JP2637665B2

JP2637665B2 - 豚肉生産用飼料組成物および豚肉生産方法

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Publication number: JP2637665B2
Application number: JP4084810A
Authority: JP
Inventors: 永根呂
Original assignee: JUHO RENDO KK; KEIHOKU DAIGATSUKO
Current assignee: JUHO RENDO KK; KEIHOKU DAIGATSUKO
Priority date: 1991-08-20
Filing date: 1992-03-06
Publication date: 1997-08-06
Anticipated expiration: 2012-08-06
Also published as: KR930003835A; DE4227453A1; CA2075133A1; CA2075133C; JPH08154594A; DE4227453C2; US5234699A; KR940005180B1

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、豚肉中に含まれる
ｎ−６脂肪酸によって生じる各種生理的疾病の発生を防
止することができ、且つ人体に有益であるｎ−３脂肪酸
に富んだ豚肉を生産する為の新規な豚肉生産用飼料組成
物、およびその様な豚肉を生産する方法に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】現在市販されている豚肉は、ｎ−３脂肪
酸の含量が１％程度であり、またアラキドン酸に代表さ
れるｎ−６脂肪酸の含量は15〜30％程度である。一方豚
肉に多量に含まれるｎ−６脂肪酸は各種生理的副作用が
現れる原因になっており、こうしたことから漢方医療に
携わる者や一般国民等の間では意識的に豚肉を忌避する
人も多い。

【０００３】18：２型のｎ−６脂肪酸は、アラキドン酸
に代謝され、アラキドン酸は更に体内組織細胞膜にて代
謝され、強い生理活性をもつアラキドン酸代謝産物がつ
くられる。アラキドン酸代謝経路全体は、幾筋もの滝が
段階状に流れ落ちるのに似ていることからアラキドン酸
カスケードと呼ばれて一般的に良く知られている。

【０００４】そしてｎ−６脂肪酸の過剰摂取によって生
成された各種代謝物、即ちイコサノイド(eicsoanoid)で
ある２−系列のプロスタグランジン類(Prostaglandins)
と、４−系列のロイコトリエン類(Leukotrienes)は、動
脈硬化症、高血圧、心筋梗塞症、心臓貧血、血栓症、心
臓病、骨髄炎および皮膚病の様な生理的疾病を誘発する
ことが知られている。

【０００５】一方18：３型のｎ−３脂肪酸は、体内の各
組織の細胞膜において、イコサペンタエン酸（ＥＰＡ）
に転換され、このＥＰＡは代謝を通じて３−系列のプロ
スタグランジン類と５−系列のロイコトリエン類を生成
する。そしてｎ−３脂肪酸から生成された３−系列のプ
ロスタグランジン類と５−系列のロイコトリエン類は、
アラキドン酸の代謝産物である２−系列のプロスタグラ
ンジン類と４−系列のロイコトリエン類の生成を遮断
し、アラキドン酸の代謝産物による各種の生理的疾病を
予防治療するのみならず、ｎ−３脂肪酸自体もｎ−６脂
肪酸の代謝経路を遮断してｎ−６脂肪酸によるイコサノ
イドの生成を阻害する。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした状況
のもとになされたものであって、その目的は、豚肉中に
含まれるｎ−６脂肪酸によって生じる各種生理的疾病の
発生を防止することができ、しかも人体に有益なｎ−３
脂肪酸に富む豚肉を生産する為の新規な豚肉生産用飼料
組成物、およびその様な豚肉を生産する為の有用な方法
を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成すること
のできた本発明の豚肉生産用飼料組成物とは、ｎ−３脂
肪酸供給源として亜麻種，荏胡麻および魚粉を合計で70
〜90％, 炭水化物供給源として小麦および大麦を10〜20
％，コレステロール低下促進剤として燕麦を0.1 〜１
％，抗酸化剤としてエトキシキンを0.1 〜１％を夫々含
有するものである点に要旨を有するものである。本発明
に用いられる上記ｎ−３脂肪酸供給源において、その含
有量が75〜85％であるものや、亜麻種，荏胡麻および魚
粉を100 ：（１〜10）：（２〜５）の割合で混合したも
のは好ましい態様である。更に、上記４成分以外に種々
の目的で他の物質を配合することもできる。また上記の
様な豚肉生産用飼料組成物を、豚屠殺の７〜15日前より
食べさせる様にすれば、ｎ−３脂肪酸に富んだ豚肉を生
産することができる。

【０００８】

【発明の実施の形態】本発明者らは、ｎ−３脂肪酸であ
るＥＰＡを白ラットに食べさせると、細胞膜中のアラキ
ドン酸の量が急激に減少することを明らかにした(Bioch
im．Biophys．Acta，1988a)。

