JP2934181B2

JP2934181B2 - 安定駒を利用した耐震・耐風瓦葺工法

Info

Publication number: JP2934181B2
Application number: JP7335369A
Authority: JP
Inventors: 彰克中尾
Original assignee: IYAMA KAWARA KYOGYO KUMIAI
Current assignee: IYAMA KAWARA KYOGYO KUMIAI
Priority date: 1995-12-22
Filing date: 1995-12-22
Publication date: 1999-08-16
Anticipated expiration: 2015-12-22
Also published as: JPH09177251A

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、瓦の尻側裏面に設けら
れた安定駒を利用した耐震・耐風瓦葺工法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、瓦葺工法は、屋根地の横棧を利用
する方法が一般であり、その一例を説明すると、屋根地
に数本設けた横棧の内、先ず、軒先の横棧に安定駒を枕
とし（当接し）、当該横棧に瓦の尻側に設けた引掛け
（以下、引掛けとする。）を係止した後に、釘止めす
る。このような作業及び手順により軒先の瓦が葺工され
る。そこで、続いて、この軒先に葺工された瓦を目安と
して、地割り（きき幅寸法を決定）を決定した後、例え
ば、何れかの隅の瓦（隅瓦）を葺工した後、この隅瓦を
基準として棟方向に向かって葺工する。この際、一般的
には墨付け印又は水糸をガイドとして、整然と葺工され
るように工事が行われる。以後は、桁方向に向かって順
次前述とほぼ同様な方法により葺工がなされる。以上の
操作及び手順により屋根が葺き上げられていくが、次の
ような問題がある。即ち、瓦の裏面の下地（横棧）当り
部は通常曲面である。従って、安定駒が横棧に安定して
当接して葺工されないと、当該瓦の支点が移動し、その
納まりが不安定となること、及び緊結効果が減殺される
こと、等の弊害が発生することが知られている。

【０００３】また従来の葺工法は、下の瓦（軒先方向の
瓦を云う。）を基準とする葺工法、又は横棧或いは屋根
地に設けた墨入れを基準とする葺工法、これらの葺工法
の併用等が挙げられる。そして、これらの葺工法では、
棟から軒先に対する美しいラインが形成されない（縦足
が形成されない）こと、また墨入れ等他の作業が必要と
なり煩雑かつ非能率であること、等の問題がある。また
引掛けによる係止と釘止めによる瓦の固定式葺工法であ
ることから、耐震・耐風に対する備えが十分でない問題
がある。尚、その他の葺工法で、耐震・耐風構造の瓦に
よる耐震・耐風葺工法（以下、耐震・耐風とする。）が
ある。この耐震・耐風は、横棧に瓦の引掛けによる係止
と、釘止めとを介して当該瓦を屋根地に固定するととも
に、隣接する瓦（隣接する瓦とは、屋根地に対する（以
下同じ）上下方向、左右方向、又は傾斜方向、その他の
方向）相互間で係止、押え込み、嵌合、釘止め、連繋等
により緊締する構成がある。しかし、この耐震・耐風
は、屋根地との係止関係が引掛けと、釘止めとによる連
結にとどまっており、根本的な瓦の固定葺工法とは言い
難い。

【０００４】以上のことを考慮の上、先行技術文献（以
下、単に文献とする。）を調査した処、次のような文献
があるので、概述します。

【０００５】（１）特開平２−２９２４４９号の瓦葺工
法における瓦棧木の並設施工方法と、これに用いる棧木
組立て体の発明がある。この発明は、横棧木を固定した
後、更にその上に縦棧木を瓦の横方向の並設寸法（割付
け寸法）に合せて、縦棧木を釘打ちにより固定し、瓦の
後端部の凸縁を横棧木に係止するとともに、一部を縦棧
木に係止しながらこの縦棧木に沿って順次瓦葺を行なう
ことを特徴とする。

【０００６】（２）特開平３−６９７５２号の屋根の瓦
葺工法とこれに使用する瓦棧木の発明がある。この発明
は、屋根地に数本設けた瓦棧木に、横方向の瓦割付け寸
法に相当する所定間隔毎に、瓦の後端部裏面に有する凸
起もしくは凹部による係止部が横方向に係合する係合手
段を設けておき、この係合手段に対する前記係止部の係
合により瓦を横移動不能に葺設することを特徴とする構
成である。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】前述の如く、従来の葺
工法は、屋根地（特に縦棧）と瓦との連繋関係を保つ構
成を採用しないことから、耐震・耐風又は葺工時におけ
る作業の簡略化、分業化、等の面で課題を残す処であ
る。

