JP2024085134A - 連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】連続鋳造方法を提供する。【解決手段】ノズル側壁部10とノズル側壁部の下端に位置する底面部11とが備えられ、ノズル側壁部にはタンディッシュ長手方向に平行かつノズル中心を通る仮想面に対して対称な位置に側面部吐出孔12が一対で設けられ、底面部には1つ以上の底面部吐出孔13が設けられ、側面部吐出孔の開孔面積の和をSS(cm2)とし、底面部吐出孔の開孔面積の和をSB(cm2)とし、底面部のノズル内部側の底面積をS(cm2)としたとき、下記(1)式と下記(2)式を満たす注入ノズルを用い、注入ノズルを下記(3)式及び(4)式を満たすように使用する。0.14≦SB/S…(1)0<SB/(SB+SS)≦0.55…(2)0.15×X+0.13≧{Q×(Sa)1/2/(SS+SB)}…(3)VT/Q>5.4h…(4)【選択図】図1
Description
本発明は、高清浄鋼の連続鋳造方法に関するものであり、特に、取鍋底面部に設けた注入ノズルを介して、取鍋内の溶鋼をタンディッシュに注入する連続鋳造方法に関するものである。
鋼の連続鋳造プロセスにおいて、精錬工程で成分と温度を調整された溶鋼は、耐火物容器である取鍋に貯留された状態で、連続鋳造工程を実施する連続鋳造機まで輸送される。輸送された溶鋼は、連続鋳造機の鋳型に注入されるが、取鍋から直接鋳型に注入すると、溶鋼の流量の制御が難しい。
またその一方で、取鍋を交換しつつ、鋳型に継続的に溶鋼を供給して、鋳造を連続的に行う必要がある。このため、一般的には取鍋の溶鋼は、取鍋の下面に取り付けられた注入ノズルを介して、一旦取鍋下方に位置するタンディッシュと呼ばれる中間容器内に注入され、タンディッシュ内で流量調整された後、鋳型内に供給されている。
タンディッシュは、上述のように流量を制御しつつ溶鋼を鋳型に供給する機能を持つ他に、鋼の精錬時等に不可避的に混入したスラグや、脱酸のために添加されたアルミニウムから生成されるアルミナなどの非金属介在物を、その比重が鋼の比重よりも小さいことを利用してタンディッシュ内で浮上分離させる機能を有している。これにより、溶鋼中に存在する非金属介在物などがそのまま鋳型内に供給されることが防止されて、鋳片に混入する事がなく、非金属介在物などが原因で生じる圧延時の疵や割れなどを抑制できる。
タンディッシュ内の溶鋼湯面上には、溶鋼中から浮上分離した介在物、保温や再酸化防止のためにタンディッシュ湯面上に供給されるタンディッシュフラックス、取鍋から流出した取鍋スラグ(以下、これらをあわせてタンディッシュスラグという場合がある)が存在する。これらはタンディッシュ内の溶鋼流動などにより溶鋼内に巻き込まれると、溶鋼の清浄性を悪化させる場合がある。特にタンディッシュの溶鋼深さが浅く、注入ノズルとタンディッシュ側壁との間の距離が短い場合には、取鍋からの注入流が底面衝突後に側壁を伝う強い上昇流となることで、タンディッシュスラグの巻き込みが生じて溶鋼清浄性を悪化させる原因となる。よってタンディッシュスラグを溶鋼中に巻き込ませないように流動を制御する事も重要である。
特許文献1には、取鍋からタンディッシュへ溶鋼を注入し、このタンディッシュから連続鋳造用鋳型に溶鋼を供給し、鋳片を連続的に鋳造する鋼の連続鋳造方法であって、取鍋の下端に、有底筒状のロングノズルが配設され、このロングノズルを介して、取鍋からタンディッシュへの溶鋼が注入される構成とされており、ロングノズルは、底面部に開口する底面開口孔と、側面に開口する側面開口孔と、を有しており、それぞれの開口孔の比を一定の範囲内としつつ、定常鋳造時における底面開口孔からの溶鋼流出量が3ton/minを超えないように、取鍋からタンディッシュに向けて溶鋼を注入することを特徴とする鋼の連続鋳造方法が記載されている。
しかし、特許文献1に記載の技術では、底面開口孔からの溶鋼注入量が3ton/minを超えないように溶鋼を注入することとされており、底面開口孔からの溶鋼流出量が3ton/minを超える生産量の大きな連続鋳造には適さない場合がある。
社河内敏彦,噴流工学-基礎と応用-,森北出版株式会社,2004年3月24日第1版第1刷発行,pp.30-35
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、タンディッシュ内の溶鋼流動を最適化して介在物の浮上を効果的に促進することが可能な高清浄鋼の連続鋳造方法を提供することを課題とする。
本発明は、特許文献1に記載されたノズルの考え方を基本的に踏襲しつつ、特許文献1では適用外の範囲、即ち、底面部吐出孔からの溶鋼流出量が3ton/minを超える範囲においても、タンディッシュ内の溶鋼流動を最適化して介在物の浮上を効果的に促進する手段を検討した。
そのため、本発明者らは、従来技術の問題点を解決するために、鋭意実験、検討を重ねた。その結果、溶鋼中の非金属介在物の浮上除去の促進をはかり、かつタンディッシュ湯面上に浮上分離された非金属介在物およびタンディッシュスラグの巻き込みによる溶鋼中への流入を防止するためには、最適な注入ノズル形状だけでなく、タンディッシュ内での注入ノズルの配置方法、および溶鋼流量条件があることを見出した。なお、本発明は、溶鋼流出量が3ton/minを超える範囲に限定するものではなく、3ton/min以下の範囲に適用してもよい。
