JP2025019474A - MgB2超伝導線材用前駆体およびその製造方法、MgB2超伝導線材およびその製造方法、超伝導磁石、ならびに超伝導装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】均質なMgB2焼結体を有し、かつ高い臨界電流密度を達成可能なMgB2超伝導線材を得ることが可能なMgB2超伝導線材用前駆体、MgB2超伝導線材、それらの製造方法、超伝導磁石、および超伝導装置を提供する。
【解決手段】
本発明の一の態様によれば、金属シース11と、金属シース11内に位置するマグネシウム棒12と、金属シース11内に位置し、マグネシウム棒12に接して充填された少なくともホウ素粉末およびMgB2粉末を含む混合粉末13と、を備え、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率が、0%より大きく30%未満の範囲を満たす、MgB2超伝導線材用前駆体10が提供される。
【選択図】図1
【解決手段】
本発明の一の態様によれば、金属シース11と、金属シース11内に位置するマグネシウム棒12と、金属シース11内に位置し、マグネシウム棒12に接して充填された少なくともホウ素粉末およびMgB2粉末を含む混合粉末13と、を備え、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率が、0%より大きく30%未満の範囲を満たす、MgB2超伝導線材用前駆体10が提供される。
【選択図】図1
Description
本発明は、MgB2超伝導線材用前駆体およびその製造方法、MgB2超伝導線材およびその製造方法、超伝導磁石、ならびに超伝導装置に関する。
高温超伝導材料の1つであるMgB2超伝導体は、超電導マグネットや省電力化のための電力機器へ応用可能な材料である。現在市販されているMgB2超伝導線材はパウダーインチューブ法(PIT法)によって形成されている。PIT法は、マグネシウムとホウ素の混合粉末を金属管に詰め込み、圧延や引き抜き加工による縮径を繰り返すことによって細線化を行い、その後熱処理によってMgB2を形成させる手法である(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
PIT法は、非常に簡単である一方で、Mg+2B→MgB2の化学反応によって体積収縮が起こる。また、理論的には粉末を100%充填することは不可能であり、実際には50%程度の空隙率を有した超伝導線材が形成される。このようにPIT法によって得られるMgB2超伝導線材は空隙を多く含むため、この方法によって得られるMgB2超伝導線材の臨界電流密度Jcの磁場依存性は十分ではない。
これを解決するためにマグネシウム粉末の代わりにマグネシウム棒を用いる手法が開発されている(例えば、非特許文献1を参照)。この手法は、内部拡散マグネシウム法(IMD)、あるいはマグネシウム浸透法と呼ばれ、得られたMgB2領域においてほぼ100%の充填率を達成することが報告されている。
Shujun YE and Hiroaki Kumakura, "The development of MgB2 superconducting wires fabricated with an internal Mg diffusion (IMD) process", IOP Publishing Ltd, Supercond. Sci. Technol. 29 (2016) 113004 (21pp)
しかしながら、IMD法は、マグネシウムの拡散がホウ素側に進行することによって反応が進行するが、この際に、拡散スピードの違いによってMgB2が不均質に形成されてしまう。詳細には、非特許文献1では、熱処理過程において、マグネシウム棒からのMgは、中心部からシース側に向かって拡散するが、その拡散距離には限界がある。このため、MgB2がマグネシウム棒近傍に生成すると、生成したMgB2によってMgの拡散が阻害され、マグネシウム棒からのMgが十分に拡散しない。このため、MgB2が不均質に形成されてしまう。
MgB2が不均質に形成されてしまうと、その後の熱処理によってMgB2焼結体が不均質に形成されてしまい、MgB2超伝導線材に磁場を印加した場合にMgB2焼結体が欠損している箇所には電流が流れなくなるので、電流が入る領域が制限され、高い臨界電流密度特性は得られない。このため、MgB2超伝導線材においてMgB2焼結体が均質に形成されていることが極めて重要となる。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、均質なMgB2焼結体を有し、かつ高い臨界電流密度を達成可能なMgB2超伝導線材を得ることが可能なMgB2超伝導線材用前駆体、MgB2超伝導線材、それらの製造方法、超伝導磁石、および超伝導装置を提供することを目的とする。
[1]金属シースと、前記金属シース内に位置するマグネシウム棒と、前記金属シース内に位置し、前記マグネシウム棒に接して充填された少なくともホウ素粉末およびMgB2粉末を含む混合粉末と、を備え、前記ホウ素粉末と前記MgB2粉末の合計に対する前記MgB2粉末のモル分率が、0%より大きく30%未満の範囲を満たす、MgB2超伝導線材用前駆体。
[2]前記マグネシウム棒の直径をr1とし、前記金属シースの内径をr2としたとき、1≦r2/r1≦4の関係を満たす、上記[1]に記載の前駆体。
[3]前記ホウ素粉末の平均粒径が100μm以下の範囲を満たし、かつ前記MgB2粉末の平均粒径が100nm以上10μm以下の範囲を満たす、上記[1]または[2]に記載の前駆体。
[4]前記ホウ素粉末の平均粒径が、10nm以上150nm以下の範囲を満たす、上記[3]に記載の前駆体。
[5]前記MgB2粉末の平均粒径が、150nm以上300nm以下の範囲を満たす、上記[3]に記載の前駆体。
[6前記MgB2粉末の前記モル分率が、3%以上20%以下の範囲を満たす、上記[1]ないし[5]のいずれか一項に記載の前駆体。
[7]前記MgB2粉末の前記モル分率が、8%以上13%以下の範囲を満たす、上記[6]に記載の前駆体。
[8]前記混合粉末が、炭素をさらに含有する、上記[1]ないし[7]のいずれか一項に記載の前駆体。
[9]前記炭素は、前記MgB2粉末に添加されている、上記[8]に記載の前駆体。
[10] 線状に延びる金属シースと、前記金属シース内に位置し、かつ前記金属シースの長手方向に中空コアを有するMgB2焼結体と、を備え、前記MgB2焼結体が、150nm以上の範囲の粒径を満たす第1のMgB2結晶粒と、前記第1のMgB2結晶粒の周りに位置し、かつ20nm以上60nm以下の範囲の粒径を満たす第2のMgB2結晶粒とを含有する、MgB2超伝導線材。
[11]前記第1のMgB2結晶粒の平均粒径が、400nm以上の範囲を満たす、上記[10]に記載の超伝導線材。
[12]前記第2のMgB2結晶粒の平均粒径が、35nm以上55nm以下の範囲を満たす、上記[10]または[11]に記載の超伝導線材。
