JP2023074301A - 電力変換装置及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】広帯域でインピーダンスバランス(平衡)の効果が得られ、コモンモード電流によるノイズを効果的に抑制することができるようにした電力変換装置を提供する。【解決手段】正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15間に抵抗33Rを接続し、負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間に抵抗34Rを接続する。正極側経路16のインダクタンスのインピーダンスをZv、負極側経路17のインダクタンスのインピーダンスをZg、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15間の容量と抵抗33Rを含むインピーダンスをZt、負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間の容量と抵抗34Rを含むインピーダンスをZbとしたとき、Zv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件に基づき、Zt、及び、Zbを設定する。【選択図】図1
Description
本発明は、スイッチング素子を用いて変換された出力を負荷に印加する電力変換装置及びその製造方法に関するものである。
スイッチング素子のスイッチングにより、直流電源から三相交流出力を生成してモータ(負荷)に印加するインバータや、昇圧された直流出力を生成して負荷に印加する昇圧コンバータ等の電力変換装置では、スイッチング動作による急峻な電圧変動により、モータ(負荷)と筐体(基準電位導体)間の寄生容量(寄生結合)を介して筐体に流出するコモンモード電流(ノイズ)が多くなる。そのため、従来より制御基板の電源入力部にコモンモードコイルやYコンデンサ(コモンモードコンデンサ)から成る大型のEMIフィルタを搭載し、寄生容量を介して筐体に流出するコモンモード電流(ノイズ)をスイッチング素子(ノイズ源)に還流させ、ノイズの低減を図る対策が採られていた(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、係るノイズ対策ではノイズ対策部品の大型化と制御基板を含む製品自体の大型化が否めなくなるため、ブリッジ回路を用い、ノイズ源であるスイッチング素子に対して周辺のインピーダンスのバランス(平衡)を取り、ノイズ流出源とノイズ測定点の電位差を低減することで、結果としてコモンモード電流(ノイズ)を低減する対策も開発されている(例えば、特許文献2~4参照)。
しかしながら、従来の対策ではインピーダンスのバランスをとるために付加された容量(コンデンサ)や寄生容量の周波数特性により、共振点近辺ではバランスを取ることが困難となり、結果としてバランスを取ることができる周波数の帯域(インピーダンスバランスの効果が得られる帯域)が狭くなってしまうという問題があった。
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、広帯域でインピーダンスバランス(平衡)の効果が得られ、コモンモード電流によるノイズを効果的に抑制することができるようにした電力変換装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
請求項1の発明の電力変換装置は、スイッチング素子のスイッチングにより変換された出力を負荷に印加するものであって、直流電源の正極側からスイッチング素子に至る正極側経路と、直流電源の負極側からスイッチング素子に至る負極側経路と、正極側の寄生容量発生ポイントPと基準電位導体間に接続された正極側付加抵抗と、負極側の寄生容量発生ポイントNと基準電位導体間に接続された負極側付加抵抗を備え、正極側経路のインダクタンスのインピーダンスをZv、負極側経路のインダクタンスのインピーダンスをZg、正極側の寄生容量発生ポイントPと基準電位導体間の容量と正極側付加抵抗を含むインピーダンスをZt、負極側の寄生容量発生ポイントNと基準電位導体間の容量と負極側付加抵抗を含むインピーダンスをZbとしたとき、インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件に基づき、インピーダンスZt、及び、Zbが設定されていることを特徴とする。
請求項2の発明の電力変換装置は、上記発明において平衡条件とは、Zb×Zv=Zg×Ztの関係が成立し、若しくは、Zb×Zv=Zg×Ztの関係が略成立することを特徴とする。
請求項3の発明の電力変換装置は、上記各発明において正極側付加抵抗に直列に接続された正極側付加容量と、負極側付加抵抗に直列に接続された負極側付加容量、のうちの何れか一方、又は、双方を備えたことを特徴とする。
請求項4の発明の電力変換装置は、上記各発明において正極側付加抵抗に直列に接続された正極側付加インダクタと、負極側付加抵抗に直列に接続された負極側付加インダクタ、のうちの何れか一方、又は、双方を備えたことを特徴とする。
請求項5の発明の電力変換装置は、上記発明において正極側付加インダクタ、及び/又は、負極側付加インダクタに、並列に抵抗を接続したことを特徴とする。
請求項6の発明の電力変換装置は、請求項4又は請求項5の発明において正極側付加抵抗と正極側付加インダクタの直列回路、及び/又は、負極側付加抵抗と負極側付加インダクタの直列回路に、並列に抵抗を接続したことを特徴とする。
請求項7の発明の電力変換装置は、上記各発明において直流電源とスイッチング素子の間に接続されたEMIフィルタを備え、このEMIフィルタは、正極側経路と負極側経路の双方にそれぞれ接続されたノーマルモードコイルを備えたことを特徴とする。
請求項8の発明の電力変換装置は、上記各発明において上アームのスイッチング素子と、下アームのスイッチング素子を有し、正極側経路は直流電源の正極側と上アームのスイッチング素子の高電位側端子とを接続し、負極側経路は直流電源の負極側と下アームのスイッチング素子の低電位側端子とを接続しており、上アームのスイッチング素子の低電位側端子と下アームのスイッチング素子の高電位側端子とを接続する中間経路と負荷との間に接続された中間付加インピーダンスを備えたことを特徴とする。
請求項9の発明の電力変換装置は、上記発明において各相の上アームのスイッチング素子と、下アームのスイッチング素子を有して三相交流出力を負荷としてのモータに印加することを特徴とする。
請求項10の発明の電力変換装置は、請求項8又は請求項9の発明において中間付加インピーダンスは、ノーマルモードコイル、三相コモンモードコイル、フェライトコアのうちの何れか、又は、それらのうちの二つの組み合わせ、若しくは、それらの全てにより構成されていることを特徴とする。
