JP2515729Y2 - 魚釣用スピニングリール - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、魚釣用スピニングリールに関し、より詳し
くはスプールを進退動させる機構に関する。

〔従来の技術〕

従来の魚釣用スピニングリールにおける、スプールを
進退動させる進退動機構としては、回転枠とスプールと
の間にケースを設け、このケース内にトラバースカム軸
を回転可能に軸承した構成が知られている（実開昭61-2
04478号公報）。

この公報に示す機構によれば、トラバースカム軸の端
部に小歯車を固着して回転枠に一体的に形成した歯車と
噛合させ、トラバースカム軸に滑り子ケースの滑り子を
係合させ、滑り子ケースのシャフト部にスプールを固着
している。

〔考案が解決しようとする課題〕

上記構成に係る従来の魚釣用スピニングリールでは、
スプールのスカート部及び糸巻付胴部内にケースを設け
ることが必要で、そのため部品点数の増大により重量が
増えて組立工程の複雑化と工程数の増大を招き、また機
構が複雑化するなどの問題があった。また、回転枠とケ
ースとの間から砂やごみなどが侵入し、これが歯車に付
着して回転枠の回転やスプールの進退動が円滑に行なわ
れないなどの問題があり、ひいてはリールの耐久性に悪
影響を及ぼしていた。

本考案は、上記欠点を除くためになされたもので、部
品点数を削減し、装置の簡素化とともにリール組立工程
の簡素化と製品重量の軽量化を図ることもできる魚釣用
スピニングリールを提供することを目的とするものであ
る。

また、スプールの軸方向の位置を調整することもでき
る魚釣用スピニングリールを提供するものである。

〔課題を解決するための手段〕

本考案に係る魚釣用スピニングリールは、ハンドルと
連動するマスターギヤにより駆動され、スプールの軸を
摺動自在に貫通させた有底筒状回転枠体内に筒部を形成
し、この筒部内にトラバースカム軸を軸支するとともに
上記リール本体側に設けられた非回転の歯車との噛合に
より回転させ、上記スプール軸に回動自在に且つ軸方向
に係止されたオシレータに把持された爪を上記トラバー
スカム軸のカム溝に係合させ、上記回転枠体の回転によ
り上記トラバースカム軸を回転させて上記オシレータを
往復動させ、上記スプール軸とともにスプールを進退動
させたものである。

また、本考案の別の考案に係る魚釣用スピニングリー
ルは、スプールの軸上に回転可能に支持される底部を有
し、ハンドルと連動するマスターギヤにより上記スプー
ルの軸の廻りに駆動される有底筒状回転枠体内に単一の
筒部を形成し、この筒部内にトラバースカム軸を配置し
てその軸端部を上記底部に支持させるとともに、当該ト
ラバースカム軸を上記スプール軸に設けられた非回転の
歯車との噛合により回転させ、上記スプール軸に軸方向
に摺動自在に嵌装され且つスプールが取付けられたスリ
ーブに回動自在に係合したオシレータに把持された爪を
上記トラバースカム軸のカム溝に係合させ、上記回転枠
体の回転により上記トラバースカム軸を回転させて上記
オシレータを往復動させ、上記スリーブとともに上記ス
プールを進退動させたものである。

また、トラバースカム軸の一端に調節部材を設け、ト
ラバースカム軸を回動自在にかつ摺動自在に軸支すると
ともにこのトラバースカム軸を軸方向に移動調整可能に
調整部材を嵌着して、トラバースカム軸を進退動可能に
調節するようにしたものである。

〔作用〕

本考案に係る魚釣用スピニングリールによれば、回転
枠体内に筒部を形成し、この筒部内にトラバースカム軸
を上記回転枠体と一体回動可能に軸支し、スプール軸又
はスリーブとトラバースカム軸とをオシレータを介して
接続し、このオシレータの往復動によりスプールを進退
動させるようにできる。

