JP2024066198A - 生体分子自動検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】小型で取り扱い性に優れ、かつ高速処理可能な生体分子検査自動化装置を提供することである。【解決手段】マイクロチューブ、試料ホルダー、試料移送機構、生体分子検知機構、試料ホルダー移送機構および制御機構を有し、試料移送機構は採液ピン、治具、第1の電動ステージ、柔軟性に富むチューブおよびポンプを具備し、検知機構は検査チップ、画像取得装置、対物レンズを有する光学系、照明光学系からなる一体配置の1つの像検出装置、光源および信号処理装置を具備し、像検出装置の移動手段を備え、検知機構は光源からの光が前記光学系を介してメタ表面をもつ検査チップの検査面に照射され、試料の蛍光が前記光学系を介して画像取得装置に取り込まれ、信号処理装置にて信号解析される構成になっており、制御機構は第1の電動ステージの駆動、ポンプの駆動、光照射の制御および信号解析の制御を行う。【選択図】 図1

Description

本発明は、生体分子自動検出装置に関する。
医療の高度化、効率化要求に伴い、体外診断検査などで、生体分子を自動化して検出する装置の需要が高まっている。
医療用の検査装置としては、たんぱく質対象のエライザ法や核酸対象のPCR法などの手法を用いたものが多用されているが、人為操作を必要とするものが多く、また、精度、感度の高さを追求した高額な装置も多い。
このような背景から、小型で取り扱い性が優れ、廉価な生体分子自動検出装置が嘱望されていた。なお、生体分子検査装置としては、例えば、特許文献1~3に開示がある。
特開2007-248159号公報 特開2010-8107号公報 特開2015-55568号公報 国際公開2021/131331
Rudolf Gesztelyi,et al.,The Hill equation and the origin of quantitative pharmacology,Arch. Hist. Exact Sci.(2012)66:427-438,DOI 10.1007/s00407-012-0098-5.
本発明は、小型で取り扱い性に優れ、感度が高く、かつ高速処理可能な全自動測定の生体分子検査装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための本発明の構成を以下に示す。
(構成1)
マイクロ流路に内包される被測定試料に光を当てて前記被測定試料から発せられる蛍光を検知する検査チップを搭載した生体分子検出装置であって、
前記生体分子検出装置は、被測定試料を入れるマイクロチューブ、前記マイクロチューブを収める試料ホルダー、前記マイクロチューブ内に保持された前記被測定試料を前記検査チップに送る試料移送機構、生体分子を検知する検知機構、試料ホルダー移送機構、および制御機構を有し、
前記マイクロチューブは、採液ピンで貫通することが可能な蓋を有し、前記被測定試料を前記マイクロチューブ内に密閉して保持することが可能な構造であり、
前記試料ホルダーは、複数の前記マイクロチューブを列状または行列状に載置可能なホルダーであり、
前記試料移送機構は、前記採液ピン、前記採液ピンを保持する治具、前記治具と前記試料ホルダーの間隔(Z方向)を変化させる第1の電動ステージ、耐薬性を備えて柔軟性に富むチューブ、およびポンプを具備し、
前記チューブは、前記採液ピンから前記ポンプを介して前記検査チップに接続されて、前記ポンプの駆動によって前記採液ピンから吸引された被測定試料が前記検査チップに移送される構成になっており、
前記検知機構は、前記検査チップ、画像取得装置、対物レンズを有する光学系、照明光学系、前記光を発する光源、および前記画像取得装置からの信号を解析処理する信号処理装置を具備し、
前記検知機構は、前記光源から発せられた光が前記照明光学系を介して前記検査チップの検査面に照射され、前記検査面から発せられる蛍光が前記対物レンズを有する光学系を介して前記画像取得装置に取り込まれ、前記画像取得装置からの信号が前記信号処理装置に送られて信号解析される構成になっており、
前記検査チップは、メタ表面を有する第1の基板と、
前記第1の基板と対向して位置し、マイクロ流路を有する第2の基板とを備え、
前記メタ表面は、検出されるべき生体分子の固定を効率化する間隙を有すると共に、前記生体分子が発する蛍光の波長範囲を含む領域において蛍光増強を示し、
前記第2の基板は、前記光を透過する材料からなり、
前記第1の基板と前記第2の基板との間で前記蛍光が共振する検査チップであり、
前記画像取得装置および前記対物レンズを有する光学系は、一体で配置された1つの像検出装置になっており、
前記像検出装置の位置を移動させる像検出装置移動手段が具備されており、
前記像検出装置移動手段は、第2の電動ステージによって一列状の方向(X方向)に沿って前記像検出装置の位置を移動させることができ、
前記試料ホルダー移送機構は、前記試料ホルダーと前記採液ピンの相対位置をY軸方向に沿って変える第3の電動ステージを有し、
前記制御機構は、前記第1の電動ステージの駆動、前記ポンプの駆動、前記光の前記検査面への照射の制御、前記第2の電動ステージの駆動、前記第3の電動ステージの駆動、および前記画像取得装置の信号解析の制御を行う、生体分子検出装置。
(構成2)
前記検査チップは複数からなり、離散的に配置されている、構成1に記載の生体分子検出装置。
(構成3)
前記一体で配置された1つの像検出装置は、前記画像取得装置、前記対物レンズを有する光学系、前記照明光学系、および前記光源からなる、構成1または2に記載の生体分子検出装置。
(構成4)
前記メタ表面は、金属の周期的相補的積層構造またはナノロッドアレイ構造である、構成1から3の何れか1つに記載の生体分子検出装置。
(構成5)
前記第1の基板と前記第2の基板とにより形成されるマイクロ流路の高さは、10μm以上100μm以下の範囲である、構成1に記載の生体分子検出装置。
(構成6)
前記第1の基板と前記第2の基板とにより形成されるマイクロ流路の高さは、15μm以上50μm以下の範囲である、構成5に記載の生体分子検出装置。
(構成7)
前記マイクロ流路の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる、構成1から6の何れか1つに記載の生体分子検出装置。
(構成8)
前記メタ表面は、前記金属の周期的相補的積層構造であり、
前記金属の相補的積層構造は、基材と、前記基材の表面に位置するスラブ材と、少なくとも前記スラブ材上に位置する金属材料とを含み、
前記基材は、少なくとも前記スラブ材と接する表面層を備え、
前記スラブ材は、前記表面層の屈折率よりも高い屈折率を有する材料からなると共に、その表面から前記基材の前記表面層に達する、周期的に配列した複数の穴を有し、
前記金属材料は、前記スラブ材の表面、および、前記複数の穴の底面を形成する前記基材の表面層上にそれぞれ位置する、構成4に記載の生体分子検出装置。
(構成9)
前記メタ表面は、ナノロッド構造であり、
前記ナノロッド構造は、基材と、前記基材の表面に周期的に起立する複数のナノロッドとを備え、
前記基材は、前記複数のナノロッドの屈折率よりも小さい屈折率を有する材料からなる、構成1から7の何れか1つに記載の生体分子検出装置。
(構成10)
前記第1の電動ステージを駆動させて、前記採液ピンのピン先が、前記蓋を貫通して、前記マイクロチューブ内に保持された前記被測定試料を予め定めた所定量吸引可能な位置に到達するまで下降させ、
前記ポンプを駆動させて、前記被測定試料を前記検査チップに移送させ、
前記光源、および前記照明光学系を介して前記検査面への光照射を行い、
前記検査面からの前記蛍光を、前記対物レンズを有する光学系を介して前記画像取得装置で受光し、前記信号処理装置による信号強度分析の制御を行う、構成1から9の何れか1つに記載の生体分子検出装置。
(構成11)
前記チューブおよび前記検査チップの数は、複数からなる前記採液ピンの数と等しい、構成1から10の何れか1つに記載の生体分子検出装置。
(構成12)
前記試料ホルダーの前記マイクロチューブの配置周期は、前記マイクロチューブの直径の1.2倍以上2.1倍以下である、構成1から11の何れか1つに記載の生体分子検出装置。
