JP2023160769A - 神経突起伸長促進剤 - Google Patents

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琢和 安田
Takuwa Yasuda
開人 中林
Kaito Nakabayashi
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泰治 松川
Taiji Matsukawa
泰正 山田
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Abstract

【課題】神経細胞の神経突起伸長促進活性を有する、安全性に優れた神経突起伸長促進剤を提供すること。【解決手段】ジペプチドを含むコラーゲン分解物を有効成分とする、神経突起伸長促進剤、並びに、Pro-X1(X1はGly、Pro、Hyp、Ala、Ser、Lys、Gln、Val、Thr、Asp又はIleである)、Hyp-X2(X2はGly、Pro、Hyp、Ala、Ser、Arg、Lys、Gln、Val、Thr、Met又はAspである)、Y1-Pro(Y1はSer、Arg、Gln、Val、Thr、Met、Glu、Leu、Asn、Phe又はAspである)、Y2-Hyp(Y2はAla、Ser、Arg、Lys、Gln、Val、Thr、Met、Ile、Glu、Leu、Asn又はPheである)で表されるジペプチドのいずれか1種以上を有効成分とする、神経突起伸長促進剤。【選択図】なし

Description

本発明は、神経突起伸長促進剤に関するものである。また、本発明は、前記神経突起伸長促進剤を含む飲食品、医薬品及び飼料に関するものである。
現在の日本においては、脳機能異常に起因する疾病や生理現象が問題になりつつある。
例えば、日本においては急速な高齢化に伴い認知症患者数が増加して社会問題になっているが、その原因としてアルツハイマー病やパーキンソン病等の脳の神経変性疾患が知られている。しかしながら、これらの神経変性疾患に対しては、病気の進行を遅らせることができても、疾病そのものを根本的に治癒することはできず、また医薬品の副作用も問題になっているのが現状である。
また、健常人であっても、加齢に伴い物忘れが多発したり学習能が低下したりするが、これらの生理現象も脳における神経変性が一因であるといわれている。これらの生理現象に対し、予防可能な健康食品や医薬品として、やはり決定的な効果があるものは知られていない。
脳で脳神経系を構成する神経細胞は、その周囲に存在するグリア細胞等から分泌される神経栄養因子により、神経細胞の分化、維持、修復等が制御されている。神経栄養因子の代表的なものとして神経成長因子(NGF:nerve growth factor)が知られている。NGFは神経細胞の分化、維持及び修復作用を有し、脳神経系の機能回復を促進する重要なタンパク質である。しかしながら、NGFは高分子であるために血液脳関門を通過できず、経口摂取する医薬品や食品としての開発は容易でない。また、効果的な遺伝子治療も実用化には程遠いのが現状である。
ラット副腎褐色細胞腫由来のPC12細胞は、NGFを添加することによりその細胞の増殖を停止し、神経突起を伸長し、神経様細胞に分化することが知られており、神経突起伸長促進作用を有する化合物の探索に多用されるモデル細胞である。現在までにも、PC12細胞を対象とする神経細胞の分化を促進する有効成分が特定されている(特許文献1、2、3、4、5、6)。しかしながら、これらの有効成分は、吸収性や安定性に乏しい高分子なペプチドであったり、化学合成法による非天然物であったり、あるいは天然物であっても微生物による産物であり、人の食経験がないものであり、安全性の観点で問題を有している。食経験のある冬虫夏草由来の新規セスキテルペン(特許文献7)も知られているが、冬虫夏草から抽出精製するには希少成分ゆえに大量生産は困難であるし、前駆体からの合成でもコスト面の問題があり、また食品としては使用しにくい。また、神経網の形成促進作用を有する脂肪酸も提示されているが、低濃度での活性は低く、また脂肪酸の多量摂取がカロリー過多になり、さらに脂肪酸が有する他の生理活性により代謝が乱される危険性がある(特許文献8)。
一方、ジペプチドに関しては、アミロイドβの凝集を阻害する作用(特許文献9)、ノルアドレナリン及びセロトニンの脳内放出を促進する作用(特許文献10)、体内、特に筋肉内の脳由来神経栄養因子量の増加を促進する作用(特許文献11)、脳血流量を増加する作用(特許文献12)又は中枢神経内の炎症を阻害する作用(特許文献13)について報告されているが、いずれにおいても神経細胞の神経突起伸長に関しては示されてはいない。また、Cyclo(Gly-Pro)を用いた神経細胞の分化促進についての報告はなされているが、Cyclo(Gly-Pro)は、グリシンとプロリンが縮合結合した構造を保有する環状のジペプチドであり、ペプチド結合したものではない(特許文献14)。
特開2008-189615号公報 特開2006-42684号公報 特開2000-125894号公報 特開平11-49718号公報 特開平9-323928号公報 特許第3990477号公報 特開2003-252876号公報 特開2007-217311号公報 特開2021-24847号公報 国際公開第2019/151137号 特開2019-43956号公報 特開2017-8104号公報 国際公開第98/09985号公報 特許第6598412号公報
本発明の課題は、神経細胞の神経突起伸長促進活性を有する、安全性に優れた神経突起伸長促進剤を提供することにある。
本発明者らは、日常的に経口摂取されている食材の中から、神経細胞の神経突起伸長を促進する活性を有する成分を見出すべく、鋭意努力した結果、ジペプチドを含むコラーゲン分解物に優れた神経細胞の神経突起伸長を促進する活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨は、
