JP2024016891A - 発電装置、および、それを用いた発電システム - Google Patents

発電装置、および、それを用いた発電システム Download PDF

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Abstract

【課題】 外部から電力等をかけて人工的に加熱、および/または、冷却をしなくても、自然光等の光を照射するだけで電流を得ることができる発電効率に優れた熱電装置、および、それを用いた発電システムを提供すること。【解決手段】 本発明の可視光および近赤外光を透過し、中赤外光を吸収する光放射層と、可視光および近赤外光を吸収する光吸収層と、光放射層と光吸収層との間に少なくとも1つの熱電発電素子とを備え、少なくとも1つの熱電発電素子は、可視光および近赤外光を透過する基材と、基材の対向する主面にそれぞれ設けられ、可視光および近赤外光を透過し、かつ、ゼーベック係数の符号が互いに異なる熱電材料からなる一対の薄膜とを備え、少なくとも1つの熱電発電素子は、一対の薄膜の面内に平行な方向が、光放射層および光吸収層の面内に平行な方向に略垂直となるように位置する。【選択図】 図1

Description

本発明は、発電装置、および、それを用いた発電システムに関する。
近年、外部から電力等をかけて人工的に加熱、および/または、冷却をしなくても、自然光等の光を照射するだけで電流を得ることができる熱電変換素子が開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1によれば、可視光、及び、近赤外光を透過し、中赤外光を吸収し、かつ、スピン流を発生可能な、光放射-スピン流発生層と、光放射-スピン流発生層の少なくとも一部と接して配置された、スピン軌道相互作用を有する、スピン流-電流変換層と、可視光、及び、近赤外光を吸収する、光吸収層と、をこの順に有する積層体を備える熱電変換素子が開示される。
特許文献1に記載の熱電変換素子は、スピン流発生層を用いることにより、スピンゼーベック効果を用いた発電を可能にするが、さらなる発電効率の向上が期待されている。
特開2021-40066号公報
以上から、本発明の課題は、外部から電力等をかけて人工的に加熱、および/または、冷却をしなくても、自然光等の光を照射するだけで電流を得ることができる発電効率に優れた熱電装置、および、それを用いた発電システムを提供することである。
本発明による発電装置は、可視光および近赤外光を透過し、中赤外光を吸収する光放射層と、可視光および近赤外光を吸収する光吸収層と、前記光放射層と前記光吸収層との間に少なくとも1つの熱電発電素子とを備え、前記少なくとも1つの熱電発電素子は、可視光および近赤外光を透過する基材と、前記基材の対向する主面にそれぞれ設けられ、可視光および近赤外光を透過し、かつ、ゼーベック係数の符号が互いに異なる熱電材料からなる一対の薄膜とを備え、前記少なくとも1つの熱電発電素子は、前記一対の薄膜の面内に平行な方向が、前記光放射層および前記光吸収層の面内に平行な方向に略垂直となるように位置し、これにより上記課題を解決する。
前記光放射層は、波長380nm以上2.5μm以下の範囲の光に対して70%以上の透過率を有し、かつ、2.5μmより大きく20.0μm以下の範囲の光に対して70%以上の吸収率を有してもよい。
前記光放射層は、無機材料、有機材料、および、これらの組み合わせからなる群から選択される材料からなってもよい。
前記光放射層は、200μm以上1000μm以下の範囲の厚さを有してもよい。
前記光吸収層は、波長380nm以上2.5μm以下の範囲の光に対して70%以上の吸収率を有してもよい。
前記光吸収層は、黒色顔料を含有してもよい。
前記黒色顔料は、カーボン顔料、金属酸化物材料、および、有機顔料からなる群から選択されてもよい。
前記光吸収層は、100μm以上2mm以下の範囲の厚さを有してもよい。
前記基材は、波長380nm以上2.5μm以下の範囲の光に対して70%以上の透過率を有してもよい。
前記基材は、無機材料、有機材料、および、これらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
前記無機材料は、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリバリウムケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、石英、および、合成溶融シリカからなる群から選択されるガラスであってもよい。
前記無機材料は、サファイア、コランダム、アルミナ、酸化マグネシウム、および、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)からなる群から選択されるセラミックであってもよい。
前記有機材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP/OPP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS/OPS)、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、トリアセテート(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、および、ポリイミド(PI)からなる群から選択されるプラスチックであってもよい。
前記一対の薄膜は、p型の熱電材料およびn型の熱電材料の組み合わせであってもよい。
前記p型の熱電材料は、ヨウ化銅(CuI)、および、Cu系デラフォサイト型酸化物(CuMO、Mは、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、鉄(Fe)およびガリウム(Ga)からなる群から少なくとも1種選択される)からなる群から選択され、前記n型の熱電材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)、ガリウム添加酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)、フッ素添加酸化亜鉛(FZO)、および、窒化チタンからなる群から選択されてもよい。
