JP2023524802A - コロナウイルス感染の治療または予防方法 - Google Patents

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Abstract

本明細書に提供するのは、コロナウイルス感染の、特に、免疫抑制を必要とする対象における治療または予防のためのボクロスポリンの使用方法である。【選択図】図1B

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月7日に出願された「METHODS OF TREATING OR PREVENTING VIRUS INFECTION」と題する米国仮出願第63/021,239号、及び2020年5月8日に出願された「METHODS OF TREATING OR PREVENTING VIRUS INFECTION」と題する米国仮出願第63/022,357号の優先権を主張する。これらの内容は、参照により全体として組み込まれる。
本明細書に提供するのは、ウイルス感染、特に、免疫抑制を必要とする対象におけるウイルス感染の治療または予防方法である。
ウイルス感染は、致命的な疾患につながる可能性がある。例えば、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)によって引き起こされるコロナウイルス感染症2019(COVID-19)は、心肺停止を引き起こすことに加えて、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の急速な発症につながる可能性がある。COVID-19の拡大は、感染力が高いこと、及び長くかつ多くの場合無症状である潜伏期間のため、阻止するのが困難である。
ある特定の人々は、ウイルスの大流行またはパンデミックの際に、感染及び死亡のリスクが大幅に増加する。例えば、多くの患者が、医学的理由(例えば、自己免疫疾患または固形臓器移植に起因する)のために、間欠的、長期または生涯にわたる免疫抑制を必要としている。これらの患者は、免疫抑制状態のため、ウイルス感染の影響を受けやすい。従って、免疫抑制を必要とする患者をその基礎疾患に関わらず健康な状態に維持することができると同時に、抗ウイルス効果を提供することができる薬物が必要とされている。提供するのは、かかるニーズを満たす実施形態である。
本明細書に提供するのは、対象におけるウイルス感染の治療または予防方法であり、該方法は、該対象に対して、ボクロスポリン、例えば、治療有効量のボクロスポリンを投与することを含む。該提供する実施形態のいくつかでは、該対象は、免疫抑制を必要としている。該提供する実施形態のいくつかでは、該ウイルス感染は、シクロフィリンA(CypA)またはCypA関連経路の阻害によって改善される。
該提供する実施形態のいくつかでは、本明細書に提供するのは、免疫抑制を必要とする対象におけるウイルス感染の治療または予防方法であり、該方法は、該対象に対して、治療有効量のボクロスポリンを投与することを含み、該ウイルス感染は、シクロフィリンA(CypA)またはCypA関連経路の阻害によって改善される。
該提供する実施形態のいくつかでは、該ウイルス感染は、Coronaviridaeのメンバーであるウイルスによって引き起こされる。
該提供する実施形態のいくつかでは、該ウイルスは、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、デルタコロナウイルス、またはガンマコロナウイルスである。
該提供する実施形態のいくつかでは、該ウイルスは、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63)、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、または重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である。
該提供する実施形態のいくつかでは、該ウイルスは、MERS-CoV、SARS-CoV、またはSARS-CoV-2である。
該提供する実施形態のいくつかでは、該ウイルスは、SARS-CoV-2である。
該提供する実施形態のいくつかでは、該治療有効量は、約0.1mg/kg/日~約2mg/kg/日である。
該提供する実施形態のいくつかでは、該治療有効量は、約7.9mg BID、約15.8mg BID、約23.7mg BID、約31.6mg BID、約39.5mg BID、約47.4mg BID、または約55.3mg BIDである。
該提供する実施形態のいくつかでは、該治療有効量は、約7.9mg QD、約15.8mg QD、約23.7mg QD、約31.6mg QD、約39.5mg QD、約47.4mg QD、約55.3mg QD、約63.2mg QD、約71.1mg QD、約79.0mg QD、約86.9mg QD、約94.8mg QD、約102.7mg QD、または約110.6mg QDである。
該提供する実施形態のいくつかでは、該治療有効量は、約0.05μM~約10μM、約0.1μM~約5μM、約0.2μM~約2.5μM、約0.3μM~約1.0μM、約0.4μM~約0.9μM、約0.5μM~約0.8μM、約0.1μM~約0.5μM、もしくは約0.2μM~約0.4μM、または約0.05、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.45、約0.5、約0.55、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約6.0、約7.0、約8.0、約9.0、もしくは約10.0μMもしくはそれ未満の濃度と同等であるか、またはそれを達成することができる。
該提供する実施形態のいくつかでは、該方法は、さらに、該対象の腎機能を監視することを含む。
該提供する実施形態のいくつかでは、該対象の腎機能を監視することは、以下を含む:
(a)異なる日の少なくとも第一の時点及び第二の時点で該対象の推算糸球体ろ過量(eGFR)を評価すること、ならびに
(b)(i)該対象のeGFRが該第一及び第二の時点の間に目標%を超えて所定の値未満に低下した場合、ボクロスポリンの該対象に対する1日投与量を減少させるか、または投与を停止すること、
(ii)該対象のeGFRが該第一及び第二の時点の間に目標%より少なく低下した場合、該対象に対して同じ1日投与量のボクロスポリンの投与を継続すること。
該提供する実施形態のいくつかでは、該所定の値は、約50~約90ml/分/1.73mである。
該提供する実施形態のいくつかでは、該所定の値は、約60ml/分/1.73mである。
該提供する実施形態のいくつかでは、該目標%は、約20%~約45%である。
該提供する実施形態のいくつかでは、該目標%は、約20%である。
該提供する実施形態のいくつかでは、該対象は、自己免疫疾患または移植片拒絶反応に関連する状態を有する。
該提供する実施形態のいくつかでは、該対象は、移植片拒絶反応に関連する状態を有する。
該提供する実施形態のいくつかでは、該状態は、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚、腸、または角膜の移植片拒絶反応に関連する。
該提供する実施形態のいくつかでは、該状態は、腎移植拒絶反応に関連する。
該提供する実施形態のいくつかでは、該対象は、自己免疫疾患を有する。
該提供する実施形態のいくつかでは、該治療有効量のボクロスポリンは、治療有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)及び/または治療有効量のコルチコステロイドを投与することなく投与される。
該提供する実施形態のいくつかでは、該方法は、さらに、治療有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)及び/またはコルチコステロイドを投与することを含む。
該提供する実施形態のいくつかでは、ボクロスポリンは、腸内投与(例えば、経口投与、舌下投与、もしくは直腸投与)または非経口投与(例えば、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注入、もしくは吸入/吹送)によって投与される。
該提供する実施形態のいくつかでは、ボクロスポリンは、腸内投与(例えば、経口投与、舌下投与、または直腸投与)によって投与される。
該提供する実施形態のいくつかでは、ボクロスポリンは、経口投与によって投与される。
該提供する実施形態のいくつかでは、ボクロスポリンは、非経口投与(例えば、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注入、または吸入/吹送)によって投与される。
該提供する実施形態のいくつかでは、ボクロスポリンは、吸入または吹送によって投与される。
該提供する実施形態のいくつかでは、ボクロスポリンは、エアロゾルの形態で投与される。
該提供する実施形態のいくつかでは、ボクロスポリンは、医薬組成物で投与される。該提供する実施形態のいくつかでは、該医薬組成物は、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む。該提供する実施形態のいくつかでは、該医薬的に許容される賦形剤は、独立して、アルコール、D-α-トコフェロール(ビタミンE)、ポリエチレングリコールスクシネート(TPGS)、ポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート40(Tween40)、中鎖トリグリセリド、ゼラチン、ソルビトール、グリセリン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、二酸化チタン、及び水を含む1つ以上から選択される。
細胞変性効果(CPE)減少アッセイの設定を示す。 SARS-CoV-2のCPE減少アッセイにおけるボクロスポリンの効果を示す。 ボクロスポリンとタクロリムスの抗SARS-CoV-2効果の比較を示す。 Vero E6細胞でのSARS-CoV-2のウイルス量の減少アッセイにおけるボクロスポリンの効果を示す。 Calu細胞でのSARS-CoV-2のウイルス量の減少アッセイにおけるボクロスポリンの効果を示す。 ボクロスポリンがSARS-CoV-2に感染したVero E6細胞に与える影響を示す。パネルの下の数字は、試験化合物(ボクロスポリン)の濃度を示す。蛍光シグナル(緑色蛍光)は、ウイルスのNSP4染色(20倍対物)を示す。暴露時間は条件間で同じであった。 腎移植レシピエントにおけるボクロスポリン及びタクロリムスの血中トラフレベルを示す。 SARS-CoV-2陽性腎移植患者におけるボクロスポリンの抗ウイルス効果を評価する試験のスキームを示す。 A~Eは、様々な免疫抑制薬によるSARS-CoV-2複製の阻害ならびにそれらが未感染細胞(細胞毒性)及び感染細胞(抗ウイルス効果)の細胞生存率に与える影響を示す。ボクロスポリン(A)、シクロスポリンA(B)、エベロリムス(C)、タクロリムス(D)、ミコフェノール酸(E)。 A~Dは、シクロスポリンA(CsA)、タクロリムス(TAC)及びボクロスポリン(VCS)処理がヒトCalu-3細胞による感染性のSARS-CoV-2の後代の産生に与える影響を示す。実験は、ガラス製(A及びC)またはプラスチック製(B及びD)のいずれかの実験器具を使用して行った。DMSOに溶解した純粋な粉末から調製した原液を使用して、様々な濃度のVCS、CsA及びTACの存在下、細胞をSARS-CoV-2に感染させた。感染細胞の培地中のウイルス量は、感染の24時間後に採取した上清を使用して、Vero E6細胞でのプラークアッセイによって測定した。同じ範囲の化合物濃度で処理した未感染Calu-3細胞の生存率を、並行して比色生存率アッセイで測定した(C、n=12、D、n=3)。平均値±SDを示し、各濃度と溶媒対照の差の統計的有意性を一元配置分散分析で評価した。*、p<0.1、**、p<0.01、***、p<0.001、****、p<0.0001。 A~Eは、SARS-CoV-2に感染したVero E6細胞のCPE減少アッセイにおいて様々な化合物が細胞生存率に与える影響を示す。様々な薬物によるVero E6細胞でのSARS-CoV-2の複製(色付きの記号及び曲線)を、CPE減少アッセイによって測定した。各薬物について、医薬製剤の2倍連続希釈を調べた。VCS(A)、シクロスポリンA/ネオーラル(B)、TAC/プログラフ(C)、EVL/サーティカン(D)、及びMMF/セルセプト(E)。化合物とともにプレインキュベーションした後、細胞をSARS-CoV-2に感染させ、薬物を含む培地に3日間保持し、その後細胞生存率を比色アッセイで測定した。薬物の細胞毒性を、モック感染させた化合物処理細胞(灰色の実線)を使用して並行して評価した。データ点は、2つの独立した実験の平均±SDを表す。CC50及びEC50を非線形回帰分析で特定し、回帰曲線がグラフにプロットされている(実線)。 A~Bは、CPE減少アッセイによって測定した、VCS医薬製剤(A)またはプラセボ(B)で処理したVero E6細胞におけるSARS-CoV-2複製の阻害を示す。 プラークアッセイにおける、VCS粉末(3.2μM)、VCS医薬製剤(3.2μM)、プラセボ製剤の内容物(3.2μMのVCSに相当)、及び50%エタノール(陽性対照)の殺ウイルス活性を示す。 A~Dは、純粋な化合物粉末から調製したストックを用いたCPE減少アッセイにおける、様々な免疫抑制化合物によるSARS-CoV-2複製の阻害を示す。VCS(A)、CsA(B)、TAC(C)、及びMPA(D)。
本明細書に提供するのは、対象におけるウイルス感染の治療または予防方法である。いくつかの態様では、該方法は、該対象に対して、ボクロスポリン、例えば、治療有効量のボクロスポリンを投与することを含む。該提供する実施形態のいくつかでは、該対象は、免疫抑制を必要としている。
ウイルス感染は、特に感染リスクの高い集団では、致命的な結果につながる可能性がある。2019年12月から2021年1月の間に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因病原体である重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、世界中で9千万人以上の感染を引き起こした。COVID-19のより深刻な経過は、固形臓器移植レシピエントに通常存在する併存疾患と相関がある(Zhou et al.,Lancet.Mar 28 2020;395(10229):1054-1062、Huang et al.,Lancet.Feb 15 2020;395(10223):497-506、Guan et al.,Eur Respir J.May 2020;55(5)doi:10.1183/13993003.00547-2020)。さらに、最初の報告では、後者は、COVID-19関連死のリスクが高いものであることが示された(Williamson et al.,Nature.Aug 2020;584(7821):430-436)。特に、これらの対象は、多くの場合、医学的理由(例えば、自己免疫疾患または固形臓器移植によるもの)で断続的、長期または生涯にわたる免疫抑制を必要とし、感染のリスク及びウイルス感染の間の死亡のリスクが大幅に高くなる。