本発明の要旨は、次の通りである。
取鍋内の溶鋼をタンディッシュ内に注入する注入ノズルを使用する連続鋳造方法であって、
前記注入ノズルとして、筒状のノズル側壁部と、前記ノズル側壁部の下端に位置する底面部とが備えられ、前記ノズル側壁部には、前記タンディッシュの長手方向に平行かつノズル中心を通る仮想面に対して対称な位置に、少なくとも2つの側面部吐出孔が一対で設けられ、前記底面部には、1つ以上の底面部吐出孔が設けられ、前記側面部吐出孔の開孔面積の和をSS(cm2)とし、前記底面部吐出孔の開孔面積の和をSB(cm2)とし、前記底面部のノズル内部側の底面積をS(cm2)としたとき、前記底面部の底面積Sに対する底面部吐出孔の開孔面積SBとの比であるSB/Sが下記(1)式の範囲にあり、総開孔面積に対する底面部吐出孔の開孔面積の比であるSB/(SB+SS)が下記(2)式の範囲にある注入ノズルを用い、
前記注入ノズルを、下記(3)式及び(4)式を満たすように使用することを特徴とする連続鋳造方法。
0.14≦SB/S … (1)
0<SB/(SB+SS)≦0.55 … (2)
0.15×X+0.13≧{Q×(Sa)1/2/(SS+SB)} … (3)
VT/Q>5.4h … (4)
ただし、上記(3)式及び(4)式におけるQ(単位:ton/min)は、前記取鍋から前記タンディッシュに溶鋼を注入する際の溶鋼流量である。
上記(3)式におけるX(単位:m)は、前記側面部吐出孔から、溶鋼吐出方向に伸びる直線を引いた場合に、前記側面部吐出孔からタンディッシュ壁面までの距離であり、Sa(単位:cm2)は、対象とする側面部吐出孔の開口面積である。
上記(4)式におけるVT(単位:ton)は、前記タンディシュの溶鋼容量であり、h(単位:m)は、前記タンディッシュのロングノズル浸漬位置における溶鋼深さである。
取鍋内の溶鋼をタンディッシュ内に注入する注入ノズルを使用する連続鋳造方法であって、
前記注入ノズルとして、筒状のノズル側壁部と、前記ノズル側壁部の下端に位置する底面部とが備えられ、前記ノズル側壁部には、前記タンディッシュの長手方向に平行かつノズル中心を通る仮想面に対して対称な位置に、少なくとも2つの側面部吐出孔が一対で設けられ、前記底面部には、1つ以上の底面部吐出孔が設けられ、前記側面部吐出孔の開孔面積の和をSS(cm2)とし、前記底面部吐出孔の開孔面積の和をSB(cm2)とし、前記底面部のノズル内部側の底面積をS(cm2)としたとき、前記底面部の底面積Sに対する底面部吐出孔の開孔面積SBとの比であるSB/Sが下記(1)式の範囲にあり、総開孔面積に対する底面部吐出孔の開孔面積の比であるSB/(SB+SS)が下記(2)式の範囲にある注入ノズルを用い、
前記注入ノズルを、下記(3)式及び(4)式を満たすように使用することを特徴とする連続鋳造方法。
0.14≦SB/S … (1)
0<SB/(SB+SS)≦0.55 … (2)
0.15×X+0.13≧{Q×(Sa)1/2/(SS+SB)} … (3)
VT/Q>5.4h … (4)
ただし、上記(3)式及び(4)式におけるQ(単位:ton/min)は、前記取鍋から前記タンディッシュに溶鋼を注入する際の溶鋼流量である。
上記(3)式におけるX(単位:m)は、前記側面部吐出孔から、溶鋼吐出方向に伸びる直線を引いた場合に、前記側面部吐出孔からタンディッシュ壁面までの距離であり、Sa(単位:cm2)は、対象とする側面部吐出孔の開口面積である。
上記(4)式におけるVT(単位:ton)は、前記タンディシュの溶鋼容量であり、h(単位:m)は、前記タンディッシュのロングノズル浸漬位置における溶鋼深さである。
本発明によれば、取鍋底面に配置された注入ノズルを介して、取鍋内溶鋼をタンディッシュ内に注入させて鋳型へと溶鋼を供給する際に、取鍋からタンディッシュへの注入溶鋼量およびタンディッシュの形状を考慮することにより、取鍋からタンディッシュ内に流入するアルミナ等の脱酸系介在物および取鍋スラグに起因するスラグ系介在物の浮上除去が安定して促進され、タンディッシュ湯面上に浮上分離された前記介在物およびタンディッシュスラグの溶鋼流動に起因する巻き込みを安定して抑制することができる。その結果、非金属介在物の少ない清浄性に優れた高清浄鋼を製造できる。
1.基本的な考え方
取鍋からタンディッシュへの注入ノズルとして、従来の底面部の無い注入ノズルを用いた場合には、注入ノズルからタンディッシュの底面に向かう溶鋼流動が形成される。取鍋から注入ノズルを介して溶鋼をタンディッシュ内に注入する際、非常に大きな乱流エネルギーが生じる。しかし、底面部の無い従来の注入ノズルでは、取鍋から流出した溶鋼は、注入ノズル内に留まらずにまっすぐに通過するように流れる。そして、溶鋼の流れは、タンディッシュの底面に衝突した後に、ノズルの全周方向に拡散するとともに乱流エネルギーも急激に減少する。この場合、溶鋼内の介在物の凝集が十分に行われず、凝集・粗大化されない微細な介在物をタンディッシュ内において浮上させて十分に除去することができない。除去しきれなかった介在物は溶鋼とともに鋳型に流れてしまい、最終的に製造される鋼の品質が低下する。
