ付勢する付勢手段と、前記基
体に一体的に設けられた圧縮部とを有する。また、材料
通路からキャビティへのゲートは、前記一方の型体の移
動体が基体に対して閉じるのに伴い圧縮部により閉じら
れる構成とする。そして、前記圧縮部により、筒体のテ
ーパー部の外面を形成するものである。
【0009】請求項2の発明は、請求項1の発明の射出
成形用金型装置において、前記筒体が、テーパー部の内
側を横切るブリッジ部を有するのに対して、前記他方の
型体は、筒体のテーパー部内を貫通してこのテーパー部
の先端開口から突出する突出部を有するとともに、この
突出部にブリッジ部が収まるスリット部を有する。ま
た、前記一方の型体の圧縮部は、前記他方の型体の突出
部が挿脱自在に嵌合される孔部を有するとともに、前記
他方の型体のスリット部に挿脱自在に嵌合される突片部
を有するものである。
【0010】
【作用】請求項1の発明の射出成形用金型装置では、ま
ず弱い型締力で一対の型体を型閉し、一方の型体の移動
体と他方の型体とが閉じるとともに、一方の型体の移動
体と基体とが開いた状態で、材料通路へ成形材料を供給
してキャビティ内に充填する充填工程を行う。
【0011】この充填工程に引き続いて、金型装置への
成形材料の供給を続け、一方の型体の基体に対し移動体
および他方の型体を変位させて、金型装置内の成形材料
の圧力と型締力とを均衡させることにより、キャビティ
内の成形材料の圧力を調整する調圧工程を行う。すなわ
ち、この調圧工程では、金型装置内の成形材料の圧力に
より、型締力に抗して、一方の型体の基体と移動体およ
び他方の型体とが開くが、その開き量は、金型装置内の
成形材料の圧力と型締力との均衡によって決まり、金型
装置内により多くの成形材料が供給されるほど大きくな
る。換言すれば、成形機などの材料供給装置より供給さ
れる成形材料の量に誤差があっても、前記開き量の変化
により誤差が吸収され、キャビティ内の成形材料の圧力
は一定になる。
【0012】この調圧工程の後に型締力を強めて一方の
型体の基体と移動体とを閉じていき、計量工程を行う。
この計量工程においては、キャビティ内の成形材料が材
料供給装置側へ戻るが、基体と移動体とが閉じていくの
に伴い、基体と一体の圧縮部がゲートを閉じ、この時点
でキャビティ内に一定量の成形材料が残る。すなわち、
調圧工程が終了した時点で、キャビティ内の成形材料の
量は一定していないが、その後の計量工程により、キャ
ビティ内の成形材料は一定量にされる。こうして、調圧
工程および計量工程により、キャビティ内に充填される
成形材料の圧力および量が正確に制御されることにな
る。
【0013】この計量工程の後、すなわち、ゲートが閉
じた後、一方の型体の基体と移動体とを互いに突き当た
るまで閉じ、キャビティ内の成形材料を圧縮する圧縮工
程を行う。これにより、成形材料の固化に伴う収縮が補
償され、この補償のために、材料供給装置側で保圧工程
を行うような必要はない。そして、圧縮工程において、
筒体のテーパー部の外面を形成する圧縮部がテーパー部
の成形材料を圧縮する。
【0014】さらに、請求項2の発明の射出成形用金型
装置では、型閉時、前記一方の型体の圧縮部の孔部に他
方の型体の突出部が嵌合するとともに、この突出部のス
リット部に圧縮部の突片部が嵌合する。そして、突出部
が筒体のテーパー部の内面とブリッジ部の両側面および
一端縁とを形成し、突片部がブリッジ部の他端縁を形成
する。突片部は圧縮部と一体であるから、ブリッジ部の
成形材料も圧縮工程において圧縮される。
【0015】
【発明の実施形態】以下、本発明の一実施例について、
図面を参照しながら説明する。なお、成形される製品
は、先に説明した図9に示す筒体Pである。本実施例
は、熱可塑性樹脂を成形材料とする射出成形に応用した
ものであり、図8に示すようなインラインスクリュー式
の射出成形機を用いるものである。図8において、1は
材料供給装置である加熱シリンダー装置である。この加
熱シリンダー装置1は、ほぼ円筒状のシリンダー本体2
を有している。このシリンダー本体2には、加熱用のヒ