請求項11の発明の電力変換装置の製造方法は、スイッチング素子のスイッチングにより変換された出力を負荷に印加する電力変換装置を製造するにあたり、直流電源の正極側の寄生容量発生ポイントPと基準電位導体間に正極側付加抵抗を接続すると共に、直流電源の負極側の寄生容量発生ポイントNと基準電位導体間に負極側付加抵抗を接続し、直流電源の正極側からスイッチング素子に至る正極側経路のインダクタンスのインピーダンスをZv、直流電源の負極側からスイッチング素子に至る負極側経路のインダクタンスのインピーダンスをZg、正極側の寄生容量発生ポイントPと基準電位導体間の容量と正極側付加抵抗を含むインピーダンスをZt、負極側の寄生容量発生ポイントNと基準電位導体間の容量と負極側付加抵抗を含むインピーダンスをZbとしたとき、インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件が成立、若しくは、略成立するように、インピーダンスZt、及び、Zbを設定することを特徴とする。
請求項12の発明の電力変換装置の製造方法は、上記発明において平衡条件であるZb×Zv=Zg×Ztの関係を成立させ、若しくは、Zb×Zv=Zg×Ztの関係を略成立させることを特徴とする。
請求項13の発明の電力変換装置の製造方法は、請求項11又は請求項12の発明において正極側付加抵抗に直列に正極側付加容量を接続し、及び/又は、負極側付加抵抗に直列に負極側付加容量を接続すると共に、インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件が成立、若しくは、略成立するように、正極側付加抵抗、及び、負極側付加抵抗の抵抗値と、正極側付加容量、及び/又は、負極側付加容量の容量を選択することを特徴とする。
請求項14の発明の電力変換装置の製造方法は、請求項11乃至請求項13の発明において正極側付加抵抗に直列に正極側付加インダクタを接続し、及び/又は、負極側付加抵抗に直列に負極側付加インダクタを接続すると共に、インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件が成立、若しくは、略成立するように、正極側付加抵抗、及び、負極側付加抵抗の抵抗値と、正極側付加インダクタ、及び/又は、負極側付加インダクタのインダクタンスを選択することを特徴とする。
請求項15の発明の電力変換装置の製造方法は、上記発明において正極側付加インダクタ、及び/又は、負極側付加インダクタに並列に抵抗を接続することを特徴とする。
請求項16の発明の電力変換装置の製造方法は、請求項14又は請求項15の発明において正極側付加抵抗と正極側付加インダクタの直列回路、及び/又は、負極側付加抵抗と負極側付加インダクタの直列回路に、並列に抵抗を接続することを特徴とする。
請求項1及び請求項11の発明では、スイッチング素子のスイッチングにより変換された出力を負荷に印加する電力変換装置において、直流電源の正極側の寄生容量発生ポイントPと基準電位導体間に正極側付加抵抗を接続すると共に、直流電源の負極側の寄生容量発生ポイントNと基準電位導体間に負極側付加抵抗を接続し、直流電源の正極側からスイッチング素子に至る正極側経路のインダクタンスのインピーダンスをZv、直流電源の負極側からスイッチング素子に至る負極側経路のインダクタンスのインピーダンスをZg、正極側の寄生容量発生ポイントPと基準電位導体間の容量と正極側付加抵抗を含むインピーダンスをZt、負極側の寄生容量発生ポイントNと基準電位導体間の容量と負極側付加抵抗を含むインピーダンスをZbとしたとき、インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件が成立、若しくは、略成立するように、インピーダンスZt、及び、Zbを設定するようにしたので、正極側の寄生容量発生ポイントPと基準電位導体間の容量、及び、負極側の寄生容量発生ポイントNと基準電位導体間の容量における共振点近辺で、インピーダンスZtとインピーダンスZbが急激に低下してしまう不都合を、正極側付加抵抗と負極側付加抵抗により補い、インピーダンスZtとインピーダンスZbの比率を維持することができるようになる。
これにより、インピーダンスバランスの効果が得られる帯域を広げることができるようになり、コモンモード電流によるノイズを広帯域で効果的に抑制することができるようになる。
上記における平衡条件は、請求項2及び請求項12の発明の如く、Zb×Zv=Zg×Ztの関係が成立し、若しくは、Zb×Zv=Zg×Ztの関係が略成立することである。
また、請求項3及び請求項13の発明の如く正極側付加抵抗に直列に正極側付加容量を接続し、及び/又は、負極側付加抵抗に直列に負極側付加容量を接続して、インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件が成立、若しくは、略成立するように、正極側付加抵抗、及び、負極側付加抵抗の抵抗値と、正極側付加容量、及び/又は、負極側付加容量の容量を設定するようにすれば、正極側付加容量や負極側付加容量の容量を寄生容量より十分大きくすることにより、寄生容量の影響を受けること無く、インピーダンスバランスをとることができるようになる。即ち、正極側付加容量や負極側付加容量の容量を、寄生容量を考慮して選定することにより、寄生容量を調整すること無く、一層容易にインピーダンスバランスをとることができるようになる。
また、請求項4及び請求項14の発明の如く正極側付加抵抗に直列に正極側付加インダクタを接続し、及び/又は、負極側付加抵抗に直列に負極側付加インダクタを接続すると共に、インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件が成立、若しくは、略成立するように、正極側付加抵抗、及び、負極側付加抵抗の抵抗値と、正極側付加インダクタ、及び/又は、負極側付加インダクタのインダクタンスを設定するようにすれば、周波数が高い帯域において、インピーダンスZtとインピーダンスZbの比率を、正極側付加インダクタと負極側付加インダクタのインダクタンスの比率により維持することができるようになる。これにより、インピーダンスバランスの効果が得られる帯域をより一層広げることができるようになる。
また、請求項5及び請求項15の発明の如く正極側付加インダクタ、及び/又は、負極側付加インダクタに、並列に抵抗を接続すれば、高周波領域で共振が起きた場合に、抵抗によって共振を抑制することができるようになる。
尚、この抵抗は、請求項6及び請求項16の発明の如く正極側付加抵抗と正極側付加インダクタの直列回路、及び/又は、負極側付加抵抗と負極側付加インダクタの直列回路に、並列に接続してもよい。
更に、請求項7の発明の如く直流電源とスイッチング素子の間に接続されたEMIフィルタに、正極側経路と負極側経路の双方にそれぞれ接続されたノーマルモードコイルを設けることにより、ノーマルモード電流がコモンモード電流として基準電位導体に流出する不都合を抑制することができる。特に、正極側経路と負極側経路の双方にノーマルモードコイルを接続することで、正極側と負極側のインピーダンスを等しくし、平衡度を保つことができるようになり、インピーダンスバランスの効果を最大限に引き出すことが可能となる。