移植レシピエントに免疫抑制療法を処方する際には、拒絶反応の予防及び感染の制御との間のバランスを見出す必要がある。例えば、腎移植レシピエント(KTR)は、高齢、併存疾患及び/または持続的免疫抑制のために、より深刻なCOVID-19の経過のリスクが高くなる。一部では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染したKTRの免疫抑制を下げることが推奨される。KTRにおいて、より深刻なCOVID-19の経過に対する免疫抑制の寄与効果及び最適な治療法が必要である。様々な報告により、免疫抑制が重度のCOVID-19疾患または死亡のリスクを増加させないことが分かった(Li et al.,J Heart Lung Transplant.May 2020;39(5):496-497、Zhang et al.,Eur Urol.Jun 2020;77(6):742-747、Guillen et al.,Am J Transplant.Jul 2020;20(7):1875-1878、Montagud-Marrahi et al.,Am J Transplant.Oct 2020;20(10):2958-2959)。しかしながら、免疫抑制状態のCOVID-19患者では、死亡率の増加が観察されている。KTRにおけるワクチンの有効性は不明であるため、対象、特に免疫抑制を必要とする対象を治療する方法が非常に必要とされている。一般に、COVID-19は三相性の経過を示す。すなわち、軽度のインフルエンザ様の症状から始まり、ウイルス複製及び肺炎の第二段階が続き、その症例のごく一部では、例えば、サイトカインストームによる、生命を脅かす疾患の第三段階が続く(Siddiqi et al.,J Heart Lung Transplant.May 2020)。抗ウイルス薬の投与は、疾患の初期段階では最も効果的であることが期待される一方、免疫抑制剤(例えば、ステロイド、トシリズマブ)は、炎症を軽減するための疾患後期の治療選択肢と見なされ得る。免疫抑制療法は、理想的には拒絶反応を予防し、抗ウイルス特性を有し、(過剰な)炎症を軽減し得る一方で、重篤な疾患の経過を予防するために効果的な抗ウイルス反応を同時に開始する。ある特定の勧告は、免疫抑制を完全に停止するわけではないが低下させると述べており、一部では、インビトロで観察された利点に基づいて、ステロイドとCNIが推奨される。
ほとんどの移植センターにおける免疫抑制療法の現在の標準は、タクロリムス(TAC)またはシクロスポリンA(CsA)のいずれかのカルシニューリン阻害剤(CNI)、ミコフェノール酸(MPA/MPS)等の代謝拮抗剤、及びほとんどの場合、持続的ステロイドからなる。エベロリムス(EVL)等のmTOR阻害剤が、MPAの代わりに、またはCNIの代わりに処方される場合もある。COVID-19の経過に対する免疫抑制の正確な影響はよく分かっていない。該疾患の初期には、(過剰な)免疫抑制が適切な抗ウイルス反応を妨げる可能性があるが、その後のいくらかの免疫抑制は、病的な免疫の過剰活性化を予防する可能性があり、疾患の重症度が低くなる。その結果、一部では、拒絶反応のリスクと疾患の重症度に応じて、SARS-CoV-2に感染したKTRの免疫抑制を完全に放棄するのではなく、軽減することが推奨される。
カルシニューリン阻害剤(CNI)は、KTRの基本的な免疫抑制剤であり、一部では、RNAウイルスに対する抗ウイルス活性を有することが報告されている。MPAに加えて、CNI及びEVL等のmTOR阻害剤は、SARS-CoV及び中東呼吸器症候群(MERS-)CoV等のヒトコロナウイルスに対して抗ウイルス活性を示すことが報告されている。シクロスポリンA(CsA)は、インフルエンザ(Ma et al.,Antiviral Res.2016;133:62-72)、C型肝炎(Ishii et al.,J Virol.2006;80(9):4510-4520)、HIV(Braaten et al.,J Virol.1996;70(8):5170-5176)、ノロウイルス(Dang et al,Antimicrobial Agents and Chemotherapy 2017;61(11):1-17)及びSARS-CoV(de Wilde et al.,J Gen Virol.2011;92:2542-2548、Pfefferle et al.,PLoS Pathog 2011;7(10):1-15)を含めた多種多様なRNAウイルスに対して抗ウイルス効果を有することがインビトロで示されている。理論に拘束されるものではないが、CsAの抗ウイルス作用には、カルシニューリン依存性及びシクロフィリン依存性の機序が関与している可能性がある。SARS-CoVの場合、該ウイルスのNsp1タンパク質は、シクロフィリンA(CypA)と相互作用して、活性化T細胞の核因子(NFAT)によるサイトカイン放出をカルシニューリン依存的に増強する(Pfefferle et al.,2011)。しかしながら、CsA及びウイルス複製に対するその影響のすべてのインビトロモデルは、ヒトで安全と考えられる用量をはるかに超える用量でのみ有効である可能性があることを示している。
ボクロスポリン(VCS、別名LX214またはISA247)は、新規なカルシニューリン阻害剤(CNI)であり、構造的には、該分子のアミノ酸-1残基における官能基の新規な修飾以外はCsAと類似しており、該修飾が、カルシニューリンへの結合を高め、良好な代謝的安定性を付与する。ボクロスポリンは、乾癬、腎臓移植で試験されており、最近になって、基礎免疫抑制療法と組み合わせた活動性ループス腎炎の治療に対してFDAに認可された。観察によると、VCSは、同クラスの他の免疫抑制剤よりも治療レベルで強力かつ毒性が低いことが示されている。さらに、VCSは、CypA依存的にかつCsAより効果的にノロウイルスの複製を阻害することが示された。この変更により、ボクロスポリンのカルシニューリンへの結合が変化し、インビトロ及びインビボの両方で結合親和性がCsAと比較して最大5倍増加することが示されている(Kuglstatter et al.,Acta Cryst.2011;D67:119-23)。この修飾は、CsAの主要な代謝部位であるアミノ酸-1から代謝をシフトすることにより、ボクロスポリンの代謝プロファイルも変更した。該代謝プロファイルの変更により、CsAと比較して代謝産物の排せつが速くなり、代謝産物の暴露が少なくなる。CsAと比較して、ボクロスポリンの効力が高いこと及び代謝産物の暴露が少ないことの組み合わせが、CsAと比較して良好なPK/PD関係、投与量の減少、及び安全性プロファイルの潜在的な改善につながっている。ボクロスポリンは、以下に示す構造を有するとともに、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7,332,472号に開示されている。
Figure 2023524802000002
CsAと同様に、ボクロスポリンもまたCypAに結合する(Kuglstatter et al.,Acta Cryst.2011;D67:119-23)。従って、本明細書に開示する方法は、免疫抑制を必要とする患者をその基礎疾患に関わらず健康な状態に維持すると同時に、抗ウイルス効果を提供することができる。
該提供する実施形態は、細胞ベースのアッセイにおいて、CNI、すなわち、タクロリムス、シクロスポリンA、及びボクロスポリン(VCS)、ならびにKTRで一般に使用される他の免疫抑制剤が、SARS-CoV-2の複製に与える影響の比較を基にした、本明細書に記載の観察に基づいている。KTRのような免疫抑制状態の対象に対するワクチンの有効性は不確実であり、効果的な(抗ウイルス)治療の選択肢は限られているため、これらの対象を保護するために代替の解決策を見つけることが重要である。本明細書で実証されるように、CNIは、他のクラスの免疫抑制剤よりも強力なSARS-CoV-2複製の阻害効果を(細胞培養において)示した。特筆すべきことに、VCSは、TACよりも8倍低い濃度で抗ウイルス活性を示した。SARS-CoV-2のウイルス量を減少させたVCSの濃度は、KTRで達成可能なヒトの耐量と相関する可能性がある。VCSは、低マイクロモル濃度でヒトCalu-3細胞においてウイルス後代産生を減少させ、シクロスポリンA及びタクロリムスよりも効果的に減少させた。本明細書に記載する観察により、シクロフィリン依存性CNI、特にVCSの潜在的な利点が実証される。本明細書に記載する結果により、VCSが、低濃度であってもSARS-CoV-2複製に対して強力な阻害活性を発揮することが示され、対象において、特に、免疫抑制を必要とする対象に対して、COVID-19等のウイルス感染の治療におけるVCSの有用性が実証される。ボクロスポリンは、カルシニューリンとの親和性がより高く、腎毒性がより低いという利点ももたらす。ボクロスポリンはまた、肺等の臓器に血中よりも高濃度で分布する可能性があるとともに、赤血球に高濃度が含まれる。その結果、特定の臓器または細胞での高濃度により、ウイルスが抑制され得る。従って、これらの結果により、特に、SARS-CoV-2のリスクがある、またはこれに感染したKTRにおけるウイルス感染の治療におけるVCSの有用性が支持される。
さらに、本明細書に記載の結果は、予想外の観察を示している。これらの免疫抑制化合物の調製における医薬品賦形剤が、細胞ベースのアッセイにおいて抗ウイルス効果を示した。意外にも、これらの結果は、ウイルスエンベロープを損傷し得る界面活性剤の殺ウイルス効果によるものではなかった。本記載の抗ウイルスアッセイにおいて、賦形剤によって引き起こされる干渉を回避するための様々な免疫抑制化合物の高純度の粉末により、医薬製剤中の活性化合物の溶解性及びバイオアベイラビリティを改善する賦形剤もまた、細胞ベースのアッセイの結果に影響を与えることが実証された。ボクロスポリンの親油性に起因して、かつ本明細書に記載の結果に基づいて、VCS及びその他の化合物の効果をガラス製実験器具(プラスチック材料へのVCSの結合を最小限に抑える)を使用して評価した。これらの結果により、感染したCalu-3細胞においてVCSが用量依存的、かつCsA及びTAC、ならびに他のクラスの免疫抑制剤、例えば、EVL及びMPAよりも効果的にSARS-CoV-2感染性の後代の産生を減少させることが実証された。
I.治療方法
本明細書に提供するのは、対象におけるウイルス感染の治療または予防方法であり、該方法は、該対象に対して、ボクロスポリンを投与することを含む。同様に提供するのは、対象におけるウイルス感染の治療または予防におけるボクロスポリンの使用である。いくつかの態様では、該提供する方法または使用は、治療有効量のボクロスポリンを使用することを含む。いくつかの態様では、該対象は、免疫抑制を必要としている。いくつかの態様では、該ウイルス感染は、シクロフィリンA(CypA)またはCypA関連経路の阻害によって改善される。
いくつかの実施形態では、提供するのは、ウイルス感染の治療または予防を必要とする対象におけるその治療または予防方法であり、該方法は、該対象に対して、治療有効量のボクロスポリンを投与することを含み、該ウイルス感染は、シクロフィリンA(CypA)またはCypA関連経路の阻害によって改善される。いくつかの実施形態では、該対象は、免疫抑制を必要としている。いくつかの実施形態では、該ウイルス感染は、シクロフィリンA(CypA)の阻害によって改善される。いくつかの実施形態では、該ウイルス感染は、CypA関連経路の阻害によって改善される。
いくつかの態様では、ボクロスポリン(別名LX214またはISA247)、その治療有効量、及び/またはボクロスポリンを含む組成物が、該提供する組成物、方法及び使用において使用される。使用としては、ボクロスポリンまたはそれを含む組成物のかかる方法、例えば治療法、及び治療、例えば、治療計画における使用、ならびにかかる治療法及び治療を行うための薬剤の調製におけるボクロスポリンまたはそれを含む組成物の使用が挙げられる。同様に提供するのは、ウイルス感染の治療または予防、ウイルス複製の低減、ウイルス感染に関連する症状の改善、または疾患の重症度もしくは死亡率の低減に使用するためのボクロスポリンまたはそれを含む組成物である。いくつかの態様では、かかる使用には、本明細書に記載の方法または治療、例えば、任意の治療法または治療計画を行うことが含まれる。該提供する実施形態のいくつかでは、ボクロスポリンまたはそれを含む組成物は、単剤療法として、例えば、1つ以上のさらなる薬剤を投与することなく投与される。該提供する実施形態のいくつかでは、ボクロスポリンまたはそれを含む組成物は、MMF及び/またはコルチコステロイドを投与することなく投与される。該提供する実施形態のいくつかでは、ボクロスポリンまたはそれを含む組成物は、治療有効量のMMF及び/または治療有効量のコルチコステロイドを投与することなく投与される。
いくつかの実施形態では、該方法または使用は、ウイルス感染(virus infection)またはウイルス感染(viral infection)を治療するためのものである。いくつかの実施形態では、該方法または使用は、ウイルス感染(virus infection)またはウイルス感染(viral infection)を予防するためのものである。いくつかの実施形態では、該方法は、該ウイルス感染を治療することを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、該ウイルス感染を予防することを含む。
いくつかの実施形態では、該ウイルス感染は、Coronaviridae(例えば、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、デルタコロナウイルス、もしくはガンマコロナウイルス)、Orthomyxoviridae(例えば、インフルエンザウイルス)、Flaviviridae(例えば、フラビウイルスもしくはヘパシウイルス)、またはCaliciviridae(例えば、ノロウイルス)のメンバーであるウイルスによって引き起こされる。
