JP2661516B2 - 化学銅めっき液及びそれを用いた銅めっき皮膜の形成方法 - Google Patents

化学銅めっき液及びそれを用いた銅めっき皮膜の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は化学銅めっき液及びそれ
を用いた銅めっき皮膜の形成方法に係り、より詳しくは
プリント配線板の導体回路やセラミック基板上の導体回
路あるいは電磁波シールド材に用いる銅皮膜等のあらゆ
る銅皮膜を得るための化学銅めっき液及びそれを用いて
銅めっき皮膜を形成する方法に関する。 【0002】 【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来、金
属銅を化学的に析出させる化学銅めっき液として、エチ
レンジアミン四酢酸(EDTA)、あるいはロッシェル
塩を銅イオンの錯化剤として用いた浴が広く知られてい
る。特に、銅塩として硫酸銅、還元剤としてホルムアル
デヒドを用いた浴は最も一般的に用いられている。これ
らの化学銅めっき液を利用する場合、析出速度が遅い等
の欠点を有している。近年、例えばプリント基板のコス
トダウン化の為に、高速化学銅めっき液を求める声が強
く、それに応じる為加速剤を用いた浴(特開昭60−1
59173号公報)や還元剤に活性剤を添加した浴(特
開昭55−76054号公報)等が提出されているが、
未だ不十分であり、更なる高速浴の開発が望まれてい
る。 【0003】特開昭60−70183号公報は、化学銅
めっき液に安定剤としての金属シアノ錯体と共に金属シ
アノ錯体の金属を錯化する錯化剤を添加することによっ
て、化学銅めっき皮膜を安定して得る化学銅めっき方法
を開示し、その金属シアノ錯体の金属を錯化する錯化剤
としてアルカノールアミンを用いている。しかしなが
ら、この方法では銅イオンを錯化する錯化剤がアルカノ
ールアミンとは別に添加されており、またアルカノール
アミンの加速剤としての作用についての記載は全く見ら
れない。 【0004】特開昭59−143058号公報は、化学
銅めっき液にトリエタノールアミンを含む化学銅めっき
液は安価な薬品で調整しても高いめっき効率を与えるこ
とを教示する。しかしながら、この化学銅めっき液も銅
イオンを錯化する錯化剤がトリエタノールアミンとは別
に添加されており、またトリエタノールアミンの加速剤
としての作用についての記載がないのみならず、トリエ
タノールアミンの添加量を0.01〜0.5g/lより
増加するとめっき液の分解を認め、銅のめっき効率が低
下したと記載している。 【0005】特開昭60−218479号及び同60−
218480号公報は、アルカリ可溶性無機ケイ素化合
物とめっき液の安定化に効果のある無機及び有機化合物
とを添加した化学銅めっき液は物性の優れた銅皮膜を与
えることを教示しているが、銅イオンの錯化剤としては
>N−C−C−N<を骨格とする構造を有するものが好
適であり、トリエタノールアミンは問題があると記載し
ている。 【0006】化学銅めっき液の錯イオン錯化剤としてト
リアルカノールアミンを例示している文献はいくつかあ
る(例えば、特開昭55−65355号、同59−25
965号及び同60−245783号公報など)。しか
しながら、これらはいずれも単に銅イオンの錯化剤とし
てトリアルカノールアミンを用いうることを一般的に記
載するのみで、過剰のトリアルカノールアミンが錯化剤
かつ加速剤としても作用することについては全々記載も
示唆もされていないし、トリアルカノールモノアミンを
錯化剤として用いた実施例さえ含まれていない。 【0007】「無電解メッキおよびプラスチック上への
メッキ」(メッキ技術資料集(2)1973)はトリア
ルカノールアミンを錯化剤として用いた化学銅めっき液
に関するめずらしい実際の実験報告について述べてい
る。しかしながら、この文献によると約1.5μm/Hr
という低い銅の析出速度が報告されているのみである。 【0008】 【課題を解決するための手段および作用】本発明は、上
記問題点を解決する為に、銅塩、銅イオン錯化剤、還元
剤、pH調整剤を含有する化学銅めっき液において、銅イ
オン錯化剤かつ加速剤としてトリアルカノールモノアミ
(トリイソプロパノールアミン)を用いる化学銅めっ
き液を提供するものである。本発明はトリアルカノール
モノアミンのうちトリイソプロパノールアミンを用いる
場合に関するものであるが、以下の説明では、便宜上、
特にトリエタノールアミンを含むトリアルカノールモノ
アミン一般を用いる場合を参照する形で説明する。
来、化学銅めっき液に実際に用いられている錯化剤とし
ては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、ロッシェ
ル塩があげられ研究対象として、N,N,N′,N′−
テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミ
ンやニトリロ三酢酸等がある。それらの錯化剤を用いた
化学銅めっき析出速度は、大変おそく、通常1〜2μm
/Hrである。これは、物性向上の為に添加剤を用いるの
で速度が落ちるのであるが、添加剤を用いない基本浴
(銅塩、錯化剤、還元剤、pH調整剤、のみの浴)におい
てもせいぜい10μm/Hr程度である。最近の報告で、
最も速いめっき液は錯化剤としてN,N,N′,N′−
テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミ
ンを用い、かつ、活性剤を用いためっき液により72μ
m/Hrが報告されている(特開昭59−25965号公
報)。しかしながら、このめっき液についても使用でき
る速度は2〜5μm/Hrであると報告されている(特開
昭60−159173号公報)。 【0009】我々は、種々の錯化剤を用いて研究を進め
た結果、錯化剤としてモノアミン型のトリアルカノール
アミン、特にトリエタノールアミンを用い、かつそれを
加速剤としても機能されることにより100μm/Hr以
上の高速化学銅めっきが可能であり、物性向上の為に添
加剤を添加した場合でも30〜120μm/Hrという極