また、請求項8の発明の如く、上記各発明に加えて上アームのスイッチング素子と、下アームのスイッチング素子を有し、正極側経路が直流電源の正極側と上アームのスイッチング素子の高電位側端子とを接続し、負極側経路が直流電源の負極側と下アームのスイッチング素子の低電位側端子とを接続している電力変換装置の場合、上アームのスイッチング素子の低電位側端子と下アームのスイッチング素子の高電位側端子とを接続する中間経路と負荷との間に中間付加インピーダンスを接続すれば、負荷と基準電位導体間の寄生容量を経由する経路のインピーダンスを増加させ、この経路から流出するコモンモード電流を低減させることができるようになる。これにより、負荷と基準電位導体間の寄生容量が大きい場合にも、インピーダンスバランスの効果を向上させることが可能となり、大型のEMIフィルタを搭載すること無く、ノイズを一層抑制することができるようになる。
特に、中間経路と負荷との間に中間付加インピーダンスを接続して、負荷と基準電位導体間の寄生容量を経由する経路のインピーダンスを十分に大きくすることにより、インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件に基づき、インピーダンスZt、及び、Zbを設定することで、インピーダンスバランス(平衡)をとる際に、中間インピーダンスが関わる値を無視できる程に小さくすることが可能となり、バランスがとり易くなって効果的にノイズを低減することができるようになる。
この場合、請求項9の如く各相の上アームのスイッチング素子と、下アームのスイッチング素子を有して三相交流出力を負荷としてのモータに印加する電力変換装置においては、アーム中点と基準電位導体間の寄生容量が大きく、中間インピーダンスが小さいため、バランスをとることが困難となるが、上記の如く中間付加インピーダンスを接続することで、効果的に係る問題を解消することが可能となる。
また、中間付加インピーダンスは請求項10の発明の如く、ノーマルモードコイル、三相コモンモードコイル、フェライトコアのうちの何れか、又は、それらのうちの二つの組み合わせ、若しくは、それらの全てにより構成するとよい。中間付加インピーダンスとして三相コモンモードコイルとフェライトコアを設けることにより、コモンモードインピーダンスを増加させてコモンモード電流の流出を減少させることができるようになる。一方、中間付加インピーダンスとしてノーマルモードコイルを設けることにより、スイッチングサージを効果的に抑制することが可能となり、結果として三相線間のモード変換(ノーマルモードからコモンモード)の抑制となるので、これらにより、負荷と基準電位導体間の寄生容量の影響を受け難くすることができるようになる。
また、ノーマルモードコイルは、コモンモードコイルと異なり、三相線の結合が不要なことから、別々に配置することが可能であり、配置上の制約が少なく、コモンモードコイルの場合よりも小型化し易い。更に、三相全てに入れなくとも(例えば二相のみ)、ノイズ低減効果が得られることから、使い勝手がよいという利点がある。
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明を適用した一実施例の電力変換装置1の電気回路図、図2はインバータ回路2と制御基板11の電気回路図である。
(1)電力変換装置1
実施例の電力変換装置1は、三相のインバータ回路2の各相の上下アームを構成するIGBT(MOSFETでもよい)から成る6個のスイッチング素子3~8と(図2)、プリント配線に制御回路が実装された制御基板11(図2)と、後述するバッテリ14、制御基板11、各スイッチング素子3~8、及び、負荷としてのモータM間の配線を行うための配線部材としてのバスバーアセンブリ12と、フィルタ基板13を備え、直流電源としての車両の前記バッテリ14から給電される直流電力を三相交流電力に変換して、モータMのステータコイル(図示せず)に印加するものである。
実施例の電力変換装置1は、三相のインバータ回路2の各相の上下アームを構成するIGBT(MOSFETでもよい)から成る6個のスイッチング素子3~8と(図2)、プリント配線に制御回路が実装された制御基板11(図2)と、後述するバッテリ14、制御基板11、各スイッチング素子3~8、及び、負荷としてのモータM間の配線を行うための配線部材としてのバスバーアセンブリ12と、フィルタ基板13を備え、直流電源としての車両の前記バッテリ14から給電される直流電力を三相交流電力に変換して、モータMのステータコイル(図示せず)に印加するものである。
この発明における負荷の実施例であるモータMは、IPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)から構成されており、車両に搭載された図示しない電動圧縮機の金属製(例えば、アルミニウム)の筐体15内に収納された図示しない圧縮機構を駆動し、冷媒を圧縮して図示しない車両用空気調和装置の冷媒回路内に吐出するものである。そして、電力変換装置1は電動圧縮機の筐体15に一体に設けられているものとする。
(2)電力変換装置1の電気回路
先ず、図1を用いてこの実施例の電力変換装置1の電気回路を説明する。16はバッテリ14の正極側(+)にLISN(疑似電源回路網)を介して接続された正極側経路、17はバッテリ14の負極側(-)にLISNを介して接続された負極側経路であり、これら正極側経路16と負極側経路17にはEMIフィルタ18と平滑コンデンサ19が接続されている。これらEMIフィルタ18と平滑コンデンサ19はバッテリ14とインバータ回路2のスイッチング素子3~8の間に接続されている。
先ず、図1を用いてこの実施例の電力変換装置1の電気回路を説明する。16はバッテリ14の正極側(+)にLISN(疑似電源回路網)を介して接続された正極側経路、17はバッテリ14の負極側(-)にLISNを介して接続された負極側経路であり、これら正極側経路16と負極側経路17にはEMIフィルタ18と平滑コンデンサ19が接続されている。これらEMIフィルタ18と平滑コンデンサ19はバッテリ14とインバータ回路2のスイッチング素子3~8の間に接続されている。
前記EMIフィルタ18は、正極側経路16と負極側経路17間に接続されたXコンデンサ21と、このXコンデンサ21の後段の正極側経路16と負極側経路17の双方にそれぞれ接続されたノーマルモードコイル22及び30と、これらノーマルモードコイル22、30の後段に接続されたコモンモードコイル23と、このコモンモードコイル23の後段において、正極側経路16及び負極側経路17と筐体15間にそれぞれ接続されたYコンデンサ26及びYコンデンサ24から構成されている。
そして、これらEMIフィルタ18と平滑コンデンサ19はフィルタ基板13に配置されている。上記Xコンデンサ21はノーマルモードノイズを低減するためのコンデンサであり、Yコンデンサ24、26はコモンモードノイズを低減するためのコンデンサである。また、平滑コンデンサ19は電圧リプルを平滑すると共に、インピーダンスバランスの起点として高周波を短絡とみなすためのコンデンサである。