取鍋からタンディッシュへの注入ノズルとして、従来の底面部の無い注入ノズルを用いた場合には、注入ノズルからタンディッシュの底面に向かう溶鋼流動が形成される。取鍋から注入ノズルを介して溶鋼をタンディッシュ内に注入する際、非常に大きな乱流エネルギーが生じる。しかし、底面部の無い従来の注入ノズルでは、取鍋から流出した溶鋼は、注入ノズル内に留まらずにまっすぐに通過するように流れる。そして、溶鋼の流れは、タンディッシュの底面に衝突した後に、ノズルの全周方向に拡散するとともに乱流エネルギーも急激に減少する。この場合、溶鋼内の介在物の凝集が十分に行われず、凝集・粗大化されない微細な介在物をタンディッシュ内において浮上させて十分に除去することができない。除去しきれなかった介在物は溶鋼とともに鋳型に流れてしまい、最終的に製造される鋼の品質が低下する。
また、タンディッシュ内に貯留された溶鋼湯面は、溶鋼の保温や再酸化防止を目的に意図的に添加される酸化物等の混合物で形成された合成フラックスや焼籾、または不可避的に再酸化によって生じるスラグや取鍋から流入するスラグなどによってその表面が覆われている(以下、これらをタンディッシュスラグという場合がある)。ここで、従来の底面部の無い注入ノズルを用いてタンディッシュ内に溶鋼を供給した場合であって、注入ノズルとタンディッシュの側壁との距離が短い場合は、注入ノズルを出て底面に衝突した溶鋼によって、タンディッシュの側壁を伝う強い上昇流動が形成される。この上昇流がタンディッシュ湯面に到達すると、前述の溶鋼湯面を覆うタンディッシュスラグ等が溶鋼中に巻き込まれてしまい、溶鋼の清浄性を悪化させる。また上昇流動によりタンディッシュ湯面が盛り上がることで裸湯が形成され、再酸化による溶鋼汚染を引き起こしてしまう。
一方、特許文献1に記載された注入ノズルの考え方を基本的に踏襲する本発明では、注入ノズルの底面に底面部を設けて、注入ノズル内において溶鋼の循環流を発生させる。これにより、注入ノズル内において乱流エネルギーの高い状態を持続させることが可能となり、溶鋼中の微細な介在物を凝集・粗大化させて、介在物を浮上分離させることが可能になる。また、注入ノズルに側面部吐出孔と底面部吐出孔を設けて、溶鋼の流れを側面部吐出孔から吐出させる流れと、底面部吐出孔から吐出させる流れとに分配させて、タンディッシュ内での溶鋼の流速を抑制させるようにする。これにより、介在物を充分に浮上させ、溶鋼から介在物を除去させることができる。
ここで、ノズル側面に設けた側面部吐出孔からの吐出流は、タンディッシュの壁面と衝突して壁面を伝う上昇流となり、溶鋼湯面に向かう速い流れを形成して、スラグなどの巻き込みが発生することがある。従って、ノズル形状と、溶鋼の吐出速度と、ノズルの設置位置を適正にする必要があると考える。
つまり、側面に設けた側面部吐出孔から、吐出方向に伸びる直線を引いた場合に、その側面部吐出孔からタンディッシュの壁面までの距離をXとし、取鍋からの溶鋼流量Qと注入ノズルの底面部吐出孔および側面部吐出孔の開口面積の和(SS+SB)との関係を適切に設定することで、スラグの巻き込みをより低減することができると考える。
加えて、ノズル底面に設けた底面部吐出孔からの溶鋼の吐出流は、タンディッシュの底面に介在物を放出するものであるため、溶鋼湯面に浮上しきれずに溶鋼中に残留する介在物が発生するおそれがあることから、適正なタンディッシュ形状を設定して介在物の溶鋼湯面への浮上分離を促す必要があると考える。つまり、タンディシュの溶鋼容量と注入ノズルからの溶鋼流量およびタンディッシュ内のロングノズル浸漬位置における溶鋼深さを適切に設定することで、介在物を浮上分離し鋳型内への混入を防ぐことができる。
2.数値流体解析による検討
上記した基本的な考え方に関し、溶鋼湯面流速増大による介在物またはスラグの巻き込み発生に注目して、特許文献1に記載の注入ノズルを参考にしてFULUENT 14.0(登録商標)を用いた数値流体解析を実施した。
上記した基本的な考え方に関し、溶鋼湯面流速増大による介在物またはスラグの巻き込み発生に注目して、特許文献1に記載の注入ノズルを参考にしてFULUENT 14.0(登録商標)を用いた数値流体解析を実施した。
なお、特許文献1に記載の注入ノズルは、以下の構成を備えている。
特許文献1に記載の注入ノズルは、底面部に開口する底面開口孔と、側面に開口する側面開口孔と、を有しており、底面部の全面積をS(m2)、底面開口孔の面積をSB(m2)、側面開口孔の総開口面積をSS(m2)、定常時におけるノズル内の流速をv(m/s)とした場合に、以下の(i)~(iii)式を満足する。
(i)式:0.14≦SB/S
(ii)式:0<SB/(SB+SS)≦0.55
(iii)式:v2×(S-SB)≧0.0035
特許文献1に記載の注入ノズルは、底面部に開口する底面開口孔と、側面に開口する側面開口孔と、を有しており、底面部の全面積をS(m2)、底面開口孔の面積をSB(m2)、側面開口孔の総開口面積をSS(m2)、定常時におけるノズル内の流速をv(m/s)とした場合に、以下の(i)~(iii)式を満足する。
