JP2571732Y2 - 運搬車 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、傾斜地、特に階段の登
り降り走行に好適なクローラ型の運搬車に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】従来、クローラ走行部のトラックフレー
ムに上下揺動自在に取り付けた支脚の先端部に補助車輪
を設け、その補助車輪を油圧シリンダの伸縮作動で対地
昇降させて、補助車輪とクローラ走行部との共働によっ
て階段を登り降り走行するようにしたクローラ型の運搬
車が知られている（例えば、特開昭５９−２０７７７号
公報参照）。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】従来のものは、補助車
輪を対地昇降するに油圧シリンダが必要なため全体構造
が複雑になる難点があり、また、平坦地走行の場合にも
補助車輪が地面に近く位置し、それが機体回向時に障害
になり易いという難点もあった。

【０００４】本考案は、補助車輪とクローラ走行部の共
働によって階段を登り降り走行するクローラ型の運搬車
でありながら、補助車輪の対地昇降を簡潔構造で容易に
行うことができ、また、平坦地走行の際の機体回向をも
何ら支障なく行うことができるようにするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】すなわち、本考案は、後
端に操縦ハンドル部を備えた機体フレームの前後方向中
程部に位置する駆動車軸に嵌着した大径の駆動輪と、駆
動車軸から前延するトラックフレームの前端部に軸支し
た小径の従動輪とにクローラを巻き掛けたクローラ走行
部を、前記駆動車軸を中心にして上下に回動変位できる
ように設けると共に、そのクローラ走行部の後方部位
に、前記機体フレームに支承されて機体後進時にのみ自
由回転する補助車輪を配設し、該補助車輪が、クローラ
走行部を平坦地走行体勢に上昇変位させるとその接地面
から上方に大きく離間位置し、また、クローラ走行部を
傾斜地走行体勢に下降変位させるとその接地面から僅か
に上方に位置するように構成して、傾斜地走行体勢で前
進走行する際に、操縦ハンドル部の押し下げにより補助
車輪を接地させて制動力を付与できるようにしたことを
特徴とするものである。

【０００６】

【考案の作用及び効果】上記のように構成したので、駆
動車軸を中心としてクローラ走行部を上下に回動変位す
れば、それに伴って必然的に補助車輪が大きく対地上昇
した平坦地走行体勢と、傾斜地走行体勢に下降変位させ
るとその接地面から僅かに上方に位置する傾斜地走行体
勢とに変更されることとなって、従来のもので必要であ
った補助車輪昇降用の油圧シリンダが不要になり構造が
簡素化されるとともに、油圧シリンダを伸縮する頻繁な
操作が不要になり運転操作が簡単になる。

【０００７】そして、平坦地走行体勢においては、補助
車輪が地面から上方に大きく離間位置するので、回向時
に機体の後方を押し下げ、クローラの接地部を点接地と
して信地旋回を行う場合にも、補助車輪が接地すること
はなくてスムーズな信地旋回が行える。また、傾斜地走
行体勢で降り方向に前進走行する際に、操縦ハンドル部
を押し下げて補助車輪を接地させれば、その補助車輪に
よって制動力が付与されて暴走が回避される。

【０００８】

【実施例】実施例について図面を参照して説明すると、
図１および図２において、運搬車（Ａ）は、機体フレー
ム（Ｄ）と、クローラ走行部（Ｂ）及びこれを駆動する
エンジン（Ｃ）等より構成されている。クローラ走行部
（Ｂ）は、ミッションケース（Ｍ）の左右に突出する駆
動車軸（１）に固着した大径の駆動輪（２）と、駆動車
軸（１）に回動自在に支承されたトラックフレーム
（３）と、トラックフレーム（３）の先端部に回動自在
に軸支される小径の従動輪（４）と、これら駆動輪
（２）及び従動輪（４）の外周に巻き掛けられた弾性材
にて形成されるクローラ（５）とより構成され、クロー
ラ（５）の接地部分の内周にはイコライザ式の転輪
（６）がトラックフレーム（３）に枢着されている。

【０００９】クローラ走行部（Ｂ）を形成するトラック
フレーム（３）と、機体フレーム（Ｄ）との間には、油
圧シリンダ（伸縮機構７）が介装され、この油圧シリン
ダ（７）の伸縮作用によりクローラ走行部（Ｂ）は、図
１に示すように、駆動車輪（１）を中心として上下に回
動変位するもので、仮想線で示すように、クローラ走行
部（Ｂ）を上方に回動変位した状態は、平坦地の走行を
行う形態であり、実線にて示すようにクローラ走行部
（Ｂ）を下方に回動変位した状態は、傾斜地、特に階段
の登り降り走行を行う形態である。

【００１０】クローラ走行部（Ｂ）の後方には機体フレ
ーム（Ｄ）に軸支される２個の補助車輪（８）が配置さ
れており、該補助車輪（８）は、クローラ走行部（Ｂ）
を上方に回動変位した状態においては、クローラ（５）
の接地面よりも相当上方に位置し、クローラ走行部
（Ｂ）を下方に回動変位した状態においては、クローラ
（５）の接地面における仮想延長線（Ｘ）よりも僅か上
方に位置するように配置されている。

【００１１】そして、この補助車輪の上下位置は、図示
していないが、階段の高さに応じて上下に移動調節する
ように構成されており、運搬車（Ａ）が後進すると、該
補助車輪（８）は、その枢支軸（９）よりも下方部分が
仮想線にて示す階段（ｅ）の１段目のエッジ（ｅ１）に
接当し、補助車輪（８）がエッジ（ｅ１）を乗り越えて
階段（ｅ）の１段目の水平面（ｅ２）に乗り上がると、
運搬車（Ａ）は前方に傾斜する。

