JP3051872U - 電子部品焼成用脚付きセッター - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 取り扱いに便利で、間隔を隔てて簡単に積層
することができ、積層された各セッターが安定して崩れ
にくく、しかも重ね合わせたときの体積を出来る限り小
さくした電子部品焼成用セッターを提供する。 【解決手段】 セラミックス製の正方形又は長方形の平
板部１ａと、その裏面に平板部１ａの側縁に沿い固定さ
れたセラミックス製の４本の脚部２ａ、２ｂとを備え
る。平板部１ａの裏面を対向させて互いの平板部１ａが
重なり合うように位置せしめたとき、片方のセッターの
４本の脚部２ａ、２ｂと他方のセッターの４本の脚部２
ａ’、２ｂ’とが互いに当接しない位置に固定されてい
る。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本考案は、セラミックコンデンサや低温焼成セラミック多層基板などの電子部 品の焼成に用いるセラミックス製のセッターに関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来から、セラミックコンデンサ、フェライト、圧電体、ラミネートパッケー ジ等の電子部品を焼成する場合、これらの電子部品をセラミックス製のセッター に載せ、各種の加熱炉に搬送して焼成している。また最近では、Ａｌ₂Ｏ₃やガラ ス成分からなるグリーンシートの表面に導体ペーストを印刷し、これを数枚積層 した多層基板の焼成も行われている。

【０００３】 これら電子部品の焼成に用いるセッターは、アルミナ質、ムライト質、シャモ ット質、炭化ケイ素質等のセラミックス製であり、一般に正方形又は長方形の平 板で構成されている。電子部品の焼成時には、図６に示すように、複数のセッタ ーの各平板１上の４隅の角部に柱状の支持部材２を立てて積層し、この支持部材 ２により間隔を隔てて積層した各セッターの平板１上に、１つ又は複数の電子部 品（図示せず）を載せた状態で焼成を行っていた。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

上記のごとく、従来のセッターはセラミック製の平板のみからなり、可能な限 り多くの電子部品を載置するために、複数のセッターを間隔を隔てて積層し、且 つ積層時にセッターを支持する柱状の支持部材は各平板の４隅の角部に載せて立 てていた。

【０００５】 しかしながら、平板からなるセッターと、セッターの積層に用いる支持部材と がそれぞれ別体であるため、これらを別々に保管し、組み合わせなければならず 、しかも組み合わせて積層する際に不安定となりやすく、細心の注意が必要であ った。また、複数のセッターを積層して加熱炉中に搬送する場合にも、大きな振 動等が与えられると、積層した各セッターが崩れやすかった。

【０００６】 本考案は、このような従来の事情に鑑み、取り扱いに便利であり、セッターを 間隔を隔てて簡単に積層することができ、積層された各セッターが安定して崩れ にくく、しかも重ね合わせたときの体積を出来る限り小さくした電子部品焼成用 セッターを提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するため、本考案が提供する電子部品焼成用セッターは、セラ ミックス製の正方形又は長方形の平板部と、該平板部の裏面に平板部の側縁に沿 い固定されたセラミックス製の４本の脚部とからなる電子部品焼成用脚付きセッ ターである。

【０００８】 この電子部品焼成用脚付きセッターは、２つのセッターの平板部裏面を対向さ せて互いの平板部が重なり合うように位置せしめたとき、片方のセッターの４本 の脚部と他方のセッターの４本の脚部とが互いに当接しない位置に固定されてい ることを特徴とする。

【０００９】 このような位置にある各脚部の具体的な配置としては、１本又は２本の脚部が 平板部の角部に固定され、他の３本又は２本の脚部は残りの角部から少なくとも 脚部の幅だけ離れて固定されているか、又は４本の脚部が平板部の各角部から少 なくとも脚部の幅だけ離れて固定されていることが好ましい。