[13]前記超伝導線材の長手方向と直交する方向の断面において、前記中空コアの断面積に対する前記MgB2焼結体の断面積の比が、0.3以上である、上記[10]ないし[12]のいずれか一項に記載の超伝導線材。
[14]前記MgB2焼結体が、3at%以上6at%以下の範囲の酸素をさらに含有する、上記[10]ないし[13]のいずれか一項に記載の超伝導線材。
[15]ホウ素粉末と、MgB2粉末とを、前記ホウ素粉末と前記MgB2粉末の合計に対するモル分率が0%より大きく30%未満となるように混合し、混合粉末を調製することと、マグネシウム棒を、金属シース内に配置することと、前記混合粉末を、前記マグネシウム棒を配置した前記金属シース内に充填することとを含む、MgB2超伝導線材用前駆体の製造方法。
[16]前記マグネシウム棒の直径をr1とし、前記金属シースの内径をr2としたとき、1≦r2/r1≦4の関係を満たす、上記[15]に記載の方法。
[17]上記[1]ないし[9]のいずれか一項に記載のMgB2超伝導線材用前駆体を伸線加工することと、前記伸線加工された前記MgB2超伝導線材用前駆体を不活性ガス雰囲気または真空中で、550℃以上900℃以下の温度で熱処理することとを含む、MgB2超伝導線材の製造方法。
[18]前記熱処理が、630℃以上750℃以下の温度範囲で1時間以上8時間以下の時間で行われる、上記[17]に記載の方法。
[19]上記[10]ないし[14]のいずれか一項に記載のMgB2超伝導線材をコイル状に巻回した超伝導コイルを備える、超伝導磁石。
[20]上記[19]に記載の超伝導磁石を備える、超伝導装置。
本発明によれば、均質なMgB2焼結体を有し、かつ高い臨界電流密度を達成可能なMgB2超伝導線材を得ることが可能なMgB2超伝導線材用前駆体、MgB2超伝導線材、それらの製造方法、超伝導磁石、および超伝導装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態に係るMgB2超伝導線材用前駆体、MgB2超伝導線材、それらの製造方法、超伝導磁石、および超伝導装置について説明する。図1は、本実施形態に係るMgB2超伝導線材用前駆体の模式図であり、図2Aおよび図2Bは、本実施形態に係るMgB2超伝導線材用前駆体の模式的な製造工程図である。図3は、本実施形態に係るMgB2超伝導線材の模式図である。図4Aおよび図4Bは、本実施形態に係るMgB2超伝導線材中の第1の結晶粒の平均粒径を算出する工程を示した模式図である。図5Aおよび図5Bは、本実施形態に係るMgB2超伝導線材の模式的な製造工程図であり、図6は、本実施形態に係る超伝導磁石の模式図であり、図7は本実施形態に係る超伝導装置の一例であるMRIの模式図である。
<<<MgB2超伝導線材用前駆体>>>
図1に示されるようにMgB2超伝導線材用前駆体(以下、「前駆体」と称することもある。)10は、金属シース11と、金属シース11内に位置するマグネシウム棒12と、金属シース11内に位置し、マグネシウム棒12に接して充填された少なくともホウ素粉末およびMgB2粉末を含む混合粉末13とを備えている。
図1に示されるようにMgB2超伝導線材用前駆体(以下、「前駆体」と称することもある。)10は、金属シース11と、金属シース11内に位置するマグネシウム棒12と、金属シース11内に位置し、マグネシウム棒12に接して充填された少なくともホウ素粉末およびMgB2粉末を含む混合粉末13とを備えている。
図1に示される前駆体10は、円柱形となっているが、円柱形に限らず、多角柱であってもよい。多角柱としては、例えば、四角柱や六角柱等が挙げられる。
前駆体10の長さは、特に限定されないが、30mm以上であってもよい。前駆体10の長さが30mm以上であれば、金属シース11に合わせて混合粉末13を隙間なく充填することができる。上記長さの下限は50mm以上、または60mm以上であってもよい。前駆体10の長さは50mm以下であってもよい。
<<金属シース>>
金属シース11は、金属製の筒状のものである。金属シース11の内径は、3mm以上6mm以下となっていることが好ましい。金属シース11の内径が3mm以上であれば、混合粉末13を充填しやすく、また6mm以下であれば、金属シース11の厚みが薄くなりすぎず、金属シース11の破損を抑制できる。上記内径の下限は3.2mm以上、または3.4mm以上であってもよく、上記内径の上限は5mm以下、または4.5mm以下であってもよい。
金属シース11は、金属製の筒状のものである。金属シース11の内径は、3mm以上6mm以下となっていることが好ましい。金属シース11の内径が3mm以上であれば、混合粉末13を充填しやすく、また6mm以下であれば、金属シース11の厚みが薄くなりすぎず、金属シース11の破損を抑制できる。上記内径の下限は3.2mm以上、または3.4mm以上であってもよく、上記内径の上限は5mm以下、または4.5mm以下であってもよい。
金属シース11の外径は、望むMgB2超伝導線材の長さに依存するが、例えば、5mm以上7mm以下とすることが可能である。金属シース11の外径が5mm以上であれば、長いMgB2超伝導線材を得ることができる。
金属シース11の構成材料としては、マグネシウムとホウ素と反応しにくい材料で、かつ加工のしやすい材料であれば、特に限定されず、例えば、鉄、CuNi合金、チタン、ニオブ、モネル等が挙げられる。
<<マグネシウム棒>>
マグネシウム棒12は、マグネシウムを含む棒であり、不純物を含んでいてもよい。マグネシウム棒12中のマグネシウムの純度は、80%以上となっていることが好ましい。マグネシウムの純度が80%以上であれば、ホウ素粉末側に拡散するマグネシウムが多くなるので、より多くのMgB2を生成できる。上記純度の下限は85%以上、または90%以上であることがより好ましい。
マグネシウム棒12は、マグネシウムを含む棒であり、不純物を含んでいてもよい。マグネシウム棒12中のマグネシウムの純度は、80%以上となっていることが好ましい。マグネシウムの純度が80%以上であれば、ホウ素粉末側に拡散するマグネシウムが多くなるので、より多くのMgB2を生成できる。上記純度の下限は85%以上、または90%以上であることがより好ましい。
図1に示されるマグネシウム棒12は、円柱形となっているが、中空円柱形に限らず、多角柱であってもよい。多角柱としては、例えば、四角柱や六角柱等が挙げられる。
マグネシウム棒12の直径をr1、金属シース11の内径をr2としたとき、1≦r2/r1≦4の関係を満たすことが好ましい。r2/r1が1以上であれば、マグネシウム棒12のマグネシウムが混合粉末13中に十分に拡散でき、超伝導化しやすく、また4以下であれば、マグネシウムが過剰になり過ぎず、加工性の低下を抑制でき、また臨界電流密度の低下も抑制できる。上記r2/r1の下限は1.25以上、または1.5以上であることがより好ましく、上記r2/r1の上限は3.5以下、または3以下であることがより好ましい。また、マグネシウム棒12と混合粉末13と量的関係は、マグネシウム棒12の直径と金属シース11の内径の比が決まれば、一義的に決定されるので、この比はマグネシウム棒12と混合粉末13と量的関係を規定しているとも言える。