ーター3が外周に設けられているとともに、ノズル4が
先端部(図示左部)に設けられている。また、シリンダ
ー本体2の後部上側にはホッパー5が設けられている。
そして、シリンダー本体2内には、スクリュー6が回転
自在にかつ軸方向(図示左右方向)に移動自在に収容さ
れている。このスクリュー6の後側には、油圧シリンダ
ー11のピストンロッド12が固定して連結してある。すな
わち、この油圧シリンダー11は、スクリュー6を軸方向
に駆動するものである。また、スクリュー6は、電動サ
ーボモーター13により回転駆動されるようになってい
る。このサーボモーター13からスクリュー6に回転を伝
達するために、ピストンロッド12の外周に固定されたス
プライン筒14に、回転伝達用のギヤ15がスプライン嵌合
してある。すなわち、ギヤ15は、スクリュー6に対して
回り止めされているが、軸方向へは自在に動けるように
なっている。
【0016】また、21は直圧式の型締装置で、この型締
装置21は、固定側プラテン22および可動側プラテン23を
有している。この可動側プラテン23は、タイバー24に沿
って図示左右方向に移動自在になっており、油圧シリン
ダー25により型締用ラム26を介して駆動されるものであ
る。この油圧シリンダー25は、サーボ弁などからなる駆
動制御装置27により駆動が制御され、型締力を調整可能
になっている。そして、固定側プラテン22には、金型装
置31のうちの固定型32が取り付けられ、可動側プラテン
23には、同可動型33が取り付けられる。なお、前記型締
装置21および加熱シリンダー装置1は、コンピューター
などの制御装置により総合的に制御されるようになって
いる。
【0017】つぎに、金型装置31の構成を図1から図7
に基づいて詳しく説明する。なお、作用説明のための図
1および図4は、わかりやすくするために簡略化してあ
り、他の図と一致しない点もある。また、図1から図5
において、太い線のハッチングで示してあるのは樹脂で
ある。一方の型体である固定型32および他方の型体であ
る可動型33は、可動側プラテン23の移動により互いに開
閉し、型閉時に相互間に前記筒体Pの形状をしたキャビ
ティ34を形成するものである。なお、成形される筒体P
の軸方向が固定型32および可動型33の型開閉方向に一致
させてある。
【0018】前記固定型32は、固定側プラテン22に取り
付けられる固定側取り付け板36と、この固定側取り付け
板36の可動型33側の面に固定された固定側受け板37とを
有しており、これら固定側取り付け板36および固定側受
け板37により基体38を構成している。また、固定側取り
付け板36にはローケートリング39およびスプルーブッシ
ュ40が固定されている。このスプルーブッシュ40は、加
熱シリンダー装置1のノズル4が接続されるもので、内
部が材料通路であるスプルー41になっており、固定側受
け板37を貫通して可動型33側へ突出している。
【0019】また、固定側受け板37の可動型33側には、
移動体である移動板46が前記型開閉方向に所定範囲移動
可能に支持されている。この支持のために、固定側取り
付け板36および固定側受け板37に固定され可動型33側へ
突出したガイドピン47が移動板46を摺動自在に貫通して
いる。これとともに、固定側受け板37の可動型33側にス
トッパー48とともにボルト49により固定されたスリーブ
50が移動板46を摺動自在に貫通している。なお、ストッ
パー48は、可動型33側から移動板46に当たることによ
り、この移動板46と基体38との間の最大隙間すなわち最
大開き量を規制するものである。また、固定側取り付け
板36と移動板46との間に圧縮状態で挟まれた付勢手段で
あるスプリング51により、移動板46は、基体38に対して
可動型33の方へ付勢されている。そして、前記スプルー
ブッシュ40の先端部が移動板46に形成された貫通孔52に
摺動自在に嵌合されている。なお、移動板46は、枠体46
a と、この枠体46a の内側に固定されたブロック46b と
からなっている。
【0020】また、前記基体38には、固定側取り付け板
