JP2664765B2 - セラミックス複合材料及びその製造方法 - Google Patents

セラミックス複合材料及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、特殊構造のセラミックス材料及びその製法
に関する。更に、詳しくは、特殊な構造を有し、高強
度、耐熱性の高性能の複合セラミックス材料及びその製
法に関する。
[従来の技術] MgOは、すぐれた耐熱性、耐食性、電気絶縁性を有す
るが、高温強度、破壊靭性、耐熱衝撃性は乏しく、構造
材料として使用するには、強度面において、不十分であ
る。
一般に、材料のマトリックス中(例えば、アルミナ粒
子中)に第2相として微粒子(SiC、Si3N4等)を分散
し、焼結することで、大幅な物理的諸特性を改善するこ
と、特に、高い強度を得ることが、可能になることが、
文献等で多く報告されている。その中でも、MgO−SiC系
は、大工試報告に、報告されており、その強度が著しく
上がり、MgO特性改善が可能であることを報告されてい
る。この報告では、SiCの複合化に伴うMgOの強度増加
は、SiC微粒子が、MgO粒界に偏在するために、生じるク
ラックデフラクションによるクラックの進展の妨害が、
寄与していると結論ずけている。
また、アルミナのようなセラミックス焼結体では、異
方性粒子で、マトリックスが形成されており、そのた
め、粒子境界で隣接粒子の熱膨張差により歪みが発生
し、このために、粒界が破壊源となり、強度低下になる
ことが周知である。また、高い強度にするため、ウィス
カー等を分散したセラミックスコンポジェットも多い
が、多くの場合、ウィスカーの引き抜き効果による高い
靭性を得ることが目的である。従って本質的に高い強度
にすることは困難である。このように、従来の方法で
は、セラミックスマトリックス中に、粒子やウィスカー
を分散して、クラックの進展を阻止するため、靭性の向
上が期待されるというものであった。この考えでは、破
壊の発生源である粒界の欠陥は、変化がなく、その欠点
は、残存しているため、強度の大きな向上は、望めなか
った。
[発明が解決しようとする問題点] 本発明は、上記のような欠点を解消するため、MgOマ
トリックスに該マトリックス素材より熱膨張係数の小さ
いTiN微粒子を複合化した構造セラミックス材料とし
て、高い強度のセラミックスコンポジェットを提供する
ことを目的とする。従って、本発明は、MgOの特性の改
善を試みたセラミックス複合体を提供することを目的に
する。更に、通常の耐火耐熱材料、電子セラミックス用
材料においては、それほど、結晶の大きさを制御しなく
ても、耐熱衝撃性が得られ、また、使用中の破壊特性が
著しく改善された材料を提供することを目的にする。
[問題点を解決するための手段] 本発明は、0.5μm〜100μmの結晶粒子を有するMgO
マトリックス中に粒子径2.0μm以下のTiN微粒子を分散
させたことを特徴とするセラミックス複合材料である。
そして、その製法は、5μm以下の粒子径に微粉砕した
MgO及び2.0μm以下の粒子径に微粉砕したTiNを混合
し、ホットプレス、HIP、常圧焼結法等により焼結する
ことによるものである。
[作用] 本発明によるセラミックスコンポジェットは、MgOセ
ラミックスコンポジェット材料の結晶内、そのものに、
TiN微粒子を分散させる、所謂、ナノオーダーの複合化
を行なうことにより、セラミックス体の特性の強化、改
善を得ようとするものである。
即ち、個々のMgO結晶粒子内に、TiN微粒子を分散する
ことで、MgOとTiNの熱膨張係数の差による残留応力を生
じさせる。この残留応力により、隣接する粒子の粒界
に、圧縮応力場を生じさせておき、進行しようとするク
ラック先端をトラップしたり、デフラクションすること
により、クラックの進展を防止しようとする考えであ
る。
このような機構について、第1図を参照して、更に、
詳細に論じる。即ち、本発明のセラミックス複合体は、
第1図の模式図に示すように、MgOマトリックスの各粒
子内に微粒子TiNが分散されている構造のものである。
