JP3016118B2 - 高耐食性表面処理鋼板とその製造方法 - Google Patents

高耐食性表面処理鋼板とその製造方法

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JP3016118B2
JP3016118B2 JP7110591A JP11059195A JP3016118B2 JP 3016118 B2 JP3016118 B2 JP 3016118B2 JP 7110591 A JP7110591 A JP 7110591A JP 11059195 A JP11059195 A JP 11059195A JP 3016118 B2 JP3016118 B2 JP 3016118B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車、家電製品、建
材等の材料として好適な、耐食性、特に塗装後耐食性と
耐パウダリング性とに優れた表面処理鋼板、具体的には
めっき鋼板と有機複合被覆鋼板、ならびにその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車をはじめとする多くの産業
分野で、各種の表面処理鋼板、特にめっき鋼板の使用量
が増大している。それに伴って、表面処理鋼板への性能
への要求も高まる一方であり、特に自動車用においては
「耐孔あき10年保証」というような長期的な高耐食性が
求められている。
【0003】自動車車体用の防錆鋼板として既に実用化
されている代表的な表面処理鋼板はめっき鋼板、特に亜
鉛または亜鉛合金を溶融めっきまたは電気めっきした鋼
板である。しかし、このような亜鉛系めっき鋼板では、
道路凍結防止用に塩が散布される冬期の寒冷地帯のよう
な過酷な腐食環境下では、耐食性がなお不十分であっ
た。
【0004】この要求に対して、めっき鋼板 (特に、亜
鉛または亜鉛合金めっき鋼板) を母材とし、その上にク
ロメート皮膜層と薄い樹脂皮膜層とを順に設けた有機複
合被覆鋼板が開発された。この有機複合被覆鋼板は、め
っき皮膜の防食作用にクロメート皮膜の防食作用と有機
被覆の腐食環境遮断効果とが加わって、種々の防錆鋼板
の中でも圧倒的に優れた耐食性を有している (例、特開
昭64−80522 号公報参照) 。
【0005】一般に、有機複合被覆鋼板は優れた裸耐食
性 (即ち、無塗装状態での耐食性)を有しているが、有
機複合被覆鋼板の上にさらに電着塗装、中塗り、上塗り
を施した後の耐食性 (即ち、塗装後耐食性、特に疵部耐
食性、端面耐食性等) については、いまだ十分とは言え
ないのが現状である。
【0006】また、亜鉛系電気めっき鋼板のめっき層の
耐食性を改善する手段として、めっき層中に腐食防止能
を持った微粒子を分散共析させた高耐食性めっき鋼板が
開発された。
【0007】例えば、特開平2−159398号公報には、難
溶性クロム酸塩微粒子またはこれと酸化物微粒子 (Si
O2、Al2O3 、TiO2、ZrO3、Cr2O3 、SnO3、Sb2O5 等の微
粒子)との混合物と、第四級アンモニウム塩型のカチオ
ン極性基を持つモノマーまたはポリマー化合物とを含む
亜鉛または亜鉛合金めっき液で電解処理して得た、高耐
食性の電気めっき鋼板が提案されている。
【0008】特開平2−270998号公報には、Zn−Cr合金
めっきに関して、上記酸化物微粒子とカチオンポリマー
(第四級アンモニウム塩基を有するポリマー) とを含有
するめっき皮膜を電気めっき法により形成することが提
案されている。
【0009】特開平3−87399 号公報には、カチオンポ
リマーを共析させたZn−Cr合金電気めっき皮膜の上層に
クロメート皮膜と有機皮膜を順に形成した、加工部の耐
食性に優れた有機複合被覆鋼板が提案されている。
【0010】しかし、これらはいずれも、腐食抑制効果
のある有機インヒビターを電気めっき液に添加し、電析
しためっき層中にインヒビターを共析させることで耐食
性の向上を図っている。この方法では、電気めっきによ
りインヒビターの分解が起こってインヒビターの防錆効
果が充分に発揮されないことがある。また、耐食性の一
層の向上を狙ってインヒビターの共析量を増加させる
と、めっき層の組成が不均一となり易く、めっき結晶も
緻密ではなくなる。そのため、めっき層が脆くなって、
加工を受けさせると、加工部のめっき皮膜または有機複
合被覆が粉末状に剥離する、パウダリングと称する現象
が起こり易く、それによって加工部の耐食性が裸耐食性
と塗装後耐食性のいずれも大きく低下する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、めっ