36と固定側受け板37とにより挟まれて圧縮部としての第
1のピン56が固定されているが、この第1のピン56は、
固定側受け板37を貫通して可動型33側へ突出しており、
第1のピン56の先端側は、移動板46に形成された貫通孔
57に摺動自在に嵌合されている。そして、第1のピン56
の先端部は、移動板46よりも可動型33側へ突出できる凸
部58をなしているが、この凸部58を含めて、第1のピン
56の先端側の内側には、筒体Pのテーパー部P3の外面を
形成する製品形成面59が形成されている。また、第1の
ピン56の内部には、製品形成面59に続く孔部60が形成さ
れている。さらに、基体38には、固定側取り付け板36と
第1のピン56とにより挟まれて圧縮部としての第2のピ
ン61が固定されている。そして、この第2のピン61の先
端部には突片部62が形成されているが、この突片部62
は、前記第1のピン56の孔部60内に入っている。
【0021】前記可動型33は、可動側プラテン23に取り
付けられる可動側取り付け板71と、この可動側取り付け
板71の固定型32側の面にスペーサーブロック72を介して
固定された可動側受け板73と、この可動側受け板73の固
定型32側の面に固定された可動側型板74とを有してい
る。この可動側型板74は、枠体74a とこの枠体74a の内
側に固定されたブロック74b とからなっている。また、
可動型33には、前記固定型32のガイドピン47が摺動自在
に貫通したガイドブッシュ75が設けられている。また、
可動側型板74は、前記固定型32の移動板46に突き当たっ
て閉じるものであるが、これら可動側型板74および移動
板46の相互の案内のために、移動板46にはガイドピン76
が固定されており、可動側型板74には、ガイドピン76が
摺動自在に嵌合される貫通孔77が形成されている。
【0022】そして、可動側型板74には、前記固定型32
の凸部58が挿脱自在に嵌合される凹部81が形成されてい
る。また、可動側型板74内に埋め込まれて固定された入
子82に形成された突出部83が凹部81内を同軸的に貫通し
て固定型32の方へ突出している。この突出部83は、その
外面によりテーパーP3を含めた筒体Pの内面を形成する
ものである。突出部83の先端部は、前記固定型32の第1
のピン56の孔部60に挿脱自在に嵌合される嵌合部84にな
っている。また、この嵌合部84を含めた突出部83の先端
側にはスリット部85が形成されている。このスリット部
85は、突出部83の側面両側および先端面へ抜けており、
前記固定型32の第2のピン61の突片部62が挿脱自在に嵌
合されるものである。こうして、前記突出部83は、成形
される筒体Pのテーパー部P3内を貫通し、テーパー部P3
の先端開口から突出するものとなっている。そして、前
記凸部58と凹部81との嵌合面、孔部60と嵌合部84との嵌
合面および突片部62とスリット部85との嵌合面は、型開
閉方向と平行な柱面をなしており、かつ、成形される筒
体Pにバリが生じないように、相互間の隙間はほとんど
ない。
【0023】また、閉じた固定型32の移動板46と可動型
33の可動側型板74との間には、前記スプルー41をキャビ
ティ34に連通させる材料通路であるランナー86およびゲ
ート87が形成されるようになっている。このゲート87
は、固定型32の凸部58が可動型33の凹部81に嵌合するこ
とにより閉じられるものである。なお、スプリング51が
移動板46を付勢する力は、ランナー86内の樹脂の圧力に
抗して移動板46と可動型33とが閉じた状態が保たれる力
に設定してある。
【0024】さらに、前記可動側取り付け板71と可動側
受け板73との間には突き出し板91が型開閉方向へ移動可
能に支持されている。この突き出し板91には、成形され
た筒体Pを突き出す製品突き出しピン92,93と、ランナ
ー86内で固化した樹脂を突き出すランナー突き出しピン
94とが固定されている。
【0025】つぎに、射出成形の方法について説明す
る。加熱シリンダー装置1においては、可塑化工程と射