本発明によれば、小型で取り扱い性に優れ、広いダイナミックレンジを有しながら感度が高く、かつ高速処理可能な生体分子検査装置が提供される。この装置を用いれば、体外診断検査などにおける生体分子検出を自動化することができ、検出に要する人的負担の大幅な低減、工程の短時間化および検出結果の定量性向上が実現される。
本発明の検査装置の全体構成を示す説明図である。 本発明の試料移送機構の構成を示す説明図である。 本発明の試料移送機構の構成を示す説明図である。 本発明の検知機構の構成を示す説明図である。 本発明の検知機構の構成を示す説明図である。 本発明の蛍光検出用生体分子検査チップを示す模式図である。 本発明の蛍光検出用生体分子検査チップを用いた検出原理を示す模式図である。 金属の相補的積層構造を有するメタ表面の模式図である。 ナノロッド構造を有するメタ表面の模式図である。 実施例1の検査装置の概要を示す鳥観図である。 実施例における被測定試料採取部の構造を示す断面構造図である。 実施例1の検査チップが配置された基板の外観を示す図である。 実施例1の検査チップホルダーの外観を示す図である。各チップには柔軟なチューブが接続されており、中央のスポットには光源(LED)からの光が集光されて照射されている。。 実施例1:検出標的としてDNAを用いたときの検査チップ検出面蛍光画像取得結果を示す画像である。 実施例2:検出標的としてDNAを用いたときの検査チップ検出面蛍光画像取得結果を示す画像である。 実施例3:検出標的としてcDNAを用いたときの検査チップ検出面蛍光画像取得結果を示す画像である。 実施例3:標的濃度と蛍光強度の関係を示す特性図である。 実施例3:共焦点光学系におけるcDNAの検出結果と解析を示す。 実施例4:検出標的としてPSAを用いたときの検査チップ検出面蛍光画像取得結果を占める画像である。
以下本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略することがある。また、文章中のA~Bは、A以上B以下を表す。
(実施の形態1)
実施の形態1の生体分子検出装置1は、マイクロ流路を有する検査チップに光を当てて、検査チップの検査面に捉えられた被検査試料から発せられる蛍光を測定して生体分子を検出、測定する生体分子検出装置であって、図1に示すように、試料を入れるマイクロチューブ11を収める試料ホルダー12、試料を試料ホルダー12から検査チップに移送する機能をもつ試料移送機構13、生体分子を検知する検知機構14、および試料移送機構13および検知機構14および試料ホルダー移送機構15の制御を行う制御機構16からなる。
マイクロチューブ11は、採液ピン201で貫通することが可能な蓋を有し、50μL程度の量の被測定試料をマイクロチューブ11内に密閉して保持することが可能な容器である。ここで、蓋は、採液部分と物理的に干渉することなく、常に動作することが必要である。
一般に、マイクロチューブの蓋は、被測定試料の蒸発を防ぐため、厚いポリプロピレン製で作製されている。この場合、採液ピン201の針先で蓋を貫通させることは容易ではなく、機械強度的には電動ドリルが必要になるほどである。しかし、電動ドリルは削りくずを出すため被測定試料を汚染するので使用できない。
この課題を解決するため、直径1.5mm以上7mm以下にくり抜かれ、その上にアルミ箔が張られたマイクロチューブ専用の押さえ蓋を使用することが好ましい。アルミ箔を押し込むことでマイクロチューブの口を塞ぎ密閉状態を作り、なおかつ採液ピンで容易に貫通して採液することが可能になる。
試料ホルダー12は、複数のマイクロチューブ11を列状または行列状に載置可能なホルダーである。ここで、操作性を損なわずにパッキングデンシティを高めて装置を小型化する上で、マイクロチューブ11の配置周期はマイクロチューブ11の直径の1.2倍以上2.1倍以下とすることが好ましい。
試料移送機構13は、図2に示すように、採液ピン201、採液ピン201を保持する治具202、治具202と試料ホルダー12との間隔を変化させる、すなわち治具202と試料ホルダー12の相対位置を鉛直方向(Z軸方向)に変化させる第1の電動ステージ203、柔軟性に富むチューブ204、およびポンプ205を具備する。
チューブ204は、採液ピン201からポンプ205を介して検査機構14内に収められた検査チップ(図示なし)に接続されて、ポンプ205の駆動によって採液ピン201から吸引された被測定試料が検査チップに移送される構成になっている。なお、ポンプ205は必ずしも採液ピン201と検査機構14の間に置かれている必要はなく、図3に示すように検査機構14の後に備えられていてもよい。
ここで、採液部分から検査機構14、ポンプ205へ至る流路長は短いほど、送液時間を短時間化できるため好ましい。なお、採液ピン201は、被測定試料が少量であるため、底面付近の試薬の採液に失敗しないために採液部分がマイクロチューブ11の底の直前まで到達するストロークを有する必要がある。採液ピン201は、最小40mm上下動するため、その可動範囲を考慮して接続チューブを設置する必要がある。この採液ピン201に接続するチューブ204の内径は、試料を含む薬液の使用量を少なくするという観点と一定以上の薬液の供給流速を確保するという観点から、0.5mm以上2mm以下とすることが好ましい。
チューブ204の材質としては、耐薬性があり柔軟性がある材料であれば用いることができ、例えばポリ塩化ビニール、シリコンゴム、ポリアミド、ポリウレタンエラストマー、パーフルオロアルコキシルアルカンポリマー、パーフルオロエチレンプロペンコポリマーおよびポリオレフィンを挙げることができる。この中でも、酸性、アルカリ性の両方の薬液に対して耐性があり、コストも低いポリ塩化ビニール製チューブが特に適している。ここで、検査チップから小型ポンプに至る経路に関しては、圧縮動作により液流を作り出すため、伸縮性と耐久性に優れたシリコンゴムチューブが適している。
ポンプ205としては、小型化が容易な圧縮送液型ポンプを好んで用いることができる。薬液の使用量が少量なため、圧縮式の中でも、ロータリーポンプを特に好んで用いることができる。
また、ポンプ205は多様な測定条件に対応するため、8μL/分以上100μL/分以下の範囲で定量的に流速を保って送液できることが好ましく、ポンプ205で並行して送液する各チャンネルに流速差がない状態で送液できることが好ましい。
検知機構14は、図4に示すように、検査チップ100、画像取得装置511、対物レンズ521、照明光学系531、波長選択フィルタ532、光源541、および画像取得装置511からの信号を解析処理する信号処理装置550を具備する。そして、検知機構14は、光源541から発せられた光533が照明光学系531および532による反射を介して検査チップ100の検査面110上面に照射され、前記検査面から発せられる蛍光が対物レンズ521を介して集光され、532により選択的に透過されて画像取得装置511に取り込まれ、画像取得装置511からの信号が信号処理装置550に送られて信号解析される構成になっている。また、画像取得装置511、および結像光学系等対物レンズを有する光学系521および532は、一体で配置された1つの像検出装置510になっており、像検出装置510の位置を移動させる像検出装置移動手段が具備されている。前記像検出装置移動手段は、第2の電動ステージによって検査チップ100が配列された方向(X方向)に沿って像検出装置510の位置を移動させることができる構成になっている。
ここで、光源541および照明光学系は、図4に示すように、コリメータレンズ531を用いて光線533を平行光とすることにより、照明光学系の一部と光源を一体として移動可能な像検出装置510と分けて固定して使用することもできるし、図5に示すように、光源541およびレンズ531aおよびハーフミラー532aからなる照明光学系も像検出装置510に一体として組み込んだ構成とすることもできる。前者である図4に示す構成は、特に照度の高い照明を行う場合に有効であり、後者である図5に示す構成の場合は、光源541として小型、軽量および発熱量の少ないのLEDや半導体レーザ光源を用いることにより、装置全体の小型化が容易になるという特徴を有する。
光源541は、蛍光分子の励起波長に合わせて選択し、検査チップ100の検査面での光パワーを1mW以上確保するために出力2mW以上であることが好ましい。なお、光源541の発熱、消費電力の問題から、その出力の上限は、LEDの場合は10mW以下に抑えておくことが好ましい。