【０００９】またＥＰＡを食べさせた実験動物に［
³Ｈ］グリセリンを注入して各種の脂肪酸の生合成を調
査した結果、ｎ−６脂肪酸であるアラキドン酸の合成が
急激に減り、ｎ−３脂肪酸であるＥＰＡとＤＨＡ(Docos
ahexaenoic acid)の含量が非常に増加すること(Biochi
m．Biophys ．Acta，1989）、およびＥＰＡを食べさせ
ることによって白ラットの肝脂肪の生合成が約40％まで
減少すること（Lipids，1990）等を明らかにした。

【００１０】本発明者らは、ｎ−６脂肪酸とｎ−３脂肪
酸の代謝に関するこれまでの実験結果を集大成し、この
結果を大動物である豚に適用することによって、豚肉に
多く含有されているｎ−６脂肪酸を、何らの副作用を生
じさせないで、最も効果的に減少させる為の飼料組成物
について様々な角度から検討した。その結果、ｎ−３脂
肪酸供給源、炭水化物供給源、コレステロール低下促進
剤および抗酸化剤等を所定の割合で混合した組成物を豚
に食べさせると、豚のｎ−６脂肪酸を急激に減少させる
と共に、ｎ−３脂肪酸の含量を数十倍増加させることが
できることを見出し、本発明を完成した。また本発明の
飼料組成物は、飽和脂肪酸やコレステロールの量を急激
に減少させることができるので、飽和脂肪酸による人体
コレステロール増加等の各種弊害も防止することができ
る。

【００１１】本発明者らは、抽出油中にｎ−３脂肪酸で
あるリノレン酸を約50％含有する亜麻種、リノレン酸を
約60％含有する荏胡麻、小麦、大麦、燕麦、魚粉、塩、
抗酸化剤、燐酸水素カルシウムおよび石灰石等を使用し
て豚肉生産用飼料組成物を開発し、これを豚に食べさせ
た結果、その後10日目にして、市販の豚肉生産用飼料組
成物を食べさせた対照群に比べて豚のヘレ肉部位におけ
るｎ−３脂肪酸は数十倍増加し、ｎ−６脂肪酸は顕著に
減少することを明らかにした。

【００１２】これまで豚のｎ−６脂肪酸を減少させる為
の飼料組成物に関しては様々な実験が報告されている。
しかしこれらは全て各自が開発したｎ−３脂肪酸含有飼
料を幼い子豚の時から屠殺時まで与え続けるものであっ
て、却って豚の成長を妨げたり、飼料組成物の酸化を根
本的に防止できないという問題の為に、飼育費を増大さ
せるという問題もあった。

【００１３】本発明の飼料組成物は、屠殺前10日程度か
らの付与であっても、豚肉のｎ−３脂肪酸を対照群に比
べて数十倍高く含有させることができ、飼育費が節減さ
れて飼料の効率を高め、且つ成長率自体も正常であっ
た。また本発明の飼料組成物を付与した豚は、市販され
ている一般の飼料を与えた対照群に比べて皮下脂肪組織
の厚さが非常に薄く、ｎ−３脂肪酸の含量が大きく増加
し、ｎ−６脂肪酸の含量は顕著に減少する。

【００１４】従って、本発明の飼料を与えて成長させた
豚の肉を摂取する様にすれば、ｎ−６脂肪酸であるアラ
キドン酸による各種の生理的疾病を予防すると同時に治
療効果まで期待することができ、豚肉の過剰摂取による
弊害を軽減して豚肉を忌避する意識も変化させることに
なり、最適なｎ−３脂肪酸供給源としての栄養豊富な豚
肉を広く普及させることができる。

【００１５】本発明の構成をより詳細に説明すれば、下
記の通りである。まず飼料組成物の製造において最も考
慮すべき重要な項目は吸収率である。市販されている一
般の飼料組成物とは異なって、本発明の飼料組成物は特
殊な脂肪酸を含有するため、飼料の変更により豚の嗜好
に変化が生じ、また体内吸収率が大幅に増加し得る。従
来のｎ−３脂肪酸含有飼料組成物は、既述の如く豚の飼
育初期から屠殺時まで与え続けることによる莫大な飼料
費負担増を招き、また人為的な合成飼料組成物は豚の先
天的な嗜好に合わないとか、体内摂取率が低下し成長が
鈍化する傾向を示したので、養豚業者にあまり歓迎され
なかった。本発明者はかかる従来の飼料組成物の短所を
研究補完し、体内吸収率を高める為には脂肪酸と蛋白質
の組成比率が同一の程度であるか、蛋白質の比率が高い
ものが良く、一つの飼料のみを多量投与する場合には栄
養不均衡をもたらす恐れがあるので、別のｎ−３脂肪酸
供給源を混合するのが望ましいという点に着眼して最適
の飼料組成物を開発し、その効果を実験により確認し
た。