前記基材は、厚さ方向に200μm以上2000μm以下の範囲の厚さを有し、面内方向に100μm以上50mm以下の範囲の一辺の長さを有してもよい。
前記一対の薄膜のそれぞれは、100nm以上500nm以下の範囲の厚さを有してもよい。
前記光吸収層は、太陽電池を備えてもよい。
前記少なくとも1つの熱電発電素子は、前記一対の薄膜の面内に平行な方向と、前記光放射層および前記光吸収層の面内に平行な方向とのなす角が70°以上90°以下となるように位置してもよい。
本発明による発電システムは、上記発電装置と、前記発電装置と電気的に接続され、前記発電装置で発電された電力を貯蔵する貯蔵装置とを備え、これにより上記課題を解決する。
本発明の発電装置は、可視光および近赤外光を透過し、中赤外光を吸収する光放射層と、可視光および近赤外光を吸収する光吸収層と、それらの間に少なくとも1つの熱電発電素子とを備える。このような構成により、日中は放射冷却と太陽熱との同時利用により、夜間は放射冷却により、熱電発電素子に温度勾配が生じ、発電し得る。特に、少なくとも1つの熱電発電素子は、可視光および近赤外光を透過する基材と、基材の対向する主面にそれぞれ設けられ、可視光および近赤外光を透過し、かつ、ゼーベック係数の符号が互いに異なる熱電材料からなる一対の薄膜とを備えるため、スピンゼーベック効果に比べて高い発電効果を示すゼーベック効果を利用できる。さらに、この熱電発電素子は、一対の薄膜の面内に平行な方向が、光放射層および光吸収層の面内に平行な方向に略垂直となるように位置する。これにより、光放射層と光吸収層との間の一対の薄膜の面内方向に大きな温度差(温度勾配)が生じる。その結果、発電効率がさらに増大するので、より多くの電力を生成できる。このような発電装置と貯蔵装置とを組み合わせることにより、発電システムを提供できる。
本発明による発電装置を示す模式図 本発明による別の発電装置を示す模式図 本発明によるさらに別の発電装置を示す模式図 本発明による発電システムを示す模式図 実施例1の発電装置の外観を示す図 屋外における実施例1の発電装置の熱起電力の変化を示す図 屋内の各条件における実施例1の発電装置の熱起電力の変化を示す図 屋内の各条件における比較例1の発電装置の熱起電力の変化を示す図 屋内の別の条件における実施例1の発電装置の熱起電力の変化を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明の発電装置およびその製造方法を詳述する。
図1は、本発明による発電装置を示す模式図である。
本発明の発電装置100は、可視光および近赤外光を透過し、中赤外光を吸収する光放射層110と、可視光および近赤外光を吸収する光吸収層120と、これらの間に少なくとも1つの熱電発電素子130とを備える。少なくとも1つの熱電発電素子130は、可視光および近赤外光を透過する基材140と、基材140の対向する主面にそれぞれ設けられ、可視光および近赤外光を透過し、かつ、ゼーベック係数の符号が互いに異なる熱電材料からなる一対の薄膜150、160とを備える。
ここで、少なくとも1つの熱電発電素子130は、一対の薄膜150、160の面内に平行な方向(例えば、矢印A)が、光放射層110および光吸収層120の面内に平行な方向(例えば、矢印B)に対して略垂直となるように位置する。本発明の発電装置100において、光吸収層120の主面は、光放射層110の主面と対向している。そのため、これらの面内に平行な方向は実質的に同じとなるため、ここでは矢印Bとして示す。
本発明の発電装置100は、高い発電効果を示すゼーベック効果を利用するため、発電効率に優れる。さらに、本発明の発電装置100は、光放射層110と光吸収層120との間の一対の薄膜150、160の面内方向に温度勾配を生じるので、発電効率がさらに増大し、より多くの電力を生成できる。
まず、本発明の発電原理について説明する。
本発明の発電装置100を屋外に配置した場合を想定する。日中、発電装置100には自然光hνが入射する。光放射層110は、自然光のうち、可視光および近赤外光を透過し、中赤外光を吸収する。ここで、一般に、自然光(地表で観測される太陽光、例えば、AM1.5G)には、中赤外光はほとんど含まれていないことが知られている。光放射層110は、自然光の主要成分である可視光および近赤外光を透過し、かつ、自然光には中赤外光がほとんど含まれないことから、光放射層110は、自然光の照射による温度上昇はほとんどない。
光放射層110を透過した可視光および近赤外光は、光吸収層120に到達し、光吸収層120に吸収される。可視光および近赤外光を吸収した光吸収層120は、光加熱により温度上昇する。その結果、光放射層110は、光吸収層120と比較して、相対的に温度が低くなり、光放射層110と光吸収層120との間には発電装置100の厚さ方向に沿った温度勾配(光吸収層120側の温度が高く、光放射層110側の温度が低い)が生じる。
また、光放射層110は、中赤外光の吸収率が高い、すなわち、中赤外光の放射率が高いため、光放射層110からは、相対的に温度の低い空間(この場合、宇宙空間)へと熱放射が起こりやすい。これにより、光放射層110は、日中でも放射冷却効果によって冷却される。その結果、光放射層110は、光吸収層120と比較して、相対的に温度が低くなり、光放射層110と光吸収層120との間の温度勾配が生じる。
この温度勾配は、熱電発電素子130の一対の薄膜150、160の厚さ方向ではなく、薄膜の面内方向に生じるので、より大きな温度勾配となり、発電効率が向上し得る。加えて、自然光は、光放射層110を透過したものだけでなく、光吸収層120に直接入射するもの(例えば、自然光hν’)もあるため、より大きな温度勾配が期待できる。このように、日中は、光の照射および放射冷却の同時利用による熱電発電を可能にする。
