JP2024048991A - 細胞凍結保存液、及び細胞凍結方法 - Google Patents

細胞凍結保存液、及び細胞凍結方法 Download PDF

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Abstract

【課題】解凍後の細胞生存率が高く、安全性に優れた安価で、原料の入手が容易な細胞凍結保存液を提供する。【解決手段】生理食塩水を溶媒とし、主添加剤と副添加剤とを含み、主添加剤は、フルクトオリゴ糖であり、副添加剤は、オボアルブミン、コンドロイチン硫酸、及びコラーゲンペプチドのいずれか一つである細胞凍結保存液としている。好ましくは、生理食塩水の中に10wt%以上30wt%以下の割合でフルクトオリゴ糖が含まれるフルクトオリゴ糖溶液に副添加剤が添加されてなり、当該副添加剤が0.1wt%以上10wt%以下の割合で添加されてなる細胞凍結保存液とすることである。【選択図】図5

Description

本発明は細胞凍結保存液、及び細胞凍結方法に関する。
近年、各種臓器の細胞組織や多能性細胞等を凍結保存しておき、移植等の治療時に凍結保存しておいた細胞を解凍して利用する、細胞凍結技術が注目されている。細胞組織の一般的な凍結方法は、例えば、細胞組織に、生理食塩水に各種添加剤を添加した凍結保存液を加えた細胞懸濁液を作製し、その細胞懸濁液が入った容器(クライオチューブなど)を、2-プロパノールで満たされた細胞凍結容器内に設置し、その細胞凍結容器を、冷凍装置の冷凍庫内に保持することで行われる。
より具体的は、プログラムフリーザーなどを用いて所定の降温速度(例えば、1℃/min等)で所定の温度(例えば、-80℃)まで冷却することで行われる。あるいは、細胞凍結容器を所定の温度(例えば、-80℃)に設定された冷凍庫内に所定時間(例えば、24H)保持することで行われる。そして、凍結後の細胞懸濁液が入った容器を液体窒素に浸漬して凍結細胞を保存する。
なお、以下の非特許文献1や2にはiPS細胞の凍結保存技術について記載されている。また以下の非特許文献3には、iPS細胞などの細胞組織の凍結保存方法や細胞組織用の凍結保存液の概略について記載されている。以下の特許文献1や非特許文献4には、細胞毒性が低い細胞凍結保存液である細胞凍結保存用組成物について記載されている。
また、以下の特許文献2、3には、糖類を含む細胞凍結保存液について記載され、以下の非特許文献5には本願発明に関連して、豚精子を凍結保存する際の各種糖類による凍害防禦効果について記載されている。
特開2006-115837号公報 特開2022-79113号公報 特開2022-104240号公報
京都大学、"ヒトiPS細胞の効果的凍結保存法の確立"、[online]、[令和4年9月15日検索]、インターネット<URL:http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2010/101201_3.htm> 公益社団法人日本生物工学会、" 霊長類ES/iPS細胞の凍結保存"、[online]、[令和4年9月15日検索]、インターネット<URL:https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9009/9009_tokushu-1_3.pdf> ゼノジェンファーマ株式会社、"STEM-CELLBANKER GMP grade 製品案内(「STEM-CELLBANKER」は登録商標)"、[online]、[令和4年9月15日検索]、インターネット<URL:https://www.zenogenpharma.com/stem-cellbanker.html> ナカライテスク株式会社、"細胞保存液 Cell Reservoir One"、[online]、[令和4年9月15日検索]、インターネット<URL:https://www.nacalai.co.jp/products/entry/d001007.html> 日本養豚学会、"学会誌第30巻1号「凍結豚精子の生存及び頭帽の形態維持に対するフラクトオリゴ糖の効果」"、[online]、[令和4年9月13日検索]、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/youton1987/30/1/30_1_11/_pdf/-char/ja>
