JP2911073B2 - ポリビニルアルコール系繊維およびその製造法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系繊維およびその製造法

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JP2911073B2 JP26843291A JP26843291A JP2911073B2 JP 2911073 B2 JP2911073 B2 JP 2911073B2 JP 26843291 A JP26843291 A JP 26843291A JP 26843291 A JP26843291 A JP 26843291A JP 2911073 B2 JP2911073 B2 JP 2911073B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱水性および耐熱老
化性に優れ、かつ高強度、高弾性率の高シンジオポリビ
ニルアルコール(以下PVAと略記する)系繊維とその
製造法に関するものである。本発明の繊維は高温で長時
間使用されるタイヤ、ホース、コンベアベルトなどのゴ
ム資材や、耐湿熱性も要求されるセメントやプラスチッ
クなどの補強材、さらには耐水性が必要なロープ、帆
布、テントなどの産業資材に適した、高強度、高弾性率
なPVA系繊維である。
【0002】
【従来の技術】従来、PVA系繊維は、強度、弾性率や
耐候性、耐薬品性、接着性などの点でポリアミド、ポリ
エステル、ポリアクリロニトリル系繊維に比べて優れて
おり、産業資材分野を中心に独自の用途を開拓してき
た。最近では耐アルカリ性の特徴を活かしたセメント補
強用繊維(アスベスト繊維の代替)として注目されてい
る。そしてさらなる高強度、高弾性率と合わせて、高耐
熱水性、高耐熱老化性のPVA系繊維が開発されれば、
ゴムやプラスチックの補強材あるいはロープ、漁網、テ
ントなどにおいて特に水や熱に厳しい条件下でも使用可
能となり、安全性、耐久性、軽量性などの点で優れた商
品が期待される。
【0003】現在市販されているPVA系繊維の原料で
あるPVA系重合体の立体構造は、本発明のタクチシテ
ィ評価法(詳細は後述する)によればダイアッド表示に
よるシンジオタクチシティが53〜54%のアタクチッ
ク体である。該PVA系重合体から得られる繊維は耐水
性や耐湿熱性が不十分であり、強度、弾性率も十分高い
とは言えない。
【0004】耐水性の良好なシンジオタクチシティに富
むPVAを溶剤に溶かして湿式紡糸する方法は日本特許
539683号、同581737号、同548856
号、同615659号などで開示されている。しかしこ
れらの方法では、従来のアタクチックPVAに比べて耐
水性、耐湿熱性は向上するが、耐熱老化性が不十分であ
り、かつ強度が9〜11g/dと低いものであった。
【0005】最近耐水性に加えて、強度、弾性率を向上
させようとシンジオタクチシティに富むPVA系重合体
を繊維化する提案がなされている。すなわち特開昭61
−108713号によると、ダイアッド表示でシンジオ
タクチシティが58%、平均重合度が6000のPVA
系重合体を用い、これをジメチルスルホキシド(以下D
MSOと略記する)やグリセリンに溶解して乾湿式紡糸
して、最高単糸強度15g/d、弾性率380g/d程
度の繊維が得られている。しかしこれらの値は特に高い
ものではなく、耐熱水性や耐熱老化性も前述の日本特許
同様十分なものではない。
【0006】一方、高重合度PVAを用いて、高強力、
高弾性率繊維を得る方法が特開昭59−130314
号、特開昭61−289112号、特開昭62−850
13号などで開示され、強度19〜29g/d、弾性率
550〜650g/dの繊維が得られている。しかしこ
れらの繊維は耐熱水性や耐熱老化性の点で十分とは言い
難い。
【0007】耐熱水性を向上させるために架橋を施す方
法は、特開昭63−120107号、特開昭64−15
6517号、特開平1−207435号などで公知であ
るが、架橋と共に繊維強度、弾性率、耐熱老化性が低下
