JP3078691U - ゴルフクラブ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 打球面に選択的な摩耗パターンを付与するこ
とができ、長期にわたって高いスピン性能を維持するこ
とができるゴルフクラブを提供する。 【解決手段】 本考案は、打球面に水平方向に延びる溝
が形成された打球面を有するゴルフクラブに関する。溝
の上側縁は、溝の下側縁より硬くされる。溝の上側縁
は、方向性を持つ表面処理若しくは方向性を持たない表
面処理により、又は溝の下側縁を構成する材料より硬い
材料により形成することにより、選択的に硬くされる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本考案は、ゴルフクラブヘッドに係り、詳細にはその打球面の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】

ゴルフクラブを製造する際、クラブの打球面は高い摩擦を有することが望まし い。高い摩擦は、ボールを打つ際にボールにバックスピン（逆回転）を与えるう えで必要である。バックスピンがボールに与えられると、打たれたボールには高 いコントロール性が与えられ、これにより望ましい弾道（飛行軌跡）が得られる とともに、ボールの転がりも最小化される。

【０００３】 このことは、近時、クラブの打球面に水平方向の溝を形成することにより実現 されている。よく知られているように、ゴルフボールに与えられるスピンは溝の 形状、深さおよび幅に大きく影響を受ける。特に、溝の上側縁は、そこに鋭利な 形状が与えられた場合には、バックスピンを与える上で最も効果的である。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、ゴルフクラブの打球面の表面は使用中に摩耗する。この摩耗は 、繰り返されるゴルフボールへの打撃とゴルフボールの下および周囲の土壌によ り引き起こされるエロージョンが原因である。上側縁溝領域が摩耗すると、ゴル フボールにバックスピンを与える効果が減少する。

【０００５】 ゴルフクラブの打球面の寿命向上と、ボールとクラブの打球面との間のよりよ い摩擦グリップ性能を実現するために、多くの手法が試みられてきた。プラズマ 溶射により打球面に堅い表面層を形成することがなされてきた。摩耗寿命の向上 や、望ましい色合いや色調を得るために、浸炭処理や窒化処理を打球面に施すこ もなされてきた。また、セラミックス材料を火炎スプレーにより打球面に施すこ とにより耐摩耗性を高めたり、望ましい色調の打球面とすることが行われてきた 。また、打球面にサンドブラスト処理を施すことも行われてきた。さらには、予 め荒らされた表面にイオンインプランテーションを施すことも行われてきた。 Ｓｈｉｒａによる米国特許第４７６８７８７号に開示されているように、軟質 の金属マトリックスに硬質粒子を分散させた複合材層を表面に設けることも行わ れている。上記の手法を施すことにより、ゴルフクラブの打球面は、適度に均一 の態様で摩耗する。

【０００６】 本考案の目的は、改良された耐摩耗性を有する打球面を有するゴルフクラブを 提供することにある。

【０００７】 本考案の他の目的は、選択的な摩耗パターンを得ることができる打球面を有す るゴルフクラブを提供することにある。

【０００８】 本考案のさらなる目的および利点は、図面を参照して以下の記載を読むことに より、当業者には容易に理解されるであろう。

【０００９】

【課題を解決するための手段】

出願人は、クラブの打球面の溝の上側縁に選択的に処理を行うことにより、ク ラブの耐用年数を伸ばすことができることを発見した。本考案は、上側縁の硬度 が溝の下側縁の硬度より高い水平方向に延びる溝を有する打球面が設けられたゴ ルフクラブを提供する。打球面の溝の上側縁は、方向性を持つ若しくは方向性を 持たない表面処理を施すことにより、または打球面の溝の上側縁を、溝の下側縁 を形成する材料より硬い材料により形成することにより、選択的に硬くされる。 表面処理は、方向性を持っていてもよいし、持っていなくてもよい。方向性を持 たない表面処理においては、前記方法は、マスキング材料を溝の下側縁に配置し 下側縁を表面処理から保護する工程と、その後溝の上面に方向性を持たない表面 処理を行うことにより溝の上側縁を溝の下側縁より硬くする工程とを含む。

【００１０】 方向性を持った表面処理プロセスの例としては、電子ビーム、レーザビーム、 イオンインプランテーション、スパッタリング、プラズマ溶射等を用いた処理、 および種々のタングステンアーク・スパークトランスファープロセスが含まれる 。

【００１１】 方向性を持たない表面処理プロセスとしては、ＣＶＤ、メッキ、浸炭、窒化、 およびプラズマ蒸着等が含まれる。

【００１２】 本考案により上側縁が下側縁より硬くされた溝を有するゴルフクラブは、選択 的な摩耗パターンを呈する。上側縁は下側縁よりゆっくりと摩耗する。本考案に より鋭利に保たれた溝の上側縁は、現在提供されうるクラブよりも十分に長い期 間にわたって、ボールに高いスピンを与える。