〔1〕ジペプチドを含むコラーゲン分解物を有効成分とする、神経突起伸長促進剤、
〔2〕前記ジペプチドが下記の一般式(1)~(4):
Pro-X (1)
(式(1)中、XはGly、Pro、Hyp、Ala、Ser、Lys、Gln、Val、Thr、Asp又はIleのアミノ酸残基を示す。)
Hyp-X (2)
(式(2)中、XはGly、Pro、Hyp、Ala、Ser、Arg、Lys、Gln、Val、Thr、Met又はAspのアミノ酸残基を示す。)
-Pro (3)
(式(3)中、YはSer、Arg、Gln、Val、Thr、Met、Glu、Leu、Asn、Phe又はAspのアミノ酸残基を示す。)
-Hyp (4)
(式(4)中、YはAla、Ser、Arg、Lys、Gln、Val、Thr、Met、Ile、Glu、Leu、Asn又はPheのアミノ酸残基を示す。)
で表されるジペプチドのいずれか1種以上である、前記〔1〕に記載の神経突起伸長促進剤、
〔3〕前記コラーゲン分解物100質量部中、Pro-Hyp(PO)が0.05質量部以上かつPro-Gly(PG)が0.02質量部以上含有されている、前記〔1〕又は〔2〕に記載の神経突起伸長促進剤、
〔4〕下記の一般式(1)~(4):
Pro-X (1)
(式(1)中、XはGly、Pro、Hyp、Ala、Ser、Lys、Gln、Val、Thr、Asp又はIleのアミノ酸残基を示す。)
Hyp-X (2)
(式(2)中、XはGly、Pro、Hyp、Ala、Ser、Arg、Lys、Gln、Val、Thr、Met又はAspのアミノ酸残基を示す。)
-Pro (3)
(式(3)中、YはSer、Arg、Gln、Val、Thr、Met、Glu、Leu、Asn、Phe又はAspのアミノ酸残基を示す。)
-Hyp (4)
(式(4)中、YはAla、Ser、Arg、Lys、Gln、Val、Thr、Met、Ile、Glu、Leu、Asn又はPheのアミノ酸残基を示す。)
で表されるジペプチドのいずれか1種以上を有効成分とする、神経突起伸長促進剤、
〔5〕前記ジペプチドが、
Hyp-Ala(OA)、Leu-Hyp(LO)、Ile-Hyp(IO)、Pro-Hyp(PO)、Phe-Pro(FP)、Pro-Gly(PG)、Arg-Hyp(RO)、Hyp-Gly(OG)、Glu-Pro(EP)、Lys-Hyp(KO)、Met-Hyp(MO)、Hyp-Arg(OR)、Pro-Asp(PD)、Hyp-Gln(OQ)、Thr-Hyp(TO)、Phe-Hyp(FO)、Val-Pro(VP)、Hyp-Pro(OP)、Ser-Hyp(SO)、Pro-Ala(PA)及びAsp-Pro(DP)からなる群より選ばれる1種以上である、前記〔4〕に記載の神経突起伸長促進剤、
〔6〕前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の神経突起伸長促進剤を含有する飲食品、飼料、又は医薬品。
に関する。
本明細書において、アミノ酸は、三文字表記又は一文字表記で示す。
本発明の神経突起伸長促進剤は、コラーゲン由来であることで、安全性が高いため、例えば、日常で継続的に摂取することで、脳機能異常に起因する疾病や生理現象に対して有用な防御手段となり得る。
また、本発明の神経突起伸長促進剤は、加工適性に優れたものであるため、飲食品、医薬品、飼料等、様々な幅広い用途に利用することができる。
図1は、試験例1における、コラーゲン分解物のPC12細胞の神経突起伸長促進作用の結果を示すグラフである。 図2は、試験例2において、ジペプチドのPC12細胞の神経突起伸長促進作用の結果を示すグラフである。 図3は、試験例3において、ジペプチドとヘクサペプチド及びトリペプチドのPC12細胞の神経突起伸長促進作用の比較結果を示すグラフである。 図4は、試験例4において、ジペプチドとヘクサペプチド及びトリペプチドのPC12細胞の神経突起伸長促進作用の比較結果を示すグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の神経突起伸長促進剤は、ジペプチドを含むコラーゲン分解物を有効成分とする。
本発明において「神経突起伸長」とは、ヒト及び非ヒト動物を含む哺乳動物内の幼弱な未分化細胞(例えば神経幹細胞や神経芽細胞)から神経突起が生じ、伸長することで新しい神経(神経細胞)を新生する、分化を含む。また、神経突起伸長は、酸化ストレス等による神経の損傷により短縮されようとする神経突起に抗う維持を含み、短縮された神経突起を伸長させる神経の修復を含む。「神経」には中枢神経(例えば脳、脊髄等)及び末梢神経(例えば、尺骨神経、橈骨神経、腓骨神経等)を含む。
本発明において「ジペプチド」とは、構成成分として2種類のアミノ酸残基からなり、アミノ酸残基同士がペプチド結合により結合されている化合物をいう。
本発明において、「コラーゲン分解物」とは、ジペプチドを含むものであり、平均分子量が3000以下となるように加水分解処理されたものを意味する。
コラーゲン分解物の平均分子量は、上限を好ましくは5000以下、さらに好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、もっと好ましくは2500以下、下限を、好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、もっと好ましくは1500以上とするいずれの組み合わせによる範囲としてよい。例えば、コラーゲン分解物の平均分子量は、好ましくは300~5000であり、さらに好ましくは500~4000であり、より好ましくは1000~3000であり、もっと好ましくは1500~2500である。なお、コラーゲン分解物の平均分子量は、常法によって測定することができ、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
前記コラーゲン分解物は、コラーゲン又はゼラチンを酵素や酸等によって加水分解して製造することができる。
