JP2761647B2 - 建造物用免震装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、地震発生の際に地面の震動を吸収して建
造物に加わる震動をできるだけ少なくすると共に、生じ
た建造物の震動を速やかに減衰させる、建造物用の免震
装置に関するものである。

〔従来の技術〕

従来の建造物用の免震装置は、地盤と建造物の間に設
置され、建造物を支持すると共に地震波吸収作用をする
アイソレータと、建造物の震動減衰作用をするダンパー
とから構成されている。アイソレータは補強板を埋設し
たゴム体から、前記ダンパーは鋼棒、コイルバネ、オイ
ルダンパー等から成るのが通常である。

前記アイソレータとダンパーは、それぞれ別個の製品
として製造され、設置時には適宜数個のアイソレータに
よって建造物を支持すると共に、各アイソレータの間に
別個にダンパーを設置するのである。

〔発明が解決しようとする課題〕

このように、従来の免震装置はアイソレータとダンパ
ーを別個に形成すると共に両者を別々に設置するため、
設置工事が複雑化し、また嵩が高くなり、施工・運搬作
業をするにおいて不便であるという難点を有している。

そこで、この発明の目的は、ダンパーを別個に設置す
る必要がなく設置工事が簡単に行えると共に、コンパク
トであり施工・運搬作業が容易である建造物用の免震装
置を提供することである。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成するため、この発明では、弾性部材
と、前記弾性部材の上下両端部に固着された、建造物及
び地盤にそれぞれ接触・固定される一対の剛性部材とを
備えた建造物用免震装置において、前記弾性部材の内部
に形成した縦孔の内部に、震動減衰用の摩擦ダンパーを
設けており、前記摩擦ダンパーは、圧接状態で積み重ね
られた複数の平板状の振動減衰部材により構成してあ
り、弾性部材が水平方向に変位したときには平板状の振
動減衰部材相互のほぼ全域で摩擦力が作用するようにし
てある。

また、前記弾性部材の中心軸に沿って案内棒が設けて
あると共に、前記案内棒が前記震動減衰用の摩擦ダンパ
ーに設けた孔に挿通されており、前記弾性部材の変形時
に前記摩擦ダンパーが前記案内棒に沿って案内されるよ
うになっていることをが好ましい。

〔作用〕

以上のように構成すると、震動減衰用ダンパー（７）
が弾性部材（２）の内部に設けられるため、コンパクト
な構成となり、また従来のように別個にダンパーを設置
することが不要となる。

〔実施例〕

以下この発明の実施例を、図面に従って説明する。

図において、この発明に係る免震装置（１）は、円柱
形とした弾性部材（２）と、当該弾性部材（２）の上下
両端に固着された一対の円板状の剛性部材（３）を有い
ている。

前記弾性部材（２）は、複数の円形の補強板（４）と
円形のゴム層（５）を交互に積層して形成され、両端部
のゴム層（５）に前記一対の剛性部材（３）をそれぞれ
固着している。各補強板（４）の直径は、剛性部材
（３）の直径と同じであり、ゴム層（５）の直径はそれ
より少し小さい。

弾性部材（２）及び剛性部材（３）は、ゴム、鋼材等
の従来より公知の材料により適宜形成することができ
る。

互いに一体化された前記弾性部材（２）と剛性部材
（３）には、中心位置に、弾性部材（２）及び剛性部材
（３）を中心軸に沿って貫通するダンパー収容用の孔
（６）が形成してある、この実施例では、孔（６）の直
径を、前記弾性部材（２）のゴム層（５）の直径の約2/
5に相当する大きさに設定しているが、約3/10〜6/10の
大きさとするのが好ましい。

震動減衰用のダンパー（７）は、この実施例では摩擦
ダンパーとしてあり、前記孔（６）の内部に収容されて
いる。第１図及び第２図において、（８）は円柱形の下
側支持部材で、その外側面に形成したネジ部を下側の剛
性部材（３）の内面に形成したネジ部に螺合することに
より固定してある。下側支持部材（８）の中心部には、
上部に円形の窪み（９）が形成してあり、下部に窪み
（９）と連通するネジ孔（10）が形成してある。