(i)式:0.14≦SB/S
(ii)式:0<SB/(SB+SS)≦0.55
(iii)式:v2×(S-SB)≧0.0035
以上が、特許文献1に記載されている注入ノズルの、基本的な構成である。但し、本明細書の背景技術の説明部分で述べたように、特許文献1では、底面開口孔、すなわち底面部吐出孔からの溶鋼流出量が3ton/minを超えないようにしなければならず、操業条件に制約が発生する。特に、鋳片の生産量を増加させるため注入ノズルからの溶鋼流量を増加させた場合、不可避的に底面部吐出孔からの溶鋼流出量も増加し、本来の効果を発揮できない。一方で、底面部吐出孔からの溶鋼流量QBを抑えるため側面部吐出孔の面積を大きくした場合、側面部吐出孔からの吐出流により溶鋼湯面のスラグの巻き込みにより介在物が発生する。
本発明者らは、取鍋内の溶鋼をタンディッシュ内に注入させて鋳型へと溶鋼を供給する際に、溶鋼流量およびタンディッシュの形状の影響を考慮に入れることによって、基本的には特許文献1に記載された考え方を踏襲しつつ、注入ノズルからの溶鋼流量を増加した場合でも効果的な連続鋳造方法を知見するに至った。
すなわち、特許文献1に記載された形状の注入ノズルを用いる連続鋳造方法に関して、熱流体解析ソフトFULUENTを用いた数値流体解析を行った。その結果、適正な条件下では、注入ノズルの底面部吐出孔および側面部吐出孔から流出した介在物のいずれも、鋳型に直接流入せずにタンディッシュ内で浮上分離できることが分かった。すなわち、以下に述べる知見を得るに至った。
[1]溶鋼流量およびタンディッシュの形状の影響を考慮に入れた指標
溶鋼流量が大きく、かつノズル側面に設けた側面部吐出孔がタンディッシュの壁面に近いほど、吐出された溶鋼が勢いよくタンディッシュの壁面に衝突することで上昇流を形成し、タンディッシュ湯面流速を増加させる。湯面流速が大きい場合、タンディッシュの湯面に不可避的に浮かぶ介在物やスラグなどが溶鋼に巻き込まれ、溶鋼の清浄性が悪化すると考えられる。そのため、タンディッシュおよびノズル形状に加えて溶鋼流量を適正な値にする必要がある。すなわち、ノズルの側面に設けた側面部吐出孔の吐出方向に伸びる直線上における側面部吐出孔からタンディッシュの壁面間の距離に加えて、溶鋼流量が溶鋼の湯面流速に大きく影響する。
溶鋼流量が大きく、かつノズル側面に設けた側面部吐出孔がタンディッシュの壁面に近いほど、吐出された溶鋼が勢いよくタンディッシュの壁面に衝突することで上昇流を形成し、タンディッシュ湯面流速を増加させる。湯面流速が大きい場合、タンディッシュの湯面に不可避的に浮かぶ介在物やスラグなどが溶鋼に巻き込まれ、溶鋼の清浄性が悪化すると考えられる。そのため、タンディッシュおよびノズル形状に加えて溶鋼流量を適正な値にする必要がある。すなわち、ノズルの側面に設けた側面部吐出孔の吐出方向に伸びる直線上における側面部吐出孔からタンディッシュの壁面間の距離に加えて、溶鋼流量が溶鋼の湯面流速に大きく影響する。
タンディッシュ内の溶鋼の湯面流速は、吐出流がタンディッシュの壁面に衝突する際の速度で決まり、そのタンディッシュの壁面に衝突する際の速度は、溶鋼流量、ノズル側面の側面部吐出孔1つあたりの開孔面積、側面部吐出孔の吐出方向に直線を引いた場合の直線とタンディシュ壁面との交点から吐出孔までの距離が関係すると考えた。
ここで、非特許文献1によると、注入ノズルの吐出流のレイノルズ数が大きい場合、ノズル径d、ノズル出口流速Umとしたときの、ノズルからの距離x(吐出流の行程長さ)での中心流速Ucには、以下の関係が成り立つ。
Uc ∝ d×Um/x … (iv)
すなわち、今回の数値流体解析では、側面吐出孔の開口面積の平方根、吐出孔の開口面積の総和、吐出速度、タンディッシュ壁面との距離によって、タンディッシュの壁面での吐出流の衝突速度が推算できるといえる。
ここで、注入された溶鋼の各孔からの吐出速度Umは、図3に示すように、(溶鋼流量)/(全開口部の開口面積の和)で見積もれることが数値計算より分かった。そうすると、ノズル径:d∝(対象とする側面部吐出孔の開口面積:Sa)1/2、吐出速度:Um ∝(溶鋼流量:Q)/(全開口部の開口面積の和:SS+SB)、タンディッシュ壁面との距離:x∝ 対象とする側面部吐出孔から溶鋼の吐出方向に伸びる直線を引いた場合、その側面部吐出孔からタンディッシュの壁面までの距離:X、より、タンディッシュ壁面での衝突速度:Uc ∝ d×Um/x ∝ (Sa)1/2×{Q/(SS+SB)}/X という比例関係にあることが分かる。
ここで、側面部吐出孔からの溶鋼の吐出方向は、上向きであれば上昇流が形成されることで介在物の浮上分離には良いと考えられるが、一定の上向き角度までは、上記のタンディッシュの湯面に形成される湯面流速と上向き角度との相関性は小さく、巻き込みに与える影響も小さい。
スラグの巻き込みをより低減するためには、タンディッシュの壁面での衝突速度:Ucの値が[(Sa)1/2×{Q/(SS+SB)}/X]というパラメータの所定値(λ)よりも小さいこと、という結論が導かれたことになる。