また、トラバースカム軸の一端に調整部材を設け、こ
の調整部材によりトラバースカム軸を進退動させるよう
にしたことにより、スプールの位置を調節することがで
きる。

〔実施例〕

以下、図示実施例により本考案を説明する。

第１図は本考案の第１の実施例に係る魚釣用スピニン
グリールを示す断面図、第２図は上記魚釣用スピニング
リールのスプールが最も前方に位置する際の断面図、第
３図は第１図のＡ−Ａ線断面図である。図において、符
号１は釣竿（図示せず）に取付けられるリール本体で、
このリール本体１内にはハンドル（図示せず）の軸4aに
接続され、このハンドルの回動により回転するマスター
ギヤ４が収容されている。このリール本体１の前方（第
１図の左方）には上記マスターギヤ４に噛合するピニオ
ンギヤ５に嵌着固定される有底筒状の回転枠体２が、ベ
アリング1bを介してリール本体１に対してピニオンギヤ
５と共に回転自在にスプール軸６により軸支されてい
る。符号３はスプールで、このスプール３は、リール本
体１と回転枠体２とを摺動可能に貫通したスプール軸６
の先端に、締付ノブ12により締着されている。また、こ
のスプール軸６は、後端部6aがリール本体１内に回転止
め部材16により回転が妨げられて支持され、スプール軸
６が前後方向に摺動することによりスプール３を非回転
に進退動が可能なるように構成されている。

回転枠体２の内方には筒部2aが前方に向けて一体形成
され、この筒部2aの先端部には蓋部材11が着脱可能に固
着されており、この蓋部材11の凹陥部11aと、回転枠体
２の底部2bに穿設された軸受孔2cとの間にトラバースカ
ム軸９を回転自在に枢支している。回転枠体２の軸受孔
2cからリール本体１側へ突出したトラバースカム軸９の
後端部9cにはオシレートギヤ８が嵌着され、このオシレ
ートギヤ８はリール本体１に設けられたオシレートピニ
オンギヤ７（リール本体側に設けられた非回転の歯車）
と噛合している。このため、回転枠体２の回転とともに
トラバースカム軸９は回転しながら、スプール軸６の回
りを回動することとなる。なお、上記オシレートピニオ
ンギヤ７はリール本体１と一体としているが、リール本
体１側に取付けて非回転状態であれば本体１とは別体と
してもよい。

符号10は一端がスプール軸６にストッパーリング13に
より回動自在に且つ軸方向に係止されて取付けられたオ
シレータで、このオシレータ10の他端においては、爪押
え板15によりオシレータ10に固定された爪14がトラバー
スカム軸９のカム溝9aに係合している。このため、トラ
バースカム軸９が回転しながらスプール軸６の回りを回
動すると、オシレータ10が同様にスプール軸６の回りに
回動しながらオシレータ９の溝9aに従って前後方向に往
復動し、ストッパリング13によりスプール軸６が前後方
向に摺動してスプール軸６に締付ノブ12にて脱落しない
ように締着したスプール３を軸方向に進退動させる（第
１図，第２図）。なお、符号19は回転枠体２に設けられ
たバランスウェートである。

第４図は本考案の第２の実施例を示すもので、オシレ
ータ20の、スプール軸６の側端部を、前方へ延長した長
筒部20aを蓋部材21からさらに前方外方へ突出させたも
ので、このオシレータ20はその前後端を支持する一対の
ストッパリング22によりスプール軸６に回動自在に取付
けられている。

第５図及び第６図は本考案の第３の実施例を示すもの
で、上述の蓋部材11,21に代えて、トラバースカム軸９
の前方端部を軸支する円弧状のトラバースカム軸受30を
回転枠体２の筒部2aの前端部に取付けたもので、このト
ラバースカム軸受30と回転枠体２の軸受孔2cとによりト
ラバースカム軸９を回動自在に枢支している。

さらに、第７図乃至第９図は本考案の第４の実施例を
示すもので、本実施例においては、ハンドルと連動する
マスターギヤ４により駆動され、スプール３のスプール
軸36を貫通させた有底筒状回転枠体２内に筒部2aを一体
形成し、この筒部2aにトラバースカム軸９を軸支すると
ともに上記スプール軸36に設けられた非回転の歯車７と
の噛合により回転させ、上記スプール軸36に軸方向に摺
動自在に嵌装され且つスプール３が取付けられたスリー
ブ41に回動自在に係合したオシレータ42に把持された爪
14を上記トラバースカム軸９のカム溝9aに係合させ、上
記回転枠体２の回転により上記トラバースカム軸９を回
転させて上記オシレータ42を往復動させ、上記スリーブ
41とともにスプール３を進退動させている。