（11）は、円板状とした上側支持部材で、その外側面
に形成したネジ部を上側の剛性部材（３）の内面に形成
したネジ部に螺合している。従って、上側支持部材（1
1）を回転すると、上下に移動することが可能である。
また、上側支持部材（11）の中心部には、円形の孔（1
2）を形成しているが、この孔（12）は、前記下側支持
部材（８）のネジ孔（10）と同心となる位置にある。

このようにして固定された上下の支持部材（８）（1
1）によって、前記ダンパー収容用の孔（６）は塞が
れ、弾性部材（２）及び剛性部材（３）の中に円筒形の
室が形成されている。

この室の中心部には、後述の震動減衰部材（18）の変
位を一様にするため、断面円形の案内棒（13）が中心軸
に沿って（上下方向に）設けてある。案内棒（13）の上
下両端は、いずれも凹状球面に形成してあり、下端は短
棒（14）を介して下側支持部材（８）に固定された球
（15）に摺動可能に載せられている。こうして、案内棒
（13）は下側支持部材（８）によって支持されている。
なお、前記短棒（14）は、側面に形成したネジ部を下側
支持部材（８）のネジ孔（10）に螺合して固定してあ
り、また球（15）はすべて窪み（９）の中にあって、上
方には突出していない。

案内棒（13）の上端には、前記球（15）と同一の球
（17）が摺動可能に載せてある。この球（17）の上面に
は、前記短棒（14）と同様の短棒（16）が固着してあ
り、その上端は上側支持部材（11）の孔（12）に挿入し
てある。この孔（12）はいわゆるバカ孔で、短棒（16）
は孔（12）内で案内されながら上下に摺動可能である。

前述の球（15）（17）及び短棒（14）（16）は、案内
棒（13）の上下両端を回動可能に接続・支持するユニバ
ーサルジョイントを構成している。

前記室内には、さらに複数の震動減衰部材（18）と、
これらの震動減衰部材（18）を下方に向けて押圧する一
つの押圧部材（19）が設けてある。震動減衰部材（18）
は、この実施例では、中心に孔を有する円形の鋼板ない
しプラスチック板から構成している。その断面形状は、
内端面が案内棒（13）との摺動を円滑にするために円弧
状としてあり、外端面は台形状でその平坦面を補強板
（４）の端面に当接している。

押圧部材（19）は、この実施例では円環形としたゴム
スプリングから構成され、最上部にある震動減衰部材
（18）と上側支持部材（11）との間に配置してある。上
側支持部材（11）は、押圧部材（19）を上方より押圧し
ながら保持しているので、各震動減衰部材（18）は押圧
部材（19）によって上方より常に押圧されていることに
なる。

上側支持部材（11）は剛性部材（３）に螺合されてい
て、回転可能なので、これを適宜回転することにより、
震動減衰部材（18）の押圧力を調整することができる。

押圧部材（19）としては、ゴムスプリングの他にコイ
ルスプリング等の公知の他の押圧手段を使用することも
勿論、可能である。

次に、以上の構成とした免震装置（１）の使用状態に
ついて説明する。

免震装置（１）は、下側の剛性部材（３）を地盤に固
定し、上側の剛性部材（３）を建造物の底面に接触・固
定して設置される。地震等によって地盤が震動すると、
その震動によって免震装置（１）は水平方向あるいは鉛
直方向に変形する。

鉛直方向に変形する場合には、弾性部材（２）のゴム
層（５）が伸縮して震動を吸収・減衰し、建造物に震動
が伝達され難くする。このとき、ダンパー（７）は、複
数の震動減衰部材（18）が案内棒（13）と摺動しながら
少し上下に変位するため、両者間の摩擦により震動を減
衰する作用をする。

