本発明の一実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金、並びにその製造方法を詳細に説明する。後述する用語は、本発明での機能を考慮して適切に選択された用語であって、このような用語に対する定義は、本明細書全般にわたる内容に基づいて行われるべきである。
本発明では、鋳造用アルミニウム液状金属の構造(例えば、ボンディング、クラスタリング)を崩壊させることができる外部エネルギーを液状金属に印加して、金属間化合物のような生成相を制御する。凝固中に生成される晶出相、金属間化合物の種類、大きさ、分布などの変化を誘導することによって、強度、伝導度、延性など、相反する特性を同時に向上させることができる高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金、並びにその製造方法を提供する。
本発明の一実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金は、6.5重量%以上~11.5重量%以下のシリコン(Si);0.2重量%以上~0.4重量%以下のマグネシウム(Mg);0.32重量%以上~0.85重量%以下の鉄(Fe);及び残部はアルミニウム(Al)及び不可避不純物;を含み、アルミニウム基地内に立方晶(cubic)結晶構造を有するα-AlFeSi金属間化合物を含む。
前記アルミニウム鋳造合金は、ストロンチウム(Sr):0.02重量%以下、チタン(Ti):0.15重量%以下、またはジルコニウム(Zr):0.15重量%以下をさらに含むこともできる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金において、前記立方晶(cubic)結晶構造を有するα-AlFeSi金属間化合物は、α-AlMnSi相と同じ結晶構造を有するものの、Mnを含まないと共に、β-Al5FeSi金属間化合物から相変化することができる。前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金は、マンガンを含有しないので、最終組織においてα-AlMnSi相を含まない。但し、前記立方晶(cubic)結晶構造を有するα-AlFeSi金属間化合物は、α-AlMnSi相と同じ結晶構造を有するという意味である。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金において、前記アルミニウム鋳造合金は、前記β-Al5FeSi金属間化合物を中和させるための添加剤として、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、クロム(Cr)またはモリブデン(Mo)を含有しないことを特徴とする。
表1は、本発明の一実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金で具現されたα-AlFeSi金属間化合物の組成を分析した結果を示したものである。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金において、前記α-AlFeSi金属間化合物は、Al:74.9~86.7at.%、Fe:6.9~14.3at.%、Si:6.2~11.3at.%の組成を有することができる。図1は、Al-Si-Fe三元系の液相線投影状態図(liquidus projection)を示した図である。
図1を参照すると、本発明の一実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金は、Al-Si系合金にFeが添加された合金であって、Al-Si-Fe三元系の液相線投影状態図(liquidus projection)による凝固経路過程でβ-Al5FeSi相が生成され得るAl、Si、Feの組成範囲に限定され得る。
本発明の一実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金において、鉄(Fe)の組成範囲は0.32重量%以上~0.85重量%以下であってもよい。鉄(Fe)の含量が0.32重量%よりも低い場合、Al-7Si-xFe合金の凝固過程でβ-Al5FeSi相の生成よりもAl-Si共晶反応が先に起こり得る。反面、鉄(Fe)の含量が0.85重量%を超える場合、凝固中に基地であるα-Al相よりもβ-Al5FeSi相が先に生成され得る。したがって、本発明の一実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金において、鉄(Fe)の組成範囲は0.32重量%以上~0.85重量%以下に制御することが好ましい。
本発明の一実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金において、シリコン(Si)の組成範囲は6.5重量%以上~11.5重量%以下であってもよい。シリコン(Si)の含量が6.5重量%よりも低い場合、溶湯の流動度が低下して鋳造性を確保することが難しくなり得る。反面、シリコン(Si)の含量が11.5重量%を超える場合、アルミニウム鋳造合金の熱伝導度が減少し得る。
本発明の一実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金において、マグネシウム(Mg)の組成範囲は0.2重量%以上~0.4重量%以下であってもよい。マグネシウム(Mg)の含量が0.2重量%よりも低い場合、アルミニウム鋳造合金の時効硬化能が低下して、強度が減少し得る。反面、マグネシウム(Mg)の含量が0.4重量%を超える場合、アルミニウム鋳造合金の延性が減少し得る。
一方、本発明の一実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法は、6.5重量%以上~11.5重量%以下のシリコン(Si);0.2重量%以上~0.4重量%以下のマグネシウム(Mg);0.32重量%以上~0.85重量%以下の鉄(Fe);及び残部はアルミニウム(Al)及び不可避不純物;を含むアルミニウム鋳造合金の溶湯を提供する第1ステップと;アルミニウム基地内に立方晶結晶構造を有するα-AlFeSi金属間化合物を含むように、前記アルミニウム鋳造合金の溶湯の液相線温度よりも高い温度で外部エネルギーを印加した後、冷却する第2ステップと;を含む。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記第2ステップは、前記アルミニウム鋳造合金の溶湯を、液相線温度よりも200℃~300℃高い温度で維持した後、1K/sec以上の冷却速度で冷却するステップを含むことができる。例えば、前記冷却速度は、1K/sec以上100K/sec以下の範囲を有することができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記第2ステップは、前記アルミニウム鋳造合金の溶湯を、液相線温度よりも100℃~150℃高い温度で維持した後、10K/sec以上の冷却速度で冷却するステップを含むことができる。