上記の結論は、[(Sa)1/2×{Q/(SS+SB)}/X]≦λと書き表すことができる。ここで、SB/Sを小さくすることはSBを小さくすることであり、かつ、[(Sa)1/2×{Q/(SS+SB)}/X]を大きくすることである。但し、この指標がλを超えることでスラグ巻き込みが発生することになる。
[2]タンディッシュ容量、タンディッシュへの溶鋼流入量およびタンディッシュ内溶鋼深さを考慮した指標
数値解析より注入ノズルの底面部吐出孔より流出した介在物は、タンディッシュの底面に到達し、溶鋼との密度差によって浮上しながらタンディッシュから鋳型への流出部に向かって移動する。この間に浮上しきれなかった介在物は、鋳型へと流出する。このため、底面部吐出孔からの介在物に対しては、タンディッシュの溶鋼湯面高さを小さくするとともに、タンディッシュが収容可能な溶鋼容量を増やすことで、介在物の浮上分離に必要な時間を確保することが重要と考えた。ここでタンディッシュ内の溶鋼の平均滞留時間はVT/Qで算出され、この時間内に介在物がタンディッシュの底面より浮上して溶鋼湯面に到達すればよい。介在物の浮上速度をvP、タンディッシュの注入ノズル浸漬位置における湯面深さをhとすると、介在物が溶鋼湯面に到達するのに必要な時間は、h/vPで表される。一方、実際のタンディッシュの底面では、注入ノズルからの溶鋼流入を受けてショートパスが生じることから、VT/Qとh/vPに補正値γを掛け合わせて(VT/Q)/(h/vP)>γであれば、ノズルの底面部吐出孔から排出された介在物が直接鋳型に流入することを防ぐことができる。また、介在物の浮上速度vPは、介在物の径、介在物の密度によって決まる固有の値であり、係数δを使って(VT/Q)>γ×h/vP=δ×hと表すことができる。
数値解析より注入ノズルの底面部吐出孔より流出した介在物は、タンディッシュの底面に到達し、溶鋼との密度差によって浮上しながらタンディッシュから鋳型への流出部に向かって移動する。この間に浮上しきれなかった介在物は、鋳型へと流出する。このため、底面部吐出孔からの介在物に対しては、タンディッシュの溶鋼湯面高さを小さくするとともに、タンディッシュが収容可能な溶鋼容量を増やすことで、介在物の浮上分離に必要な時間を確保することが重要と考えた。ここでタンディッシュ内の溶鋼の平均滞留時間はVT/Qで算出され、この時間内に介在物がタンディッシュの底面より浮上して溶鋼湯面に到達すればよい。介在物の浮上速度をvP、タンディッシュの注入ノズル浸漬位置における湯面深さをhとすると、介在物が溶鋼湯面に到達するのに必要な時間は、h/vPで表される。一方、実際のタンディッシュの底面では、注入ノズルからの溶鋼流入を受けてショートパスが生じることから、VT/Qとh/vPに補正値γを掛け合わせて(VT/Q)/(h/vP)>γであれば、ノズルの底面部吐出孔から排出された介在物が直接鋳型に流入することを防ぐことができる。また、介在物の浮上速度vPは、介在物の径、介在物の密度によって決まる固有の値であり、係数δを使って(VT/Q)>γ×h/vP=δ×hと表すことができる。
上記[1]、[2]で示した関係について調査するため、SB/(SS+SB)=0.22、SB/S=0.21の注入ノズルを用いて、FLUENTでの計算を実施した。開口面積SSを構成する側面部吐出孔は4個であり、それらの孔形状は縦100mm×横70mmの同一形状である。次に、開口面積SBを構成する底面部吐出孔は1個であり、その孔径は100mmである。この注入ノズルを用いて、タンディッシュの形状を長さ6m、幅2m、溶鋼深さ1.0mとして、密度7000kg/m3の溶鋼を密度3000kg/m3、直径100μmの介在物とともに注入し、タンディッシュから流出する介在物の量を算出した。その結果、下記の(3)式及び(4)式の条件を満たす場合に、注入ノズルからの溶鋼流入量によらず、介在物が鋳型にほとんど流出しないことが分かった。
0.15×X+0.13≧{Q×(Sa)1/2/(SS+SB)}・・・(3)
VT/Q>5.4h・・・(4)
以下、本実施形態の連続鋳造方法および連続鋳造方法に適用可能な注入ノズルについて説明する。
図1は、本実施形態の注入ノズル及びタンディッシュを示す縦断面模式図である。図2は、本実施形態の注入ノズルを示す模式図であって、(a)は側面図であり、(b)は(a)のAA’線の断面図であり、(c)は(b)のBB’線の断面図であり、(d)は(b)のCC’線の断面図である。また、図3は、本実施形態の注入ノズルとタンディッシュとの位置関係を示す模式図である。
取鍋1の底面側に、本実施形態に係る注入ノズル9が備えられており、この注入ノズル9は、取鍋1の底面に設けられたスライディングゲート21の下側プレート7の下面に固定される下ノズル8に接続されている。
スライディングゲート21は、下側プレート7と、下側プレート7の上側(取鍋側)に配置された上側プレート6とを有している。上側プレート6の上部が、取鍋1の底部の流出孔1aに設けられたテーパー状の羽口ノズル5に固定されている。また、下側プレート7は油圧シリンダーとロッドによってスライドし、溶鋼の注入量を調節する構造となっている。