【００１６】本発明の飼料組成物では、ｎ−３脂肪酸供
給源として亜麻種（亜麻の種子）、荏胡麻及び魚粉を合
計で全飼料組成物中に70〜90％含有することが必要であ
る。70％未満では豚肉の脂肪酸代替効果が低下し、一
方、90％を超えると飼料吸収率が低下して栄養上の均衡
が取れず、豚の体重増加率が減少するので非経済的であ
る。ｎ−３脂肪酸の好ましい含有率は75〜85％であり、
この含有率範囲にするとｎ−３脂肪酸の配合による効果
が最も顕著に発揮される。

【００１７】これらのｎ−３脂肪酸供給源の混合比率
は、亜麻種、荏胡麻、魚粉を100 ：（１〜10）：（２〜
５）とすることが好ましく、この様な比率にすることに
より、最も好ましい脂肪酸代謝改善効果を示した。尚、
亜麻種100 に対する荏胡麻の組成比率が１未満になる
と、荏胡麻の添加効果が喪失し、また10を超えると、脂
肪酸の比率が蛋白質よりも多くなるので嗜好面で好まし
くない。

【００１８】従来あまり実用化されなかったｎ−３脂肪
酸強化飼料組成物においては、ｎ−３脂肪酸の供給源と
して荏胡麻、油菜種、魚粉等が使用されたが、ｎ−３脂
肪酸の含量も低く、吸収率にも問題があり、また子豚の
時から与え続けたので、不経済でもあった。本発明にお
いて使用される亜麻種は低価格であり、しかも蛋白質含
有量が約25％にも及び、他のｎ−３脂肪酸供給源に比べ
て含有量が高いので体内吸収率も大きい。しかし、亜麻
種単独のみで混合組成とする場合、栄養不均衡をもたら
すおそれがあるが、蛋白質含量は低いがｎ−３脂肪酸の
含量が相対的に高く、しかも豚の嗜好度の高い荏胡麻を
少量混合することによって蛋白質と脂肪酸の均衡を維持
し、他の栄養バランスにも優れると共に、体重増加効果
が高められることを実験により確認した。更に、魚粉は
ＥＰＡとＤＨＡの含量が高く、亜麻種や荏胡麻と併用す
ることによりＥＰＡとＤＨＡの体内蓄積を効率的に達成
することができる。

【００１９】また、炭水化物供給源としては小麦及び大
麦を10〜20％添加する必要がある。混合比率が10％未満
では豚が必要とする炭水化物量が不足し、20％を超える
と相対的に脂肪混合比率が減少して短期間に体脂肪組成
を変化させることができない。

【００２０】更に本発明の飼料組成物は、コレステロー
ル低下促進剤として燕麦を0.1 〜１％含有する。

【００２１】本発明組成物の他の特徴としては、抗酸化
剤としてエトキシキン（Ethoxyquin）を0.1 〜１％含有
する。これはサントキン（Santoquin ）の商品名（モン
サント社製）で知られており、価格が安く、飼料組成物
中ばかりでなく体内においても抗酸化作用を示すので、
ｎ−３脂肪酸の酸化分解を防止し、且つ長期間の保管中
にも飼料の変質を防ぐことができる。

【００２２】本発明のもう一つの特徴は、その飼料組成
物の投与時期にある。即ち、種々の飼育実験で確認した
結果、本発明の飼料組成物は屠殺前７〜15日より摂取さ
せることにより、ｎ−３脂肪酸が豊富な高品質の豚肉が
得られるが、屠殺前15日よりも前から本飼料組成物を与
えさせるのは不経済であり、またその給与期間が７日よ
りも少ない場合には豚肉のｎ−３脂肪酸含量が大きく増
加しないことが分かった。

【００２３】上記の通り、本発明の飼料組成物を豚に短
期間与えれば、飼料変更による体重増加率減少等の問題
が全く無く、ｎ−６脂肪酸とその代謝物の阻害剤として
作用しながら、豚肉質に含まれているｎ−６脂肪酸を短
期間に急激に減少させ、しかも人体の必須脂肪酸である
ｎ−３脂肪酸の含量を増加させ、各種の弊害を誘発する
飽和脂肪酸とコレステロールの含量を大きく減少させる
高品質の豚肉を得ることができる。

