ここで、ゴルフのドライバーやパター、或いは野球のバットを模した打具を回転させて、実際に、打具がボールを打つ動作をおもちゃで実現できれば、これに接する子供の科学的好奇心を大いに刺激することができ、情操教育上の効果も期待できる。
また、単に、打具がボールを打つだけでなく、目的の場所まで自由に移動できる自走おもちゃであれば、実際のゴルフを模したリアリティのあるゴルフゲームを楽しむこともできる。
本考案は、上記の着想に基づくものであり、子供の科学的好奇心を刺激することができ、リアリティのある球技を楽しむことのできる球技用おもちゃを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本考案は、おもちゃ本体に形成された円柱体(21)に回転可能に外嵌され、駆動モータによって駆動方向に回転駆動される円環状の回転盤(40)と、前記円柱体の中心軸からずれた位置に形成された受入れ穴(22)に、自らの取付軸(410)が収容されることで、前記受入れ穴に回転可能に保持される装着部材(41)と、前記装着部材を、駆動方向とは逆向きの付勢方向に付勢する付勢部材(42)と、前記装着部材に装着され、前記装着部材と一体的に回転する打具(50)と、を有して構成され、前記回転盤に設けられた当接片(43)が、前記打具に形成されたスライド部(500)に当接されることで、前記打具が、駆動方向に所定角度だけ回転駆動され、その後、前記当接片の前記スライド部との当接状態が解除されることで、前記打具が、前記装着部材と共に、付勢方向に回転されるよう構成されている。
図14は、この考案の動作原理を説明する図面である。例えば、回転盤が時計方向(駆動方向)に回転すると、これに対応して当接片も時計方向に回転する。そして、当接片が打具のスライド部に当接された後は、当接片が打具を押圧することで、打具も装着部材と共に時計方向に回転される。
装着部材の回転中心は、円柱体の中心軸からずれているので、その後、当接片は、スライド部を径方向外向きにスライドすることになり、打具が所定角度だけ回転すると、当接片とスライド部との当接状態が解除され、その結果、打具は、付勢部材の付勢力に基づいて、装着部材と共に反時計方向(付勢方向)に勢い良く回転する。そのため、振り下ろされた打具によってボールを飛ばすことができる。
当接状態が解除されるまでの回転角度は、スライド部の径方向の長さによって決定されるので、スライド部の長さを適宜に設定することによって、打具の振り下ろしスピードを変えることができる。例えば、複数種類の打具を付け替えることで、球の飛びの違いを体験でき、実際に近いゲーム性を再現できる。
スライド部は、打具の一箇所に設けることに限定されず、打具の複数の箇所に設けても良い。この場合には、装着部材に対する取付け姿勢を変えて、機能するスライド部を変更することで、打具の動作態様を変更することができる。例えば、打具を振り下ろすだけでなく、打具を振り上げて回転させることもでき、ピッチングマシンを模した動作を実現することもできる。また、複数のスライド部について、各々の長さを変えることで、付勢力による回転速度を変えることも容易である。
前記付勢部材は、好ましくは、コイルスプリングや板バネなどで構成される。コイルスプリングを使用する場合には、これを、装着部材の取付軸に外嵌して保持するのが好ましい。そして、コイルスプリングの一端が、装着部材に保持されると共に、コイルスプリングの他端が、おもちゃ本体に保持されるのが効果的である。
また、前記装着部材は、好ましくは、底面と周縁側面とで筒状に形成された本体部と、前記本体部の底面から背面側に突出する前記取付軸とを有して構成され、前記打具は、前記周縁側面に形成された取付溝によって保持されている。ここで、取付け溝は、一つでも良いが、打具の二箇所で保持することで、取付け安定度が上げることができる。本体部が円筒状に形成される場合には、周縁側面の径方向二箇所で保持するべきである。
なお、本考案を自走式とするためには、回転中心軸が床面に直交しないよう、走行本体部(20A)から露出する一対の回転体(34R,34L)と、前記回転体と協働して前記走行本体部を支持する回転可能な支持体(35)と、前記一対の回転体を各々回転させる正逆回転可能な一対の駆動モータ(30R,30L)と、を有して構成され、前記各駆動モータが、前記回転中心軸を回転中心として、前記各回転体を独立して駆動するよう構成するべきである。