マグネシウム棒12の直径は、1mm以上2mm以下であることが好ましい。マグネシウム棒12の直径がこの範囲内であれば、より多くのMgB2を生成できる。マグネシウム棒12の直径の下限は1.2mm以上、または1.4mm以上であってもよく、上限は1.8mm以下、または1.6mm以下であってもよい。
<<混合粉末>>
上記したように混合粉末13は、ホウ素粉末およびMgB2粉末を含んでいる。混合粉末13は、炭素をさらに含んでいてもよい。混合粉末13が炭素をさらに含むことにより、前駆体10を用いてMgB2超伝導線材を形成し、MgB2超伝導線材に高い磁場を印加したとき、より高い臨界電流密度を得ることができる。
上記したように混合粉末13は、ホウ素粉末およびMgB2粉末を含んでいる。混合粉末13は、炭素をさらに含んでいてもよい。混合粉末13が炭素をさらに含むことにより、前駆体10を用いてMgB2超伝導線材を形成し、MgB2超伝導線材に高い磁場を印加したとき、より高い臨界電流密度を得ることができる。
<ホウ素粉末>
混合粉末13中のホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するホウ素粉末のモル分率は、70%以上100%未満の範囲を満たしていることが好ましい。ホウ素粉末のモル分率が70%以上であれば、より多くのMgB2を生成できる。ホウ素粉末のモル分率の下限は80%以上、85%以上、または90%以上であってもよく、上限は98%以下、または96%以下であってもよい。混合粉末13中のホウ素粉末およびMgB2粉末のモル比率は、MgB2粉末のモル数をxpとしたとき、以下の式(1)で表すことができるので、混合粉末13中のホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するホウ素粉末のモル分率は、以下の式(2)によって求められ、混合粉末13中のホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率は、以下の式(3)によって求められる。
B:MgB2=2(1-xp):xp …式(1)
混合粉末13中のホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するホウ素粉末のモル分率は、70%以上100%未満の範囲を満たしていることが好ましい。ホウ素粉末のモル分率が70%以上であれば、より多くのMgB2を生成できる。ホウ素粉末のモル分率の下限は80%以上、85%以上、または90%以上であってもよく、上限は98%以下、または96%以下であってもよい。混合粉末13中のホウ素粉末およびMgB2粉末のモル比率は、MgB2粉末のモル数をxpとしたとき、以下の式(1)で表すことができるので、混合粉末13中のホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するホウ素粉末のモル分率は、以下の式(2)によって求められ、混合粉末13中のホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率は、以下の式(3)によって求められる。
B:MgB2=2(1-xp):xp …式(1)
ホウ素粉末の平均粒径は、100μm以下であることが好ましい。ホウ素粉末の平均粒径がこの範囲であれば、マグネシウムとの良好な反応性を得ることがよくできる。ホウ素粉末の平均粒径の上限は150nm以下、100nm以下、または50nm以下であることがより好ましい。また、ホウ素粉末の平均粒径の下限は、特に限定されないが、例えば、10nm以上であってもよい。ホウ素粉末の平均粒径は、基本的には後述する第2の結晶粒の平均粒径と同様の方法により算出することができる。ただし、ホウ素粉末の平均粒径の算出においては、TEM像ではなく、SEM像を用い、また後述する各円から各粒径を算出した後、特定の大きさの粉末を選択せずに、各粒径の総和を粒子数である100で除して平均粒径を算出する。
<MgB2粉末>
混合粉末13中のホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率は、0%より大きく30%未満の範囲を満たしている。MgB2粉末のモル分率の下限は3%以上、5%以上、または8%以上であることがより好ましく、上限は20%以下、17%以下、15%以下、または13%以下であることがより好ましい。例えば、MgB2粉末のモル分率が、好ましくは、3%以上20%以下の範囲を満たし、より好ましくは、8%以上13%以下の範囲を満たす。MgB2粉末のモル分率は、SEM-EDXより測定することができる。
混合粉末13中のホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率は、0%より大きく30%未満の範囲を満たしている。MgB2粉末のモル分率の下限は3%以上、5%以上、または8%以上であることがより好ましく、上限は20%以下、17%以下、15%以下、または13%以下であることがより好ましい。例えば、MgB2粉末のモル分率が、好ましくは、3%以上20%以下の範囲を満たし、より好ましくは、8%以上13%以下の範囲を満たす。MgB2粉末のモル分率は、SEM-EDXより測定することができる。
MgB2粉末の平均粒径は、100nm以上10μm以下の範囲を満たしていることが好ましい。MgB2粉末の平均粒径がこの範囲内であれば、均質にMgB2粉末を分散させることができる。MgB2粉末の平均粒径の下限は150nm以上、または1μm以上であってもよく、上限は5μm以下、500nm以下、または300nm以下であってもよい。MgB2粉末の平均粒径は、基本的には後述する第1の結晶粒の平均粒径と同様の方法により算出することができる。ただし、MgB2粉末の平均粒径の算出においては、TEM像ではなく、SEM像を用い、また後述する各円から各粒径を算出した後、特定の大きさの粉末を選択せずに、各粒径の総和を粒子数である100で除して平均粒径を算出する。
<炭素>
ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対する炭素の添加率は、モル基準で、混合粉末13中のホウ素粉末とMgB2粉末の合計を100%としたき、0.1%以上30%以下の範囲を満たしていてもよい。炭素の添加率が0.1%以上であれば、高磁界特性を改善でき、また30%以下であれば、高磁界特性の改善効果を持続できる。炭素の添加率の下限は1%以上、または5%以上であってもよく、上限は20%以下、または10%以下であってもよい。炭素の添加率は、SEM-EDXより測定することができる。炭素は、炭素粉末であってもよい。炭素は、ホウ素粉末またはMgB2粉末に添加されていてもよい。炭素を添加する場合、各成分の比率は、MgB2粉末のモル数をxpとし、炭素のモル数をxcとしたとき、以下の式(4)で表すことができるので、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対する炭素の添加率は、モル基準で、以下の式(5)によって求められる。