出工程とが繰り返し行われる。可塑化工程では、ホッパ
ー5からシリンダー本体1内に供給された熱可塑性樹脂
が、ヒーター3による加熱とスクリュー6の回転による
混練とにより溶融して可塑化される。この可塑化ととも
に、樹脂は、スクリュー6の回転によって前方へ送ら
れ、シリンダー本体1内の先端側に溜められていく。そ
れに伴って、スクリュー6は樹脂の圧力により後退す
る。なお、可塑化工程中も、油圧シリンダー11により、
スクリュー6には前方への適当な背圧がかけられてい
る。スクリュー6が所定位置まで後退したことが検出さ
れると、油圧シリンダー11の駆動によりスクリュー6が
前進し、シリンダー本体1内の先端側の樹脂がノズル4
から射出され、金型装置31のスプルー41へ供給される。
スクリュー6が所定位置まで前進したことが検出される
と、あるいは、スクリュー6が前進限まで前進すると、
再び可塑化工程となる。
【0026】型締装置21は、まず弱い一定の型締力F1で
固定型32と可動型32とを型閉する。このとき、図1
(a)に示すように、固定型32の移動板46と可動型33と
が突き当たって閉じる。一方、固定型32の基体38と移動
板46とは初期開き量A1をもって開いているが、ストッパ
ー48は移動板46には当たっていない。すなわち、型締力
F1とスプリング51の力Gとが釣り合っている。また、固
定型32の凸部58は可動型33の凹部71に嵌合しておらず、
開いたゲート87によりランナー86とキャビティ34とが連
通している。一方、固定型32の孔部60には可動型33の突
出部83が嵌合し、可動型33のスリット部85には固定型32
の突片部62が嵌合する。この状態で、加熱シリンダー装
置1からスプルー41へ樹脂を射出する。この樹脂は、ス
プルー41からランナー86およびゲート87を通ってキャビ
ティ34内に充填される(充填工程)。
【0027】この充填工程に引き続いて、型締力はF1の
まま、加熱シリンダー装置1においては、スクリュー6
が所定位置まで前進したことが検出されるまで、あるい
は、スクリュー6が前進限まで前進するまで射出工程が
続けられる。すなわち、加熱シリンダー装置1から金型
装置31への樹脂の供給がなお続くが、それに伴い、金型
装置31内の樹脂の圧力により、図1(b)に示すよう
に、油圧がクローズされていない型締装置21が与えてい
る型締力F1に抗して、固定型32の基体38に対し移動板46
および可動型33が開く方向に変位する。これにより、発
生した内圧が解除される。そして、基体38と移動板46と
の間の拡大した開き量A2は、金型装置31内の樹脂の圧力
と型締力との均衡により決まる。より詳しくは、型締力
F1と、スプリング51の力Gおよび金型装置31内の樹脂が
移動板46および可動型33を後退させる力Hとの釣り合い
によって開き量A2が決まる。この開き量A2は、金型装置
31内により多くの樹脂が供給されるほど大きくなる。換
言すれば、加熱シリンダー装置1より供給される樹脂の
量に誤差があっても、前記開き量の変化により誤差が吸
収され、キャビティ34内の樹脂の圧力が調整されて一定
になる(調圧工程)。こうして、キャビティ34内の樹脂
の圧力を正確に制御できることになる。
【0028】なお、開き量がA1からA2に大きくなること
によりスプリング51の力Gは若干弱くなり、また、可動
型33とともに型締用ラム26が押し戻されることにより油
圧シリンダー25が与える型締力も若干変化し得るが、こ
れらスプリング51の力Gや型締力の変化は、無視できる
ほどに小さなものである。すなわち、移動板46および可
動型33の変移に応じて変化するスプリング51の力Gや型
締力と釣り合う樹脂の圧力のばらつきは、一定の容積の
キャビティに異なる量の樹脂を充填したときに生じる圧
力のばらつきに比べれば、ずっと小さい。
【0029】また、前記調圧工程において、固定型32の
基体38と移動板46および可動型33とを開くように作用す
る樹脂の圧力は、固定型32については、型開閉方向と平
行な方向において基体38にかかる圧力である。これが調
圧に関わる圧力である。これに対して、前記実施例の金