【００２４】以下本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。

【００２５】

【実施例】表１に示す組成比率の成分を均質に混合して
本発明の豚飼料組成物を製造し、この飼料組成物を用い
て後述する各実験を実施した。

【００２６】

【表１】

【００２７】実験１：本発明の豚飼料組成物の成長率
（増体率）比較実験豚［品種：ＬＹ(Landsace-Yorkshire 交雑種）］34頭を
３群に分け、第１群と第２群には市中で販売されている
２種類の豚飼育用飼料を、第３群には実施例１で製造し
た飼料組成物を10日間自由給食により与えて体重増加を
測定した。その結果を表２に示す。尚本実験において比
較用として使用された飼料ＡとＢは、容易に購入可能な
種々の飼料のうち、最も多く使用される２社の製品であ
る。

【００２８】

【表２】

【００２９】上記表２の結果より、第１群は平均11.9k
g、第２群は平均11.7kg、第３群は平均12.1kg増加して
おり、各グループ別体重増加の差異は殆ど無かったこと
がわかる。

【００３０】実験２：市販飼料と本発明の飼料組成物で
飼育した豚の各器官別脂質含量の比較測定実験上記実験１で飼育した豚を屠殺して屠体を２等分した
後、11番目と13番目の肋骨の間の精肉、腹部位の皮下脂
肪、肩甲骨部位の筋肉間脂肪（seam fat) 、肝臓、心
臓、腎臓を分離して各部位の総脂肪含量を測定した。こ
のとき全組織が脂質のみで構成された皮下脂肪と、筋肉
間脂肪を除外した各器官の総脂質含量を測定した。

【００３１】その結果を表３に示すが、表３から次の様
に考察できる。本発明飼料を用いた第３群は、市販飼料
を使用した第１群および第２群に比べ、精肉、肝臓、心
臓、腎臓における総脂肪の含量は、夫々26.0％、23.6
％、37.5％および27.3％まで減少した。従って、本発明
の飼料組成物を食べさせることにより精肉を始め全器官
において過度の脂肪蓄積を防止する効果を得ることがで
き、同時に脂肪組織に比べて相対的に精肉率（肉の比
率）が高められることが明らかになった。

【００３２】

【表３】

【００３３】実験３：市販飼料と本発明の飼料組成物に
より飼育した豚の各器官別脂肪酸組成比較実験実験２と同様に各器官より抽出した総脂肪の脂肪酸組成
を分析した結果、脂肪酸比率（ｎ−６脂肪酸／ｎ−３脂
肪酸）は下記の表４に示す様になった。表４から明らか
な様に、市販飼料を与えた対照群、第１群および第２群
の各器官の脂肪酸比率は、ｎ−３脂肪酸に比べてｎ−６
脂肪酸が顕著に多かったが、本発明の飼料組成物で飼育
した第３群の各器官別脂肪酸比率は、ｎ−３脂肪酸の比
率が急激に増加したことが確認された。

【００３４】

【表４】

【００３５】

【発明の効果】上述の通り、本発明の飼料組成物を豚に
与えて生産された豚肉はｎ−６脂肪酸の含量が少なく、
多量のｎ−３脂肪酸が蓄積されているので、これを摂取
すると、ｎ−６脂肪酸による各種生理的疾病を予防する
ことができ、体内にｎ−３脂肪酸が蓄積されてｎ−６脂
肪酸の代謝を阻害し得るので、ｎ−６脂肪酸の過量摂取
による弊害を治療することができ、ｎ−６脂肪酸／ｎ−
３脂肪酸の比率が減少して人体の生理的均衡を維持する
ことができる。従って、これまでは豚肉に過多の飽和脂
肪酸やｎ−６脂肪酸等が存在するという認識の為に、豚
肉を摂取するときは大部分の豚肉の脂肪層を除去してき
たが、本発明の飼料組成物により生産された豚肉は脂肪
層を除去する必要が無く、むしろこれを摂取することに
より人体の脂肪代謝の均衡が維持できるという利点があ
る。

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】ｎ−３脂肪酸供給源として亜麻種，荏胡
麻および魚粉を合計で70〜90％（重量％の意味、以下同
じ),炭水化物供給源として小麦および大麦を10〜20％，
コレステロール低下促進剤として燕麦を0.1 〜１％，抗
酸化剤としてエトキシキンを0.1 〜１％を夫々含有する
ものであることを特徴とする豚肉生産用飼料組成物。
【請求項２】ｎ−３脂肪酸供給源が75〜85％である請
求項１に記載の豚肉生産用飼料組成物。
【請求項３】ｎ−３脂肪酸供給源が、亜麻種，荏胡麻
および魚粉を100 ：（１〜10）：（２〜５）の割合で混
合したものである請求項１または２に記載の豚肉生産用
飼料組成物。
【請求項４】請求項１〜３のいずれかに記載の豚肉生
産用飼料組成物を、屠殺前７〜15日より豚に食べさせる
ことによって、ｎ−３脂肪酸に富んだ豚肉を生産するこ
とを特徴とする豚肉生産方法。