尚、筐体15は車体27(GND)に接続されている。そして、実施例ではこの筐体15が電力変換装置1の基準電位導体となる。また、25はバスバーアセンブリ12と平滑コンデンサ19の間の負極側経路17に接続されたシャント抵抗である。
(2-1)中間付加インピーダンスZm1(ノーマルモードコイル35、三相コモンモードコイル28及びフェライトコア29
また、平滑コンデンサ19の後段の正極側経路16、及び、負極側経路17にはインバータ回路2が接続されており、インバータ回路2の後述する中間経路31U~31WとモータMの間には、実施例の中間付加インピーダンスZm1を構成するノーマルモードコイル35、三相コモンモードコイル28、及び、フェライトコア29が順次接続されている。これらノーマルモードコイル35や三相コモンモードコイル28は主に低周波のインピーダンスを増加させ、フェライトコア29は高周波のインピーダンスを増加させる。フェライトコア29は後述する出力経路32U~32Wの周囲に配置するものであるが、本出願においては係る配置も接続と称する。また、ノーマルモードコイル35は実施例では出力経路32U~32Wの全てにそれぞれ接続されているものとする。
また、平滑コンデンサ19の後段の正極側経路16、及び、負極側経路17にはインバータ回路2が接続されており、インバータ回路2の後述する中間経路31U~31WとモータMの間には、実施例の中間付加インピーダンスZm1を構成するノーマルモードコイル35、三相コモンモードコイル28、及び、フェライトコア29が順次接続されている。これらノーマルモードコイル35や三相コモンモードコイル28は主に低周波のインピーダンスを増加させ、フェライトコア29は高周波のインピーダンスを増加させる。フェライトコア29は後述する出力経路32U~32Wの周囲に配置するものであるが、本出願においては係る配置も接続と称する。また、ノーマルモードコイル35は実施例では出力経路32U~32Wの全てにそれぞれ接続されているものとする。
(2-2)正極側に付加するインピーダンス(コンデンサ33C、抵抗33R、インダクタ33L)、及び、負極側に付加するインピーダンス(コンデンサ34C、抵抗34R、インダクタ34L)
更に、インバータ回路2と平滑コンデンサ19の間の正極側経路16と筐体15(基準電位導体)間には、実施例では図3の正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15間のインピーダンスZtを構成するインピーダンスバランス用のコンデンサ33C、抵抗33R、及びインダクタ33Lの直列回路を接続し、インバータ回路2と平滑コンデンサ19の間の負極側経路17と筐体15(基準電位導体)間には、実施例では図3の負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間のインピーダンスZbを構成するインピーダンスバランス用のコンデンサ34C、抵抗34R、及び、インダクタ34Lの直列回路を接続している。
更に、インバータ回路2と平滑コンデンサ19の間の正極側経路16と筐体15(基準電位導体)間には、実施例では図3の正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15間のインピーダンスZtを構成するインピーダンスバランス用のコンデンサ33C、抵抗33R、及びインダクタ33Lの直列回路を接続し、インバータ回路2と平滑コンデンサ19の間の負極側経路17と筐体15(基準電位導体)間には、実施例では図3の負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間のインピーダンスZbを構成するインピーダンスバランス用のコンデンサ34C、抵抗34R、及び、インダクタ34Lの直列回路を接続している。
上記コンデンサ33Cが本発明における正極側付加容量、抵抗33Rが本発明における正極側付加抵抗、インダクタ33Lが本発明における正極側付加インダクタであり、これらがインピーダンスZtに含まれ、コンデンサ34Cが本発明における負極側付加容量、抵抗34Rが本発明における負極側付加抵抗、インダクタ34Lが本発明における負極側付加インダクタであり、これらがインピーダンスZbに含まれる。
尚、図1では寄生容量発生ポイントP、Nと離れてコンデンサ33C、抵抗33R、及び、インダクタ33Lの直列回路と、コンデンサ34C、抵抗34R、及び、インダクタ34Lの直列回路を示しているが、実際には図3に示すように、コンデンサ33C、抵抗33R、及び、インダクタ33Lの直列回路は、正極側の寄生容量発生ポイントP(上アームスイッチング素子3~5のコレクタと正極側経路16の交点)と筐体15間に接続され、コンデンサ34C、抵抗34R、及び、インダクタ34Lの直列回路は、実施例ではシャント抵抗25を介し、負極側の寄生容量発生ポイントN(下アームスイッチング素子6~8のエミッタと負極側経路17の交点)と筐体15間に接続されている。また、シャント抵抗25の位置も、図1では分かりやすくするために負極側の寄生容量発生ポイントNから離して示している。
そして、これらコンデンサ33C、抵抗33R、及び、インダクタ33Lの直列回路、コンデンサ34C、抵抗34R、及び、インダクタ34Lの直列回路、前述したノーマルモードコイル35、三相コモンモードコイル28、及び、フェライトコア29は、実施例ではバスバーアセンブリ12に配置されている。尚、図1中36で示す容量はインバータ回路2と筐体15間の寄生容量(寄生結合)を示し、37で示す容量はモータMと筐体15間の寄生容量(寄生結合)を示している。
(2-3)インバータ回路2
次に、図2にはインバータ回路2の電気回路と制御基板11を示している。インバータ回路2は、U相インバータ38U、V相インバータ38V、W相インバータ38Wを有しており、各相のインバータ38U~38Wは、それぞれ前述した上アーム側のスイッチング素子(上アームスイッチング素子と称す)3~5と、下アーム側のスイッチング素子(下アームスイッチング素子と称す)6~8を個別に有している。更に、各スイッチング素子3~8には、それぞれフライホイールダイオード39が逆並列に接続されている。
次に、図2にはインバータ回路2の電気回路と制御基板11を示している。インバータ回路2は、U相インバータ38U、V相インバータ38V、W相インバータ38Wを有しており、各相のインバータ38U~38Wは、それぞれ前述した上アーム側のスイッチング素子(上アームスイッチング素子と称す)3~5と、下アーム側のスイッチング素子(下アームスイッチング素子と称す)6~8を個別に有している。更に、各スイッチング素子3~8には、それぞれフライホイールダイオード39が逆並列に接続されている。
そして、インバータ回路2の上アームスイッチング素子3~5の高電位側端子は正極側経路16に接続されており、下アームスイッチング素子6~8の低電位側端子は負極側経路17に接続されている。U相インバータ38Uの上アームスイッチング素子3の低電位側端子と下アームスイッチング素子6の高電位側端子は中間経路31Uにて接続され、この中間経路31Uが出力経路32UによってモータM(負荷)のU相のステータコイルに接続される。