めて高速でしかも物性のよい銅皮膜が形成できることを
見い出し、本発明を完成した。 【0010】トリアルカノールモノアミンを錯化剤とし
て実際に用いた化学銅めっき液に関する報告は殆んどな
い。唯一の学術文献では、トリエタノールアミンを錯化
剤として用いpH13.0という高pHにおける析出速度が
約1.5μm/Hrという否定的な結果となっている。
(前出メッキ技術資料集(2)参照)。特開昭49−5
9042号公報ではトリエタールアミンを用いて5〜1
0μm/Hrの高速めっきを実現できることが開示されて
いる。これらの文献による結果は、我々のデータと異な
が、それはこの文献ではデータをとる範囲(特に温
度、pH、O2 濃度etc)が狭すぎた為と考えられる。
さらに、これらの文献はトリイソプロパノールアミンに
ついては全く何ら開示していない。 【0011】我々の実験結果によると、トリエタノール
アミンを、銅イオン濃度の1.2倍より多く用いた時
に、異常な高速反応が起こることがわかっている。これ
は、通常の錯化剤の概念をくつ返すものであり、加速剤
としても機能していると考えるとわかりやすい。すなわ
ち、通常、錯化剤は銅イオンがアルカリ条件下で沈殿し
ないように銅イオンに配位し、溶解させるものであるの
で、Cu2+→Cu0 というめっき還元反応の為には、じ
ゃまな存在であった。つまり、銅が析出する為には錯イ
オンを形成している配位結合を解き、銅が配位子から離
れなければならず、錯化剤は、普通析出を妨害すると考
えられている。また、Cu2++L=Cu2+−L(式中、
Lが配位子)という錯イオン形成の平衡反応があり、C
2+−L(錯イオン)よりCu2+(フリーイオン)の方
が反応性が高いと考えられる為、L(錯化剤)をなるべ
く少くして(足らないと浴が分解したり、Cu(OH)
2 が沈澱したりする)析出速度を落とさない成分設計が
なされてきた。従って、通常考えられている錯化剤の量
は、経済的理由もあって、Cu2+濃度の0.8〜1.5
倍であった。 【0012】我々は、従来の考え方にとらわれずに研究
した結果、トリアルカノールモノアミンを過剰に用いて
加速剤としても機能できる状態にした時にのみ、高速め
っきが実現されることを発見した。我々は別の特許出願
に開示したとおり(特願昭61−269806号、特願
昭61−152620号、特願昭62−154309
号、及び昭和62年10月21日出願の特許願「化学銅
めっき液」)、BF4 - イオンと、トリアルキルアミン
が高速化に役立つことを知っている。それらの物質は、
電子リッチであったり、電子供与性を有したりしてい
た。今回我々は、そのような作用を錯化剤に導入したら
高速化が更に進むのではないだろうかという考えで研究
を進めた結果、先回までの知見では考えられないような
高速化学銅めっきを開発できた。 【0013】前回のトリアルキルアミンによる高速化の
報告では、アルキルアミンのうち、トリアルキルアミン
のみが高速化に役立つことを報告した。そして、アミノ
基を2つ持つジアミン系は、高速化は示さずかえって減
速作用を示すことがわかった。この理由は、不明だが、
界面での吸着性や電子供与性あるいは化学反応性などを
すべて考慮しなければならないと考えられる。 【0014】今回の研究では、前回での経験を生かして
アミノ基を1つしか持たない、トリアルキルアミンのう
ち銅イオン(Cu2+)を錯化することの出来るトリアル
カノールモノアミンについて追及した結果、単なる電子
供与性だけでは説明できない程の、高速化学銅めっきが
実現できることを発見した。そして、その効果は手に入
れることのできるトリアルカノールモノアミンつまりト
リエタノールアミンとトリイソプロパノールアミンの両
方で確認でき、かつ添加量に速度が大きく影響されるこ
とがわかった。また、アミノ基が1つで銅イオンを錯化
できる物質には他にニトリロ三酢酸があるが、単なる水
酸基でなく、カルボキシル基(ケトン基を有する)であ
る為か高速反応は実現できなかった。従って、一連の高
速反応は、トリアルカノールモノアミンを錯化剤として
用いかつ、加速剤としても機能させた場合のみと考えら
れる。 【0015】トリアルカノールモノアミンの代表的化合
物であるトリエタノールアミンを錯化剤として用い、め
っき処理をした結果を図1に示す。錯化剤と銅塩とのモ
ル比が2〜5において特に顕著な高速めっきが起こって
いる。60℃において、フェロシアン化カリウム、2,
2′−ビピリジルという代表的添加剤を使用した場合
の、めっき速度としては、100μm/Hr以上という値
は異常に高いことに注目すべきである。 【0016】次に入手しやすいトリアルカノールモノア
ミンはトリイソプロパノールアミンである。その添加量
と速度との関係を図2に示す。トリエタノールアミンの
場合に比べ最高で50μm/Hr程度というのは効果が小
さいが、従来浴(EDTAを錯化剤として用いた浴)に
比べると30倍程の高速化学銅めっきと言える。特に高
速反応が実現できる範囲は、トリエタノールアミンより
少い1.5〜3の〔錯化剤〕/〔Cu2+〕比の範囲であ
った。 【0017】ちなみに比較例として、他に一般的に使用
される錯化剤のうち、エチレンジアミン四酢酸(EDT
A)、N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキ
シプロピル)エチレンジアミン、またトリエタノールア
ミンのジアミン構造を持つN,N,N′,N′−テトラ
キス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、また
アミノ基が1つしかないがアルコール類ではないニトリ
ロ三酢酸について同様の効果を全く同様の条件で測定し
た結果を図3に示す。すべての場合において析出速度は
10μm/Hr以下であり、錯化剤使用量による変化がな
い点等が、トリアルカノールアミンの場合とは大きく異
なる。このことより、トリアルカノールモノアミンは錯
化剤としてと同時に、何らかの加速剤としても機能して
いると認められる。 【0018】以上の事実は、現在まで全く報告されたこ
とのない新事実であり、次の点が大変興味深い点であ