する問題を有している。
【0008】また本発明者らは、先に高シンジオPVA
繊維について出願しているが(特願平2−22584
9)、この度の本願は分解抑制剤を一定範囲で高シンジ
オPVA繊維に添加する事により、乾熱延伸時のPVA
分解を抑え、同一重合度で比較した場合常に本願の強度
は、先の出願のそれより0.5〜1g/d以上、弾性率
は30g/d以上高くなる。さらに本願で得られる延伸
糸は耐熱老化性に優れ、160℃、24時間での強力保
持率は先の出願の場合50%以下であるのに対し、本願
では60%以上と、いずれも高性能を示し、産業資材と
して商品価値の高いものが得られるものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上の背景を踏まえ、
本発明の目的は、耐熱水性や耐熱老化性に優れ、かつ高
強度、高弾性率を有するPVA系繊維を提供せんとする
ものである。本発明者らは上記特性を同時に満足する繊
維の構造として、次の点を念頭に置いて検討を進めた。 (1) より完全な結晶による強固な分子間水素結合…
高シンジオPVA繊維の採用。 (2) 結晶と非晶を結ぶ強固なタイ分子…高シンジオ
で高重合度なPVAの採用。 (3) 結晶、非晶の高度な配向…高温高倍率延伸での
熱分解を抑える。 (4) 延伸時および延伸後の熱分解を抑制…分解抑制
剤の添加。
【0010】高シンジオで高重合度ほど結晶性と分子鎖
のからみにより延伸倍率が低下するが、本発明者らは、
それを高温でかつPVAの分解が少ない状態で高倍率に
延伸するためには、いかにするか、を追及したものであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、高シンジオ高
重合度PVA系繊維を高温、高倍率に延伸する際、PV
Aの酸素分解やラジカル分解を抑制する事で、強度、弾
性率、耐熱水性をさらに向上させ、かつ得られた延伸糸
を長時間高温にさらしても強度低下が少ない、言わゆる
耐熱老化性に優れた繊維を得るものである。
【0012】即ち本発明は、「(1)粘度平均重合度が
1500以上、シンジオタクチシティが58%以上で、
有機系酸化防止剤、無機系金属塩あるいはチッ素含有界
面活性剤からなる分解抑剤の1種又は2種以上を0.0
03〜3.0重量%含有しているポリビニルアルコール
系重合体からなり、単繊維強度が18g/d以上、単繊
維弾性率が450g/d以上であり、160℃、24時
間乾熱処理後の強力保持率が60%以上であるポリビニ
ルアルコール系繊維。」および「(2)粘度平均重合体
が1500以上、シンジオタクチシティが58%以上の
ポリビニルアルコール系重合体を溶剤に溶解し、常法に
より紡糸して紡糸原糸を得て、それを乾熱延伸するに際
して、溶解から乾熱延伸直前までの間で、有機系酸化防
止剤、無機系金属塩あるいはチッ素含有界面活性剤の分
解抑制剤である1種又は2種以上を該繊維に添加又は/
及び付着せしめ、245℃以上の温度で総延伸倍率が1
8倍以上になるように乾熱延伸する事を特徴とするポリ
ビニルアルコール繊維の製造法」である。
【0013】以下本発明の内容をさらに詳細に説明す
る。本発明に言うPVA系重合度とは、後述する測定法
によって求めた粘度平均重合度を言うものである。
【0014】本発明のPVA系重合体は、該重合度が1
500以上のものを用いる必要がある。重合度が150
0未満では、本発明に言う耐熱水性や高強度高弾性繊維
は得がたい。より好ましい重合度は6000以上、さら
に好ましくは10,000以上である。
【0015】本発明においては、上記重合度を満足して
いるPVA系重合体において、ダイアッド表示によるシ
ンジオタクチシティが58%以上である。シンジオタク
チシティが58%未満のPVAではより完全な結晶化が
なされず、本発明に言う高性能繊維を得るのは難しい。
シンジオタクチシティは60%以上が好ましいが、70
%を超えると高結晶化により溶剤への溶解性や延伸倍率
の低下を招き易い。
【0016】本発明に言うところのダイアッド表示によ
るタクチシティは重水素化ジメチルスルホキシド(d↓