また、前記コラーゲン分解物としては、市販品を使用することも可能である。例えば、市販品として、ニッピペプタイドFCP-DP(株式会社ニッピ)、ニッピコラーゲン100(株式会社ニッピ)、ニッピペプタイドPRA-P(株式会社ニッピ)等を使用することができる。
コラーゲン又はゼラチンをコラゲナーゼ処理した分解物の原料となるコラーゲンは、特に限定されず、I型からXIII型のコラーゲンのいずれをも用いることが可能であり、これらの混合物である混合型のコラーゲンを用いることもできる。現実的には、コラーゲンは、各種の動物や魚類から得られる、混合型のコラーゲンを用いることが想定されるが、このコラーゲンの出所となる動物(例えば、牛、豚等)や魚類(例えば、ヒラメ、サケ、イワシ、マグロ等)の種類や、コラーゲンの抽出部位も、骨、皮、腱、ウキブクロ(魚類)等が可能である。
これらの成分からのコラーゲンの抽出・精製は、通常公知の方法を用いて行うことができる。具体的には、例えば、骨、皮、腱、ウキブクロ等のコラーゲンを含有する組織を粉砕した後、水洗、希塩溶液による抽出、酸あるいはアルカリ溶液による抽出、ペプシン,トリプシンやヒアルロニダーゼ等の酵素による抽出を行い、塩析や透析等の公知の精製手段を施して、コラーゲンを精製して得ることができる。また、通常公知の方法により、「再生コラーゲン」として得ることも可能である。また、市販のコラーゲンを、原料として用いることも可能である。
ゼラチンは、上述のコラーゲンを、水で加熱抽出して得られる水溶性タンパク質である。本発明においては、通常公知の方法により製造したゼラチンを原料として用いることも可能であり、市販品を用いることも可能である。
コラーゲン分解物を製造する場合、特に限定されないが、例えば、特開昭52-111600号公報や特開昭52-122400号公報で公開されている方法でも製造することができる。コラーゲン分解物の製造方法を例示すると以下のようになる。すなわち、コラーゲンを含む湿潤した生の原料(生の皮等)を用いる場合、まず、コラーゲンの変性温度以上に加熱(例えば、牛皮であれば60℃以上に加熱する)する。ここで、加水分解の時間を短縮したい場合には、あらかじめ原料を細断しておいても良い。乾燥した状態の原料であれば、数時間~数日の間、水に浸して水戻ししてから加熱変性させて使用することが好ましい。骨や魚鱗を原料として用いる場合、塩酸を加えてリン酸カルシウムを溶解、除去した後、水洗いしてから加熱変性させて使用する。固形の原料の場合は、撹拌できる程度に水を加えて分散液とすることで、酵素を効率よく作用させることができる。なお、固形の原料より、ゼラチンの水溶液を基質として使用する方法が最も容易である。
上記のような原料と水を含む分散液もしくはゼラチン水溶液を基質として、水溶液中のタンパク質含有量(乾燥重量)に対し、市販のタンパク質分解酵素(たとえばナガセサンバイオ社製ビオプラーゼSP、ノボ社製プロタメックス等)を0.3~3重量%加え、1~10時間作用させることで加水分解する。pHと温度は使用した酵素の至適条件(通常の酵素製剤では、パンフレットに記載されている)を採択して行うことができる。加水分解後、85℃以上に加熱し、30分保持することで酵素を失活させ反応を停止させる。反応停止後、ろ過を行って原料の残渣を分離する。その際、珪藻土等のろ過助剤を使用することで精製度を上げることができる。脱色や脱臭のために活性炭のような吸着剤を使用しても良い。得られたろ過液を殺菌し、乾燥することによってコラーゲン分解物乾燥粉末を得ることができる。乾燥方法としては、噴霧乾燥、加熱減圧乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。
噴霧乾燥とは、液体を気体中に噴霧して急速に乾燥させ、乾燥粉体を製造する方法をいう。加熱減圧乾燥とは、加熱装置内を減圧させて沸点を下げることで、乾燥の促進を図り、少ないエネルギーで蒸発・乾燥させる方法をいう。凍結乾燥とは、まず凍結を行い、次いで真空中で、凍結した乾燥物の沸点を下げて、乾燥物の水分を昇華させて乾燥させる方法をいう。これらの乾燥方法は、いずれも、公知の乾燥装置を用いて行えばよい。前記乾燥時における温度条件としては、各乾燥方法に準じて適当な温度範囲に設定すればよいが、例えば、噴霧乾燥では出口温度を50~100℃、加熱減圧乾燥では20~100℃、凍結乾燥では20~60℃に調整することが挙げられるが、特に限定はない。
前記のようにして得られるコラーゲン分解物中には、ジペプチドが含有される。
本発明において、前記コラーゲン分解物中に含まれるジペプチドの含有量としては、100重量%であってもよいし、他の成分を含有していてもよい。
中でも、コラーゲン分解物100質量部に対して、Pro-Hyp(PO)が0.05質量部以上、好ましくは0.08質量部以上含み、かつPro-Gly(PG)が0.02質量部以上、好ましくは0.03質量部以上含むコラーゲン分解物が好ましい。
コラーゲン分解物中におけるジペプチドの含有量は、ゲルろ過クロマトグラフィーやゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
また、前記ジペプチドとしては、下記の一般式(1)~(4)で表されるジペプチドが挙げられる。
Pro-X (1)
(式(1)中、XはGly、Pro、Hyp、Ala、Ser、Lys、Gln、Val、Thr、Asp又はIleのアミノ酸残基を示す。)

Hyp-X (2)
(式(2)中、XはGly、Pro、Hyp、Ala、Ser、Arg、Lys、Gln、Val、Thr、Met又はAspのアミノ酸残基を示す。)

-Pro (3)
(式(3)中、YはSer、Arg、Gln、Val、Thr、Met、Glu、Leu、Asn、Phe又はAspのアミノ酸残基を示す。)

-Hyp (4)
(式(4)中、YはAla、Ser、Arg、Lys、Gln、Val、Thr、Met、Ile、Glu、Leu、Asn又はPheのアミノ酸残基を示す。)