き鋼板および有機複合被覆鋼板に関する上記の問題点を
解決することである。具体的には、本発明の目的は、有
機インヒビターが共存した高耐食性のめっき鋼板および
このめっき鋼板を母材とする有機複合被覆鋼板であっ
て、加工時の加工部のめっき皮膜の剥離が起こりにく
い、耐パウダリング性が改善された高耐食性のめっき鋼
板および有機複合被覆鋼板を提供することである。本発
明の別の目的は、塗装後耐食性が改善されためっき鋼板
および有機複合被覆鋼板を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、耐パウダ
リング性を低下させずにめっき鋼板や有機複合被覆鋼板
の塗装後耐食性を改善する手段について鋭意検討した。
その結果、めっき鋼板を軽く酸洗した後、腐食抑制効果
のある有機インヒビターを含有する水溶液でめっき鋼板
を処理することが有効であることを見出した。酸洗によ
りめっき表面にエッチピットが形成され、次工程での処
理でこのエッチピット内に有機インヒビターが吸着保持
されることにより、耐食性が著しく向上するのである。
この方法で多量の有機インヒビターをめっき層上に吸着
させても、めっき層の組成や結晶の緻密性に影響はない
ので、耐パウダリング性の劣化は起こらない。また、既
に電気めっきは終了しているので、有機インヒビターの
分解も起こらない。
【0013】ここに、本発明は次の(1) 〜(3) を要旨と
する。
【0014】(1) エッチピットを形成しためっき鋼板上
に、少なくとも1種の有機インヒビター化合物を合計で
0.1 mg/m2 以上吸着させたことを特徴とする、高耐食性
めっき鋼板。
【0015】(2) めっき鋼板を酸性水溶液で処理してめ
っき面にエッチピットを生成させ、次いで少なくとも1
種の有機インヒビター化合物を含有する水溶液で処理し
て該化合物を0.1 mg/m2 以上吸着させることからなる、
高耐食性めっき鋼板の製造方法。
【0016】(3) 上記(1) 記載の高耐食性めっき鋼板の
めっき面の上に、Cr付着量1〜200mg/m2 のクロメート
皮膜と、その上に膜厚 0.1〜2μmの有機皮膜とを有す
ることを特徴とする、高耐食性有機複合被覆鋼板。
【0017】
【作用】以下、本発明の構成と作用について詳述する。
本発明の特徴は、めっき鋼板に特定の処理を施して、有
機インヒビターをめっき表面に吸着させた点にある。処
理母材となるめっき鋼板、ならびに有機複合被覆鋼板に
おいてめっき層上に形成するクロメート皮膜と有機皮膜
については、従来のめっき鋼板や有機複合被覆鋼板と同
様でよいが、これらについても次に簡単に説明する。
【0018】母材めっき鋼板 母材めっき鋼板のめっき組成については特に制限されな
いが、耐食性に優れた亜鉛系またはアルミニウム系めっ
き鋼板が好ましい。例えば、純Zn、Zn−X合金(X=F
e、Co、Ni、Mn、Cr、Mg、Al) 、純Al、またはAl−Mn合
金のめっき層を有する鋼板が例示される。めっき方法は
電気めっき、溶融めっき、溶融塩電解めっき、気相めっ
きのいずれでもよく、また片面めっきと両面めっきのい
ずれでもよい。めっき付着量は特に制限されないが、加
工性と耐食性のバランスから、片面あたり10〜60 g/m2
の範囲内が好ましい。
【0019】また、上記の亜鉛系またはアルミニウム系
めっき鋼板の少なくとも片面上に、上層めっき層とし
て、一般にフラッシュめっきと呼ばれている薄膜の電気
めっき層 (通常は付着量15 g/m2 以下) をさらに設けて
もよい。直下のめっき層が電気めっき法により形成され
た場合には、乾燥工程を入れずに水洗のみでフラッシュ
電気めっきを行う。直下のめっき層が溶融めっき法また
は気相めっき法で形成された場合には、その表面を活性
化させるため、40〜120 g/L のNaOHを含む60〜80℃の水
溶液中に浸漬し、水洗してアルカリを除去してからフラ
ッシュ電気めっきを行う。
【0020】酸性水溶液による処理 (エッチピットの形
成) めっき鋼板を酸性水溶液で処理して、めっき層表面にエ
ッチピットを生成させる。それにより、次工程で有機イ
ンヒビターを吸着させた時に、耐食性の顕著な向上に必
要な多量のインヒビターをめっき皮膜上に吸着させるこ
とが可能となる。この工程を省略すると、非常に少量の
インヒビターしかめっき皮膜上に吸着されず、十分な耐
食性の向上効果が得られない。
【0021】エッチピットとは、固体表面を腐食した時
にできる、径0.01〜10μm程度の微小なくぼみのことで
ある。エッチピットを形成することができれば、酸性水
溶液の酸の種類、濃度、処理温度、処理時間等は特に規