【００１０】 また、本考案の電子部品焼成用脚付きセッターは、平板部が主にセラミック繊 維とセラミック粒子とからなり、アルミナ含有量が７５重量％以上及びシリカ含 有量が２５重量％未満であって、通気率が５×１０^-3ｃｍ²以上であることが好 ましい。また、平板部の少なくとも電子部品を載置する表面には、アルミナ又は ジルコニアの被覆層を設けることができる。

【００１１】

【考案の実施の形態】

本考案の電子部品焼成用脚付きセッターでは、平板部に４本の脚部を固定して 設けてあるので、取り扱いが非常に便利であり、セッターを間隔を隔てて簡単に 積層することができ、しかも一旦積層された各セッターは安定していて崩れにく いため、熟練者でなくても簡単に能率的に積層作業を行うことができ、電子部品 を高い歩留りで焼成することが可能となる。

【００１２】 平板部に脚部を固定する方法としては、例えば、別々に形成した平板部と脚部 を無機接着剤で接着するか、又は平板部に穿設した穴部に脚部の先端を嵌合して 固定する方法がある。尚、無機接着剤としては、イソライト工業（株）製の商品 名イソタップ、東亜合成（株）製の商品名アロンセラミック等を使用することが できる。また、厚く形成した平板を切削加工して、平板部と脚部とを一体的に形 成することも可能である。

【００１３】 セッターの平板部には可能な限り多くの電子部品を載せる必要があるため、全 ての脚部は平板部の側縁に沿って固定することが望ましいが、特に本考案では、 ２つのセッターの平板部裏面を対向させて互いの平板部が重なり合うように位置 せしめたとき、片方のセッターの４本の脚部と他方のセッターの４本の脚部とが 互いに当接しないように、各脚部の位置を定める。

【００１４】 例えば、図１〜図３は正方形のセッターの場合であり、図１では正方形の平板 １ａの対向する側縁に沿って配置した４本の脚部２ａ、２ａ、２ｂ、２ｂのうち 、２本の脚部２ａ、２ａが平板部１ａの一側縁の両端角部に固定され、他の２本 の脚部２ｂ、２ｂは反対側縁の両端角部から脚部２ａの幅だけ離れて固定されて いる。このセッター２つを平板部１ａの裏面を対向させ、片方のセッターに対し て他方を１８０°回転すると、他方のセッターの脚部は点線で示す脚部２ａ’、 ２ａ’、２ｂ’、２ｂ’の位置に来るので、片方のセッターの脚部２ａ、２ａ、 ２ｂ、２ｂと当接しない。

【００１５】 図２のセッターでは、正方形の平板部１ａの対向する角部にそれぞれ脚部２ａ が固定され、残りの２本の脚部２ｂは他の角部から、いずれかの側縁の方向に脚 部２ａの幅だけ離れて固定されている。また、図３の場合は、４本の脚部２ｂ、 ２ｂ、２ｂ、２ｂが、いずれも正方形の平板部１ａの各角部から脚部２ｂの幅だ け離れて固定されている。これらのセッターにおいても、他方のセッターを片方 に対して９０°回転すると、他方のセッターの脚部は図中の点線で示す位置に来 るので、片方のセッターの脚部と当接することがない。

【００１６】 図４と図５は長方形のセッターの場合であり、図４では長方形の平板１ｂの対 向する側縁に沿って配置した４本の脚部２ａ、２ａ、２ｂ、２ｂのうち、前記の 図１の場合と同様に、２本の脚部２ａ、２ａが平板部１ｂの一側縁の両端角部に 固定され、他の２本の脚部２ｂ、２ｂは反対側縁の両端角部から脚部２ａの幅だ け離れて固定されている。更に、図５のセッターでは、２本の脚部２ｂ、２ｂは 平板部１ｂの角部から脚部２ｂの幅だけ離れて固定され、他の２本の脚部２ｂ、 ２ｂは角部から脚部２ｂの幅の２倍だけ離れて固定されている。