また、V相インバータ38Vの上アームスイッチング素子4の低電位側端子と下アームスイッチング素子7の高電位側端子は中間経路31Vにて接続され、この中間経路31Vが出力経路32VによってモータM(負荷)のV相のステータコイルに接続される。更に、W相インバータ38Wの上アームスイッチング素子5の低電位側端子と下アームスイッチング素子8の高電位側端子は中間経路31Wにて接続され、この中間経路31Wが出力経路32WによってモータM(負荷)のW相のステータコイルに接続される。そして、前述したノーマルモードコイル35、三相コモンモードコイル28、及び、フェライトコア29は中間経路31U~31WとモータMの間に位置する出力経路32U~32W中に設けられる。尚、フェライトコア29は、出力経路32U~32Wについて、図1に大きな四角で示す如く全相一括で配置してもよく、図1に小さな四角で示す如く各相の出力経路32U~32Wの周囲にそれぞれ別個に配置してもよい。
(2-4)制御基板11
一方、制御基板11の制御回路はプロセッサを有するマイクロコンピュータから構成されており、実施例では車両のECUから回転数指令値を入力し、シャント抵抗25を用いてモータMの相電流を検出、及び、算出し、これらに基づき、インバータ回路2の各上下アームスイッチング素子3~8のON/OFF状態を制御する。具体的には、各上下アームスイッチング素子3~8のゲート端子に印加するゲート電圧(駆動信号)を制御し、各相の上下アームスイッチング素子3~8をそれぞれ接続する中間経路31U~31Wの電圧(相電圧)を三相交流出力とし、出力経路32U~32Wを介してモータMの各相のステータコイルに印加することで、当該モータMを駆動する。
一方、制御基板11の制御回路はプロセッサを有するマイクロコンピュータから構成されており、実施例では車両のECUから回転数指令値を入力し、シャント抵抗25を用いてモータMの相電流を検出、及び、算出し、これらに基づき、インバータ回路2の各上下アームスイッチング素子3~8のON/OFF状態を制御する。具体的には、各上下アームスイッチング素子3~8のゲート端子に印加するゲート電圧(駆動信号)を制御し、各相の上下アームスイッチング素子3~8をそれぞれ接続する中間経路31U~31Wの電圧(相電圧)を三相交流出力とし、出力経路32U~32Wを介してモータMの各相のステータコイルに印加することで、当該モータMを駆動する。
(2-5)バスバーアセンブリ12
また、実施例のバスバーアセンブリ12は、導電性金属から成るバスバーを硬質樹脂によりモールドした構成とされている。このバスバーアセンブリ12のバスバーにフィルタ基板13や制御基板11、各スイッチング素子3~8、モータMが接続されることで、バッテリ14、制御基板11、各スイッチング素子3~8、モータM間の配線が成される。
また、実施例のバスバーアセンブリ12は、導電性金属から成るバスバーを硬質樹脂によりモールドした構成とされている。このバスバーアセンブリ12のバスバーにフィルタ基板13や制御基板11、各スイッチング素子3~8、モータMが接続されることで、バッテリ14、制御基板11、各スイッチング素子3~8、モータM間の配線が成される。
(2-6)バスバーアセンブリ12を含む制御基板11の寄生成分(インダクタンスや容量)
次に、図3を用いて、電力変換装置1の制御基板11(バスバーアセンブリ12を含む)の寄生成分について説明する。図中Zvはバスバーアセンブリ12を含む正極側経路16(配線)のインダクタンスのインピーダンス、Zgはバスバーアセンブリ12を含む負極側経路17(配線)のインダクタンスのインピーダンスである。正極側経路16や負極側経路17には他の寄生成分も存在するが、配線のインダクタンスが支配的となる。
次に、図3を用いて、電力変換装置1の制御基板11(バスバーアセンブリ12を含む)の寄生成分について説明する。図中Zvはバスバーアセンブリ12を含む正極側経路16(配線)のインダクタンスのインピーダンス、Zgはバスバーアセンブリ12を含む負極側経路17(配線)のインダクタンスのインピーダンスである。正極側経路16や負極側経路17には他の寄生成分も存在するが、配線のインダクタンスが支配的となる。
また、図中Ztはバスバーアセンブリ12を含む正極側の寄生容量発生ポイントP(図4)と筐体15(基準電位導体)間のインピーダンス、Zbはバスバーアセンブリ12を含む負極側の寄生容量発生ポイントN(図4)と筐体15間のインピーダンスである。
実施例のインピーダンスZtには、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15間の寄生容量と前述したコンデンサ33C(インピーダンスバランス用の正極側付加容量)の容量、抵抗33R(インピーダンスバランス用の正極側付加抵抗)の抵抗値、及び、インダクタ33L(インピーダンスバランス用の正極側付加インダクタ)のインダクタンスが含まれる。
また、実施例のインピーダンスZbには、負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間の寄生容量と前述したコンデンサ34C(インピーダンスバランス用の負極側付加容量)の容量、抵抗34R(インピーダンスバランス用の正極側付加抵抗)の抵抗値、及び、インダクタ34L(インピーダンスバランス用の正極側付加インダクタ)のインダクタンスが含まれる。
図中41の破線で示した部分は各スイッチング素子3~8(スイッチング記号で示す)により構成されるノイズ源であり、42は各相に分岐した正極側経路16のインダクタンス(これもインダクタンスが支配的となるという意味)、43はPCBパターンのインダクタンス(これもインダクタンスが支配的となるという意味)である。44は上アームスイッチング素子3~5のコレクタと筐体15間の寄生容量、46は下アームスイッチング素子6~8のコレクタと筐体15間の寄生容量である(これらも寄生容量が支配的となるという意味)。
48は上アームスイッチング素子3~5のエミッタと筐体15間の寄生容量+バスバーと筐体15間の寄生容量(これらも寄生容量が支配的となるという意味)である。49は下アームスイッチング素子6~8のエミッタと筐体15間の寄生容量である(これらも寄生容量が支配的となるという意味)。更に47は出力経路32U~32Wの寄生インダクタンス(これもインダクタンスが支配的となるという意味)である。
図中Zmは中間インピーダンスを示している。この中間インピーダンスZmは、上下アームスイッチング素子3~8のコレクタやエミッタ、バスバーアセンブリ12のバスバー、モータMの巻線と、寄生容量37、43、46、48、寄生インダクタンス47を含む中間経路31U~31W(上アームスイッチング素子3~5と下アームスイッチング素子6~8の中点)と筐体15間の寄生成分であり、この中間インピーダンスZmを介してコモンモード電流が筐体15に流出し、コモンモードノイズが発生することになる。
尚、図3では前述した中間付加インピーダンスZm1を示していないが、本発明では、図1の実施例に示すように、中間経路31U~31WとモータMの間の出力経路32U~32Wに、ノーマルモードコイル35、三相コモンモードコイル28、及び、フェライトコア29から成る中間付加インピーダンスZm1が追加して接続され、その分、中間インピーダンスZmの値は増大している。