定されない。処理温度は常温でよいが、必要に応じて加
熱下に処理してもよい。酸性水溶液としては、酸洗に使
用されるような酸の水溶液のほかに、酸性のめっき液を
使用することもできる。酸性水溶液のpHは4以下であ
ることが好ましい。酸としては、安価で入手の容易な硫
酸、塩酸、硝酸等の無機酸が好ましい。また、酸の代わ
りに、水に溶解すると酸性を示す酸性塩を使用すること
もできる。
【0022】酸性水溶液によるめっき鋼板の処理は、浸
漬や噴霧により行うことができる。酸性水溶液が、酸性
めっき液ではなく、酸洗液のような単純な酸の水溶液
(即ち、通電により電析が起こらない水溶液) である場
合には、電解酸洗や酸性電解洗浄と同様に、酸性水溶液
中でめっき鋼板を通電して電解処理してもよい。この場
合、めっき鋼板を陽極とする処理 (陽極処理) の方が好
ましい。酸性水溶液による処理の終了後、処理しためっ
き鋼板を水洗せずに乾燥することが好ましい。
【0023】酸性水溶液として酸性めっき液を利用する
場合には、無通電で処理を行う。この場合、本処理のた
めの処理槽を別に設ける必要はなく、めっき槽をそのま
ま酸性水溶液処理用にも使用できるので効率的である。
即ち、めっき槽中で酸性めっき液に浸漬された鋼板に通
電して所定のめっき皮膜を形成した後、通電を停止し、
無通電状態で酸性めっき液中に浸漬することで、形成さ
れためっき皮膜にエッチピットを形成することができ
る。連続めっきラインの場合には、めっき槽の後半部に
無通電の領域を設けることで対応できる。
【0024】酸性水溶液による処理で形成されたエッチ
ピットの深さや密度に応じて、次工程における有機イン
ヒビターの吸着量が変動することがある。エッチピット
の生成の目安は、次工程で0.1 mg/m2 以上の所望量のイ
ンヒビターが吸着されるようになればよい。これに必要
なエッチピットの生成密度は一般に1×102 個/mm2以上
であり、密度がこれ以下ではインヒビターの吸着量が少
なすぎて耐食性の向上が不十分となる。また、エッチピ
ットの生成密度が多すぎても効果が飽和するので、エッ
チピットの生成密度は好ましくは1×102 〜1×108
/mm2の範囲である。例えば、代表的な酸洗液である希硫
酸により処理した場合、常温で数秒〜1分という短時間
の処理で、必要な数のエッチピットをめっき層表面に形
成することができる。
【0025】インヒビターの吸着 酸性水溶液で処理してエッチピットをめっき層表面に形
成しためっき鋼板を、腐食抑制効果のある有機インヒビ
ターを含有する水溶液で処理して、エッチピット内に有
機インヒビターを吸着させる。この処理も浸漬や噴霧に
より実施できる。処理に用いるインヒビター水溶液の温
度は特に制限されないが、通常は常温で十分である。水
溶液のインヒビター濃度や処理時間 (連続めっきライン
ではライン速度) を調整して、0.1 mg/m2 以上の所望量
のインヒビターがめっき皮膜に吸着されるようにする。
例えば、ライン速度が40〜200 m/sec の連続めっきライ
ンの場合、処理に用いる水溶液のインヒビター濃度は0.
01〜10重量%の範囲が好ましい。
【0026】インヒビター吸着量が0.1 mg/m2 より少な
いと、インヒビターによる耐食性向上の十分な効果が得
られない。インヒビター吸着量の上限は特に制限されな
いが、200 mg/m2 より多くなると、インヒビターの効果
が飽和するので経済的に不利となる。従って、吸着量は
0.1〜200 mg/m2 の範囲が好ましい。性能面からより好
ましいインヒビター吸着量は 0.5〜50 mg/m2、特に 0.5
〜25 mg/m2の範囲である。
【0027】めっき鋼板上におけるインヒビターの吸着
量は、インヒビターが含有する炭素量を蛍光X線装置
(FX) やX線光電子分析装置 (ESCA) で測定する
ことにより、求めることができる。
【0028】処理後は、水洗することなく、乾燥するこ
とが好ましい。有機複合被覆鋼板を製造する場合、この
乾燥を行わずに、処理の終了後、未乾燥のめっき鋼板を
直ちにクロメート処理することもできるが、クロメート
処理液中へのインヒビターの持ち込みが起こる可能性が
あるため、インヒビター水溶液での処理後にゴム製ロー
ルなどで液を絞り、インヒビターの持ち込み量を減らす
ことが好ましい。
【0029】有機インヒビターは、従来より公知の各種
のものが使用できるが、本発明で使用するのに好適な有
機インヒビターは、アルキン、アルキノール、アミンも
しくはその塩、チオ化合物、複素環化合物、脂肪族ポリ
カルボン酸もしくはその塩、芳香族カルボン酸もしくは