B:MgB2:C=2(1-xp):xp:xc …式(4)
ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対する炭素の添加率は、モル基準で、混合粉末13中のホウ素粉末とMgB2粉末の合計を100%としたき、0.1%以上30%以下の範囲を満たしていてもよい。炭素の添加率が0.1%以上であれば、高磁界特性を改善でき、また30%以下であれば、高磁界特性の改善効果を持続できる。炭素の添加率の下限は1%以上、または5%以上であってもよく、上限は20%以下、または10%以下であってもよい。炭素の添加率は、SEM-EDXより測定することができる。炭素は、炭素粉末であってもよい。炭素は、ホウ素粉末またはMgB2粉末に添加されていてもよい。炭素を添加する場合、各成分の比率は、MgB2粉末のモル数をxpとし、炭素のモル数をxcとしたとき、以下の式(4)で表すことができるので、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対する炭素の添加率は、モル基準で、以下の式(5)によって求められる。
B:MgB2:C=2(1-xp):xp:xc …式(4)
<<<MgB2超伝導線材用前駆体の製造方法>>>
MgB2超伝導線材用前駆体10は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、少なくとも、ホウ素粉末と、MgB2粉末とを、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率が0%より大きく30%未満の範囲となるように混合し、混合粉末13を得る。
MgB2超伝導線材用前駆体10は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、少なくとも、ホウ素粉末と、MgB2粉末とを、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率が0%より大きく30%未満の範囲となるように混合し、混合粉末13を得る。
一方で、図2Aに示されるようにマグネシウム棒12を、金属シース11内に配置する。ここで、この製造方法は、上記前駆体10を得る方法であるので、マグネシウム棒12の直径と金属シース11の内径は、上記前駆体10の欄で説明した関係を満たすものである。
そして、図2Bに示されるように上記で得られた混合粉末13を、マグネシウム棒12を配置した金属シース11内に充填する。これにより、MgB2超伝導線材用前駆体10を得ることができる。
<<<MgB2超伝導線材>>>
図3に示されるようにMgB2超伝導線材20は、MgB2超伝導線材用前駆体10を用いて得られたものである。MgB2超伝導線材20は、線状の金属シース11と、金属シース11内に位置し、かつ金属シース11の長手方向に中空コア21を有するMgB2焼結体22と、を備えている。
図3に示されるようにMgB2超伝導線材20は、MgB2超伝導線材用前駆体10を用いて得られたものである。MgB2超伝導線材20は、線状の金属シース11と、金属シース11内に位置し、かつ金属シース11の長手方向に中空コア21を有するMgB2焼結体22と、を備えている。
MgB2超伝導線材20の用途としては、特に限定されないが、例えば、MgB2超伝導線材は、超伝導磁石、集合導体、センサーに、またはこれらのいずかれを備えた超伝導装置に用いることが可能である。MgB2超伝導線材を用いた超伝導磁石は、例えば、磁気共鳴画像診断装置(MRI装置)、核磁気共鳴装置(NMR装置)、超電導電力貯蔵装置(SMES装置)、磁気浮上列車、電動飛行機等に用いられる。集合導体は、複数の素線からなる束線であり、MgB2超伝導線材を用いた集合導体は、例えば、送電線、限流器、変圧器、モーター等に用いられる。MgB2超伝導線材を用いたセンサーは、例えば、液体水素液面計に用いられる。
<<中空コア>>
中空コア21は、マグネシウム棒12のマグネシウムが混合粉末13中に拡散することによって形成されたものである。
中空コア21は、マグネシウム棒12のマグネシウムが混合粉末13中に拡散することによって形成されたものである。
<<MgB2焼結体>>
MgB2焼結体22は、150nm以上の粒径を満たす第1のMgB2結晶粒と、第1のMgB2結晶粒の周りに位置し、かつ20nm以上60nm以下の範囲の粒径を満たす第2のMgB2結晶粒とを含有する。第1のMgB2結晶粒は、前駆体10の混合粉末13中のMgB2粉末から得られたものであり、また第2のMgB2結晶粒は、マグネシウム棒12のマグネシウムが混合粉末13中のホウ素に拡散して得られたものであると考えられる。
MgB2焼結体22は、150nm以上の粒径を満たす第1のMgB2結晶粒と、第1のMgB2結晶粒の周りに位置し、かつ20nm以上60nm以下の範囲の粒径を満たす第2のMgB2結晶粒とを含有する。第1のMgB2結晶粒は、前駆体10の混合粉末13中のMgB2粉末から得られたものであり、また第2のMgB2結晶粒は、マグネシウム棒12のマグネシウムが混合粉末13中のホウ素に拡散して得られたものであると考えられる。
MgB2超伝導線材20の長手方向と直交する方向の断面において、中空コア21の断面積に対するMgB2焼結体22の断面積の比(MgB2焼結体22の断面積/中空コア21の断面積)が、0.3以上であることが好ましい。この比が、0.3以上であれば、MgB2焼結体22の厚みが薄くなりすぎないので、臨界電流密度の低下をより抑制できる。この比の下限は、0.35以上、0.375以上、または0.4以上であることが好ましく、上限は特に限定されず、例えば0.5以下であってもよい。
MgB2焼結体は、3at%以上6at%以下の範囲の酸素をさらに含有してもよい。一般的に、酸素は超伝導性を示さないMgOを生成するので、酸素量は極力低減させることが好ましい。しなしながら、プロセス上酸素の混入を完全に防ぐことは困難である。本実施形態に係るMgB2超伝導線材であれば、MgB2焼結体に3at%以上6at%以下の範囲の酸素を含有している場合であっても、MgB2超伝導線材において、均質なMgB2焼結体が得られ、かつ高い臨界電流密度を有するため、製造時に厳しい制約が不要となり、実用化に有利である。
<第1のMgB2結晶粒>
第1のMgB2結晶粒は、150nm以上の粒径を満たすものである。第1のMgB2結晶粒の粒径が150nm以上であれば、より均質なMgB2焼結体22を得ることができる。第1のMgB2結晶粒の平均粒径は、150nm以上であればよく、第1のMgB2結晶粒の平均粒径の下限は200nm以上、300nm以上、または400nm以上であることが好ましく、上限は特に限定されず、例えば、600nm以下、または500nm以下であってもよい。例えば、第1のMgB2結晶粒の平均粒径は、150nm以上600nm以下、または400nm以上500nm以下の範囲を満たしていてもよい。