即ち、リール本体１に後端部36cがピン17で回り止め
された軸36の前方側に、このスプール軸36に前後方向に
のみ摺動可能なスリーブ41を嵌合させ、このスリーブ41
の円形状の外周に、オシレータ42の一端長筒部42aを回
動自在に嵌装し、スリーブ41の後端に形成されたフラン
ジ部41aと、前方に設けられたストッパリング43とによ
り長筒部42aの前後方向への変位を規制している。さら
に、スリーブ41の先端部はスプール３に着脱自在に固着
されている。スプール軸36にはオシレートピニオンギヤ
７がスプール軸36に固定され、このギヤ７は、トラバー
スカム軸９に固定されたオシレートギヤ８と噛合してい
る。したがって、トラバースカム軸９の回転に伴い、オ
シレータ42がスリーブ41の回りを回動しながら往復動す
ると、スリーブ41を前後方向に摺動させ、これによりス
プール３を進退動させる（第７図，第８図参照）。第９
図は第７図のＣ−Ｃ線断面図で、トラバースカム軸９の
カム溝9aに、オシレータ42の他端の筒状部にカム溝9aに
係合する爪14が回転自在に取付けてあり、上記カム溝9a
より離脱しないよう爪押え板15により取付けられてい
る。

第10図及び第11図は本考案の上記第４実施例の変形例
である第５の実施例を示すもので、スリーブ41に形成し
たフランジ部41bに、オシレータ50のスリーブ41側端面
に形成した溝部50aを回動自在に係合させたものであ
る。第11図は第10図のＤ−Ｄ線断面図である。

第12図及び第13図は本考案の上記第３の実施例を第４
の実施例に適用したもので、蓋部材21に代え、トラバー
スカム軸受30を回転枠体２の筒部2aの先端に取付けたも
のである。第13図は第12図のＥ−Ｅ線断面図である。

第14図は本考案の第６の実施例を示すもので、符号67
は蓋部材21に形成されたねじ孔21cに螺合された調節部
材としての調節摘で、この調節摘67は内部に嵌着された
ベアリング68によりトラバースカム軸69の前方端部を回
転自在に軸支するとともに、このトラバースカム軸69の
先端部をナット66により螺締している。また、トラバー
スカム軸69に嵌着されたオシレートギヤ８と噛合し、ス
プール軸36に回動不可能に嵌着されたオシレートピニオ
ンギヤ65は、オシレートギヤ８の前後方向の変位に応じ
て噛合状態が外れることがないように歯が幅広に形成さ
れている。従って、調節摘67を回動させれば、トラバー
スカム軸69は軸方向に連動して前後方向に所望量変位す
ることとなる。このため、トラバースカム軸69、オシレ
ータ42及びスリーブ41を介してスプール３の前後方向の
位置を調節して、スプール３の軸方向の位置を調節する
ことができる。なお、上記調節摘67は、回転底部2b側に
螺合させてもよい。

〔考案の効果〕

本考案は上記のように構成したので、回転枠体内に筒
部を形成し、その筒部内にスプールを進退動させる機構
を収容したことにより、従来必要としていたケースを省
略することとなり、部品点数を削減して装置を簡素化す
ることができるとともに組立工程を簡単に、しかも製品
重量の軽量化を図ることができる。

また、回転枠体を蓋部材を介して前後端で支持してい
るため、釣糸にテンションがかかった時のたわみが少な
くなる。

さらに、トラバースカム軸は筒部内であれば自由な位
置に取付けることができ、このためトラバースカム軸で
回転バランスをとることができるので、バランスウェー
トを軽量化し、装置のコンパクト化を図ることができ
る。

また、オシレートピニオンギヤとオシレートギヤとを
筒部内で密封することにより塵埃の侵入を阻止して耐久
性の向上を図ることができる。

加えて、トラバースカム軸を前後方向に調節可能な調
節部材を設けたことにより、スプールを所望の位置に容
易に調節することができるので、スプールに巻上げられ
る糸の状態を最適に調整できるという格別な効果が得ら
れる。

