JP2604226B2 - 鉄道車両の構体構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、鉄道用車両の構体構造に関する。

〔従来の技術〕

従来の鉄道車両の構体は、大別して、左右の側構と屋
根構、台枠及び妻構とからなり、これらを結合した構体
に、窓や出入口扉等の車体構成部分を後付けしている。

また近年では、車体を軽量化して電力消費量等の運用
費の節減を図るために、構体に軽合金を使用した軽合金
車両が知られている。

第４図は、この種軽合金車両の構体の一例を示すもの
で、このうち左右の側構1,1は、夫々側柱２や横骨３に
幕板や腰板あるいは外板４や内羽目板等を組合わせ、屋
根構５は、長桁６や垂木７に屋根外板８や天井板等を組
合わせ、同様に台枠９は、横梁10や側梁11に床受け板12
等を組合わせて、夫々をユニット化し、これらのユニッ
トを結合して車両長手方向の構体全体を構成する。

また、これら構体の各構成部材は、軽合金を材料に、
各部の剛性や強度を勘案して様々な形状に折曲した形材
等を組合わせて用いられる。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら上述のものでは、構体を構成する部材及
びこれらを連結する部品の点数が非常に多いことから、
部材・部品の製作工数や品質・精度面で不利であり、ま
た、これらの組立て工程数も多く複雑なため、機械化・
自動化による生産性の向上が困難で、コストダウンが図
りにくかった。

本発明は、かかる実情を背景にしてなされたもので、
車両長手方向の構体全体を構成する部材を簡素化するこ
とにより、構体全体の大幅な軽量化を図ると共に、構成
部材及び連結部品の点数を減少し、また組立て工程を大
幅に削減して、生産性の向上とコストダウンを図った鉄
道車両の構体構造を提供することを目的としている。

〔課題を解決するための手段〕

本発明は、上述の目的を達成するため、車両長手方向
に形成した複数種類の断面中空状の軽合金形材同士を長
手方向に沿って溶接接合して、車両長手方向の構体全体
を断面中空状の軽合金形材のみで構成すると共に、該構
体の窓及び出入口等の開口部配設部分を切除したことを
特徴としている。

〔作 用〕

上記の構成によれば、側構や屋根構等の形状や所要強
度に合わせて車両長手方向に形成した複数の断面中空状
の軽合金形材同士を、長手方向に沿って溶接で接合する
だけで車両長手方向の構体全体、すなわち左右の側構、
屋根構及び台枠が形成され、部材を縦横に組む骨組みを
必要としない。

また、溶接方向が一方向に長く単純であることから、
自動溶接機による組立てが容易で、作業性を著しく向上
できると共に、溶接歪みの発生が少なく、歪取・仕上作
業が大幅に削減可能となり、長手方向に順次部材を溶接
接合しないから、寸法精度の確保が容易で、組立治具も
簡単なもので済む。

さらに、側窓や側出入口等の開口部は、構体の必要部
分を切り抜くだけで容易に高精度高品質に形成でき、ま
た、軽量化のために、二重構造となる中空状形材の内側
を部分的に切抜くことも可能である。

〔実施例〕

以下、本発明の一実施例を第１図乃至第３図に基づい
て説明する。

車両長手方向の構体20は、従来例に示す側構１に相当
する部分を窓部形材21と腰板形材22で、屋根構５に相当
する部分を屋根形材23と軒桁形材24で、台枠９に相当す
る部分を床形材25と側梁形材26で、夫々必要に応じて適
宜数組合わせて構成される。

これら各形材21,22,23,24,25,26は、車両の長手方向
に連続形成した長尺材で、対向する内板27aと外板27bの
両端部を幅板27c,27cで結合し、これらに囲繞される中
空部内に、補強リブ27dをトラス状に連続して設けた断
面中空状を呈するもので、これらの形材21〜26は、夫々
軽合金を材料に押出し成形機にて一体形成される。

この内、窓部形材21には、窓枠の上縁または下縁を支
承するための受け片21aが突設されており、各形材21〜2
6は、内板27aと外板27bの長手方向の側縁を付合わせ
て、その内外部を各々長手方向に沿って溶接して接合さ
れる。

第２図は、窓部形材21と腰板形材22との接合状態を示
すもので、腰板形材22の幅板27cには、内板27a及び外板
27bと面一のメス形突片27e,27eが、また窓部形材21の幅
板27cには、前記メス形突片27e,27eの内側に嵌合される
オス形突片27f,27fが夫々突出形成され、オス形突片27
f,27fをメス形突片27e,27eに嵌合した後、メス形突片27
e,27eの先端縁を車両の長手方向に沿って連続溶接して
接合される。

前記突片27e,27fは、嵌合後の溶接接合によって、特
に車体幅方向に対する接合強度を充分に有し、さらにト
ラス状に配置される補強リブ27dと相俟って、高い剛性
力と強度とを担うものである。

窓部形材21と軒桁形材24との接合を始めとするその他
の部分の接合も、前記窓部形材21及び腰板部材22との接
合と同様に、メス形突片27eとオス形突片27fとを設け
て、両突片27e,27f同士を嵌合して溶接してもよい。

しかし、例えば屋根構や床構では、各中空型材を成形
する押出し用の型の種類を多くしないために、第３図に
示す如く、幅板27cの両外端に、内板27a及び外板27bの
面一の受け突片27g,27gをそれぞれ突出して設け、これ
ら突片27gと幅板27cとに囲まれる連結部の空間に、軽合
金を材料に成形したＩ型のジョイント部材28を介装して
補強し、その外部に突合わせされる両受け突片27g,27g
間を車両の長手方向に沿って連続溶接して接合してもよ
い。