第1のMgB2結晶粒は、150nm以上の粒径を満たすものである。第1のMgB2結晶粒の粒径が150nm以上であれば、より均質なMgB2焼結体22を得ることができる。第1のMgB2結晶粒の平均粒径は、150nm以上であればよく、第1のMgB2結晶粒の平均粒径の下限は200nm以上、300nm以上、または400nm以上であることが好ましく、上限は特に限定されず、例えば、600nm以下、または500nm以下であってもよい。例えば、第1のMgB2結晶粒の平均粒径は、150nm以上600nm以下、または400nm以上500nm以下の範囲を満たしていてもよい。
第1のMgB2結晶粒の粒径および平均粒径は、以下のようにして測定するものとする。まず、透過型電子顕微鏡/走査型電子顕微鏡(TEM/STEM、日本電子株式会社製、JEM-2100F)を用いてTEM像を撮影する。そして、TEM像において、10μm×10μmの領域が納まる倍率で表示する。10μm×10μmの領域内で観察され、かつランダムに選択した結晶粒100個において、結晶粒を円相当にみたて、図4Aに示されるように結晶粒の長径を有する円23を作図する。
次いで、図4Bに示されるようにImage J(ver.1.52)で計測しやすいように円23を加工した後に、円23の面積を算出し、算出した面積から粒径を算出する。そして、粒径を算出した結晶粒100個のうち粒径が150nm以上の結晶粒の全てを選択し、選択した粒径の総和を選択した粒子数で除して平均粒径を算出する。
<第2のMgB2結晶粒>
第2のMgB2結晶粒は、20nm以上60nm以下の範囲の粒径を満たすものである。第2のMgB2結晶粒の粒径が20nm以上であれば、結晶粒を保つことができ、また60nm以下であれば、高い臨界電流密度を得ることができる。第2のMgB2結晶粒の平均粒径は、20nm以上60nm以下であればよく、第2のMgB2結晶粒の平均粒径の下限は25nm以上、または30nm以上であることがより好ましく、上限は57nm、または55nm以下であることがより好ましい。例えば、第2のMgB2結晶粒の平均粒径は、好ましくは35nm以上55nm以下の範囲を満たす。
第2のMgB2結晶粒は、20nm以上60nm以下の範囲の粒径を満たすものである。第2のMgB2結晶粒の粒径が20nm以上であれば、結晶粒を保つことができ、また60nm以下であれば、高い臨界電流密度を得ることができる。第2のMgB2結晶粒の平均粒径は、20nm以上60nm以下であればよく、第2のMgB2結晶粒の平均粒径の下限は25nm以上、または30nm以上であることがより好ましく、上限は57nm、または55nm以下であることがより好ましい。例えば、第2のMgB2結晶粒の平均粒径は、好ましくは35nm以上55nm以下の範囲を満たす。
また、第2の結晶粒の粒径および平均粒径は、第1の結晶粒の粒径よりも小さいため、TEM像の代わりに、TEMによる電子線解析パターンから第1の結晶粒に相当する回折点から結像した暗視野像を用いること以外は、第1の結晶粒と同様にして算出する。
<<<MgB2超伝導線材の製造方法>>>
上記MgB2超伝導線材20は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、図5Aに示されるように、上記MgB2超伝導線材用前駆体10を伸線加工する。これにより、外径が減少した前駆体10が得られる。なお、伸線加工は、前駆体10の長手方向と直交する方向の断面の断面減少率が90%以上となるまで行うことが好ましい。伸線加工は、例えば、溝ロール加工、平ロール加工、スウェージング加工、およびダイス加工からなる群から選択される。図5Aは、スウェージング装置30によってMgB2超伝導線材用前駆体10を伸線加工する図である。
上記MgB2超伝導線材20は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、図5Aに示されるように、上記MgB2超伝導線材用前駆体10を伸線加工する。これにより、外径が減少した前駆体10が得られる。なお、伸線加工は、前駆体10の長手方向と直交する方向の断面の断面減少率が90%以上となるまで行うことが好ましい。伸線加工は、例えば、溝ロール加工、平ロール加工、スウェージング加工、およびダイス加工からなる群から選択される。図5Aは、スウェージング装置30によってMgB2超伝導線材用前駆体10を伸線加工する図である。
次いで、図5Bに示されるように、伸線加工された前駆体を、不活性ガス雰囲気または真空中で550℃以上900℃以下の温度で熱処理する。熱処理の温度がこの範囲内であれば、マグネシウム棒から溶解したMgがホウ素を反応して、MgB2焼結体を得ることができる。上記熱処理の温度の下限は、580℃以上、600℃以上、または630℃以上であることが好ましく、上限は、850℃以下、800℃以下、または750℃以下であることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、Ar等の希ガス、窒素等が挙げられる。また、真空で行う場合の真空度は、1Pa以下であることが好ましい。
上記熱処理の時間は、1分以上50時間以下であることが好ましい。この時間が1分以上であれば、MgB2焼結体を得ることができ、また50時間以下であれば、コストの上昇を抑制できる。上記熱処理の時間の下限は、1時間以上であることが好ましく、上限は、8時間以下であることがより好ましい。特に、熱処理は、630℃以上750℃以下の温度範囲で1時間以上8時間以下行うことが好ましい。
<<超伝導磁石および超伝導装置>>
MgB2超伝導線材20は、上記したように超伝導磁石に用いることが可能である。図6に示されるように、超伝導磁石40は、MgB2超伝導線材20をコイル状に巻回した超伝導コイルを備えている。
MgB2超伝導線材20は、上記したように超伝導磁石に用いることが可能である。図6に示されるように、超伝導磁石40は、MgB2超伝導線材20をコイル状に巻回した超伝導コイルを備えている。
このような超伝導磁石40は、超伝導装置に用いることができるが、ここでは超伝導装置の一例としてのMRI装置について説明する。図7に示されるMRI装置50は、主に、冷凍容器51と、冷凍容器51内に配置された超伝導磁石52、冷凍容器51の内側に配置された傾斜磁場コイル53と、傾斜磁場コイル53の内側に配置されたRFアンテナコイル(図示せず)と、送受信装置(図示せず)とを備えている。RFアンテナコイルの内側に測定対象が位置する。傾斜磁場コイル53によって測定対象の一に空間的に分布を有する静磁場を発生させ、RFアンテナコイルおよび送受信装置を用いて、測定対象に核磁気共鳴周波数の磁場を印加して、反応信号を測定することによって、測定対象の断面の画像診断を行うことができる。