一方、夜間においては、自然光の入射はないものの、光放射層110からの放射冷却が生じるため、光放射層110は、光吸収層120と比較して、相対的に温度が低くなる。この結果、夜間においても、光放射層110と光吸収層120との間に温度勾配が生じる。しかも、その温度勾配は、光吸収層120側の温度が高く、光放射層110側の温度が低くなるため、光照射の有無によらず、熱電発電素子130から取り出される熱起電力の符号(極性)は同一となる。
このように、本発明の発電装置100は、光放射層110側から光を照射する場合には、光照射および放射冷却が相乗的に作用し、光放射層110側の温度が低く、光吸収層120側の温度が相対的に高い温度勾配を生じ、光を照射しない場合にも、放射冷却により、同一方向に温度勾配を生じるため、外部から電力等をかけて人工的に加熱、および/または、冷却をしなくても、自然光等の光を照射するだけで、電力を得ることができる。さらに、この温度勾配は、熱電発電素子130の一対の薄膜150、160の厚さ方向ではなく、薄膜の面内方向に生じるので、より大きな温度勾配となり、発電効率が劇的に向上し得る。
次に、各構成要素について詳細に説明する。
光放射層110は、可視光および近赤外光を透過し、中赤外光を吸収する材料からなれば特に制限はない。ここで、本願明細書では、可視光は、380nm以上780nm以下の範囲の波長を有する光であり、近赤外光は、780nmより大きく2.5μm以下の範囲の波長を有する光であり、中赤外光は、2.5μmより大きく20.0μm以下の範囲の波長を有する光である。
光放射層110が可視光および近赤外光を透過するとは、厚さ200μmの光放射層110において、上記波長を有する光を60%以上透過するものである。60%以上の透過率を有すれば、光吸収層120の温度を上昇させることができるので、光放射層110と光吸収層120との間に温度勾配を生じることができる。発電効率の観点から、光放射層110は、好ましくは、厚さ200μmにおいて、可視光および近赤外光を70%以上、より好ましくは、80%以上、透過する。上限は100%であってよい。
光放射層110が中赤外光を吸収するとは、厚さ200μmの光放射層110において、上記波長を有する光を60%以上吸収するものである。60%以上の吸収率を有すれば、光放射層110は熱放射するので、光放射層110と光吸収層120との間に温度勾配を生じることができる。発電効率の観点から、光放射層110は、好ましくは、厚さ200μmにおいて、中赤外光を70%以上、より好ましくは、80%以上、吸収する。上限は100%であってよい。
光放射層110の可視光および近赤外光の透過率と、中赤外光の透過率とは、上記範囲から適宜組み合わせてよいが、好ましくは、厚さ200μmにおいて、波長380nm以上2.5μm以下の範囲の光(可視光および近赤外光)に対して70%以上の透過率を有し、かつ、2.5μmより大きく20.0μm以下の範囲の光(中赤外光)に対して70%以上の吸収率を有する。より好ましくは、厚さ200μmにおいて、可視光および近赤外光に対して80%以上の透過率を有し、かつ、中赤外光に対して80%以上の吸収率を有する。
光放射層110は、無機材料、有機材料、および、これらの組み合わせからなる群から選択される材料からなる。これらの組み合わせの例としては、無機材料からなる薄膜と、有機材料からなる薄膜との多層膜であってよい。
無機材料は、好ましくは、シリカ等のガラスであり、より好ましくは、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリバリウムケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、石英、および、合成溶融シリカからなる群から選択されるガラスである。これらは、上記波長に対する透過率および吸収率を有する。
無機材料は、好ましくは、セラミックであり、より好ましくは、サファイア、コランダム、アルミナ、酸化マグネシウム、および、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)からなる群から選択されるセラミックである。これらは、上記波長に対する透過率および吸収率を有する。
有機材料は、好ましくは、プラスチック等のポリマーであり、より好ましくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP/OPP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS/OPS)、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、トリアセテート(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、および、ポリイミド(PI)からなる群から選択されるプラスチックである。これらは、上記波長に対する透過率および吸収率を有する。
光放射層110の厚さは、特に制限はないが、例示的には、200μm以上1000μm以下の範囲である。この範囲であれば、透過率の調整が容易である。光放射層110の厚さは、より好ましくは、200μm以上500μm以下、なお好ましくは、200μm以上300μm以下の範囲である。この範囲であれば、可視光および近赤外光に対して高い透過率を有し、中赤外光に対して高い吸収率を有することができる。
光吸収層120は、上述の波長を有する可視光および近赤外光を吸収する材料からなれば特に制限はない。光吸収層120が可視光および近赤外光を吸収するとは、上記波長を有する光を60%以上吸収するものである。60%以上吸収すれば、光吸収層120の温度を上昇し、光放射層110と光吸収層120との間に温度勾配を生じることができる。発電効率の観点から、光吸収層120は、好ましくは、厚さ500μmにおいて、可視光および近赤外光を70%以上、より好ましくは、80%以上、吸収する。上限は100%であってよい。