その塩、α−ヒドロキシカルボン酸もしくはその塩、な
らびにリグニンスルホン酸もしくはその塩よりなる群か
ら選ばれた少なくとも1種の化合物である。これらの化
合物について次に説明する。
【0030】(1) アルキン:炭素−炭素三重結合を含む
有機化合物。具体例としては、ペンチン、ヘキシン、ヘ
プチン、オクチンなどが挙げられる。
【0031】(2) アルキノール:アルキンの1個以上の
水素原子が水酸基で置換された有機化合物。具体例とし
ては、プロパルギルアルコール、1−ヘキシン−3−オ
ール、1−ヘプチン−3−オールなどが挙げられる。
【0032】(3) アミン:脂肪族、脂環式、芳香族のい
ずれでもよく、また第1アミン、第2アミン、第3アミ
ンのいずれでもよい。具体例としては、オクチルアミ
ン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ト
リデシルアミン、セチルアミンなどのアルキルアミン;
プロペニルアミン、ブテニルアミンなどのアルケニルア
ミン;シクロヘキシルアミンなどの脂環式アミン; アニ
リン、置換アニリンなどの芳香族アミンが挙げられる。
【0033】(4) チオ化合物:分子中に硫黄原子を1個
以上含む有機化合物。具体例としては、デシルメルカプ
タン、セチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタ
ン; ジメチルスルファイドなどのジアルキルスルファイ
ド; チオ尿素およびその誘導体;チオグリコール酸など
が例示される。
【0034】(5) 複素環化合物:環の構成原子に炭素以
外の原子を含む環状有機化合物。具体例としては、ピリ
ジン、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、キノリ
ン、インドール、チオフェン、ピロール、フラン、プリ
ンなど、ならびにこれらの置換誘導体が例示される。
【0035】(6) 脂肪族ポリカルボン酸:分子中にカル
ボキシル基を2個以上含む脂肪族化合物。具体例として
は、クエン酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、アゼ
ライン酸、セバシン酸などが例示される。
【0036】(7) 芳香族カルボン酸:芳香環 (ベンゼン
環、ナフタレン環等) に結合したカルボキシル基を有す
る化合物。具体例としては、安息香酸、桂皮酸、サリチ
ル酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸などが例示さ
れる。
【0037】(8) α−ヒドロキシカルボン酸:α位の炭
素にカルボキシル基とアルコール性水酸基とが結合した
脂肪族および芳香族化合物。具体例としては、乳酸、グ
リセリン酸、酒石酸、トロパ酸、ベンジル酸などが例示
される。
【0038】(9) リグニンスルホン酸:木材等のリグニ
ンを含む原料を亜硫酸、亜硫酸水素塩または亜硫酸塩の
溶液で処理することにより生成するリグニンのスルホン
化誘導体。亜硫酸法パルプ製造の副生物として、亜硫酸
法パルプ廃液から大量に回収される安価な有機物質であ
る。
【0039】以上のうち、アミン、カルボン酸類 (脂肪
族ポリカルボン酸、芳香族カルボン酸、α−ヒドロキシ
カルボン酸) 、およびリグニンスルホン酸については、
その塩を用いることも可能である。即ち、アミンの場合
にはその酸付加塩 (例、硫酸塩、塩酸塩など) を、カル
ボン酸類やリグニンスルホン酸では金属塩 (例、アルカ
リ金属塩、アルカリ土類金属塩、亜鉛塩など) やアンモ
ニウム塩を使用することもできる。
【0040】上記処理により得られた本発明のめっき鋼
板は、酸性水溶液処理で形成された微細なくぼみ (エッ
チピット) 内に腐食抑制効果のあるインヒビターが十分
な量で吸着されており、耐食性 (裸耐食性と塗装後耐食
性の両方) が未処理のめっき鋼板に比べて著しく改善さ
れる。また、従来のめっき液にインヒビターを添加して
めっき層にインヒビターを共析させる共析めっき法とは
異なり、インヒビターはめっき層の上で別のインヒビタ
ー層を形成するため、めっき層が脆くなって耐パウダリ
ング性が劣化するという弊害を避けることができる。
【0041】上記のように処理しためっき鋼板の耐食性
を一層高めるために、従来の有機複合被覆鋼板と同様
に、このめっき層の上にクロメート皮膜と有機皮膜を順
に形成してもよい。この場合も、未処理のめっき鋼板を
有機複合被覆鋼板としたものに比べて、耐食性、特に塗
装後耐食性が著しく改善された有機複合被覆鋼板が得ら
れる。このクロメート皮膜と有機皮膜について、次に説
明する。