いくつかの実施形態では、該ウイルス感染は、Coronaviridaeのメンバーであるウイルスによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、アルファコロナウイルス(例えば、HCoV-229EもしくはHCoV-NL63)、ベータコロナウイルス(例えば、HCoV-OC43、HCoV-HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、もしくはSARS-CoV-2)、デルタコロナウイルス、またはガンマコロナウイルスである。
いくつかの実施形態では、該ウイルスは、アルファコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、HCoV-229EまたはHCoV-NL63である。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、HCoV-229Eである。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、HCoV-NL63である。
いくつかの実施形態では、該ウイルスは、ベータコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、HCoV-OC43、HCoV-HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、またはSARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、MERS-CoV、SARS-CoV、またはSARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、HCoV-OC43である。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、HCoV-HKU1である。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、HMERS-CoVである。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、SARS-CoVである。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、SARS-CoV-2である。
いくつかの実施形態では、該ウイルスは、デルタコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、ガンマコロナウイルスである。
いくつかの実施形態では、該ウイルス感染は、Orthomyxoviridaeのメンバーであるウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)によって引き起こされる。
いくつかの実施形態では、該ウイルス感染は、Flaviviridaeのメンバーであるウイルスによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、フラビウイルスである。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、ヘパシウイルスである。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、ヘパシウイルスCである。
いくつかの実施形態では、該ウイルス感染は、Caliciviridaeのメンバーであるウイルスによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、該ウイルスは、ノロウイルスである。
II.投与量
本明細書に提供する方法及び使用のいくつかの実施形態では、ボクロスポリンは、1日4回、1日3回、1日2回、または1日1回投与される。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンは、1日4回投与される。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンは、1日3回投与される。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンは、1日2回投与される。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンは、1日1回投与される。
いくつかの実施形態では、ボクロスポリンの1日投与量は、約1mg~約250mg、約5mg~約250mg、約10mg~約250mg、約50mg~約250mg、約100mg~約250mg、約150mg~約250mg、約200mg~約250mg、1mg~約200mg、約5mg~約200mg、約10mg~約200mg、約50mg~約200mg、約100mg~約200mg、約150mg~約200mg、約1mg~約150mg、約5mg~約150mg、約10mg~約150mg、約50mg~約150mg、約100mg~約150mg、約1mg~約100mg、約5mg~約100mg、約10mg~約100mg、約50mg~約100mg、約1mg~約50mg、約5mg~約50mg、または約10mg~約50mgである。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンの1日投与量は、約1mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、または約250mgである。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンの1日投与量は、少なくとも約1mg、少なくとも約5mg、少なくとも約10mg、少なくとも約20mg、少なくとも約30mg、少なくとも約40mg、少なくとも約50mg、少なくとも約60mg、少なくとも約70mg、少なくとも約80mg、少なくとも約90mg、少なくとも約100mg、少なくとも約110mg、少なくとも約120mg、少なくとも約130mg、少なくとも約140mg、少なくとも約150mg、少なくとも約160mg、少なくとも約170mg、少なくとも約180mg、少なくとも約190mg、または少なくとも約200mgである。
いくつかの実施形態では、ボクロスポリンの投与量は、約0.1mg/kg/日~約2mg/kg/日、約0.5mg/kg/日~約2mg/kg/日、約1mg/kg/日~約2mg/kg/日、約1.5mg/kg/日~約2mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約1.5mg/kg/日、約0.5mg/kg/日~約1.5mg/kg/日、約1mg/kg/日~約1.5mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約1.0mg/kg/日、約0.5mg/kg/日~約1.0mg/kg/日、または約0.1mg/kg/日~約0.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンの投与量は、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、または約2.0mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンの投与量は、少なくとも約0.1、少なくとも約0.2、少なくとも約0.3、少なくとも約0.4、少なくとも約0.5、少なくとも約0.6、少なくとも約0.7、少なくとも約0.8、少なくとも約0.9、少なくとも約1.0、少なくとも約1.1、少なくとも約1.2、少なくとも約1.3、少なくとも約1.4、少なくとも約1.5、少なくとも約1.6、少なくとも約1.7、少なくとも約1.8、少なくとも約1.9、または少なくとも約2.0mg/kg/日である。
いくつかの実施形態では、適切な投与量は、約7.9mg単位である。いくつかの実施形態では、該ボクロスポリンの投与量は、約7.9mg QD、約15.8mg QD、約23.7mg QD、約31.6mg QD、約39.5mg QD、約47.4mg QD、約55.3mg QD、約63.2mg QD、約71.1mg QD、約79.0mg QD、約86.9mg QD、約94.8mg QD、約102.7mg QD、または約110.6mg QDである。いくつかの実施形態では、該ボクロスポリンの投与量は、約7.9mg BID、約15.8mg BID、約23.7mg BID、約31.6mg BID、約39.5mg BID、約47.4mg BID、または約55.3BIDである。
いくつかの実施形態では、該血中トラフレベルは、約25~約60ng/mLである。いくつかの実施形態では、該血中トラフレベルは、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、または約60ng/mLである。
いくつかの実施形態では、該治療有効量は、約0.05μM~約10μM、約0.1μM~約5μM、約0.2μM~約2.5μM、約0.3μM~約1.0μM、約0.4μM~約0.9μM、約0.5μM~約0.8μM、約0.1μM~約0.5μM、または約0.2μM~約0.4μMの濃度と同等であるか、それであると推定することができるか、それを達成することができるか、またはそのCmaxとして達成され得る量である。いくつかの実施形態では、該治療有効量は、約0.05、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.45、約0.5、約0.55、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約6.0、約7.0、約8.0、約9.0、または約10.0μMまたはそれ未満の濃度と同等であるか、それであると推定することができるか、それを達成することができるか、またはそのCmaxとして達成され得る量である。いくつかの実施形態では、該治療有効量は、約0.2μMの濃度と同等であるか、それであると推定することができるか、それを達成することができるか、またはそのCmaxとして達成され得る量である。いくつかの実施形態では、該治療有効量は、約0.3μMの濃度と同等であるか、それであると推定することができるか、それを達成することができるか、またはそのCmaxとして達成され得る量である。いくつかの実施形態では、該治療有効量は、約0.4μMの濃度と同等であるか、それであると推定することができるか、それを達成することができるか、またはそのCmaxとして達成され得る量である。いくつかの実施形態では、該治療有効量は、約0.5μMの濃度と同等であるか、それであると推定することができるか、それを達成することができるか、またはそのCmaxとして達成され得る量である。
A.投与量の調整
本明細書に開示する方法及び使用のいくつかの実施形態では、該方法または治療は、さらに、当該対象の腎機能を監視することを含む(comprises)または含む(involves)。本明細書に開示する方法のいくつかの実施形態では、該方法は、さらに、当該対象の腎機能を監視することを含む。投与量の低減の望ましさを評価するために使用される1つの重要なパラメータは、CKD-EP1式または他の適切な方法を使用した推算糸球体ろ過量(eGFR)である。eGFRの減少は、治療中に発生する可能性があるマイナスの副作用である。減少が極端すぎる場合は、投与量を変更するべきである。
いくつかの実施形態では、該対象の腎機能を監視することは、以下を含む:
(a)異なる日の少なくとも第一の時点及び第二の時点で該対象の推算糸球体ろ過量(eGFR)を評価すること、ならびに
(b)(i)該対象のeGFRが該第一及び第二の時点の間に目標%を超えて所定の値未満に低下した場合、ボクロスポリンの該対象に対する1日投与量を減少させるか、または投与を停止すること、
(ii)該対象のeGFRが該第一及び第二の時点の間に目標%より少なく低下した場合、該対象に対して同じ1日投与量のボクロスポリンの投与を継続すること。
いくつかの実施形態では、該第一の時点は、治療の開始前、治療の開始時、または治療中である。いくつかの実施形態では、該第一の時点は、ボクロスポリンのいずれかの投与前の治療の初日である。
いくつかの実施形態では、該所定の値は、約50~約90ml/分/1.73mである。いくつかの実施形態では、該所定の値は、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、または約90ml/分/1.73mである。
いくつかの実施形態では、該目標%は、約20%~約45%である。いくつかの実施形態では、該目標%は、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、または約45%である。
B.投与経路
本明細書に開示する方法及び使用のいくつかの実施形態では、ボクロスポリンは、ウイルス感染を治療または予防するために十分なボクロスポリンのレベルを提供する任意の適切な形態で、任意の適切な経路、例えば、腸内投与(例えば、経口投与、舌下投与、もしくは直腸投与)または非経口投与(例えば、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注入、もしくは吸入/吹送)によって投与され得る。
いくつかの実施形態では、ボクロスポリンは、腸内投与によって投与される。腸内投与の例示的な経路としては、経口投与、舌下投与、及び直腸投与(例えば、直腸を介する)が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、該腸内投与は、経口投与を含む。いくつかの実施形態では、該腸内投与は、舌下投与を含む。いくつかの実施形態では、該腸内投与は、直腸投与を含む。
いくつかの実施形態では、ボクロスポリンは、非経口投与によって投与される。非経口投与の例示的な経路としては、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注入、及び吸入/吹送が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、該非経口投与は、静脈内注射を含む。いくつかの実施形態では、該非経口投与は、筋肉内注射を含む。いくつかの実施形態では、該非経口投与は、皮下注射を含む。いくつかの実施形態では、該非経口投与は、静脈内注入を含む。いくつかの実施形態では、該非経口投与は、吸入/吹送を含む。