光吸収層120の成分としては特に制限はないが、黒色顔料を含有することが好ましい。黒色顔料は、カーボン顔料、金属酸化物材料、および、有機顔料からなる群から選択されてよい。カーボン顔料は、例えば、活性炭、カーボンブラック等のカーボン材料である。金属酸化物材料は、例えば、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)等の金属酸化物である。有機顔料は、例えば、アニリンブラック、ラクタムブラック、ペリレンブラック等の有機材料である。
黒色顔料は、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、有機物等で表面処理された表面処理済み顔料であってもよい。表面処理としては、例えば、(メタ)アクリルシラン処理、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、カップリング剤による処理等が挙げられる。
特に制限されないが、光吸収層120は、黒色顔料と樹脂とを含有する黒色塗料により得られた塗膜であることが好ましい。黒色塗料が含有する樹脂としては特に制限されず、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。このような黒色塗料は、ガラス基板、プラスチック基板、半導体基板、セラミック基板、金属基板等各種基板に塗布されてよい。これにより発電装置100の取り扱いが容易になる。
黒色塗料は、上記以外に、硬化剤、界面活性剤、溶媒、顔料、染料、フィラー等を含有していてもよい。
光吸収層120の厚さは、特に制限はないが、例示的には、100μm以上2mm以下の範囲である。この範囲であれば、吸収率の調整が容易である。光吸収層120の厚さは、より好ましくは、300μm以上1.5mm以下、なお好ましくは、500μm以上1.2mm以下の範囲である。この範囲であれば、可視光および近赤外光に対して高い吸収率を有することができる。なお、光吸収層120が黒色塗料の塗膜を付与した基板からなる場合、光吸収層120の厚さは、塗膜と基板とを合わせた厚さであってよい。
熱電発電素子130の基材140は、その主面に薄膜を形成可能なものであれば制限はないが、好ましくは、可視光および近赤外光を透過する材料からなるとよい。これにより、基材140は自然光を透過するので、光吸収層120の温度をさらに上昇できる。その結果、光放射層110と光吸収層120との間により大きな温度勾配を生じる。
基材140は、光放射層110と同様に、厚さ200μmにおいて、波長380nm以上2.5μm以下の範囲の光(可視光および近赤外光)に対して60%以上の透過率を有するものを採用できる。基材140は、より好ましくは、可視光および近赤外光に対して70%以上、なおさらに好ましくは、80%以上の透過率を有する。上限は100%であってよい。
基材140の材料としては、上述の光放射層110の材料と同じものを採用でき、無機材料、有機材料、および、これらの組み合わせからなる群から選択される材料からなる。これらの組み合わせの例としては、無機材料からなる薄膜と、有機材料からなる薄膜との多層膜であってよい。
無機材料は、好ましくは、シリカ等のガラスであり、より好ましくは、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリバリウムケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、石英、および、合成溶融シリカからなる群から選択されるガラスである。これらは、上記波長に対する透過率を有する。
無機材料は、好ましくは、セラミックであり、より好ましくは、サファイア、コランダム、アルミナ、酸化マグネシウム、および、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)からなる群から選択されるセラミックである。これらは、上記波長に対する透過率を有する。
有機材料は、好ましくは、プラスチック等のポリマーであり、より好ましくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP/OPP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS/OPS)、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、トリアセテート(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、および、ポリイミド(PI)からなる群から選択されるプラスチックである。これらは、上記波長に対する透過率を有する。
基材140の大きさには、特に制限はないが、例示的には、厚さ方向に200μm以上2mm以下の範囲の厚さを有し、面内方向に100μm以上50mm以下の範囲の一辺の長さを有する。この範囲であれば、取り扱いが簡便であり、主面への薄膜の形成も容易である。基材140は、好ましくは、厚さ方向に500μm以上1mm以下の範囲の厚さを有し、面内方向に5mm以上15mm以下の範囲の一辺の長さを有する。これにより、薄膜150、160の面内方向により大きな温度勾配を発生させることができる。
薄膜150、160は、可視光および近赤外光を透過し、かつ、ゼーベック係数の符号が互いに異なる熱電材料からなる一対の薄膜であれば、特に制限はない。ここでも、薄膜150、160は、基材140と同様に、厚さ100nmにおいて、波長380nm以上2.5μm以下の範囲の光(可視光および近赤外光)に対して60%以上の透過率を有するものを採用できる。薄膜150、160は、より好ましくは、可視光および近赤外光に対して70%以上、なおさらに好ましくは、80%以上の透過率を有する。これにより、熱電発電素子130は、自然光を透過し、光吸収層120の温度をさらに上昇できる。その結果、光放射層110と光吸収層120との間により大きな温度勾配を生じる。なお、上限は100%であってよい。