前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドは、いずれもコラーゲンを構成するアミノ酸配列中に含まれているジペプチドである。
一般式(1)に示されるジペプチドとしては、Pro-Gly(PG)、Pro-Pro(PP)、Pro-Hyp(PO)、Pro-Ala(PA)、Pro-Ser(PS)、Pro-Lys(PK)、Pro-Gln(PQ)、Pro-Val(PV)、Pro-Thr(PT)、Pro-Asp(PD)及びPro-Ile(PI)が挙げられる。
一般式(2)に示されるジペプチドとしては、Hyp-Gly(OG)、Hyp-Pro(OP)、Hyp-Hyp(OO)、Hyp-Ala(OA)、Hyp-Ser(OS)、Hyp-Arg(OR)、Hyp-Lys(OK)、Hyp-Gln(OQ)、Hyp-Val(OV)、Hyp-Thr(OT)、Hyp-Met(OM)及びHyp-Asp(OD)が挙げられる。
一般式(3)に示されるジペプチドとしては、Ser-Pro(SP)、Arg-Pro(RP)、Gln-Pro(QP)、Val-Pro(VP)、Thr-Pro(TP)、Met-Pro(MP)、Glu-Pro(EP)、Leu-Pro(LP)、Asn-Pro(NP)、Phe-Pro(FP)及びAsp-Pro(DP)が挙げられる。
一般式(4)に示されるジペプチドとしては、Ala-Hyp(AO)、Ser-Hyp(SO)、Arg-Hyp(RO)、Lys-Hyp(KO)、Gln-Hyp(QO)、Val-Hyp(VO)、Thr-Hyp(TO)、Met-Hyp(MO)、Ile-Hyp(IO)、Glu-Hyp(EO)、Leu-Hyp(LO)、Asn-Hyp(NO)及びPhe-Hyp(FO)が挙げられる。
前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドは、1種以上が含有されていればよい。
また、本発明の神経突起伸長促進剤は、前記コラーゲン分解物のかわりに、精製された前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドを有効成分として含有するものでもよい。
前記一般式(1)~(4)で表されるジペチドとしては、所望の神経突起伸長促進作用に優れる観点から、Hyp-Ala(OA)、Leu-Hyp(LO)、Ile-Hyp(IO)、Pro-Hyp(PO)、Phe-Pro(FP)、Pro-Gly(PG)、Arg-Hyp(RO)、Hyp-Gly(OG)、Glu-Pro(EP)、Lys-Hyp(KO)、Met-Hyp(MO)、Hyp-Arg(OR)、Pro-Asp(PD)、Hyp-Gln(OQ)、Thr-Hyp(TO)、Phe-Hyp(FO)、Val-Pro(VP)、Hyp-Pro(OP)、Ser-Hyp(SO)、Pro-Ala(PA)、Asp-Pro(DP)が好ましく、Hyp-Ala(OA)、Leu-Hyp(LO)、Ile-Hyp(IO)、Pro-Hyp(PO)がより好ましい。
前記ジペプチドは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記ジペプチドとしては、食品としての使用が問題ないナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩も含まれる。
前記ジペプチドは、水和物、各種溶媒和物として、又は結晶多形の物質として単離される場合もあり、本発明にはこれらの単離されたもの及び混合物の全てが包含される。
前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドは、前記コラーゲン分解物から公知の方法によって精製等をして製造することもできるし、該ジペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、公知のペプチド合成法に準じて製造することもできる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによってもよい。
また、前記ジペプチドは、市販品を使用してもよく、この場合、精製されたものであってもよいし、他のペプチド成分が含まれたものでもよい。
また、本発明で用いられるジペプチドを遺伝工学的な手法で製造する方法として、例えば、ジペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、好ましくはDNAを作製して行うことができる。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した原料由来のcDNA、前記した原料由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
前記のポリヌクレオチドは、例えば、DNAリガーゼ、制限酵素等の公知の方法を用いてベクターに組み込み、次いでそのベクターを宿主細胞中で増幅させることも可能である。ベクター、宿主細胞等については公知のものであれば特に限定はない。培養した宿主細胞から本発明のペプチドを分離精製することで、本発明に用いられるペプチドを大量に得ることができる。分離精製方法としては、公知の方法であれば特に限定はない。
本発明の神経突起伸長促進剤に有効成分として含有される前記コラーゲン分解物及び前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドは、いずれも天然物であるコラーゲンを構成する成分であり、原料であるコラーゲンが食品として利用されていることからも、安全性に優れるという利点がある。
本発明の神経突起伸長促進剤は、例えば、ヒト及び非ヒト動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー等)に対して投与することができる。