例えば、前記冷却速度は、10K/sec以上100K/sec以下の範囲を有することができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記第2ステップで前記アルミニウム鋳造合金の溶湯の温度が液相線温度よりも高いものの、溶湯の温度と液相線温度との差が小さいほど、前記冷却速度が大きくなるように制御することが必要である。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記アルミニウム鋳造合金の溶湯を、液相線温度よりも高い温度で1時間~2時間維持することを特徴とすることができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記アルミニウム鋳造合金の溶湯を、液相線温度よりも高い温度で超音波を印加して1分~2分間維持することを特徴とすることができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記第2ステップは、単斜晶結晶構造を有するβ-Al5FeSi金属間化合物から、立方晶結晶構造を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化するステップを含むことができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記第2ステップは、前記β-Al5FeSi金属間化合物の生成がAl-Si共晶反応よりも先に起こり、アルミニウム基地であるα-Al相が前記β-Al5FeSi金属間化合物よりも先に生成され得る。
実験例
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実験例を提示する。但し、以下の実験例は、本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明が以下の実験例によって限定されるものではない。
アルミニウム合金鋳造材の組成及び工程の設計
表2は、本発明の実験例Aによるアルミニウム鋳造合金の組成及び工程条件を示したものである。実験例Aは、亜共晶Al-Si系合金の組成(単位:重量%)に対して評価したものである。
本実験例では、Fe系金属間化合物の生成相の制御のために、液状金属を溶解するステップにおいて、通常の鋳造方法とともに、次の2つの液相工程(Thermal Rate(TR)、Ultrasonic treatment(UST))を行った。Thermal Rateは、溶湯を過熱させた状態で一定時間維持する処理方法を意味する。表2において「TR」項目は、溶湯を設定温度で1時間維持した後、約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を意味し、「UST」項目は、設定温度の溶湯で1分間超音波処理した後、約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を意味する。
表2において、実験例1である‘合金1’項目は、A356.2合金に該当し、実験例2である‘合金2’項目は、A356.2合金と対比して、鉄(Fe)の含量が約0.3~0.4重量%だけさらに多い合金に該当し、実験例3である‘合金3’項目は、合金2の合金の溶湯を設定温度800℃で1時間維持した後、溶湯を約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した場合であり、実験例4である‘合金4’項目は、合金2の合金の溶湯を800℃で1分間超音波処理した後、約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した場合であり、実験例5である‘合金5’項目は、合金2の合金の溶湯を設定温度900℃で1時間維持した後、溶湯を約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した場合であり、実験例6である‘合金6’項目は、前記合金5の条件の工程を適用した後、再溶融を経た場合に該当する。一方、実験例7である‘合金7’項目は、A356.2合金と対比して、鉄(Fe)の含量が約0.5~0.6重量%だけさらに多い合金に該当し、実験例8である‘合金8’項目は、合金7の合金の溶湯を700℃で1分間超音波処理した後、約700℃の温度で金型に注入して鋳造する工程を適用した場合であり、‘合金9’項目は、合金7の合金の溶湯を設定温度1100℃で1時間維持した後、溶湯を約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した場合に該当する。
図2は、本発明の実験例によるアルミニウム合金鋳造材を形成するために使用されたステップモールドを示す概略図である。
本発明の実験例では、約8kgを有する合金を、誘導溶解炉及び電気抵抗式溶解炉を用いて通常の溶解温度である700℃で溶解させ、図2のようなステップモールド(冷却速度2.2K/s~40K/s)に溶湯を注いで鋳造する工程を適用した。前記合金1~6は、電気抵抗式溶解炉で溶解及び脱ガス処理を適用し、注入温度は、いずれも700℃に固定した。一方、前記合金7~9は、誘導溶解炉で溶解するものの、脱ガス処理は適用せず、注入温度は、いずれも700℃に固定した。
図3及び図4は、本発明の実験例において、冷却速度によるアルミニウム鋳造合金の微細組織を撮影した写真であり、図5Aは、本発明の実験例において、外部エネルギーの印加温度及び方法と、冷却速度による微細組織の形態を示したグラフである。
一方、図6乃至図12は、本発明の実験例による微細組織の2次元形態又は3次元形態を撮影した写真である。具体的には、図6は、本発明の実験例において、合金9の微細組織の2次元形態を撮影した走査電子顕微鏡写真であり、図7は、本発明の実験例において、合金9の微細組織の3次元形態を撮影したイメージ写真であり、図8は、本発明の実験例において、合金3の微細組織の2次元形態を撮影した走査電子顕微鏡写真であり、図9は、本発明の実験例において、合金4の微細組織の2次元形態を撮影した走査電子顕微鏡写真であり、図10は、本発明の実験例において、合金4の微細組織の3次元形態を撮影したイメージ写真であり、図11は、本発明の実験例において、合金2の微細組織の2次元形態を撮影した走査電子顕微鏡写真であり、図12は、本発明の実験例において、合金2の微細組織の3次元形態を撮影したイメージ写真である。
図3乃至図12を参照すると、アルミニウム鋳造合金の溶湯の液相線温度(約600℃)よりも高い温度で外部エネルギーを印加した後、冷却する工程を行うにおいて、前記アルミニウム鋳造合金の溶湯を、液相線温度よりも200℃~300℃高い温度(約800℃~900℃)で維持した後、1K/sec以上の冷却速度で冷却する場合、板状(plate-like)を有するβ-Al5FeSi金属間化合物から中国文字(Chinese script)の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生することを確認することができる。前記β-Al5FeSi金属間化合物は、3次元的に板状を有し、2次元断面上では針状の形状を有することができる。