光源541としては、LED、半導体レーザ、波長選択可能なレーザおよび波長選択可能な白色光源を挙げることができる。この中でも、小型・軽量で、重量当たりの輝度が高いLEDは特に好んで用いることができる。
照明光学系としては、図4に示すような対物レンズ521とコリメータレンズ531、波長選択フィルタ532などの集光光学系を組み合わせた光学系や図5に示すような集光レンズ531aとハーフミラーなどの反射ミラー532aを組み合わせたケーラー照明光学系などを挙げることができる。
また、照明光学系は、蛍光分子を効率的に励起する光を導入するためのビームスプリッターや蛍光発光を選択的に透過するフィルタを備えておくことが好ましい。
像検出装置510では、検査チップの微小な検査面からの蛍光を十分な収率で捉えるため、開口数(NA)が0.12以上の対物レンズ521あるいは集光レンズ521aを用いることが好ましく、検査チップの厚みを考慮して焦点距離は3mm以上であることが望ましい。空間的な高分解能を求める場合には共焦点光学系を特に好んで用いることができる。本発明の装置では焦点距離を3mm以上確保した比較的小型・軽量の結像光学系(対物レンズを有する光学系)であり、その光学系を第2の電動ステージで移動させても光軸等のずれは生じにくく、安定した蛍光測定を行うことができる。
像検出装置510は、被測定試料からの蛍光を集光測定することが目的であるため、蛍光の波長帯を選択するバンドパスフィルタ532あるいは532aが、像検出装置510内、あるいは検査チップ100の検査面から画像取得装置の撮像素子面までの間に備えられていることが好ましい。
なお、像検出装置510の対物レンズと検査チップ100の検査面との高さ位置調整のために、511を保持するカメラホルダーには微小位置合わせ用マイクロステージを組み込んでおくことが好ましい。また、対物レンズと検査チップ100に形成された流路方向の位置調整のために第2の電動ステージ上にマイクロステージを配置しておくことが好ましい。
画像取得装置511は、CCDカメラなどの撮像素子からなり、ノイズが少なく高感度な撮像素子を好んで用いることができる。画素数としては特に制約はないが、512×512以上2048×2048以下が好ましい。また、CMOS撮像素子の場合は、低ノイズで高い感度を得やすい裏面照射型の素子を好んで用いることができる。なお、前述の蛍光測定用のバンドパスフィルタに換えて、蛍光波長帯のみに感度を有する撮像素子を用いることもできる。
信号処理装置550はPCなどからなり、前述のように画像取得装置511からの信号を保存する。また、装置511は解析して、生体分子の存在の有無やその量を測定、解析する設備でもある。
検査チップ100は、蛍光検出型のマイクロ流路型検査チップ、すなわちマイクロ流路に内包される被検査試料に光を当てて被検査試料から発せられる蛍光を検知する検査チップで、メタ構造を基板表面に作製して蛍光を共鳴させて感度を飛躍的に向上させたメタ表面マイクロ流路型検査チップである。
メタ表面マイクロ流路型検査チップは、本願発明者が考案したもので、特許文献4に開示がある。
本発明で用いたメタ表面マイクロ流路型検査チップ(蛍光検出用生体分子検査チップ)100は、メタ表面110を有する第1の基板120と、そのメタ表面110側に対向して位置し、マイクロ流路130を有する第2の基板140とを備える。メタ表面110は、検出されるべき生体分子(以降では簡単のため標的生体分子と称する)の固定を効率化する間隙を有し、かつ、蛍光増強を示す。
ここで、「標的生体分子」とは、疾患診断のマーカー分子として使用される抗体や抗原、プロコラーゲンIIIペプチド、副次生成タンパク質等の生体分子であるが、例示的には、肝炎ウイルスIgM型抗体、肝炎ウイルスs抗原、CEA分子、p53分子、p53抗体等の生体分子、RNA、DNAなどの核酸およびその細分化された分子等である。
「間隙を有するメタ表面」とは、生体分子よりも大きい数十~数百ナノメートルオーダの間隙を有する立体構造からなる表面を意図する。このような間隙を有することにより、メタ表面110の表面積が大きくなり、生体分子の固定を効率化できる。また、流体の速度を局所的に低減させることで生体分子の固定を効率化できる。図6では巨視的に示すため、図7では分子を拡大模式化して示すため、間隙を図示しないが、メタ表面110上に捕捉分子が固定され、その捕捉分子に補足抗体が結合し、さらに、補足抗体に効率的に蛍光標識付き生体分子が結合している様子が示される。このように、メタ表面110は、生体分子の固定を効率化し得る。ここで、後述する図8の350、図9の430が間隙にあたる。
「蛍光増強を示すメタ表面」とは、上述したように、人工ナノ表面構造であって、その上に蛍光を発する物質が位置する場合に、蛍光物質に活性化させない平坦な表面(シリコンウェーハや平坦な石英基板など)と比して、蛍光強度を増大させる人工ナノ表面構造を意図する。本発明の検査チップ100によれば、第1の基板120のメタ表面110は、さらに、標的生体分子(例えば、図7の蛍光標識付き生体分子)が発する蛍光の波長範囲を含む領域において蛍光増強を示すため、標的生体分子の濃度が低濃度であっても高精度に検出することができる。なお、「標的生体分子が発する蛍光」とは、標的生体分子それ自身が発する蛍光、標的生体分子に標識化された蛍光標識が発する蛍光、あるいは、標的生体分子に捕捉された二次抗体に標識化された蛍光標識が発する蛍光を意図する。
本発明の検査チップ100によれば、第2の基板140は、可視光または近赤外光を透過する材料(光透過性材料)からなり、第1の基板120上に位置する標的生体分子に光(励起光)が照射されると、標的生体分子あるいは標識化された蛍光標識が励起され、蛍光を発する。図7に示すように、この標的生体分子が発する蛍光は、第1の基板120と第2の基板140との間で共振する。この結果、標的生体分子からの蛍光の強度が増大され、標的生体分子の濃度が低濃度であっても高精度に検出することができる。さらに、共振によって増大した蛍光は、メタ表面110ではなく、第2の基板140側に効率的に放射されるので、蛍光は第2の基板140を透過し、効率良く検出できる。本願明細書において、可視光とは、波長360nm以上830nm未満の範囲の波長を有する光を意図する。また、近赤外光とは波長830nm以上1600nm以下の範囲の波長を有する光を意図する。
なお、本願明細書において、可視光または近赤外光を透過する材料とは、可視光または近赤外光の第2の基板140の平均透過率が60%以上となる材料を意味し、好ましくは80%以上となる材料である。このような可視光または近赤外光を透過する材料は、透明セラミクス、ガラス等の無機材料およびプラスチック等の有機材料を使用できるが、加工性の観点から、シリコーン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、エステル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、ポリアミド、シクロオレフィンポリマー等が好ましい。中でも、シリコーン系樹脂としてポリジメチルシロキサン(PDMS)が好ましい。
メタ表面110の示す蛍光増強は、可視光域または近赤外光における波長を有する光の強度の増強であり、好ましくは、520nm以上1500nm以下の波長範囲にピークを有する光を増強する。これにより、生体分子の検出を促進できる。さらに好ましくは、540nm以上620nm以下または800nm以上900nm以下の波長範囲にピークを有する光を増強する。
第1の基板120と第2の基板140との間の距離D(図7)は、好ましくは、10μm以上100μm以下の範囲である。この範囲であれば、マイクロ共振器としての機能が顕在し、マイクロ流路として標的生体分子を第1基板120上へ固定する効率が高まる。一方で、距離Dを10μmよりも小さくする場合、流路内での安定的な液流が困難となる、または第2基板140が自重による変形によって第1基板120に接触するなどの不具合が起こることが予見され、好ましくない。距離Dは、より好ましくは、15μm以上50μm以下の範囲である。
メタ表面110は、好ましくは、金属の相補的積層構造、または、高屈折率を有する半導体あるいは誘電体からなるナノロッド構造である。これらの構造は、生体分子の固定を効率化する間隙を有し、かつ、蛍光増強を示し得る。
図8は、金属の相補的積層構造を有するメタ表面の模式図である。