本発明の神経突起伸長促進剤は、前記のヒトや非ヒト動物の脳の神経細胞において神経突起の伸長を促進することから、継続的に摂取することで、前記の動物において脳内における神経疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、認知症、うつ病)や脳機能異常の生理現象の発生を予防することに用いることができる。
また、本発明の神経突起伸長促進剤は、前記脳機能異常に起因する疾患や生理現象が発生している場合でも、継続的に摂取することで、疾患や生理現象の進行を遅らせたり、症状を緩和したりすることも期待できる。
神経疾患治療剤としては従来から種々の合成系の試薬が市販されているが、これらの市販された試薬は、種々の副作用を伴うことが報告されている。また、神経疾患治療剤は副作用を起こさないよう、投薬という行為にも熟練を要するという問題もある。これに対して、本発明の神経突起伸長促進剤は、有効成分であるコラーゲン分解物やジペプチドは、低分子の化合物であることから内因性ホルモン様の強力な生理活性を示すものではないと考えられる。したがって、本発明の神経突起伸長促進剤は、マイルドに作用すると考えられる点で安全性に優れている。
本発明の神経突起伸長促進剤を食品として用いる場合、脳機能異常に起因する疾病や生理現象に対する予防や症状緩和をコンセプトとした食品、すなわち、機能性表示食品、病者用食品、特定保健用食品も包含される。これら食品は機能表示が許可された食品であり、一般の食品と区別することができる。
また、食品には、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、機能性表示食品、特定保健用食品、病者用食品、乳幼児用調整粉乳、妊産婦もしくは授乳婦用粉乳、又は血中アミノ酸濃度上昇促進のために用いられる物である旨の表示を付した食品のような分類のものも包含される。また、本発明において、食品とは飲料を含む概念である。
本発明の神経突起伸長促進剤を脳機能異常に起因する疾病や生理現象の治療剤として用いる場合、前記コラーゲン分解物又は前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドを、単独又は賦形剤あるいは担体と混合して、経口投与剤、注射剤、点滴剤あるいは坐剤等とすることができる。前記賦形剤や担体としては薬剤学的に許容されれば問題なく、投与経路や投与方法によりその種類及び組成は異なる。
経口投与剤としては、目的に応じていろいろな基材を選択でき、例えば、錠剤、カプセル、飴、グミ、飲料等が挙げられる。中でも、前記コラーゲン分解物又は前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドを少量で継続的に摂取する場合は、おいしさや手軽さを付与することが出来、継続して摂取するにはより効果的であるため、味覚を感じる基材である飴、グミあるいは飲料といった基材が望ましい。しかし、有効成分をある程度の量を含有させると、そのおいしさを損なうことや、場合によってはその基材そのものの物性を変化させてしまうこともある。したがって、数g といったある一定量の有効成分を継続的に摂取する場合は、いわゆるサプリメントといわれるような形が望ましく、水やお湯で服用するような固体組成物であることが好ましい。
前記固体組成物には、錠剤、丸剤、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤等が挙げられる。このような固体組成物においては、前記コラーゲン分解物又は前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドが、少なくとも一つの不活性な希釈剤、例えば、ショ糖、乳糖、ぶどう糖等の各種糖類、マンニトール、ソルビトール等の各種糖アルコール、さらにはヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、各種でんぷん等と混合される。固体組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、繊維素グリコール酸カルシウムのような崩壊剤、ラクトースのような安定化剤、グルタミン酸又はアスパラギン酸のような溶解剤乃至溶解補助剤を含有してもよい。場合によっては、香料、甘味料等といった添加物も使用できる。また、錠剤、丸剤、顆粒剤、顆粒を含有するカプセル剤の顆粒は、必要により、ショ糖等の糖類、マルチトール等の糖アルコールで糖衣を施したり、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等でコーティングを施したりすることもできる。また、固体組成物を胃溶性もしくは腸溶性物質のフィルムで被覆してもよい。また、製剤の溶解性を向上させるために、公知の可溶化処理を施すこともできる。
注射剤又は点滴剤としては、生理食塩水、各種緩衝液、グルコース、イノシトール、マンニトール等の糖類溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類に前記コラーゲン分解物又は前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドを配合することが望ましい。
また、坐剤としては、前記コラーゲン分解物又は前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドを、油脂性基剤、水溶性基剤等の基剤、必要であれば乳化剤、懸濁化剤等と混和して均等にした後、適当な形状にし、溶解法、冷圧法、手工法によって調製したものが挙げられる。
前記治療剤としての製剤中における前記コラーゲン分解物又は前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドの含有量は、製剤の種類により異なるが、通常0.1~100重量% 、好ましくは1~98重量%である。例えば、注射剤として用いる場合には、通常0.1~30重量%、好ましくは1~10重量%の有効成分を含むことが望ましい。