実験例の合金5(Alloy5)において、表2の組成を有する合金(A5)の溶湯を、設定温度900℃で1時間維持した後、注入温度700℃に下げ、溶湯を1K/sec以上(2.2K/sec、6.9K/sec、16K/sec、40K/sec)の冷却速度で金型に注入して鋳造する工程を適用した場合、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物は全て、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生したことを確認することができる。
実験例の合金3(Alloy3)において、表2の組成を有する合金(A3)の溶湯を、設定温度800℃で1時間維持した後、注入温度700℃に下げ、溶湯を1K/sec以上(2.2K/sec、6.9K/sec、16K/sec、40K/sec)の冷却速度で金型に注入して鋳造する工程を適用した場合、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物は全て、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生したことを確認することができる。
実験例の合金4(Alloy4)において、表2の組成を有する合金(A4)の溶湯を、800℃で1分間超音波処理した後、注入温度700℃に下げ、溶湯を1K/sec以上(2.2K/sec、6.9K/sec、16K/sec、40K/sec)の冷却速度で金型に注入して鋳造する工程を適用した場合、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物の少なくとも一部は、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生したことを確認することができる。さらに、10K/sec以上(16K/sec、40K/sec)の冷却速度で金型に注入して鋳造する工程を適用した場合、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物は全て、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生したことを確認することができる。
一方、実験例の合金9(Alloy9)において、表2の組成を有する合金(A9)の溶湯を、設定温度1100℃で1時間維持した後、注入温度700℃に下げ、溶湯を1K/sec以上(2.2K/sec、6.9K/sec、16K/sec、40K/sec)の冷却速度で金型に注入して鋳造する工程を適用した場合、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物は全て、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生したことを確認することができる。
また、図3乃至図12を参照すると、アルミニウム鋳造合金の溶湯の液相線温度(約600℃)よりも高い温度で外部エネルギーを印加した後、冷却する工程を行うにおいて、前記アルミニウム鋳造合金の溶湯を、液相線温度よりも100℃~150℃高い温度(約700℃~750℃)で維持した後、10K/sec以上の冷却速度で冷却する場合、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物から、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生することを確認することができる。
実験例の合金8(Alloy8)において、表2の組成を有する合金(A8)の溶湯を、700℃で1分間超音波処理した後、注入温度700℃に下げ、溶湯を10K/sec以上(16K/sec、40K/sec)の冷却速度で金型に注入して鋳造する工程を適用した場合、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物の少なくとも一部は、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生したことを確認することができる。しかし、実験例の合金8(Alloy8)において、表2の組成を有する合金(A8)の溶湯を、700℃で1分間超音波処理した後、注入温度700℃に下げ、溶湯を10K/sec未満(2.2K/sec、6.9K/sec)の冷却速度で金型に注入して鋳造する工程を適用した場合、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物は、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生しないことを確認することができる。
図4を参照すると、それぞれの冷却速度での超音波処理は、β-Al5FeSi相の形状変化なしに、微細化を起こす反面、thermal-rateは、針状のβ-Al5FeSiの形状を中国文字の形状に変えることが観察される。冷却速度が6.9から最大40K/sに増加するにつれて、通常処理材(合金7)に比べて、超音波処理(合金8)及びthermal-rate(合金9)による生成相の微細化効果が顕著に観察される。
中国文字の形状のFe系金属間化合物は、熱力学計算では予測できない準平衡相として判断され、thermal-rate合金では、冷却速度に関係なく全て観察される。一方、通常処理材及び超音波処理材では、冷却速度が速い(例えば、40K/s)場合にのみ準平衡相が一部観察される。
上述したように、このような準平衡相が生成される工程条件を導出するために、A356.2+0.4~0.6Fe合金に対して、溶湯温度700~1100℃及び冷却速度0.3~40K/s区間に対してthermal-rate試験を行った。thermal-rate試験は、それぞれのターゲット温度に溶湯を過熱(superheating)させ、1時間維持した後、700℃に注入温度を下げ、図2のようなスチールステップモールドに鋳造する方式で行った。これに加えて超音波処理も行ったが、700℃及び800℃の溶湯で1分間超音波処理した後、700℃に注入温度を下げ、同一のスチールステップモールドに鋳造する方式で実験を行った。
図5Aは、準平衡相が現れ得る工程マップを示したものである。
