JP3114373U - 人工浮魚礁 - Google Patents

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Abstract

【課題】外洋手前の浅い沿岸で水深の深さに拘らず水底から海面下数mまでの全ての水深位置で海草・海藻類を育成でき、水魚の産卵、水底から中層までに浮遊する魚種の全てに魚礁となる設備としての人工浮魚礁を得ることである。
【解決手段】人工浮魚礁A1 は、所定幅(B)で長尺状(L)の網2に所定間隔で複数の浮体3を取付けた礁体1と、連結ロープ又はワイヤ4により連結した重り5から形成され、礁体1を設置した位置でその上端が海面から所定深さとなり海底付近から海面近くまで網2を連続状に設けることにより、水深の全深さ領域に天然海草・海藻を育成し、魚礁を形成する。
【選択図】図1

Description

この考案は、沿岸での海面の深度に拘らず集魚効果が高く、天然海草・海藻類を育成し得る人工浮魚礁に関する。
日本近海の海岸は、場所によって海底が全て岩場で複雑な凹凸形状であったり、延々と砂場が続く所等その環境条件は様々であり、海草・海藻類の育成に適さない場所等を利用して育成に適合する魚礁を形成したり、又人工海草装置を設置する等の提案が種々試みられている。特定の場所に集魚するためには、その場所に海草・海藻類を育成し、その海藻類を食べる貝類が付着し、又魚が卵を産み、幼魚が育つ、そして小魚が育つと小型魚を餌とする魚類が集魚するという食物連鎖の場が形成される。
上記集魚効果を増大させる試みの1つとして、特許文献1の「中層浮魚礁」が公知である。この中層浮魚礁は、礁体本体と、礁体本体の上部及び下部の少なくとも一方に浮力体を数珠状に配した補助礁体とにより構成されている。礁体本体は、複数個の枠を設けて外周に網を張って中空の柱状体として形成され、枠自体を中空密閉型とし、球状のプラスチックの浮力体を付けて必要な浮力を得るようにしている。網は合成繊維の糸やロープ等で構成され、一辺が10cm又は20cm以上の網目が好ましいとされている。
又、下部補助礁体は浮力体を数珠状に配して連結ロープで連結したものから成り、浮力体は集魚効果を高めるため球形が好ましく、その下端は係留ロープで海底のアンカに連結され係留されている。このような礁体本体と下部補助礁体の2段の礁体を連結した中層浮魚礁は、上部の礁体本体に集まって来る小魚を中層の下部補助礁体に集まる中深度魚種と大深度魚種に捕食させて生じる食物連鎖による集魚効果を得るようにしたものである。
一方、魚類の産卵と天然海草・海藻類の育成を行う試みの1つとして特許文献2の「人工海藻装置」が知られている。天然海草・海藻類の育成をする人工海草装置は、海底に沿って直線上に配置した棒状の保持部材に適宜の間隔で保持された人工海草により構成され、人工海草は樹脂フィルム又は葉状体を2つ折りにした中央部を保持具により保持部材に取付けられている。又、沿岸藻場の水質浄化を図る人工海藻装置として、樹脂フィルムによる葉状体とその上部に紐状体を取付けたものも開示されている。
しかし、特許文献1の「中層浮魚礁」は水深1000mのような深い外洋に設置することを主として想定したものであり、礁体上端は水面下70mあるいは100m以上と深く、100m以下の浅い海を対象とした魚礁ではない。このため、上方の魚礁本体と下部の補助礁体から魚礁を形成する際に、合計数10m程度の礁体を連結ロープを長く垂らして1000m水深下のアンカに連結したものであり、外洋での100m付近の中層魚を集魚することをねらったものである。従って、礁体本体は補助礁体とは不連続であり、かつ補助礁体は球状の浮体を数珠状に連結したに過ぎず、100m以下の浅い海ではその海底から中層に浮遊する中層浮魚礁の魚礁としては適さない。
特許文献2の「人工海藻装置」は、沿岸藻場に産卵する魚類や天然海草・海藻類を対象とし、その浅い沿岸の海底に沈める形式の人工海藻装置であり、柱状幹体や柱状体、板状体にそれぞれ海草や海藻類が育成されても、海底付近だけであり、水深が深くなれば海草・海藻類は生育され難くなる。従って、水深に関係してその効果は失われ、水深の浅い所から100m以下までの中程度の深さの海のどこにでも設置できる訳ではない。
特開平8−280295号公報 特開2001−145433号公報