水平方向に変位する場合は、第２図に示すように、弾
性部材（２）と共にダンパー（７）も同方向に変位す
る、変位する際に、震動減衰部材（18）は案内棒（13）
に案内されながら一様に変位し、その際に各震動減衰部
材（18）間の摩擦及び震動減衰部材（18）と案内棒（1
3）間の摩擦によって、震動エネルギーは吸収される。
こうして、震動を効果的に減衰することができる。

案内棒（13）と二つの短棒（14）（16）は、二つの球
（15）（17）を介して摺動可能に接続されているので、
容易かつ円滑に変形することができる。

ダンパー（７）の案内棒（13）の支持は、ユニバーサ
ルジョイントによってすべての方向に変位可能としてい
るので、変形時においても何ら支障は生じない。

また、ユニバーサルジョイントの構成としては、前記
実施例に示したものでなくても、公知の任意の構成を使
用することができるのは、勿論である。

なお、前記実施例では、ダンパー収容用孔（６）を下
側の剛性部材（３）にまで貫通されると共に、下側支持
部材（８）を設けて案内棒（13）や震動減衰部材（18）
を支持しているが、剛性部材（３）自体に、前記下側支
持部材（８）に設けた窪み（９）、ネジ孔（10）を形成
する等として、下側支持部材（８）を省略して実施する
ことも可能である。

〔発明の効果〕

以上の説明から明らかなように、この発明の免震装置
（１）は、内部に震動を吸収して減衰するダンパー
（７）を設けたので、従来の免震装置のようにダンパー
を別個に設置する必要がなく設置工事が簡単に行えると
共に、コンパクトであり施工・運搬作業が容易であると
いう優れた効果を有する。

また、震動減衰用ダンパー（７）を摩擦ダンパーとす
ると、構成が簡単で震動減衰効果も十分であるという効
果がある。

さらに、震動減衰用ダンパー（７）を互いに重ねられ
た複数の板状の震動減衰部材（18）から構成すると、摩
擦力の調整も容易に行え、減衰特性の変更が可能とな
る。

案内棒（13）を設けると、震動減衰部材（18）を一様
に変位させることができ、内部に無理な力が生じないと
いう利点がある。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図は、この発明に係る建造物用免震装
置の一実施例を示しており、第１図は免震装置の正面断
面図、第２図は水平方向に変位した状態を示す同免震装
置の正面断面図、第３図は同免震装置の平面図である。 （１）……免震装置、（２）……弾性部材 （３）……剛性部材、（４）……補強板 （５）……ゴム層、（６）……ダンパー収容用孔 （７）……震動減衰用ダンパー （８）……下側支持部材、（９）……窪み （10）……ネジ孔、（11）……上側支持部材 （12）……孔、（13）……案内棒 （14）（16）……短棒、（15）（17）……球 （18）……震動減衰部材、（19）……押圧部材

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平２−178441（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−29541（ＪＰ，Ａ) 実開 昭63−102807（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭63−102806（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭61−39705（ＪＰ，Ｕ)

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】弾性部材と、前記弾性部材の上下両端部に
   固着された、建造物及び地盤にそれぞれ接触・固定され
   る一対の剛性部材とを備えた建造物用免震装置におい
   て、前記弾性部材の内部に形成した縦孔の内部に、震動
   減衰用の摩擦ダンパーを設けており、前記摩擦ダンパー
   は、圧接状態で積み重ねられた複数の平板状の振動減衰
   部材により構成してあり、弾性部材が水平方向に変位し
   たときには平板状の振動減衰部材相互のほぼ全域で摩擦
   力が作用するようにしてあることを特徴とする建造物用
   免震装置。
2. 【請求項２】前記弾性部材の中心軸に沿って案内棒が設
   けてあると共に、前記案内棒が前記震動減衰用の摩擦ダ
   ンパーに設けた孔に挿通されており、前記弾性部材の変
   形時に前記摩擦ダンパーが前記案内棒に沿って案内され
   るようになっていることを特徴とする請求項１記載の建
   造物用免震装置。