個々のMgO結晶粒内にTiN微粒子を分散することで、MgO
とTiNとの熱膨張係数の差による残留応力を生じさせ
る。この応力により隣接するMgO粒子の粒界に圧縮応力
場を生じさせておき、進行しようとするクラック先端を
その応力場にトラップ(又はデイフラクション)するこ
とにより、クラック進展を防止するものである。
つまり、この応力によって、MgOの高温強度低下の大
きな原因であるMgO結晶粒界のすべり及びキャビテーシ
ョンが抑制されるため、高温強度が改善される。更に分
散したTiN粒子は高温におけるMgO中の転位移動を阻害
し、MgO自身の高温変形をも抑制する。このため、高強
度、高靭性が得られるものである。
本発明は、マトリックスとしてMgO、分散粒子としてT
iN微粒子を用いることが、特長である。そして、そのMg
Oマトリックス粒子径は、0.5μm〜100μmであり、TiN
微粒子は、粒子径2.0μm以下で、MgOマトリックス中に
TiN微粒子を分散させた構造のものである。その原料と
しては、、5μm以下の粒子径に微粉砕したMgO及び1.0
μm以下の粒子径に微粉砕したTiNを用いて、混合し、
焼成することにより、前記のセラミックス複合材料が製
造される。
セラミックス複合体中のMgOマトリックス粒子径は、
0.5μm〜100μmとする理由は、焼結体の強度が最大と
なる範囲であるためであり、TiN微粒子を、粒子径2.0μ
m以下にする理由は、MgOマトリックス結晶粒子内に取
り込まれる最適の粒度範囲にあるためである。
また、その原料として用いるMgOを、5μm以下の粒
子径に微粉砕したものとする理由は、焼結し易いためで
あり、原料TiNを2.0μm以下の粒子径に微粉砕したもの
を用いる理由は、2.0μmを超えるとマイクロクラック
が発生すること、マトリックス粒内にTiNが取り込まれ
易いこと、そして、残留応力がある限界以上になっても
マイクロクラックが発生しない範囲であること等であ
る。
本発明によるマトリックスMgOは、焼結工程で、緻密
に焼結される必要があり、この粒子内に分散相のTiN
が、均一に微粒子分散されていることが、必要である。
この分散相は、マトリックスより、熱膨張係数が低いこ
とが必要であり、更に、高温時でマトリックスより高強
度、高硬度を維持していることが必要である。また、焼
結過程で、マトリックス粒子内に取り込まれるものでな
ければならない。
そのために更に、焼結温度を十分に高くしなければな
らない。1300℃焼結温度も可能であるが、再加熱収縮等
を考慮すると、1400℃以上の焼結が望ましい。
本発明により得られるセラミックス複合体は、耐熱材
料として、その他、耐食、熱間高強度、耐熱衝撃性等の
耐火材として、特に、好適である。
次に、本発明のセラミックス複合体の製造とその得ら
れる特性を測定した結果について説明するが、本発明
は、次の実施例に限定されるものではない。
[実施例] [試料粉末の調整] マトリックスには、ウベ株式会社製MgO#1000(平均
粒径0.1μ、純度99.99%)を用い、添加するTiNとして
は、日本新金属株式会社製のTiN(メディア撹拌型微粉
砕機を用いて微粉砕したもの)を用いて、マトリックス
材料に対して、5容量%〜50容量%の割合で添加混合し
た。この混合粉末にエチルアルコールを分散媒として、
加え、湿式混合し、アルミナボールミルで、12時間粉砕
混合を行なった。これを十分に乾燥した後に、アルミナ
ボールミルで乾式混合を24時間行なったものを、試料粉
砕して使用した。
[焼結処理] 焼結処理には、誘導加熱式ホットプレス装置(富士電
波工業製)を用いた。前記のように調製した試料粉末32
gを黒鉛ダイス(内径55mm)に充填し、10MPaに予備圧縮
した後に焼結処理した。このとき、充填した試料が、ダ
イス内壁、パンチ棒のプレス面に直接接触し、反応しな
いように、これらの面にBNパウダーをコーテイングし、
更にこの上にグラファイトホイル(厚さ0.38mm)を置
き、この中に試料を充填した。
ホットプレス条件は、焼結温度まで昇音させた後、1
時間保持し、プレス圧は、30MPaで、雰囲気ガスにはア