型装置31では、ランナー86を固定型32の移動板46と可動
型33との間に形成したので、基体38と移動板46および可
動型33とを開くように作用する樹脂の圧力は、ほぼキャ
ビティ34のみにおいて基体38にかかる(正確には、スプ
ルーブッシュ40を含む)。したがって、キャビティ34を
基準に調圧がなされることになる。一方、ランナー86内
の樹脂の圧力は、移動板46と可動型33とを開くように作
用するが、ランナー86内の樹脂の圧力にはスプリング51
の力が抗し、移動板46と可動型33とが閉じた状態に保た
れる。これは、次の計量工程でも同様である。
【0030】調圧工程の終了後、型締装置21は、型締力
をF2に強める。これにより、固定型32の基体38と移動板
46とが閉じていく。それに伴い、キャビティ34内の余分
な樹脂は、まだ開いているゲート87からランナー86へ戻
り、金型装置31内の樹脂は、加熱シリンダー装置1のシ
リンダー本体2内に戻る。その分、スクリュー6は後退
する。そして、図2(a)に示すように、固定型32の凸
部58が可動型33の凹部81に嵌合し始めるとゲート87が閉
じ、この時点で、キャビティ34内に一定量の樹脂が残る
ことになる(計量工程)。
【0031】計量工程の後、図2(b)に示すように、
固定型32の基体38と移動板46とが互いに突き当たるまで
閉じ、それに伴い、キャビティ34内の樹脂が加圧されて
圧縮される(圧縮工程)。その圧縮量Bは、計量工程の
終了時点での基体38と移動板46との開き量A3に等しい。
【0032】前記調圧工程が終了した時点では、キャビ
ティ34の容積すなわちキャビティ34内の樹脂の量は一定
していない。しかし、その後の計量工程において、前述
のようにキャビティ34内の樹脂がランナー86へ戻り、ゲ
ート87が閉じた瞬間には、キャビティ34内に一定量の樹
脂が残る。こうして、調圧工程および計量工程により、
キャビティ34内に充填される樹脂の圧力および量が正確
に制御されることになる。
【0033】ところで、金型装置31において、ランナー
86を固定型32の移動板46と可動型33との間に形成したこ
とにより、計量工程において、ランナー86の容積は変化
しない。したがって、容積が小さくなっていくキャビテ
ィ34からランナー86へ樹脂が円滑に戻り、キャビティ34
内の樹脂の圧力が確実に一定に保たれる。これととも
に、型閉の動作も速くできる。
【0034】型閉に伴いゲート87が閉じた後には圧縮工
程となって、キャビティ34内の樹脂は圧縮されるが、計
量工程において、キャビティ34内に一定の圧力で一定量
の樹脂が残されることにより、圧縮も円滑に行われる。
そして、圧縮により、樹脂の冷却による固化に伴う収縮
が補償される。したがって、この補償のために、加熱シ
リンダー装置1側で保圧工程を行う必要はない。
【0035】以上のようにして、固定型32の第1のピン
56の製品形成面59が製品である筒体Pの段差部P2の上面
およびテーパー部P3の外面を形成し、固定型32の第2の
ピン61の突片部62がブリッジ部P4の上端縁を形成し、可
動型33の凹部81が本体部P1の外面を形成し、可動型33の
突出部83が筒体Pの内面とブリッジ部P4の両側面および
下端縁とを形成する。
【0036】そして、キャビティ34内の樹脂が十分に冷
却して固化した後、型締装置21により固定型32と可動型
33とが型開される。それに伴い、キャビティ34内の樹脂
すなわち製品Pとランナー86およびスプルー41内で固化
した樹脂は、まず固定型32から離れる。ついで、型締装
置21側に設けられた図示していない突き出しロッドが突
き出し板91を固定型32の方へ押すことにより、ランナー
突き出しピン94がランナー86およびスプルー41内で固化
した樹脂を突き出して可動型33から離型させるととも
に、製品突き出しピン92,93が成形された筒体Pを突き
出して可動型33から離型させる。さらに、ランナー86お
よびスプルー41内で固化した樹脂および筒体Pが取り出
された後、再び型閉が行われ、以上の工程が繰り返され
る。