【００１２】従って、クローラ走行部（Ｂ）の後部であ
る大径の駆動輪（２）部分が持ち上げられて、運搬車
（Ａ）は、階段（ｅ）のエッジ（ｅ１）に接当した補助
車輪（８）と、平坦面に接当したクローラ走行部（Ｂ）
の前方である従動輪（４）の外周部に位置するクローラ
（５）とにより前方上方に傾斜された状態で支持され
る。

【００１３】この後、後部を持ち上げられたクローラ走
行部（Ｂ）の後部である大径の駆動輪（２）の外周に位
置するクローラ（５）部分における駆動車輪（１）より
も下方部分が、実線にて示す階段（Ｅ）の一段目におけ
るエッジ（Ｅ１）に係合して乗り上がり、順次補助車輪
（８）とクローラ走行部（Ｂ）の後部とが二段目以降の
エッジ（Ｅ１）に接当係合し、クローラ走行部（Ｂ）の
全体が階段（Ｅ）に乗り上がった状態で、油圧シリンダ
（７）を伸長させクローラ走行部（Ｂ）を下方に回動変
位してクローラ（５）の接地部分を階段の傾斜面に接当
させれば、クローラ（５）の接地部分が複数のエッジ
（Ｅ１）に接当することとなる。

【００１４】これ以降、クローラ走行部（Ｂ）は、その
クローラ（５）の外周に形成されるラグ（５ａ）が、階
段（Ｅ）における複数のエッジ（Ｅ１）に係合すること
によって登り走行するのであり、この登り走行状態にお
いては、補助車輪（Ｂ）は、階段のエッジ（Ｅ１）の僅
か上方に位置し、該エッジ（Ｅ１）には接当しない。

【００１５】なお、運搬車（Ａ）が階段（Ｅ）を下降走
行する際も、上記と同様にクローラ走行部（Ｂ）を下方
に回動位置させ走行するものである。図面において（１
０）は、油圧シリンダ（７）を操作する操作レバーで、
機体フレーム（Ｄ）と一体的に形成された操作ハンドル
部（１１）に装着されている。（１２）は、機体フレー
ム（Ｄ）の荷台部分（１３）に挟持部材（１４）を介し
て搭載した運搬物である。

【００１６】上記した補助車輪（８）は、図３に示すよ
うに、枢支軸（９）に回転自在に遊嵌され、枢支軸
（９）との間に一方向クラッチ（１５）を介装してなる
もので、図１に示すように、矢印（イ）方向には回転す
るが、その反対方向には回転しないように構成されてお
り、この補助車輪（８）は、階段（Ｅ）にクローラ走行
部（Ｂ）の全体が乗り上がり、登り降り走行する際、仮
想延長線（Ｘ）に対して僅かの寸法だけ上方に位置し、
階段（Ｅ）に接当していないものであり、運搬車（Ａ）
が階段を下降走行する際に、クローラ（５）と階段
（Ｅ）のエッジ（Ｅ１）との間にスリップが生じた場合
においては、操作ハンドル部（１１）を下方に押し下
げ、補助車輪（８）を階段（Ｅ）に接当させることによ
り、制動作用が働き、運搬車（Ａ）のスリップ走行を阻
止することができる。

【００１７】なお、図４に示すものは、枢支軸（９）に
複数個の支持アーム（１６）を形成した車輪取付体（１
７）を回動自在に装着し、この支持アーム（１６）の先
端部に枢支軸（１６ａ）を介して複数個の補助車輪
（８）を装着してなるもので、このものにおいても上記
したものと同様に、補助車輪（８）が階段（Ｅ）の第１
段目のエッジ（Ｅ１）或いは水平面（Ｅ２）に乗り上
げ、クローラ走行部（Ｂ）の階段（Ｅ）への乗り上がり
を容易にしたものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案を実施した運搬車の側面図である。

【図２】その平面図である。

【図３】補助車輪の取付け部の断面図である。

【図４】他の実施例を示す運搬車の側面図である。

【符号の説明】

Ｂ クローラ走行部 Ｄ 機体フレーム １ 駆動車軸 ２ 駆動輪 ３ トラックフレーム ４ 従動輪 ５ クローラ ８ 補助車輪 １１ 操縦ハンドル部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 審査官 大島 祥吾 (56)参考文献 特開 昭59−20777（ＪＰ，Ａ) 特開 昭46−46046（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 後端に操縦ハンドル部（１１）を備えた
   機体フレーム（Ｄ）の前後方向中程部に位置する駆動車
   軸（１）に嵌着した大径の駆動輪（２）と、駆動車軸
   （１）から前延するトラックフレーム（３）の前端部に
   軸支した小径の従動輪（４）とにクローラ（５）を巻き
   掛けたクローラ走行部（Ｂ）を、前記駆動車軸（１）を
   中心にして上下に回動変位できるように設けると共に、
   そのクローラ走行部（Ｂ）の後方部位に、前記機体フレ
   ーム（Ｄ）に支承されて機体後進時にのみ自由回転する
   補助車輪（８）を配設し、該補助車輪（８）が、クロー
   ラ走行部（Ｂ）を平坦地走行体勢に上昇変位させるとそ
   の接地面から上方に大きく離間位置し、また、クローラ
   走行部（Ｂ）を傾斜地走行体勢に下降変位させるとその
   接地面から僅かに上方に位置するように構成して、傾斜
   地走行体勢で前進走行する際に、操縦ハンドル部（１
   １）の押し下げにより補助車輪（８）を接地させて制動
   力を付与できるようにしてある運搬車。