図5Aから確認できるように、約0.4wt.%のFeを添加したA356合金の場合、800℃以上の温度に過熱させた後、約1時間維持すると、凝固中に中国文字の形状を有する準平衡相の生成が可能であることが確認された。重要な点は、このように準平衡相が生成される液相工程を行ったにもかかわらず、鋳造時の冷却速度が非常に遅い場合(例えば、0.3K/s)、全て針状のβ-Al5FeSi平衡相として観察された。これは、冷却速度が十分に遅い場合、包晶反応(peritectic reaction)によって中国文字相が全て針状のβ-Al5FeSi平衡相に変態するものと判断される。さらに興味深い事実は、液状金属を800℃の温度で維持なしに超音波処理のみ1分間行った場合、凝固組織の一部で中国文字の形状を有する準平衡相が観察されることを確認することができる。図5Aから確認できるように、液状金属を800℃で1分間超音波処理した後、16K/s以上の速い冷却速度で鋳造させる場合、Fe系金属間化合物は、凝固中に全て準平衡相として生成されることが観察される。一方、冷却速度が2.2~6.9K/sである場合、中国文字の形状と針状を有するFe系金属間化合物が混在することが確認される。特に、超音波処理材において針状に観察されるβ-Al5FeSi平衡相は、通常処理材あるいは700℃で1時間維持した合金で観察される針状と比較して顕著に微細であることが確認される。
図5Bは、本発明の実験例において、アルミニウム鋳造合金の溶湯温度800℃で維持時間による微細組織の形態を示したグラフである。鋳造時の冷却速度は約10K/sのレベルである。
図5Bを参照すると、アルミニウム鋳造合金の溶湯を、液相線温度よりも高い温度である800℃で1時間~2時間維持する場合、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物から、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生することを確認することができる。
図5Cは、本発明の実験例において、アルミニウム鋳造合金の溶湯温度600~800℃に加熱、及び冷却速度0.8K/sで凝固させたアルミニウム鋳造合金の後方散乱電子イメージを示した図である。
図5Cを参照すると、冷却速度が遅い場合(例えば、冷却速度が1K/s未満)、外部エネルギーの印加(例えば、過熱(superheating))による相変化がほとんど観察されないことを確認することができる。
図6乃至図12では、それぞれの液相工程の後、2.2K/sの冷却速度で凝固させた合金に対する後方散乱電子イメージ及び3次元の微細組織を示している。確認できるように、液状金属を700℃で1時間維持した場合には、凝固時に数百μmの大きさを有する粗大な針状のβ-Al5FeSi相が生成される一方、800℃で1時間維持した場合には、Fe系金属間化合物が準平衡相の形態で存在することが分かる。併せて、800℃で1分間超音波処理した液状金属は、凝固中に準平衡相と微細な針状のβ-Al5FeSi平衡相が共に共存することが観察される。
図13は、本発明のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、β-Al5FeSi金属間化合物の結晶構造を分析した写真であり、図14は、本発明のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、α-AlFeSi金属間化合物の結晶構造を分析した写真である。
表3は、本発明のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、Fe系金属間化合物の結晶構造を分析した結果を示したものである。
本実験例では、Feを多量含有しているA356.2液状金属に対して、superheating(熱)あるいはUST(超音波)などの外部エネルギーの印加を通じて、凝固中に準平衡相が生成され得るという現象を確認することができる。このとき、準平衡相は、熱力学的に平衡相であるβ-Al5FeSi相の形状がはっきりと変化することが観察されるところ、これは、相が有する結晶学的な変化に起因するものと判断される。
生成相の結晶構造の分析のために、各相を含む領域に対する薄いホイル(thin foil)サンプルを、FIB(Focused Ion Beam)ミーリングによって準備し、TEM(transmission electron microscopy)分析を行った。
図13及び図14は、それぞれ、平衡相である針状のβ-Al5FeSi相及び準平衡相(以下、α-AlFeSi相と表記)に対するTEM写真、及び回折パターン分析結果を示している。確認できるように、針状のβ-Al5FeSi相は、典型的には対称性(symmetry)が低い単斜晶構造を有するものと分析され、単位胞の格子定数及び角度は、表3に示されたように分析された。一方、中国文字の形状を有するα-AlFeSi相の場合、回折パターン分析の結果、α-AlMnSi相と同じ結晶構造を有するものの、Mnを含まないと共に、4-fold構造を有する立方晶構造を有することが確認された。すなわち、針状のような非対称形状から中国文字のように放射状の対称形状に変化することは、生成相の結晶構造に起因するものと判断される。
このような生成相の変化メカニズムにおいてさらに重要な点は、液状金属に対する外部エネルギーの印加が、金属間化合物の生成に絶対的に影響を与えるショートレンジオーダリング(short range ordering;SRO)結合(bonding)構造に影響を与えると判断される。まだ、液相構造に対する正確な分析が制限される点などを考慮したとき、現象的な変化に基づいて理論的な可能性を推測するには明らかに限界がある。それにもかかわらず、このような外部エネルギーの印加は、液状金属の内部の結合構造(Fe系金属間化合物をなしている結合構造、例えば、Al-Fe又はFe-Si結合)あるいは準結晶クラスター(quasi-crystalline cluster)構造に影響を与えることができ、これによって、凝固中に晶出される生成相の結晶構造及び形状の変化をもたらしたものと理解される。
先の図5Aから確認できるように、液相工程は、液相内部の構造変化を介した生成相の結晶構造の変化を誘導することができるが、このような準平衡相の持続可能性は、液相工程の後に行われる鋳造時の冷却速度にも大きく依存することが分かる。
すなわち、液相工程によって凝固中に準平衡相であるα-AlFeSi相が生成され得るが、凝固が進むにつれて、Siの拡散を伴う包晶反応により、β-Al5FeSi相へ一部あるいは全部が変態することもある。すなわち、Siの固溶度が相対的に低いα-AlFeSi相(~10at.%のSi含有)が先に生成される場合、成長する間に残留液相にはSiが濃縮され、その後、液相とα-AlFeSi相との包晶反応を通じて、Siの固溶度が相対的に高いβ-Al5FeSi相(15~20wt.%のSi含有)に変態が起こる。このとき、α-AlFeSi相のブランチ(branch)の厚さが薄いほど、大きさが小さいほど、そして、拡散のための時間(例えば、遅い冷却速度)が十分に与えられるとき、準平衡相は全てβ-Al5FeSi相へ変態が起こり得る。