この考案は、上記の問題に留意して、外洋手前の浅い沿岸で水深の深さに拘らず水底から海面下数mまでの全ての水深位置で海草・海藻類を育成でき、水魚の産卵、水底から中層までに浮遊する魚種の全てに魚礁となる設備としての人工浮魚礁を提供することを課題とする。
この考案は、上記の課題を解決する手段として、所定幅で長尺状の網に、その長手方向の所定間隔で複数の浮体を取り付けて礁体を形成し、この礁体の下方に連結ロープ又はワイヤを介して重りを連結し、上記礁体を海中に設置した位置でその上端が海面から所定深さとなる連続長さに設定した人工浮魚礁としたのである。
上記の構成としたこの考案の人工浮魚礁によれば、設置される場所の海面の水深の全深さ領域に亘って礁体の網に海草・海藻類を育成でき、このため全深さ領域を海底から中層、上層の種々の深さに生息する各種魚介類に対する浮魚礁を形成することができる。この人工浮魚礁は、1組だけでなく、一般には複数組のものを対象とする所定範囲の沿岸に沿って設置すれば、設置されたその沿岸が魚礁となって魚介類に良好な生育環境を与えることとなる。
人工浮魚礁として設置する場合、設置される位置の海底の地形によって海面からの水深は種々異なるから、予め設置する位置毎にその水深をソナー等の探査機により調査しておくのが好ましい。位置によって大きく海底が窪んだ場所や突上げられた形状の場所など地形は種々変化しているため、海面から所定深さの礁体の網の上端から海底付近まで連続長さの帯状の網ができるだけ魚礁として有効に活用されるように長さを設定する必要があるからである。但し、複数組の網の上端位置が海面から大略揃っていればよく、上端を正確に揃える必要はない。
設置する位置の水深が調査されると、その水深におよそ適合する網長さの礁体を予め用意しておき、その礁体を連結ロープで結んだ重りと共に所定位置に投下して設置する。所定の期間が経過すると深さ方向に連結する帯状の網が全深さに亘って天然海草・海藻、貝類が付着すると浮魚礁が形成されることとなる。
又、もう1つの解決手段として、所定幅で長尺状の網にその長手方向の所定間隔で複数の浮体を取付けた半礁体を、互いに長手方向に十字状に直交するように組込んで礁体を形成し、半礁体の外端を挟んで各半礁体の網の直交状態を保持する保持リングを礁体の長手方向の適宜間隔位置に設け、この礁体の下方に連結ロープ又はワイヤを介して重りを連結し、上記礁体を海中に設置した位置でその上端が海面から数m程の所定深さとなる長さに設定した人工浮魚礁とすることもできる。
このような構成を採用した場合、長尺帯状の網は海面の所定深さから海底付近まで十字状の2枚網が設置されることとなるため、網の設置密度が増大し、魚礁としての効果が倍増する。
以上のように、この考案の人工浮魚礁は、長尺状の網に浮体を設けた礁体と連結ロープ又はワイヤで連結した重りとから成り、礁体長さを海面下所定深さから海底まで連続の長さに設定したから、海底から海面近くまで連結する礁体の網に天然海草・海藻が育成され、海底・中層・表層に生息する各種魚貝類の浮魚礁として有効に利用できるという効果を奏する。
以下、この考案の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は第一実施形態の人工浮魚礁A1 の外観斜視図である。図示のように、人工浮魚礁A1 は、所定幅(B)で長尺(L)状の網2に、その長手方向に所定間隔で複数の浮体3を設けて礁体1を形成し、その下方に連結ロープ4を介して重り5を連結したものである。網2は、耐水性、耐食性の高い、高強度の繊維、例えば炭素繊維、ナイロン、テトロンやビニロン等の樹脂繊維、麻、木綿等の天然繊維を用いて編んだ太い糸を用いて、網目の一辺が設置位置の水深によって3cm〜10cm、あるいは10〜20cm程の大きさとして形成する。
網2の幅(B)は、例えば数10cm〜数m、長さ(L)は数m〜数10m、そして100m以下の浅い沿岸に設置することを前提として、設置される場所の年間を通じて最小の水深状態の海面から約3m程度下方に網2の上端が位置する長さに設定する。網2は、連続した長尺状に編んだものがよいが、後述するように何枚かをつなぎ合せて長尺状としてもよい。浮体3は比重0.5以下、好ましくは0.01以下の軽量合成樹脂材、例えばABS樹脂等を用いて、図示の例では棒状に形成し、これを長尺状の網の長手方向に所定間隔に設けている。所定間隔は等間隔でもよいし、不等間隔でもよい。