本発明者は、驚くべきことに、MgB2超伝導線材用前駆体においてホウ素の他にMgB2粉末を含有させた場合、MgB2粉末を含有させない場合比べて、MgB2超伝導線材において均質なMgB2焼結体が形成されること、およびMgB2超伝導線材用前駆体におけるMgB2粉末の含有量が適量であると、MgB2超伝導線材において高い臨界電流密度が得られることを見出した。ここで、本明細書における「高い臨界電流密度」とは、10Tの磁場を印加したときに100A/cm2以上の臨界電流密度を意味するものとする。本実施形態によれば、MgB2超伝導線材用前駆体10において、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率が0%より大きく30%未満の範囲を満たしているので、MgB2粉末の含有量が適量となっている。これにより、均質なMgB2焼結体22が形成され、かつ高い臨界電流密度を達成可能なMgB2超伝導線材20を得ることができる。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。図8は、実施例1に係るMgB2超伝導線材の断面の光学顕微鏡写真であり、図9は、比較例2に係るMgB2超伝導線材の断面の光学顕微鏡写真である。図10は、実施例1に係るMgB2超伝導線材のTEM/STEM像であり、図11は、実施例1に係るMgB2超伝導線材の断面におけるB、Mg、OのSTEM-EDXマッピングを示す図であり、図12は、実施例1、2および比較例1、2に係るMgB2超伝導線材の臨界電流密度の磁場依存性を示す図であり、図13は、実施例3および比較例3に係るMgB2超伝導線材の臨界電流の磁場依存性を示す図である。なお、図11において、明るく見えている箇所が、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、または酸素(O)が存在している箇所である。
以下の実施例および比較例においては、以下の材料等を使用した。
・金属シース(株式会社ニラコ製、純鉄製):外径6mm、内径4mm、長さ55mm
・マグネシウム棒(株式会社ニラコ製、純度99.99%):直径2mm、長さ55mm
・ホウ素粉末(Pavezyum社製):平均粒径50nm
・MgB2粉末:特開2018-193271号公報に記載の方法に従って合成したバルク体を平均粒径200nmとなるまで粒度調整した粉末
・金属シース(株式会社ニラコ製、純鉄製):外径6mm、内径4mm、長さ55mm
・マグネシウム棒(株式会社ニラコ製、純度99.99%):直径2mm、長さ55mm
・ホウ素粉末(Pavezyum社製):平均粒径50nm
・MgB2粉末:特開2018-193271号公報に記載の方法に従って合成したバルク体を平均粒径200nmとなるまで粒度調整した粉末
なお、ホウ素粉末の平均粒径は、基本的には、以下の第2の結晶粒の平均粒径と同様の方法によって算出し、またMgB2粉末の平均粒径は、基本的には、以下の第1の結晶粒の平均粒径と同様の方法によって算出した。ただし、ホウ素粉末の平均粒径およびMgB2粉末の平均粒径の算出においては、TEM像ではなく、SEM像を用い、また後述する各円から各粒径を算出した後、特定の大きさの粉末を選択せずに、各粒径の総和を粒子数である100で除して平均粒径とした。
<実施例1>
まず、表1に示すようにホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率が10%となるように、ホウ素粉末とMgB2粉末との混合粉末を調製した。混合粉末は、エタノールを溶媒として用い、ボールミルを用いて24時間混合された。次いで、図1に示すように金属シースの真中にマグネシウム棒を配置させた。このとき、金属シースの内径r2/マグネシウム棒の直径r1の比は、2であった。次に、マグネシウム棒を配置した金属シース内に混合粉末を充填した。このようにしてMgB2超伝導線材用前駆体を得た。
まず、表1に示すようにホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率が10%となるように、ホウ素粉末とMgB2粉末との混合粉末を調製した。混合粉末は、エタノールを溶媒として用い、ボールミルを用いて24時間混合された。次いで、図1に示すように金属シースの真中にマグネシウム棒を配置させた。このとき、金属シースの内径r2/マグネシウム棒の直径r1の比は、2であった。次に、マグネシウム棒を配置した金属シース内に混合粉末を充填した。このようにしてMgB2超伝導線材用前駆体を得た。
前駆体を得た後、この前駆体を伸線加工して、前駆体を線状とした。詳細には、最初、溝ロール圧延機により前駆体の縮径を行い、最終的には前駆体の直径が0.8mmまで伸線加工を行った。このとき、伸線加工後の前駆体の長さは2m程度になった。
次いで、伸線加工された線状の前駆体を熱処理した。具体的には、この前駆体を35mmの長さに切断し、一軸プレス機によって端部をつぶし、真空度1Paで真空封入した。その後、前駆体を690℃で3時間、熱処理した。このようにして、熱処理中の酸化を抑制した。これにより、実施例1に係る中空コアおよびMgB2焼結体を有する直径が0.8mm、長さが3.5cmのMgB2超導電線材を得た。なお、後述する臨界電流密度測定において、4.2Kで、得られた線材に7Tの磁場を印加したとき、臨界電流が測定されれば(図12参照)、MgB2焼結体が生成され、MgB2超導電線材が得られたと判断した。
<実施例2>
実施例2においては、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率が5%となるように、ホウ素粉末とMgB2粉末との混合粉末を調製した以外は、実施例1と同様の手順でMgB2超伝導線材用前駆体およびMgB2超伝導線材を製造した。
実施例2においては、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率が5%となるように、ホウ素粉末とMgB2粉末との混合粉末を調製した以外は、実施例1と同様の手順でMgB2超伝導線材用前駆体およびMgB2超伝導線材を製造した。
<実施例3>
実施例3においては、炭素粉末を用い、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対する炭素粉末の添加率がモル基準で5%となるように、ホウ素粉末とMgB2粉末と炭素粉末の混合粉末を調製した以外は、実施例1と同様の手順でMgB2超伝導線材用前駆体およびMgB2超伝導線材を製造した。
実施例3においては、炭素粉末を用い、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対する炭素粉末の添加率がモル基準で5%となるように、ホウ素粉末とMgB2粉末と炭素粉末の混合粉末を調製した以外は、実施例1と同様の手順でMgB2超伝導線材用前駆体およびMgB2超伝導線材を製造した。
<比較例1>
比較例1においては、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率が30%となるように、ホウ素粉末とMgB2粉末との混合粉末を調製した以外は、実施例1と同様の手順でMgB2超伝導線材用前駆体およびMgB2超伝導線材を製造した。