(3)インピーダンスバランス条件(平衡条件)を成立させることによるノイズの低減
次に、図4を参照しながら、インピーダンスバランス条件(平衡条件)を成立させることによるノイズの低減対策について説明する。図4のブリッジ回路は、例えば図2中のU相インバータ38Uがノイズ源V1となるとき(上アームスイッチング素子3がノイズ源となる際)のコモンモード等価回路(モデル化されたブリッジ回路)であり、図中Zvは前述した正極側経路16のインダクタンスのインピーダンス、Zgは負極側経路17のインダクタンスのインピーダンス、Ztはコンデンサ33Cの容量、抵抗33Rの抵抗値、及び、インダクタ33Lのインダクタンスを含む正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15(基準電位導体)間のインピーダンス、Zbはコンデンサ34Cの容量、抵抗34R、及び、インダクタ34Lのインダクタンスを含む負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間のインピーダンス、Zmは中間付加インピーダンスZm1を含む中間インピーダンスである。ここで、下アームスイッチング素子6がノイズ源となる際は、ノイズ源は中間インピーダンスZmとの交点の下側に位置することになる。
次に、図4を参照しながら、インピーダンスバランス条件(平衡条件)を成立させることによるノイズの低減対策について説明する。図4のブリッジ回路は、例えば図2中のU相インバータ38Uがノイズ源V1となるとき(上アームスイッチング素子3がノイズ源となる際)のコモンモード等価回路(モデル化されたブリッジ回路)であり、図中Zvは前述した正極側経路16のインダクタンスのインピーダンス、Zgは負極側経路17のインダクタンスのインピーダンス、Ztはコンデンサ33Cの容量、抵抗33Rの抵抗値、及び、インダクタ33Lのインダクタンスを含む正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15(基準電位導体)間のインピーダンス、Zbはコンデンサ34Cの容量、抵抗34R、及び、インダクタ34Lのインダクタンスを含む負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間のインピーダンス、Zmは中間付加インピーダンスZm1を含む中間インピーダンスである。ここで、下アームスイッチング素子6がノイズ源となる際は、ノイズ源は中間インピーダンスZmとの交点の下側に位置することになる。
尚、本発明における正極側の寄生容量発生ポイントPは、図4の場合は上アームスイッチング素子3のコレクタと正極側経路16の交点であり、負極側の寄生容量発生ポイントNは、下アームスイッチング素子6のエミッタと負極側経路17の交点である。また、図4の場合、本発明における正極側経路16のインピーダンスZvは、上アームスイッチング素子3のコレクタとの交点までの正極側経路16のインダクタンスのインピーダンスであり、負極側経路17のインピーダンスZgは、下アームスイッチング素子6のエミッタとの交点までの負極側経路17のインダクタンスのインピーダンスである。
また、V相インバータ38Vがノイズ源V1となる場合は、同様に上アームスイッチング素子4のコレクタと正極側経路16の交点が正極側の寄生容量発生ポイントPとなり、下アームスイッチング素子7のエミッタと負極側経路17の交点が負極側の寄生容量発生ポイントNとなる。その場合は、上アームスイッチング素子4のコレクタとの交点までの正極側経路16のインダクタンスのインピーダンスがZvとなり、下アームスイッチング素子7のエミッタとの交点までの負極側経路17のインダクタンスのインピーダンスがZgとなる。
更に、W相インバータ38Wがノイズ源V1となる場合は、上アームスイッチング素子5のコレクタと正極側経路16の交点が正極側の寄生容量発生ポイントPとなり、下アームスイッチング素子8のエミッタと負極側経路17の交点が負極側の寄生容量発生ポイントNとなる。その場合は、上アームスイッチング素子5のコレクタとの交点までの正極側経路16のインダクタンスのインピーダンスがZvとなり、下アームスイッチング素子8のエミッタとの交点までの負極側経路17のインダクタンスのインピーダンスがZgとなる。
また、図4中Z1はノイズ源V1の上アームの内部インピーダンス+インダクタンス42(図3)、Z2はノイズ源V1の下アームの内部インピーダンス+インダクタンス42を表している。インダクタンス42は微小で、コンデンサ33C、抵抗33R、及び、インダクタ33Lの直列回路と寄生容量44の接続位置は略同じなので、寄生容量44はZ1ではなく、インピーダンスZtに含まれることになる。また、ZrはインピーダンスZvとインピーダンスZgの交点(図4のブリッジ回路の向かって左側の起点)から筐体15までのコモンモードインピーダンスを表している。図4のインピーダンスZvとインピーダンスZgの交点は、バッテリ14(直流電源)側の起点であり、高周波短絡ポイントである。
そして、図4中Vcはノイズ測定点であるLISN側に生じるコモンモード電圧である。回路内部のスイッチング動作によって生じるコモンモード電圧Vcによって、接続される配線にコモンモード電流が流れ、ノイズが発生する。このコモンモード電圧Vcを零、若しくは、極めて小さくする平衡条件(インピーダンスバランス条件)を成立させることで、スイッチング動作に伴い流出するコモンモード電流によるノイズを解消、若しくは、著しく低減させることが可能となる。
この回路方程式から計算すると、コモンモード電圧Vcは以下の式(I)で表すことができる。
尚、インピーダンスZ1は上アームスイッチング素子3のON状態であり、他の素子に対して値が低いため無視している。
更に、Zmが十分に大きい場合、式(I)の分子第二項と分母第二項は無視することができるようになり、式(I)は下記式(II)で書き表すことができる。
ここで、式(II)の分子(ZgZt-ZbZv)を零とする条件、即ち、インピーダンスバランス条件(平衡条件)は、下記式(III)となる。
Zb×Zv=Zg×Zt ・・・(III)
即ち、式(III)は下記式(IV)となることを意味している。
(Zb×Zv)/(Zg×Zt)=1 ・・・(IV)
Zb×Zv=Zg×Zt ・・・(III)
即ち、式(III)は下記式(IV)となることを意味している。
(Zb×Zv)/(Zg×Zt)=1 ・・・(IV)
そこで、実施例では図1に示したインピーダンスバランスをとるために接続するコンデンサ33Cの容量、抵抗33Rの抵抗値、インダクタ33Lのインダクタンス、コンデンサ34Cの容量、抵抗34Rの抵抗値、インダクタ34Lのインダクタンスを選択すると云う方法で、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15(基準電位導体)間のインピーダンスZtと、負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間のインピーダンスZbを設定し、上記式(III)を成立させ、若しくは、略成立させる電力変換装置1を製造する。