一対の薄膜150、160のゼーベック係数の符号が互いに異なるとは、薄膜150、160は、互いに異なる伝導型の熱電材料であり、p型の熱電材料(ゼーベック係数:正の値)およびn型の熱電材料(ゼーベック係数:負の値)の組み合わせである。例えば、薄膜150がp型の熱電材料からなり、薄膜160がn型の熱電材料からなる場合、薄膜150、導電性物質170、薄膜160の順で電流が流れる。詳細には、薄膜150の正孔が高温側の光吸収層120から熱エネルギーを得て、低温側の光放射層110に接した導電性物質170へ移動し、熱エネルギーを放出し、次いで、薄膜160の電子が高温側から熱エネルギーを得る。薄膜150、160の伝導型が逆の場合は、逆方向に電流が流れる。
なお、図1では、薄膜150、160は、導電性物質170によって電気的に接続されており、例えば、薄膜150から薄膜160へと電流が流れる。このような導電性物質170は、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)等の通常の電極材料であってもよいし、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)などに代表される透明導電膜であってもよい。
p型の熱電材料は、好ましくは、ヨウ化銅(CuI)、および、Cu系デラフォサイト型酸化物(CuMO、Mは、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、鉄(Fe)およびガリウム(Ga)からなる群から少なくとも1種選択される)からなる群から選択される。これらは、可視光および近赤外光を透過し、p型の伝導型を有し、正の値のゼーベック係数を有する熱電材料であることが知られている。
n型の熱電材料は、好ましくは、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)、ガリウム添加酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)、フッ素添加酸化亜鉛(FZO)、および、窒化チタンからなる群から選択される。これらは、可視光および近赤外光を透過し、n型の伝導型を有し、負の値のゼーベック係数を有する熱電材料であることが知られている。
薄膜150、160は、好ましくは、100nm以上500nm以下の範囲の厚さを有する。この範囲であれば、品質の優れた膜となり、可視光および近赤外光に対して優れた透過率を有する。薄膜150、160は、より好ましくは、100nm以上300nm以下の範囲である。なお、薄膜150、160の厚さは、同じであっても、異なっていてもよい。
熱電発電素子130は、図1に示すように、一対の薄膜の面内に平行な方向(矢印A)が、光放射層110および光吸収層120の面内に平行な方向(矢印B)に対して略垂直となるように位置することを特徴とする。これにより、光放射層110と光吸収層120との間で、熱電発電素子130の薄膜150、160の面内方向に温度勾配を生じる。この温度勾配は、例えば、図8に示す熱電発電素子(すなわち、熱電材料からなる薄膜の面内に平行な方向が、光放射層および光吸収層の面内に平行な方向と同じ場合)における薄膜の温度勾配(この場合は薄膜の厚さ方向に生じる)に比べて劇的に大きな温度差となる。この結果、大きな熱起電力を得ることができる。
略垂直となるように位置するとは、矢印Bに対する矢印Aのなす角(鋭角)が70°以上90°以下である。この範囲であれば、薄膜150、160の面内方向に温度勾配を効率的に生じさせることができる。より好ましくは、矢印Bに対する矢印Aのなす角(鋭角)が80°以上90°以下である。この範囲であれば、薄膜150、160の面内方向により大きな温度勾配を効率的に生じさせ、熱電発電素子130の固定も容易である。
発電効率や熱電発電素子の安定性の観点から、一対の薄膜150、160の面内に平行な方向は光放射層110および光吸収層120の面内に平行な方向に対して略垂直であることが好ましいが、薄膜の面内方向と光放射層および光吸収層の面内方向とが平行でない限り、図8に示す熱電発電素子よりも発電効率は向上する。例えば、薄膜の面内方向と、光放射層および光吸収層の面内方向とのなす角(鋭角)が0°より大きく70°未満となるように、光放射層と光吸収層との間に熱電発電素子を配置した発電装置を実現してもよい。
本発明の発電装置100の製造方法は特に制限はなく、公知の方法で製造されてよい。例えば、まず光放射層110および光吸収層120を用意する。次いで、基材140の主面のそれぞれに、物理的気相成長法、化学的気相成長法等により熱電材料からなる一対の薄膜150、160を成膜し、熱電発電素子130を製造する。次いで、この熱電発電素子130を、薄膜150、160の面内に平行な方向が、光吸収層120の面内に平行な方向に対して略垂直となるように配置する。次いで、一対の薄膜150、160を導電性物質等で電気的に接続し、その上に光放射層110を、薄膜150、160の面内に平行な方向が、光放射層110の面内に平行な方向に対して略垂直となるように配置すればよい。
図2は、本発明による別の発電装置を示す模式図である。
本発明の別の発電装置200は、3個の熱電発電素子130が導電性物質210を介して交互に電気的に直列に接続されている以外は、図1の発電装置100と同様であるため、重複する説明を省略する。このように複数の熱電発電素子130を接続することにより、熱起電力を大きくできる。図2では3個の熱電発電素子130を示すが、熱電発電素子の個数は3個に限らない。
図3は、本発明によるさらに別の発電装置を示す模式図である。
本発明のさらに別の発電装置300は、光吸収層120が太陽電池310を備えている以外は、図1の発電装置100と同様であるため、重複する説明を省略する。太陽電池310は、光電変換するものであれば特に制限はなく、任意の太陽電池モジュール、太陽電池パネルであってよい。
太陽電池310を光吸収層120上に設置することにより、昼間の熱起電力を増大させることができる。自然光(太陽光)のうち、太陽電池310が電気に変換するに使用しない光は、太陽電池310に吸収され、太陽電池310そのものが光吸収層としても機能し得る。その結果、光放射層110と、太陽電池310および光吸収層120との間にさらに大きな温度勾配を生じるので、より大きな熱起電力を得ることができる。