る。 錯化剤/Cu2+のモル比が通常で使用される0.8
〜1.2、さらには1.5あるいは2より大きい場合に
特に顕著に現われる。 トリアルカノールモノアミン構造では現われるが、
アミノ基が2つ結合した形ジアミン系ではまったく現わ
れない。 【0019】 アミノ基に結合する有機基が、水酸基
を有する場合のみ現われ、カルボキシル基(ケトン基)
では現われない。 通常の酸化還元反応からは考えられない程の高速反
応である。こうして、本発明によれば、銅イオン、銅イ
オン錯化剤、還元剤及びpH調整剤を含む化学銅めっき液
において、少なくとも主たる錯化剤として他の錯化剤を
含まずに、トリアルカノールモノアミン又はその塩を錯
化剤かつ加速剤として含み、該トリアルカノールモノア
ミン又はその塩を、銅イオンを錯化するには十分である
が加速剤として機能するほどには多量に存在しない場合
の銅の析出速度と比べて実質的に向上した銅の析出速度
を与える量で含むことを特徴とする化学銅めっき液が提
供される。 【0020】また、同様に、本発明によれば、銅イオ
ン、錯化剤、還元剤及びpH調整剤を含んで成り、トリア
ルカノールモノアミン又はその塩を錯化剤かつ加速剤と
して含む化学銅めっき液に、銅析出に感受性のある被め
っき材を浸漬して被めっき材表面に、該トリアルカノー
ルモノアミン又はその塩が銅イオンを錯化するには十分
であるが加速剤として機能するほどには多量に存在しな
い場合の銅の析出速度と比べて実質的に向上した析出速
度で銅を析出させることを特徴とする銅めっき皮膜の形
成方法が、提供される。 【0021】銅塩としては、銅イオンを提供するものな
ら特に限定されない。例えば硫酸銅(CuSO4 )、塩
化銅(CuCl2 )、硝酸銅(Cu(NO3 2 )、水
酸化銅(Cu(OH)2 )、酸化銅(CuO)、塩化第
1銅(CuCl)等がある。浴中に存在する銅イオンの
量は一般に0.005M〜0.1M、好ましくは0.0
1M〜0.07Mである。代表的なCu2+濃度に対する
析出速度変化を図7に示した。浴条件によっても変化す
るが、従来浴以上の高速性を得る為には0.005M以
上必要であり、安定性、経済性より一般に0.1M以下
が好ましい。 【0022】還元剤としては銅イオンを金属銅に還元で
きるものならば特に限定されないが、ホルムアルデヒド
及びその誘導体、並びにパラホルムアルデヒドのような
重合体、あるいはその誘導体や前駆体が好適である。還
元剤の量はホルムアルデヒドに換算して0.05M以
上、好ましくは0.05M〜0.3Mの範囲内である。
ホルムアルデヒド量に対する析出速度変化は、図8に示
した。従来浴以上の高速性の為には0.05M以上必要
であり、浴の安定性、経済性の為には0.3M以下が好
ましいことがわかる。 【0023】pH調整剤は、pHを変化させうるものなら特
に限定されない。例えば、NaOH,KOH,HCl,
2 SO4 ,HF、等がある。浴のpHは一般に12.0
〜13.4(25℃)、望ましくは12.4〜13.0
(25℃)の範囲内である。pHと析出速度の関係は図6
に示した。本浴はpH依存性が高く、高速性を実現する為
にはpH12.4〜13.0が好ましく、13以上では安
定性がわるくなる。 【0024】なお、本発明の化学めっき液には、上記の
成分のほか、安定剤その他の一般に用いられる添加剤を
含むことができる。浴を安定化する為の安定剤あるいは
皮膜物性を向上させる為の各種添加剤も特に限定されな
い。このような添加剤を用いてもトリアルカノールモノ
アミンを大量に添加する効果は変わらない。本発明では
銅イオン錯化剤兼加速剤としてトリアルカノールモノア
ミン(以下その塩を含めていう。)を添加する。トリア
ルカノールモノアミンを銅イオンの錯化剤としてのみな
らず、加速剤として作用せしめるためには、トリアルカ
ノールモノアミンの添加量を銅イオンのモル比で1.2
倍以上添加する必要がある。好適な添加量はトリアルカ
ノールモノアミンの種類にもよるが、トリエタノールア
ミンの場合、銅イオンの1.2倍以上(モル比)、特に
1.3倍以上になると、銅の析出速度が増加するが、反
応の開始が不安定なので、2倍あるいは3倍さらには5
倍以上のトリエタノールアミンを用いることが反応開始
の安定性の点で特に望ましい。しかしながら、銅イオン
の1.2倍から1.5倍のモル数の範囲では反応の開始
が不安定であっても、一旦反応が開始したときには、そ
の析出速度は、銅イオンに対してほぼ等モルの場合の析
出速度と比べて著しく増大する(このことは従来知られ
ていなかった)。トリエタノールアミンの添加量の上限
は一般に30倍以下、好ましくは20倍以下である。ト
リイソプロパノールアミンの場合、モル比で銅イオンの
1.2倍以上、特に1.5〜3倍で銅の析出速度が増加
する。また、浴中に存在するトリアルカノールモノアミ
ンの絶対量は0.006〜2.4M、特に0.012〜
1.6Mの範囲内であることが望ましい。これはCu2+
濃度変化(図7)と、TEA量変化(図1)より結論づ
けられ、これだけ存在すれば他の成分濃度に依存しない
とも言える。なお、用いるトリアルカノールモノアミン
は1種類である必要はなく、混合物、例えばトリエタノ
ールアミンとトリイソプロパノールアミンの混合物でも
よい。 【0025】トリアルカノールモノアミンとは下記式で
表わされるモノアミンをいう。 【0026】 【化1】 【0027】(式中、R1 ,R2 ,R3 は、それぞれ独
立に、アルキレン基、主骨格中に酸素あるいはフェニレ
ン基を含んでもよい飽和炭化水素基、又はこれらのハロ
ゲン原子もしくは水素基置換誘導体を表わす。) 例えばトリエタノールアミン、トリイソプロパノールア
ミン、トリメタノールアミン、トリプロパノールアミン
等が挙げられる。 【0028】また、トリアルカノールモノアミンの塩と
は塩酸トリイソプロパノールアミン、トリイソプロパノ
ールアミンリン酸塩等が挙げられる。本発明のめっき液
あるいはめっき方法で加速されるめっき速度は、従来、
実際には銅イオンの錯化剤として用いられていないが、
用いられたとすれば比較的速い析出速度を与えるトリア
ルカノールモノアミン又はその塩を単に錯化剤として作