比較例1においては、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対するMgB2粉末のモル分率が30%となるように、ホウ素粉末とMgB2粉末との混合粉末を調製した以外は、実施例1と同様の手順でMgB2超伝導線材用前駆体およびMgB2超伝導線材を製造した。
<比較例2>
比較例2においては、MgB2粉末を添加しなかった、すなわちMgB2のモル分率が0%としたこと以外は、実施例1と同様の手順でMgB2超伝導線材用前駆体およびMgB2超伝導線材を製造した。
比較例2においては、MgB2粉末を添加しなかった、すなわちMgB2のモル分率が0%としたこと以外は、実施例1と同様の手順でMgB2超伝導線材用前駆体およびMgB2超伝導線材を製造した。
<比較例3>
比較例3においては、炭素粉末を用い、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対する炭素粉末の添加率がモル基準で5%となるように、ホウ素粉末と炭素粉末の混合粉末を調製した以外は、比較例2と同様の手順でMgB2超伝導線材用前駆体およびMgB2超伝導線材を製造した。
比較例3においては、炭素粉末を用い、ホウ素粉末とMgB2粉末の合計に対する炭素粉末の添加率がモル基準で5%となるように、ホウ素粉末と炭素粉末の混合粉末を調製した以外は、比較例2と同様の手順でMgB2超伝導線材用前駆体およびMgB2超伝導線材を製造した。
<光学顕微鏡観察および元素分析>
実施例1~3および比較例1~3に係る線材を線材の長手方向と直交する方向に切断し、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製、VHX-1000)および透過型電子顕微鏡/走査型電子顕微鏡(TEM/STEM、日本電子株式会社製、JEM-2100F)を用いて線材の断面を観察した。また、実施例1に係る線材を線材の長手方向と直交する方向に切断し、線材の断面においてTEM/STEMに付属のエネルギー分散型X線分光法(EDX)により元素分析を行った。
実施例1~3および比較例1~3に係る線材を線材の長手方向と直交する方向に切断し、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製、VHX-1000)および透過型電子顕微鏡/走査型電子顕微鏡(TEM/STEM、日本電子株式会社製、JEM-2100F)を用いて線材の断面を観察した。また、実施例1に係る線材を線材の長手方向と直交する方向に切断し、線材の断面においてTEM/STEMに付属のエネルギー分散型X線分光法(EDX)により元素分析を行った。
図8によれば、実施例1に係る線材においては、金属シースの壁面近傍に均質な状態でMgB2焼結体が形成されていたことが理解できる。なお、図示しないが、実施例2、実施例3および比較例1の試料の断面においても、実施例1と同様に、金属シース内全体にMgB2焼結体が形成されていた。一方、図9から、ホウ素粉末のみを用いた比較例2では、金属シースの片方にのみMgB2焼結体が形成されており、不均質であったことが理解できる。なお、比較例3の試料の断面においても、比較例2と同様に、不均質なMgB2焼結体が形成されていた。
また、中空コア断面積およびMgB2焼結体断面積を上記光学顕微鏡観察によって測定し、MgB2焼結体断面積/中空コア断面積の比を算出したところ、実施例1、2および比較例1においては、0.41となり、比較例2においては0.57となった。
図10および図11によれば、実施例1に係る線材においては、大きな結晶粒(第1の結晶粒)と小さな結晶粒(第2の結晶粒)とが存在していることが理解できる。また、図11から、実施例1に係る線材においては、ホウ素(B)が、均一に存在していることが理解できる。なお、EDXスペクトルによれば、これらの結晶粒は、いずれもMgB2結晶粒であった。
<臨界電流密度測定>
実施例1~3および比較例1~3に係る線材の各磁場における臨界電流密度を測定した。具体的には、まず、各線材を3.5cmの長さに切断し、切断した各線材を690℃に加熱する熱処理を行った。次いで、熱処理した各線材の電流電圧(IV)特性を四端子測定法により測定した。測定は、4.2Kの液体ヘリウムに各線材を浸漬することによって各線材を冷却した状態で18T超伝導マグネット(ジャパン スーパーコンダクタ テクノロジー株式会社)を用いて磁場を変化させて実施された。得られたIVカーブから1μV/cmのクライテリオンを用いて各磁場における臨界電流を決定した。そして、得られた臨界電流を線材の断面積で除算し、臨界電流密度特性とした。
実施例1~3および比較例1~3に係る線材の各磁場における臨界電流密度を測定した。具体的には、まず、各線材を3.5cmの長さに切断し、切断した各線材を690℃に加熱する熱処理を行った。次いで、熱処理した各線材の電流電圧(IV)特性を四端子測定法により測定した。測定は、4.2Kの液体ヘリウムに各線材を浸漬することによって各線材を冷却した状態で18T超伝導マグネット(ジャパン スーパーコンダクタ テクノロジー株式会社)を用いて磁場を変化させて実施された。得られたIVカーブから1μV/cmのクライテリオンを用いて各磁場における臨界電流を決定した。そして、得られた臨界電流を線材の断面積で除算し、臨界電流密度特性とした。
図12によれば、実施例1~3および比較例2に係る線材の臨界電流密度は、いずれも10Tで100A/cm2以上であることが理解できる。特に実施例1に係る線材の臨界電流密度は、比較例2に係る線材の臨界電流密度を大幅に上回るものであった。一方、比較例1に係る線材の臨界電流密度は、10Tで100A/cm2未満であった。
<結晶粒の平均粒径測定>
実施例1に係る線材においては、上述したように大きな結晶粒(第1の結晶粒)と小さな結晶粒(第2の結晶粒)が検出されたので、以下の方法に従って第1の結晶粒と第2の結晶粒のそれぞれについて平均粒径を測定したところ、第1の結晶粒の平均粒径は465nmであり、第2の結晶粒の平均粒径は54nmであった。
実施例1に係る線材においては、上述したように大きな結晶粒(第1の結晶粒)と小さな結晶粒(第2の結晶粒)が検出されたので、以下の方法に従って第1の結晶粒と第2の結晶粒のそれぞれについて平均粒径を測定したところ、第1の結晶粒の平均粒径は465nmであり、第2の結晶粒の平均粒径は54nmであった。
また、比較例2においては、上述したように実施例1に係る線材に見られたような大きな結晶粒(第1の結晶粒)は確認されず、小さな結晶粒(第2の結晶粒)が確認されたので、以下の方法に従って第2の結晶粒の平均粒径を測定したところ、55nmであった。
第1の結晶粒の平均粒径は、次のようにして算出した。まず、透過型電子顕微鏡/走査型電子顕微鏡(TEM/STEM、日本電子株式会社製、JEM-2100F)を用いて撮影したTEM像において、10μm×10μmの領域が納まる倍率で表示した。10μm×10μmの領域内で観察され、かつランダムに選択した結晶粒100個において、結晶粒を円相当にみたて、結晶粒の長径を有する円を作図した。