当然ながら、図3の発電装置300に図2の発電装置200の複数の熱電発電素子130を組み合わせてもよく、このような改変も本発明の一部である。
図1~図3では、一対の薄膜150、160は、発電効率の観点から、ゼーベック係数の符号が互いに異なる熱電材料からなるものとして説明してきたが、一対の薄膜150、160は、ゼーベック係数の絶対値に差があれば、ゼーベック係数の符号が同一であっても、熱エネルギーを電気に変えることは可能である。このような改変も本発明の一部である。
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明した本発明の発電装置を用いた発電システムについて説明する。
図4は、本発明による発電システムを示す模式図である。
本発明の発電システムは、発電装置410と、発電装置410に電気的に接続され、発電装置410で発電された電力を貯蔵する貯蔵装置420とを備える。発電装置410は、図1~図3を参照して説明した本発明の発電装置100、200、300であるため説明を省略する。図4では、発電装置410は、建造物の屋根に配置されているが、自然光を照射できる環境である限り、これに限らない。
貯蔵装置420は、電力を貯蔵できるものであれば特に制限はないが、例えば、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池等の二次電池、セラミックスコンデンサ、フィルムコンデンサ等のコンデンサが挙げられる。
発電装置410は、日中は光照射と放射冷却により、夜間は放射冷却により、同一符号の熱起電力を生成し、生成した電力を貯蔵装置420に貯蔵することにより、外部から電力等をかけて人工的に加熱、および/または、冷却をすることなく、自然光等の光を利用した、電力を供給可能な発電システムを提供できる。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[実施例1]
実施例1では、光放射層としてPETシートを、光吸収層として黒色塗料で被覆されたアクリル板を、熱電発電素子として対向する主面のそれぞれにIGZOおよびCuIを有するガラス基板を用いた発電装置を製造した。
洗浄したアクリル板(光社製、A960-2M、18mm×18mm×1mm)の表面に黒色塗料(イチネンTASCO社製、TA410KS)を塗布し、被膜を形成した。被膜の厚さは、約20μmであった。被膜付アクリル板の透過スペクトル(波長380nm以上2.5μm以下の範囲)を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、V-570)で測定したところ、被膜付アクリル板は、上記波長域において90%以上の吸収率を有した。
洗浄したホウケイ酸ガラス基板(SCHOTT社製、D263Teco、10mm×10mm×0.7mm)の一方の主面にCuI薄膜を成膜し、対向する他方の主面にIGZO薄膜を成膜した。ガラス基板の透過スペクトル(波長380nm以上2.5μm以下の範囲)を測定したところ、ガラス基板は、上記波長域において90%以上の透過率を有した。なお、厚さ200μmに換算したところ、透過率は90%以上であることが分かった。
CuI薄膜(200nm)は次のようにして成膜した。ガラス基板の一方の主面にEB蒸着によりCu膜(40nm)を蒸着し、次いで、Cu膜をヨウ素化した。ヨウ素化は、大気圧下でヨウ素ガス中にCu膜を2時間暴露させた。CuI薄膜の透過スペクトル(波長380nm以上2.5μm以下の範囲)を測定したところ、CuI薄膜は、上記波長域において80%以上の透過率を有した。このとき、ガラス基板の透過スペクトルはバックグラウンドとして除去された。なお、厚さ100nmに換算したところ、透過率は90%以上であることが分かった。
IGZO薄膜(150nm)は次のようにして成膜した。CuI膜が形成されたガラス基板のもう一方の主面にスパッタによりIGZO膜を成膜した。スパッタ条件は以下のとおりであった。
ターゲット;酸化インジウム(In)ターゲット、酸化ガリウム(Ga)ターゲット、酸化亜鉛(ZnO)ターゲット、
圧力;0.01Pa、
DC出力;200W、
温度;室温(25℃)、
スパッタガス;アルゴンガス(流量19.6sccm)および酸素ガス(流量0.4sccm)
基板-ターゲット間距離;10cm
IGZO薄膜の透過スペクトル(波長380nm以上2.5μm以下の範囲)を測定したところ、IGZO薄膜は、上記波長域において80%以上の透過率を有した。このとき、CuI薄膜およびガラス基板の透過スペクトルはバックグラウンドとして除去された。なお、厚さ100nmに換算したところ、透過率は85%以上であることが分かった。
次いで、IGZO薄膜とCuI薄膜が成膜された基板の側面にアルミ箔を銀ペースト(藤倉化成社製、D-500)で張り付け、IGZO薄膜とCuI薄膜とを電気的に導通させた。このようにして熱電発電素子を形成した。
黒色塗料で被覆されたアクリル板上に熱電発電素子を配置し、その上に、PETシート(東レ社製、ルミラーT60、25mm×25mm×0.25mm)を配置し、発電装置を得た。PETシートの透過スペクトル(波長380nm以上2.5μm以下の範囲)を測定したところ、PETシートは、上記波長域において80%以上の透過率を有した。なお、厚さ200μmに換算したところ、透過率は85%以上であることが分かった。また、PETシートの別の透過スペクトル(2.5μmより大きく20.0μm以下の範囲)を、フーリエ変換赤外分光装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、iS50R)により測定したところ、PETシートは、上記波長域において80%以上の吸収率であった。なお、厚さ200μmに換算したところ、吸収率は75%以上であることが分かった。