「Liquid+α-AlFeSi→α-Al+β-Al5FeSi」の包晶反応についての概念と共に、反応及び変態速度を理論的に予測した結果によれば、包晶反応速度は、液相とα-AlFeSi相との反応によるβ-Al5FeSi相の生成速度、及びα→βの変態速度の両方に依存することが分かる。特に、反応速度が顕著に遅い液相とα-AlFeSi相の反応によるβ-Al5FeSi相の生成速度が、律速因子(controlling factor)であると判断される。予測結果によれば、2.2K/sの冷却速度で、理論的に最大約2.5μmの厚さを有するα-AlFeSi相が、凝固中に包晶反応によって全てβ-Al5FeSi相に変態できると予測される。一方、冷却速度が6.9K/s以上に増加する場合、1μm以下の厚さを有するα-AlFeSi相のみがβ-Al5FeSi相に変態できると予測される。すなわち、冷却速度が増加するほど、既に生成された準平衡相であるα-AlFeSiからβ-Al5FeSi相への完全な包晶反応は不可能になる。これは、実際の凝固組織を観察したときに確認されたように、溶湯に対するthermal rateの後、冷却速度が速いほど準平衡相として存在する傾向性が高いという事実と一致する。このような速度論を考慮して準平衡-平衡メカニズムを究明し、準平衡相の具現のための工程変数を導出することができる。
図3乃至図5Aを参照すると、液状金属に対する外部エネルギーの印加によってFe系金属間化合物の準平衡相の生成を誘導できることが分かった。700℃の溶湯温度では、thermal rate処理による微細組織的変化がほとんど観察されなかった。但し、冷却速度が増加するにつれて、針状を有するβ-Al5FeSi相の顕著な微細化が観察され、40K/sの冷却速度で、一部の準平衡相が平衡相に完全に変態せずにそのまま存在することが確認される。
一方、800℃以上の溶湯温度でthermal rateを1時間行う場合、2.2~40K/sの冷却速度の全範囲で、全てのFe系金属間化合物が中国文字の形状を有するα-AlFeSi準平衡相として観察される。興味深い点は、外部エネルギーの印加方法の一環として行ったUST処理の場合、800℃で1分だけ処理しても、生成相の微細化効果があることが確認される。但し、超音波処理による形状の変化はほとんど観察されなかったが、これを単純に超音波という外部エネルギーが液状金属の構造変化及び準平衡相の誘導に効果的ではないと見ることはできない。
UST(超音波)は、液状金属に印加する際に、「キャビテーション(cavitation)」及び「アコースティックストリーミング(acoustic streaming)」という2つの主要現象を伴い、ここで、キャビテーションは、バブル(bubble)の生成-成長-崩壊の一連の過程を含む概念である。特にバブルの崩壊は、局部的に5000℃、500atmの高温高圧を有するホットスポット(hot spot)を生成させると知られているので、超音波は、液状金属の内部構造の変化を引き起こすことができる十分なエネルギー印加手段であると判断される。
したがって、800℃という高温の溶湯で十分な外部エネルギーが1分だけ印加されても、液状金属のボンディング構造あるいはクラスター(cluster)の構造に影響を与えることができ、これと並行して、アコースティックストリーミングによる溶湯の均質化効果により、準平衡相は小さく、均一に生成すると判断される。その後、このような微細な準平衡相は、速度論的に凝固過程中にβ-Al5FeSi平衡相に速やかに変態し得るため、結果的に、微細組織において微細な針状のβ-Al5FeSi相として観察され得る。
図15乃至図32は、上述した本発明の実験例Aによるアルミニウム鋳造合金の物性を示した図である。
具体的には、図15は、本発明の実験例1~6によるアルミニウム鋳造合金(冷却速度2.2K/s)のT5熱処理(人工時効155℃、8時間)に対する最大引張強度を示したグラフであり、図16は、本発明の実験例1~6によるアルミニウム鋳造合金(冷却速度2.2K/s)のT5熱処理(人工時効155℃、8時間)に対する降伏強度を示したグラフであり、図17は、本発明の実験例1~6によるアルミニウム鋳造合金(冷却速度2.2K/s)のT5熱処理(人工時効155℃、8時間)に対する延伸率を示したグラフであり、図18は、本発明の実験例1~6によるアルミニウム鋳造合金(冷却速度2.2K/s)のT5熱処理(人工時効155℃、8時間)に対する熱伝導度を示したグラフである。図15乃至図18は、冷却速度が2.2K/secである条件を適用した。
図19は、本発明の実験例1~6によるアルミニウム鋳造合金(冷却速度6.9K/s)のT5熱処理(人工時効155℃、8時間)に対する最大引張強度を示したグラフであり、図20は、本発明の実験例1~6によるアルミニウム鋳造合金(冷却速度6.9K/s)のT5熱処理(人工時効155℃、8時間)に対する降伏強度を示したグラフであり、図21は、本発明の実験例1~6によるアルミニウム鋳造合金(冷却速度6.9K/s)のT5熱処理(人工時効155℃、8時間)に対する延伸率を示したグラフであり、図22は、本発明の実験例1~6によるアルミニウム鋳造合金(冷却速度6.9K/s)のT5熱処理(人工時効155℃、8時間)に対する熱伝導度を示したグラフである。図19乃至図22は、冷却速度が6.9K/secである条件を適用した。
図23は、本発明の実験例1~6によるアルミニウム鋳造合金(冷却速度16K/s)のT5熱処理(人工時効155℃、8時間)に対する最大引張強度を示したグラフであり、図24は、本発明の実験例1~6によるアルミニウム鋳造合金(冷却速度16K/s)のT5熱処理(人工時効155℃、8時間)に対する降伏強度を示したグラフであり、図25は、本発明の実験例1~6によるアルミニウム鋳造合金(冷却速度16K/s)のT5熱処理(人工時効155℃、8時間)に対する延伸率を示したグラフであり、図26は、本発明の実験例1~6によるアルミニウム鋳造合金(冷却速度16K/s)のT5熱処理(人工時効155℃、8時間)に対する熱伝導度を示したグラフである。図23乃至図26は、冷却速度が16K/secである条件を適用した。
図27は、本発明の実験例2~6によるアルミニウム鋳造合金の熱伝導度及び電気伝導度を示したグラフであり、図28は、図27のR1領域における熱伝導度を示したグラフである。
図15乃至図28を参照すると、合金3~6は、合金2の場合と比較して、最大引張強度及び延伸率特性が著しく向上することを確認することができ、降伏強度及び熱伝導度特性も同等レベル以上を確保できることを確認することができる。
表4及び表5は、本発明の実験例によるアルミニウム鋳造合金の物性(T5&as-cast)を測定して示したものである。
表4及び表5において、合金3~6によれば、本発明の実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金は、100MPa~140MPaの範囲の降伏強度、180MPa~220MPaの範囲の最大引張強度、2.5%~8.5%の範囲の延伸率、及び160W/mK~190W/mKの範囲の熱伝導度を実現できることを確認することができる。