金属の相補的積層構造を有するメタ表面300は、基材310と、基材310の表面に位置するスラブ材320と、少なくともスラブ材320上に位置する金属材料330とを含む。
基材310は、少なくともスラブ材320と接する表面層340を備える。スラブ材320は、表面層340の屈折率よりも高い屈折率を有する材料からなる。さらに、スラブ材320は、スラブ材320の表面から基材310の表面層340に達する周期的に配列した複数の穴350を有する。このような構造により、基材310およびスラブ材320は、六方格子状、正方格子状等の周期的に配列される複数の穴350の周期Λおよび直径Dによって決定される周期構造体に特徴的な光の共鳴バンド状態を有する。この場合に、スラブ材320の屈折率が、表面層340の屈折率よりも大きいことがスラブ材320への光のバンド状態密度(閉じ込め効果)を大きくするために必要である。
金属材料330は、少なくともスラブ材320上に位置するが、詳細には、スラブ材320の表面および複数の穴350のそれぞれを介した基材310の表面層340上に位置しており、相補的な金属積層構造を有する。わかり易くは、金属材料330は、スラブ材320の複数の穴350における穴側壁360を覆わない。すなわち、金属材料330はスラブ材320の厚さから金属材料330の厚さを引いた距離離間することを典型とする。以上のような構造により、金属の相補的積層構造を有するメタ表面300は、金属材料330で覆われていない穴側壁360を通って、スラブ材320内に閉じ込められる共鳴状態を形成できる。さらに、金属材料330が付与されているので、上述の共鳴の線幅がそれぞれ広帯域化されており、この複数の共鳴の少なくとも1つが、標的生体分子からの蛍光波長と重なることにより、その共鳴の線幅の範囲において効率的に蛍光を増強する。
スラブ材320は、表面層340が屈折率1.5程度の材料が容易に使用できるから、2以上の屈折率を有する材料からなることが好ましい。スラブ材320の屈折率の上限は特に制限はないが、入手できる材料から4以下である。具体的には、スラブ材320は、Si、Ge、SiN、SiC、II-VI属の半導体、III-V属の半導体および二酸化チタン(TiO)からなる群から選択される材料である。これらの材料であれば、2以上の屈折率を有しており、加工性に優れるまたは成長技術が発展しているため、容易にスラブ材320を形成できる。
スラブ材320は、好ましくは、100nm以上2μm以下の範囲の厚さを有する。この範囲であれば、光のバンド状態を形成できる。金属材料330が組み合わさることにより、光の放射率の大きな共鳴状態が発現し、蛍光増強できる。より好ましくは、スラブ材320は、150nm以上250nm以下の範囲の厚さを有し、これにより、スラブ材320への光の閉じ込め効果が増し、金属材料330との組み合わせた相補的な積層構造において、蛍光増強に適した共鳴状態を構成しやすくなる。
複数の穴350の周期Λは、光の波長程度であるが、好ましくは、300nm以上1000nm以下の範囲を有すれば、メタ表面300は、520nm以上1500nm以下の波長範囲の光を増強できる。周期Λは、より好ましくは、400nm以上750nm以下の範囲を有する。これにより、メタ表面300は、540nm以上900nm以下の波長範囲の光を増強できる。複数の穴350は、2以上の異なる周期を有する穴であってもよい。この場合も、2以上の異なる周期のそれぞれが、300nm以上1000nm以下の範囲を有すれば、可視光域および近赤外光域において複数の範囲の光を増強できるので、蛍光標識の異なる2種以上の生体分子の検出も可能となる。
複数の穴350の直径Dは周期Λよりも小さい範囲で、100nm以上500nm以下の範囲を有すれば、メタ表面300は、540nm以上1000nm以下の波長範囲の光を増強できる。直径Dは、より好ましくは、250nm以上350nm以下の範囲を有する。これにより、メタ表面300は、540nm以上900nm以下の波長範囲の光を増強できる。
なお、複数の穴350は、2以上の異なる直径を有する穴であってもよい。この場合も、2以上の異なる直径のそれぞれが、100nm以上500nm以下の範囲を有すれば、可視光域および近赤外光域において複数の範囲の光を増強できるので、蛍光標識の異なる2種以上の生体分子の検出も可能となる。
当然ながら、複数の穴350が、2以上の異なる直径および2以上の異なる周期で配列されていてもよく、これにより、蛍光増強可能な可視光および近赤外光の波長域を制御でき、多様な生体分子に対応できる。
穴の形状は、図8では円柱状で示したが、これに限らず、角柱状、三角柱状などその他の形状であってもよく、共鳴状態を呈する限り、制限はない。
基材310の表面層340は、好ましくは、2未満の屈折率を有する材料からなる。表面層340の屈折率の下限は特に設定はないが、入手できる材料から1以上である。表面層340には、いわゆる透明絶縁体を採用できるが、具体的には、SiO、Al、ガラスおよびプラスチックからなる群から選択される材料からなる。プラスチックには上述の樹脂が含まれる。これらの材料であれば、上述のスラブ材320と表面層340との屈折率の大小関係により、効率的に、スラブ材320に光を閉じ込めることができる。なお、基材310は、Si基板、石英基板などのバルク基板と表面層340とから形成され、スラブ材320および金属材料330を維持できる任意の基板であり得る。
表面層340の厚さは、スラブ材320の厚さと同じまたはそれ以上であることが好ましい。これにより、スラブ材320を光損失の少ない導波路とすることができる。表面層340は、より好ましくは、200nm以上の厚さを有する。なお、容易に入手でき、加工性に優れているという観点から、基材310をSi基板として、表面層340をSiOとし、Siからなるスラブ材320と融着したものがある。また、基材310をガラス基板などとし、Si層を成膜形成してスラブ材310とすることも可能である。
金属材料330は、特に制限はないが、ドルーデ金属に近似できる複素誘電率を有する物質であればよい。ドルーデ金属とは、自由電子を有する金属をモデル化したものであり、複素誘電率ε(ω)=1-ω /ω(ω+iγ)で表される金属である。ここで、ωは角周波数、ωはプラズマ周波数、iは虚数単位、γはダンピング定数である。したがって、多くの金属が、電子のバンド間遷移が生じる波長近傍を除いて、ドルーデ金属として近似できることが知られている。
可視光域あるいは近赤外光域において、このようなドルーデ金属に近似できる複素誘電率を有する物質には、例示的には、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)およびそれらの合金からなる群から選択される物質がある。金属材料330は、好ましくは、30nm以上100nm以下の範囲の厚さを有する。厚さが30nm未満であると、光が透過してしまい、金属として機能しない場合があり得る。厚さが100nmを超えると、穴350の側壁がふさがれてしまい、相補的な金属積層構造を形成できない場合があり得る。より好ましくは、金属材料330は、30nm以上40nm以下の範囲の厚さを有する。
図9は、ナノロッド構造を有するメタ表面の模式図である。
ナノロッド構造を有するメタ表面400は、基材410の表面に存在する複数のナノロッド420を備える。ここで、基材410はナノロッド420の材料よりも小さい屈折率をもつ材料であることが好ましい。
基材410が検査チップ100に入射される光の波長域において透明な材料で、屈折率1以上1.6以下である場合、ナノロッド420の材料としては、屈折率が2以上5以下である半導体または誘電体であることが好ましい。なぜなら、ナノロッドの材料が大きな屈折率をもつほど、ナノロッドは反射または透過スペクトルによって容易に確認できる、明瞭な共鳴状態を有するためである。明瞭な共鳴状態は、蛍光増強効果などの共鳴増強効果を生じるために必要な物理条件である。他方、基材410の屈折率がナノロッド420の材料と同程度以上の屈折率を有する場合、共鳴状態は不明瞭となり、顕著な共鳴増強効果は期待できない。
例えば、検査チップ100に入射される光の波長が、波長500nm以上1100nm以下の範囲である場合、ナノロッド420の材料は、シリコン、ゲルマニウム、窒化ガリウム、および、二酸化チタンからなる群から選択される。これらの材料は、屈折率が2以上5以下を有する。