6−DMSO)に溶解したPVA系重合体のプロトンN
MR測定により求まるトライアッド表示によるシンジオ
タクチシティ(T.Moritani etal.,
Macromolecules, 5, 577(19
72))であり、シンジオタクチシティ(S)、ヘテロ
タクチシティ(H)、およびアイソタクチシティ(I)
から次式により算出される値である。 s=S+H/2(ダイアッド表示によるシンジオタクチ
シティ) i=I+H/2(ダイアッド表示によるアイソタクチシ
ティ)
【0017】PVA系重合体には、3重量%以下の顔
料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶化抑制剤、架橋
剤、界面活性剤など必要に応じて添加しても支障ない。
【0018】PVA系重合体の溶剤としては、グリセリ
ン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリ
エチレングリコール、3−メチルペンタン−1,3,5
−トリオールなどの多価アルコールやジメチルスルホキ
シド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルア
セトアミド、N−メチルピロリドン、1,3ジメチル2
−イミダゾリジノン、エチレンジアミン、ジエチレント
リアミンおよび水などが単独または混合して使用され
る。さらに塩化亜鉛、塩化マグネシウム、ロダンカルシ
ウム、臭化リチウムなどの無機塩水溶液など該重合体を
溶解するものも使用可能である。冷却でゲル化するよう
な多価アルコールやそれらと水との混合溶剤あるいはジ
メチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドやそれらと
水との混合溶剤などが紡糸安定となり易いので好まし
い。
【0019】紡糸方式としては湿式、乾式、乾湿式など
一般に用いられるいずれの方式でも何んら支障ない。中
でも、乾湿式法を用い、PVA系重合体の溶液を紡糸ノ
ズルより吐出させ、直ちに低温のメタノールやエタノー
ルなどアルコール類あるいはそれらと該溶剤との混合液
さらには無機塩やアルカリを含む水溶液に浸漬して急冷
し均質な透明なゲル繊維を得る方法が好ましい。
【0020】本発明で用いられる高シンジオPVA系重
合体は、アタクチックPVAに比べて結晶化し易いの
で、凝固時は、20℃以下の低温にして結晶化を抑え、
かつ溶剤抽出をゆっくりして均質なゲル繊維を得るの
が、その後の高倍率延伸につながり、高機能性繊維とな
り易い。
【0021】またゲル繊維の断面変形や膠着を防止し、
かつ紡糸時の微結晶を破壊して延伸倍率を向上させるた
めに溶剤を含んだままで2倍以上、好ましくは4倍以上
湿延伸するのが良い。
【0022】続いてメタノール、エタノールなどのアル
コール類やアセトン、水などの抽出剤で該溶剤のほとん
ど全部を除去し、その後乾燥により該抽出剤を蒸発させ
る。
【0023】さらにその後、乾熱延伸するが、本発明で
は紡糸原液から乾熱延伸直前までの間で分解抑制剤を添
加又は/及び付着させ、延伸時のPVA分解と、延伸後
の乾熱老化を押さえるものである。
【0024】本発明に言う分解抑制剤とは、フェノール
系、ホスファイト系、チオエステル系、ベンゾトリアゾ
ール系、ヒンダードアミン系などの有機系酸化防止剤あ
るいはCu,Mn,Ti,Sn,Pb,Zn,Crなど
の硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物の無機系金属塩、さら
には次の3つに分類されるチッ素含有界面活性剤が挙げ
られ、これらの1種又は2種以上を用いることが出来
る。 (1) 分子内にアミド結合または尿素結合を有するア
ンモニウム化合物、例えば次の化学式1の構造式で表さ
れるカチオン界面活性剤。
【0025】
【化1】 (2) 分子内にアミド結合又は尿素結合を有するスル
ホネート化合物、例えば次の化学式2で表されるアニオ
ン界面活性剤。
【0026】
【化2】 (3) スルホネートのアミン化合物、例えば次の化学
式3で表されるアニオン活性剤。