治療剤の場合、前記コラーゲン分解物又は前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドの投与量は、ヒトであれば通常成人一日当たり、経口投与で10mg~30g、好ましくは100mg~10gが好適であり、これを1日1回あるいは2~数回に分けて投与される。また、注射液等の非経口投与であれば、ヒトであれば通常成人1日当たり、前記前記コラーゲン分解物又は前記一般式(1)~(4)で表されるジペプチドの投与量は、2mg~6g、好ましくは20m~2gが好適であり、これを1日1回あるいは2~数回に分けて投与される。なお、投与量は、上記投与量範囲より少ない量で十分な場合もある。被検体がヒト以外の非ヒト動物であれば上記のヒトに準じて投与量を調整すればよい。
また、本発明の神経突起伸長促進剤は、安全性に優れるために、他の脳機能改善効果を有するといわれている化合物や素材と組み合わせて使用することも可能である。このような化合物や素材の例として、脳の栄養源であるブドウ糖、神経系に作用するカフェイン等のプリン誘導体、脳の構成成分であるフォスファチジルセリン、フォスファチジルコリン、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸等の脂質、血流改善作用を有するイチョウ葉エキス等の組成物、補酵素であるピロロキノリンキノン(PQQ) 、酸化型コエンザイムQ10 、還元型コエンザイムQ10等が挙げられる。組み合わせ方は何ら制限されるものではなく、期待する効果の程度、味等の呈味面、コスト、加工適性や安定性等から適したもの1種以上を組み合わせて用いることができる。この場合、本発明の神経突起伸長促進効果と、併用する化合物や素材が奏する効果との相加効果に留まらず、想定される以上の治癒速度や治療効果までもが得られることが考えられる。これは、作用メカニズムが異なる複数の素材の組み合わせ効果によるものである。
また、本発明の神経突起伸長促進剤は、ヒト及び非ヒト動物における神経疾患の予防を目的に使用することができる。
本発明の神経突起伸長促進剤は、神経疾患の予防を期待して使用する場合は、前記のような経口投与剤、注射剤、点滴剤、坐剤等の形態で、その有効量をヒト又は非ヒト動物に対して投与することができる。
また、本発明の神経突起伸長促進剤は、極めて優れた安全性、吸収性、低アレルゲン性、物性面の安定性や優れた加工適性を兼ね備えていることから、調製粉乳、離乳食等の乳幼児用食品に用いることもでき、さらに、高齢者向けの咀嚼や嚥下困難者向けのゼリー状の栄養食品の原料の一部として用いることもできる。
神経疾患の予防のための前記コラーゲン分解物又は一般式(1)~(4)で表されるジペプチドの投与量としては、被検体の年齢、体重、症状、治療効果、投与ルート等により異なり、これらを考慮して適宜設定されるが、例えば、ヒトであれば通常成人一日当たり、0.1mg~30g、好ましくは1mg~10gが好適であり、これを1日回あるいは2~数回に分けて投与される。投与量は予防目的やその他の種々の条件によって変動するので、上記投与量範囲より少ない量で十分な場合もある。被検体が非ヒト動物であれば上記のヒトに準じて投与量を調整すればよい。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これにより本発明を限定するものではない。
〔試験例1:コラーゲン分解物の神経突起伸長促進効果の測定〕
PC12細胞を用い、コラーゲン分解物による神経細胞突起の伸長促進作用を検討した。PC12細胞は副腎髄質由来の褐色細胞腫であり、神経成長因子(NGF)の存在下で神経突起の形成と伸長がおこり、カテコールアミン性の神経様細胞に分化することが知られており(Gree n and Tschler, 1976)、神経細胞のモデル細胞として神経分化の分子メカニズムを究明する上で世界的に広く用いられている。
被験試料として用いたコラーゲン分解物は、PCT-A、TFF-01、DFF-01(以上、ニッピ社)、TYPE-S、SCP2000、SCP3100(以上、新田ゼラチン社)及びROUSSELOT PEPTAN P 2000 HD(ユニテックフーズ社)である。いずれの被験試料もジペプチドを含むコラーゲン分解物として使用した。
なお、前記コラーゲン分解物のうちDFF-01中におけるジペプチドPro-Hyp(PO)及びPro-Gly(PG)の含有量を以下の測定条件により測定した。
<Pro-Hyp(PO)のLC-MS/MS分析条件>
HPLC装置及び質量分析装置は、それぞれAcquity Arc HPLCシステム(Waters)及び3200 Q Trap(株式会社エービー・サイエックス)を使用した。カラムはInertSustain PFP HP 3um 4.6x150mm(GLサイエンス製)を使用した。溶離液は、A液:0.1%ギ酸含有水、B液:アセトニトリルを用い、グラジエント条件を0分~20分(0v/v%B~50v/v%B)→20.1分~25分(80v/v%B)、流速は0.4mL/分とした。検出方法にはMRM法、イオン化法はESI(ポジティブモード)で行い、プレカーサーイオン:229.245(m/z)、プロダクトイオン:70.100(m/z)で検出した。
<Pro-Gly(PG)測定のLC-MS/MS分析条件>
HPLC装置及び質量分析装置は、それぞれAcquity Arc HPLCシステム(Waters)及び3200 Q Trap(株式会社エービー・サイエックス)を使用した。カラムはInertSustain C18 HP(2.1×150mm,3μm)(GLサイエンス製)を使用した。溶離液は、A液:0.05w/v%ヘプタフルオロ酪酸含有水、B液:アセトニトリルを用い、グラジエント条件を0分~5分(5v/v%B)→5分~20分(5v/v%B~50v/v%B)→20.1分~25分(80v/v%B)、流速は0.2mL/分とした。検出方法にはMRM法、イオン化法はESI(ポジティブモード)で行い、プレカーサーイオン:173.157(m/z)、プロダクトイオン:70.100(m/z)で検出した。