【００１７】 これらの長方形の平板部を持つセッターにおいても、片方のセッターに対して 他方を１８０°回転させると、長方形の平板部１ｂが重なり合い、且つ他方のセ ッターの脚部は図４では点線で示す脚部２ａ’、２ａ’、２ｂ’、２ｂ’の位置 に、図５では同じく脚部２ｂ’、２ｂ’、２ｂ’、２ｂ’位置に来るので、片方 のセッターの脚部と当接することがない。

【００１８】 尚、図１から図５に図示し且つ上記した脚部の配置以外にも、正方形又は長方 形の平板部を互いに９０°又は１８０°回転させ、２つのセッターの平板部が重 なるように裏面を対向させて位置せしめたとき、片方のセッターの４本の脚部と 他方のセッターの４本の脚部とが互いに当接しないように、脚部の位置を適宜定 めることができる。

【００１９】 このように脚部を配置することによって、２つのセッターの裏面を重ねたとき 互いの脚部が当接しなくなるので、重ねた状態での体積が少なく、輸送又は搬送 時の体積を少なくでき、セッターを製造する際の焼成処理の効率が高くなり、ま た製造や輸送のコストを低く抑えることができる。更に、後述するように、セッ ター表面に薄い被覆層を形成する場合には、電子部品焼成に利用しない平板部の 角部で、脚部の存在しない部分を把持できるので、簡単なディッピングによるコ ーティングが可能になる。

【００２０】 平板部及び脚部の形状や寸法は特に限定されず、焼成する電子部品の種類等に 応じて適宜定めることができる。通常の場合、平板部は縦横が９０〜１３０ｍｍ 程度の正方形又は長方形であり、厚さが５ｍｍ程度である。また、脚部は一辺の 長さ又は直径が８〜１０ｍｍ程度、高さが４〜１０ｍｍ程度の角柱状又は円柱状 である。

【００２１】 上記の形状を有する本考案の脚付きセッターでは、少なくとも平板部がセラミ ック粒子とセラミック繊維を含み、アルミナとシリカを主成分とするものである ことが好ましい。セラミック粒子と共にセラミック繊維を含むことにより、従来 の緻密質のセッターが殆ど通気性を有しないのに対して、非常に優れた通気性を 備えることができる。例えば、通気率（ＪＩＳ Ｒ ２１１５準拠）を５×１０^-3 ｃｍ²以上とすることが可能であり、このような高い通気率は特に低温焼成セラ ミック多層基板のグリーンシートの脱バインダー処理に有効である。

【００２２】 また、平板部の少なくとも電子部品を載置する表面には、アルミナ又はジルコ ニアの被覆層を設けることができる。薄い被覆層を設けることによって、低温焼 成セラミック多層基板のグリーンシート等の焼成すべき電子部品とセッターとの 反応を防止し、また使用中のセッターの表面からの粒子の脱落を無くすことがで きる。

【００２３】 上記被覆層の形成方法としては、プラズマーコーティング、ディッピング、ス プレー塗布などがあるが、セッターの通気率に大きな影響を与えないことが必要 である。そのための好ましい方法は、平均粒径０.５μｍ以下のＡｌ₂Ｏ₃又はＺ ｒＯ₂粒子を使用して懸濁液を作製し、これをセッターの表面にディッピングで コーティングした後、１１００℃以上で焼成する方法である。使用する粒子の平 均粒径が０.５μｍを越えると、セッター表面の気孔を塞ぎ、通気率を低下させ る場合がある。尚、被覆層の重量は、セッターの重量に対して１０重量％以下が 望ましい。

【００２４】

【実施例】

アルミナ質繊維（イギリスＩＣＩ社製のサフィルＨＡ、Ａｌ₂Ｏ₃９７％、Ｓｉ Ｏ₂３％、平均繊維長５ｍｍ、平均繊維径３μｍ）３０重量％と、アルミノシリ ケート質繊維（イソライト工業（株）製のイソウール、Ａｌ₂Ｏ₃４７％及びＳｉ Ｏ₂５３％、平均繊維長１ｍｍ、平均繊維長２.８μｍ）１０重量％と、Ａｌ₂Ｏ₃ 粒子（住友化学工業（株）製、平均粒径０.５５μｍ）５５重量％と、ＳｉＯ₂含 有量４０重量％のシリカゾル５重量％（固形分）を２０リットルの水に添加し、 数分間撹拌してスラリーを形成した。