羽口ノズル5には貫通孔5aが形成され、上側プレート6、下側プレート7、下ノズル8にも各々貫通孔が形成されている。なお取鍋1の底部は、内側から順にウエアレンガ4、パーマレンガ3、鉄皮2で構成されている。
タンディッシュ15には、図1に示すように、注入ノズル9が下方向に向けて挿入される。この注入ノズル9より、上方の取鍋1からタンディッシュ15内に溶鋼を供給することができる。タンディッシュ15に流入した溶鋼はタンディッシュ15内を滞留した後にタンディッシュ下部に設置された浸漬ノズルを介して鋳型へと供給される。また、タンディッシュ15に貯留される溶鋼Mの湯面は、図示略のタンディッシュスラグによって覆われている。
次に、注入ノズル9の構造について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、注入ノズル9は、筒状のノズル側壁部10と、ノズル側壁部10の下端に位置する底面部11とが備えられている。
図1及び図2に示すように、注入ノズル9は、筒状のノズル側壁部10と、ノズル側壁部10の下端に位置する底面部11とが備えられている。
ノズル側壁部10は、下ノズル8から続く上部10aと、上部10aから続き内径が下方に行くほどテーパー状に広がる中間部10bと、中間部10bから続き円筒形状を有する下部10cとを有している。下部10cに側面部吐出孔12が設けられている。図2に示す例では、側面部吐出孔12が4つ設けられているが、側面部吐出孔12の個数は2つ以上であれば特に限定されない。
注入ノズル9の底面部11は、ノズル側壁部10の下部の下端に接続されている。底面部11には、底面部吐出孔13が設けられている。図1に示す例では底面部吐出孔13は1つだが、底面部吐出孔13は底面部11に複数設けてもよい。底面部11は、ノズル側壁部10の下端から水平方向に向けて底面部吐出孔13を囲むように突出している。この構成により、底面部吐出孔13の開口面積は、ノズル側壁部の下部の開口断面積よりも小さくされている。取鍋1から注入ノズル9に移動した溶鋼は、そのまま全部が底面部吐出孔13から吐出されず、一部が底面部11に当たってノズル内を循環する流れが生じる。
さらに、図1に示すように、注入ノズル9からタンディッシュ15に吐出される溶鋼流内に、直径がサブミリからミリ単位の微細な気泡20を混入させてもよい。気泡20を混入させると、その個数が非常に多くかつ単独の浮力では浮上分離し難い微小な介在物が気泡に付着し、この気泡20の浮力によって、これらの微小な介在物の分離、浮上を飛躍的に高める事が出来る。ただし、溶鋼は耐火物に対して濡れにくいため、多孔質煉瓦を通じて溶鋼中にガスを吹き込んでも微細な気泡を得る事が出来ない。
そこで、注入ノズル9内において溶鋼の注入流の周囲にガス空間Gを形成し、取鍋からの溶鋼の注入流Fが注入ノズル9内の溶鋼表面Sに衝突した際に、周囲のガスを巻き込んで、直径がサブミリからミリ単位の径の微細な気泡20を形成させるとよい。
注入ノズル9の内部にガス空間Gを形成させるためには、注入ノズル9の内部に不活性ガスを供給するとよい。具体的には、ノズル側壁部10の上端側にガス供給孔を設けて注入ノズル9内に不活性ガスを供給してもよく、ノズル側壁部10の上端と下端の間のいずれかの位置にガス供給孔を設け、そこから注入ノズル9内に不活性ガスを供給してもよい。不活性ガスの供給位置は、注入ノズル9内の溶鋼表面Sよりも高い位置とすることが、微細な気泡20を形成できる点で望ましい。
注入ノズル9内で生成した微細な気泡20は注入ノズル9に設けられた側面部吐出孔12またはノズル底面部の底面部吐出孔13からタンディッシュ15内に流出するが、気泡20の浮力により全てタンディッシュ15内にて浮上するために、これらが鋳型まで到達してピンホール等の欠陥に繋がることはない。
ところでタンディッシュ15内に貯留された溶鋼湯面は、前述したように、タンディッシュスラグに覆われている。タンディッシュスラグは、溶鋼の保温や再酸化防止を目的に意図的に添加される酸化物等の混合物で形成された合成フラックスや、焼籾、または不可避的に再酸化によって生じる酸化物や取鍋から流入するスラグなどからなる。
ここで、底面部を有しない従来の注入ノズルを用いてタンディッシュ内に溶鋼を供給すると、先に説明したように、注入ノズルを出てタンディッシュの底面部に衝突した溶鋼がタンディッシュの側壁を伝う強い上昇流動が形成される。その上昇流がタンディッシュ湯面に到達すると、前述のタンディッシュスラグを溶鋼中に巻き込んでしまい、溶鋼の清浄性を悪化させる。また上昇流動によりタンディッシュ湯面が盛り上がることで裸湯を形成して、再酸化による溶鋼汚染を引き起こしてしまう。したがって注入ノズルの形状およびその配置については適正なものを選択する必要がある。
そこで注入ノズル内の乱流エネルギーの活用による介在物同士または介在物と気泡の凝集合体促進および溶鋼汚染を引き起こさない溶鋼流動制御を行うためには、以下の注入ノズル形状とすることが有効である。
すなわち、側面部吐出孔12の開孔面積の和をSSとし、底面部吐出孔13の開孔面積の和をSBとし、底面部11のノズル内部側の底面積をSとしたとき、底面部11の底面積Sに対する底面部吐出孔13の開孔面積SBとの比であるSB/Sを下記(1)式の範囲とする。また、総開孔面積に対する底面部吐出孔の開孔面積の和の比であるSB/(SS+SB)を下記(2)式の範囲とする。