いくつかの実施形態では、ボクロスポリンは、吸入または吹送によって投与される。吸入及び/または吹送のための調製物の例示的な種類としては、吸入器または吹送器で使用するためのスプレー、エアロゾル、ミスト、カプセル、粉末、またはカートリッジ、及び噴霧用の溶液/懸濁液が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンは、エアロゾル、スプレー、ミスト、または粉末の形態で投与される。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンは、エアロゾルの形態で投与される。吸入または吹送による投与のための様々な種類の装置の例としては、ネブライザー、定量吸入器(MDI)、及び乾燥粉末吸入器が挙げられるがこれらに限定されない。
C.併用
本明細書に提供する方法及び使用のいくつかの実施形態では、該方法または治療はまた、治療有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)及び/またはコルチコステロイドを投与することも含む。本明細書に開示する方法のいくつかの実施形態では、該方法はまた、治療有効量のMMF及び/またはコルチコステロイドを投与することも含む。いくつかの実施形態では、該方法は、治療有効量のMMFを投与することを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、治療有効量のコルチコステロイドを投与することを含む。
いくつかの実施形態では、該方法は、ボクロスポリンを、治療有効量のMMF及び/または治療有効量のコルチコステロイドなしで投与することを含む。
本明細書に提供する方法及び使用のいくつかの実施形態では、該方法または治療はまた、治療有効量のさらなる抗ウイルス剤を投与することも含む。いくつかの実施形態では、該方法はまた、治療有効量のさらなる抗ウイルス剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、該さらなる抗ウイルス剤は、レムデシビル、ロピナビル/リトナビル、IFN-α、ロピナビル、リトナビル、ペンシクロビル、ガリデシビル、ジスルフィラム、ダルナビル、コビシスタット、ASC09F、ジスルフィラム、ナファモスタット、グリフィスシン、アリスポリビル、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ニタゾキサニド、バロキサビルマルボキシル、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、アマンタジン、リマンタジン、ファビピラビル、ラニナミビル、リバビリン、ウミフェノビル、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、該抗ウイルス剤は、クロロキンである。いくつかの実施形態では、該抗ウイルス剤は、ヒドロキシクロロキンである。いくつかの実施形態では、該抗ウイルス剤は、レムデシビルである。
III.組成物
本明細書に提供する方法及び使用のいくつかの実施形態では、該方法または治療は、ボクロスポリンを含む組成物、例えば、医薬組成物または治療組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法は、ボクロスポリンを含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、該組成物は、ボクロスポリン及びそのZアイソフォームの異性体混合物を含む。いくつかの実施形態では、該異性体混合物は、ボクロスポリンを少なくとも約99重量%、約98重量%、約97重量%、約96重量%、約95重量%、約94重量%、約93重量%、約92重量%、約91重量%、約90重量%、約80重量%、約70重量%、約60重量%、約50重量%、約40重量%、約30重量%、約20重量%、または約10重量%含む。いくつかの実施形態では、該異性体混合物は、ボクロスポリンを少なくとも95重量%含む。
該提供する方法及び使用のいくつかの実施形態では、該ボクロスポリンを含む組成物は、ボクロスポリンを含む医薬製剤であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、該ボクロスポリンを含む医薬組成物は、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤、緩衝剤、担体及び/または媒体を含む。
いくつかの実施形態では、該組成物は、企図される投与の型に適した従来の医薬担体及び賦形剤を含む。
いくつかの実施形態では、該ボクロスポリンを含む組成物は、医薬的に許容される緩衝剤、例えば、医薬的に許容される担体または媒体を含む緩衝剤中で製剤化され得る。一般に、該医薬的に許容される担体または媒体、例えば、該医薬的に許容される緩衝剤に含まれるものは、当技術分野で知られている任意のものであり得る。Remington’s Pharmaceutical Sciences,by E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,19th Edition(1995)は、1つ以上の治療用化合物の医薬的送達に適した組成物及び製剤を記載している。医薬的に許容される組成物は、一般に、動物及びヒトでの使用に対して一般に認められた薬局方に従って作成される規制当局または他の機関の承認を考慮して調製される。
医薬組成物は、化合物とともに投与される担体、例えば、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または媒体を含むことができる。適切な医薬担体の例は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”by E.W.Martinに記載されている。かかる組成物は、治療有効量の化合物を一般に精製された形態で、適量の担体とともに含み、当該患者に対する適切な投与のための形態が提供される。かかる医薬担体は、滅菌液、例えば、水及び、石油、動物、植物または合成起源のものを含めた油であり得る。当該医薬組成物が静脈内投与される場合、水が通常の担体である。生理食塩水ならびにデキストロース及びグリセロール水溶液もまた、特に注射剤のための液体担体として使用され得る。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含むこともできる。通常、該化合物を含む組成物は、当技術分野で周知の技術及び手順を使用して医薬組成物に製剤化される(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,Fourth Edition,1985,126参照)。一般に、該製剤化方法は、投与経路の関数である。
いくつかの実施形態では、医薬的に許容される賦形剤、緩衝剤、担体及び/または媒体は、アルコール、D-α-トコフェロール(ビタミンE)、ポリエチレングリコールスクシネート(TPGS)、ポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート40(Tween40)、中鎖トリグリセリド、ゼラチン、ソルビトール、グリセリン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、二酸化チタン、及び水の中の1つ以上を含む。様々なボクロスポリン混合物の製剤は、米国特許第7,060,672号、第7,429,562号、及び第7,829,533号にも記載されている。
IV.患者集団
いくつかの実施形態では、本明細書に提供する方法及び使用に従って治療される対象としては、ウイルス感染のリスクがあるか、またはウイルス感染した対象が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供する方法及び使用に従って治療される対象としては、免疫抑制を必要とする対象が挙げられる。いくつかの態様では、該対象は、免疫抑制を必要としており、ウイルス感染のリスクがあるか、またはウイルス感染している。いくつかの実施形態では、本明細書に提供する方法及び使用に従って治療される対象としては、例えば、移植片拒絶反応のリスクのために免疫抑制を必要とする対象が挙げられる。いくつかの態様では、該対象は、移植、例えば、臓器移植、組織移植または細胞移植の候補であり、かつ該対象は、免疫抑制を必要としている。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法に関与する該対象は、自己免疫疾患を有するか、または移植片拒絶反応に関連する状態を有する。該提供する実施形態のいくつかでは、該対象は、腎移植レシピエント(KTR)である。
いくつかの実施形態では、該対象は、移植片拒絶反応に関連する状態を有する。いくつかの実施形態では、該状態は、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚、腸、または角膜の移植片拒絶反応に関連する。いくつかの実施形態では、該状態は、心臓移植拒絶反応に関連する。いくつかの実施形態では、該状態は、肺移植拒絶反応に関連する。いくつかの実施形態では、該状態は、肝臓の拒絶反応に関連する。いくつかの実施形態では、該状態は、腎移植拒絶反応に関連する。いくつかの実施形態では、該状態は、膵臓移植拒絶反応に関連する。いくつかの実施形態では、該状態は、皮膚移植拒絶反応に関連する。いくつかの実施形態では、該状態は、腸移植拒絶反応に関連する。いくつかの実施形態では、該状態は、角膜移植拒絶反応に関連する。
いくつかの実施形態では、該対象は、自己免疫疾患を有する。自己免疫疾患の例としては、自己免疫性血液疾患(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆及び特発性血小板減少症を含む)、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、多発性軟骨炎、硬化症、ウェゲナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スティーブン・ジョンソン症候群、特発性スプルー、(自己免疫性)炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む)、内分泌性眼障害、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿病(I型糖尿病)、ブドウ膜炎(前部及び後部)、乾性角結膜炎及び春季カタル、間質性肺線維症、乾癬性関節炎、糸球体腎炎(例えば、特発性ネフローゼ症候群または微小変化型ネフローゼを含むネフローゼ症候群を伴う及び伴わない)ならびに若年性皮膚筋炎が挙げられるがこれらに限定されない。
V.定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈に別途明示のない限り、複数形を含む。
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「約」及び「およそ」という用語は、用量または量に関連して使用される場合、指定された用量または量の10%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、または0.5%以内の用量または量を企図する。
本明細書で使用される、「治療有効量」は、当該状態に対して所望の薬理学的及び/または生理学的効果をもたらす量を示す。該効果は、状態もしくはその症状を完全にもしくは部分的に予防するという点において予防的である場合、及び/または該状態及び/または該状態に起因する副作用の部分的もしくは完全な治癒という点において治療的である場合がある。
「治療する」、「治療すること」、及び「治療」という用語は、有益なまたは所望の臨床結果を含めた結果を得るためのアプローチを指す。有益なまたは所望の結果としては、以下のうちの1つ以上が挙げられるがこれらに限定されない:疾患もしくは障害に起因する1つ以上の症状を低減すること、疾患もしくは障害の程度を低減すること、疾患もしくは障害を安定させること(例えば、疾患もしくは障害の悪化を予防するもしくは遅延させること)、疾患もしくは障害の発症もしくは再発を遅延させること、疾患もしくは障害の進行を遅延させるもしくは減速すること、疾患もしくは障害の状態を改善すること、疾患もしくは障害の寛解(部分的もしくは完全な)を提供すること、疾患もしくは障害の治療に必要な1つ以上の他の薬剤の用量を低減すること、疾患もしくは障害の治療に使用される別の薬剤の効果を高めること、疾患もしくは障害の進行を遅延させること、生活の質を向上させること、及び/または患者の生存期間を延長させること。同様に「治療」に包含されるのは、疾患または障害の病理学的帰結の軽減である。本開示の方法は、これらの治療の態様の任意の1つ以上を企図する。
「対象」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)、サル、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、またはマウスを含むがこれらに限定されない動物を指す。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では、例えば、ヒト等の哺乳類対象を参照して同義で使用される。
VI.例示的な実施形態
該提供する実施形態は、以下のものである。
1.対象におけるウイルス感染の治療または予防方法であって、前記対象に対して、治療有効量のボクロスポリンを投与することを含む、前記方法。
2.前記対象が、免疫抑制を必要としている、実施形態2に記載の方法。
3.前記ウイルス感染が、シクロフィリンA(CypA)またはCypA関連経路の阻害によって改善される、実施形態1または2に記載の方法。
4.免疫抑制を必要とする対象におけるウイルス感染の治療または予防方法であって、前記対象に対して、治療有効量のボクロスポリンを投与することを含む前記方法であり、前記ウイルス感染が、シクロフィリンA(CypA)またはCypA関連経路の阻害によって改善される、前記方法。
5.対象におけるウイルス感染の治療または予防での使用のためのボクロスポリンを含む組成物であって、治療有効量のボクロスポリン含む前記組成物であり、前記対象に対して投与される、前記組成物。
6.前記対象が、免疫抑制を必要としている、実施形態5に記載の使用のための組成物。
7.前記ウイルス感染が、シクロフィリンA(CypA)またはCypA関連経路の阻害によって改善される、実施形態5または6に記載の使用のための組成物。
8.免疫抑制を必要とする対象におけるウイルス感染の治療または予防での使用のためのボクロスポリンを含む組成物であって、治療有効量のボクロスポリンを含む前記組成物であり、前記対象に対して投与される前記組成物であり、前記ウイルス感染が、シクロフィリンA(CypA)またはCypA関連経路の阻害によって改善される、前記組成物。
9.対象におけるウイルス感染の治療または予防におけるボクロスポリンの使用であって、前記対象が、治療有効量のボクロスポリンを投与される、前記使用。