本実験例では、液相工程基盤の生成相の制御が、究極的に機械的、物理的特性にどのように影響を及ぼすのかを評価した。先に提示された液相工程方法によりA356.2+0.4Fe合金を溶湯処理し、2.2~16K/sの冷却速度で鋳造した。その後、鋳造サンプルから引張サンプルを採取し、引張特性を評価した。このとき、全てのサンプルに対して、溶体化処理なしに時効処理のみを行うT5処理を行い、条件は、155℃で8時間時効処理する方法を採択した。液相工程による生成相の制御(例えば、Fe系金属間化合物の準平衡相の具現及び微細化)によって、生成相の変化がないTR@700℃の条件と比較して、延伸率が2%から6%まで最大300%まで増加することが分かる。また、延伸率の増加と共に、降伏強度及び引張強度が小幅増加するものと評価される。UST処理材の場合、一部の冷却速度で降伏強度が目標特性である130MPaを満たしたが、それ以外の液相工程及び冷却速度では、100~120MPaレベルの降伏強度が得られるものと評価される。このような液相工程基盤の生成相の制御は、引張特性に加え、熱伝導度特性にも影響を及ぼすことが確認される。
図27及び図28は、先に提示された液相工程処理及び冷却速度による熱伝導度の変化を示すグラフである。本実験例において、常温熱伝導度の物性は、引張試験と同様に、T5熱処理材に対して行った。
確認できるように、試験に使用された合金は、鋳造工程(液相工程、冷却速度)に関係なく、T5処理材の熱伝導度は160W/mKを超えることが分かる。一方、熱伝導度特性は、液相工程の条件に関係なく、冷却速度が増加するほど増加することを確認することができ、冷却速度を40K/sまで増加させた場合、合金4と合金5はいずれも、熱伝導度の値が190W/mKに到達するものと評価され、合金2と比較して熱伝導度が向上することが分かる。
冷却速度が増加するほど、基地内の溶質元素のトラッピング(trapping)挙動により固溶度が増加すると理解されており、したがって、T5熱処理後にも時効析出物の量は比例して増加すると予想される。この点を考慮すると、冷却速度が最も速い40K/sの場合、他の冷却速度の条件と比較して、熱伝導度が減少せずに上昇するという点は、基地内の溶質-析出効果よりも、他の微細組織的因子に起因するという事実を提示する。これは、基地析出相だけでなく、‘凝固晶出相の形状、大きさ及び分布が熱伝導度に影響を与えることができる’という仮説を裏付ける結果といえる。
一方、40K/sの冷却速度で観察されるFe系金属間化合物の場合、800℃以上の温度でthermal-rateによって準平衡相の誘導が促進されると同時に、顕著に微細化されることが確認される。また、生成相の分布もさらに均一になったことが観察される。他の凝固晶出相である共晶Si及びπ-Al8FeMg3Si6相の変化がないと仮定すると、後方散乱電子イメージでは、このようなFe系金属間化合物の形状、大きさ及び分布の変化が熱伝導度に直接的に影響を与えるものと判断される。
図29は、本発明の実験例2~5によるアルミニウム鋳造合金の冷却速度によるFe系金属間化合物の大きさを示したグラフであり、図30は、本発明の実験例2~5によるアルミニウム鋳造合金の冷却速度によるFe系金属間化合物の体積分率を示したグラフである。
図29及び図30を参照すると、液相工程によるβ-Al5FeSi相の大きさ及び分率が全般的に減少することを確認することができ、冷却速度が2.2K/sである場合、液相工程によって大きさ(46.5μm→10.3μm)及び分率(1.1%→0.7%)が最大幅で減少することを確認することができる。
本実験例で試みた液相工程及び冷却速度の全範囲に対して鋳造したサンプルから観察されるFe系金属間化合物の大きさ及び分率を定量分析した。図29及び図30は、その結果を示しており、液相工程の変数に関係なく、冷却速度が増加するほど、Fe系金属間化合物の大きさ及び分率がいずれも減少する推移を示す。一方、それぞれの冷却速度で、概ね、Fe系金属間化合物の大きさは、合金2と比較して、合金4、そして合金3あるいは合金5の条件に行くほど減少することが確認される。このような鋳造工程別のFe系金属間化合物の大きさの差は、冷却速度が2.2K/sである場合に最も大きく示され、6.9K/s以上に増加させると、合金3、合金4、合金5はいずれも、微細化の程度が類似することが確認される。大きさと同様に、Fe系金属間化合物の分率も、合金2と比較して、合金4及び合金5の条件で大きく減少する一方、合金3の条件では多少増加するものと分析される。
図31は、冷却速度が6.9K/secである条件で本発明の実験例7~9によるアルミニウム鋳造合金の応力-変形率の相関関係を示したグラフであり、図32は、冷却速度が16K/secである条件で本発明の実験例7~9によるアルミニウム鋳造合金の応力-変形率の相関関係を示したグラフである。
図31及び図32を参照すると、超音波処理による生成相の微細化を通じた延伸率の増加効果があることを確認することができる(合金8)。冷却速度が16K/sである場合、延伸率が約200%増加すると同時に、強度向上の効果もあることを確認することができる。
一方、1100℃で熱処理する合金9の場合は、マグネシウムが揮発する問題及び水素捕捉度の増加によって特性の増加効果がほとんど現れないことを確認することができる。すなわち、液相線温度よりも300℃以上高い高温で過熱(superheating)させる場合、マグネシウムなどの反応性が強い合金元素が揮発されるため、合金固有の特性が低下することを確認することができる。
表6は、本発明の実験例Bによるアルミニウム鋳造合金の組成及び工程条件を示したものである。実験例Bは、共晶Al-Si合金系の組成(単位:重量%)について評価したものである。
本実験例では、Fe系金属間化合物の生成相の制御のために、液状金属を溶解するステップにおいて、通常の鋳造方法とともに、次の2つの液相工程(Thermal Rate(TR)、Ultrasonic treatment(UST))を行った。表6において、「TR」項目は、設定温度で1時間維持した後、溶湯を約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を意味し、「UST」項目は、設定温度の溶湯で1分間超音波処理した後、約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を意味し、「Mn-free」項目は、A365合金において、Fe金属間化合物の生成相の制御のためにMnを添加しない合金を意味する。