この構成によれば、一方の回転体の正転と、他方の回転体の逆転によって、前進運動及び後退運動が可能となる。また、一対の回転体を、同一方向に正転又は逆転させれば、おもちゃ全体が回転する。更にまた、停止状態の一方の回転体を旋回中心とする旋回運動も可能となる。
なお、支持体は、走行本体部を支持する構造であれば、回転駆動させても、回転駆動させなくても良く、例えば、支持体を、回転体と同一構成にすることも考えられる。但し、回転駆動可能な支持体を設ける場合であっても、走行おもちゃを前進又は後退させる際には、自由回転状態となるよう設定すべきである。
本考案の回転体は、走行本体部から露出していれば、その形状を問わないが、好ましくは、図12(a)や図12(b)に例示するように、球体状又は突出軸状に形成される。但し、いずれの場合も、露出方向に延びる回転中心軸は、床面と鋭角を形成する。なお、特に限定されるものではないが、図12(b)に示すように、回転体の露出方向が略ハ字状に広がるよう回転体を配置すると、円滑な回転が実現されると共に、おもちゃを高速で回転又は旋回させても横転しにくいなど、安定した走行動作が可能となる。
一対の回転体は、図12(b)に図示するように、おもちゃの直進方向(前進方向又は後退方向)に直交する対称位置に配置するのが好ましい。ここで、各回転体の2つの回転中心軸は、図12(b)に示すように、互いに平行で、且つ、おもちゃの直進方向に直交する直交線上に位置するのが好ましい。但し、図12(c)に例示するように、2つの回転中心軸が非平行状態となる実施態様も、特に禁止されるものではない。図12(c)の実施態様では、一対の回転体が、前進方向に向けて突出しているので、直進運動を阻害するが、回転運動には特に支障がない。
図13は、本考案の動作を例示した図面である。図13(a)に示すように、回転体をハ字状に傾斜して配置すると、回転体の先端面と床面とが、点接触ないし線接触をするので、左側の回転体を時計方向に正転させると共に、右側の回転体を反時計方向に逆転させると、おもちゃが紙面に直交して前進する。逆に、左側の回転体を反時計方向に逆転させると共に、右側の回転体を時計方向に正転させると、おもちゃが紙面に直交して後退する。なお、本考案の正転方向と逆転方向は、必ずしも、時計方向と反時計方向に対応させる必要はなく、逆の対応関係でも良いのは勿論である。
図13(b)に示すように、2つの回転体を時計方向に回転させると、2つの回転体の床接触点を結ぶ離間距離を回転直径として、おもちゃ全体が時計方向に回転する。逆に、2つの回転体を反時計方向に回転させると、おもちゃ全体が反時計方向に回転する。
図13(c)に示すように、例えば、右側の回転体を回転させない状態で、左側の回転体を時計方向に回転させせると、2つの回転体の床接触点を結ぶ離間距離を回転半径として、おもちゃ全体が時計方向に旋回する。逆に、左側の回転体を反時計方向に自転させると、2つの回転体の離間距離を回転半径として、おもちゃ全体が反時計方向に旋回する。
本考案では、各回転体と床面との適度な摩擦状態を実現するよう構成するのが好ましい。具体的には、床面との接触面は、ゴム材などの弾性体で構成するのが好ましい。
前記したように、本考案では、支持体を回転駆動することを禁止するものではないが、自由回転する球体で構成するのが簡易的である。また、本考案の支持体は、一個又は複数個配置されるが、好ましくは、配置個数を一個とすべきである。この場合には、一対の回転体と支持体とは、床面において、支持体を頂点とする略二等辺三角形を形成するよう配置するのが好適である。
なお、駆動モータは、特に限定されないが、電池などの直流電圧で回転する直流モータが好適である。また、駆動モータは、有線又は無線によって遠隔操縦されるよう操作器と接続されていると、複数のおもちゃを対戦させて球技を競うこともでき効果的である。
上記した本考案によれば、子供の科学的好奇心を刺激することができ、また、自走させることもできるので、リアリティのある球技を楽しむことのできる球技用おもちゃを実現できる。
以下、図面に基づいて、本考案の好適な実施形態を説明する。実施形態の球技用おもちゃは、前進・後退・回転・旋回の各動作を組み合わせて任意の方向に移動できると共に、ゴルフのドライバーやパター、或いは野球バットなどを模した打具を使用して球技を競うこともできる球技用の自走ロボットである。
図1には、ロボット10と操作器80とが示されており、クラブを模した打具50が、発泡スチロール製のゴルフボール90を打つ状態を示している。なお、このロボット10は、図1の紙面において、左下方に向けて前進するので、本明細書では、図1の左下方を前方とし右上方を後方とする。