【0027】
【化3】
【0028】これらの分解抑制剤を平滑剤や乳化剤が入
った配合油剤に添加して繊維に付着させてもよいが、付
着斑や紡糸から延伸までにおける脱落、あるいは延伸性
の阻害があるものは好ましくない。
【0029】該分解抑制剤の含有量は、延伸後で繊維に
対し0.003〜3.0重量%である。分解抑制剤の含
有量は種類によって異なるが、有機系酸化防止剤では
0.2〜2重量%が好ましく、無機系金属塩では0.0
05〜0.5重量%が好ましく、チッ素含有界面活性剤
では0.1〜1重量%が好ましい。分解抑制剤の中には
多すぎると逆に分解を促進する事があるので要注意であ
る。分解抑制剤の含有量が0.003重量%未満では分
解抑制効果が少なく、3重量%を超えると紡糸時の糸切
れや延伸倍率の低下、あるいは逆に分解を促進する場合
があり好ましくない。なお、分解抑制剤を2種類以上使
用した時の含有量は総和量を意味する。
【0030】次に得られた紡糸原糸を乾熱延伸するが、
この場合総延伸倍率を18倍以上にする必要があり、2
0倍以上が好ましい。18倍未満では、PVA分子鎖の
配向が不十分であり、より高い強度、弾性率を得るのが
難しい。総延伸倍率は湿延伸倍率と乾熱延伸倍率の積で
表される。
【0031】また、延伸倍率や結晶化度を高め、強度、
弾性率、耐熱水性に優れた高シンジオPVA繊維をつく
るためには、延伸温度は245℃以上が必要であり、好
ましくは250℃以上である。特に高シンジオPVA繊
維は結晶化し易く、高倍率延伸するには高温にしてPV
A分子鎖の運動性を高める必要がある。また高重合度ほ
ど分子鎖のからみや微結晶間を結ぶタイ分子が多いため
か延伸倍率が低下し易く、それをカバーするためには高
温延伸が必要である。しかし、従来高温になるほどPV
Aの着色分解が激しく、延伸張力の低下、ひいては強
度、弾性率の低下、さらには耐熱老化性の悪化を招い
た。
【0032】本発明では、分解抑制剤を添加又は/及び
付着させる事によって、より高い延伸温度でもPVA分
解を抑え、高倍率延伸が可能となった。
【0033】延伸温度は、高重合度、高シンジオPVA
ほど高く出来るが、あまり高すぎると分子鎖のフローが
起こり、延伸張力が下がって性能が低下したり着色分解
を誘発し易いので好ましくない。
【0034】延伸雰囲気は一般に空気、窒素などの不活
性ガス、水蒸気、油浴などが考えられるが、操作性、コ
ストなどから考えて、加熱空気が適している。また熱板
や熱ローラを用いた接触タイプと熱風炉を用いた非接触
タイプがあり、どちらでも可能である。
【0035】本発明の特徴は、高シンジオ高重合度PV
Aを用いて、分解抑制剤によって熱分解を抑えながら高
温高倍率に延伸する事にある。これより着色や重合度低
下の少ない高シンジオなPVA延伸糸が得られ、かつ高
配向高結晶化により、熱水溶断温度は140℃以上、重
合度が1万以上の高重合度では160℃以上に増大し、
さらに単繊維強度は18g/d以上、単繊維弾性率は4
50g/d以上、高重合度ではそれぞれ23g/d以
上、550g/d以上のものが得られる。また、分解抑
制剤の効果で、各用途に使用時の耐熱老化性が非常に高
く、ゴム、セメント、プラスチックなどの補強材や一般
産業資材に対し従来にみられない高性能PVA系繊維と
なる。また融点についても通常のアタクチックPVAか
らなるPVA繊維に対し、10℃以上高い値を示し、耐
熱性を要求する用途にも有利である。
【0036】
【実施例】以下実施例により、本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものでは
ない。なお実施例中における各種の物性値パラメータは
以下の方法で測定された。
【0037】 1)PVAの粘度平均重合度および重合度低下率 PVA系重合体を酢化して得た酢酸ビニルの30℃にお
けるPVA希薄アセトン溶液の比粘度η↓spを5点測定
し、次の数式1により極限粘度[η]を求め、さらに数
式2により粘度平均重合度を求めた。また重合度低下率
は、延伸糸の粘度平均重合度を上述と同様に求め、もと