用せしめた場合と比べて、10倍以上、さらには50倍
以上の析出速度が可能である。このような析出速度の向
上は銅皮膜の物性膜のために添加されるフエロシアン化
カリウムや2,2′−ビピリジルのような添加剤の添加
の有無にかかわりなく達成される。こうして、上記のよ
うな添加剤を含まない基本浴でも100μm/Hr以上、
特に160μm/Hr以上の析出速度、添加剤を含む浴で
も30μm/Hr以上、特に120μm/Hr以上の析出速
度を実現することが可能である。これらの析出速度は従
来の典型的な高速めっき浴であるN,N,N′,N′−
テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミ
ン浴の場合(10μm/Hr) と比べても3倍以上、さら
には12倍以上の析出速度である。 【0029】本発明の化学銅めっき液によるめっき処理
は、従来通りいかなる工程で処理してもかまわない。一
般的には、ガラスエポキシ、紙フェノールなどの基材を
前処理(洗浄、化学的粗化)し、触媒化(通常、パラジ
ウムを付着させる)して銅析出に感受性を持たせた後、
その基材をめっき液中に浸漬し、めっきする。本発明の
化学銅めっき液の使用浴温度は常温から80℃の範囲
内、特に常温から70℃の範囲内が好ましい。浴温と析
出速度との関係を図14に示した。常温(30℃以下)
でも十分高速なめっきが可能であり、80℃を越えると
浴の安定性が悪くなる。 【0030】また、浴中の酸素濃度によって銅の析出速
度は大きく変わり、0.5〜5.4ppm の範囲内の溶存
酸素濃度が必要であり、1.5〜4.0ppm の範囲内が
望ましい。O2 濃度に対する析出速度の関係は図11に
示したとおりであり、O2 濃度が低い場合速度も低下す
るが安定性も低下する為、0.5ppm 以上好ましくは
1.5ppm 以上必要である。上限は、O2 ボンベの必要
性から経済的理由による。 【0031】 【実施例】以下の実施例でも主としてトリエタノールア
ミンを用いてトリアルカノールモノアミンを用いる場合
の各種の効果を確認しているが、その効果は本発明の係
るトリイソプロパノールアミンの場合にも程度の差はあ
るが、同様に奏せられるものである。 (1)トリエタノールアミンの性質 主要な錯化剤のCu2+と形成する錯イオンの安定度定数
を表1に示す。 【0032】 【表1】 【0033】安定度定数はCu2++L=Cu2+−L(L
は配位子を示す。)の平衡定数の対数で示され値が大き
い程、Cu2+−Lという錯イオンの状態で安定に存在す
る。たとえばトリエタノールアミンはEDTAより安定
度定数が約2大きいが、安定度定数は対数で示されてい
る為、実際には、通常使われるEDTA−Cu2+錯体よ
り、トリエタノールアミン−Cu2+錯体の方が大変安定
である。通常、安定度定数とめっき析出速度との相関は
ないが、安定度定数の大きいものの方が、反応開始しに
くいと言える。トリエタノールアミン浴はまさにその典
型であり、触媒活性の低い部分では反応が起こりにく
い。図1に示したトリエタノールアミン/Cu2+に対す
る析出速度の結果においても、トリエタノールアミンが
少ないときすなわちr=〔TEA〕/〔Cu2+〕として
r=1.2以下の場合では反応が開始されにくい。r=
1.5付近では反応が開始された場合は大変速く100
μm/Hr以上で析出するが、反応が全く開始されない場
合もある。 【0034】この反応開始には、様々な浴条件が作用す
るが、研究を進めるうち、被めっき面の状態、つまり触
媒活性や表面状態によって大きく依存することがわかっ
た。たとえば、通常、ステンレス板にはEDTA浴でめ
っきがされるが、トリエタノールアミン浴ではめっきさ
れない。また、ステンレス板にはPd触媒を付けたもの
は活性にバラツキがあり、触媒液によって差が出る。し
かしながら、ガラスエポキシ基材をエッチングしてから
触媒液でPdを付けた場合はよく反応する。これらを表
2にまとめる。なお、ここで用いたトリエタノールアミ
ン浴は下記のものである。 【0035】 CuCl2 0.06M ホルマリン* 18ml/l TEA 0.18M フェロシアン化カリウム 20mg/l 2,2′−ビピリジル 10mg/l pH(25℃) 12.8 浴温 60℃ (注)ホルマリン* はホルムアルデヒドの37%水溶液
である。 【0036】 【表2】 【0037】調査しためっき液は、図1において最も高
速性を示しているものを使用した。データを取る場合条
件を統一する為、すべてステンレス板上にPd触媒液に
より処理した後、50℃のEDTA浴(表3に示す)に
よって2分間銅めっきし、全面が薄い(0.2〜0.3
μm)銅箔で覆われたテストピースで、以下の実験を行
った。そうすることで表面状態ファクターを一定にし
た。 【0038】つまり、普通ABS系接着剤を形成したガ
ラスエポキシ基材(プリント板用)を化学粗化し、Pd
触媒液により活性化したテストピースは最も反応開始し
やすいが、化学的粗化にバラツキが出たりすると、反応
速度に影響しかねない。従って、ステンレス板を用い、
Pd触媒液により活性化した後、一般的なEDTA基本
浴で厚さ0.2μm程銅箔を形成することにより、全面
触媒活性を均一にした。 【0039】この処理をせずに例えばステンレス板上に
Pd触媒処理のみでめっきをすると、本めっき浴では全
くめっきされなかったり極度に反応速度がおそくなる等
の結果となりうる為、注意が必要である。 (2)実験方法 3cm×7cmのステンレス板(面積約40cm2 )を脱脂等
洗浄し、Pd触媒液たとえばシプレイ社のキャタポジッ
ト44により処理した。次いで、水洗後、シプレイ社の
アクセレレーター19で活性化処理した。以上の前処理
を施したステンレス板を表3に示すEDTA浴により2
分間めっきし、0.1〜0.2μmの銅箔を形成し、水
洗後、用意しためっき液500ccにて10分間めっきを
施した。それから、電解式膜厚計において析出膜厚を測
定し、1時間あたりの析出速度に変換した。めっき負荷
は、80cm2 /lであった。なお、pH調整にはNaOH
を用いた。 【0040】なお、めっき液は常に、エアーを吹き込む
エアー撹拌を行い、機械撹拌は全く行わなかった。エア