【0037】以上のように、前記実施例の構成によれ
ば、金型装置31内で行われる調圧工程および計量工程に
より、キャビティ34内に充填される樹脂の圧力および量
を容易に正確に制御でき、さらに、計量工程に続いて圧
縮工程を行うことにより、品質の安定した高精度の筒体
Pを得られる。
【0038】また、金型装置31において、ランナー86を
固定型32の移動板46と可動型33との間に形成したことに
より、キャビティ34を基準に調圧が行われ、また、計量
工程ではキャビティ34内の樹脂が円滑にランナー86へ戻
ることにより、キャビティ34内に充填される樹脂の圧力
および量をより正確に制御できる。
【0039】さらに、筒体Pのテーパー部P3は型開閉方
向に対して傾斜しているので、最終的に成形されるテー
パー部P3は薄肉のものであっても、充填工程および調圧
工程においては、固定型32および可動型33におけるテー
パー部P3を形成する面は互いに大きく離れることにな
り、したがって、キャビティ34におけるテーパー部P3と
なる部分に樹脂が円滑に流入し、充填不良を生じるよう
なことがない。その上で、圧縮工程において、第1のピ
ン56がテーパー部P3を圧縮するので、薄肉のテーパー部
P3を不良なく確実に成形でき、ブリッジ部P4が繋がって
いる部分でテーパー部P3の外面にひけが生じるようなこ
ともない。しかも、型開閉方向に対して傾斜しているテ
ーパー部P3には本体部P1よりも強く圧縮が作用する。
【0040】また、可動型33には、テーパー部P3内を貫
通する突出部83およびブリッジ部P4を下から囲むスリッ
ト部85を設け、固定型32には、その基体38と一体的に、
突出部83が嵌合する孔部60と、スリット部85に嵌合する
突片部62とを設けたので、ブリッジ部P4を含めてテーパ
ー部P3全体に確実に圧縮をかけられる。
【0041】なお、本発明は、前記実施例に限定される
ものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、
前記実施例では、インラインスクリュー式の射出成形機
を用いた場合を例に採って説明したが、成形機には、プ
ランジャー式のものなど、各種のものを用いられる。ま
た、型締装置も、前記実施例のような直圧式のものの
他、トグル式のものなど、各種のものを用いられる。型
締装置の駆動源も、油圧シリンダーに限らず、電動モー
ターなどであってもよい。
【0042】さらに、金型装置も、前記実施例のものに
は限らない。例えば、移動体を付勢する付勢手段として
は、スプリングの他、エアシリンダーなどを用いること
もできる。また、前記実施例では、ランナー86およびゲ
ート87を固定型32と可動型33との間に形成したが、これ
に限るものではない。例えば、固定型において型開閉方
向で可動型側に向かって開口したダイレクトゲートを採
用することも可能である。この場合、可動型に設けた凸
部がダイレクトゲートに嵌合してこれを閉じるようにす
ればよい。そして、成形される筒体も前記実施例のもの
には限らず、薄肉のテーパー部を有する筒体の成形一般
に、本発明を適用できる。
【0043】また、前記実施例では、熱可塑性樹脂の射
出成形を例に採って説明したが、本発明は、熱可塑性樹
脂をバインダーとして用いるセラミックスの射出成形や
射出成形粉末冶金法、あるいは、熱硬化性樹脂の射出成
形など、各種成形材料の射出成形に適用可能である。
【0044】
【発明の効果】請求項1の発明の射出成形用金型装置に
よれば、一方の型体の基体に対し移動体および他方の型
体を変位させて、金型装置内で調圧工程および計量工程
を行うことにより、キャビティ内に充填される成形材料
の圧力および量を容易に正確に制御でき、さらに、計量
工程に続いて圧縮工程を行うことにより、品質の安定し
た高精度の筒体を得られる。特に、基体と一体の圧縮部
により筒体の薄肉のテーパー部の外面を形成するので、
このテーパー部を不良なく確実に成形できる。
【0045】さらに、請求項2の発明の射出成形用金型
装置によれば、筒体がテーパー部の内側を横切るブリッ