一般的な細胞凍結保存液は、非特許文献3に記載されているように、添加剤としてジメチルスルホキシド(DMSO)を含んでいる。しかし、DSMOには細胞毒性があることが知られている。したがって、現在の実験レベルや臨床レベルにある、医療用途の細胞凍結保存技術を、今後の実用レベルにまで移行させていくことを考慮すると、細胞凍結保存液にはより高い安全性が求められる。もちろん、細胞凍結保存液には、安全性ととともに、解凍時に高い細胞生存率を有することも求められている。
上記特許文献1や非特許文献4に記載の細胞凍結保存液は、絹タンパク質であるセリシンを主とした添加剤を含み、さらに、これらの文献にはDSMOを含まないものについても開示されている。しかしながら、セリシンは、マユ由来の絹タンパク質を原料とし、製糸過程の製錬工程で発生する排水中から抽出して精製して得ることから、より低いコストで製造することが難しい。また、原料の入手先も限定される。
医療用途の細胞凍結技術を実用レベルにまで引き上げるためには、安全性が高く、かつ安価で入手が容易な原料を用いつつ、細胞生存率の向上も期待できる細胞凍結保存液を得ることが必要である。
そこで本発明は、安全性に優れ、安価で原料の入手が容易な細胞凍結保存液と、この細胞凍結保存液を用いた細胞凍結方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、生理食塩水であるD-PBSを溶媒とし、主添加剤と副添加剤とを含み、前記主添加剤は、フルクトオリゴ糖であり、前記副添加剤は、オボアルブミン、コンドロイチン硫酸、及びコラーゲンペプチドのいずれか一つである細胞凍結保存液である。
好ましくは、前記生理食塩水の中に10wt%以上30wt%以下の割合で前記フルクトオリゴ糖が含まれるフルクトオリゴ糖溶液に前記副添加剤が添加されてなり、当該副添加剤が0.1vol%以上10vol%以下の割合で含まれている細胞凍結保存液とすることである。
さらに、前記オボアルブミンが0.5vol%以上1.0vol%以下の割合で含まれている細胞凍結保存液、あるいは前記コンドロイチン硫酸が3.0vol%以上10.0vol%以下の割合で含まれている細胞凍結保存液、あるいは前記コラーゲンペプチドが5.0vol%以上10.0vol%以下の割合で含まれている細胞凍結保存液とすればより好ましい。
本発明の態様には、上記細胞凍結保存液を用いて細胞を凍結させる方法も含まれ、当該方法は、
凍結対象となる細胞に前記細胞凍結保存液を加えた細胞懸濁液をサンプルとして作製するサンプル作製ステップと、
前記サンプルが収納された第1の容器を、2-プロパノールで満たされた第2の容器内に設置するするサンプル設置ステップと、
前記サンプル設置ステップに次いで、前記第2の容器を冷凍庫内に載置して前記サンプルを凍結させる凍結ステップと、
を含み、
前記凍結ステップでは、前記サンプルを載置した前記冷凍庫内を、前記サンプルが超過冷却状態となる温度まで徐冷するとともに、当該温度で所定時間維持する、
細胞凍結方法としている。
本発明によれば、安全性に優れ、安価で原料の入手が容易な細胞凍結保存液、及びその細胞凍結保存液を用いた細胞凍結方法が提供される。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
HEK293細胞(試験用細胞)に、生理食塩水(D-PBS)にフルクトオリゴ糖が添加されてなる細胞凍結保存液を加えて得たサンプルを新規凍結法にて凍結して解凍したときの細胞生存率を示す図である。 HEK293細胞(試験用細胞)に、生理食塩水(D-PBS)にフルクトオリゴ糖が添加されてなる細胞凍結保存液を加えて得たサンプルを緩慢凍結法にて凍結して解凍したときの細胞生存率を示す図である。 上記試験用細胞に、上記D-PBSに上記フルクトオリゴ糖とオボアルブミンとが添加されてなる細胞凍結保存液を加えて得たサンプルを凍結して解凍したときの細胞生存率を示す図である。 上記試験用細胞に、上記D-PBSに上記フルクトオリゴ糖とコンドロイチン硫酸とが添加されてなる細胞凍結保存液を加えて得たサンプルを凍結して解凍したときの細胞生存率を示す図である。 上記試験用細胞に、上記D-PBSに上記フルクトオリゴ糖とコラーゲンペプチドとが添加されてなる細胞凍結保存液を加えて得たサンプルを凍結して解凍したときの細胞生存率を示す図である。