【0042】クロメート皮膜 クロメート皮膜の形成方法は、塗布型、反応型、電解型
のいずれも可能であるが、耐食性が特に良好な塗布型ク
ロメート皮膜が好ましい。塗布型クロメート皮膜は、ロ
ールコーター等の慣用手段によりクロメート処理液を塗
布した後、80〜250 ℃の温度で焼き付けることにより形
成することができる。
【0043】クロメート皮膜の形成に用いるクロメート
処理液は、Cr6+を含有していればよく、従来より公知の
各種組成のクロメート処理液を使用できる。この処理液
は、Cr6+以外に、コロイダルシリカ、シランカップリン
グ剤、酸 (リン酸、フッ化水素酸など) などの各種添加
剤を1種もしくは2種以上含有していてもよい。クロメ
ート皮膜の付着量は、金属Cr量として、10〜200 mg/m
2 、好ましくは30〜120mg/m2 とする。
【0044】塗布型クロメート処理液として、部分還元
(二段還元) 型のクロメート処理液を使用すると、造膜
が効率よく進行し、低温および/または短時間の焼付け
でクロメート皮膜を形成できる。この部分還元型クロメ
ート処理液の還元率は、Cr3+/全Cr [=Cr3+/
(Cr3++Cr6+)]の比で 0.4〜0.6 の範囲が好ましい。
【0045】有機皮膜 クロメート皮膜の上に、有機樹脂皮膜を 0.1〜2μmの
厚みで設ける。有機皮膜の厚みが0.1 μm未満では耐食
性が不十分となり、2μmを越えると溶接性、電着塗装
性が著しく低下する。
【0046】この有機皮膜は、従来より塗装鋼板の製造
に使用されてきた各種の樹脂系被覆組成物を使用して形
成することができる。有機皮膜は、装置が簡便で造膜も
速い熱硬化型樹脂皮膜が工業的には好ましいが、紫外線
または電子線硬化型樹脂皮膜や常温硬化型樹脂皮膜とす
ることもできる。また、常温乾燥型もしくは加熱乾燥型
の熱可塑性樹脂皮膜であってもよい。
【0047】熱硬化型の有機樹脂皮膜は、熱硬化性樹脂
液を塗布した後、適当な温度に加熱して塗膜を焼き付け
ることにより形成される。好ましい樹脂種は、皮膜が緻
密で耐食性に優れているエポキシ系樹脂である。その
他、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂な
ども使用できる。
【0048】塗布に用いる樹脂液中には、樹脂の他に、
架橋剤、溶媒、さらには無機充填材、顔料類 (防錆顔
料、体質顔料、特に着色顔料) 、可塑剤、潤滑性付与成
分、触媒、反応促進剤などの1種もしくは2種以上を含
有していてもよい。
【0049】好ましい樹脂種であるエポキシ系樹脂とし
ては、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ノボ
ラック型、臭素化エポキシ等の任意のグリシジルエーテ
ル系エポキシ樹脂が使用できる。また、エポキシ樹脂中
のエポキシ基およびヒドロキシル基を乾性油脂肪酸中の
カルボキシル基と反応させたエポキシエステル樹脂、イ
ソシアネートと反応させることにより得られるウレタン
変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂も使用でき
る。
【0050】エポキシ系樹脂液中には、皮膜の加工性、
可撓性、潤滑性、電着塗装性などを改善する目的で、エ
ポキシ系以外の樹脂を添加してもよい。例えば、皮膜に
可撓性を与えるためのブチラール樹脂の添加、電着塗装
性を向上するための水溶性樹脂の添加などである。エポ
キシ系以外の樹脂の添加量は、あまり多くなると耐食性
の低下を招くので、樹脂液中の全樹脂固形分の50重量%
以下とする。
【0051】エポキシ系樹脂用の架橋剤としては、フェ
ノール樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド、アミノポリアミ
ド、アミン、ブロックイソシアネート、酸無水物などの
公知の各種の架橋剤を1種もしくは2種以上使用するこ
とができる。架橋剤を使用すると、皮膜の耐食性が一層
向上する。架橋剤の添加量は、エポキシ系樹脂中のエポ
キシ基とヒドロキシ基の合計量に対する架橋剤中の官能
基のモル比が 0.1〜2となる範囲が好ましい。
【0052】別の好ましい種類の熱硬化性樹脂は、ポリ
ヒドロキシポリエーテル樹脂である。この樹脂は、2価
フェノールをアルカリ触媒の存在下にほぼ等モル量のエ
ピハロヒドリンと重縮合させて得られる重合体であり、
エポキシ基が完全に反応して消失しているため、エポキ
シ系樹脂ではないが、原料がビスフェノールA型エポキ
シ樹脂と同じであり、エポキシ系樹脂に匹敵するような
耐食性の高い樹脂皮膜を形成する。
【0053】樹脂液中に耐食性向上を目的として添加し