ルゴンガスを用いた。得られた焼結体は、約50φmm×4m
m、であった。
[試験片作製] 得られた焼結体のプレス両面をダイヤモンドホイール
で研削し、#1000の粗さに仕上げ、これをダイヤモンド
カッターで直方体に切り出した。試料はJIS R1601規定
に準じて、3×4mm角長さ36mm程度にし、3点曲げ試験
片の大きさとした。
また、得られたセラミックス焼結体の表面を研摩し
て、それを電子顕微鏡で観察した。即ち、第7図に、本
発明によって得られたセラミックス複合体の電子顕微鏡
写真を示す。実際に得られたセラミックス複合体が、上
記のような構造を有することを証するものである。第7
図の写真の小さく円形に見えるものが、TiNの微粒子で
あり、ほぼ0.5μmの直径のものである。
[密度測定] 密度はアルキメデス法を用いて、トルエン溶液中で測
定した。試料に上記の曲げ試験片3本以上を用いて測定
した。
[曲げ強度測定] 曲げ強度は、3点曲げ試験法により、荷重速度0.5mm/
分、スパン長さ30mm、室温及び高温酸化雰囲気(最高14
00℃)で、強度を測定した。但し、高温強度は、一部試
験片のみで測定した。試験片はダイヤモンドペースト
(3μ)を用いて、引張面を鏡面仕上げし、そして、エ
ッジ部分45゜の角度で約0.1mmの幅で面取り加工したも
のについて、測定した。
[ビッカース硬度及び破壊靭性の測定] マイクロビッカース硬度計を用いてビッカース硬度及
び破壊靭性を測定した。破壊靭性は、荷重1kgで、保持
時間10秒間で、IM法により測定した。
[添加TiN量と密度の関係] 前記のような構造の複合体を作製したことにより、マ
トリックスMgOは緻密化されることが、密度測定によ
り、明らかにされた。即ち、第2図に、焼結温度とTiN
添加量に対する相対密度の変化を示す。
X線回折の結果からは、1900℃までの焼結温度では、
MgO/TiN相互の反応は、認められなかったが、このとき
の理論密度は、MgO=3.58g/cm2、TiN=5.40g/cm2とし、
各々を単純比率で混合したとして計算したものを、100
%として、相対密度を求めた。
TiN無添加のMgOは、1300℃以上の焼結温度では、相対
密度は100%となる。然し乍ら、TiN添加量の増加に伴い
マトリックスの焼結は著しく抑制され、MgOの緻密化に
は、高い焼結温度を必要とする。
TiN添加量50容量%までの1900℃焼成の焼結体の相対
密度は、ほぼ100%であった。焼結温度1700℃以下で
は、TiN添加量が20容量%以上になると、相対密度は97
%以下となり、緻密化が困難であった。これは、TiNの
混入がマトリックスMgOの焼結によ緻密化を阻害し、即
ち、MgO粒子相互間にTiN粒子が存在することでMgO粒子
間の緻密化、焼結が抑制され、そのため、焼結時の空隙
の減少が不十分になり、この部分に残存気孔が残ったも
のと考えられる。TiN粒子の添加量増加は、この空隙を
増やす原因になると思われる。
[曲げ強度への影響] 第3図に、3点曲げ強度とTiN添加量との関係を示
す。この測定値から、MgO単体での1300℃焼結体では、
最大値430MPaで、平均300MPa程度の強度があった。それ
に対して、TiN添加10容量%から30容量%では、およそ5
00MPa以上にまで強度の向上が見られた。これらの試料
の破断面を観察すると、非常に複雑な面を呈していたこ
とから、MgOが高い強度になったことは、TiN添加による
クラックデフラクションが発生し、靭性が改善されたも
のと考えられる。
緻密化が、不十分な焼結体(相対密度95%以下)で
は、100前後の密度のものと比較して、大幅な強度低下
が見られた。これらは、試料加工中に崩壊することが多
かった。これは焼結が不十分であり、存在する残留気孔
がマトリックス破壊源となるためと考えられる。
[硬度と破壊靭性へのTiN添加の影響] 第4図及び第5図は、TiN添加量とビッカース硬度及
び破壊靭性の関係を示すグラフである。
ビッカース硬度の測定は、TiN添加量10容量%のもの
について行なった。これは、MgO単体(1300℃焼結体)