ー撹拌によって、浴中酸素濃度を1.5〜4ppm とし
た。このめっき浴は、O2 濃度によって大きく影響され
る為、必ずエアーバブリングを行なう。 【0041】 【表3】 【0042】(3)添加剤による速度減少 通常、化学銅めっき浴の主な添加剤は2種類ある。1つ
は、浴の安定剤であり、他の1つは皮膜の改質剤であ
る。それぞれ多くの物質が報告されているが、今回は最
も一般的に使用されかつ速度降下性の大きいと言われる
フェロシアン化カリウムと2,2′−ビピリジルを2水
準の添加量で測定した。その結果を図4及び図5に示
す。トリエタノールアミン(TEA)を錯化剤として銅
イオンの3倍モル用いた下記浴(I)での結果を図4
に、トリイソプロパノールアミンを錯化剤として、銅イ
オンの1.5倍モル用いた下記浴(II) での結果を図5
に示す。 浴(I): CuCl2 0.06M TEA 0.18M(〔TEA〕/〔Cu2+〕= 3) ホルマリン 18ml/l pH(25℃) 12.8 浴温 60℃ 浴(II): CuCl2 0.06M TIPA 0.09M(〔TIPA〕/〔Cu2+〕 =1.5) ホルマリン 18ml/l pH(25℃) 12.8 浴温 60℃ いずれの場合にも、添加剤を多く用いるに従って析出速
度が減少している。しかしながら、フェロシアン化カリ
ウムを30mg/l、2,2′−ビピリジルを20mg/l
とかなり多量に添加した場合でも、トリエタノールアミ
ン浴で50μm/Hr、トリイソプロパノールアミン浴で
20μm/Hrという高速反応を示している。2種類の浴
を比較すると、トリエタノールアミン浴の方が約2倍の
析出速度を有し、興味深いので、以下ではトリエタノー
ルアミンを中心に実験を行った。TEA浴の場合、添加
剤を使用しない時は反応が速くなりすぎて、しっかりし
た皮膜が得られず、粉状になることがあるので、添加剤
としてフェロシアン化カリウム20mg/l、2,2′−
ビピリジル10mg/lを常に添加して以下の一連の実験
を行った。従って比較例として上げた結果もすべて同量
の添加剤を含む。しかし、これは浴の安定性とは関係が
ない。トリエタノールアミン浴では、安定度定数より予
想できる如く、大変安定であり、添加剤を用いなくても
浴は常に安定である。 【0043】(4)錯化剤の添加量による速度変化 本発明の主要な実験結果である。トリアルカノールモノ
アミンのうちトリエタノールアミンを用いた場合を図1
に、トリイソプロパノールアミンを用いた場合を図2に
示す。いずれの場合も下記の基本浴を用いた。 CuCl2 0.06M ホルマリン 18ml/l フェロシアン化カリウム 20mg/l 2,2′−ビピリジル 10mg/l pH(25℃) 12.8 浴温 60℃ 図1においてトリエタノールアミンは通常銅イオンと
1:1の錯体を形成する。従って、従来の概念から考え
るとr=〔TEA〕/〔Cu2+〕は0.8〜1.5で使
用する。我々の研究結果によれば、rが1〜1.2では
極めて反応が起こりにくく、これはトリエタノールアミ
ン−Cu2+錯体の安定性を考えると納得できるが、時
々、反応することがあり、10〜20μm/Hr析出する
場合がある。しかしながら、通常、このr=1〜1.2
の範囲で実験したとすると、ほとんど反応が開始せず、
不動態皮膜を形成してしまうので、トリエタノールアミ
ンは錯化剤として使用できないという結論が導かれるこ
とになるだろう。 【0044】次にr=1.2〜1.5の範囲では、かな
り反応しやすくなり、化学エッチングしたガラスエポキ
シ基材にPd処理した供試体ではほとんど反応する。し
かし、今回用いたステンレス−Cu箔ワークでは5回中
1回反応する程度である。しかし、反応開始した場合
は、50〜100μm/Hrという高速めっきを実現す
る。 【0045】r=2以上の大過剰に用いた場合反応は1
00%開始され、図1に示すとおり、100μm/Hr以
上の高速析出が可能であった。析出皮膜は、赤かっ色で
無光沢な皮膜であった。r=5以上の更に大過剰浴では
反応速度は少し減少する傾向にある。これは、液の粘度
上昇による物質移動妨害だけ考えられる。しかし反応開
始は100%である。また、すべての場合に浴は完全に
安定していた(異常析出や分解は全く見られなかっ
た。)これらのことは安定度定数からも予想されるがト
リエタノールアミン浴の特色の1つである。 【0046】トリイソプロパノールアミン(TIPA)
の安定度定数は不明であるが、反応開始しないことはな
かったので、トリエタノールアミンよりは不安定と考え
られる。浴の安定性もトリエタノールアミンと比べて劣
るようであった。再び〔TIPA〕/〔Cu2+〕=rと
して、r=1.2以下では20μm/Hr程度の高速性を
示し、r=1.5付近が最も高速で50μm/Hrの析出
速度を示した。しかしなから、r=2付近から急に析出
速度が減少し、20〜10μm/Hrで一定となる。析出
皮膜はすべて肌色の光沢皮膜であった。TEAとTIP
Aを比べると、その効果は、差があるとは言え、非常に
よく似ている。これは、トリアルカノールモノアミンの
特徴と言える。また、用いるトリアルカノールモノアミ
ンは塩の形のもの、たとえば塩酸トリエタノールアミン
を用いても同様の結果が得られた。 【0047】比較の為、他の錯化剤について同様の実験
を行った。それを図3に示す。用いた錯化剤は最も一般
的に使用される。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)
と、EDTAのモノアミン型(Nが1つだけ)といえる
ニトリロ三酢酸、またトリエタノールアミンのジアミン
構造といえるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒ
ドロキシエチル)エチレンジアミン(HEA)そして、
トリイソプロパノールアミンのジアミン構造と言える
N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシプロ
ピル)エチレンジアミン(HPA)等について調べた。
これらの場合も基本浴はトリエタノールアミン及びトリ