【０００８】また前記文献の中で特開平２−２９２４４
９号の発明は、縦棧に瓦の係合凹部を係止させる構成で
あることから、確かに屋根地との連繋強化は図れるが、
瓦に係合凹部を設ける構成となり、在来の一般的な瓦が
採用できないこと、及び縦棧が横棧に対して大きく立設
される構成であるので、縦棧に係合する側の瓦が持上げ
られて隣接する瓦の葺き合せが十分でなく、いわゆる隙
間が生ずる虞れがある。従って、当該隙間よりの雨水の
侵入及びこれに起因する屋根地のぬれの問題又は同隙間
よりの風の侵入及び瓦のめくり上げ・回転並びに飛散等
が発生する課題が考えられる。また特開平３−６９７５
２号の発明は、瓦に細工を要することから、前述の文献
とほぼ同様な課題があること、及び横棧にいちいち係合
手段を設ける必要があり、取付け作業の複雑化、熟練が
要求されること、等の課題がある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、在来の瓦に設
けた安定駒を利用して、瓦の回転防止、飛散防止等を達
成し、かつ縦棧と横棧との高低差（段差）を少くして、
隣接瓦間に隙間・ガタ等を生じないようにすること、等
を意図して、下記の構成を採用する。

【００１０】本発明は、屋根地に数本の横棧を施工した
後、この横棧にクロス状に薄板で形成されたほぼＶ字溝
をした数本の縦棧を施工し、かつこの縦棧のほぼＶ字溝
の内底面を上記横棧とほぼ同一面に施工する棧の布設工
程と、この布設工程で布設された前記横棧に瓦の尻側に
設けた引掛けを係止するとともに、前記縦棧に前記瓦の
尻側に設けた安定駒を係止する瓦の布設工程と、で構成
される安定駒を利用した耐震・耐風瓦葺工法である。

【００１１】

【作用】以下、本発明の作用（葺工法）を説明する。

【００１２】先ず、屋根地に数本の横棧を設けた後、こ
の数本設けた横棧の内、先ず、軒先の横棧に安定駒を枕
とし、当該横棧に前垂れ付き等の軒先瓦の引掛けを係止
した後に、釘止めする。このような作業及び手順により
軒先瓦を順次葺工し、軒先全体を葺工する。そこで、続
いて、この軒先に葺工された瓦を目安として、地割りが
決定されるので、この地割りを基準として縦棧を横棧上
に設ける。この縦棧は原則として、一本（一体）もの又
は拡縮形状等の構造の何れでもよいが、以下、一本もの
で説明すると、この縦棧の二箇所又は数箇所を釘止め、
ネジ止め、又はその他取付けにより固定する。勿論、こ
の固定には、例えば、曲尺、水糸を使用して固定する場
合、横棧に予め設ける位置を記した状態で固定する場
合、等色々の方法が採用できる。また当該横・縦棧又は
縦棧等の取付けと後述する瓦葺工とを併用する場合も有
る。そして、一例の如く、縦棧のほぼＶ字溝の内底面と
横棧の上面とがほぼ同一面として、後述する隣接瓦間に
隙間、ガタが生じない構成とする。これにより在来の横
棧のみによる葺工法と同様な施工効果が発揮できる構造
にする。

【００１３】以上のようにして横・縦棧の取付けが終了
した場合、通常前記軒先瓦に続いて次の瓦を葺工する
が、この場合、縦棧のほぼＶ字溝に安定駒を係入、嵌
合、圧嵌、係止、接着、その他固定、係合、接合等によ
り設けるとともに、その引掛けを横棧に引掛ける。その
後、当該瓦を釘止めすると、当該瓦は縦・横棧に密着し
横棧に強固に緊締され、当該瓦と屋根地とは一体化され
る。また原則として、縦棧は横棧の一定位置で、かつ屋
根地の各所に設けられているので、水糸及び熟練を要さ
ず、各瓦を所定位置に、かつ筋が通った状態で美麗に葺
工できることと、この屋根地の各部位で、それぞれ葺工
作業が個別にできる等の特徴があり有益である。

【００１４】前記のようにして、前記瓦が葺かれた後
は、同様な作業及び手順により棟方向に向かって葺工す
る。以後は桁方向に隣接する瓦を前述と同様な操作及び
手順により順次葺工する。その後、順次瓦を葺工するこ
とにより、全屋根が葺工される。