本発明の実施例について、以下に添付図面を参照しつつ説明する。
===実施例===
<糖類を含む細胞凍結保存液>
上述したように、医療用途の細胞凍結保存技術を実用化させるためには、細胞凍結保存液として、高い安全性と、低価格で原料の入手が容易なものであることが求められる。もちろん、高い細胞生存率を有することも必要となる。このような要望を満たす細胞凍結保存液としては、例えば、上記特許文献2に記載のトレハロースとオボアルブミンを含む細胞凍結保存液や、特許文献3に記載のトレハロースとコンドロイチン硫酸を含む細胞凍結保存液がある。特許文献2や3に記載の細胞凍結保存液は、食品由来の添加剤を含んで、安全性を有し、かつ高い細胞生存率を達成している。そして、特許文献2や3では、これらの文献に記載された細胞凍結保存液を用いつつ磁場を与えながら細胞を凍結させることでさらに高い細胞生存率が達成できる、としている。
そこで本発明者は、安全性を最優先課題としつつ、安価で原料の入手が容易な食品由来の物質を含む新規、かつ特許文献2や3に記載された細胞凍結保存液と同等かそれ以上の高い細胞生存率が得られる細胞凍結保存液を達成するべく鋭意研究を重ね、その結果、本発明に想到した。
そして、本発明の実施例に係る細胞凍結保存液は、生理食塩水からなる溶媒に糖類であるフルクトオリゴ糖を主添加剤として含むとともに、添加剤における副成分(以下、副添加剤)として、オボアルブミン、コンドロイチン硫酸、及びコラーゲンペプチドのいずれか一つを含むものである。
<サンプルの作製手順>
実施例に係る細胞凍結保存液の特性を評価するために、主添加剤や副添加剤の種類が異なる様々な凍結保存液を用いた細胞懸濁液をサンプルとして作製し、そのサンプルを凍結させ、解凍後の細胞生存率を調べた。なお、凍結対象となる細胞組織としては、ヒト胎児由来腎細胞株(HEK293A)を培養して得たHEK293細胞を用いた。以下に、サンプルの作製手順と評価手順を例示する。
まず、ヒト胎児由来腎細胞株(HEK293A)を、基本培地であるDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地、Dulbecco's Modified Eagle's Medium)に対してウシ胎児血清(FBS)及びペニシリンストレプトマイシンを、夫々10vol%及び1vol%加えた培地を用いて、温度37℃、CO濃度5%の環境下で培養してHEK293細胞(以下、「試験用細胞」と言うことがある。)を得る。次に、試験用細胞に細胞凍結保存液を加えた細胞懸濁液をサンプルとする。なお、細胞懸濁液における細胞濃度は1×10(cells/ml)とした。そして、そのサンプルに用いた細胞凍結保存液は、D-PBS(ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水)を主成分としつつ、糖類が主添加剤として添加されたものである。
<細胞凍結試験の手順>
上述した手順により作製したサンプルを以下の手順で凍結させる。まず、第1の容器であるクライオチューブ(以下、「チューブ」と言うことがある。)に500μlのサンプルを入れ、次いで、サンプルが入ったチューブを、2-プロパノールで満たされた第2の容器である凍結保存容器内に設置し、その凍結保存容器(以下、「容器」と言うことがある。)を、後述する凍結方法によりサンプルを凍結させる。
また、サンプルの解凍は、凍結したサンプルが入ったチューブが設置された凍結保存容器を、37℃の恒温槽に1分間保持する手順で行う。そして、各サンプルに対し、上述した手順で凍結して解凍する凍結解凍試験を行い、解凍後のサンプル内において生存している細胞の数を計測し、凍結前の細胞の数と解凍後の生存細胞の数とに基づいて細胞生存率を求めた。生存細胞の数は、フロートサイトメーターによる自動解析により、視細染色色素(PI)を用いて染色したサンプル内の試験用細胞の生死判定を行うことで計測した。
なお、サンプルは、試験を行う際にその都度調製されるため、以下に示す各サンプルは、作製条件や試験方法が同じであっても、試験の機会が異なれば、細胞生存率等の試験結果が異なる場合がある。また、上記サンプルは、試験用細胞としてHEK293細胞を用いていたが、実施例に係る細胞凍結保存液は、他の細胞にも適用可能である。