浮体3による浮力は、図示の例では、同一径の棒状のものを網2の幅と同じ長さにして網2の片面にリング又は網2と同一材質の糸によって取付けているが、例えば上方のいくつかの浮体3は直径が大きく、下方の浮体3より浮力が大きいものとしてもよい。上方の浮体3の浮力を大きくすることにより海流による網2の倒れをできるだけ小さくできる。連結ロープ4は、耐水性の合成繊維ロープを用いるが、高張力鋼のワイヤを用いてもよい。重り5は、コンクリートブロック又は鉄系金属塊を用いる。
なお、浮体3に対し、網2の幅中央位置に図2の一点鎖線で示す枝浮体8を連結し、浮力を増大させると共に、天然海草・海藻類の育成ができる基材として設けるとよい。枝浮体8は網幅中央でなく浮体3の両端に設けてもよいし、幅中央との3箇所に設けてもよい。又、浮体3は、図3の(a)図に示す中実形状の例を図1では用いているが、(b)、(c)図のように、中空状で両端を閉塞した形状のもの3’、3”を用いてもよい。図3の(d)図は後述する第二実施形態で用いられている浮体13を示し、この浮体13は中実円形断面のものを2つ割りしたものである。
さらに、図4に示すように、網2の長さ(L)は、設置される場所の水深に対応して設定されるから、場所毎にその長さが異なるものとする必要がある。このため、図1に示すように、適宜位置で網2に切断部6を設け、設置場所に適合する長さ分の部分網2aをリング7等の接続子で接続するとよい。切断部6を設けない場合は、予め網2の長さを例えば30m、50m、70mのように適当な長さに設定されたものを複数組用意して用いるとよい。
上記第一実施形態の人工浮魚礁A1 は、図4に示すように、海岸の所定深度の海中に複数組が適宜間隔に点在状に設置され、所定範囲の領域を人工浮魚礁域として海の環境改善に用いられる。設置間隔は、水深20〜50m程では例えば10mの格子状の交点に1つずつ、あるいは場所によってさらに密に、あるいは粗の間隔に、さらに水深が50〜100mとなれば100m間隔程度にと、その設置密度を適宜設定する。
人工浮魚礁として設置する場合、設置される位置の海底の地形によって海面からの水深は種々異なるから、予め設置する位置毎にその水深をソナー等の探査機により調査しておくのが好ましい。位置によって大きく海底が窪んだ場所や突上げられた形状の場所など地形は種々変化しているため、海面から所定深さの礁体1の網2の上端から海底付近まで連続長さの帯状の網2ができるだけ魚礁として有効に活用されるように長さを設定する必要があるからである。但し、複数組の網2の上端位置が海面から大略揃っていればよく、上端を正確に揃える必要はない。設置する位置の水深が調査されると、その水深におよそ適合する網長さの礁体1を予め用意しておき、その礁体1を連結ロープで結んだ重り5と共に所定位置に投下して設置する。
このように設置された人工浮魚礁A1 は、設置した後一定の期間を経過すると、図1の(c)図に示すように網2の網目ロープに天然海草や海藻が付着し、又、貝類も付着する。天然海草や海藻は、網2の設置位置が浅いため、網2の上端から所定の深さまで天然海草や海藻が付着し、このためその付近に魚が産卵し、幼魚が育成される。そして、網2の中層から海底付近の魚類は、海藻や網2の上端付近に生育された小魚を食べて食物連鎖が形成される。
上記人工浮魚礁A1 の網2は、海流の流れを受けても、網目が大きいため、海流に対する抵抗がなく、又浮体3はその浮力によって常に上向きに持上げられ、かつ網2の下端が連結ロープ4で重り5に連結されているため、海流によって流れ難くなっており、少し流れて上端が移動してもやがて又元の垂直状に戻ろうとする。なお、図4に示すように、網2の上端に海面状に浮べたブイ9を紐9aで連結しておけば、さらに流れ難くなる。ブイ9には目印の旗9bを設けておくとよい。
第二実施形態の人工浮魚礁A2 の外観斜視図を図5に示す。この例の人工浮魚礁A2 は、第一実施形態の人工浮魚礁A1 の網2に対応する網12が互いに十字状に直交する2枚の網から形成されている点が第一実施形態と異なる。但し、2枚の網と言っても、一方の網12は所定幅(B)で縦通するものであるが、他方の網12は、実際には所定幅(B)の半幅の2枚の網を交差位置Pで一方の網12の両面に連結部材12aにより連結して全幅の一枚の網12としている。