【００１５】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照として
説明する。

【００１６】１は屋根地Ｒに数本設けられた横棧で、在
来とほぼ同様な構成とする。そして、この横棧１には当
該横棧１と直交する数本の縦棧２が設けられており、こ
の縦棧２の好ましい一例を説明すると、Ｖ字形状とな
し、その内底面２ａが横棧１の上面１ａとほぼ同一面と
し、瓦Ａがせり上がらない構成（瓦Ａ、Ａ間の隙間がで
きない構成、又は瓦Ａ、Ａ間にガタが発生しない構成、
等を含む）とする。従って、縦棧２は板金構造、プラス
チック構造、その他薄肉部材で構成することがよい。ま
たこのＶ字形状のほぼＶ字溝２ｂに前記瓦Ａの安定駒Ａ
１が設けられる。尚、図中Ａ２は瓦Ａの尻側Ａ’に設け
た引掛け、Ａ３は瓦Ａの尻側Ａ’に設けた釘穴をそれぞ
れ示す。図中３は縦棧２を横棧１に設ける釘を示すが、
一例である。また前記縦棧２は図４の如く、積層可能な
構成がよい。

【００１７】以上の如く構成した横・縦棧１、２を屋根
地Ｒに設けるが、先ず横棧１を屋根地Ｒにほぼ均等でか
つ棟（図示せず）と平行する方向に数本設けた後、当該
数本の横棧１にはクロス状に数本の縦棧２が順次設けら
れる。この横・縦棧１、２により屋根地Ｒに桝目状の瓦
棧が設けられるので、その後、順次瓦Ａを葺工するが、
前述の如く、Ｖ字形状のほぼＶ字溝２ｂには瓦Ａの安定
駒Ａ１が設けられるとともに、横棧１に瓦Ａの引掛けＡ
２を掛止めすることにより、当該瓦Ａは屋根地Ｒに葺工
される。続いて、当該瓦Ａを釘３により横棧１に緊締す
ることにより、当該瓦Ａは屋根地Ｒに固定される（設け
られる）。この際、当該瓦Ａの荷重は図５の如く、横棧
１に当接する当該瓦Ａの尻側Ａ’やや内方の裏面Ａ’ａ
で受け止められる構成とし、縦棧２に荷重を掛けない構
成となっている。尚、内底面２ａに設けられた安定駒Ａ
１の底面Ａ１’と当該瓦Ａの尻側Ａ’やや内方の裏面
Ａ’ａとがほぼ同一水平面上に位置し、隙間、ガタが生
じないように前記縦棧２の肉厚及び内底面２ａの形状等
を構成する。

【００１８】尚、図６は縦棧２の他の一例で、縦棧２を
分割形状として伸縮自在にした構成例であり、各縦棧２
にそれぞれ係止部２ｃが設けられている。この係止部２
ｃは鍵片、ガイド孔と突起、その他係止等の各構成を含
むことを特徴とする。

【００１９】

【発明の効果】本発明は、横棧とほぼＶ字溝をした縦棧
で桝目状の瓦棧を形成し、この瓦棧及び安定駒等を利用
して、順次葺工する方法であって、この縦棧のほぼＶ字
溝の内底面を横棧とほぼ同一面に施工することを特徴と
する構成である。従って、縦棧と横棧との高低差（段
差）を少くして、隣接瓦間に隙間・ガタ等を生じない効
果がある。また瓦の回転防止、飛散防止、ズレ防止、滑
落防止等に役立つこと、及び耐震・耐風瓦の葺工法とし
て有益である。また安定駒を利用することから、葺工の
容易化、スピード化、簡易化、分業化等に役立つこと、
及び瓦の有効・有益利用が図れること、等の効果があ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】瓦と横・縦棧の関係を示す拡大斜視図である。

【図２】葺工の一例を示す斜視図である。

【図３】縦棧と横棧との連繋を示す要部斜視図である。

【図４】縦棧の積層を示す正面図である。

【図５】横棧と瓦との関係を示す拡大正面図である。

【図６】縦棧の他の一例を示した要部の拡大斜視図であ
る。

【符号の説明】

１横棧１ａ上面２縦棧２ａ内底面２ｂほぼＶ字溝２ｃ係止部３釘Ａ瓦Ａ’ 尻側Ａ’ａ裏面Ａ１安定駒Ａ１’ 底面Ａ２引掛けＡ３釘穴Ｒ屋根地

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】屋根地に数本の横棧を施工した後、この
横棧にクロス状に薄板で形成されたほぼＶ字溝をした数
本の縦棧を施工し、かつこの縦棧のほぼＶ字溝の内底面
を上記横棧とほぼ同一面に施工する棧の布設工程と、この布設工程で布設された前記横棧に瓦の尻側に設けた
引掛けを係止するとともに、前記縦棧に前記瓦の尻側に
設けた安定駒を係止する瓦の布設工程と、で構成される安定駒を利用した耐震・耐風瓦葺工法。