10.対象におけるウイルス感染の治療または予防のための薬剤の製造におけるボクロスポリンの使用であって、前記薬剤が、治療有効量のボクロスポリンを含み、前記対象に対して投与される、前記使用。
11.前記対象が、免疫抑制を必要としている、実施形態9または10に記載の使用。
12.前記ウイルス感染が、シクロフィリンA(CypA)またはCypA関連経路の阻害によって改善される、実施形態9~11のいずれかに記載の使用。
13.免疫抑制を必要とする対象におけるウイルス感染の治療または予防におけるボクロスポリンの使用であって、前記対象が、治療有効量のボクロスポリンを投与される前記使用であり、前記ウイルス感染が、シクロフィリンA(CypA)またはCypA関連経路の阻害によって改善される、前記使用。
14.免疫抑制を必要とする対象におけるウイルス感染の治療または予防のための薬剤の製造におけるボクロスポリンの使用であって、前記薬剤が、治療有効量のボクロスポリンを含み、前記対象に対して投与される前記使用であり、前記ウイルス感染が、シクロフィリンA(CypA)またはCypA関連経路の阻害によって改善される、前記使用。
15.前記ウイルス感染が、コロナウイルス科のメンバーであるウイルスによって引き起こされる、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
16.前記ウイルスが、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、デルタコロナウイルス、またはガンマコロナウイルスである、実施形態15に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
17.前記ウイルスが、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63)、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、または重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、実施形態15または16に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
18.前記ウイルスが、MERS-CoV、SARS-CoV、またはSARS-CoV-2である、実施形態15~17のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
19.前記ウイルスが、SARS-CoV-2である、実施形態15~18のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
20.前記治療有効量が、約0.1mg/kg/日~約2mg/kg/日である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
21.前記治療有効量が、約7.9mg BID、約15.8mg BID、約23.7mg BID、約31.6mg BID、約39.5mg BID、約47.4mg BID、または約55.3BIDである、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
22.前記治療有効量が、約7.9mg QD、約15.8mg QD、約23.7mg QD、約31.6mg QD、約39.5mg QD、約47.4mg QD、約55.3mg QD、約63.2mg QD、約71.1mg QD、約79.0mg QD、約86.9mg QD、約94.8mg QD、約102.7mg QD、または約110.6mg QDである、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
23.前記治療有効量が、約0.05μM~約10μM、約0.1μM~約5μM、約0.2μM~約2.5μM、約0.3μM~約1.0μM、約0.4μM~約0.9μM、約0.5μM~約0.8μM、約0.1μM~約0.5μM、もしくは約0.2μM~約0.4μM、または約0.05、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.45、約0.5、約0.55、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約6.0、約7.0、約8.0、約9.0、もしくは約10.0μMもしくはそれ未満の濃度と同等であるか、またはそれを達成することができる、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
24.前記対象の腎機能が監視される、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
25.前記対象の腎機能の監視が、以下を含む、実施形態24に記載の方法、使用のための組成物、または使用:
(a)異なる日の少なくとも第一の時点及び第二の時点で前記対象の推算糸球体ろ過量(eGFR)を評価すること、ならびに
(b)(i)前記対象のeGFRが前記第一及び第二の時点の間に目標%を超えて所定の値未満に低下した場合、ボクロスポリンの前記対象に対する1日投与量を減少させるか、または投与を停止すること、
(ii)前記対象のeGFRが前記第一及び第二の時点の間に前記目標%より少なく低下した場合、前記対象に対して同じ1日投与量のボクロスポリンの投与を継続すること。
26.前記所定の値が、約50~約90ml/分/1.73m2である、実施形態25に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
27.前記所定の値が、約60ml/分/1.73m2である、実施形態25または26に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
28.前記目標%が、約20%~約45%である、実施形態25~27のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
29.前記目標%が、約20%である、実施形態25~28のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
30.前記対象が、自己免疫疾患または移植片拒絶反応に関連する状態を有する、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
31.前記対象が、移植片拒絶反応に関連する状態を有する、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
32.前記状態が、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚、腸、または角膜の移植片拒絶反応に関連する、実施形態30または31に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
33.前記状態が、腎移植拒絶反応に関連する、実施形態30~32のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
34.前記対象が、自己免疫疾患を有する、実施形態30に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
35.前記治療有効量のボクロスポリンが、治療有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)及び/またはコルチコステロイドを投与することなく投与される、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
36.さらに、治療有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)及び/または治療有効量のコルチコステロイドを投与することを含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
37.ボクロスポリンが、腸内投与、経口投与、舌下投与、または直腸投与、非経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注入、または吸入/吹送によって投与される、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
38.ボクロスポリンが、腸内投与、経口投与、舌下投与、または直腸投与によって投与される、実施形態37に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
39.ボクロスポリンが、経口投与によって投与される、実施形態37または38に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
40.ボクロスポリンが、非経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注入、または吸入/吹送によって投与される、実施形態37に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
41.ボクロスポリンが、吸入または吹送によって投与される、実施形態37または40に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
42.ボクロスポリンが、エアロゾルの形態で投与される、実施形態41に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
43.ボクロスポリンが、医薬組成物で投与される、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
44.前記医薬組成物が、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む、実施形態43に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
45.前記医薬的に許容される賦形剤が、独立して、アルコール、D-α-トコフェロール(ビタミンE)、ポリエチレングリコールスクシネート(TPGS)、ポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート40(Tween40)、中鎖トリグリセリド、ゼラチン、ソルビトール、グリセリン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、二酸化チタン、及び水を含む1つ以上から選択される、実施形態44に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
46.前記ウイルス量が、前記対象において、ボクロスポリンの投与後に減少する、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
47.前記対象の生存が、ボクロスポリンの投与後に延長される、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法、使用のための組成物、または使用。
VII.実施例
以下の実施例は、例示の目的のためにのみ含まれ、本発明の範囲を限定することを意図していない。
実施例1
SARS-CoV-2の細胞変性効果(CPE)を阻害する候補化合物を調べるために、Vero E6細胞(アフリカミドリザル腎臓上皮細胞)を、ボクロスポリン、シクロスポリンA(CsA)、またはタクロリムスとプレインキュベートした後、SARS-CoV-2に感染させ、その後生存率を評価した。
方法
Vero E6細胞を96ウェルのプレートで増殖させ、培地、媒体、及びボクロスポリン(0.8~100μM)、CsA(0.8~100μM)またはタクロリムス(0.8~100μM)のいずれかとともに60分間プレインキュベートした。次に、細胞を示された濃度のそれぞれの化合物の存在下で60分間、未感染のままで放置、またはSARS-CoV-2で感染多重度(MOI)0.015にて感染させた。続いて、ウイルスを培地から除去し、細胞をPBSで洗浄し、未処理の感染対照細胞が完全なCPEを示すまで(3日間)、それぞれの化合物を含む新鮮な培地でさらにインキュベートした。インキュベーションの終わりに、細胞をMTS生存率アッセイに供し、続いて固定した後、プレートリーダーで吸光度分析を行った(図1A)。細胞の生存率を、MTSアッセイを使用して評価し、化合物の細胞毒性(未感染細胞)及びウイルスの細胞毒性の両方を特定した。
結果
タクロリムスは、感染細胞をウイルス誘発性細胞変性効果から保護しなかった。これは、最大25μMの投与量を使用した後、化合物関連の細胞毒性が観察されたことで明らかであった。代替的に、CsAの保護効果は1.6~12μMで生じ、その後、この化合物は細胞毒性を有した。感染細胞を0.8μMのボクロスポリンで処理すると、モック感染対象と同じレベルの細胞生存率でウイルス防御がもたらされた。
図1Bに示す通り、ボクロスポリンは、2μM未満の濃度では未感染細胞に対して毒性を示さず、バッチ4のボクロスポリンは最大10μMの濃度で未感染細胞に対して毒性を示さなかった。一方、ボクロスポリンのすべての試験バッチは、感染細胞の生存率の増加によって示されるように、0.01μM~1μMの濃度で、用量依存的にSARS-CoV-2のCPEの阻害を促進した。ボクロスポリンのすべてのバッチで、0.8μMでの処理が、未感染細胞で見られるレベルまで細胞の生存率を維持するのに効果的であった。
図1Cに示す通り、ボクロスポリンは、タクロリムス(EC50約25μM)と比較して、はるかに低い濃度(EC50約0.4μM)でSARS-CoV-2を阻害することができた。さらに、タクロリムス処理は、25μMを超える濃度で化合物関連の細胞毒性を引き起こした(データは示さず)。これらの結果は、ボクロスポリンが、試験した細胞の生存率に影響を与えない濃度範囲で、SARS-CoV-2に対してインビトロで阻害を示したことを示している。
実施例2
インビトロでボクロスポリンがSARS-CoV-2に与える影響を調べるために、Vero E6細胞またはCalu細胞(ヒト気管支気道上皮細胞)をボクロスポリンとプレインキュベートした後、SARS-CoV-2に感染させ、その後採取し、プラークアッセイによってウイルス量を測定した。
方法