ここで、熱電発電素子のIGZO薄膜およびCuI薄膜の面内に平行な方向が、黒色塗料で被覆されたプラスチックの面内に平行な方向と略垂直(なす角90°)となるように配置した。安定性のため、黒色塗料で被覆されたプラスチックの表面に切り込みを入れ、熱電発電素子を差し込んで、固定した。その後、電気的コンタクトを取るためにIGZO薄膜およびCuI薄膜の下端に導線を取付け、この上に、黒色塗料で被覆されたプラスチックの面内に平行な方向と並行となるようにPETシートを配置した。このようにして実施例1の発電装置が得られた。実施例1の発電装置の外観を図5に示す。
実施例1の発電装置を用いて、屋外(2022年5月25日~26日)における熱起電力の変化を測定した。結果を図6に示す。実施例1の発電装置を用いて、屋内(気温25℃、相対湿度45%)における熱起電力の変化を測定した。屋内においても屋外同様の環境を再現するため、宇宙の代わりに表面を前述の黒体塗料で塗布したペルチェモジュール(ビックス社製、LVPU-40)、太陽の代わりにソーラーシミュレータ(擬似太陽光照射装置;Peccel社製、PEC-L01)を使用した。なお、ペルチェモジュールは、発電装置との距離が約6cmとなるよう配置し、かつ、摂氏0度に冷却するよう調整した。擬似太陽光照射装置は、発電装置に照射する擬似太陽光強度が333mW/cmとなるよう調整した。結果を図7に示す。次いで、ソーラーシミュレータを使用せず、ペルチェモジュールを-10℃~60℃まで変化させた際の熱起電力の変化を測定した。結果を図9に示す。
[比較例1]
比較例1では、光放射層としてITO薄膜を、光吸収層として黒色塗料で被覆されたガラス基板を、熱電発電素子としてIGZOおよびCuIを用いた発電装置を製造した。
洗浄したガラス基板の表面に黒色塗料を塗布し、被膜を形成した。被膜の厚さは、20μmであった。ガラス基板のもう一方の主面に、実施例1と同様にして、透明電極(ITO薄膜、100nm)を形成し、その上に、CuI薄膜(300nm)およびIGZO薄膜(300nm)を並列して形成し、これらCuI薄膜およびIGZO薄膜を透明電極(ITO薄膜、100nm)で接続した。各薄膜を形成する領域を限定するために、メタルマスクを使用した。このようにして比較例1の発電装置が得られた。
比較例1の発電装置を用いて、疑似太陽光強度を500mW/cmにした以外は、実施例1と同様に、屋内における熱起電力を測定した。結果を図8に示す。
以上の結果をまとめて説明する。
図5は、実施例1の発電装置の外観を示す図である。
図5によれば、実施例1の発電装置は、光放射層(PETシート)と、光吸収層(黒色塗料で被覆されたアクリル板)と、ガラス基板の対向する主面に透明な熱電材料からなる薄膜を備えた熱電発電素子とを備え、薄膜の面内に平行な方向が、PETシートおよびアクリル板の面内に平行な方向に略垂直となっている様子が分かる。
実施例1の発電装置(図5)および比較例1の発電装置(図8の模式図)を用いて、熱電発電素子に生じる温度差(ΔT)、すなわち、光放射層と光吸収層との間に生じる温度勾配(温度差(ΔT))を数値計算した。設定条件は、太陽光強度が333mW/cmであり、温度が25℃とした。数値計算には、有限要素法に基づくシミュレーションソフト、COMSOL Multiphysicsを用いた。その結果、実施例1の発電装置によれば、ΔTは1Kを超えることが分かった。一方、比較例1の発電装置によれば、ΔTは1mK以下であった。このことから、本発明の発電装置の発電効率は高いことが示唆される。
図6は、屋外における実施例1の発電装置の熱起電力の変化を示す図である。
図6によれば、実施例1の発電装置は1mV台の熱起電力を発生し、昼夜で熱起電力の符号が反転しないことが確認された。このことは、昼夜通して、熱電発電素子には同じ方向に温度差が生じていることを示しており、同一の極性の電流を取り出すことができる。
図6では、1つの熱電発電素子のみを備える発電装置の結果を示したが、熱電発電素子を複数直列に接続することにより、熱起電力を増大できることは言うまでもない。また、太陽電池を光吸収層上に設置することにより、昼間の熱起電力を増大させることもできる。太陽電池は太陽光の全ての波長を電気に変換するわけではなく、光電変換に使われなかった波長は太陽電池ひいては素子下部を加熱するため、光吸収層として機能する。この場合、熱電発電素子および太陽電池から得られた電力を組み合わせて使用してもよいし、これらを貯蔵装置に蓄積することもできる。
図7は、屋内の各条件における実施例1の発電装置の熱起電力の変化を示す図である。
図8は、屋内の各条件における比較例1の発電装置の熱起電力の変化を示す図である。
図7および図8において、左から、「放射冷却のみ」、「疑似太陽光のみ」、「放射冷却と疑似太陽光との同時利用」の条件における熱起電力が示される。図7によれば、実施例1の発電装置は、いずれの場合も、同符号の熱起電力を発生し、特に、放射冷却と疑似太陽光との同時利用によって熱起電力(0.8mV)が増大することが分かった。この値は、「放射冷却のみ」の熱起電力と、「疑似太陽光のみ」の熱起電力との和に一致した。
一方、図8によれば、比較例1の発電装置は、いずれの場合も、同符号の熱起電力を発生するが、放射冷却と疑似太陽光との同時利用によっても、その熱起電力はわずか0.08mV程度であり、この値は実施例1と比較して1桁以上低かった。
このことから、本発明の発電装置のように、一対の薄膜(IGZO薄膜およびCuI薄膜)の面内に平行な方向が、光放射層(PETシート)および光吸収層(黒色塗料付アクリル基板)の面内に平行な方向に略垂直となるように位置することにより、一対の薄膜の面内方向に大きな温度差が発生することが示された。
図9は、屋内の別の条件における実施例1の発電装置の熱起電力の変化を示す図である。
図9には、ソーラーシミュレータを使用せず、ペルチェモジュールを-10℃~60℃まで変化させた際の、実施例1の発電装置の熱起電力の変化が示される。図9によれば、放射冷却と放射加熱との間で異なる符号の熱起電力が発生することが分かった。このことから光放射層が放射冷却では冷却され、放射加熱では加熱されることが確認された。
