JP2576995Y2 - ケーブル用移動台車 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、水平又は斜めに張られ
たケーブルに係合する滑車及びその駆動モータを有して
自走する移動台車、特に建設中の建物の荷揚げ用の空間
を一時的に覆う安全ネットを自動開閉するための装置
や、ケーブルクレーンのトロリ等として有用な水平ケー
ブル用移動台車に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、建設現場においては吹抜けの床
などの上下方向の空間を利用して荷揚げ作業が行われ
る。この荷揚げ用の空間は、その各階の開口部を常時開
放しておくと不測の転落や重量物の落下などのおそれが
あるため、通常２〜３階ごとに上記開口部に開閉式の安
全ネットを配設し、荷揚げ作業が終了した後に安全ネッ
トを展張して開口部を閉塞することが行われる。安全ネ
ットの開閉は、通常、開口部の両側に沿って架設された
ガイドワイヤに、安全ネットの両側端をリング等により
摺動自在に支持し、その安全ネットの先端を牽引ロープ
で引張って展張可能とした手動の開閉設備によってい
る。

【０００３】これに対し、図４に示すように、安全ネッ
ト３２の開閉方向に沿って配設されたワイヤロープから
成るケーブル１に対し移動自在に移動台車４０を配設
し、安全ネットを自動的に開閉可能とした安全ネット用
自動開閉装置が提案されている（実開平２−１３６６８
号公報）。この移動台車４０は、図３の如く、ケーブル
１に対し上方より、箱体２０に取り付けた前後一対の滑
車２２，２２を係止させると共に、このケーブル１を押
えローラ２８により下方から弾性的に押さえ、更に箱体
２０の下方に取り付けた駆動モ−タ２５の動力を駆動伝
達機構を介して滑車２２，２２に伝達し、以て自走可能
とした構成のものである。駆動伝達機構は、上記滑車２
２，２２に同軸に連結した従動スプロケット２３，２３
と駆動モ−タ２５の出力軸に取り付けた駆動スプロケッ
ト２６とに、ローラチェーン２７を掛け渡した構成とな
っている。尚、押えローラ２８は筒体２９内に配設した
スプリングにより、常時ケーブル１を滑車２２，２２側
へ押圧するように付勢されており、その付勢力は操作ネ
ジ２９ａを回転することにより調節可能となっている。

【０００４】安全ネット３２は、図４に示すように、建
設中の建物の床３０上の架台３３，３３間に張られたケ
ーブル１に挿通された多数のリング３４により、ネット
両側端が支持される。この安全ネット３２を移動台車４
０に取り付けて自走させることにより、建物の荷揚げ用
の開口部３０ａに対する安全ネット３２の開閉がなされ
る。この移動台車４０は自走式であるから、人手による
索引作業やその作業スペ−スを確保する必要なしに、極
めて簡単に開閉でき、またケーブル１に対する移動台車
４０の取付や撤去も簡単である等の利点が得られる。従
って、この移動台車４０は、水平に張られた単一ケーブ
ル（ケーブル１に対応する）を走行するケーブルクレー
ンのトロリ等の移動体として適用することも可能であ
る。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】しかし、従来の移動台
車４０においては、上方より前後一対の滑車２２，２２
を係止させたケーブル１を、その滑車２２，２２の係止
位置より前後に離れた位置で、下方から押えローラ２８
により弾性的に押さえている。このため、滑車（シ−
ブ）をケーブル１に対して滑りにくく且つ外れないよう
にする目的は一応達成はされるものの、このケーブル１
を挟んで反対側から押えている押えロ−ラ２８の力が移
動台車４０の走行時における抵抗になることから、その
押圧力の調整が難しく、構造が複雑になるという問題が
あった。この問題はケーブルクレーンのトロリ等の移動
体として用いた場合も同様に存在する。