Vero E6細胞及びCaluを96ウェルのプレートで増殖させ、0.01μM~10.00μMのボクロスポリンとともに60分間プレインキュベートした。次に、細胞を示された濃度のボクロスポリンの存在下、SARS-CoV-2でMOI1にて60分間感染させた。続いて、ウイルスを培地から除去し、細胞をPBSで洗浄し、示された濃度のボクロスポリンを含む新鮮な培地でさらに16時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに培地を採取し、プラークアッセイによってウイルス量を測定した。感染の量を説明するために、それぞれの細胞を蛍光顕微鏡で可視化されるウイルスNSP4の染色にも供した。
結果
図2A~2Cに示す通り、ボクロスポリンは、Vero E6細胞及びCalu細胞においてSARS-CoV-2のウイルス量を用量依存的に阻害した。バッチ2のボクロスポリンは、E6細胞においてSARS-CoV-2のウイルス量を0.01から1.00μMまで用量依存的に阻害し、濃度が1.00μMを超えると、ウイルス力価は検出限界まで低下した(図2A)。同様に、バッチ3のボクロスポリンは、E6細胞及びヒトCalu細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス量を、それぞれ、0.01から4.00μMまで用量依存的に阻害した(図2B)。図2Cに示す通り、ボクロスポリンは、ウイルスNSP4の蛍光染色の減少によって反映されるように、SARS-CoV-2感染細胞の量を用量依存的に減少させた。
実施例3
腎移植患者の拒絶反応を予防するためのボクロスポリン処理の有効性及び安全性プロファイルを評価するために、新規腎移植患者にボクロスポリンまたはタクロリムスを投与し、拒絶反応及びその他の有害転帰について評価した。
方法
新規腎移植レシピエントを、6か月間、第2b相、多施設、ランダム化、非盲検試験に登録した。新規腎移植レシピエントに、高用量ボクロスポリン(0.8mg/kg)、中用量ボクロスポリン(0.6mg/kg)、低用量ボクロスポリン(0.4mg/kg)、または標準用量のタクロリムス(0.05mg/kg)を1日2回(BID)投与した。さらに、すべての被験者は、ダクリズマブまたはバシリキシマブの静脈内投与(製品ラベルに従って投与)による誘導免疫抑制を受け、試験中にMMF及びコルチコステロイドによる併用治療を受けた。ボクロスポリンまたはタクロリムスの血中トラフレベルを180日間にわたって測定した。有害反応を記録し、バンフ分類に基づいて腎移植片拒絶反応を評価した。3か月及び6か月の時点で、有害反応を分析した。移植片の生存率及び患者の生存率も6か月の時点で記録した。
結果
図3に示す通り、低用量、中用量、及び高用量群に関するボクロスポリンの血中トラフレベル(C)は、0~3か月では、それぞれ、20~30ng/mL、35~50ng/mL、及び60~85ng/mLであり、3~6か月では、同様に11~20ng/mL、21~30ng/mL及び31~40ng/mLであった。比較すると、タクロリムスの標準用量の血中トラフレベルは、0~3か月で7~20ng/mLであり、0~6か月では5~15ng/mLである。
ボクロスポリン投与の臨床的影響は、移植片の拒絶率によって評価した。表1に示す通り、中用量のボクロスポリン群(0.6mg/kg BID)は、生検で証明される急性拒絶反応(BPAR)によって示されるように、標準用量のタクロリムス群と比較して同様の拒絶率を示した。低用量、中用量、及び高用量のボクロスポリン群に関する移植後の糖尿病の新規発症(NODAT)の発生率は、タクロリムスの標準用量群の16.4%に対して、それぞれ、1.6%、5.7%、及び17.7%であった。低用量、中用量、及び高用量のボクロスポリン群に関するNankivell eGFR(腎機能の指標)は、タクロリムス標準用量群の69mL/分に対して、それぞれ、71、72、及び68mL/分であった。この6か月間の試験では、VCSが急性拒絶反応の予防においてTACと同程度の効果があり、低用量群及び中用量群で同様の腎機能を有すること、及びNODATの発生率の低下と関連している可能性があることが示された。
Figure 2023524802000003
実施例4
薬物動態データを、活動性ループス腎炎患者の試験から収集した。様々な用量に対するトラフ濃度を表2に示す。PKにより、トラフ濃度に対する用量の直線性が実証されるため、進行中の臨床試験では治療薬モニタリングの使用の必要はない。
Figure 2023524802000004
実施例5
SARS-CoV-2陽性腎移植患者におけるボクロスポリンの抗ウイルス効果を評価するために、軽度から中等度のSARS-CoV-2症状を示す腎移植レシピエントを試験に登録し、プレドニゾン及びタクロリムスの併用療法の効果を評価する。
方法
SARS-CoV-2陽性腎移植患者を、ボクロスポリン処理のための非盲検、単一施設、探査的試験に登録する。試験への登録前または登録時に、被験者の標準的な免疫抑制療法を、最新の当該施設のガイドライン(COVID陽性移植患者のためのLUMC Transplant Centerの治療ガイドライン)に従って、プレドニゾン及びタクロリムスによる二剤療法に減じた。1日目の前に、COVID-19感染が疑われる腎移植レシピエントにSARS-CoV-2診断検査を施し、本試験について伝える。COVID-19感染が確認され、同意後、被験者を試験群にランダム化し、それに応じて1日目の試験手順を行う。具体的には、被験者30人中15人が試験期間中プレドニゾン及びタクロリムスの治療を受け続け、残りの15人の被験者をタクロリムスからボクロスポリンに切り替える。ボクロスポリンを、最大1年の治療期間、6カプセル(各7.9mg)BIDとして投与する(図4)。ボクロスポリンのトラフレベルが25~60ng/mLに維持され、タクロリムスのトラフレベルが3~7ng/mlに維持されるように、試験中に安全性薬物モニタリングを行う。トラフレベルがこれらのレベル内にない場合は、用量の調節を行う。
2日目から14日目まで、被験者は毎日在宅モニタリングを受け、16日目から28日目までは、被験者は1日おきに在宅モニタリングを受ける。在宅モニタリングは、ビデオコンサルティングを介して行われ、SARS-CoV-2による細胞変性効果(CPE)のリードアウトとして、体温、血圧、脈拍、体重、呼吸数及び酸素飽和度の自己測定を含む。さらに、被験者は、ウイルス量の評価のために、朝一番の咽頭スワブを採取する。
被験者にはまた、4日目(来院2)、7日目(来院3)、14日目(来院4)及び28日目(来院5/試験終了/早期終了来院)の4回の来院も予定されている(図4)。朝一番の咽頭スワブも来院中に回収する。28日目以降、被験者は延長された安全性のフォローアップを継続し、42日目、90日目、180日目、270日目、及び360日目に評価を持続するために来院する。5回目の来院後、最大1年間ボクロスポリンを継続することを選択した被験者には、治験薬が投与される。
結果
プレドニゾン及びタクロリムスの治療を受けた被験者と、プレドニゾン及びボクロスポリンの治療を受けた被験者のSARS-CoV-2ウイルス力価及び細胞変性効果を比較する。ボクロスポリン群の被験者は、タクロリムス群と比較して、ウイルス量が効果的に減少し、重症CPEが少ないと予想される。
プレドニゾン及びタクロリムスの治療を受けた被験者と、プレドニゾン及びボクロスポリンの治療を受けた被験者の移植片拒絶反応、移植後の糖尿病の新たな発症、及び他の副作用も比較する。ボクロスポリン群の被験者は、タクロリムス群と比較した場合、移植片拒絶反応、糖尿病及び副作用の発生率が同等またはそれ以下であると予想される。
実施例6
ボクロスポリン(Aurinia)、シクロスポリン(Novartis)、タクロリムス(Astellas)、ミコフェノール酸(Roche)、及びエベロリムス(Novartis)の原液を、DMSOにこれらの薬物の医薬製剤を溶解することによって調製した(従って、図5A~5Eの濃度は推定濃度である)。96ウェルの細胞培養プレート内のVero E6細胞(約20,000細胞/ウェル)に、SARS-CoV-2を感染させ(感染多重度0.015)、続いて免疫抑制剤の連続希釈を含む150μlの培地中でインキュベーションを行った。感染後3日目にウイルスが誘発する細胞死をMTSアッセイで定量し、495nmの吸光度を測定した。非感染細胞の生存率を並行して評価し、薬物の細胞毒性を特定した。各薬物について、2つの独立した実験(4連)を行った。ウイルスが誘発する細胞死を50%阻害する濃度として定義される50%有効濃度(EC50)、及び未感染細胞の生存率を未処理の対照細胞の生存率の50%まで減少させる濃度である50%細胞毒性濃度(CC50)を、GraphPad Prism v8.0による非線形回帰を使用して特定した。図5A~5Eに示す通り、ボクロスポリン(図5A)、シクロスポリン(図5B)、タクロリムス(図5D)及びミコフェノール酸(図5E)のみが、それぞれ、EC50値0.27、3.2、12及び3.1μMでウイルスが誘発する細胞死を阻害した。
タクロリムス(図5D)及びシクロスポリン(図5B)のEC50濃度は、インビボで対応する濃度でおそらく毒性がある。しかしながら、図5Aに示す通り、ボクロスポリンは細胞生存率を維持し、SARS-CoV-2ウイルスの複製をタクロリムス及びシクロスポリンよりそれぞれ約40倍及び10倍低い濃度で阻害した。ボクロスポリンのEC50は、移植患者で観察されたCmaxの範囲内である。
実施例7:VCS、CsA及びTACによるCalu-3細胞におけるSARS-CoV-2複製の阻害
CPE減少アッセイ及びウイルス産生減少アッセイを行い、3つのカルシニューリン阻害剤であるシクロスポリンA(CsA)、タクロリムス(TAC)、及びボクロスポリン(VCS)ならびに腎移植レシピエント(KTR)で一般に使用されるその他の免疫抑制剤がSARS-CoV-2複製に与える影響を細胞ベースのアッセイを使用して評価した。
方法
ウイルス及び細胞株
SARS-CoV-2/Leiden-0002(GenBank MT510999)を、2020年3月にLeiden University Medical Center(LUMC)にて鼻咽頭サンプルから単離した。Vero E6細胞で2回継代したウイルスストックを用いて感染を行った。Vero E6細胞及び本明細書ではCalu-3細胞と呼ばれるCalu-3 2B4細胞(Tseng et al.,J Virol.Aug 2005;79(15):9470-9)を、以前に記載された通りに培養した(Salgado-Benvindo et al.,Antimicrob Agents Chemother.Jul 22 2020;64(8)doi:10.1128/AAC.00900-20)。感染を、25mM HEPES(Lonza)、2%FCS、2mM L-グルタミン、及び抗生物質(EMEM-2%FCS)を含むイーグル最小必須培地(EMEM、Lonza)で行った。感染性SARS-CoV-2を使用したすべての実験は、LUMCのバイオセーフティレベル3の施設で実施した。
免疫抑制化合物
ボクロスポリン(VCS、Lupkynis(商標))、シクロスポリンA(CsA、Neoral(登録商標)、Novartis)、タクロリムス(TAC、Prograf(登録商標)、Astellas)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF、CellCept(登録商標)、Roche)またはエベロリムス(EVL、Certican(登録商標)、Novartis)の原液は、これら薬物の医薬製剤をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解することによって調製した。プラセボカプセル及び純粋なVCS粉末、タクロリムス(PHR1809)、シクロスポリンA(30024)及びミコフェノール酸(M5255)を得た。レムデシビル(RDV、HY-104077)を、すべての実験で対照として使用した。すべての化合物をDMSOに溶解し、単回使用のアリコートを-20℃で保存した。
検証済みのLC-MS/MSによるシクロスポリンA、タクロリムス及びボクロスポリン濃度の測定
CsA及びTACの定量化は、LC-MS/MSによって以前に記載された通りに(Zwart et al.,Br J Clin Pharmacol.Dec 2018;84(12):2889-2902)、サンプルをメタノールに続いてブランク全血で希釈して行った。分析前に、0-15-600μg/LのVCSの検量線内に含まれるように、サンプルをメタノールに続いて全血で希釈した。ヒト全血を10または20μlのサンプルに最終体積200μlになるまで添加し、200μlの0.1M硫酸亜鉛及び500μlの内部標準溶液(32μg/LのVCS D4を含むアセトニトリル)を添加した。次に、サンプルを2000rpmで5分間ボルテックスし、13000rpmで5分間遠心分離し、20μlをLC-MS/MSシステムに注入した。この方法は、EMA生物学的分析法検証ガイドライン(EMEA/CHMP/EWP/192217/2009-Guideline on bioanalytical method validation(2011))に従って検証された。
細胞変性効果(CPE)減少アッセイ
Vero E6細胞でのCPE減少アッセイを、試験化合物との細胞のプレインキュベーションを30分間継続したこと以外、概して上記の通りに行った。プレートを37℃で3日間インキュベートし、495nmの吸光度を測定する比色アッセイを用いて細胞生存率を特定した。各化合物のEC50及びCC50を特定し、得られたデータを、非線形回帰を使用して分析した。各化合物について、少なくとも2つの独立した実験(各4連)を完了した。
ウイルス産生減少アッセイ
Calu-3細胞を96ウェルのプレート(1ウェルあたり3×10細胞)にて、100μlの培地に播種した。翌日、細胞を、濃度25μMから開始するCsA、TACまたはVCS及び10μMから開始するRDVの2倍連続希釈とともに60分間プレインキュベートした。続いて細胞を、化合物を含む50μlの培地中、SARS-CoV-2(MOI1、Vero E6細胞で特定された力価に基づく)で感染させた。37℃で1時間のインキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄し、化合物を含む100μlの培地を添加した。感染後24時間(h p.i.)でウェルから培地を採取した。感染したCalu-3細胞から放出されたウイルスの後代の分析は、Vero E6細胞でのプラークアッセイによって行った。VCS濃度を、採取した培地に9倍量のメタノールを添加した後、検証済みのLC-MS/MSによって測定した。CPE減少アッセイについて記載した通り、同じ方法で処理したモック感染細胞を用いた細胞毒性アッセイを並行して行った。
ガラスボトルでのウイルス産生の減少