尚、略成立とは、Zb×Zv=Zg×Ztでは無いが、ニアリーイコール(両者の差が極めて小さい一定の許容範囲A以内)であることを意味するものとする。これにより、効果的にノイズを低減することができるようになる。
(3-1)コンデンサ33C、34Cのみでインピーダンスバランスを取る場合の問題点
尚、前述したように実施例の正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15(基準電位導体)間のインピーダンスZtは、図5の(a)に示されるように、コンデンサ33C(正極側付加容量)、抵抗33R(正極側付加抵抗)、及び、インダクタ33L(正極側付加インダクタ)の直列回路で構成され、コンデンサ33Cの容量、抵抗33Rの抵抗値、及び、インダクタ33Lのインダクタンスと、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15間の寄生容量が含まれる。
尚、前述したように実施例の正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15(基準電位導体)間のインピーダンスZtは、図5の(a)に示されるように、コンデンサ33C(正極側付加容量)、抵抗33R(正極側付加抵抗)、及び、インダクタ33L(正極側付加インダクタ)の直列回路で構成され、コンデンサ33Cの容量、抵抗33Rの抵抗値、及び、インダクタ33Lのインダクタンスと、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15間の寄生容量が含まれる。
また、実施例の負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間のインピーダンスZbは、図6の(a)に示されるように、コンデンサ34C(負極側付加容量)、抵抗34R(負極側付加抵抗)、及び、インダクタ34L(負極側付加インダクタ)の直列回路で構成され、コンデンサ34Cの容量、抵抗34Rの抵抗値、及び、インダクタ34Lのインダクタンスと、負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間の寄生容量が含まれる。
ここで、インピーダンスZtの成分として、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15間にコンデンサ33C(正極側付加容量)のみを接続し、インピーダンスZbの成分として、負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間にコンデンサ34C(負極側付加容量)のみを接続してインピーダンスバランスを取る場合の問題点について考察する。
例えば、インピーダンスZvとインピーダンスZgの比率が1:α(αは1より大きい値)であった場合、インピーダンスZtとインピーダンスZbの比率が1:αとなるような容量のコンデンサ33C(正極側付加容量)とコンデンサ34C(負極側付加容量)を選定して接続すれば、Zb×Zv=Zg×Zt(式(III))となり、(Zb×Zv)/(Zg×Zt)=1(式(IV))として、インピーダンスバランスを取ることができる。
しかしながら、一般的にコンデンサのインピーダンスは1/(ωC)で決まるため、図7中にQで示すように周波数によって変化し、共振点近辺では急激に低下してしまう。これは上記コンデンサ33Cとコンデンサ34Cのみを接続した場合でも同様で、図8にQ2で示すようにインピーダンスZtは周波数で変化し、Q1で示すようにインピーダンスZbも周波数で変化する。そのため、インピーダンスZtが急激に低下する前の帯域ではインピーダンスZtとZbの比率は維持され、コンデンサ33C、34Cの特性でインピーダンスバランスを取ることが可能であっても、共振点近辺、及び、それより高い帯域ではバランスを取ることが困難となる。
その結果を図9に示す。図9中のQ3はZb×Zv、Q4はZg×Zt、Q5は前記式(IV)の(Zb×Zv)/(Zg×Zt)をそれぞれ示している。周波数が低い帯域(図9中のHZ1)では、上述の如くZb×Zv=Zg×Zt(式(III))となるようにコンデンサ33C、34Cを選定することで、(Zb×Zv)/(Zg×Zt)=1(式(IV))とし、インピーダンスバランスを取ることができる。
しかしながら、図8で示したインピーダンスZt、Zbの周波数特性により、周波数が帯域HZ1より高くなって共振点近辺になると、先ず、Zg×Zt(Q4)が急激に低下するため、(Zb×Zv)/(Zg×Zt)は急激に上昇する。その後、Zg×Zt(Q4)は急激に上昇に転じ、更にその後、今度はZb×Zv(Q3)が急激に低下するため、(Zb×Zv)/(Zg×Zt)は急激に低下するものの、Zg×Zt(Q4)よりZb×Zv(Q3)が小さい関係のまま、周波数の上昇によるインピーダンスZv、Zgのインピーダンス増大に伴ってZg×Zt(Q4)とZb×Zv(Q3)が上昇していくために、(Zb×Zv)/(Zg×Zt)は1より小さい値となり、インピーダンスバランスを取ることが極めて困難となる。
(3-2)コンデンサ33C、抵抗33R、インダクタ33Lの直列回路と、コンデンサ34C、抵抗34R、インダクタ34Lの直列回路でインピーダンスバランスを取ることによるメリット
他方、抵抗のインピーダンスは周波数に依存せず、インダクタのインピーダンスはωLで決まるため、前述した実施例の如く、コンデンサ、抵抗、及び、インダクタの直列回路では、図10中にSで示すように、低い周波数の帯域ではコンデンサのインピーダンス(1/(ωC))が支配的となる。
他方、抵抗のインピーダンスは周波数に依存せず、インダクタのインピーダンスはωLで決まるため、前述した実施例の如く、コンデンサ、抵抗、及び、インダクタの直列回路では、図10中にSで示すように、低い周波数の帯域ではコンデンサのインピーダンス(1/(ωC))が支配的となる。
その後、周波数の上昇に伴ってコンデンサのインピーダンスが徐々に低下するため、全体のインピーダンスは徐々に低下していく。そして、コンデンサの共振点近辺の周波数帯域になると、コンデンサのインピーダンスは急激に低下するため、共振点近辺では周波数に依存しない抵抗のインピーダンスが支配的となり、全体のインピーダンスが補われて急激な低下は回避される(図10)。
即ち、コンデンサの共振点近辺の帯域での図7や図8の如き急激なインピーダンスの低下は、抵抗のインピーダンスにより補われるようになる。また、それより高い周波数の帯域になると、今度はインダクタのインピーダンス(ωL)が支配的となる。