【０００６】本考案は上記課題に鑑みてなされたもの
で、その目的とするところは、微妙な調整を要すること
なく、簡単な構成で、滑車をケーブルに対して滑りにく
く構成し得る水平ケーブル用移動台車を提供することに
ある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本考案のケーブル用移動台車は、ケーブルに係合す
る滑車及びその駆動モータを有して自走する移動台車に
おいて、移動台車の台車フレーム下部に固定した主滑車
の下側にＵ字状に巻き回したケーブルの両端を、台車フ
レームの上部両側に固定した一対の補助滑車の上側に通
した後、移動台車外へ導出した構成のものである。この
場合、上記両滑車のケーブル案内溝の底部には、ケーブ
ルを構成する捻り線の外形状を形取った凹凸面を形成す
ることができる。

【０００８】

【作用】ケーブルは、台車フレーム下部に固定した主滑
車の下側周面より台車フレーム上部両側の補助滑車へと
Ｕ字状に巻き回されるため、ケーブルの主滑車の溝に接
触する部分が長くなり、摩擦力が増加して、ケーブルが
滑りにくくなる。

【０００９】また、滑車のケーブル案内溝の底部に、ケ
ーブルを構成する捻り線の外形状を形取った凹凸面を形
成すると、ケーブルの撚りピッチ山とケーブル案内溝底
部の素線溝とが、滑車周方向に見て、滑車の軸方向に斜
めに曲がった状態で係合し合うため、駆動モータにより
主滑車を回転させて移動台車を走行させた場合にも、ケ
ーブルと主滑車はケーブルの軸線方向に対する大きな抵
抗を受けて相互に滑り難くなる。

【００１０】

【実施例】以下、本考案を図示の実施例に基づいて説明
する。

【００１１】図１及び図２において、２は移動台車４０
の台車フレームであり、相対向する一対の滑車取付板２
ａと、これから側方に距離をおいて滑車取付板２ａと平
行に設けた駆動系取付板２ｂと、滑車取付板２ａ及び駆
動系取付板２ｂ間を上部中央にて連結する中間連結部２
ｃとを備えている。

【００１２】上記一対の滑車取付板部２ａ間において、
滑車取付板部２ａの下部には駆動側となる主滑車３が、
また滑車取付板部２ａの上部両側には補助滑車４、５
が、それぞれ回転自在に取付けられ、各滑車３、４、５
の外周面にはケーブル案内溝６が形成されている。この
うち主滑車３は一対の滑車取付板２ａ及び駆動系取付板
２ｂ間を貫いて支承された回転軸７に固定されており、
該回転軸７の駆動系取付板２ｂ側の突出端にはスプロケ
ット８が取付けられている。

【００１３】本実施例の場合、各滑車３、４、５を通る
べきケーブル１は、ワイヤーロープ等の捻り線であるこ
とを前提としており、上記ケーブル案内溝６の底部に
は、滑車とケーブル１との間の滑り防止効果を増大させ
る目的で、上記捻り線であるケーブル１の外形状（撚り
ピッチ山）を形取った凹凸面（図示せず）が形成されて
いる。

【００１４】一方、中間連結部２ｃは滑車取付板部２ａ
から断面コ字状に延在する部材であって、これに一体に
取付けられた上記駆動系取付板２ｂには、その中間連結
部２ｃの断面コ字状の内側から、減速機９ａを備えた電
気駆動モータ９が配設され、ネジ１０により固定されて
いる。電気駆動モータ９の出力軸、正確には減速機９ａ
の出力軸１１は、駆動系取付板２ｂを貫通して突出して
おり、その突出端には、駆動側となるスプロケット１２
が固定されている。そして、このスプロケット１２と上
記スプロケット７とは、チェーン１３により連結駆動さ
れる。尚、電気駆動モータ８を上記の如く滑車取付板部
２ａ側から取付可能とするため、上記一対の滑車取付板
部２ａには電気駆動モータ８が挿通する開口（図示せ
ず）が設けられている。