ホウケイ酸ガラス製試薬ボトル(50ml)を氷酢酸で処理して残留洗剤を除去した後、無水エタノールで2回洗浄した。使用前にボトルを乾燥し、UV滅菌した。滅菌ガラス培養管、ガラス製50μlシリンジ及びガラス製パスツールピペットを使用して、3倍濃縮化合物溶液をEMEM-2%FCSで調製した。各化合物希釈液1mlを3つの異なる試薬ボトルに移した(3連)。培養フラスコで増殖させたコンフルエントな単層Calu-3細胞を、SARS-CoV-2/Leiden-002でMOI1にて感染させた。37℃で1時間のインキュベーション後、細胞を温PBSで3回洗浄し、トリプシン処理し、EMEM-2%FCSに再懸濁した。この細胞懸濁液2ml(約10細胞)を、3倍濃縮化合物の培地溶液1mlを含む各試薬ボトルに添加した。37℃で24時間のインキュベーション後、培地を回収し、Vero E6細胞でのプラークアッセイによって感染性ウイルス力価を特定した。
ガラス培養管での化合物の細胞毒性の特定
Calu-3細胞をトリプシン処理し、1.5x10細胞を含む1mlのEMEM-2%FCSを、ガラス培養管に分けた。150μM濃度(最終濃度の3倍)から開始するVCS、TAC、及びCsAの2倍希釈液を、ガラス製実験器具を使用してEMEM-2%FCS培地で調製し、対応する細胞を含む管に0.5mlを添加した(1濃度あたり3管)。24時間のインキュベーション後、細胞生存率を上記の通りに特定した。
結果
VCS、CsA、及びTACがSARS-CoV-2複製に与える影響を評価するために、SARS-CoV-2に対して寛容であることが示されているヒト肺上皮細胞(Calu-3)を使用して、ウイルス量減少アッセイを行った。VCSは親油性が高く、プラスチックに結合する可能性があり、プラスチック製実験器具を使用したアッセイではバイオアベイラビリティが低下する可能性があるため、プラスチック製実験器具を使用した標準的な細胞ベースのアッセイならびに、ガラス管、容器及びピペットを使用したカスタムアッセイで、VCSの効果を比較した。RDVを、SARS-CoV-2の複製を阻害するための陽性対照として含めた。
図6A~6Dは、シクロスポリンA、タクロリムス、及びボクロスポリンが感染後の感染性SARS-CoV-2の後代産生(図6A及び図6B)ならびにモック感染後のCalu-3細胞の生存率(図6C及び図6D)に与える影響を示す。図6A及び図6Cは、ガラス製実験器具を使用して行った実験から得たデータを示し、図6B及び図6Dは、プラスチック製実験器具の使用からの結果を示す。ガラス中のCalu-3細胞は、生存を維持し、感染後24時間で、培地中で1.7×10PFU/mlの力価が測定されたことからSARS-CoV-2の複製を支援した(図6A)。感染細胞を10μMのレムデシビルで処理すると、ウイルスの複製が阻害され、プラークアッセイの検出限界をわずかに超える感染性後代の力価となった(データは示さず)。細胞を3.2μMのボクロスポリンで処理すると、SARS-CoV-2の感染性後代の力価に1.5超の対数減少がもたらされたが、同濃度のシクロスポリンAまたはタクロリムスを使用した場合、約0.5の対数減少が観察された(図6A)。しかしながら、3.2μMのボクロスポリンまたはシクロスポリンAでの処理により細胞毒性効果も生じ、細胞生存率が約75%に低下した(図6C)。まとめると、これらの結果は、ボクロスポリンの強力な抗ウイルス活性を示しており、これは一部分において細胞毒性によって媒介されている可能性がある。
観察された結果は、CsAがHuH7.5及びCalu-3細胞ではSARS-CoV-2の複製を阻害したが、Vero細胞では阻害しなかったという以前の報告と一致していた(Dittmar et al.,bioRxiv.2020:2020.06.19.161042)。しかしながら、TACが約15μMのEC50でVero E6細胞においてSARS-CoV-2の複製を阻害するという観察とは対照的に、以前の報告では、これらの細胞株のいずれにおいてもTACの活性が見られず、このことは、異なるVero細胞のサブクローンの使用と関係している可能性がある。
プラスチック材料を使用した実験では、細胞をVCSで処理すると、感染性後代の力価の用量依存的な減少が観察され、6.4μMで1を超える対数減少に至った(図6B)。CsA処理は25μMで同様の減少をもたらしたが、6.4μMではVCSよりも阻害が少なかった。しかしながら、12.5μM以上の濃度では、CsAは有意な細胞毒性を示した一方、VCSは示さなかった(図6D)。TACは多くの細胞毒性を示さなかったが、感染性ウイルス後代の力価を、1を超えて対数減少させるには25μMの濃度が必要であった。VCSは、プラスチック製の代わりにガラス製実験器具で行った実験でより強い効果を示したが、これは、プラスチックに結合する化合物の損失が原因である可能性がある。遊離VCSの濃度を、細胞の有無にかかわらず、ガラス容器での様々な溶液とのインキュベーション後に測定した。細胞なしで、ガラス中、37℃で24時間のインキュベーション後、溶液からの化合物の有意な損失は観察されなかった(表3)。0.2~3.2μMの濃度のVCS溶液をガラスボトルでCalu-3細胞とともにインキュベートすると、VCS濃度の約75%の減少が観察され、化合物が細胞に結合したまたは取り込まれたことが示された。標準的なプラスチック製実験器具で行った実験で、25μMのVCSで24時間処理した後の感染細胞の培地中のVCS濃度も測定したところ、ボクロスポリンの検出濃度は0.68μMと低かった。


Figure 2023524802000005
細胞結合または取り込みによる75%の減少を考慮しても、これらの結果は、VCSの90%がプラスチック結合により失われたことを示している。ガラス及びプラスチックでそれぞれ3.2μM及び25μMのVCSによるウイルス力価の同様の減少は、プラスチックを使用した場合、VCSの生体学的に利用可能な量が、最初に添加されたものの約10%である可能性が高いことを裏付けた。VCSがプラスチックに結合すると、溶液から化合物が80%超失われる可能性がある。その結果、プラスチック製実験器具を使用して純粋なVCS粉末から調製された原液を使用すると、抗ウイルスアッセイにおける化合物の有効性を過小評価する可能性がある。VCSは親油性の高い化合物であり、プラスチック表面と疎水性薬物との相互作用が悪影響を与える可能性があるため、VCSの抗ウイルス効果は、プラスチックを使用したアッセイで観察されるよりも大きい可能性がある。この結果は、プラスチックの結合による化合物の損失及び医薬製剤中の賦形剤の干渉により、プラスチックの使用を含む抗ウイルスアッセイにおいてEC50値の特定が困難になったことを示している。
ガラス製実験器具を使用した結果により、感染したCalu-3細胞においてVCSが用量依存的、かつCsA及びTACよりも効果的にSARS-CoV-2感染性の後代の産生を減少させることが実証された。これらの結果は、シクロフィリン依存性CNIが、EVL及びMPA等の他のクラスの免疫抑制剤よりも強力に、細胞培養におけるSARS-CoV-2複製を阻害することを示している。VCSは、TACよりも8倍低い濃度でSARS-CoV-2の複製を阻害した。SARS-CoV-2の複製を阻害するために必要なTAC濃度は、輸送中の遊離分画が全濃度の約10分の1であることを考慮に入れなければ、ヒトにおいて許容できないまたは毒性濃度である可能性がある(TACでは、0.2μMのEC50は、160ng/mlに相当する)。CsA及びVCSの場合、0.2μMは、それぞれ、241ng/ml及び243ng/mlの濃度に相当する。特に、VCSは、肺等の臓器に血中よりも高濃度で分布する可能性があるとともに、赤血球に高濃度が含まれる。その結果、特定の臓器または細胞での高濃度により、ウイルスが抑制され得る。従って、これらの結果は、ヒトにおいて安全な濃度でSARS-CoV-2の複製を阻害することもできる治療のためのCNIとしてのVCSの有用性を支持する。VCSは、KTRにおける拒絶反応を予防するためにTACと同等の効果があると考えられているため、VCSは、COVID-19患者の治療に有用である。本明細書に記載の結果は、SARS-CoV-2感染のリスクがある、免疫抑制を必要とする対象にとって、例えば、KTRにとって、移植医療で一般に使用される免疫抑制剤の中でもシクロフィリン依存性CNI、特にVCSの利点を実証している。
実施例8:免疫抑制剤の医薬製剤によるSARS-CoV-2複製の阻害
SARS-CoV-2感染に応答した細胞生存率を評価する実験を、腎移植レシピエントの治療に一般に使用される薬物の医薬製剤で行った。実施例7からの知見を考慮して、例えば、溶媒及び賦形剤を含む医薬製剤の使用により、溶解性またはプラスチック結合に関連する問題が回避され得ると考えられた。
方法
VCS、CsA、TAC、EVL、及びMMFの医薬製剤(賦形剤、共溶媒及び他の成分を含む)を、上記の通りVero E6細胞を使用するCPE減少アッセイで評価した。レムデシビル(RDV、HY-104077)を、すべての実験で対照として使用した。プレインキュベーション及びSARS-CoV-2の感染後、細胞を、薬物を含む培地に3日間保持した。上記のようにモック感染細胞によるアッセイを並行して行い、試験製剤の細胞毒性を評価した。VCSの場合、6.4μMで原液を溶解したときの濃度の達成を、LC-MS/MSによって確認した(データは示さず)。
結果
図7A~7Eは、感染細胞及びモック感染細胞の細胞生存率に対する様々な医薬製剤の影響を示す。CNIであるVCS、CsA、及びTACは、マイクロモル未満から低マイクロモル範囲のEC50値でウイルスが誘発する細胞死を阻害した(図7A~7C)。EVL(図7D)は、試験した濃度では阻害効果を示さなかった。プロドラッグであるMMF(図7E)をこの比較に含めたが、これがウイルス複製を阻害することは予想しなかった。というのは、これが、このアッセイ中にその活性型であるミコフェノール酸(mycophenolate)(別名ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、MPA)に代謝されない可能性が高いからである(Ransom,Ther Drug Monit.1995;17(6):681-4)(Ritter and Pirofski,Transp Infect Dis.2009;1(4):290-7及びNeyts et al.,Antimicrob Agents Chemother.1998;42(2):216-22)。従って、MMFの明らかな抗ウイルス効果は、製剤中に存在する賦形剤に起因する可能性がある。
VCS、CsA及びTACのEC50値は、それぞれ、0.22±0.01μM、4.3±0.6μM、及び10±1μMであった。VCSを除けば、どの化合物も細胞毒性を示さなかったため、それらのCC50値は、100μMよりも高かった。VCSは、CC50が約4μMでより高い細胞毒性を示し、そのEC50も、調べた他の化合物と比較して18~45分の1であった。これらの結果は、他の試験化合物と比較して、ウイルス媒介性細胞死の阻害に対するVCSの優れた効果を実証する。
実施例9:VCSの医薬製剤がSARS-CoV-2の複製に与える影響
VCSカプセル及びプラセボカプセルの内容物の抗ウイルス効果を評価し、例えば、Lupkyna(商標)(VCSの医薬製剤)に含まれる1つ以上の賦形剤がVCSの効果、例えば、実施例8に示す約0.22μMの低EC50(図7A)に寄与したかどうかを特定するためにアッセイを行った。
方法
CPE減少アッセイを上記の通りに行った。SARS-CoV-2に感染させたVero E6細胞を、VCSまたはプラセボに暴露し、各々の抗ウイルス効果(感染細胞)及び細胞毒性効果(モック感染細胞)を比較した。プラセボカプセルにVCSが含まれていないことは、LC-MS/MS分析によって確認した(データは示さず)。
結果
図8A~8Bは、VCSの医薬製剤及びプラセボが細胞生存率に与える影響を比較している。驚くべきことに、VCS製剤(図8A)及びプラセボ(図8B)の両方が、同様の用量依存性でSARS-CoV-2の複製を阻害した。これらの結果は、VCS製剤に含まれる1つ以上の賦形剤が、本記載の実験条件下で抗ウイルス活性を媒介することができることを示した。
実施例10:VCS製剤の殺ウイルス効果の評価
プラセボカプセルの潜在的な殺ウイルス活性をさらに評価した。
方法
化合物または製剤の殺ウイルス能力を特定するために、SARS-CoV-2ビリオン(5x10PFU)を次のいずれかの溶液とともに37℃で2時間インキュベートした:培地、純粋な粉末から調製したVCS溶液(3.2μM)、溶解したVCSカプセルの内容物(3.2μM)、プラセボカプセルまたはTween溶液(カプセルに存在、3.2μMのVCSに対応する)。抗ウイルス活性に関しては、PBSを陰性対照として使用し、50%エタノールを陽性対照として使用した。試験化合物をSARS-CoV-2ウイルスストックとともに2時間インキュベートした。残っている感染性ウイルスの力価は、例えば、Salgado-Benvindo et al.,Antimicrob Agents Chemother. Jul 22 2020;64(8)doi:10.1128/AAC.00900-20に記載されているVero E6細胞でのプラークアッセイで特定した。
結果
図9に示す通り、対照処理(50%エタノール)のみが、感染性SARS-CoV-2の量を検出限界未満(<100PFU/ml)に減少させた。他の処理のいずれも、残っているウイルスの感染力に有意な影響を与えなかった。
これらの結果は、本記載の実験条件下で、これら製剤の賦形剤が殺ウイルス効果を有さないことを示した。これらの結果は、特性化されていない機序を通じて、賦形剤の存在がCPE減少アッセイのリードアウトを干渉する可能性を示した。
実施例11:高純度粉末からの免疫抑制化合物の調製及びCPE減少アッセイにおけるそれらの活性
医薬組成物に含まれる賦形剤がVCS及び他の免疫抑制化合物の効果に与える影響を評価した。
方法
DMSOに可溶化した免疫抑制薬の高純度粉末を使用して、CPE減少アッセイを上記の通りに行った。試験原液は、各化合物の純粋な粉末から調製した。ネオーラル(CsAマイクロエマルジョン)の場合、KTR治療で最も一般的に使用されるCsA誘導体であるCsA粉末を評価した。
結果
図10A~10Dは、CPE減少アッセイにおいて可溶化高純度免疫抑制化合物が細胞生存率に与える影響を示す。図10Aに示す通り、純粋な粉末から調製したVCS溶液は、SARS-CoV-2感染細胞に対して、医薬製剤から作製した溶液と同じレベルの防御を与えなかった(図8Aと比較)。しかしながら、純粋な粉末からのVCS溶液はまた、モック感染細胞から観察される通り、細胞毒性が少なかった(図6Cと比較)。図10B及び10Dは、それぞれ、CsA及びMPA処理細胞について同様の結果を示している。図7Cを図10Cと比較した場合、純粋な粉末から調製したTAC溶液は、製剤と同様の有効性、すなわち、EC50約15μMで、SARS-CoV-2を阻害した。