【００１３】

【考案の実施の形態】

以下、図面を参照して本考案の実施の形態について説明する。

【００１４】 図１は、ゴルフクラブの打球面を示している。打球面は、この打球面に刻まれ た複数の水平方向溝を有している。本考案は、溝の上側縁により硬い表面を得る ための水平方向溝の選択的処理を含む。この選択的処理は、あらゆる形状の溝に 対して行うことができる。典型的には、溝は、角形、Ｕ字型またはＶ字型である 。

【００１５】 溝の上側縁の表面処理は、方向性を持つ表面処理および方向性を持たない表面 処理のいずれによっても行うことができる。方向性を持つ表面処理は所望の領域 に差し向けて行うことができる。方向性を持つ表面処理は、例えば、電子ビーム 、レーザビーム、イオンインプランテーション、スパッタリング、プラズマ溶射 、および様々なタングステンアーク・スパークトランスファープロセス（tangst en arc and spark transfer process ：低電圧直流源にタングステンカーバイド 製の電極を接続して、この電極をワーク表面に沿ってこすることにより一連の短 絡回路を形成して、アーク放電を用いてワークにタングステンカーバイドを移送 するプロセス）が含まれる。

【００１６】 図２は、打球面に施される典型的な方向性を持つ表面処理を示す。打球面は、 フェース部Ｃを有する。溝は上側縁Ａおよび下側縁Ｂを有する。

【００１７】 表面処理源（treatment source）は、打球面に所定の角度をもって衝突する。 この衝突角度は、打球面の上側縁Ａおよびフェース部Ｃの硬度を下側縁Ｂの硬度 より高くするように処理ができるのであれば、どのような角度であってもよい。 衝突角度は、典型的には２０度から７０度の間であり、好ましくは４５度である 。図２に示すような方向性を有する表面処理によっては、下側縁Ｂすなわち溝の 下側は処理されない。

【００１８】 溝の上側は、上側縁Ａからの距離、用いられるプロセスおよび衝突角度に依存 して処理量が異なる。しかし、上側縁Ａおよびフェース部Ｃ程には処理を受けな い。溝の底は、用いられるプロセスおよび衝突角度に依存して多少の処理を受け る。しかし、上側縁Ａおよびフェース部Ｃ程には処理を受けない。

【００１９】 方向性を有する表面処理により、溝の上側縁Ａは下側縁Ｂより硬くなる。この 硬さの相違に起因して、ゴルフクラブを使用すると、溝の下側縁は上側縁より早 く摩耗することになる。硬い上側縁は、長期間にわたって鋭利な端部を維持する 。溝の上側縁が鋭利に維持されることにより、打球面の長寿命化を図ることがで きる。

【００２０】 図３は、方向性を持たない表面処理を使用する場合を示している。方向性を持 たない表面処理は、特定の領域を処理することはできず、表面全体が処理される 。溝の縁の選択的処理が必要であるため、下側縁Ｅの表面は方向性を持たない表 面処理を行うに先だってマスキング材料Ｇにより覆わなければならない。マスキ ング材料Ｇは、溝の下側縁Ｅに表面処理が施されるのを防止する。マスキング材 料の適切な選定は、用いられる表面処理の種類に応じてなされる。スラリー状の 金属またはセラミックス材料からなる被覆等の、バリア材料（barrier material ）を適用することも可能である。また、金属またはセラミックス材料からなる帯 状体を接着することによりマスキングを行ってもよい。

【００２１】 下側縁Ｅおよびフェース部Ｆがマスキング材料により覆われた後、方向性を持 たない表面処理が施される。上側縁Ｄおよびフェース部Ｆは、選択的に硬化され る。方向性を持たない表面処理を使用することにより、溝の上側、下側および底 面にもそれぞれ異なる量の表面処理が施される。しかし、溝の上側、下側および 底には、上側縁Ｄおよびフェース部Ｆにおける量程の表面処理は施されない。

【００２２】 ＣＶＤ（chemical vapor deposition ）、メッキ、浸炭、窒化およびプラズマ 蒸着（plasma vapor deposition ）が、方向性を持たない表面処理の例である。

【００２３】 方向性を持つ表面処理および方向性を持たない表面処理とともに、表面の質を 向上させる材料（表面改質材料）を使用することができる。表面の質を向上させ る材料としては、表面に塗布されたよく分級された表面硬化化合物または表面硬 化元素をイオン爆撃（ion bombardment ）およびレーザビームを用いて選択的硬 化を行うことにより得られるものを含む。有益に使用される分級された粒子は、 １００メッシュから６００メッシュの範囲の粒度のものである。