表6において、実験例10である‘合金10’項目は、A365合金に該当し、実験例11である‘合金11’項目は、A365合金と対比して、鉄(Fe)の含量が約0.4重量%だけさらに多い合金に該当し、実験例12である‘合金12’項目は、合金11の合金の溶湯を設定温度800℃で1時間維持した後、溶湯を約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した場合であり、実験例13である‘合金13’項目は、合金11の合金の溶湯を設定温度900℃で1時間維持した後、溶湯を約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した場合であり、実験例14である‘合金14’項目は、A365合金において、Fe金属間化合物の生成相の制御のためにMnを添加しない合金に該当し、実験例15である‘合金15’項目は、合金14の合金の溶湯を設定温度800℃で1時間維持した後、溶湯を約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した場合であり、実験例16である‘合金16’項目は、合金14の合金の溶湯を設定温度900℃で1時間維持した後、溶湯を約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した場合であり、実験例17である‘合金17’項目は、A365合金において、Fe金属間化合物の生成相の制御のためにMnを添加せず、Sr及びTiを添加した合金に該当し、実験例18である‘合金18’項目は、合金17の合金の溶湯を設定温度800℃で1時間維持した後、溶湯を約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した場合であり、実験例19である‘合金19’項目は、合金17の合金の溶湯を設定温度800℃で1分間超音波処理した後、約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した場合に該当する。
図33及び図34は、本発明の実験例11~実験例13において、冷却速度によるアルミニウムの鋳造直後(as cast)の微細組織を撮影した写真である。図33を参照すると、共晶SiにおいてSrの添加による改良化現象を確認することができ、液相工程によってなくなることを確認することができる。図34を参照すると、Fe金属間化合物を確認することができ、マンガンを含有する場合、粗大な中国文字の形状を有するα-AlMnSi相が生成されることを確認することができる。
図35及び図36は、本発明の実験例14~実験例16において、冷却速度によるアルミニウムの鋳造直後の微細組織を撮影した写真である。図35を参照すると、共晶Siにおいて微細組織の変化がないことを確認することができる。図36を参照すると、Fe金属間化合物を確認することができ、マンガンを含有しない合金では、既存の単斜晶結晶構造を有するβ-Al5FeSiの針状組織が、立方晶結晶構造を有するα-AlFeSiの中国文字の形状に変化することを確認することができる。
図37は、本発明の実験例14~実験例16において、冷却速度によるアルミニウムの鋳造直後の引張特性を比較したグラフである。
図37を参照すると、冷却速度が高くなるほど、最大引張強度は小幅上昇し、降伏強度は小幅減少することを確認することができる。
図38乃至図40は、本発明の実験例14~実験例16において、冷却速度によるアルミニウムの鋳造直後の熱伝導度特性を比較したグラフである。図38乃至図40を参照すると、冷却速度が4-6K/s以上では、一般の降伏強度-伝導度の反比例関係に従わないことを確認することができる。
以下では、本発明の変形された他の実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金を説明する。
Al-Si合金において、一般的に不純物であるFeがAl-Si共晶反応(Feの添加量0.32wt.%以上)の前に生成されるβ-Al5FeSi相だけでなく、Al-Si共晶反応(Feの添加量0.32wt.%未満)の前に生成されるβ-Al5FeSi相も、合金の延性を大きく低下させ得る。したがって、Feの添加量がAl-Si共晶反応以前の区間でβ-Al5FeSi相が生成され得るレベルである0.2~0.3重量%添加された合金に対して、追加で本発明の技術的思想を適用できるかどうかを検討し、技術の実施が可能であることを、次のように確認した。
本発明の変形された他の実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金は、6.5重量%以上~11.5重量%以下のシリコン(Si);0.2重量%以上~0.4重量%以下のマグネシウム(Mg);0.2重量%以上~0.3重量%以下の鉄(Fe);及び残部はアルミニウム(Al)及び不可避不純物;を含み、アルミニウム基地内に立方晶結晶構造を有するα-AlFeSi金属間化合物を含む。
前記アルミニウム鋳造合金は、ストロンチウム(Sr):0.02重量%以下、チタン(Ti):0.15重量%以下、またはジルコニウム(Zr):0.15重量%以下をさらに含むこもができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金において、前記立方晶結晶構造を有するα-AlFeSi金属間化合物は、α-AlMnSi相と同じ結晶構造を有するものの、Mnを含まないと共に、β-Al5FeSi金属間化合物から相変化することができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金において、前記アルミニウム鋳造合金は、前記β-Al5FeSi金属間化合物を中和させるための添加剤として、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、クロム(Cr)またはモリブデン(Mo)を含有しないことを特徴とする。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金において、前記α-AlFeSi金属間化合物は、Al:74.9~86.7at.%、Fe:6.9~14.3at.%、Si:6.2~11.3at.%の組成を有することができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金において、100MPa~140MPaの範囲の降伏強度、180MPa~220MPaの範囲の最大引張強度、2.5%~8.5%の範囲の延伸率、及び160W/mK~190W/mKの範囲の熱伝導度を有することができる。