次いで、Image J(ver.1.52)により計測しやすいように円を加工した後、各円の面積を算出し、算出した面積から各粒径を算出した。そして、粒径を算出した結晶粒100個のうち粒径が150nm以上の範囲を満たす結晶粒の全てを選択し、選択した粒径の総和を選択した粒子数で除して平均粒径とした。
また、第2の結晶粒の粒径は、第1の結晶粒の粒径よりも小さいため、TEM像の代わりに、TEMによる電子線解析パターンから第1の結晶粒に相当する回折点から結像した暗視野像を用いたこと以外は、第1の結晶粒と同様にして算出した。
<酸素量測定>
実施例1に係る線材中の酸素量を測定した。具体的には、10μm×10μmの領域が納まる倍率で観察したSTEM-EDXマッピングから分析した。図11のEDSマッピングの酸素(O)に着目すると、第1の結晶粒の周りに酸素が多く存在していることが確認できる。また、その酸素量は、4.2at%であった。この値は、比較例2に係る線材中の酸素と比較して多かった。なお、比較例2に係る線材において、STEM-EDXで酸素のマッピングを確認したところ、明瞭な酸素のマッピングは観察されなかった。
実施例1に係る線材中の酸素量を測定した。具体的には、10μm×10μmの領域が納まる倍率で観察したSTEM-EDXマッピングから分析した。図11のEDSマッピングの酸素(O)に着目すると、第1の結晶粒の周りに酸素が多く存在していることが確認できる。また、その酸素量は、4.2at%であった。この値は、比較例2に係る線材中の酸素と比較して多かった。なお、比較例2に係る線材において、STEM-EDXで酸素のマッピングを確認したところ、明瞭な酸素のマッピングは観察されなかった。
以上、詳説したように、比較例1においては、MgB2超伝導線材において高い臨界電流密度が得られず、比較例2、3においては、MgB2超伝導線材において均質なMgB2焼結体が成形されなかった。これに対し、実施例1~3においては、MgB2超伝導線材用前駆体の混合粉末中のMgB2粉末の含有量が適量であったので、MgB2超伝導線材において均質、かつ高い臨界電流密度が得られたことが確認された。なお、実施例2におけるMgB2超伝導線材の臨界電流密度は、比較例1におけるMgB2超伝導線材の臨界電流密度よりも低くなっているが、MgB2超伝導線材に10Tの磁場を印加したときに100A/cm2以上の臨界電流密度が得られれば、高い臨界電流密度が得られていると判断できるので、実施例2においても高い臨界電流密度が得られた。
10…MgB2超伝導線材用前駆体
11…金属シース
12…マグネシウム棒
13…混合粉末
20…MgB2超伝導線材
21…中空コア
22…MgB2焼結体
40…超伝導磁石
50…MRI装置
11…金属シース
12…マグネシウム棒
13…混合粉末
20…MgB2超伝導線材
21…中空コア
22…MgB2焼結体
40…超伝導磁石
50…MRI装置
Claims (20)
- 金属シースと、
前記金属シース内に位置するマグネシウム棒と、
前記金属シース内に位置し、前記マグネシウム棒に接して充填された少なくともホウ素粉末およびMgB2粉末を含む混合粉末と、を備え、
前記ホウ素粉末と前記MgB2粉末の合計に対する前記MgB2粉末のモル分率が、0%より大きく30%未満の範囲を満たす、MgB2超伝導線材用前駆体。 - 前記マグネシウム棒の直径をr1とし、前記金属シースの内径をr2としたとき、1≦r2/r1≦4の関係を満たす、請求項1に記載の前駆体。
- 前記ホウ素粉末の平均粒径が100μm以下の範囲を満たし、かつ前記MgB2粉末の平均粒径が100nm以上10μm以下の範囲を満たす、請求項1に記載の前駆体。
- 前記ホウ素粉末の平均粒径が、10nm以上150nm以下の範囲を満たす、請求項3に記載の前駆体。
- 前記MgB2粉末の平均粒径が、150nm以上300nm以下の範囲を満たす、請求項3に記載の前駆体。
- 前記MgB2粉末の前記モル分率が、3%以上20%以下の範囲を満たす、請求項1に記載の前駆体。
- 前記MgB2粉末の前記モル分率が、8%以上13%以下の範囲を満たす、請求項6に記載の前駆体。
- 前記混合粉末が、炭素をさらに含有する、請求項1に記載の前駆体。
- 前記炭素は、前記MgB2粉末に添加されている、請求項8に記載の前駆体。
- 線状に延びる金属シースと、
前記金属シース内に位置し、かつ前記金属シースの長手方向に中空コアを有するMgB2焼結体と、を備え、
前記MgB2焼結体が、150nm以上の粒径を満たす第1のMgB2結晶粒と、前記第1のMgB2結晶粒の周りに位置し、かつ20nm以上60nm以下の範囲の粒径を満たす第2のMgB2結晶粒とを含有する、MgB2超伝導線材。 - 前記第1のMgB2結晶粒の平均粒径が、400nm以上である、請求項10に記載の超伝導線材。
- 前記第2のMgB2結晶粒の平均粒径が、35nm以上55nm以下の範囲を満たす、請求項10に記載の超伝導線材。
- 前記超伝導線材の長手方向と直交する方向の断面において、前記中空コアの断面積に対する前記MgB2焼結体の断面積の比が、0.3以上である、請求項10に記載の超伝導線材。
- 前記MgB2焼結体が、3at%以上6at%以下の範囲の酸素をさらに含有する、請求項10に記載の超伝導線材。
- ホウ素粉末と、MgB2粉末とを、前記ホウ素粉末と前記MgB2粉末の合計に対する前記MgB2粉末のモル分率が0%より大きく30%未満となるように混合し、混合粉末を調製することと、
マグネシウム棒を、金属シース内に配置することと、
前記混合粉末を、前記マグネシウム棒を配置した前記金属シース内に充填することと
を含む、MgB2超伝導線材用前駆体の製造方法。 - 前記マグネシウム棒の直径をr1とし、前記金属シースの内径をr2としたとき、1≦r2/r1≦4の関係を満たす、請求項15に記載の方法。
- 請求項1に記載のMgB2超伝導線材用前駆体を伸線加工することと、
前記伸線加工された前記MgB2超伝導線材用前駆体を不活性ガス雰囲気または真空中で、550℃以上900℃以下の温度で熱処理することと
を含む、MgB2超伝導線材の製造方法。 - 前記熱処理が、630℃以上750℃以下の温度範囲で1時間以上8時間以下の時間で行われる、請求項17に記載の方法。
- 請求項10に記載のMgB2超伝導線材をコイル状に巻回した超伝導コイルを備える、超伝導磁石。
- 請求項19に記載の超伝導磁石を備える、超伝導装置。
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| JP2023123105A JP2025019474A (ja) | 2023-07-28 | 2023-07-28 | MgB2超伝導線材用前駆体およびその製造方法、MgB2超伝導線材およびその製造方法、超伝導磁石、ならびに超伝導装置 |
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