てもよい無機充填材の例としては、コロイダルシリカ、
各種ケイ酸塩鉱物、アルミナ、炭酸カルシウム、リン酸
亜鉛、リン酸カルシウム、リンモリブデン酸亜鉛、リン
モリブデン酸アルミニウムなどが挙げられる。無機充填
材の添加量は、樹脂固形分に対して1〜30重量%の範囲
内が好ましい。
【0054】顔料としては、高い防食性向上効果を示す
ことが知られているクロム酸ストロンチウム、クロム酸
亜鉛などの金属クロム酸塩系防錆顔料が耐食性向上の目
的に有効である。また、本発明の有機複合被覆が片面の
みに形成される場合には、最上層の樹脂皮膜に着色顔料
を含有させて皮膜を着色しておくと、表裏の識別が容易
となり、ユーザーの作業に好都合である。着色顔料とし
ては、酸化鉄、酸化チタン顔料、カーボンなどの無機系
顔料以外に、有機系顔料も使用可能である。
【0055】樹脂液をロールコーターなどの適当な塗布
手段でクロメート皮膜上に塗布し、必要であれば加熱し
て塗膜を硬化させ、有機樹脂皮膜を形成する。加熱温度
は、エポキシ系樹脂の場合で80〜250 ℃、好ましくは 1
20〜200 ℃である。
【0056】
【実施例】
(実施例1)母材めっき鋼板の作製 表1にめっき組成を示す各種の1層または2層めっき鋼
板を母材として使用した。これらのめっき鋼板は、いず
れも素地鋼板は板厚0.8 mmの冷延鋼板であった。1層め
っきの場合には、表1に下層めっきとして示すめっき層
のみを形成し、2層めっきの場合には、表1に示す下層
めっきの上に、フラッシュめっきにより上層電気めっき
層を形成した。めっきはいずれも片面めっきであった。
【0057】下層めっきのめっき方法は、表1の欄外に
示した通りである。このうち、亜鉛および亜鉛合金の電
気めっきは、めっき槽内でめっき液を1方向に流通させ
た硫酸塩浴を用いて下記条件で行った。
【0058】溶融めっきのうち、Zn−Al合金めっきは通
常の溶融めっき浴への浸漬により行ったが、Zn−Fe合金
めっきは合金化溶融亜鉛めっき法により、Al−Mn合金め
っきは溶融塩電解めっき法により行った。気相めっきは
真空蒸着法により行った。
【0059】上層のフラッシュめっき層はすべて電気め
っき層であり、下層が電気めっき層の場合には、下層の
電気めっきの終了後、水洗しただけで乾燥せずに上層の
電気めっきを行った。下層が合金化溶融亜鉛めっき法に
より形成されたZn−Fe合金めっきの場合には、下層めっ
きの終了後に上述した活性化処理を行ってから、上層の
電気めっきを行った。
【0060】母材めっき鋼板の処理 表1に示す1層または2層のめっき層を有する母材めっ
き鋼板を、1g/l 濃度の希硫酸水溶液中に室温で1秒〜
1分間浸漬した後、水洗せずに50℃で乾燥した。その
後、表1に示す有機インヒビターの水溶液中に室温で浸
漬し、この水溶液から取出しためっき鋼板を水洗せずに
室温で乾燥した。インヒビター水溶液の濃度を0.01〜10
g/Lの範囲内で、また浸漬時間を1〜50秒間の範囲内で
変化させることにより、インヒビターの吸着量を変化さ
せた。
【0061】こうして本発明の方法により処理しためっ
き鋼板のインヒビター吸着量を蛍光X線装置により求め
た結果を表1に示す。また、希硫酸水溶液に浸漬し、乾
燥した後の各めっき鋼板表面をSEMにより観察したと
ころ、いずれもめっき層表面に微細なくぼみが認めら
れ、エッチピットが生成していた。表1に示すように、
予め希硫酸水溶液中に浸漬してエッチピットを生成させ
ておくことにより、インヒビターを 0.1〜300 mg/m2
いう広範囲の量で吸着させることができた。
【0062】こうして処理しためっき鋼板について、塗
装後耐食性、即ち、塗装後の疵部耐食性と端面耐食性、
および耐パウダリング性を次に述べる方法で試験した。
これらの試験結果も表1に併せて示す。
【0063】[塗装後の疵部耐食性]70mm×150 mmの試験
片を切り出し、この未加工の平板を平板を脱脂剤FC4336
で脱脂し、表面調整液PZT で処理した後、リン酸塩処理
液PB-L3030 (以上、いずれも日本パーカライジング社
製) を用いて化成処理を行い、次いでU-80 (日本ペイン
ト社製) で厚さ20±1μmのカチオン電着塗装を施し、
175 ℃で25分間焼付けた。その後、自動車用アルキッド
系塗料の中塗り (40μm) 、焼付け、メラミン・ポリエ
ステル系塗料の上塗り (40μm) 、焼付けを行って、塗
装試験片を作製した。
【0064】この塗装試験片の評価面 (塗装面) 側にカ
ッターナイフで鋼板素地に達するクロスカットを入れて
から、塩水噴霧 (5%-NaCl、35℃、7時間) →乾燥 (50