連結部材12aは、図6の(a)図に示すように、2枚の網12の交差位置Pに沿って長さ方向に延びる断面L字状の金具(アルミ合金等の軽合金)から成り、この金具の4本で半幅の2枚の網を挟み、ボルト、ナットで締結すると共に、これら金具で一方の網12も挟んでボルト、ナットにより締結して固定する。連結部材12aは、(b)図に示すC形リングを複数個交差位置Pで半幅の2枚の網に嵌合して加締めて連結する連結部材12b、あるいは(c)図に示すように網糸と同じ材質の紐12cで交差位置Pを縫合する手段を用いてもよい。
浮体13は、第一実施形態と同様な所定間隔で網12の幅方向に、同幅まで延びるように複数段設けている。但し、縦通する網12に沿った浮体13は網12の全幅と同じ長さとしているが、半幅の網12のそれぞれに設けた浮体13は交差位置Pで半幅長さに切断したものを半幅の網12に取付けて、略全幅となるようにしている。又、この例では、浮体13の丸棒は、前述したように、円形断面を半割りにしたものをその切断面が網12の両面に対向するように取付けたものを用いている。中空半割り断面のものを用いてもよい。
上記人工浮魚礁A2 は、十字状にクロス(交差)した2枚の長尺状の網12、12の交差状態を保持するため、網12、12の長手方向の適宜間隔位置に保持リング18が複数個設けられている。この保持リング18は、十字状の網12、12の外端4箇所で網12、12の外側辺の網に嵌合する嵌合部18aにより結合され、リングの終端は止具18bにより強固に連結されている。保持リング18は軽合金、あるいはピアノ線のような強力な針金としてもよい。
上記構成の第二実施形態の人工浮魚礁A2 によれば、網12、12が2枚十字状に組み合わされているため、網の密度が第一実施形態の場合より高く、従って天然海草や海藻、貝類の付着が増大し、集魚効果が増大する。網12、12の長さは、第一実施形態の場合と同様に、設置位置の海底の形状による水深によって設定される。又、この場合も、網12、12は海面の表層から海底まで長く延びているため、網12、12の全長に亘って、海草、海藻が付着する。従って、第一実施形態の場合よりさらに魚礁として高い適合性を有する。符号14、15、19、19a、19bは、それぞれ連結ロープ、重り、ブイ、紐、旗である。
この考案の人工浮魚礁は、浅い沿岸部の海域に設置することより魚介類の生育が難しかった沿岸でも集魚を形成するため、近海の各地に広く利用できる。
第一実施形態の人工浮魚礁の外観斜視図 同上の側面図 同上用の浮体の拡大斜視図((a)中実、(b)、(c)中空、(d)第二実施形態の人工浮魚礁浮体の半割形) 使用状態の説明図 第二実施形態の人工浮魚礁の外観斜視図 同上の交差位置の部分拡大斜視図((a)L字状金具、(b)C形リング、(c)紐) 同上の保持リングの拡大斜視図 使用状況の説明書
符号の説明
1 礁体
2 網
3 浮体
4 連結ロープ(ワイヤ)
5 重り
6 切断部
7 リング
13 浮体

Claims (4)

  1. 所定幅で長尺状の網に、その長手方向の所定間隔で複数の浮体を取り付けて礁体を形成し、この礁体の下方に連結ロープ又はワイヤを介して重りを連結し、上記礁体を海中に設置した位置でその上端が海面から所定深さとなる連続長さに設定した人工浮魚礁。
  2. 前記礁体の網の長さを、設置する海面の最小水深状態で海面下約数mから海底付近まで届く連続長さに設定したことを特徴とする請求項1に記載の人工浮魚礁。
  3. 前記長尺状の網を任意の位置で切断した切断部に必要長長さの所定幅で長尺状の網を接続子で接続し、礁体長さを所定深さに設定するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の人工浮魚礁。
  4. 所定幅で長尺状の網にその長手方向の所定間隔で複数の浮体を取付けた半礁体を、互いに長手方向に十字状に直交するように組込んで礁体を形成し、半礁体の外端を挟んで各半礁体の網の直交状態を保持する保持リングを礁体の長手方向の適宜間隔位置に設け、この礁体の下方に連結ロープ又はワイヤを介して重りを連結し、上記礁体を海中に設置した位置でその上端が海面から数m程の所定深さとなる長さに設定した人工浮魚礁。
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