のPVA重合体の粘度平均重合度に対する低下率より求
めた。
【0038】
【数1】
【0039】
【数2】
【0040】 2)酸化防止剤および界面活性剤の付着量: 乾燥後の未延伸糸を100〜130℃の熱水に溶解せし
め、NMRよりPVAのCH↓2基ピークに対する酸化
防止剤および界面活性剤のピーク比を算出し、予め作成
した検量線より付着量を求めた。
【0041】3)無機金属塩含有量 乾燥後の未延伸糸を100〜130℃の熱水に溶解せし
め、蛍光X線で特定元素のピークを測定し、検量線より
求めた。
【0042】4)熱水溶断温度(WTb) 単繊維25本にデニール当たり200mgの荷重をかけ
て、水を満たしたガラス製円筒状密封容器の中間に吊
し、周囲より水を1〜2℃/minの速度で加熱昇温さ
せていき、繊維が溶断したときの温度を測定した。
【0043】5)融点 パーキンエルマー社製の示差熱量分析計(型式 DSC
−2C)を用い、カット長約1mmの繊維を10mg採取し
て、窒素気流中、10℃/minの昇温における融点
(吸熱ピーク温度)を測定した。
【0044】6)単糸引張強伸度、弾性率 JIS L−1013に準じ、予め調湿された単繊維を
試長10cmになるように台紙に貼り、25℃×60%で
12時間以上放置。次いでインストロン1122 2kg
用チャックを用い、初荷重1/20g/d、引張速度5
0%/minにて、破断強伸度および初期弾性率を求
め、n≧20平均値を採用した。デニールは1/10g
/d荷重下で30cmにカットし、重量法により求めた。
なおデニール測定後の単繊維を用いて強伸度、弾性率を
測定し1本ずつデニールと対応させた。
【0045】 7)耐熱老化性(乾熱処理後の強力保持率): ヤーンをフリーの状態で熱風炉に入れ、160℃×24
時間あるいは160℃×48時間乾熱処理した後のヤー
ン強力を測定し、乾熱処理前のヤーン強力に対する強力
保持率(%)を算出した。
【0046】実施例1: (PVAの製法) 攪拌機を備えた反応容器に、ピバリ
ン酸ビニルモノマー600部、メタノール200部を仕
込み、窒素ガスバブリングにより系を窒素置換した。別
途メタノール26部に開始剤として2,2′−アゾビス
イソブチロニトリル0.0712部を溶解した溶液を調
整し、窒素ガスによるバブリングで窒素置換した。反応
容器を昇温し、内温が60℃に達したところで開始剤を
溶解したメタノール溶液を注入し重合を開始した。19
0分後、重合率が50%に達したところで冷却して重合
を停止し、t−ブタノールを時どき添加しながら減圧下
で未反応のピバリン酸ビニルモノマーを除去してポリピ
バリン酸ビニルのt−ブタノール溶液とした。続いて減
圧下、t−ブタノールを除去して15wt%のポリピバ
リン酸ビニルのテトラヒドロフラン溶液を得た。次に攪
拌機と還流冷却管を備えた反応器にこの溶液70部を計
り取り、60℃に加温して窒素ガスを流して窒素置換し
60℃に保持した後、別途調整し窒素置換した25%の
水酸化カリウムのメタノール溶液21部を添加し十分に
攪拌した。系は約20分でゲル化したがさらに60℃で
100分間保持した後、酢酸6.8部をメタノール20
部とともに添加して水酸化カリウムを中和した。続いて
ゲルを粉砕した後メタノールによるソックスレー洗浄を
実施し、ポリビニルアルコール系重合体を得た。得られ
たポリビニルアルコール系重合体をd↓6−DMSOに
溶解し、NMRを測定したところけん化度99.5モル
%、シンジオタクチシティ−61.2%、ピバリン酸ビ
ニル含有率0.5モル%、融点241℃であった。この
得られたポリビニルアルコール系重合体0.5部に無水
酢酸10部、ピリジン2部を加えて封管した後、120
℃で8時間加熱して、酢化した。得られたポリ酢酸ビニ
ルはn−ヘキサンに沈殿させアセトン−n−ヘキサン系
で2回再沈殿を繰り返し精製した。このポリ酢酸ビニル
のアセトン中、30℃で測定した[η]から求めた粘度
平均重合度は1850であった。
【0047】(PVA繊維の製造) 上記で得られた高
シンジオPVAを濃度16重量%になるようにDMSO
に溶解した。次いで90℃にてホール数80、孔径0.
