JP2523449Y2 - 二サイクル内燃機関のリード弁 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は二サイクル内燃機関のリード弁に関する。

従来の技術 二サイクル内燃機関には、気化器からの吸入管とシリ
ンダ又はクランクケースに設けられた吸気口との間にリ
ード弁を設けて燃料及び空気の混合気の逆流を阻止する
ように構成されている形式のものがある。また、このよ
うな内燃機関において吸入管をシリンダに対して傾斜さ
せて配置して、混合気がリード弁を通過する際の通気抵
抗を減ずると共に、混合気流の当たる位置をシリンダの
排気口側に向けるようにして、シリンダの冷却の不均衡
を修正するように構成された内燃機関がある。このよう
な内燃機関に使用される従来のリード弁として、リード
片取付板に長方形の開口部を二つ設けたリード弁がある
が、従来のこのようなリード弁では、前記リード片取付
板の混合気流の下流側に位置するリード片取付部におい
て、リード片取付固着部と前記開口部のリード片取付部
寄りの後縁との間に前記リード片取付板の板厚と前記吸
入管の傾斜により生ずる混合気流の陰となる部分に燃料
溜りが形成されや易く、このため、特に、燃料要求量が
ごくわずかな機関のアイドル運転時にこの燃料溜り部の
燃料が液滴状のまま機関に吸入されると、燃料状態が急
激に変化するので回転変動が起き易く、同様に、機関の
減速時にアイドル運転に安定せずに停止してしまった
り、加速特性が変動する等の不都合があった。

この対策として、前記開口部の後縁を全体的に前記リ
ード片取付部の方へ寄せて、前記リード片の当接部が実
質的に形成されないようにすることが考えられるが、燃
料溜りの形成を防止することができても、適正なリード
片当接面積が大きく削られることになるので、閉弁時の
密封度が低下し、リード片自体の耐久性も低下するとい
う問題が生じる。

考案が解決しようとする課題 そこで、本考案は、上述したような従来の技術の不都
合を解消するために、リード片当接面積を大きく削られ
ないで燃料溜りの形成を防止することができる二サイク
ル内燃機関のリード弁を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段 即ち、本考案に係る二サイクル内燃機関のリード弁
は、リード片取付板に二つの開口部分を中央仕切部を挟
んで左右に並設し、該両開口部分の後縁が全体としてＶ
字状となるように左右両側部から中央部へかけて前記リ
ード片取付板の後方へ向けて後退する方向へ傾斜して形
成され、前記両開口部分の前記後縁の後方の前記リード
片取付板の部分にリード片取付部を形成し、前記両開口
部分を開閉するリード片を前記リード片取付部に取付け
た構成を特徴とする。

作用 従って、このリード弁を例えば後方へ傾斜した吸気管
に取付けたとき、混合気はリード片の撓み方向へ流れ、
リード片取付部でのリード片当り面を確保しつつ、吸気
管の実効開口面積も大きくし、リード片取付固着部側の
リード片当接部の流路中央部に位置して流速の早いＶ字
状中央部が混合気流に常時さらされることになるので、
リード弁のリード取付板とリード片との間に滞留しよう
とする燃料液滴が順次Ｖ字状中央部側に引き寄せられて
吹き流される。

実施例 次に、本考案を図面の実施例に基づいて説明する。

図示した実施例では、吸入管１は第１図及び第２図に
示すように気化器28へ連結される円形の入口端２から後
述するリード弁10を取付ける矩形状の出口端３まで形成
された直線状の混合気通路４を内部に有し、前記出口端
３は、前記吸入管１の軸線に対して約45度斜めに傾斜し
て形成されている。前記通路４の前記入口端２は円形断
面形状を有するが、前記出口端３付近においては第２図
に示すようにその断面形状が下流方向へ漸増するように
形成され且つ前記出口端３では前縁５、左右両側縁６及
び７及び後縁８によって画成された全体的に横長四角形
状の出口開口９を形成している。しかしながら、前記後
縁８は、全体としてＶ字状となるように前記両側縁６及
び７との間のそれぞれの夾角αが鈍角をなし、後縁８の
左右両端からその中央部へかけて後方へ向けて後退する
方向へ傾斜して形成され、前記通路４を前記出口端３側
へ抜く、単一中子を用いて成形可能に配慮されている。