イソプロパノールアミンの場合と同じとした。 【0048】図3より、トリアルカノールモノアミン構
造以外の錯化剤では、rによる高速化効果が全くなく、
すべて10μm/Hr以下の低速析出速度しか持たないこ
とがわかる。また、前述の如く、モノアミン型でもアル
コール基ではなくカルボキシル基を持つニトリロ三酢酸
では高速化されず、またアルコールアミン型でもジアミ
ン型となるHEA、HPAでは全く高速化効果がないの
は、大変興味深い。そして、これは別途開示したトリア
ルキルアミンの加速効果とよく一致している。以上によ
り、従来浴より高速性という意味で10μm/Hrを考え
ると、トリアルカノールモノアミンは〔Cu2+〕のモル
比で1.2倍以上30倍以下が望ましい量である。更に
望ましくは1.3倍以上20倍以下で、上限は主にコス
ト的見地に立って考えるべきである。Cu2+と錯体を形
成する以外に存在するトリアルカノールモノアミンは、
おそらく反応開始を助けたり、加速剤として機能すると
考えられ、その結果高速反応が達成された。 【0049】(5)トリエタノールアミン浴のpH−速度
変化 高速化効果の最も大きいトリエタノールアミン浴につい
てpHによる析出速度の変化を調べた結果を図6に示す。
pHはすべて25℃で測定した。r=3、r=8について
調べた。いずれの場合にも、pH12.6〜12.9付近
で大きな高速化効果が認められる。これはTEA−Cu
2+錯体の安定性を考えると、それだけ還元剤として使用
するホルマリンの活性化が必要であると考えられる。図
6よりpHは、他の浴条件に依存するが、12.0以上、
更には12.4〜13の範囲内が適当である。 【0050】(6)TEA浴におけるCu2+濃度−速度
変化 〔TEA〕/〔Cu2+〕=rを3及び5と一定にして、
銅塩の添加量を変化した場合の析出速度の変化を図7に
示す。析出速度が銅濃度にかなり大きく依存することが
見られる。特徴としては、Cu2+がかなり低濃度になっ
ても、かなり高速に反応が進行する点である。従来一般
的に使われるCu2+濃度範囲は0.04M〜0.07M
であるが、その約1/10である0.005Mにおいて
も7.2μm/Hrというかなり高速な反応が実現されて
いる。ここで10μm/Hr付近を高速化の境界とすると
Cu2+は0.005M以上必要であり、その時のTEA
絶対量としては0.005×1.2=0.006M以上
必要であるということになる。なお、1.2は図1にお
ける〔TEA〕/〔Cu2+〕のモル比を示し、本発明に
おける下限のモル比である。望ましくはCu2+が0.0
1M以上であり、そのときTEA=0.01×1.2=
0.012M以上必要である。上限は経済性と浴の安定
性を考慮して決めるが、〔Cu2+〕=0.07Mまでは
全く安定であり、0.08MではpHによってビーカー底
に析出することもあった。そのときのTEAの絶対量と
しては本発明における〔TEA〕/〔Cu2+〕のモル比
の上限からすれば、0.08×30=2.4Mとなる。 【0051】(7)TEA浴におけるホルマリン濃度−
速度変化 〔TEA〕/〔Cu2+〕=rを3及び5として、添加す
る還元剤(ホルマリン)の量を変化させた時の析出速度
の変化を図8に示す。析出速度は銅濃度と同様に、ホル
マリン濃度にもかなり依存することが認められる。従っ
て、析出速度は銅濃度、ホルマリン濃度によって自在に
コントロールできる。 【0052】還元剤はホルムアルデヒドとその誘導体、
またはその重合体や前駆体等が好ましく使用できる。モ
ルで考えて1分子中1ケ所が酸化されるべきホルムアル
デヒド1単位であると仮定すると、その濃度は図8より
0.05M以上必要であり、0.06M以上が望まし
い。上限は経済性と浴の安定性から決めるべきである
が、例えば0.3Mまでの範囲内である。0.05M〜
0.3Mのホルムアルデヒドを37%ホルマリン水溶液
に換算すると前記基本浴において4ml/l〜25ml/l
であるが、この範囲内における浴の安定性は問題がなか
った。 【0053】(8)他の還元剤との併用 浴の安定性、経済性、実用性を考えると還元剤はホルム
アルデヒド類が好ましい。しかしながら、人体に有害で
あったり、多量に使用すると浴の不安定化を生じる等の
問題があり、使用する量はなるべく少量であることが望
まれる。たとえばホルマリン量を少くして他の還元剤を
併用して、速度が向上すれば都合がよい。その意味で他
の還元剤として最も一般的な次亜リン酸ナトリウムを併
用して実験を行った。次亜リン酸ナトリウムは、銅表面
で活性がなく、従来、化学銅めっきには使用されず、使
用されても活性剤としてであった(特開昭55−760
54号公報)。 【0054】本発明の浴においては、次亜リン酸ナトリ
ウムのみでは全く反応しないが、ホルマリンが併在する
と還元在として機能するようである。図9及び図10を
参照。下記TEA浴及びEDTA浴においてホルマリン
のみの場合とそれに次亜リン酸ナトリウムを0.1M添
加した場合について、ホルマリンの濃度を変えて実験し
た。 TEA浴: CuCl2 0.06M TEA 0.3M(r=5) フェロシアン化カリウム 20mg/l 2,2′−ビピリジル 10mg/l pH(25℃) 12.8 浴温 60℃ EDTA浴: CuCl2 0.06M EDTA 0.09M pH(25℃) 12.6 浴温 50℃ 図9及び図11を参照すると、EDTA浴では次亜リン
酸ナトリウムの存在はほとんど無に等しいが、TEA浴
では還元剤として機能していると考えられる。これは特
開昭55−76054号公報にある如く、ホルムアルデ
ヒド反応の触媒作用とも取れるが、何らかの反応中間体
に対して、次亜リン酸ナトリウムが反応しているように
も考えられる。 【0055】従って、図9の結果から次亜リン酸ナトリ
ウムのみでは機能しないが、ホルマリンと併用すること
は少くとも速度面で有効であるといえる。 (9)2 濃度−速度変化 前に述べたように、本発明のめっき浴ではエアレーショ
ンが大変重要である。図11はO2 濃度を2水準に分け
た時の析出速度の変化を示す。0.3ppm のO 2 濃度は
500ccの液に15分N2 バブルをした時であり、2.