複数のナノロッド420の周期Λは、光の波長程度であるが、300nm以上1000nm以下の範囲を有すれば、メタ表面400は、520nm以上1500nm以下の波長範囲の光を増強できる。周期Λは、より好ましくは、300nm以上450nm以下の範囲を有する。これにより、メタ表面400は、540nm以上900nm以下の波長範囲の光を増強できる。複数のナノロッド420は、2以上の異なる周期を有するナノロッドであってもよい。この場合も、2以上の異なる周期のそれぞれが、300nm以上1000nm以下の範囲を有すれば、可視光域において複数の範囲の光を増強できるので、蛍光標識の異なる2種以上の生体分子の検出も可能となる。
同様に、複数のナノロッド420の直径Dは、周期Λより小さい範囲で100nm以上500nm以下の範囲を有すれば、メタ表面400は、520nm以上1500nm以下の波長範囲の光を増強できる。直径Dは、より好ましくは、200nm以上350nm以下の範囲を有する。これにより、メタ表面400は、540nm以上900nm以下の波長範囲の光を増強できる。
なお、複数のナノロッド420は、2以上の異なる直径を有するナノロッドであってもよい。この場合も、2以上の異なる直径のそれぞれが、100nm以上500nm以下の範囲を有すれば、可視光域および近赤外光域において複数の範囲の光を増強できるので、蛍光標識の異なる2種以上の生体分子の検出も可能となる。
当然ながら、複数のナノロッド420が、2以上の異なる周期および2以上の異なる直径で配列されていてもよく、これにより、高精度に蛍光増強可能な可視光の波長域を制御でき、多様な生体分子に対応できる。
複数のナノロッド420の高さは、好ましくは、100nm以上2μm以下の範囲である。この範囲であれば、ナノロッドの局在する電磁波共鳴の効果があり、明瞭な共鳴状態を生じることができる。より好ましくは、複数のナノロッド420は、150nm以上250nm以下の範囲の高さを有し、これにより、低次の共鳴状態の利用が可能になり、大きな蛍光増強を期待できる。
ナノロッドの形状は、図9では円柱状で示したが、これに限らず、角柱状、三角柱状などその他の形状であってもよく、共鳴状態を呈する限り、制限はない。
制御機構16は、第1の電動ステージ203の駆動、ポンプ205の駆動、光源541から照明光学系(図4または図5。図10には図示なし)を介しての検査チップ100の検査面への照射の制御、第2の電動ステージ220の駆動、第3の電動ステージ220の駆動560、および画像取得装置511の信号解析の制御を行う装置で、PCで行うことができる。なお、制御機構16のPCは、信号処理装置550のPCと兼用することができる。
制御機構16の機能は、第1の電動ステージ203を駆動させて、採液ピン201のピン先が採液ピン201の蓋を貫通してマイクロチューブ11内に保持された被測定試料を予め定めた所定量吸引可能な位置に到達するまで下降(Z方向)させ、ポンプ205を駆動させて被測定試料をチューブ204を介して検査チップ100に移送させる試料移送の制御と、光源541および照明光学系を介して検査チップ100の検査面への光照射を行い、検査面の被測定試料からの蛍光を光学系521を介して画像取得装置511で受光し、信号処理装置550による信号強度分析の制御と、第2の電動ステージ220を駆動して少なくとも画像取得装置511および対物レンズ521等からなる像検出装置510の位置制御(X方向)と、第3の電動ステージ560を駆動して試料ホルダー12と採液ピン201との相対位置(Y方向)を制御する試料ホルダー移送機構15の制御である。
測定効率および操作性を向上させるため、試料ホルダー12と採液ピン201の相対位置をY軸方向に沿って変える第3の電動ステージを備える。このようにすると、被測定試料の入ったマイクロチューブ11を行列状に配置して、逐次自動処理にて多量の試料を測定することが可能になる。すなわち、第1の行に配置された試料を自動処理した後、洗浄液を採液ピン201、チューブ204および検査チップ100に導入し、次に、空気をこれらに送って被測定試料が通る経路を乾燥させて初期化を行う。しかる後、第3の電動ステージを駆動させて採液ピン201を第2の行に配列されたマイクロチューブ11に差し込み、第2の行に配列された試料を吸い上げて検査チップに導入して測定を行うという繰り返しを行うことが可能になって、多量の試料を効率的に自動測定を行うことが可能になる。
なお、チューブ204および検査チップ100の数は、複数からなる採液ピン201の数と合わせておくことが、無駄がなくて好ましい。
本発明の生体分子検出装置1は、生体分子検出部としてマイクロ流路検査チップを使用し、第2の電動ステージ220により移動可能な像検出装置をもつことを特徴とした小型で被測定試料の必要量が少ない装置であり、特に、マイクロ流路検査チップとしてメタ構造表面をもつ蛍光共鳴型の検査チップを用いることにより極めて高い検査感度が得られる装置である。
生体分子検出装置1の動作手順の概要を下記に示す。
最初に、準備として、マイクロチューブ11に被測定試料を入れて前述の密封を行い、マイクロチューブ11を試料ホルダー12に収める。マイクロチューブ11の数は1本でもよいが、測定効率を上げるためには、一行状あるいは行列状に配置して試料ホルダー12に収めておくことが好ましい。
次に、制御機構16のコントロール下で、第1の電動ステージ203を駆動させて、液ピン201のピン先が、前述の蓋を貫通してマイクロチューブ11内に保持された被測定試料を予め定めた所定量吸引可能な位置に到達するまで下降させ、ポンプ205を駆動させて、チューブ204を介して被測定試料を検査チップ100に移送させる。
しかる後、光源541および照明光学系を介して検査チップ100の検査面への光照射を行い、検査面に捉えられている被測定試料からの蛍光を対物レンズ521を介して画像取得装置511で受光し、信号処理装置550による信号強度分析を行うことによって生体分子の有無判定あるいはその定量測定が行われる。
マイクロ流路検査チップを用い、複数の被測定試料を並列処理で高速に処理することを目的とした装置は、例えば特許文献1から3に開示がある。それらに対して、本発明の装置の長所を下記に示す。
特許文献1から3では、高密度に集積化されたマイクロ流路検査チップが用いられ、固定の光学系を用いて広い視野で画像取得して一括で測定を行うという方式が用いられている。
対して本発明では、特許文献1から3に比して比較的疎に配置されたマイクロ流路検査チップが用いられ、マイクロ流路チップ1個に対応する比較的狭い視野測定とすることで移動可能な小型の光学系を用いて測定チップ毎に測定を行うという方法になっている。この方法は、特に、メタ表面構造のマイクロ流路チップの特徴を活かしたものになっている。
メタ表面構造をもつマイクロ流路チップは超微細構造をもつので高価であり、また、作製歩留まりを鑑みると大面積に集積化されたものは歩留まりが低く、さらに高価なものとなる。
また、ある程度使用すると検査チップは交換が必要となるが、高密度に集積化された検査チップでは、一部のチップが劣化した場合でも全交換になり不経済となる。
また、集積化し過ぎると、1枚の基板上での検査の手数が増えすぎてコスト増になり、小さいチップをたくさん並べると送液および排液の経路が煩雑になり、作業性が大きく落ちるという問題も生じる。
一方、本発明の個別チップ単位あるいは比較的疎で少数のチップが配置された検査チップは上記問題が緩和され、コストメリットがある。
また、公知例の方式では、高NAかつ視野の広い光学系が必要になり、装置が大型になり、装置コストも上がる。
一方、本発明の測定では、1測定を1チップに限定しているので必要な視野は狭くてよく、レンズのNA等を大きいものとしても、また照明系も備えるとしても小型の像検出系にできる。このため、配列されたチップを一括で像取得するのではなく、像検出系をステッピング移動させて、シーケンシャルに像取得することにより、装置のコンパクト化と廉価化が可能になる。シーケンシャル像取得でも、その間にシーケンシャルの試料供給などを行うシステムにすることと、測定時間の短い超高感度なメタ表面をもつチップということで高速処理が可能になる。実際、蛍光測定の時間は1チップ当たり2秒程度であり、被測定試料の移送などのオーバーヘッドタイムに比べ十分短いものになっている。
なお、検査チップと光学系との相対位置移動は検査チップの方を動かす方法もあるが、ホルダーはチューブに接続されており可動域に制約がある。検査チップの方を動かす方法は光学系を動かす方法より装置が大きくなりがちになる。