12mmのノズルより吐出させ、乾湿式法にて20mm下の
凝固浴中に落下させた。凝固組成はメタノール/DMS
O=7/3で5℃とした。得られた透明なゲル繊維を3
倍に湿延伸したあとメタノールの抽出浴で該溶剤を抽出
したが、最後のメタノール抽出浴に分解抑制剤であるM
nCl↓2を添加し、繊維を4分間滞留させてメタノー
ル含有繊維の内部および表面に付着させた。次いでステ
アリルアミドプロピルジメチル−β−ヒドロキシエチル
アンモニウム硝酸塩のカチオン界面活性剤を付着させ、
80℃にて乾燥した。得られた紡糸原糸のMnCl↓2
含有量は0.025重量%、カチオン界面活性剤の付着
量は0.93重量%であった。次いで第1熱風炉を17
0℃にして2.5倍延伸した後、第2熱風炉を255℃
にして総延伸倍率が22.8倍になるように乾熱2段延
伸を行った。得られた延伸糸は着色がなくて重合度低下
率は8%と低く、WTbは146℃、単繊強度は20.
9g/d、弾性率は520g/d、融点は259℃とい
ずれも高い値を示した。また該延伸糸を160℃×24
時間および48時間で乾熱処理した後、強力保持率を測
定したところ、それぞれ81%および68%であり、耐
熱老化性に優れていた。さらに水湿潤時および100℃
高温時の弾性率低下が少なく、ゴムやプラスチックの補
強材あるいは一般産業資材に適した高性能高シンジオP
VA繊維である事が判明した。
【0048】比較例1: 実施例1で分解抑制剤を付着
させない場合を実施したが255℃の延伸では着色が激
しく、総延伸倍率は21.7倍と高かったが、延伸張力
は低く、重合度低下率は27%に増大した。WTbは1
40℃と高い値であったが単繊維強度は18.6g/
d、弾性率は450g/dと低いものであった。また、
160℃×24時間で乾熱処理した後、強力保持率を測
定したところ38%に低下していた。なお延伸温度を2
55℃から240℃に下げた場合、延伸時の着色がほと
んどなくなったが、総延伸倍率は19.5倍に低下し、
単繊維強度は19.9g/d、弾性率は425g/dと
低いものであった。また160℃×24時間熱処理後の
強力保持率は50%と耐熱老化性も劣っていた。
【0049】実施例2: 実施例1で製造したピバリン
酸ビニルからのPVAの製造法に準じ、粘度平均重合度
が7500、ケン化度が99.9モル%、シンジオタク
チシティが61.8%のPVAを得た。このPVAを濃
度が9重量%になるようにエチレングリコールで180
℃6時間窒素ガス雰囲気下で攪拌溶解した。得られた溶
液を190℃にてホール数150、孔径0.18mmのノ
ズルより吐出させ乾湿式法にて15mm下の凝固浴に落下
させた。凝固浴組成はメタノール/エチレングリコール
=7/3であり温度は0℃を保った。この凝固浴段階の
糸条はほぼ真円に近い透明なゲル繊維となった。続い
て、この繊維を40℃のメタノール中で4倍に湿延伸し
たあとメタノール浴でほぼ完全に該溶剤を抽出した。こ
の際最後のメタノール抽出浴にフェノール系酸化防止剤
である4′4−チオビス−(6−tブチル−3−メチル
フェノール)を0.5重量%/浴になるように添加し均
一溶液としたあと繊維を3分間滞留させてメタノール含
有繊維の内部および表面に付着させた。次いで90℃で
3%収縮を入れながら熱風乾燥して紡糸原糸を得た。該
原糸のフェノール系酸化防止剤の含有量は0.82重量
%であった。引続き該原糸にローラータッチ方式で分解
抑制剤であるラウリルアミドプロピルトリメチルアンモ
ニウム、メチルスルホネートのカチオン系界面活性剤と
平滑集束剤であるグリセリントリオレエートを付着さ
せ、170℃と260℃の輻射炉を用いて総延伸倍率2
0.4倍の乾熱延伸を行なった。得られた延伸糸は着色
もなく、該カチオン系界面活性剤の付着量は0.59重
量%であった。延伸糸のWTbは159℃と高く、単繊
維強度は24.7g/d、弾性率は630g/dを示し
高性能繊維となった。また160℃×24時間乾熱処理
後の強力保持率は78%を示し、さらに水に1日浸漬し
た後の湿潤弾性率や100℃雰囲気下の弾性率は60〜
70%を保持した。タイヤ、ホース、ベルトなどのゴム
補強材あるいはプラスチックやセメントの補強材さらに
はロープ、漁網、テントなどに従来に見られない高付加
価値PVA繊維として使用出来る事が判明した。
【0050】比較例2: 実施例2において、粘度平均
重合度が8000、ケン化度が99.9モル%、シンジ
オタクチシティが53.5%のアタクチックPVAを用
いて同様に実施したが、延伸温度が260℃では繊維の
溶融と着色があり延伸不能であった。延伸温度を250
℃に下げて18.5倍に延伸出来たが、WTbは135
℃、単繊維強度は20.4g/d、弾性率は505g/
dと高シンジオPVAを用いた実施例2の繊維よりも低
いものであった。
【0051】実施例3: 実施例1のPVAの製造法に
準じ、粘度平均重合度が15,000、ケン化度99.