まとめると、これらの結果は、ある特定の医薬製剤の賦形剤が、観察された有効性に寄与していることを示す。この抗ウイルスアッセイにおいて、賦形剤によって引き起こされる干渉を回避するための様々な免疫抑制化合物の高純度の粉末の試験により、VCS、CsA及びTACに対するEC50値が実質的に高くなったことから、医薬製剤中の活性化合物の溶解性及びバイオアベイラビリティを改善する賦形剤もまた、細胞ベースのアッセイの結果に影響を与え得ることが実証された。しかしながら、TACの医薬製剤には、抗ウイルス効果のある賦形剤が含まれているとは思われなかった。
これらの結果は、免疫抑制化合物が、最適な活性のための溶解性及び/またはバイオアベイラビリティを確保するために賦形剤を必要とする可能性があることを示している。化合物の調製物、例えば、医薬製剤または可溶化高純度粉末は、アッセイの結果ならびに投与された場合の化合物の溶解性及びバイオアベイラビリティに影響を与える可能性がある。
実施例12:ボクロスポリン製剤におけるプラスチック材料の影響の評価
VCSとプラスチック製実験器具との間の潜在的な相互作用を考慮して、プラスチックのコーティングがVCSの結合を防ぐかどうかを判断するための実験を行った。上記の通り、VCSの医薬製剤に含まれる賦形剤は、例えば、プラスチックへのVCSの結合を防ぐことによってバイオアベイラビリティに影響を与える可能性があるが、それらの非特異的な抗ウイルス効果は、VCSの真のEC50の測定に影響を与える可能性もある。様々な薬剤でコートしたプラスチック材料を試験し、コーティングがVCSのプラスチックへの結合を防ぎ、抗ウイルスアッセイにおいて純粋な粉末から調製したVCS溶液の使用を潜在的に可能にするかどうかを評価した。
方法
プラスチック材料のコーティング
プラスチック製実験器具を3つの異なるコーティング剤、すなわち、100mg/mlのウシ血清アルブミンを含むPBS(BSA、Sigma)、1%ポリエチレングリコール3350を含むMilliQ水(PEG-3350、Sigma)、及び0.2%ポリソルベート40を含むMilliQ水(Tween40、Fluka)でコートした。さらに、このプラスチック材料を500mMのVCSのDMSO(Sigma)溶液で処理することにより、VCSを施した。すべてのチューブ、チップ及び培養プラスチックを含めた実験器具をブロッキング溶液で満たし、表面を均一にコートするために揺らしながら室温で2時間インキュベートした。MilliQ水で2回すすいだ後、これらの物品を室温で乾燥させ、その後さらに実験に使用した。0.2及び2μMのVCS溶液をEMEM-2%FCSで調製し、各VCS溶液100μlをコートした96ウェルのプレートでインキュベートした。37℃で2時間のインキュベーション後、残っているVCS濃度を検証済みのLC-MS/MSで測定した。同様の方法を使用して、TACまたはCsAの結合も評価した。
結果
いずれのコーティング処理でもVCSのプラスチックへの非特異的結合及び損失を減らすことはできず(表4参照)、2時間のインキュベーション後に元の濃度の5~7%しか回収されなかった。t=0であっても、希釈液の調製中のピペットチップ及びチューブ内でのVCSの損失のため、元のストック濃度の約27%しか回収することができなかった。500mMのVCSでの処理によるプラスチックの結合部位の飽和は、溶液からのVCSの損失を防いだが、プラスチックからの制御されないVCSの浸出につながった。これにより、投入した溶液の濃度よりも高い、予測不可能な濃度がもたらされ、例えば、2μMの溶液をVCSで飽和させたプラスチックプレートでインキュベートした場合、15μM超のVCS濃度が測定された。


Figure 2023524802000006
プラスチックへの結合はTACで最小であった(24%の損失)。CsAの場合、2時間のインキュベーション後、残っている濃度は初期濃度の62%であった(表5参照)。
Figure 2023524802000007
これらの結果は、コーティング剤がVCSのプラスチックへの非特異的結合を防がないことを示した。いくつかの態様では、プラスチックの結合による化合物の損失及び医薬製剤に含まれる賦形剤の干渉により、一部のアッセイにおいてEC50値の特定が困難になった。いずれのコーティング処理もプラスチックへの非特異的結合を防がなかったため、潜在的な問題を回避するために、他の実験ではプラスチックの代わりにガラス器具を使用した(例えば、表3参照)。
本明細書で言及される特許、特許出願、及び科学論文を含めたすべての刊行物は、特許、特許出願、または科学論文を含めた各個別の刊行物が、具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、すべての目的のため、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
前述の発明は、理解の明瞭化のために実例として及び例としてある程度詳しく記載されているが、当業者には、ある程度のわずかな変更及び修正が、上記の教示に照らして行われることは明らかである。従って、該説明及び例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本記載の組成物及び方法に対する様々な変更は、本明細書の記載及び教示から明らかになるであろう。かかる変形は、本開示の真の範囲及び趣旨から逸脱することなく行われ得るとともに、本開示の範囲に含まれることが意図されている。

Claims (36)

  1. 対象におけるウイルス感染の治療または予防方法であって、前記対象に対して、治療有効量のボクロスポリンを投与することを含む、前記方法。
  2. 前記対象が、免疫抑制を必要としている、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ウイルス感染が、シクロフィリンA(CypA)またはCypA関連経路の阻害によって改善される、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記ウイルス感染が、Coronaviridaeのメンバーであるウイルスによって引き起こされる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記ウイルスが、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、デルタコロナウイルス、またはガンマコロナウイルスである、請求項4に記載の方法。
  6. 前記ウイルスが、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63)、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、または重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、請求項3または4に記載の方法。
  7. 前記ウイルスが、MERS-CoV、SARS-CoV、またはSARS-CoV-2である、請求項3~6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記ウイルスが、SARS-CoV-2である、請求項3~7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記治療有効量が、約0.1mg/kg/日~約2mg/kg/日である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記治療有効量が、約7.9mg BID、約15.8mg BID、約23.7mg BID、約31.6mg BID、約39.5mg BID、約47.4mg BID、または約55.3BIDである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記治療有効量が、約7.9mg QD、約15.8mg QD、約23.7mg QD、約31.6mg QD、約39.5mg QD、約47.4mg QD、約55.3mg QD、約63.2mg QD、約71.1mg QD、約79.0mg QD、約86.9mg QD、約94.8mg QD、約102.7mg QD、または約110.6mg QDである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記治療有効量が、約0.05μM~約10μM、約0.1μM~約5μM、約0.2μM~約2.5μM、約0.3μM~約1.0μM、約0.4μM~約0.9μM、約0.5μM~約0.8μM、約0.1μM~約0.5μM、もしくは約0.2μM~約0.4μM、または約0.05、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.45、約0.5、約0.55、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約6.0、約7.0、約8.0、約9.0、もしくは約10.0μMもしくはそれ未満の濃度と同等であるか、またはそれを達成することができる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記対象の腎機能が監視される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記対象の腎機能の監視が以下を含む、請求項13に記載の方法:
    (a)異なる日の少なくとも第一の時点及び第二の時点で前記対象の推算糸球体ろ過量(eGFR)を評価すること、ならびに
    (b)(i)前記対象のeGFRが前記第一及び第二の時点の間に目標%を超えて所定の値未満に低下した場合、ボクロスポリンの前記対象に対する1日投与量を減少させるか、または投与を停止すること、
    (ii)前記対象のeGFRが前記第一及び第二の時点の間に前記目標%より少なく低下した場合、前記対象に対して同じ1日投与量のボクロスポリンの投与を継続すること。
  15. 前記所定の値が、約50~約90ml/分/1.73mである、請求項14に記載の方法。
  16. 前記所定の値が、約60ml/分/1.73mである、請求項14または15に記載の方法。
  17. 前記目標%が、約20%~約45%である、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記目標%が、約20%である、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記対象が、自己免疫疾患または移植片拒絶反応に関連する状態を有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記対象が、移植片拒絶反応に関連する状態を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 前記状態が、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚、腸、または角膜の移植片拒絶反応に関連する、請求項19または20に記載の方法。
  22. 前記状態が、腎移植拒絶反応に関連する、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
  23. 前記対象が、自己免疫疾患を有する、請求項19に記載の方法。
  24. 前記治療有効量のボクロスポリンが、治療有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)及び/または治療有効量のコルチコステロイドを投与することなく投与される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
  25. さらに、治療有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)及び/または治療有効量のコルチコステロイドを投与することを含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
  26. ボクロスポリンが、腸内投与、経口投与、舌下投与、または直腸投与、非経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注入、または吸入/吹送によって投与される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
  27. ボクロスポリンが、腸内投与、経口投与、舌下投与、または直腸投与によって投与される、請求項26に記載の方法。
  28. ボクロスポリンが、経口投与によって投与される、請求項25または27に記載の方法。
  29. ボクロスポリンが、非経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注入、または吸入/吹送によって投与される、請求項26に記載の方法。
  30. ボクロスポリンが、吸入または吹送によって投与される、請求項26または29に記載の方法。
  31. ボクロスポリンが、エアロゾルの形態で投与される、請求項30に記載の方法。
  32. ボクロスポリンが、医薬組成物で投与される、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
  33. 前記医薬組成物が、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む、請求項32に記載の方法。
  34. 前記医薬的に許容される賦形剤が、独立して、アルコール、D-α-トコフェロール(ビタミンE)、ポリエチレングリコールスクシネート(TPGS)、ポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート40(Tween40)、中鎖トリグリセリド、ゼラチン、ソルビトール、グリセリン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、二酸化チタン、及び水を含む1つ以上から選択される、請求項33に記載の方法。
  35. 前記ウイルス量が、前記対象において、ボクロスポリンの投与後に減少する、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
  36. 前記対象の生存が、ボクロスポリンの投与後に延長される、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
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