ロボット10と操作器80とは共にプラスチック製であり、操作器80には2つの電池84が配置され、ロボット10と操作器80は、リード線81によって接続されている。
操作器80には、3つの操作スイッチ82R,82L,83が設けられている。ここで、ロボットの後方から前進方向に見て、右側の操作スイッチ82Rを前方に押すと、ロボット10が右旋回し、後方に押すとロボット10が左旋回するようになっている。同様に、ロボットの前進方向に見て、左側の操作スイッチ82Lを前方に押すと、ロボット10が左旋回し、後方に押すとロボット10が右旋回するようになっている。
また、左右2つの操作スイッチ82R,82Lを同時に前方に押すと、ロボット10が真っ直ぐに前進し、2つの操作スイッチ82R,82Lを同時に後方に押すと、ロボット10が真っ直ぐに後退するようになっている。
一方、中央の操作スイッチ83を前方に押すと、ロボット前面に設けたドーナッツ歯車(円環状の回転盤)40が、ロボットを正面から見て時計方向に回転するようになっている。すると、ドーナッツ歯車40の突起(当接片)43が回転移動して、やがて打具50に当接され、当接状態のまま打具50を途中まで押し上げた後に、当接状態が解除されることで、打具50が反時計方向に振り下ろされるようになっている。なお、この打撃機構については、更に後述する。
このゴルフロボット10は、図13に示すバリエーションに富んだ独特の走行動作を実現する走行本体部20Aと、走行本体部20Aに載置された遊技機構部20Bとに大別されて構成されている。
図2及び図3に示す通り、走行本体部20Aから床面に向けて、3つの車球34L,34R,35が露出して突出している。走行本体部20Aの前方には、駆動回転される一対の走行車球(回転体)34R,34Lが配置され、後方には、自由回転する球体の支持車球(支持体)35が配置されている。ここで、支持車球35は、遊技機構部20Bの下面に設けられた保持円盤(不図示)に、回転可能に保持されている。
一対の走行車球34R,34Lは、ロボット10の直進方向に直交する対称位置に配置され、支持車球35と共にロボット10を安定して支持している。なお、これら3つの車球34R,34L,35は、床面との接触点において、支持車球35を頂点とする二等辺三角形を形成している。
ところで、走行本体部20Aには、前記した一対の走行車球34R,34Lに対応して、一対の駆動モータ30R,30Lと、一対のクラウンギア33R,33Lとが配置されている(図3)。ここで、駆動モータ30Rは、操作スイッチ82Lの操作に応答して、その回転軸31Rが正転又は逆転する。同様に、駆動モータ30Lは、操作スイッチ82Rの操作に応答して、その回転軸31Lが正転又は逆転する。
駆動モータ30R,30Lの前方側において、回転軸31R,31Lには、ピニオンギア32R,32Lが各々嵌合されている。そして、駆動モータ30R,30Lの回転は、ピニオンギア32R,32Lからクラウンギア33R,33Lを経由して走行車球34R,34Lに伝達されるようになっている。
以下、この伝達機構を説明するため、走行車球34R,34Lとピニオンギア32R,32Lの具体的構成と、これらの走行本体部20Aへの取付け構造を説明する。なお、一対の部材は、同一構成であるので、煩雑さを避けるため、添え字R,Lの表記を省略することがある。
図7に示す通り、走行車球34は、回転中心軸340を有する略円錐形に構成されている。この走行車球34は、図12(b)に示す典型例2の範疇に入る構成であり、回転中心軸340が略ハ字状に広がるよう2つの走行車球34R,34Lが配置されている。そして、略円錐形の先端には、弾性体341が嵌合され、床面との適度な接触面積と接触抵抗とを実現している。
回転中心軸340は、走行本体部20Aに形成された円筒部200に挿入された後、その基端部にネジSCがねじ込まれることで、円筒部200の内部で、回転自在に保持されている。また、走行車球34における円錐形の基端部342には、その外周に係合溝GVが規則的に形成されている。
クラウンギア33は、小径部330と大径部331とが同心状に連設されて構成されている。一方、走行本体部20Aには、円筒部200に近接する後方位置に小円柱部201が形成され、この小円柱部201に、ピンPNが圧入されている。そして、クラウンギア33の中央開口に、ピンPNが遊嵌されることで、クラウンギア33が回転自在に保持されている。なお、小円柱部201にピンPNを圧入させる構造に代えて、ピンPNと同一高さの取付け軸を一体形成しても良いのは勿論である。