℃、2時間) →湿潤 (RH85%、50℃、15時間) を1サイ
クルとする複合腐食サイクル試験を受けさせた。上記の
腐食サイクルを30サイクル経過した試験片について、ク
ロスカット部のブリスターの幅を求め、次の区分で塗装
後の疵部耐食性を評価した。◎、○が合格レベルであ
る。
【0065】◎:ブリスター幅<0.5 mm ○:ブリスター幅<1.0 mm △:ブリスター幅<2.0 mm ×:ブリスター幅<3.0 mm ××:ブリスター幅≧3.0 mm。
【0066】[塗装後の端面耐食性]試験片端面のカエリ
が板厚の10%となるように金型のクリアランスを調整し
てプレス打抜きを行い、打抜いた試験片に上記と同様の
電着塗装、中塗り、上塗りを行って、塗装試験片を作製
した。この塗装試験片を上記の複合腐食サイクル試験に
供した。
【0067】評価は、腐食サイクルを60サイクル経過し
た試験片について、端面の赤錆発生面積率を求め、次の
区分で塗装後の端面耐食性を評価した。◎、○が合格レ
ベルである。 ◎:赤錆発生なし ○:5%以下 △:10%以下 ×:30%以下 ××:30%超 [耐パウダリング性]円筒成形絞り加工後の加工部のテー
プテストによる剥離量でパウダリング性を求め、その値
が、耐パウダリング性に良好な電気亜鉛めっき鋼板を同
じ方法で評価した場合の値に近い (良好=低下率20%以
内) か、否かで判断した。
【0068】○:良好 ×:不良
【0069】
【表1】
【0070】(比較例1)比較のために、母材の未処理の
1層または2層めっき鋼板をそのまま実施例1と同様に
塗装後耐食性および耐パウダリング性について試験した
(試験No. 1, 4〜12) 。また、Zn−Ni合金めっき鋼板に
ついては、希硫酸水溶液による処理を行わずに、母材め
っき鋼板を直接インヒビター水溶液により実施例1と同
様に処理して、めっき皮膜上にインヒビターを吸着させ
た (試験No. 2, 3) 。
【0071】以上の試験結果を、母材めっき鋼板のめっ
き種および付着量、ならびにインヒビターの吸着量 (試
験No.2, 3)と共に表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】表1と表2の対比から、次の点が明らかと
なる。表2の試験No. 1, 4〜12に示すように、未処理の
母材めっき鋼板は、耐パウダリング性は良好であるが、
塗装後耐食性に劣っており、疵部や端面のように塗装に
よる塗膜で保護されない部位の防錆能が著しく低下し
た。また、母材めっき鋼板をいきなりインヒビター水溶
液で処理した表2の試験No. 2, 3では、インヒビターの
吸着量が0.1 mg/m2 を下回り、インヒビターの吸着量が
少なすぎて、塗装後耐食性の改善効果が得られなかっ
た。
【0074】これに対し、表1に示すように、本発明に
従って、母材めっき鋼板を酸性水溶液で処理してからイ
ンヒビター水溶液で処理した場合には、多量のインヒビ
ターをめっき皮膜上に吸着させることができ、耐パウダ
リング性を良好に保持したまま、塗装後耐食性が著しく
改善された。
【0075】(比較例2)従来のインヒビター共析めっき
法により、表3に示す1層または2層めっき鋼板を次の
ようにして作製した。
【0076】実施例1で使用したのと同じ素地鋼板に、
表3に示すインヒビターを添加した硫酸塩酸性めっき液
中で電気めっきを施すことにより、めっき層中にインヒ
ビターが共析した亜鉛系または亜鉛合金からなる下層め
っき皮膜を形成した。2層めっきの場合、下層めっきの
終了後、水洗しただけで乾燥せずに、インヒビターを添
加していないめっき液を用いて上層フラッシュめっきを
電気めっき法により行った。下層および上層の電気めっ
き条件は、下層めっき液にインヒビターを添加した点を
除いて、実施例1と同様であった。
【0077】めっき層中のインヒビター共析量を蛍光X
線装置により求めた結果を、実施例1と同様に実施した
塗装後耐食性と耐パウダリング性の試験結果と共に、表
3に併せて示す。
【0078】
【表3】
【0079】表3からわかるように、めっき層中にイン
ヒビターを共析させるという手段でも、塗装後耐食性を
著しく改善することができる。しかし、この場合には、
耐パウダリング性が不良となった。即ち、加工を施す
と、加工部のめっき皮膜の粉化剥離が起こり易く、加工
部の防錆能が確保できない。一方、本発明では、表1に
示したように、耐パウダリング性を劣化させずに塗装後
耐食性が著しく改善される。
【0080】(実施例2)実施例1と同様の電気めっき
法によZnめっき層を形成した1層めっき鋼板を母材とし
て、実施例1と同様に希硫酸水溶液およびインヒビター