高速シーケンシャル試料供給のためにもチップホルダーは固定がよい。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
(実施例1)
実施例1では、生体分子検出装置1を作製してDNAを標的として検出した結果を述べる。
<装置>
実施例1で使用した装置(生体分子検出装置1)の外観を図10および11に示す。
生体分子検出装置1は、主要なところを挙げると、マイクロチューブ11、試料ホルダー12、検出機構14、検査チップホルダー150、採液ピン201、取付治具202、第1の電動ステージ203、ポンプ205、第2の電動ステージ560、および第3の電動ステージ220からなり、各部分の機能、役割は実施の形態1で説明したものになっている。
マイクロチューブ11は、ポリプロピレン製が標準的であり、大きさが直径12mm、長さ40mm、試薬容量が1500または2000μL、そして厚さ5mmの蓋が各マイクロチューブ11に設けられている。マイクロチューブ11は、試料ホルダー12にピッチ15~25mmで、一列に配列されて収められている(図11)。
検出機構14は、光源541、照明光学系531、ハーフミラー532、結像レンズ521、画像取得装置511、および信号処理装置550からなる図4に示した構成からなる。
光源541としてはLED(M530F2、Thorlab、USA)を用いた。ピーク波長は530nm(半値全幅30nm)である。このLEDは3.1Wと消費電力が少なく、発熱等の問題も認められない。ヘッドの大きさは35×47×32mmとコンパクトであり、重量も120gと軽い。光源541は結像光学系510に導入され、一体になって第2の電動ステージ220により移動をするが、その移動に伴って光軸がずれるなどの問題が生じないことを確認してある。
照明光学系531aには開口数(NA)0.28の10倍対物レンズ(M Plan Apo、Mitsutoyo、日本)が用いられ、LEDの光が直径2mm以下の領域に照射される構成になっている。照射光パワーは0.45mWと見積もられた。
共焦点蛍光検出配置(図示なし)では、対物レンズ521としては、NA0.32の10倍の対物レンズを使用した共焦点蛍光顕微鏡(Stellaris5、ライカ、ドイツ)を用いた。励起波長が521nmの場合、空気中の空間分解能は830nmである。レーザ走査型共焦点系のため、後述のように、非常に希釈されたサンプルで低バックグラウンド蛍光測定を行うことができる。実際、フォトンカウンティングモードでは、装置からのバックグラウンドがほぼゼロに抑えられた。共焦点顕微鏡の長焦点の対物レンズを用いることにより検査チップの検査面とのクリアランスは4~5mmとれており、検査チップへ試料を送る配管、チューブなどがある中でも、各検査チップの検査面で蛍光像が取れる位置に、上下方向移動を伴わないX方向移動のみで像検出装置510を移動可能で、作業効率が高い。
画像取得装置511としては、CCDカメラ(Infinity-3S、Teledyne-Lumenera、USA)を常温で使用した。冷却を伴わないため、軽量、コンパクト化が容易な上に、結露などの問題も生じない。
なお、検査チップとCCDカメラの間には蛍光波長に対応したバンドパスフィルタ(エドモンドオプティクス製)が配置されている(532)。
信号処理装置550としてはPC(DAIV 4P、マウスコンピュータ製)を使用した。
なお、結像光学系510の大きさは、100×200×250mmであり、コンパクトなものになっている。
共焦点顕微鏡においては、蛍光分子HEXにしたがって、励起波長を521nmに設定し、検出波長を570~700nmに設定した。蛍光画像は10フレームの蓄積によって取得した。
検査チップホルダー150には6個の検査チップ(図示なし)がピッチ4mmで一列状等間隔に配置されている。
検査チップは、メタ表面を有する蛍光共鳴型のチップであり、45×45mmのメタ表面基板とPDMSで成形されたマイクロ流路チップで構成されている。この検査チップが配置されたセンサ部の写真を図12に示す。PDMSを使用したチップは透明で、6つのマイクロ流路チャネルの入口と出口の穴が備えられている。このセンサ部は、図13に示すようにホルダーにセットされ、試料を検査チップに供給するチューブに接続される。この検査チップのメタ表面は、周期的なSiロッドアレイで構成され、そのロッドの設計周期は300nm、円直径は220nm、そして高さは200nmである。1個のメタ表面エリアの大きさは(0.6~0.7)×(1.2~2.1)mmである。
採液ピン201の先端部分(針の部分)は、ステンレスからなり、その直径は1.2mm、内径は1mmである。治具202はPEEKからなり、長さ115mm、幅12mm、高さ10mmで、6本の採液ピン201がピッチ15mmで、等間隔に配列されている。
第1の電動ステージ203、第2の電動ステージ220、および第3の電動ステージ560の位置決め精度は全て0.5μm、ストロークは各々75、75、および150mmである。
ポンプ205は、小型ロータリーポンプ(RP-6R01S-3P6A-DC10VS、高砂フルイディックシステムズ、日本)である。このポンプは6チャンネルの流れを同時に制御することができる。
作製された生体分子検出装置1の外形は底面が400mm×300mm以内、高さが400mm以下とコンパクトな形状である。
小型で取り扱い性に優れ、感度が高く、かつ高速処理可能な生体分子検査装置を実現するために、第1から第3の電動ステージからなる3軸の高精度電動ステージ、小型精密ポンプ、顕微鏡用CCDカメラとのその移動装置(第2の電動ステージ)およびそれらを統合する治具が本発明の装置の核であり、全ての要素を物理的な干渉が一切起きないように治具設計がなされている。
<使用方法>
制御装置により、3つの電動ステージ(第1の電動ステージ203、第2の電動ステージ220、および第3の電動ステージ560)およびポンプ205が制御され、マイクロチューブ11に内蔵された試料が採液ピン201およびポンプ205を介して検査チップに送られる。この試料送液は、6個の検査チップの何れか1つ以上とすることができ、複数の検査チップに供給するときは、同時に供給することもシーケンシャルに供給することも可能である。
(実施例1)
ヒトの遺伝子配列の中からセルフリーDNAとして検出される二重鎖DNA(鎖長239ベースペア、bp)を検出対象の鋳型としてPCR(Polymerase Chain Reaction)法により増幅を行い、増幅されたDNAを試料として、本発明の生体分子検出装置1にて測定を行った。
<核酸増幅の手順>
PCR法は前記鋳型DNAに対して2種の短鎖かつ一本鎖のオリゴ合成DNAを設計しプライマーとした。5末端にビオチン修飾を行い、後のメタ表面上への固定に備えた。高温で反応が開始するPCRポリメラーゼキット(TaKaRa HotStart Version、タカラバイオ株式会社)を用いて増幅反応を行った。温度条件は98℃、10秒;50℃、30秒;72℃、40秒の3温度を1サイクルとして、計35サイクルとした。増幅反応後は25℃まで冷却した。その後、前記プライマーと別に蛍光標識されたプローブDNAを用意し、増幅物への交配反応を90℃、2分;47℃、30分の条件で行い、終了後25℃まで冷却した。この試料を蛍光測定した。
<測定とその結果>
詳細な蛍光測定手順を下記に示す。
最初に、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS、164-25511、富士フイルム和光純薬、日本)を検査チップのマイクロ流路に75~80μL/minで5分間流し、流路をこの緩衝液で満たす。次に、98体積%PBSと2体積%グリセリン(070-04941、富士フイルム和光純薬)で 2μg/mLに希釈したCys-Streptavidin(Cys-SA、PRO1005、ClickBiosystems)を10~11μL/minで12分間流す。PBSリンスは10~11μL/minで8分間行う。
その後、蛍光検出のためのバックグラウンド測定を実施する。
しかる後、PBSで100μLに調整した試験液サンプルを9.5±0.5μL/minで10分間検査チップに供給する。
続いて、PBSリンスを18~20μL/minで5分間行う。
最後に、LED励起下で2秒間露光する蛍光測定を実行する。
以上すべての手順は、制御用コンピューター(PC)で事前に設定され、自動的に実行される。