クラウンギア33の小径部330の外周には、係合歯PRが形成され、この係合歯PRが、走行車球34の係合溝GVに歯合することでギア接続が実現されている。一方、クラウンギア33の大径部331の外周には、軸方向に突出する歯列TOが形成されている。そして、この歯列TOがピニオンギア32と歯合することで、ギア接続が実現されている。
したがって、操作スイッチ82R,82Lの操作に応答して、駆動モータ30L,30Rが正転又は逆転すると、回転軸31の回転が、ピニオンギア32→クラウンギア大径部の歯列TO→クラウンギア小径部の係合歯PR→走行車球34の係合溝GVの経路を経て伝達され、その結果、走行車球34(特に、弾性体341)が、時計方向又は反時計方向に回転することになる。
図11は、操作スイッチ82R,82Lと駆動モータ30R,30Lとの接続関係を示す回路図であり、各スイッチがOFF状態である定常状態(停止状態)を示している。図示の通り、右側の操作スイッチ82Rが、進行方向左側に配置された走行車球34Lを制御し、左側の操作スッチ82Lが、右側に配置された走行車球34Rを制御するよう接続されている。また、操作スイッチ82R,82Lから手を離すと、自動的に図示の停止状態に戻るようになっている。
この駆動回路において、右側の操作スイッチ82Rを前方に押すと、正転用の可動片MfがF端子に接続されることで、進行方向左側に配置された駆動モータ30Lに、図示左向きの駆動電流(正転電流)が流れる。その結果、左側の走行車球34Lだけが、平面視で時計方向に回転することで、右側の走行車球34Rを中心にして、ロボット10が時計方向に旋回する(図13(c)参照)。
逆に、右側の操作スイッチ82Rを後方に押すと、逆転用の可動片MrがR端子に接続されることで、進行方向左側に配置された駆動モータ30Lに、図示右向きの駆動電流(逆転電流)が流れる。その結果、左側の走行車球34Lだけが、平面視で反時計方向に回転することで、右側の走行車球34Rを中心にして、ロボット10が反時計方向に旋回する。
一方、左側の操作スイッチ82Lを前方に押すと、逆転用の可動片MrがR端子に接続されることで、進行方向右側に配置された駆動モータ30Rに、図示右向きの駆動電流(逆転電流)が流れる。その結果、右側の走行車球34Rだけが、平面視で反時計方向に回転することで、左側の走行車球34Lを中心にして、ロボット10が反時計方向に旋回する。
逆に、左側の操作スイッチ82Lを後方に押すと、正転用の可動片MfがF端子に接続されることで、進行方向右側に配置された駆動モータ30Rに、図示左向きの駆動電流(正転電流)が流れる。その結果、右側の走行車球34Rだけが、平面視で時計方向に回転することで、左側の走行車球34Lを中心にして、ロボット10が時計方向に旋回する。
続いて、ロボット10で球技遊びをする際に使用される打具50について説明する。図8は、好適な打具50Aの一例を図示したものである。図示の通り、この打具50Aは、全体として薄板状に形成され、基端部に鉤状のロック部KYが形成され、先端部に打撃部HITが形成されている。そして、ロック部KYから打撃部HITに至る側面の途中に、所定長さの第1スライド部SL1が形成されている。
第1スライド部SL1の反対側面には、第2スライド部SL2と、肉厚係止部FATと、停止部SPとが形成されている。ここで、第2スライド部SL2と肉厚係止部FATの離間距離は、ロック部KYと第1スライド部SL1の離間距離とほぼ同一である。また、第1と第2のスライド部SL1の軸方向長さは、この打具50Aがコイルスプリング42の付勢力によって回転される時の回転速度を規定している。
図示の打具50Aは、第1と第2のスライド部SL1,SL2を有しているので、同一の打具50Aを二通りに使用することができる。具体的には、ゴルフのドライバーとして使用できるだけでなく、図示の状態から上下反転させると、ピッチングマシンの投球アームなどとして使用することができる。一方、第1スライド部SL1の軸方向長さを短くすると共に、打撃部HITの形状を変更すれば、ゴルフのパターを構成することができる。