【００２５】 このスラリーに固形分２重量％の高分子系凝集剤水溶液を加えて凝集させ、板 状に吸引成形した。得られた板状の成形体を１２０℃で乾燥した後、１４００℃ で２時間焼成した。得られた平板部は、縦横１２０ｍｍ厚さ４ｍｍの正方形であ り、かさ密度は０.８ｇ／ｃｍ³、通気率はλ＝０.０７ｃｍ²であった。

【００２６】 次に、上記と同じ材料を用い且つ同様の方法により、縦横５ｍｍ高さ４ｍｍの 脚部を製造した。図１に示すように、この脚部のうち２本は、平板部の一側縁の 両端角部に無機接着剤で固定し、他の２本の脚部は残りの角部から反対側縁の中 央寄りに６ｍｍだけ離れて固定した。

【００２７】 このようにして得られた脚付きセッターは、平板部の表面上に低温焼成セラミ ック多層基板のグリーンシート等を載せ、複数のセッターを間隔を隔てて簡単に 積層することができ、安定して焼成を行うことができた。また、繰り返して電子 部品を実施でき、電子部品の脱バインダー及び焼成の不良も起こらなかった。

【００２８】

【考案の効果】

本考案によれば、取り扱いが便利であって、セッターを間隔を隔てて簡単に積 層することができ、積層された各セッターが安定して崩れにくく、しかも重ね合 わせたときの体積を出来る限り小さくした電子部品焼成用セッターを提供するこ とができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の脚付きセッターの一具体例を示す裏面
図である。

【図２】本考案の脚付きセッターの別の具体例を示す裏
面図である。

【図３】本考案の脚付きセッターの別の具体例を示す裏
面図である。

【図４】本考案の脚付きセッターの別の具体例を示す裏
面図である。

【図５】本考案の脚付きセッターの別の具体例を示す裏
面図である。

【図６】従来のセッターを積層した状態を示す斜視図で
ある。

【符号の説明】

１、１ａ、１ｂ 平板部 ２ 支持部材 ２ａ、２ｂ、２ａ’、２ｂ’ 脚部

Claims (5)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 セラミックス製の正方形又は長方形の平
   板部と、該平板部の裏面に平板部の側縁に沿い固定され
   たセラミックス製の４本の脚部とからなるセッターであ
   って、２つのセッターの平板部裏面を対向させて互いの
   平板部が重なり合うように位置させたとき、片方のセッ
   ターの４本の脚部と他方のセッターの４本の脚部とが互
   いに当接しない位置に固定されていることを特徴とする
   電子部品焼成用脚付きセッター。
2. 【請求項２】 １本又は２本の脚部が平板部の角部に固
   定され、他の３本又は２本の脚部は残りの角部から少な
   くとも脚部の幅だけ離れて固定されていることを特徴と
   する、請求項１に記載の電子部品焼成用脚付きセッタ
   ー。
3. 【請求項３】 ４本の脚部が平板部の各角部から少なく
   とも脚部の幅だけ離れて固定されていることを特徴とす
   る、請求項１に記載の電子部品焼成用脚付きセッター。
4. 【請求項４】 前記平板部が主にセラミック繊維とセラ
   ミック粒子とからなり、アルミナ含有量が７５重量％以
   上及びシリカ含有量が２５重量％未満であって、通気率
   が５×１０^-3ｃｍ²以上であることを特徴とする、請求
   項１〜３のいずれかに記載の電子部品焼成用脚付きセッ
   ター。
5. 【請求項５】 前記平板部の少なくとも電子部品を載置
   する表面にアルミナ又はジルコニアの被覆層を有するこ
   とを特徴とする、請求項１〜４のいずれかにに記載の電
   子部品焼成用脚付きセッター。