検出チップの検出面に配置されたメタ表面センサ上の蛍光像を図14に示す。中央付近の明るい帯状領域が検査チップの検出面に対応する。蛍光像はDNAの検出を意味する。
元の鋳型濃度が1ピコモーラー(pM=10-12M,M=モル/リットル)から152アトモーラー(aM=10-18M)の広い濃度範囲にわたって検出している。また、偽反応を検証するためにネガティブコントロールとして鋳型が含まれない0Mの試験液に対しても同様の工程を行い、蛍光検出した結果を合わせて示している。0Mでの信号レベルが実験的な信号のゼロレベルを与える。
図14ではマイクロ流路が縦方向に配置されており、中央付近の明度が高いエリアがメタ表面に対応する。検出対象のDNA濃度が1pMから152aMの約4桁にわたる広い濃度域でいずれも蛍光検出された。高濃度側でやや輝度が落ちている原因は過度なPCRによるものと考えられる。低濃度の152aMにおいて明瞭に蛍光検出できていることから、より低濃度域においても検出可能であることを示唆している。
メタ表面センサが配置された検出面の周囲はマイクロ流路となっているが、メタ表面センサがない流路内では蛍光はほとんど観測されず、偽信号の原因となりうる流路への蛍光分子の非特異吸着は十分に低減できていることがわかる。
ここで、1試料当たりの試料の使用量は50μLである。少量の試料で感度の高いDNA検出が、生体分子検出装置1により行えることが実証された。
なお、1試料当たりの実質的な測定時間は試験液の送液から蛍光像の取得までであり、約20分で完了した。6試料を同時に送液と蛍光測定を行い採液から測定完了まで終えるまで高速処理することが可能となった。
また、低濃度標的試料に対してPCRサイクルを35サイクルに抑えて、擬反応を抑えながら、蛍光検出できることは本願装置の高感度性を活かした結果である。通常低濃度標的試料に対しては、40サイクルのPCRが実施されており、35サイクルより2(=32)倍の増幅を経て結果判定がなされるが、擬反応も起きやすくなることから40サイクルより低いサイクル数で結果判定ができる実用的な利点は大きい。
(実施例2)
実施例2では、実施例1で使用した生体分子検出装置1を用いて、LAMP(Loop-mediated isothermal Amplification)法による核酸増幅後の試料を評価した結果を述べる。
鋳型のDNAは実施例1で使用したものと同じ配列である。鋳型DNAに対して設計した増幅用のプライマー6種(F3、B3、FIP、BIP、LF、LB)と市販のDNAポリメラーゼ、マグネシウムイオンとdNTPsバッファーを調整されたDNA増幅試薬(2×LAMP MASTER,株式会社ニッピンジーン)を混合して、核酸増幅用マイクロチューブに入れ、検出対象の鋳型を実施例1で示した濃度でそれぞれ4μL滴下、混合した。その後、63℃、70分で等温増幅反応を行った。蛍光分子を標識したプローブDNAを増幅物に結合させるため、90℃、3分;45℃、20分;40℃、20分の追加反応を実施した。この後、生体分子検出装置1を用いて蛍光測定を行った。その結果を図15に示す。濃度が1.37fMまでの試料では、蛍光信号が確認できた。それより低濃度では0Mと比べて有意な信号は観測されたなかった。この結果はLAMPによるDNA増幅が前記PCRと比べて、効果的に起きなかったことを示唆している。核酸増幅法の判定に本願の蛍光検出自動化装置は使用できる。
(実施例3)
実施例3では、実施例1で使用した生体分子検出装置1を用いて、新型コロナウイルスの相補DNA(cDNA)を検出標本として核酸増幅を行った試料の測定(蛍光観察)を行った結果について述べる。
なお、参考までに、使用したDNAの配列の一部を表1に示す。
試料作製の詳細を下記に示す。
新型コロナウイルスのRNAから終端付近の360ベースの配列を選択して、このcDNAを標的試料に設定した。RNAは逆転写法によってcDNAに転写されることは常套的に行われており、cDNAを標的試料とすることは新型コロナウイルスの核酸検査と同様の手順となる。
検出対象の360bpの二重鎖cDNAに対して、LAMP法の6種類のプライマーを設計した。このうちFIPとBIPの5末端にビオチン標識を施した。また、LF、LBの5末端に蛍光分子HEXを標識して蛍光プローブとしての機能も担わせた。反応前にFIP、BIP、LF、LBの4種を標的cDNAおよびPCRポリメラーゼキットと混合した。FIP、BIPをPCRプライマーとして使用する構成である。最初に98℃、10秒加熱してcDNAを解離させたのち、60℃、30秒;70℃、30秒;95℃、5秒の3条件を1サイクルとして35サイクル実施し、そのまま50℃、15分間蛍光プローブのLFとLBの増幅DNAへの交配反応を行って室温に試料を戻した。これらの工程はワンステップ(すなわち、途中での試薬等の追加なし)で行われた。
前記PCR試料液を実施例1の蛍光測定と同様の手順で行った。
蛍光測定画像を図16、標的cDNA濃度と蛍光強度の関係を図17に示す。標的cDNA濃度が2.6aMと極めて薄い状態で有意な蛍光検出ができていることがわかる。2.6aMはcDNA1.5個/μLに相当する低濃度である。また、標的cDNA濃度が64aM以下の領域ではLog-Logプロットで標的cDNA濃度と蛍光強度がスケーリングされた関係にあることと、64aM以上で蛍光強度が飽和することがわかる。本発明の生体分子検出装置1は、高い感度で新型コロナウイルスの核酸検査が可能なことが実証された。
図16の蛍光画像は結像光学系によって測定されたが、共焦点光学系における測定蛍光像を図18(a)に示す。標的cDNA濃度は左から順に160aM、32aM、6.4aM、0Mである。長方形のメタ表面以外のエリアは暗く、バックグラウンドノイズが十分に抑えられていることが分かる。
図18(a)のそれぞれ蛍光像から蛍光強度をヒストグラム化し、標的濃度に対してプロットした結果が図18(b)である。各データ点にエラーバーを付けて表示している。0Mの標準偏差σから縦軸で3σ離れた位置(図中点線)が統計的な検出下限となる。データ点をHill方程式(非特許文献1)でフィッティングした曲線との交点のx座標が標的濃度の検出限界を与え、5.86aMと同定した。バックグラウンドノイズを抑制することで極低濃度域における検出限界を定量的に決定することができる。
(実施例4)
癌マーカー抗原の1つPSA(Prostate Specific Antigen)を標的試料として蛍光検出した結果を示す。PSA抗体で特異的にPSAを挟みこんでサンドウィッチ複合体を形成し、一方の抗体にビオチン標識をあらかじめ施してメタ表面上のCys-SAと結合させて固定し、もう一方の抗体にHylyte555分子による蛍光標識をあらかじめ施して蛍光検出を行う配置を採った。
測定手順と結果について述べる。
まず始めに前記PBSを75~80μL/分で4分間流して、マイクロ流路内を液浸した。
その後、前記Cys-SAの希釈液2μg/mLをメタ表面エリア上に11~12μL/分の流速で12分程流し、Cys-SAを固定した。
引き続き、PBSで同じ流速で5分程メタ表面のリンスを行った。この段階で全6チャンネルに対して蛍光のバックグラウンド測定を行い、実験的な信号のゼロレベルを決めるデータを得た。
続いて、サンプル希釈液NS(ab193972、アブカム)で5μg/mLに調整したビオチン標識したPSA抗体(ab53774、アブカム)液を11~12μL/分で8分程メタ表面上に流し、同じ流速でPBSリンスを10分程行った。PSA(ab264615、アブカム)をサンプル希釈液NSで20、5,1.25、0.31、0.08ng/mLに希釈し、5つのマイクロ流路チャンネルにそれぞれ流した。ネガティブコントロールとしてサンプル希釈液NSのみを1チャンネルに流し、PSA濃度0ng/mLとした。流速は約8μL/分で12分間メタ表面上に流した。PSAはPSA抗体に特異的に結合する。液をPBSに切り替えて、18~19μL/分の流速で6分間リンスを行った。蛍光標識したPSA抗体(MAB6729、Abnova)をサンプル希釈液NSで3.5μg/mLに調整してメタ表面上に10~11μL/分で10分程度流し、PSAと特異的に結合させた。
その後、PBSリンスを18~19μL/分で6分程度行い、続けてPBS-T(163-24361、富士フイルム和光純薬)で最終リンスを同じ流速で4分程度行って、CCDカメラによる蛍光測定を行った。試薬の装填以外はすべて自動化されており、各段の省力化を実現している。