本発明の発電装置は、外部から電力等をかけて人工的に加熱、および/または、冷却をしなくても、屋外に設置して自然光等の光を照射したり、放射冷却させたりするだけで環境発電することができ、発電効率に優れるため、オフグリッドのセンサー等の給電用途に適用できる。また、本発明の発電装置を貯蔵装置と組み合わせることにより発電システムを提供できる。
100、200、300、410 発電装置
110 光放射層
120 光吸収層
130 熱電発電素子
140 基材
150、160 薄膜
170、210 導電性物質
310 太陽電池
420 貯蔵装置

Claims (20)

  1. 可視光および近赤外光を透過し、中赤外光を吸収する光放射層と、
    可視光および近赤外光を吸収する光吸収層と、
    前記光放射層と前記光吸収層との間に少なくとも1つの熱電発電素子と
    を備え、
    前記少なくとも1つの熱電発電素子は、
    可視光および近赤外光を透過する基材と、
    前記基材の対向する主面にそれぞれ設けられ、可視光および近赤外光を透過し、かつ、ゼーベック係数の符号が互いに異なる熱電材料からなる一対の薄膜と
    を備え、
    前記少なくとも1つの熱電発電素子は、前記一対の薄膜の面内に平行な方向が、前記光放射層および前記光吸収層の面内に平行な方向に略垂直となるように位置する、発電装置。
  2. 前記光放射層は、波長380nm以上2.5μm以下の範囲の光に対して70%以上の透過率を有し、かつ、2.5μmより大きく20.0μm以下の範囲の光に対して70%以上の吸収率を有する、請求項1に記載の発電装置。
  3. 前記光放射層は、無機材料、有機材料、および、これらの組み合わせからなる群から選択される材料からなる、請求項2に記載の発電装置。
  4. 前記光放射層は、200μm以上1000μm以下の範囲の厚さを有する、請求項1~3のいずれかに記載の発電装置。
  5. 前記光吸収層は、波長380nm以上2.5μm以下の範囲の光に対して70%以上の吸収率を有する、請求項1~4のいずれかに記載の発電装置。
  6. 前記光吸収層は、黒色顔料を含有する、請求項1~5のいずれかに記載の発電装置。
  7. 前記黒色顔料は、カーボン顔料、金属酸化物材料、および、有機顔料からなる群から選択される、請求項6に記載の発電装置。
  8. 前記光吸収層は、100μm以上2mm以下の範囲の厚さを有する、請求項1~7のいずれかに記載の発電装置。
  9. 前記基材は、波長380nm以上2.5μm以下の範囲の光に対して70%以上の透過率を有する、請求項1~8のいずれかに記載の発電装置。
  10. 前記基材は、無機材料、有機材料、および、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~9のいずれかに記載の発電装置。
  11. 前記無機材料は、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリバリウムケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、石英、および、合成溶融シリカからなる群から選択されるガラスである、請求項10に記載の発電装置。
  12. 前記無機材料は、サファイア、コランダム、アルミナ、酸化マグネシウム、および、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)からなる群から選択されるセラミックである、請求項10に記載の発電装置。
  13. 前記有機材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP/OPP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS/OPS)、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、トリアセテート(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、および、ポリイミド(PI)からなる群から選択されるプラスチックである、請求項10に記載の発電装置。
  14. 前記一対の薄膜は、p型の熱電材料およびn型の熱電材料の組み合わせである、請求項1~13のいずれかに記載の発電装置。
  15. 前記p型の熱電材料は、ヨウ化銅(CuI)、および、Cu系デラフォサイト型酸化物(CuMO、Mは、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、鉄(Fe)およびガリウム(Ga)からなる群から少なくとも1種選択される)からなる群から選択され、
    前記n型の熱電材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)、ガリウム添加酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)、フッ素添加酸化亜鉛(FZO)、および、窒化チタンからなる群から選択される、請求項14に記載の発電装置。
  16. 前記基材は、厚さ方向に200μm以上2000μm以下の範囲の厚さを有し、面内方向に100μm以上50mm以下の範囲の一辺の長さを有する、請求項1~15のいずれかに記載の発電装置。
  17. 前記一対の薄膜のそれぞれは、100nm以上500nm以下の範囲の厚さを有する、請求項1~16のいずれかに記載の発電装置。
  18. 前記光吸収層は、太陽電池を備える、請求項1~17のいずれかに記載の発電装置。
  19. 前記少なくとも1つの熱電発電素子は、前記一対の薄膜の面内に平行な方向と、前記光放射層および前記光吸収層の面内に平行な方向とのなす角が70°以上90°以下となるように位置する、請求項1~18のいずれかに記載の発電装置。
  20. 請求項1~19のいずれかに記載の発電装置と、
    前記発電装置と電気的に接続され、前記発電装置で発電された電力を貯蔵する貯蔵装置と
    を備える、発電システム。
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