3ppm のO2 濃度は同様にしてエアーバブルをした時で
ある。同図より、TEA浴の析出速度にO2 濃度が大き
く影響していることがわかる。 【0056】O2 濃度が0.3ppm より低くなると、浴
の不安定化を生じる。また、O2 を高濃度にすることに
よる問題点はないと考えられるが、O2 バブルの経済性
が悪いので、通常のエアーバブルで十分である。O2
度の範囲を考えるならば最低0.5ppm 必要であり、上
限はO2 の飽和と言われている5.4ppm までは問題な
い。実用上、望ましくは1.5〜4ppm が適当と考えら
れる。 【0057】(10)他の錯化剤を用いた場合のトリエ
タノールアミン添加効果 以上の本発明の効果はトリアルカノールモノアミンの錯
化剤としての効果と加速剤としての効果の相乗効果と考
えられる。ここで他の錯化剤を用いた場合のトリアルカ
ノールモノアミンの加速効果を見る為に錯化剤としてE
DTAを用いてその中にTEAを添加した時の析出速度
の変化を調べてみた。結果を図12に示す。TEAを添
加しない場合は完全なEDTA浴であり1〜2μm/Hr
という析出速度しか持たない。TEA添加量0.01〜
0.2 mol/lの範囲では、TEA−Cu2+錯イオンは
形成されていないと考えられ、少し高速化されるがこの
高速化は別の出願で開示したトリアルキルアミンの高速
化と同じと考えられる。またTEA添加量が0.15M
以上になると、10μm/Hr以上の高い析出速度を持つ
が、これは、EDTA−Cu2+=TEA−Cu2+の反応
により、TEA−Cu2+錯イオンが少し形成されたため
と考えられる。このことから、他の錯化剤を用いている
時でも用いた錯化剤の2倍以上のTEAを用いると高速
反応が起こるとも言える。 【0058】以上のことより、単なる加速剤としてのト
リアルキルアミンの場合とは全く異った高速化が、トリ
アルカノールモノアミンの銅錯イオンを形成することに
より実現されたことが明らかである。またこの高速化は
トリアルカノールモノアミンの銅錯イオンに対してトリ
アルカノールモノアミンが加速剤として機能する時にの
み実現されると言える。従って、この異常な高速反応に
はCu2+とトリアルカノールモノアミンとによる銅錯イ
オンが存在することが必ず必要である。なおかつ加速剤
として機能するトリアルカノールモノアミンが別に必要
である。このような錯イオンは他の錯化剤を使用した場
合においても、使用した錯化剤の約2倍以上のトリアル
カノールモノアミンを用いることによって、生成された
高速反応を引きおこす。 【0059】(11)銅塩の種類による影響 以上の実験ではすべて溶けやすい塩化第2銅CuCl2
を用いたが、他に一般的に使用される銅塩として硫酸銅
CuSO4 、硝酸銅Cu(NO3 2 がある。それらに
ついて析出速度を調べた結果を図13に示す。ここでは
基本浴で銅塩0.06M、TEA 0.18M(r=
3)とした。高速化効果は銅塩の種類によらずほとんど
一定していることが認められる。 【0060】(12)温度による析出速度の影響 代表的高速浴のTEA浴(r=3、pH12.8)につい
て、同様の条件にて、温度による析出速度の変化を調べ
た結果を図14に示す図13によると高速めっきの為に
は60℃が最も有利と考えられるが、たとえば30℃に
おいても従来浴(同じ添加剤を加えた場合1μm/Hr以
下)よりはるかに高速であることが認められる。従っ
て、本発明の浴を用いれば用途によっては常温高速化学
銅めっきも容易である。ただし、高温側は、80℃を超
えると副反応がかなり活発になり、浴が分解したり、濁
ってきたりするので、通常最高使用温度を80℃とする
ことが望ましい。 【0061】従って、好適な温度範囲は図14より常温
以上80℃以下であるといえる。ここで常温とは普通に
0℃〜30℃の範囲をいう。更に望ましくは常温〜70
℃の範囲内である。ただし、設定温度はめっきの用途に
応じて決められる。しかしながら、いづれの温度におい
ても本発明の浴では従来浴より10倍以上高速である。 【0062】(13)析出皮膜の物性 代表的な物性改質剤としてフェロシアン化カリウム、
2,2′−ビピリジル、通常一般的に使用されるポリエ
チレングリコール(中性界面活性剤、分子量2万及び2
千)、及びアニオン系界面活性剤を用い、TEA 0.