<凍結方法>
細胞懸濁液を凍結させるための一般的な方法は、プログラムフリーザーの冷凍庫内にサンプルを載置し、冷凍庫内を室温から所定の降温速度(例えば、-1℃/min)で-80℃程度の極低温にまで冷却して凍結させる方法(以下、緩慢凍結法)がある。なお、-80℃の温度に設定した冷凍庫内にサンプルを投入する凍結方法もあるが、近年では、緩慢凍結法が主流になりつつある。
ところで、実施例に係る細胞凍結保存液は、細胞内に浸透するDMSOを含むものとは異なり、糖類であるフルクトオリゴ糖を主添加剤として含んでいる。周知のごとく糖類は、毒性がないものの、脂溶性でないことから、上記の一般的な凍結方法を用いてサンプルを凍結させるとサンプルを適切に評価できない可能性がある。
具体的には、細胞を凍結させる際、細胞外の氷晶形成より、細胞内の氷晶形成が細胞の生存率に大きく影響する。そのため、DMSOを含む細胞凍結保存液を用いてサンプルを凍結させる場合、一般凍結方法により、細胞内に凍結保護剤であるDMSOを十分に浸透させ,細胞内の氷の起源である自由水と凍結保護剤とを置換し、氷晶形成による細胞内の器官(オーガナイザー)の損傷を抑制することが重要となる。
そして、実施例に係る細胞凍結保存液は、添加剤として分子量が大きい糖類を用いていることから細胞内に浸透し難い。そこで、細胞内の自由水が可能な限り脱水されるように、あるいは細胞内の浸透圧がある程度保たれるように、融点よりも低い温度でも固化することなく冷却された超過冷却状態となる温度(例えば、-30℃)で維持することで一気に凍結させる方法(以下、便宜的に「新規凍結法」と称する。)でサンプルを凍結させることが考えられる。そして、実施例に係る細胞凍結保存液の性能を正しく評価するためには、添加剤の物性を考慮した適切な方法でサンプルを凍結させて、異なる添加剤同士での性能比較ができるようにすることが必要である。
そこで、まず、生存率の向上効果が高い凍結方法を確認するために、サンプルを凍結させる際に緩慢凍結法と上記の新規凍結法とを用いた凍結解凍試験を行った。なお、ここでの凍結解凍試験では、細胞凍結保存液として、D-PBS中にフルクトオリゴ糖のみが10wt%~30wt%の割合で含まれた各種フルクトオリゴ糖溶液を用いた。
また、新規凍結法による凍結手順としては、プログラムフリーザーを用い、冷凍庫内を-2℃/minの降温速度で-30℃まで冷却するとともに、-30℃の温度で10分間維持してサンプルを凍結させる手順を採用した。緩慢凍結法による凍結手順としては、プログラムフリーザーを用い、冷凍庫内を-1℃/minの降温速度で-80℃まで冷却してサンプルを凍結させる手順を採用した。そして、このようにして新規凍結法、あるいは緩慢凍結法によってサンプルを凍結させた後、サンプルを-80℃の冷凍庫に移して1週間保管した。次いで、保管後のサンプルを、上記の方法で解凍し、細胞生存率を調べた。
図1、及び図2に、新規凍結法、及び緩慢凍結法によって溶媒となるD-PBS中にフルクトオリゴ糖を含む細胞凍結保存液を用いたサンプルを凍結したときの解凍後の細胞生存率を示した。また、図1では、D-PBS中にトレハロースが200mMの濃度で含まれた細胞凍結保存液を用いたサンプルにおける細胞生存率も比較例として示した。なお、フルクトオリゴ糖を含む細胞凍結保存液とトレハロースを含む細胞凍結保存液とでは、糖類の濃度の単位がwt%とmMとで異なっているが、これは、試料としてメーカーから提供されている粉体状のフククトオリゴ糖(例えば、富士フイルム和光純薬株式会社製)には異なる分子量のフルクトオリゴ糖が含まれており、分子量に基づくM(モル濃度)での定量ができないからである。一方、トレハロースは分子量が一定であることからmMで濃度を規定している。
図1に示したように、糖類としてフルクトオリゴ糖を含む細胞凍結保存液を用いたサンプルを新規凍結法によって凍結させた場合では、D-PBS中のフルクトオリゴ糖の割合が10wt%~30wt%の数値範囲において、トレハロース含む細胞凍結保存液を用いたサンプルに対して高い細胞生存率を示した。そして、15wt%の割合でフルクトオリゴ糖を含む細胞凍結保存液を用いたサンプルでは、84.1%の極めて高い細胞生存率を示した。