2モル%、シンジオタクチシティ62.2%のPVAを
得た。このPVAを濃度4.5重量%になるようにグリ
セリンで190℃、10時間窒素ガス雰囲気下で攪拌溶
解した。その際実施例2で用いたフェノール系酸化防止
剤を1.0重量%添加し混合した。次いで得られた溶液
をホール数100、孔径0.19mmのノズルより吐出さ
せ、乾湿式法にて15mm下の凝固浴中に落下させた。凝
固浴組成はメタノール/グリセリン=7/3であり、温
度は−5℃を保った。得られた真円で透明なゲル繊維を
40℃のメタノール中で3倍に湿延伸したあと、メタノ
ール浴でほぼ完全に該溶媒を抽出し、引続き平滑集束油
剤としてグリセリンモノオレエート(ノニオン界面活性
剤)の2%メタノール溶液をギアポンプ方式で付着さ
せ、100℃にて熱風乾燥した。得られた紡糸原糸のフ
ェノール系酸化防止剤の含有量は0.85重量%、ノニ
オン界面活性剤の付着量は0.62重量%であった。引
続き170℃と266℃の輻射炉を用い、総延伸倍率1
9.1倍の乾熱延伸を行なった。得られた延伸糸の単繊
維強度は28.4g/d、弾性率は675g/dを示
し、WTbは177℃と非常に高い性能を示した。また
160℃×24時間乾熱処理後の強力保持率は75%を
示し、融点は265℃と高いものであった。さらに湿潤
弾性率は450g/d、100℃雰囲気下の弾性率は5
10g/dを示し、従来PVA繊維では得られない産業
資材に適した高付加価値PVA繊維であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−240207(JP,A) 特許2856837(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D01F 6/14,6/50

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粘度平均重合度が1500以上、シンジ
    オタクチシティが58%以上で、有機系酸化防止剤、無
    機系金属塩、あるいはチッ素含有界面活性剤から成る分
    解抑制剤の1種又は2種以上を0.003〜3.0重量
    %含有しているポリビニルアルコール系重合体からな
    り、単繊維強度が18g/d以上、単繊維弾性率が45
    0g/d以上であり、かつ160℃、24時間乾熱処理
    後の強力保持率が60%以上であるポリビニルアルコー
    ル系繊維。
  2. 【請求項2】 粘度平均重合度が1500以上、シンジ
    オタクチシティが58%以上のポリビニルアルコール系
    重合体を溶剤に溶解し、常法により紡糸して紡糸原糸を
    得、それを乾熱延伸するに際して、溶解から乾熱延伸直
    前までの間で有機系酸化防止剤、無機系金属塩あるいは
    チッ素含有界面活性剤から成る分解抑制剤の1種又は2
    種以上を該繊維に添加又は/及び付着せしめ、245℃
    以上の温度で総延伸倍率が18倍以上になるように乾熱
    延伸する事を特徴とするポリビニルアルコール系繊維の
    製造法。
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