に比べ、2倍の約10GPaと大幅な硬度の向上が見られ
た。そして、更に添加量を増加すると、硬度は単調に増
加し、30%より下降する傾向が見られた。TiN添加量30
容量%まででは、およそ2倍の約11GPaにまで硬度が向
上した。
破壊靭性についても、同様な傾向が見られた。即ち、
TiN添加量の増加につれ、靭性の向上が見られ、TiN添加
量30容量%では、MgO単体(1300℃焼結体)の2倍の3.5
MPa・m1/2まで靭性値が増加した。TiN無添加では、ビ
ッカース圧痕からのクラック進展の形状は、直線的なも
のであった。これに対して、TiN添加のものは、クラッ
ク進展の形状にデイフラクション発生によると思われる
顕著な湾曲面が見られた。このデイフラクション発生に
より、靭性が向上され、その結果、強度が改善されたも
のと考えられる。
[TiN添加の高温曲げ強度に対する影響] 第6図は、焼結温度1900℃でのTiN添加量30容量%のM
gO焼結体の高温酸化雰囲気中における測定した曲げ強度
を示すグラフである。この測定試料は、各1本であっ
た。MgO単体では高温になると著しい強度低下が生じる
ことが、知られている。TiN添加のものでは、1400℃ま
での強度の低下が見られず、室温なみの強度が維持され
た。そして、1000℃前後において顕著な強度増加が認め
られた。
[発明の効果] 本発明によるTiN添加したMgOマトリックスは、次のよ
うな顕著な技術的な効果が得られるものである。
第1に、以上の説明で明らかなように、高温で使用可
能な構造材料として利用性を有するMgO/TiN複合体材料
を提供できる。
第2に、本発明の製造方法で得られたMgOマトリック
スセラミックス複合体は、大幅な特性改善と、高い強度
にすることのできるものである。
第3に、本発明のセラミックス複合体は、MgOの特性
をそのまま生かして、且つ高強度、高靭性の特性を有す
る材料を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明のセラミックス複合体の構造を模式的
に示す顕微鏡観察図である。 第2図は、本発明によるMgOマトリックス焼結体緻密化
とTiN添加量との関係を示すために、相対密度を、TiN含
有量に対してプロットしたグラフである。 第3図は、本発明によるMgOマトリックス焼結体の曲げ
強度とTiN添加量との関係を示すために、測定曲げ強度
を、TiN含有量に対してプロットしたグラフである。 第4図は、本発明によるMgOマトリックス焼結体のビッ
カース硬度とTiN添加量との関係を示すために、測定ビ
ッカース硬度を、TiN含有量に対してプロットしたグラ
フである。 第5図は、本発明によるMgOマトリックス焼結体の破壊
靭性とTiN添加量との関係を示すために、測定破壊靭性
を、TiN含有量に対してプロットしたグラフである。 第6図は、本発明によるMgOマトリックス焼結体の高温
での曲げ強度とTiN添加量との関係を示すために、測定
高温曲げ強度を、TiN含有量に対してプロットしたグラ
フである。 第7図は、本発明によって得られたセラミックス複合体
の結晶の構造を示す電子顕微鏡写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 新原 晧一 神奈川県横須賀市走水2丁目25番2―2 号 (56)参考文献 特開 平1−188454(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】0.5μm〜100μmの結晶粒子を有するMgO
    マトリックスの結晶粒内に該マトリックス素材より熱膨
    張係数の小さい粒子径2.0μm以下のTiN微粒子を分散さ
    せたことを特徴とするセラミックス複合材料。
  2. 【請求項2】5μm以下の粒子径に微粉砕したMgO及び
    2.0μm以下の粒子径に微粉砕したTiNを混合し、焼成す
    ることを特徴とする請求項1記載のセラミックス複合材
    料の製法。
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