なお、第2スライド部SL2と肉厚係止部FATとは、必ずしも必須ではないので、省略することもできる。図1には、肉厚係止部FATが存在せず、ロック部KYと、第1スライド部SL1とを有する打具50Bが図示されている。この打具50Bは、第1スライド部SL1の実質長さが短い分ので、付勢回転時における回転速度が遅い。したがって、打具50Bを使用すれば、パターのような動作を再現することが可能となる。
続いて、遊技機構部20Bの構成を説明する。図1や図4に示す通り、ロボットの後方には、打撃モータ44が配置され、打撃モータ44の回転が一連のギア機構49を経由して回転円盤たるドーナッツ歯車40に伝達されるようになっている。
打撃モータ44は、モータ学習用に開発された組立式の教材であるが、直流モータであれば一般市販のモータを使用しても良い。なお、この打撃モータ44は、児童でも容易に組立できるよう、やや大型化されているため、これをロボット後方に配置することで、ロボット全体の重心位置の安定を図っている。
この実施形態では、操作器80の中央の操作スイッチ83を前方に押すと、打撃モータ44が、後方から見て時計方向に回転し、操作スイッチ83から手を離すと回転が停止するよう構成されている(図11参照)。
図4に示す通り、打撃モータ44の回転を伝達するギア機構49は、打撃モータ44の回転軸45と一体回転するピニオンギア46と、ピニオンギア46に歯合する大径ギア47Aと小径ギア47Bがシャフトで連結された組合せギア47と、小径ギア47Bと歯合する二段ギア48と、ドーナッツ歯車40とで構成されている。図示の通り、二段ギア48の大径部に、組合せギア47の小径ギア47Bが歯合され、二段ギア48の小径部に、ドーナッツ歯車40が歯合されている。
ドーナッツ歯車40は、全体として円環状の回転盤であり、径方向外向きに歯合溝が形成されると共に、円環の一部には、軸方向に突出した突起43が形成されている。この突起43は、打具50を押し上げる当接片として機能する。
ところで、おもちゃ本体には、前方に向けて突出された円柱体21が形成されており、この円柱体21に、円環状のドーナッツ歯車40が回転可能に外嵌されている。図9に示す通り、円柱体21には、その中心軸から下方にずれた位置に、略円柱形状の受入れ穴22が形成されている。また、受入れ穴22に連続して、水平方向に左向きに延長溝220が形成されている。延長溝220は、コイルスプリング42の終端部EDを受入れる部分であり、詳細には、延長溝220の内部に形成された係止穴に、コイルスプリング42の終端部EDを受け入れるようになっている(図2、図9参照)。
円柱体21には、受入れ穴22の直ぐ上に、係止突起P1が前方に突出して形成されている。また、円柱体21の最外部には、頂点位置から時計方向に少しずれた位置に、突条P2が前方に突出して形成されている。
受入れ穴22には、コイルスプリング42が外嵌された状態の装着部材41が、回転可能に保持されている。ここで、装着部材41は、打具50を確実に保持して、一体的に打具50を回転させる部材である。
図10に示す通り、装着部材41は、底面BOと周縁側面SDとで略円筒状に形成された本体部410と、本体部410の底面BOから後方に突出する取付軸411とを有して構成されている。底面BOは、詳細には、三段底の構造を有しており、最深部が取付軸411に連続している。また、三段底の中間底には、貫通穴HOが形成されている。なお、底面BOの背面側には、装着部材41の不必要な回転を防止するための連結部JKが形成されている。
装着部材41の周縁側面SDは、直径線上に二箇所が切り欠かれて、第1と第2の係止溝51,52が形成されている。第1係止溝51では、周縁側面SDが完全に切り欠かれることで、本体部410の薄肉部が露出するので、打具50に形成されたロック部KYが、薄肉部に確実に係止可能となる。また、第1係止溝51には、打具50の肉厚係止部FAT(図8参照)が圧入されることで、反転状態の打具50Aが確実に保持される。
一方、第2係止溝52には、フランジFGによって補強された、幅狭の通過溝PSが形成されている。この通過溝PSは、打具50Aに形成された第1スライド部SL1や第2スライド部SL2の一部を受入れて、打具50Aを確実に保持する機能を果たしている。
この実施形態では、付勢部材としてコイルスプリング42を採用している。コイルスプリング42は、コイル本体部BDYと、軸方向に延びる始端部STと、径方向に延長された後、軸方向に延びる終端部EDとで構成されている(図9)。そして、コイル本体部BDYが、装着部材41の取付軸411に外装された状態で、始端部STDが、装着部材41の貫通穴HOに挿入されて保持される一方、終端部EDは、受入れ穴22の延長溝220に挿入されて保持される。このように、コイルスプリング42の取り付け状態が安定しているので、装着部材41に対して確実な付勢力を及ぼすことができる。なお、付勢力は、正面視において反時計方向に作用する。