0.14≦SB/S … (1)
0<SB/(SB+SS)≦0.55 … (2)
0<SB/(SB+SS)≦0.55 … (2)
SB/Sが0.14未満では、相対的に底面部吐出孔13の開口面積が小さくなり、ノズル内における乱流エネルギーを高位にすることは出来るが、ノズル側壁部10に設けた側面部吐出孔12からの溶鋼の流速が大きくなり、これによりタンディッシュスラグの巻き込みが生じてしまう。SB/Sの上限は特に設定する必要はないが、0.80以下にするとよい。これにより、ノズル内の乱流エネルギーが十分になり、凝集合体促進効果を得る事が出来る。
SB/(SS+SB)が0では、底面部吐出孔13の開口面積が0になり、側面部吐出孔12からの溶鋼の吐出流速が大きくなりすぎてしまい、タンディッシュ湯面におけるタンディッシュスラグの巻き込みや再酸化による溶鋼汚染を引き起こしてしまう。一方、SB/(SS+SB)が0.55を超えると、底面部吐出孔13の開口面積が相対的に過大になって、底面部吐出孔13からの溶鋼の吐出流速が大きくなり、従来ノズルと同様の流動状態となり、溶鋼の乱流エネルギーが減少して介在物の凝集が進まずに介在物の浮上性が低下し、溶鋼の清浄性が悪化する。
次に、図3(a)には、本実施形態に係る注入ノズル9をタンディッシュ15に挿入した際の挿入位置を平面図で示す。図3(a)では、注入ノズル9の横断面を示している。また、図3(a)における符号18は、タンディッシュ15の側壁である。タンディッシュ15内において注入ノズル9は、側面部吐出孔12の一つが、タンディッシュ15の側壁に向けられている。
そして、本実施形態の連続鋳造方法では、図3(a)に示すように、側面部吐出孔12から、溶鋼吐出方向に伸びる直線を引いた場合に、側面部吐出孔12からタンディッシュの壁面までの距離をX(単位:m)とし、取鍋1からタンディッシュ15に溶鋼を注入する際の溶鋼流量をQ(単位:ton/min)とし、対象とする側面部吐出孔12の開口面積をSa(単位:cm2)とした場合に、下記(3)式を満たす必要がある。
また、図3(b)には、本実施形態に係る注入ノズル9をタンディッシュ15に挿入した際の挿入位置を側面模式図で示す。図3(b)では、注入ノズル9の縦断面を示している。また、図3(b)では、取鍋1から注入ノズル9を介してタンディッシュ15に溶鋼Mを注入している状態を示している。図3(b)に示すように、タンディシュ15の溶鋼容量をVT(単位:ton)とし、取鍋1からタンディッシュ15に溶鋼を注入する際の溶鋼流量をQ(単位:ton/min)とし、タンディッシュ15のノズル浸漬位置における溶鋼深さをh(単位:m)としたとき、下記(4)式を満たす必要がある。
0.15×X+0.13≧{Q×(Sa)1/2/(SS+SB)} … (3)
VT/Q>5.4h … (4)
VT/Q>5.4h … (4)
上述したように、上記式(3)及び(4)を満足するように連続鋳造を行うことで、注入ノズル9からの溶鋼流入量によらず、介在物が鋳型にほとんど流出させないようにすることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、注入ノズル9を介して、取鍋1内の溶鋼をタンディッシュ15に注入させて鋳型へと溶鋼を供給する際に、取鍋1からタンディッシュ15への注入溶鋼量およびタンディッシュの形状を考慮することで、取鍋1からタンディッシュ15内に流入するアルミナ等の脱酸系介在物および取鍋スラグに起因するスラグ系介在物の浮上除去が安定して促進され、タンディッシュ湯面上に浮上分離された介在物およびタンディッシュスラグの溶鋼流動に起因する巻き込みを安定して抑制することができる。その結果、非金属介在物の少ない清浄性に優れた高清浄鋼を製造できる。
前記した結論を確かめるために、転炉-二次精錬工程を経た溶鋼を、表1A~表5Bに示す種々の注入ノズルを用いて、タンディッシュ内に注湯した後、連続鋳造機にて鋳造して鋳片とした。溶鋼は、C濃度0.2質量%のアルミキルド鋼を使用し、タンディッシュ内に供給した。
注入ノズルは(1)式、(2)式を満たすものを使用した。ノズルの上部に相当する直胴部の内径は100mmとし、下部の内径は220mmとした。上部と下部との間にはテーパー状に広がる中間部を設けた。ノズルの底面部には底面部吐出孔を1個設け、側面部には側面部吐出孔を2個または4個設けた。このような注入ノズルを21種類用意した。
側面部吐出孔の合計面積SSは、364cm2~140cm2であり、底面部吐出孔の面積SBは95cm2とし、底面部の面積Sは380cm2とし、側面部吐出孔の角度を上向き30度から0度の範囲とした。タンディッシュはNo.1~No.3を使用し、溶鋼容量VTをそれぞれ90ton、65ton、44tonとした。また、タンディッシュNo.1~No.3についてそれぞれ、ノズル浸漬地点における溶鋼深さhを1m、0.85m、0.7mとした。溶鋼流量Qは、16ton/min、14ton/min、12ton/min、10ton/minとした。