上述の接合では、いずれも溶接方向が直線状に長く単
純であることから、自動溶接機による接合が容易とな
り、組立治具も簡単なもので済ませることができる。こ
の場合には、組立て作業性を著しく向上できると共に、
溶接品質の向上が図られるため歪みの発生が少なく、気
密及び水密性が向上する。また、長手方向に交叉する方
向の溶接接合を必要としないから、寸法精度の確保が容
易にできる。

さらに、構体20は、窓及び出入口等の開口部配設部
分、例えば、窓部形材21,21に側窓用の開口29が内板27a
と外板27bを切除して貫通形成し、屋根形材23及び軒桁
形材24の内板27aには、軽量化を主目的に、内板27aを必
要に応じて切り抜いた開口部30が形成されており、内外
板27a,27b間の中空部は、電線トイや断熱材等の配置若
しくは風道として利用することができる。

したがって、本実施例の構体20は、各軽合金形材21〜
26を、内外板27a,27bの２重板構造で、さらにその長手
方向の側部を幅板27c,27cで閉塞した中空状としたか
ら、全ての方向に荷重を受けることができて、剛性及び
強度が従来構造よりも高まり、しかも一層軽量となる。
内外板27a,27b間の補強リブ27dは、剛性力や強度の必要
性に応じて、適宜増減して設ければよい。

これにより、２重板構造は、気密圧力荷重にも略均一
な板面応力と結合部応力となり、超高速車両のような、
特に高い気密性を必要とする構体に最適である。

また、各形材21〜26の長手方向の側部同士の内外部を
相対位置で直線状に溶接するのみで接合できるので、充
分な溶接強度を保持し得ると共に、溶接作業が単純で、
自動化も容易に行なえるので、作業性の向上と溶接品質
の向上が図れる。

さらに、従来のような柱や梁等の骨組みを必要としな
い構造であるから、側窓や側出入り口等の開口部は切り
抜くだけで簡単に形成できると共に、直接目に触れない
部分の内板を、同様に切除することも可能で、最適な強
度の確保と徹底した軽量設計が図れ、しかも部品点数と
組付け工数を著しく削減できるので、製造コストの低減
と製作期間の短縮化が可能となって、堅牢で軽量な車体
を安価に提供できる。

尚、上記実施例では３つの接合形態を例示したが、本
発明はこれ以外の接合形態であってもよく、また補強リ
ブの配置形態及びこれの省略も自由である。

また、使用する中空形材の種類を増やさないために、
中空形材の溶接のみでは部分的に強度不足となる場合
は、適宜補強を施すことも自由である。

さらに、溶接によって接合される中空形材の溶接組立
ての順序や、開口部切除の時期等は限定されるものでは
なく、組立治具等設備内容や作業場のスペース、あるい
は工期、工程等によって比較的自由に選択することがで
きる。

〔発明の効果〕

本発明の構体構造は、以上説明したように、車両長手
方向に形成した複数種類の断面中空状の軽合金形状同士
を長手方向に沿って溶接接合して、車両長手方向の構体
全体を断面中空状の軽合金形材のみで構成したので、側
構や屋根構等の形状や所要強度に合わせて車両長手方向
に形成した複数の断面中空状の軽合金形状同士を、長手
方向に沿って溶接で接合するだけで車両長手方向の構体
全体が形成され、部材を縦横に組む骨組みを必要とせ
ず、部品点数及び組立て工数を著しく節減できると共
に、溶接方向が一方向に長く単純であることから、自動
溶接機による組立てが容易で、作業性を著しく向上でき
ると共に、溶接歪みの発生が少なく、歪取・仕上作業が
大幅に削減可能となり、組立治具も簡単なもので済み、
組立寸法も出し易く、作業性の向上と相俟って製作期間
の短縮化が図れ、生産性の向上と大幅なコストダウンに
より、堅牢で軽量な車体を安価に提供することができ
る。

しかも、軽量化のために、二重構造となる中空形材の
内側を部分的に切抜くことも可能であり、また、剛性や
強度を要する箇所では、必要に応じて形材の中空部内に
適数の補強リブを設けることもできる。

さらに、構体の窓及び出入口等の開口部に相当する部
分を切除することにより、側窓や側出入口等の開口を容
易に高精度高品質に形成できる。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第３図は本発明の一実施例を示すもので、第
１図は車両長手方向の構体の斜視図、第２図は窓部形材
と腰板形材の接合状態を示す断面図、第３図は他の接合
形態を示す断面図、第４図は従来の車両長手方向の構体
構造を示す斜視図である。 20……車両長手方向の構体、21……窓部形材、22……腰
板形材、23……屋根形材、24……軒桁形材、25……床形
材、26……側梁形材、27a……内板、27b……外板、27c
……幅板、27d……補強リブ、27e……メス形突片、27f
……オス形突片、27g……受け突片、28……ジョイント
部材、29……側窓用の開口、30……開口部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北山 茂 岐阜県岐阜市加納大黒町３―４―623 (72)発明者 太田 芳夫 京都府京都市南区吉祥院中島町28 (72)発明者 関谷 守 愛知県名古屋市熱田区三本松町１番１号 日本車輌製造株式会社内 (72)発明者 峰岸 俊彦 愛知県名古屋市熱田区三本松町１番１号 日本車輌製造株式会社内 (56)参考文献 実開 昭51−151309（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭63−18372（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】車両長手方向に形成した複数種類の断面中
   空状の軽合金形材同士を長手方向に沿って溶接接合し
   て、車両長手方向の構体全体を断面中空状の軽合金形材
   のみで構成すると共に、該構体の窓及び出入口等の開口
   部配設部分を切除したことを特徴とする鉄道車両の構体
   構造。