先に説明した通り、装着部材41の背面に連結部JKが形成されている一方、円柱体21には係止突起P1が形成されている(図9)。したがって、例えば、悪戯好きで好奇心に富む子供が、無理に、装着部材41を時計方向に回転させようとしても、係止突起P1がストッパとして機能して、コイルスプリング42が意味もなく劣化されることが防止される。
続いて、このロボット10の使用例を説明する。例えば、ゴルフゲームを楽しむ場合には、操作器80の操作スイッチ82L,82Rを適切にコントロールして、ロボット10をゴルフボール90に近づけ静止させる。なお、この状態では、目的地との距離や角度に応じた最適な打具50を選択され、これが装着部材41に装着されている。
そして、操作器80の操作スイッチ83を押すと、打撃モータ44が駆動を開始する。図4に示す通り、打撃モータ44は、後方から見て時計方向に回転するが、一連のギア機構49が各々、図示の方向に回転し、ドーナッツ歯車40は、正面視で時計方向に回転する。
すると、ドーナッツ歯車40に形成された突起43が、打具50の第1スライド部SL1が当接されて、突起43がスライド部SL1を滑りつつ打具50を押し上げる。そして、この押し上げ動作に対応して、コイルスプリング42は、付勢力を増加させることになる。
ここで、突起43の回転中心と、打具50(スライド部SL1)の回転中心とがずれているので、互いの回転半径の違いから、やがて、突起43とスライド部SL1との当接状態が解消される。なお、図5は、限界位置まで打具が押し上げられた状態を一点鎖線で示している。
突起43とスライド部SL1の当接状態が解消されると、それまで蓄えられていたコイルスプリング42の付勢力が一気に発揮されることになり、打具50が勢い良く振り下ろされて、ゴルフボール90を打撃する。なお、一対の走行車球34R,34Lが、ハ字状に左右に広がっておもちゃ全体を支えているので、重いゴルフボールを打撃した場合でも、その反動でおもちゃが横転するおそれはない。
その後は、ゴルフボールの落下位置までロボット10を進め、目的位置にゴルフボールを沈めるまで、同様の動作を繰り返す。なお、遊び方は適宜であり、子供の限りない想像力に基づいて各種の遊び方が期待される。例えば、子供にとっては、振り下ろすゴルフスイングに限定される必要はないので、図6に示す、別の遊び方をしても良い。
この場合には、先ず、装着部材41を自然状態(図2参照)から時計方向に90度回転させた状態で、打具50の装着姿勢を前後反転させる。具体的には、装着部材41の第1係止溝51に打具50の肉厚係止部FATを圧入されると共に、第2スライド部SL2の一部を第2係止溝52に挿入して、打具50を装着部材に装着する。なお、この装着作業に先立って、装着部材41を時計方向に90度回転させるのは、打具50を装着させた状態では、打具50が円柱体21の突条P2を通過できないためである。
以上の準備ができれば、打撃モータ44の回転を開始させる。すると、やがてドーナッツ歯車40の突起43が、打具50の第2スライド部SL2(図6で打具50の下部に位置する)に当接されて、突起43がスライド部SL2を滑りつつ打具50を時計方向に回転させる。
この場合も、突起43の回転半径と、スライド部SL2の回転半径の違いから、やがて、突起43とスライド部SL2との当接状態が解消される。図6は、限界位置まで打具50が回転された状態を一点鎖線で示している。
当接状態が解消されると、コイルスプリング42の付勢力によって打具50が反時計方向に付勢回転されて、ロボット頭部に載置されたボール90を打撃することになる。図1に現れるようにロボット頭部には適宜な凹部が形成されている。なお、付勢回転された打具50は、打具50の停止部SPが、円柱体21の突条P2に当たることで回転が停止される。
なお、ここでは、ゴルフゲームに関連して図6を説明したが、常識的に評価すれば、図6の動作は、ピッチングマシンの投球アームとしての動作となる。したがって、ピッチングマシンとして使用する場合には、ロボットが投げたボール90を、児童が、おもちゃバットで打つことになる。
以上の通り、このロボットは、各部材が独特の動作をして、各種の遊びを実現できるので、子供の想像力や好奇心を効果的に刺激できると期待される。