<試薬類>
ジペプチドPro-Hyp(PO)及びPro-Gly(PG)の標準品はGenscript Japanにて合成し、超純水に溶解して検量線を作製した。
<サンプル>
市販コラーゲンペプチド DFF-01を0.5%濃度となるように超純水に溶解し、LC-MS/MSでの分析に供した。
上記方法で分析した結果、コラーゲン分解物DFF-01は、Pro-Hyp(PO)の含有量が0.1重量%、Pro-Gly(PG)の含有量が0.0433重量%であることから、ジペプチドを含むコラーゲン分解物であることがわかった。
PC12細胞(DSファーマバイオメディカル社)を5%馬血清(BiologicalIndustries社)、5%仔牛血清(Gibco社)、及び50 unit/mLペニシリン、50 μg/mLストレプトマイシン(富士フイルム和光純薬社)を含むD-MEM培地(富士フイルム和光純薬社)を用いて培養した。PC12細胞は、インキュベータで37℃,5%CO濃度環境下で増殖状態を維持し、週に1-2度の培地交換及び週に1度の継代培養を行った。
増殖状態にあるPC12細胞をトリプシン処理により回収し、3.0×10細胞となるようにコラーゲンタイプIでコートされた35mmディッシュ(CORNING社)に播種し、37℃、5%CO濃度環境下で継代培養時と同じ組成の培地で前培養した。24時間後にディッシュ内の培養液を除き、培養液中の血清やディッシュに付着しなかった細胞を除去する目的でD-MEM培地を用いて1回洗浄したのち、各種の分化誘導培地を添加し神経突起の伸長を開始させた。分化誘導培地には、5%馬血清、50unit/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシンを含むD-MEM培地を用い、分化誘導剤としてNGF(Alomone Labs社)を終濃度が10ng/mLになるように添加した。この時、被験物質としてPCT-A、TFF-01、DFF-01、TYPE-S、SCP2000、SCP3100及びPEPTAN P 2000 HDのいずれかのコラーゲン分解物を0.45mg/mLとなるように添加し、各コラーゲン分解物の神経突起伸長促進に対する効果を比較した。
神経突起伸長促進に対する効果は、分化誘導培地を添加してから48時間後にLeica DMi8顕微鏡(Leica社)を用いて観察し、Leica Application Suite X(Leica社)を用いて撮影、解析を行った。観察及び撮影は、10倍の接眼レンズ、20倍の対物レンズを用いた200倍の位相差観察で行った。撮影及び解析は、ディッシュ内の異なる20か所の領域の座標を無作為に選び記憶させ、各ディッシュとも同じ座標の領域について撮影を行い、この撮影で撮影された領域に含まれた400個の細胞について解析を行った。
PC12細胞の神経細胞への分化により生じる神経突起は通常、1細胞あたり1本から数本観察される。本実験では、(基準:細胞体の長径の以上になるまで神経突起の伸長が促進された)細胞を計測し、これを神経突起伸長が促進された細胞とした。この細胞数を全細胞数で除して得られる割合を算出し、分化誘導培地中にNGFのみを添加することで見られる神経突起が伸長促進された細胞の割合と比較することで、各サンプルの神経突起伸長における促進活性を検討した。
検討の結果を図1に示す。図1は、被験試料により神経突起伸長が促進された細胞の割合をNGFのみの添加(Control)に対する比で表した。
SCP3100、TYPE-S、DFF-01、SCP2000、TFF-01、PEPTAN P 2000 HD及びPCT-Aは、コラーゲン由来の安全性に優れた成分であり、また、NGFのみ(Control)に対して神経突起伸長が促進された細胞の割合を増加させたことから、神経突起伸長促進活性があることがわかった。
〔試験例2:ジペプチドの神経突起伸長促進効果の測定〕
被験試料をジペプチドに変えた以外は、試験例1と同様に神経突起伸長促進活性を測定した。使用したジペプチドは、以下の通り。
前記一般式(1)に示されるジペプチドとして、Pro-Gly(PG)、Pro-Pro(PP)、Pro-Hyp(PO)、Pro-Ala(PA)、Pro-Ser(PS)、Pro-Lys(PK)、Pro-Gln(PQ)、Pro-Val(PV)、Pro-Thr(PT)、Pro-Asp(PD)及びPro-Ile(PI)を用いた。
一般式(2)に示されるジペプチドとして、Hyp-Gly(OG)、Hyp-Pro(OP)、Hyp-Hyp(OO)、Hyp-Ala(OA)、Hyp-Ser(OS)、Hyp-Arg(OR)、Hyp-Lys(OK)、Hyp-Gln(OQ)、Hyp-Val(OV)、Hyp-Thr(OT)、Hyp-Met(OM)及びHyp-Asp(OD)を用いた。
前記一般式(3)に示されるジペプチドとして、Ser-Pro(SP)、Arg-Pro(RP)、Gln-Pro(QP)、Val-Pro(VP)、Thr-Pro(TP)、Met-Pro(MP)、Glu-Pro(EP)、Leu-Pro(LP)、Asn-Pro(NP)及びPhe-Pro(FP)を用いた。
一般式(4)に示されるジペプチドとして、Ala-Hyp(AO)、Ser-Hyp(SO)、Arg-Hyp(RO)、Lys-Hyp(KO)、Gln-Hyp(QO)、Val-Hyp(VO)、Thr-Hyp(TO)、Met-Hyp(MO)、Ile-Hyp(IO)、Glu-Hyp(EO)、Leu-Hyp(LO)、Asn-Hyp(NO)及びPhe-Hyp(FO)を用いた。
いずれのジペプチドもジェンスクリプト社から購入したものであり、HPLCにより純度が95%以上になるように精製されたものである。