ジ部を有するのに対して、他方の型体に、テーパー部内
を貫通する突出部およびブリッジ部が収まるスリット部
を設け、また、一方の型体の圧縮体に、突出部が嵌合す
る孔部およびスリット部に嵌合する突片部を設けたの
で、ブリッジ部も含めてテーパー部全体に確実に圧縮を
かけられる。なお、ブリッジ部があっても、前記圧縮に
より、ブリッジ部が繋がっている部分でテーパー部の外
面にひけが生じるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の射出成形用金型装置の一実施例を示す
キャビティ付近の断面図で、充填工程時を示している。
【図2】同上キャビティ付近の断面図で、調圧工程時を
示している。
【図3】同上キャビティ付近の断面図で、計量工程時を
示している。
【図4】同上キャビティ付近の断面図で、圧縮工程時を
示している。
【図5】同上キャビティ付近の断面図で、図1から図4
とは断面を90°変えてある。
【図6】同上固定型の正面図である。
【図7】同上全体の断面図である。
【図8】同上射出成形に用いる装置全体の一部を断面に
した側面図である。
【図9】成形される筒体を示す一部を断面した側面図
で、(a)と(b)とは投影方向が90°異なる。
【符号の説明】
31 金型装置 32 固定型(一方の型体) 33 可動型(他方の型体) 34 キャビティ 38 基体 46 移動板(移動体) 51 スプリング(付勢手段) 56 第1のピン(圧縮部) 60 孔部 61 第2のピン(圧縮部) 62 突片部 83 突出部 85 スリット部 86 ランナー(材料通路) 87 ゲート P 筒体 P3 テーパー部 P4 ブリッジ部
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭51−20258(JP,A) 特開 昭59−111829(JP,A) 特開 平4−363230(JP,A) 特開 平5−8260(JP,A) 特開 平5−261812(JP,A) 特開 平6−254914(JP,A) 特開 平7−32427(JP,A) 特開 平7−32434(JP,A) 特開 平7−162991(JP,A) 実開 平5−76722(JP,U) 特公 昭46−4667(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 45/00 - 45/84 B28B 1/24 B22F 3/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 薄肉のテーパー部を有する筒体の射出成
    形用金型装置であって、 互いに開閉し型閉時に相互間に前記筒体形状のキャビテ
    ィを形成する一対の型体を備え、これら型体の開閉方向
    は、前記筒体形状の軸方向と一致させ、 一方の型体は、基体と、この基体に両型体の開閉方向に
    移動可能に支持され他方の型体に突き当たって閉じる移
    動体と、この移動体を基体に対して他方の型体の方へ付
    勢する付勢手段と、前記基体に一体的に設けられた圧縮
    部とを有し、 材料通路からキャビティへのゲートは、前記一方の型体
    の移動体が基体に対して閉じるのに伴い圧縮部により閉
    じられる構成とし、 前記圧縮部により、筒体のテーパー部の外面を形成する
    ことを特徴とする射出成形用金型装置。
  2. 【請求項2】 前記筒体は、テーパー部の内側を横切る
    ブリッジ部を有し、 前記他方の型体は、筒体のテーパー部内を貫通してこの
    テーパー部の先端開口から突出する突出部を有するとと
    もに、この突出部にブリッジ部が収まるスリット部を有
    し、 前記一方の型体の圧縮部は、前記他方の型体の突出部が
    挿脱自在に嵌合される孔部を有するとともに、前記他方
    の型体のスリット部に挿脱自在に嵌合される突片部を有
    することを特徴とする請求項1記載の射出成形用金型装
    置。
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