測定した蛍光像を図19に示す。図19(a)から(f)のすべての像の明るさを同一基準に統一している。PSAの濃度の大小を反映して蛍光輝度が増減していることがわかる。例えば、0.08ng/mLと0ng/mLが区別できる。PSAの医療診断基準値は4ng/mLであるから、その1/50の濃度であっても検出ができ、本願自動化装置はPSA診断検査を行う性能が十分にあることが実証された。
以上述べてきたように、本装置は小型である上に、少量の被測定試料でも複合動作による自動蛍光検出が可能で、その検査感度も大変高いことが実証された。
質の高い高度な医療を広く汎用に提供するためには、小型で安価で、高速処理が可能な生体分子検査装置が必要になる。本発明の生体分子検査装置は、上述のように、小型で取り扱い性に優れ、かつ高速処理可能な全自動測定装置という特徴をもっている。このため、本発明の装置は、装置ビジネスの拡がりを見せ、その結果、医療を中心に社会に大いに貢献すると考えている。
1:生体分子検出装置
11:マイクロチューブ
12:試料ホルダー
13:試料移送機構
14:検知機構
15:試料ホルダー移送機構
16:制御機構
100:検査チップ(蛍光検出用生体分子検査チップ)
110:メタ表面
120:第1の基板
130:マイクロ流路
140:第2の基板
150:検査チップホルダー
201:採液ピン
202:取付治具
203:第1の電動ステージ
204:チューブ
205:ポンプ
220:第3の電動ステージ
300:メタ表面
310:基材
320:スラブ材
330:金属材料
340:表面層
350:穴
360:穴側壁
400:メタ表面
410:基材
420:ナノロッド
430:間隔
510:像検出装置(結像光学系、対物レンズを有する光学系)
511:画像取得装置(CMOSセンサ)
521:対物レンズ、対物レンズを有する光学系
531:照明光学系(コリメータレンズ)
531a:照明光学系(レンズ)
532:波長選択フィルタ
532a:照明光学系(ハーフミラー)
533:光線
541:光源
550:信号処理装置
560:第2の電動ステージ

Claims (12)

  1. マイクロ流路に内包される被測定試料に光を当てて前記被測定試料から発せられる蛍光を検知する検査チップを搭載した生体分子検出装置であって、
    前記生体分子検出装置は、被測定試料を入れるマイクロチューブ、前記マイクロチューブを収める試料ホルダー、前記マイクロチューブ内に保持された前記被測定試料を前記検査チップに送る試料移送機構、生体分子を検知する検知機構、試料ホルダー移送機構、および制御機構を有し、
    前記マイクロチューブは、採液ピンで貫通することが可能な蓋を有し、前記被測定試料を前記マイクロチューブ内に密閉して保持することが可能な構造であり、
    前記試料ホルダーは、複数の前記マイクロチューブを列状または行列状に載置可能なホルダーであり、
    前記試料移送機構は、前記採液ピン、前記採液ピンを保持する治具、前記治具と前記試料ホルダーの間隔(Z方向)を変化させる第1の電動ステージ、耐薬性を備えて柔軟性に富むチューブ、およびポンプを具備し、
    前記チューブは、前記採液ピンから前記ポンプを介して前記検査チップに接続されて、前記ポンプの駆動によって前記採液ピンから吸引された被測定試料が前記検査チップに移送される構成になっており、
    前記検知機構は、前記検査チップ、画像取得装置、対物レンズを有する光学系、照明光学系、前記光を発する光源、および前記画像取得装置からの信号を解析処理する信号処理装置を具備し、
    前記検知機構は、前記光源から発せられた光が前記照明光学系を介して前記検査チップの検査面に照射され、前記検査面から発せられる蛍光が前記対物レンズを有する光学系を介して前記画像取得装置に取り込まれ、前記画像取得装置からの信号が前記信号処理装置に送られて信号解析される構成になっており、
    前記検査チップは、メタ表面を有する第1の基板と、
    前記第1の基板と対向して位置し、マイクロ流路を有する第2の基板とを備え、
    前記メタ表面は、検出されるべき生体分子の固定を効率化する間隙を有すると共に、前記生体分子が発する蛍光の波長範囲を含む領域において蛍光増強を示し、
    前記第2の基板は、前記光を透過する材料からなり、
    前記第1の基板と前記第2の基板との間で前記蛍光が共振する検査チップであり、
    前記画像取得装置および前記対物レンズを有する光学系は、一体で配置された1つの像検出装置になっており、
    前記像検出装置の位置を移動させる像検出装置移動手段が具備されており、
    前記像検出装置移動手段は、第2の電動ステージによって一列状の方向(X方向)に沿って前記像検出装置の位置を移動させることができ、
    前記試料ホルダー移送機構は、前記試料ホルダーと前記採液ピンの相対位置をY軸方向に沿って変える第3の電動ステージを有し、
    前記制御機構は、前記第1の電動ステージの駆動、前記ポンプの駆動、前記光の前記検査面への照射の制御、前記第2の電動ステージの駆動、前記第3の電動ステージの駆動、および前記画像取得装置の信号解析の制御を行う、生体分子検出装置。
  2. 前記検査チップは複数からなり、離散的に配置されている、請求項1に記載の生体分子検出装置。
  3. 前記一体で配置された1つの像検出装置は、前記画像取得装置、前記対物レンズを有する光学系、前記照明光学系、および前記光源からなる、請求項1または2に記載の生体分子検出装置。
  4. 前記メタ表面は、金属の周期的相補的積層構造またはナノロッドアレイ構造である、請求項1から3の何れか1つに記載の生体分子検出装置。
  5. 前記第1の基板と前記第2の基板とにより形成されるマイクロ流路の高さは、10μm以上100μm以下の範囲である、請求項1に記載の生体分子検出装置。
  6. 前記第1の基板と前記第2の基板とにより形成されるマイクロ流路の高さは、15μm以上50μm以下の範囲である、請求項5に記載の生体分子検出装置。
  7. 前記マイクロ流路の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる、請求項1から6の何れか1つに記載の生体分子検出装置。
  8. 前記メタ表面は、前記金属の周期的相補的積層構造であり、
    前記金属の相補的積層構造は、基材と、前記基材の表面に位置するスラブ材と、少なくとも前記スラブ材上に位置する金属材料とを含み、
    前記基材は、少なくとも前記スラブ材と接する表面層を備え、
    前記スラブ材は、前記表面層の屈折率よりも高い屈折率を有する材料からなると共に、その表面から前記基材の前記表面層に達する、周期的に配列した複数の穴を有し、
    前記金属材料は、前記スラブ材の表面、および、前記複数の穴の底面を形成する前記基材の表面層上にそれぞれ位置する、請求項4に記載の生体分子検出装置。
  9. 前記メタ表面は、ナノロッド構造であり、
    前記ナノロッド構造は、基材と、前記基材の表面に周期的に起立する複数のナノロッドとを備え、
    前記基材は、前記複数のナノロッドの屈折率よりも小さい屈折率を有する材料からなる、請求項1から7の何れか1つに記載の生体分子検出装置。
  10. 前記第1の電動ステージを駆動させて、前記採液ピンのピン先が、前記蓋を貫通して、前記マイクロチューブ内に保持された前記被測定試料を予め定めた所定量吸引可能な位置に到達するまで下降させ、
    前記ポンプを駆動させて、前記被測定試料を前記検査チップに移送させ、
    前記光源、および前記照明光学系を介して前記検査面への光照射を行い、
    前記検査面からの前記蛍光を、前記対物レンズを有する光学系を介して前記画像取得装置で受光し、前記信号処理装置による信号強度分析の制御を行う、請求項1から9の何れか1つに記載の生体分子検出装置。
  11. 前記チューブおよび前記検査チップの数は、複数からなる前記採液ピンの数と等しい、請求項1から10の何れか1つに記載の生体分子検出装置。
  12. 前記試料ホルダーの前記マイクロチューブの配置周期は、前記マイクロチューブの直径の1.2倍以上2.1倍以下である、請求項1から11の何れか1つに記載の生体分子検出装置。
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