さらに、回転枠体に単一の筒部を設けてその内部にト
ラバースカム軸を配置し、しかもそのトラバースカム軸
を回転枠体の底部にて支持した場合には、回転枠体の構
造を簡素化してその重量を軽減させ、さらにはスプール
の軸とトラバースカム軸との軸間距離の誤差を抑えてス
プールの軸側の非回転の歯車とトラバースカム軸側の歯
車とを常に円滑に噛み合わせることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の第１の実施例に係る魚釣用スピニング
リールを示す断面図、第２図は上記魚釣用スピニングリ
ールのスプールが最も前方に位置した際の断面図、第３
図は第１図のＡ−Ａ線断面図、第４図は本考案の第２の
実施例に係る魚釣用スピニングリールを示す要部の断面
図、第５図は本考案の第３の実施例に係る魚釣用スピニ
ングリールを示す断面図、第６図は第５図のＢ−Ｂ線断
面図、第７図は本考案の第４の実施例に係る魚釣用スピ
ニングリールを示す断面図、第８図は第７図の魚釣用ス
ピニングリールのスプールが最も前方に位置した際の断
面図、第９図は第７図のＣ−Ｃ線断面図、第10図は本考
案の第５の実施例に係る魚釣用スピニングリールを示す
要部断面図、第11図は第10図のＤ−Ｄ線断面図、第12図
は本考案の第３の実施例を第４の実施例に適用した魚釣
用スピニングリールを示す断面図、第13図は第12図のＥ
−Ｅ線断面図、第14図は本考案の第６の実施例に係る魚
釣用スピニングリールを示す断面図である。 １……リール本体、２……回転枠体、2a……筒部、３…
…スプール、４……マスターギヤ、6,36……スプール
軸、７……オシレートピニオンギヤ（非回転の歯車）、
８……オシレートギヤ、9,69……トラバースカム軸、9a
……カム溝、10,20,42,50……オシレータ、41……スリ
ーブ、66……ナット、67……調節摘（調節部材）。

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ハンドルと連動するマスターギヤにより駆
   動され、スプールの軸を摺動自在に貫通させた有底筒状
   回転枠体内に筒部を形成し、この筒部内にトラバースカ
   ム軸を軸支するとともに上記リール本体側に設けられた
   非回転の歯車との噛合により回転させ、上記スプール軸
   に回動自在に且つ軸方向に係止されたオシレータに把持
   された爪を上記トラバースカム軸のカム溝に係合させ、
   上記回転枠体の回転により上記トラバースカム軸を回転
   させて上記オシレータを往復動させ、上記スプール軸と
   ともにスプールを進退動させることを特徴とする魚釣用
   スピニングリール。
2. 【請求項２】スプールの軸上に回転可能に支持される底
   部を有し、ハンドルと連動するマスターギヤにより上記
   スプールの軸の廻りに駆動される有底筒状回転枠体内に
   単一の筒部を形成し、この筒部内にトラバースカム軸を
   配置してその軸端部を上記底部に支持させるとともに、
   当該トラバースカム軸を上記スプール軸に設けられた非
   回転の歯車との噛合により回転させ、上記スプール軸に
   軸方向に摺動自在に嵌装され且つスプールが取付けられ
   たスリーブに回動自在に係合したオシレータに把持され
   た爪を上記トラバースカム軸のカム溝に係合させ、上記
   回転枠体の回転により上記トラバースカム軸を回転させ
   て上記オシレータを往復動させ、上記スリーブとともに
   上記スプールを進退動させることを特徴とする魚釣用ス
   ピニングリール。
3. 【請求項３】上記トラバースカム軸の一端軸受部に、該
   トラバースカム軸を回動自在かつ摺動自在に軸支すると
   ともにこのトラバースカム軸を軸方向に移動調節可能に
   するための調節部材を嵌着したことを特徴とする実用新
   案登録請求の範囲第１項又は第２項に記載の魚釣用スピ
   ニングリール。