3M(r=5)、pH12.7の基本浴で、10cm×5cm
ステンレス板上に30μm程度の銅皮膜を形成し、1cm
巾に切断して引張り試験を行った。皮膜物性の尺度とし
て伸び率を測定した所表4のとおりであった。なお、い
ずれの場合も、浴の管理は行わず、10lのめっき浴に
30分〜40分程浸漬して皮膜を形成した。析出速度3
0〜50μm/Hr、伸び率1.5〜8%特に5〜8%と
いう値は良質な皮膜を短時間で形成できたことを示して
いる。また、浴の管理や添加剤の工夫によって更に良質
な皮膜を短時間で形成することも可能である。 【0063】 【表4】 【0064】参考のために、図15に典型的なトリアル
カノールモノアミンの、図16に典型的な錯化剤の化学
式を示す。以上、一連の研究により、トリアルカノール
モノアミンを錯化剤として用い、かつ使用量を銅塩濃度
の1.2倍モル以上にすることにより、加速剤としても
機能させることができ、従来考えられなかった高速化学
銅めっきが実現できることが明らかにされた。 【0065】最後に最も典型的な析出速度結果を従来浴
と供に表5に示す。トリイソプロパノールアミンを用い
ることで、約40倍、トリエタノールアミンを用いるこ
とで約100倍の高速化学銅めっきが可能となることが
明らかである。 【0066】 【表5】【0067】 【発明の効果】以上により明らかにされた如く、本発明
によれば、トリイソプロパノールアミン又はその塩を銅
イオンのモル濃度の1.2倍以上に過剰に用いることに
よって、トリイソプロパノールアミン又はその塩が銅イ
オンの錯化剤としてのみならず析出加速剤として作用
し、従来の化学銅めっきでは予想されない50μm/Hr
以上、各種添加剤を添加しても10〜50μm/Hrの極
めて高速の析出速度が達成され、化学銅めっきの実用化
に大きく踏み出すことが可能になった。
【図面の簡単な説明】 【図1】トリエタノールアミンの添加量と析出速度の関
係を示すグラフ図である。 【図2】トリイソプロパノールアミンの添加量と析出速
度の関係を示すグラフ図である。 【図3】トリアルカノールモノアミン以外の錯化剤の添
加量と析出速度の関係を示すグラフ図である。 【図4】トリエタノールアミン浴及びトリイソプロパノ
ールアミン浴の主な添加剤による析出速度の減少を示す
図である。 【図5】トリエタノールアミン浴及びトリイソプロパノ
ールアミン浴の主な添加剤による析出速度の減少を示す
図である。 【図6】トリエタノールアミン浴のpHと析出速度の関係
を示すグラフ図である。 【図7】トリエタノールアミン浴とCu2+濃度と析出速
度の関係を示すグラフ図である。 【図8】トリエタノールアミン浴のホルマリン濃度と析
出速度の関係を示すグラフ図である。 【図9】トリエタノールアミン浴とエチレンジアミン四
酢酸浴における還元剤としてホルマリンのみ添加した場
合とさらに次亜リン酸ナトリムを添加した場合の析出速
度を示すグラフ図である。 【図10】トリエタノールアミン浴とエチレンジアミン
四酢酸浴における還元剤としてホルマリンのみ添加した
場合とさらに次亜リン酸ナトリムを添加した場合の析出
速度を示すグラフ図である。 【図11】トリエタノールアミン浴のO2 濃度と析出速
度の関係を示すグラフ図である。 【図12】エチレンジアミン四酢酸浴にトリエタノール
アミンを添加した場合の析出速度を示すグラフ図であ
る。 【図13】トリエタノールアミン浴にいろいろな銅塩を
用いた場合の析出速度を示すグラフ図である。 【図14】トリエタノールアミン浴の濃度と析出速度の
関係を示すグラフ図である。 【図15】トリアルカノールモノアミンの構造式であ
る。 【図16】錯化剤の化学式を示すグラフ図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野本 薫 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内 (72)発明者 石田 信正 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内 (72)発明者 石川 純次 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.銅イオン、銅イオン錯化剤、還元剤及びpH調整剤を
    含む化学銅めっき液において、トリイソプロパノールア
    ミン又はその塩を錯化剤かつ加速剤として含み、該トリ
    イソプロパノールアミン又はその塩を、銅イオンを錯化
    するには十分であるが加速剤として機能するほどには多
    量に存在しない場合の銅の析出速度と比べて実質的に向
    上した銅の析出速度を与える量で含むことを特徴とする
    化学銅めっき液。 2.トリイソプロパノールアミン又はその塩を銅イオン
    に対してモル比で1.2倍以上30倍以下の量で含む特
    許請求の範囲第1項記載の化学銅めっき液。 3.トリイソプロパノールアミン又はその塩を銅イオン
    に対してモル比で1.3倍以上20倍以下の量で含む特
    許請求の範囲第2項記載の化学銅めっき液。 4.トリイソプロパノールアミン又はその塩の液中に存
    在する絶対量は0.006M以上2.4M以下である特
    許請求の範囲第1項記載の化学銅めっき液。 5.トリイソプロパノールアミン又はその塩の液中に存
    在する絶対量は0.72M以上0.18Mである特許請
    求の範囲第4項記載の化学銅めっき液。 6.銅イオン、銅イオン錯化剤、還元剤及びpH調整剤を
    含んでなり、トリエタノールアミン又はその塩を錯化剤
    かつ加速剤として含む化学銅めっき液に、銅析出に感受
    性のある被めっき材を浸漬して被めっき材表面に、該ト
    リイソプロパノールアミン又はその塩が銅イオンを錯化
    するには十分であるが加速剤として機能するほどには多
    量に存在しない場合の銅の析出速度と比べて実質的に向
    上した析出速度で銅を析出させることを特徴とする銅め
    っき皮膜の形成方法。
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