このように形成された前記吸入管１の出口端３側にリ
ード弁10が取付けられる。該リード弁10は第３図に示す
合成ゴムで被覆されたアルミニウム合金等よりなるリー
ド片取付板11を有し、該リード片取付板11は前記吸入管
１の出口端３側とほぼ同じ輪郭形状を有し、前記吸入管
１を内燃機関に取付ける時に前記リード片取付板11をそ
れらの間に介在配置し、且つボルト（図示せず）を前記
吸入管１の出口端３側の四隅に形成された穴12及びリー
ド片取付板11に形成された穴13に通して内燃機関側に螺
着することによって、前記リード片取付板11を前記吸入
管１と一緒に内燃機関に固定することができる。前記リ
ード片取付板11は前記吸入管１の出口端３の出口開口９
に面して連通する開口部14を有し、該開口部14の全体的
形状は前記吸入管１の出口端３の出口開口９の輪郭形状
とほぼ同じになるように形成されている。前記開口部14
は、この実施例では前記リード片取付板11の中央部を前
後方向に延びるように一体的に形成された中央仕切部15
によって仕切られた二つの対称的な形状の開口部分16及
び17を左右に並設している。従って、前記二つの開口部
分16及び17の後縁18及び19は全体として前記吸入管１の
出口開口９のＶ字状の後縁８に対応して左右両側部から
中央仕切部15へかけて後方へ向けて後退するように傾斜
して、それぞれの開口部分16及び17の面積を大きく取れ
るようにするとともに、後述するリード片取付部23と前
記中央仕切部15とで、リード片24の当り面を確保してい
る。

更に、前記リード片取付板11は、前記吸入管１と反対
側の面20上で前記開口部分16及び17の後方に小孔21及び
22を形成したリード片取付部23を有し、これらの小孔2
1,22に嵌合される取付ピン（図示せず）によってリード
片24（第４図に説明の目的で開状態として図示した）が
前記リード片取付部23上に取付けられる。前記リード片
24は弾力性ある薄鋼板等の材料から作られ、前記リード
片取付部23から前記リード片取付板11に沿って前方へ延
びて前記開口部14を覆うように配置される。このように
構成された前記リード弁10は、機関の運転中に生じた低
圧によって前記リード片24の前縁を前記リード片取付板
11から離すように前記リード片24を撓ませて前記開口部
分16及び17すなわち前記開口部14を開き、それにより混
合気を前記吸入管１から機関内へ流す。次に圧力が上昇
すると、前記リード片24は前記リード片取付板11に密着
して前記開口部分16,17を閉じる。

次に、上述した本考案実施例のリード弁を実際の内燃
機関に装着した第４図に示す実例について説明する。こ
の実施例は、水平対向同時点火式の二サイクル内燃機関
であって、クランクケース25の両側に一対のシリンダ−
ピストン組26及び27をそれぞれ設けており、前記クラン
クケース25の吸気口29部にリード弁10及び吸入管１を固
定しており、該吸入管１は右側のシリンダ−ピストン組
27の方へ傾斜して配置されている。前記両シリンダ−ピ
ストン組26及び27は、前記クランクケース25の吸気口29
と反対側のシリンダ側部に排気口30及び31を有する。

この実施例では、クランク軸32は、燃料の点火爆発時
にピストンによるスラストを受けるシリンダ壁の部分が
左側のシリンダ−ピストン組26では排気口30側であり、
右側のシリンダ−ピストン組27では排気口31と反対の側
であるように回転する。従って、右側シリンダ−ピスト
ン組27は排気口31側よりも低温側でスラストを受けるの
で、そこでの発熱はあまり問題とならないが、左側のシ
リンダ−ピストン組26ではスラストを受ける部分が高温
の排気口30側にあるので、そこがより高温となり易く、
右側の組27よりも不利となる。そこで、吸入管１を右側
の組27の方へ傾斜させて混合気がリード弁10を通過する
際の通気抵抗を減ずると共に、混合気流の当たる位置を
左側の組26のスラストを受ける部分へ向け、機関冷却の
不均衡を取除くように構成されている。

考案の効果 以上説明した本考案の構成により、本考案は、中央仕
切部を挟んで左右に並設した両開口部分の後端をＶ字状
に形成したので、閉弁時のリード弁の密封度やリード片
自体の耐久性を低下することなく、Ｖ字状の中央部がリ
ード片当接部を常時混合気流にさらし、リード片取付部
とリード片との間の燃料溜りが形成されにくくすること
によって機関のアイドル運転時の回転変動をなくし、機
関減速時の空運転回転の停動を防止し、加速特性の変動
を防止するとともに、吸入管の加工も容易にできる等の
効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るリード弁が取付けられる吸気管の
実施例を示す縦断面図、第２図は第１図の吸気管の出口
端の端面図、第３図は本考案に係るリード弁一実施例の
リード片取付板の平面図、そして第４図は第３図のリー
ド弁を使用する実施例内燃機関の要部断面図である。 10……リード弁、11……リード片取付板、15……中央仕
切部、16,17……開口部分、18,19……開口部分の後縁、
23……リード片取付部、24……リード片。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】リード弁（10）のリード片取付板（11）に
   二つの開口部分（16,17）を中央仕切部（15）を挟んで
   左右に並設し、該両開口部分の後端（18,19）が全体と
   してＶ字状となるように左右両側部から中央部へかけて
   前記リード片取付板の後方へ向けて後退する方向へ傾斜
   して形成され、前記両開口部分の前記後縁の後方の前記
   リード片取付板の部分にリード片取付部（23）を形成
   し、前記両開口部分を開閉するリード片（24）を前記リ
   ード片取付部に取付けたことを特徴とする二サイクル内
   燃機関のリード弁。