【００２４】 粒子は、典型的には、ろう付け合金を含む炭化物、窒化物、セラミックス、ダ イアモンド、ニッケルカーボン（nickel carbon)およびシリコンカーボンボロン （silicon-carbon-boron）に類するものである。さらに、レーザービームまたは 有向加熱源を使用する場合には、これらの化合物または元素は、溶融面に差し向 けられたチューブまたはノズルを介してレーザビームまたはワークの溶融面に注 入される。従って、硬質粒子または硬化剤からなる表面改質材料は、表面処理工 程に先だって、若しくは表面処理中に与えられる。

【００２５】 図４は、本考案によるゴルフクラブの打球面の他の実施形態を示している。本 実施形態においては、溝の上側縁の選択的硬化は、互いに異なる硬度を有する材 料から構成されるとともに交互に配列された２つの部分Ｈ，Ｉにより打球面を構 成することにより達成される。

【００２６】 図５は、図４を拡大して示す図である。図５において、打球面は、交互に配置 された部分Ｈ，Ｉから作られている。部分Ｈは、溝の下側縁を含む。部分Ｉは、 溝の上側縁を含み、部分Ｈを形成する材料よりも硬い材料により形成されている 。例えば、硬い方の材料は、ロックウェル硬度（Ｃスケール）で２５から４０の 硬さを有する１７−４ＰＨのような熱処理型ステンレス鋼とすることができる。 軟らかい方の材料は、ロックウェル硬度（Ｂスケール）で７５から９０の固さを 有するＳＵＳ３０４等のステンレスとすることができる。ここに挙げた材料は、 例示のみを目的とし、本考案を限定するものではない。当業者ならば、部分Ｈ， Ｉを構成する適当な材料を選定することができるであろう。

【００２７】 部分Ｈ，Ｉは、拡散接合、ろう付け、ＨＩＰ（hot isostatic press ）、また は接着等の公知の様々な接合技術を用いてクラブフェースに組み込むことができ る。これらは、ゴルフクラブフェースに組み込むこともできるし、インサート組 立体としてゴルフクラブフェースに組み付けることもできる。 前述したような表面改質材料を、部分ＨおよびＩに組み入れることもできる。

【００２８】

【考案の効果】

以上説明したように、本考案によれば、打球面に選択的な摩耗パターンを付与 することができ、長期にわたって高いスピン性能を維持することができるゴルフ クラブを得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】打球面を示すゴルフクラブの側面図。

【図２】図１に示すゴルフクラブの断面を示す図であっ
て、方向性を持つ表面処理を示す図。

【図３】図１に示すゴルフクラブの断面を示す図であっ
て、方向性を持たない表面処理を示す図。

【図４】本考案の他の実施形態によるゴルフクラブの断
面を示す図。

【図５】図４を拡大して示す図であって、硬質および軟
質の耐摩耗性材料を交互に配した状態を示す図。

【符号の説明】

Ａ，Ｄ 上側縁 Ｃ，Ｆ フェース部 Ｇ マスキング材料

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】打球面に水平方向に延びる溝が設けられ、
   前記溝が打球面に隣接する上側縁および下側縁を有し、
   打球面が垂直となるようなアドレス位置に保持された場
   合に前記上側縁が前記下側縁の略垂直方向上方に位置す
   るようにされたゴルフクラブにおいて、 前記上側縁は表面処理により硬くされており、前記上側
   縁が前記下側縁より硬くなっていることを特徴とするゴ
   ルフクラブ。
2. 【請求項２】前記打球面の前記溝の前記上側縁は、方向
   性を有する表面処理により選択的に硬くされていること
   を特徴とする、請求項１に記載のゴルフクラブ。
3. 【請求項３】前記打球面の前記溝の前記上側縁は、方向
   性を持たない表面処理により選択的に硬くされているこ
   とを特徴とする、請求項１に記載のゴルフクラブ。
4. 【請求項４】打球面に水平方向に延びる溝が設けられ、
   前記溝が打球面に隣接する上側縁および下側縁を有し、
   打球面が垂直となるようなアドレス位置に保持された場
   合に前記上側縁が前記下側縁の略垂直方向上方に位置す
   るようにされたゴルフクラブにおいて、 前記打球面は、クラブフェースに組み込まれるとともに
   交互に配置された相対的に硬い部分と相対的に軟らかい
   部分から形成されたインサートからなり、 前記硬い部分により前記上側縁が形成されるとともに、
   前記軟らかい部分により前記下側縁が形成されているこ
   とを特徴とする、ゴルフクラブ。