本発明の変形された他の実施例に係る高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法は、6.5重量%以上~11.5重量%以下のシリコン(Si);0.2重量%以上~0.4重量%以下のマグネシウム(Mg);0.2重量%以上~0.3重量%以下の鉄(Fe);及び残部はアルミニウム(Al)及び不可避不純物;を含むアルミニウム鋳造合金の溶湯を提供する第1ステップと;アルミニウム基地内に立方晶結晶構造を有するα-AlFeSi金属間化合物を含むように、前記アルミニウム鋳造合金の溶湯の液相線温度よりも高い温度で外部エネルギーを印加した後、冷却する第2ステップと;を含む。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記第2ステップは、前記アルミニウム鋳造合金の溶湯を、液相線温度よりも200℃~300℃高い温度で維持した後、1K/sec以上の冷却速度で冷却するステップを含むことができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記第2ステップは、前記アルミニウム鋳造合金の溶湯を、液相線温度よりも100℃~150℃高い温度で維持した後、10K/sec以上の冷却速度で冷却するステップを含むことができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記アルミニウム鋳造合金の溶湯を、液相線温度よりも高い温度で1時間~2時間維持することを特徴とすることができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記アルミニウム鋳造合金の溶湯を、液相線温度よりも高い温度で超音波を印加して1分~2分間維持することを特徴とすることができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記第2ステップは、単斜晶結晶構造を有するβ-Al5FeSi金属間化合物から、立方晶結晶構造を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化するステップを含むことができる。
前記高強度、高延伸及び高熱伝導度のアルミニウム鋳造合金の製造方法において、前記第2ステップは、前記β-Al5FeSi金属間化合物の生成がAl-Si共晶反応よりも先に起こり、アルミニウム基地であるα-Al相が前記β-Al5FeSi金属間化合物よりも先に生成され得る。
表7は、本発明の変形された他の実施例に係るアルミニウム鋳造合金の組成及び工程条件の実験例を示したものである。組成は、Al-Si合金系の組成(単位:重量%)について評価したものである。
本実験例では、Fe系金属間化合物の生成相の制御のために、液状金属を溶解するステップにおいて、通常の鋳造方法とともに、次の2つの液相工程(Thermal Rate(TR)、Ultrasonic treatment(UST))を行った。Thermal Rateは、溶湯を過熱させた状態で一定時間維持する処理方法を意味する。表7において「TR」項目は、溶湯を設定温度で1時間維持した後、約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を意味し、「UST」項目は、設定温度の溶湯で1分間超音波処理した後、約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を意味する。
表7において、実験例20である‘合金20’項目は、基本合金に該当し、実験例21である‘合金21’項目は、合金20の合金の溶湯を、800℃で1分間超音波処理した後、約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した場合であり、実験例22である‘合金22’項目は、合金20の合金の溶湯を、設定温度800℃で1時間維持した後、溶湯を約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した場合に該当する。本発明の変形された他の実施例に係るアルミニウム鋳造合金を形成するための鋳造工程は、図2を参照して説明した鋳造工程を適用した。図41は、本発明の変形された他の実施例(表7)において、冷却速度によるアルミニウム鋳造合金の微細組織を撮影した写真である。図41において、Step1は冷却速度が2.2K/secであり、Step2は冷却速度が6.9K/secであり、Step3は冷却速度が16K/secであり、Step4は冷却速度が40K/secである場合を示す。
図41を参照すると、合金20では、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物は観察されるが、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物は観察されないことを確認することができる。
合金20の合金の溶湯を800℃で1分間超音波処理した後、約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した合金21では、冷却速度が10K/sec以上である場合、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物から、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生することを確認することができる。
合金20の合金の溶湯を設定温度800℃で1時間維持した後、溶湯を約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した合金22では、冷却速度が1K/sec以上である場合、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物から、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生することを確認することができる。
図42及び表8は、本発明の変形された他の実施例(表7)によるアルミニウム鋳造合金の鋳造直後の引張特性を示したものである。表8において、UTSは引張強度、YSは降伏強度、ELは延伸率を示す。
図41、図42及び表8を参照すると、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物から、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生することによって、脆性を有するβ-Al5FeSi金属間化合物の分率が減少して、延伸率が増加することを確認することができる。
表9は、本発明の変形された他の実施例(表7)によるアルミニウム鋳造合金のT6熱処理後の引張特性を示したものである。T6熱処理は、溶体化処理と時効処理を順次行う熱処理を意味する。
表9を参照すると、板状を有するβ-Al5FeSi金属間化合物から、中国文字の形状を有するα-AlFeSi金属間化合物に相変化が発生することによって、脆性を有するβ-Al5FeSi金属間化合物の分率が減少して、延伸率が増加するものの、鋳造直後と比較して、T6熱処理を行った場合に強度及び延伸率が増加することを確認することができる。
図43は、本発明の変形された他の実施例(表7)によるアルミニウム鋳造合金のT6熱処理後の電気伝導度特性を示したものである。サンプルの冷却速度は1~2K/sを適用した。
図43を参照すると、合金20の合金の溶湯を設定温度800℃で1時間維持した後、溶湯を約700℃に冷却させ、その後、金型に注入して鋳造する工程を適用した合金22では、電気伝導度特性が著しく改善されることを確認することができる。
以上では、本発明の実施例を中心に説明したが、当業者の水準で様々な変更や変形を加えることができる。このような変更と変形が本発明の範囲を逸脱しない限り、本発明に属するといえる。したがって、本発明の権利範囲は、添付の特許請求の範囲によって判断されなければならない。