得られた結果を図2に示す。図2は、被験試料により神経突起伸長が促進された細胞の割合をNGFのみの添加(Control)に対する比で表した。
図2の結果より、いずれのジペプチドもコントロール以上の神経突起伸長促進効果があることがわかる。
中でも、Hyp-Ala(OA)、Leu-Hyp(LO)、Ile-Hyp(IO)、Pro-Hyp(PO)、Phe-Pro(FP)、Pro-Gly(PG)、Arg-Hyp(RO)、Hyp-Gly(OG)、Glu-Pro(EP)、Lys-Hyp(KO)、Met-Hyp(MO)、Hyp-Arg(OR)、Pro-Asp(PD)、Hyp-Gln(OQ)、Thr-Hyp(TO)、Phe-Hyp(FO)、Val-Pro(VP)、Hyp-Pro(OP)、Ser-Hyp(SO)、及びPro-Ala(PA)は優れた神経突起伸長促進効果を有し、特にHyp-Ala(OA)、Leu-Hyp(LO)、Ile-Hyp(IO)、Pro-Hyp(PO)は、コントロールに比べて顕著な神経突起伸長促進効果を有することがわかる。また、前記ジペプチドは、いずれもコラーゲンの構成成分であり、安全性にも優れた成分である。
〔試験例3:ジペプチドとジペプチドより長いアミノ酸配列を有するペプチドとの神経突起伸長促進効果の対比〕
被験試料をトリペプチド(Gly-Pro-Ala:図中GPA)及びヘクサペプチド(Gly-Pro-Ala-Gly-Pro-Ala:図中GPAGPA)とした以外は、試験例2と同様に神経突起伸長促進活性を測定した。各ペプチドはジェンスクリプト社から購入したものであり、HPLCにより純度が95%以上になるように精製されたものである。得られた結果を図3に示す。参考として、ジペプチド(Pro-Ala:図中、PA)の結果も図3に示す。
図3は、被験試料により神経突起伸長が促進された細胞の割合をNGFのみの添加(Control)に対する比で表した。ジペプチド(PA)の添加は、NGFのみの添加(Control)に対して神経突起伸長が促進された細胞の割合を63%増加させ、且つ、トリペプチド(GPA)に対して32%、ヘクサペプチド(GPAGPA)に対して56%、神経突起伸長が促進された細胞の割合を増加させたことから、ジペプチドの添加は、トリペプチド、ヘクサペプチドの添加に比べ、PC12細胞の神経突起伸長を促進する効果が高かった。
〔試験例4:ジペプチドの神経突起伸長促進効果の測定〕
被験試料をジペプチドであるAsp-Pro(DP)に変えた以外は、試験例1と同様に神経突起伸長促進活性を測定した。
なお、DPは、ジェンスクリプト社から購入したものであり、HPLCにより純度が95%以上になるように精製されたものである。
得られた結果を図4示す。図4は、被験試料により神経突起伸長が促進された細胞の割合をNGFのみの添加(Control)に対する比で表した。
図4の結果より、Asp-Pro(DP)は、コントロールに比べて顕著な神経突起伸長促進効果があることがわかる。前記Asp-Pro(DP)は、コラーゲンの構成成分であり、安全性にも優れた成分である。

Claims (6)

  1. ジペプチドを含むコラーゲン分解物を有効成分とする、神経突起伸長促進剤。
  2. 前記ジペプチドが下記の一般式(1)~(4):
    Pro-X (1)
    (式(1)中、XはGly、Pro、Hyp、Ala、Ser、Lys、Gln、Val、Thr、Asp又はIleのアミノ酸残基を示す。)
    Hyp-X (2)
    (式(2)中、XはGly、Pro、Hyp、Ala、Ser、Arg、Lys、Gln、Val、Thr、Met又はAspのアミノ酸残基を示す。)
    -Pro (3)
    (式(3)中、YはSer、Arg、Gln、Val、Thr、Met、Glu、Leu、Asn、Phe又はAspのアミノ酸残基を示す。)
    -Hyp (4)
    (式(4)中、YはAla、Ser、Arg、Lys、Gln、Val、Thr、Met、Ile、Glu、Leu、Asn又はPheのアミノ酸残基を示す。)
    で表されるジペプチドのいずれか1種以上である、請求項1に記載の神経突起伸長促進剤。
  3. 前記コラーゲン分解物100質量部中、Pro-Hyp(PO)が0.05質量部以上かつPro-Gly(PG)が0.02質量部以上含有されている、請求項1又は2に記載の神経突起伸長促進剤。
  4. 下記の一般式(1)~(4):
    Pro-X (1)
    (式(1)中、XはGly、Pro、Hyp、Ala、Ser、Lys、Gln、Val、Thr、Asp又はIleのアミノ酸残基を示す。)
    Hyp-X (2)
    (式(2)中、XはGly、Pro、Hyp、Ala、Ser、Arg、Lys、Gln、Val、Thr、Met又はAspのアミノ酸残基を示す。)
    -Pro (3)
    (式(3)中、YはSer、Arg、Gln、Val、Thr、Met、Glu、Leu、Asn、Phe又はAspのアミノ酸残基を示す。)
    -Hyp (4)
    (式(4)中、YはAla、Ser、Arg、Lys、Gln、Val、Thr、Met、Ile、Glu、Leu、Asn又はPheのアミノ酸残基を示す。)
    で表されるジペプチドのいずれか1種以上を有効成分とする、神経突起伸長促進剤。
  5. 前記ジペプチドが、Hyp-Ala、Leu-Hyp、Ile-Hyp、Pro-Hyp、Phe-Pro、Pro-Gly、Arg-Hyp、Hyp-Gly、Glu-Pro、Lys-Hyp、Met-Hyp、Hyp-Arg、Pro-Asp、Hyp-Gln、Thr-Hyp、Phe-Hyp、Val-Pro、Hyp-Pro、Ser-Hyp、Pro-Ala及びAsp-Proからなる群より選ばれる1種以上である、請求項4に記載の神経突起伸長促進剤。
  6. 請求項1又は4に記載の神経突起伸長促進剤を含有する飲食品、飼料又は医薬品。
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