水溶液による処理を行った後、次に述べるようにしてめ
っき層上にクロメート皮膜と有機皮膜を形成し、有機複
合被覆鋼板を得た (試験No.1〜4)。
【0081】クロメート皮膜は、市販の部分還元型のク
ロメート処理液を原液で用いた塗布型クロメート処理に
より形成した。めっき面の上にクロメート処理液をバー
コータにより塗布した後、110 ℃で60秒間焼付けた。
【0082】有機皮膜は、ビスフェノールA型エポキシ
樹脂65重量部、フェノール樹脂硬化剤15重量部、乾性シ
リカ15重量部、潤滑成分5重量部をシクロヘキサノンに
溶解ないし分散させ、NV (不揮発成分) =20%に調整
した樹脂液を用いて、クロメート皮膜の上にバーコータ
により塗布し、110 ℃で60秒間焼付けて、樹脂を硬化さ
せた。
【0083】比較のために、同じ電気Znめっき鋼板を母
材として、未処理の母材めっき鋼板のめっき面上に上記
と同様にクロメート皮膜と有機皮膜を形成して有機複合
被覆鋼板を得た (試験No.5) 。
【0084】得られた有機複合被覆鋼板について、実施
例1と同様に塗装後耐食性および耐パウダリング性を試
験した結果を、めっき付着量、インヒビター種と吸着
量、クロメート皮膜の付着量および有機皮膜の膜厚と一
緒に表4に示す。
【0085】
【表4】
【0086】表4からわかるように、めっき鋼板にその
ままクロメート皮膜と有機皮膜を被覆した場合 (表5の
試験No.5) 、耐パウダリング性は良好であるが、塗装後
耐食性はなお不十分である。これに対して、本発明によ
り、めっき鋼板の表面にインヒビターを吸着させてから
クロメート皮膜と有機被覆を形成すると、耐パウダリン
グ性を良好に保持したまま、塗装後耐食性が著しく改善
された。
【0087】(比較例3)比較例2と同様にインヒビター
を添加しためっき液を用いて共析電気めっきを行うこと
により、インヒビターが共析したZnめっき層を有する1
層めっき鋼板を作製した。この共析めっき鋼板を母材と
して、実施例2と同様にめっき面上にクロメート皮膜と
有機皮膜を形成して有機複合被覆鋼板を得た。
【0088】得られた有機複合被覆鋼板について、実施
例1と同様に塗装後耐食性および耐パウダリング性を試
験した結果を、めっき付着量、インヒビター種と共析
量、クロメート皮膜の付着量および有機皮膜の膜厚と一
緒に表5に示す。
【0089】
【表5】
【0090】インヒビターをめっき層中に共析させた共
析めっき鋼板を母材として、クロメート皮膜と有機皮膜
を形成すると、めっき皮膜が脆くなって、耐パウダリン
グ性が不良となった。そればかりか、塗装後耐食性も、
未処理のめっき鋼板を母材とする有機複合被覆鋼板 (表
5の試験No.5) と比べて、疵部耐食性で同レベルであ
り、端面耐食性はやや悪化した。その理由としては、イ
ンヒビターの共析によりめっき皮膜が脆化して耐パウダ
リング性が劣化する上、インヒビターが均一に分布しに
くいため端面などの裸面の露出した部位で局部電池作用
による耐食性の劣化が起こったものと考えられる。
【0091】
【発明の効果】本発明により、めっき鋼板および有機複
合被覆鋼板の耐パウダリング性を低下させずに塗装後耐
食性を著しく改善することができる。それにより、加工
を受けてもめっき皮膜が剥離しにくく、しかも裸耐食性
のみならず塗装後の疵部および端面の耐食性に優れため
っき鋼板および有機複合被覆鋼板が得られる。これらの
表面処理鋼板は、自動車車体用に最適であるが、建材や
家電製品など他の用途にももちろん使用できる。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エッチピットを形成しためっき鋼板上
    に、少なくとも1種の有機インヒビター化合物を0.1 mg
    /m2 以上吸着させたことを特徴とする、高耐食性めっき
    鋼板。
  2. 【請求項2】 めっき鋼板を酸性水溶液で処理してめっ
    き面にエッチピットを生成させ、次いで少なくとも1種
    の有機インヒビター化合物を含有する水溶液で処理して
    該化合物を0.1 mg/m2 以上吸着させることからなる、高
    耐食性めっき鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の高耐食性めっき鋼板のめ
    っき面の上に、Cr付着量1〜200 mg/m2 のクロメート皮
    膜と、その上に膜厚 0.1〜2μmの有機皮膜とを有する
    ことを特徴とする、高耐食性有機複合被覆鋼板。
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