【００１５】かかる構成の下において、ケーブル１は、
上記移動台車４０の台車フレーム２の下部に固定した主
滑車３の下側にＵ字状に巻き回され、その両端は、台車
フレーム２の上部両側に固定した一対の補助滑車４、５
の上側を通った後、移動台車４０外へ導出される。従っ
て、ケーブル１の主滑車３の溝６に接触する部分が長く
なり、摩擦力が増加して、ケーブル１が滑りにくくな
る。しかも、ケーブル１の撚り山の外形状と案内溝６底
部の凹部とは、滑車周方向に見て、滑車の軸方向に斜め
に曲がった状態で係合し合う。このため、駆動モータ９
により滑車３を回転させて移動台車４０を走行させた場
合にも、ケーブル１と滑車３，４，５とは相互にケーブ
ル１の軸線方向に対する抵抗を生じ、接触面で相互に滑
らなくなる。従って台車４０は駆動モータ９により、ス
プロケット１２、８を介して主滑車３を回転させること
により、ケーブル１に沿って滑り現象なく円滑に走行す
る。

【００１６】上記ケーブルの滑り防止作用は、上記移動
台車４０をケーブルクレーンのトロリ等の移動体として
用いた場合にも同様に得られるものである。

【００１７】尚、安全ネット用開閉装置を構築する場合
の使用方法は、既に図４において説明したところと同じ
であり、建設中の建物の床３０上の架台３３，３３間に
張られたケーブル１に挿通された多数のリング３４によ
り、ネット両側端を支持し、この安全ネット３２を移動
台車４０に取り付けて自走させ、以て建物の荷揚げ用の
開口部３０ａに対する安全ネット３２の開閉を行う。こ
の場合、駆動モ−タ３は電気ケーブル３６介して制御装
置３７と接続し、制御装置３７に所属する操作スイッチ
３８により正逆回転の駆動制御を有線で行ってもよく、
また、無線により各階の安全ネット３２を一斉に開閉し
てもよい。

【００１８】

【考案の効果】以上述べたように、本考案によれば、次
のような優れた効果が得られる。

【００１９】請求項１の構成によれば、ケーブルは、台
車フレーム下部の主滑車の下側周面より上部両側の補助
滑車へとＵ字状に巻き回されるため、ケーブルの主滑車
の溝に接触する部分が長くなり、摩擦力が増加して滑り
にくくなる。また簡単な構成であり且つ従来の押圧ロー
ラの如き微妙な押圧力の調整を必要としない。

【００２０】また、請求項２の構成では、ケーブルの捻
りピッチ山とケーブル案内溝底部の素線溝とが、滑車周
方向に見て、滑車の軸方向に斜めに曲がった状態で係合
し合うため、ケーブルと滑車は相互に滑り難くなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例に係るケーブル用移動台車の
側面図である。

【図２】図１のケーブル用移動台車の正面図である。

【図３】従来のケーブル用移動台車の概略斜視図であ
る。

【図４】従来の移動台車で構築した安全ネット用自動開
閉装置を示す図である。

【符号の説明】

１ ケーブル ２ 台車フレーム ３ 主滑車 ４、５ 補助滑車 ６ ケーブル案内溝 ７ 回転軸 ８、１２ スプロケット ９ 電気駆動モータ １１ 出力軸

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B66C 21/00 E04G 21/32

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ケーブルに係合する滑車及びその駆動モ
   ータを有して自走する移動台車において、移動台車の台
   車フレーム下部に固定した主滑車の下側にＵ字状に巻き
   回したケーブルの両端を、台車フレームの上部両側に固
   定した一対の補助滑車の上側に通した後、移動台車外へ
   導出したことを特徴とするケーブル用移動台車。
2. 【請求項２】 上記両滑車のケーブル案内溝の底部に
   は、ケーブルを構成する捻り線の外形状を形取った凹凸
   面を形成したことを特徴とする請求項１記載のケーブル
   用移動台車。