一方、緩慢凍結法によって凍結させたサンプルでは、図2に示したように、D-PBS中のフルクトオリゴ糖の割合が20wt%のときの65.2%の細胞生存率が最大であった。以上より、フルクトオリゴ糖を主添加剤とした実施例に係る細胞凍結保存液を用いる場合には、新規凍結法によってサンプルを凍結させた方が細胞生存率をより高めることができる。そして、以下に示す各サンプルについては、断りがない限り、上記手順に従った新規凍結法によりサンプルを凍結させるとともに、凍結したサンプルが入ったチューブが設置された容器を-80℃の冷凍庫内で1週間保管した後、その凍結保存容器を37℃の恒温槽内で1分間保持するという手順で解凍している。
<添加剤の副成分>
図1に示したように、細胞毒性のある添加剤を含まず食品由来の糖類であるフルクトオリゴ糖を添加剤とした細胞凍結保存液を用いるとともに、新規凍結法を採用することで、少なくとも70%に近い細胞生存率が得られることがわかった。次に、細胞生存率をさらに向上させるために、主添加剤であるフルクトオリゴ糖に、副添加剤として、オボアルブミン(OVA)、コンドロイチン硫酸、及びコラーゲンペプチドのいずれかを含む細胞凍結保存液を用いてサンプルを作製した。そして、上述したように、新規凍結方法によりサンプルを凍結させた上で-80℃の温度で1週間保管したのち、上記と同様の手順でサンプルを解凍する凍結解凍試験を行って、サンプルの細胞生存率を調べた。
なお、副添加剤を含む細胞凍結保存液は、D-PBS中に所定の割合でフルクトオリゴ糖が含まれているフルクトオリゴ糖液を調製し、その調製済みのフルクトオリゴ糖溶液に各種副添加剤を添加することで作製した。また、細胞凍結保存液中の副添加剤の含有量(vol%)については、所定容量(体積)のフルクトオリゴ糖溶液と、その所定容量のフルクトオリゴ糖に副添加剤を添加して得た細胞凍結保存液の容量とに基づいて計算した。
なお、OVA、及びコンドロイチン硫酸は、夫々、上記特許文献2、及び特許文献3に記載された添加剤で、いずれも食品由来の安全性の高い添加剤である。コラーゲンペプチドは、周知のごとく、ゼラチンを酵素等により加水分解することで得られる低分子の水溶性タンパク質である。ゼラチンは、魚類、牛、豚などの生体内に豊富に存在する不溶性タンパク質であるコラーゲンに熱を加えることで抽出することができる。そして、コラーゲンペプチドは、サプリメントなどの原料として広く使用されており、安全性が高く、安価に、かつ容易に入手できるものである。
図3に、D-PBS中に主添加剤となるフルクトオリゴ糖が15wt%の割合で含まれているフルクトオリゴ糖溶液に、副添加剤であるOVAが0.1vol%~10.0vol%の割合で含まれた細胞凍結保存液を用いたサンプルに対する凍結解凍試験後の細胞生存率を示した。同様に、図4、及び図5に、上記のフルクトオリゴ糖溶液に、副添加剤としてコンドロイチン硫酸、及びコラーゲンペプチドが0.1vol%~10.0vol%の割合で含まれている各種細胞凍結保存液を用いたサンプルに対する凍結解凍試験後の細胞生存率を示した。
図3~図5に示したように、フルクトオリゴ糖溶液中のフルクトオリゴ糖の割合が同じであっても、副添加剤の種類が異なると、細胞生存率が高くなる副添加剤の含有率も異なっていることがわかる。副添加剤がOVAであるときは、図3に示したように、フルクトオリゴ糖溶液に対する含有率が0.1vol%~10.0vol%の範囲で65%以上の細胞生存率を示し、0.5vol%~1.0vol%の含有率であるときには、90%以上かそれ以上の高い細胞生存率を示し、副添加剤による細胞生存率の向上効果が認められた。
副添加剤がコンドロイチン硫酸であるときは、図4に示したように、フルクトオリゴ糖溶液に対する含有率が上記の数値範囲で76%以上の細胞生存率を示し、1.0vol%以上では、安定して80%以上の細胞生存率を示した。そして3.0vol%以上では、フルクトオリゴ糖溶液のみの細胞凍結保存液を用いたときの細胞生存率よりも高い、85%以上の高い細胞生存率を示した。