取鍋容量300tの溶鋼の連々鋳を行い、幅1600mm、厚み250mm鋳片を製造した。鋳片の幅中央から400mm、鋳片L面表層から40mmの深さの位置にある介在物の集積帯位置から、60×40×40mmのサンプルを切り出して30μm以上の大きさの非金属介在物を捕集する網の中で、塩化第一鉄水溶液中で約400~500g電気分解を行って非金属介在物を電解抽出しスライムとして捕集した。捕集したスライムを水簸(水洗しながら非金属介在物のみを分離捕集すること)、分級したのちに、鋼製品の欠陥原因となると考えられる100μm以上の介在物の個数を測定した。
図4に、底面部吐出孔からの溶鋼流量QBが3ton/minを超え、かつ、VT/Q>5.4hを満たす条件において、縦軸に(Sa)1/2×{Q/(SS+SB)をとり、横軸にXをとり、介在物個数が15個/kg超のものと、15個/kg以下のものの関係を評価した。事前に検討したように、縦軸の(Sa)1/2×{Q/(SS+SB)の値が小さく(即ち、「対象吐出孔の孔径」と「全吐出孔の面積当たりの溶鋼流量」との積が小さいほど)、かつ、横軸のXの値が大きい場合(即ち、対象吐出孔からタンディッシュ内壁までの吐出溶鋼の到達距離が長いほど)、介在物が少ない。すなわち、(3)式の関係を満たす場合に、介在物の少ない鋳片が得られた。
図5に、底面部吐出孔からの溶鋼流量QBが3ton/minを超え、かつ、(3)式を満たす条件において、縦軸にVT/Qをとり、横軸にhをとり、介在物個数が15個/kg超のものと、15個/kg以下のものの関係を評価した。事前に検討したように、横軸のhの値が小さく、かつ、横軸のVT/Qの値が大きい場合、介在物が少ない。すなわち、(4)式の関係を満たす場合で介在物の少ない鋳片が得られた。
図6に、縦軸に100μm超介在物個数密度を、横軸に底面部吐出孔からの溶鋼流量QBをとり、(3)、(4)式を満たす条件、(3)式を満たし(4)式を満たさない条件、(3)式を満たさず(4)式を満たす条件にわけて関係を評価した。(3)あるいは(4)式を満さない条件では、底面部吐出孔からの溶鋼流量QBが3ton/minを超えると100μm超介在物個数密度が大きく増加したのに対して、(3)、(4)式を満たす条件では、底面部吐出孔からの溶鋼流量QBが3ton/minを超えても100μm超介在物個数密度は非常に小さい値で推移した。
すなわち、(1)式と(2)式を満足する注入ノズルを、(3)、(4)式を満足するように用いることによって、吐出流がタンディッシュの壁面に衝突することで強い上昇流を作りスラグの巻き込みが発生する現象を抑制し、この注入ノズル本来の介在物浮上効果と相俟って溶鋼清浄化効果を発揮することが確かめられた。
1…取鍋、1a…取鍋流出孔、2…鉄皮、3…パーマレンガ、4…ウェアレンガ、5…羽口ノズル、5a…貫通孔、6…上側プレート、7…下側プレート、8…下ノズル、9…注入ノズル、10…ノズル側壁部、10a…上部、10b…中間部(テーパー状)、10c…下部、11…底面部、12…側面部吐出孔、13…底面部吐出孔、15…タンディッシュ、16…底壁、17…短辺壁、18…長辺壁、19…天井壁、20…気泡、21…スライディングゲート、M…溶鋼、F…取鍋からの溶鋼の注入流、S…注入ノズル内の溶鋼表面、G…注入ノズル内部のガス空間、O…ノズル中心。
Claims (1)
- 取鍋内の溶鋼をタンディッシュ内に注入する注入ノズルを使用する連続鋳造方法であって、
前記注入ノズルとして、筒状のノズル側壁部と、前記ノズル側壁部の下端に位置する底面部とが備えられ、前記ノズル側壁部には、前記タンディッシュの長手方向に平行かつノズル中心を通る仮想面に対して対称な位置に、少なくとも2つの側面部吐出孔が一対で設けられ、前記底面部には、1つ以上の底面部吐出孔が設けられ、前記側面部吐出孔の開孔面積の和をSS(cm2)とし、前記底面部吐出孔の開孔面積の和をSB(cm2)とし、前記底面部のノズル内部側の底面積をS(cm2)としたとき、前記底面部の底面積Sに対する底面部吐出孔の開孔面積SBとの比であるSB/Sが下記(1)式の範囲にあり、総開孔面積に対する底面部吐出孔の開孔面積の比であるSB/(SB+SS)が下記(2)式の範囲にある注入ノズルを用い、
前記注入ノズルを、下記(3)式及び(4)式を満たすように使用することを特徴とする連続鋳造方法。
0.14≦SB/S … (1)
0<SB/(SB+SS)≦0.55 … (2)
0.15×X+0.13≧{Q×(Sa)1/2/(SS+SB)} … (3)
VT/Q>5.4h … (4)
ただし、上記(3)式及び(4)式におけるQ(単位:ton/min)は、前記取鍋から前記タンディッシュに溶鋼を注入する際の溶鋼流量である。
上記(3)式におけるX(単位:m)は、前記側面部吐出孔から、溶鋼吐出方向に伸びる直線を引いた場合に、前記側面部吐出孔からタンディッシュ壁面までの距離であり、Sa(単位:cm2)は、対象とする側面部吐出孔の開口面積である。
上記(4)式におけるVT(単位:ton)は、前記タンディシュの溶鋼容量であり、h(単位:m)は、前記タンディッシュのロングノズル浸漬位置における溶鋼深さである。
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