副添加剤がコラーゲンペプチドであるときは、図5に示したように、フルクトオリゴ糖溶液に対する含有率が上記の数値範囲で一律に80%以上の細胞生存率を示し、5.0vol%以上では、安定して85%以上の細胞生存率を示した。そして5.0vol%以上では85%以上の高い細胞生存率を示し、さらに7.0vol%及び10.0vol%では、夫々、93.4vol%及び92.5%という極めて高い細胞生存率を示した。
以上より、フルクトオリゴ糖溶液にOVA、コンドロイチン硫酸、及びコラーゲンペプチドのいずれかが副添加剤として添加されてなる細胞凍結保存液を用いてサンプルを凍結させる場合、フルクトオリゴ糖溶液に対するOVA、コンドロイチン硫酸、及びコラーゲンペプチドの含有率が、それぞれ、0.5vol%以上1.0vol%以下、3.0vol%以上10.0vol%以下、及び5.0vol%以上10vol%以下とすれば、極めて高い細胞生存率が得られる。
このように、実施例に係る細胞凍結保存液は、主添加剤と副添加剤の含有率を調整することで、90%かそれ以上の極めて高い細胞生存率を得ることができる。さらに、特許文献2や3に記載されている冷凍装置を用いて、磁場を印加しながらサンプルを凍結させれば、さらに高い細胞生存率を得ることが期待できる。
<フルクトオリゴ糖について>
実施例に係る細胞凍結保存液には、主添加剤としてフルクトオリゴ糖が含まれている。周知のごとく、フルクトオリゴ糖は、サッカロースのフルクトース残基にフルクトースがβ-1,2結合したオリゴ糖で、1-Kestose, Nystose、及び1-Fructofuranosyl-D-Nystoseの混合物である。フルクトオリゴ糖は、ビフィズス菌増殖剤、難消化性及び難齲蝕性剤の研究に使用されている。
なお、フルクトオリゴ糖は、上記非特許文献5に記載されているように、凍結精子の凍害防止剤として検討されたことがあるが、当該文献に示されているように、凍害防止剤としての効果は、乳糖よりも劣っていた。そのため、従来では、フルクトオリゴ糖を細胞凍結保存液の添加剤として用いるという発想自体がなかった。もちろん、現時点において、フルクトオリゴ糖を含む細胞凍結保存液についての研究や開発に関する事実もない。
しかし、実施例に係る細胞凍結保存液では、フルクトオリゴ糖と各種タンパク質(OVA、コンドロイチン硫酸、コラーゲンペプチド)の双方が含まれていることで、この細胞凍結保存液を用いて凍結した細胞の解凍後の生存率をより高めることができる。

Claims (6)

  1. 生理食塩水であるD-PBSを溶媒とし、主添加剤と副添加剤とを含み、
    前記主添加剤は、フルクトオリゴ糖であり、
    前記副添加剤は、オボアルブミン、コンドロイチン硫酸、及びコラーゲンペプチドのいずれか一つである、
    細胞凍結保存液。
  2. 請求項1に記載の細胞凍結保存液であって、前記生理食塩水の中に10wt%以上30wt%以下の割合で前記フルクトオリゴ糖が含まれるフルクトオリゴ糖溶液に前記副添加剤が添加されてなり、当該副添加剤が0.1vol%以上10vol%以下の割合で含まれている、細胞凍結保存液。
  3. 請求項2に記載の細胞凍結保存液であって、前記オボアルブミンが0.5vol%以上1.0vol%以下の割合で含まれている、細胞凍結保存液。
  4. 請求項2に記載の細胞凍結保存液であって、前記コンドロイチン硫酸が3.0vol%以上10.0vol%以下の割合で含まれている、細胞凍結保存液。
  5. 請求項2に記載の細胞凍結保存液であって、前記コラーゲンペプチドが5.0vol%以上10.0vol%以下の割合で含まれている、細胞凍結保存液。
  6. 請求項1~請求項5のいずれかに記載の細胞凍結保存液を用いて細胞を凍結させる方法であって、
    凍結対象となる細胞に前記細胞凍結保存液を加えた細胞懸濁液をサンプルとして作製するサンプル作製ステップと、
    前記サンプルが収納された第1の容器を、2-プロパノールで満たされた第2の容器内に設置するするサンプル設置ステップと、
    前記サンプル設置ステップに次いで、前記第2の容器を冷凍庫内に載置して前記サンプルを凍結させる凍結ステップと、
    を含み、
    前記凍結ステップでは、前記サンプルを載置した前記冷凍庫内を、前記サンプルが超過冷却状態となる温度まで徐冷するとともに、当該温度で所定時間維持する、
    細胞凍結方法。
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