これは前述したコンデンサ33C、抵抗33R、及び、インダクタ33Lの直列回路と、コンデンサ34C、抵抗34R、及び、インダクタ34Lの直列回路の場合でも同様である。例えば、インピーダンスZvとインピーダンスZgの比率が1:α(αは1より大きい値)であった場合、インピーダンスZtとインピーダンスZbの比率が1:αとなるようにコンデンサ33C(正極側付加容量)の容量、抵抗33R(正極側付加抵抗)の抵抗値、インダクタ33L(正極側付加インダクタ)のインダクタンスと、コンデンサ34C(正極側付加容量)の容量、抵抗34R(正極側付加抵抗)の抵抗値、インダクタ34L(正極側付加インダクタ)のインダクタンスを設定して、それぞれを満たす素子を選定し、接続すれば、Zb×Zv=Zg×Zt(式(III))となり、(Zb×Zv)/(Zg×Zt)=1(式(IV))として、インピーダンスバランスを取ることができる。
実際には、コンデンサ34Cの容量がコンデンサ33Cより小さく、抵抗33Rと抵抗34Rについては抵抗34Rの抵抗値が抵抗33Rより大きく、インダクタ33Lとインダクタ34Lについてもインダクタ34Lのインダクタンスがインダクタ33Lよりも大きい値の素子となる。その場合は、図11にS1で示すようにインピーダンスZtは変化し、S2で示すようにインピーダンスZbは変化するようになる。
即ち、インピーダンスZtとインピーダンスZbの関係(比率)は、低い周波数の帯域ではコンデンサ33Cとコンデンサ34Cの特性、コンデンサの共振点近辺の帯域では抵抗33Rと抵抗34Rの抵抗値の比率、それより高い周波数の帯域ではインダクタ33Lとインダクタ34Lのインダクタンスの比率で決まるようになり、低い周波数の帯域から高い周波数の帯域に渡って、インピーダンスZb(図11の破線S2)と、インピーダンスZt(図11の実線S1)の比率は略保たれるかたちになる。従って、低い周波数の帯域ではコンデンサ特性でインピーダンスバランスを取り、コンデンサの共振点近辺の帯域では抵抗比率でインピーダンスバランスを取り、それより高い周波数の帯域ではインダクタンス比率でインピーダンスバランスを取ることができることになる(図11中に各帯域を示す)。
そして、上記の如く各コンデンサ33C、34Cの容量、抵抗33R、34Rの抵抗値、及び、インダクタ33L、34Lのインダクタンスを選定して、インピーダンスZtとインピーダンスZbを設定し、インピーダンスバランスを取った場合の結果を図12に示す。図12中のS3はZb×Zv、S4はZg×Zt、S5は前記式(IV)の(Zb×Zv)/(Zg×Zt)をそれぞれ示している。前述した如くZb×Zv=Zg×Zt(式(III))となるように各コンデンサ33C、34Cの容量、各抵抗33R、34Rの抵抗値、各インダクタ33L、34Lのインダクタンスを選定することで、周波数が低い帯域から高い帯域に渡る広い帯域(図12中のHZ2)で、(Zb×Zv)/(Zg×Zt)=1(式(IV))を成立させ、或いは、略成立させて、インピーダンスバランスを取ることができる。
(3-3)インピーダンスZt、Zbでインピーダンスバランスを取る際の他の例
尚、これまで説明した実施例では図5の(a)で示したように、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15(基準電位導体)間のインピーダンスZtを構成するために、コンデンサ33C(正極側付加容量)、抵抗33R(正極側付加抵抗)、及び、インダクタ33L(正極側付加インダクタ)の直列回路を接続したが、図5の(b)で示すように、コンデンサ33Cと抵抗33Rのみの直列回路を接続し、インダクタンスについては、配線の寄生インダクタンスの調整で対応するようにしてもよい。
尚、これまで説明した実施例では図5の(a)で示したように、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15(基準電位導体)間のインピーダンスZtを構成するために、コンデンサ33C(正極側付加容量)、抵抗33R(正極側付加抵抗)、及び、インダクタ33L(正極側付加インダクタ)の直列回路を接続したが、図5の(b)で示すように、コンデンサ33Cと抵抗33Rのみの直列回路を接続し、インダクタンスについては、配線の寄生インダクタンスの調整で対応するようにしてもよい。
また、低電圧の電力変換装置1の場合には、図5の(c)で示すように、抵抗33Rとインダクタ33Lのみの直列回路を接続し、容量については筐体15間の寄生容量の調整で対応するようにしてもよい。更に、図5の(d)で示すように、抵抗33Rのみを接続して、容量とインダクタンスについては、同じく寄生容量と寄生インダクタンスの調整で対応するようにしてもよい。これらの場合には、寄生容量と抵抗33Rやインダクタ33Lが並列に入り、付加インピーダンスを形成することになる。
負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間のインピーダンスZbについても、実施例では図6の(a)で示したように、コンデンサ34C(負極側付加容量)、抵抗34R(負極側付加抵抗)、及び、インダクタ34L(負極側付加インダクタ)の直列回路を接続して構成するようにしたが、これも同様に、図6の(b)で示すように、コンデンサ34Cと抵抗34Rのみの直列回路を接続し、インダクタンスについては、配線の寄生インダクタンスの調整で対応するようにしてもよい。
また、低電圧の電力変換装置1の場合には、図6の(c)で示すように、抵抗34Rとインダクタ34Lのみの直列回路を接続し、容量については筐体15間の寄生容量の調整で対応するようにしてもよい。更に、図6の(d)で示すように、抵抗34Rのみを接続して、容量とインダクタンスについては、同じく寄生容量と寄生インダクタンスの調整で対応するようにしてもよい。これらの場合には、寄生容量と抵抗34Rやインダクタ34Lが並列に入り、付加容量を形成することになる。
即ち、インピーダンスZtと、インピーダンスZbの構成は、図5の(a)~(d)のうちの何れかと、図6の(a)~(d)のうちの何れかとで考えられる全ての組み合わせが実施例として採用することが可能である。但し、本発明では抵抗33Rと抵抗34Rを接続することは必須となる。
(3-4)インピーダンスZt、Zbでインピーダンスバランスを取る際の更に他の例
更に、図5の(a)、(c)については、インダクタ33L(正極側付加インダクタ)に並列に抵抗を接続してもよい。この場合の類型を図15に示す。図15の(a)は、図5の(a)の場合のインダクタ33Lのみに並列に抵抗33Rs1を接続した例であり、図15の(b)は、図5の(a)の場合の抵抗33R(正極側付加抵抗)とインダクタ33Lの直列回路に並列に抵抗33Rs2を接続した例である。
更に、図5の(a)、(c)については、インダクタ33L(正極側付加インダクタ)に並列に抵抗を接続してもよい。この場合の類型を図15に示す。図15の(a)は、図5の(a)の場合のインダクタ33Lのみに並列に抵抗33Rs1を接続した例であり、図15の(b)は、図5の(a)の場合の抵抗33R(正極側付加抵抗)とインダクタ33Lの直列回路に並列に抵抗33Rs2を接続した例である。
また、図15の(c)は、図5の(c)の場合のインダクタ33Lのみに並列に抵抗33Rs1を接続した例であり、図15の(d)は、図5の(c)の場合の抵抗33Rとインダクタ33Lの直列回路に並列に抵抗33Rs2を接続した例である。尚、図15の(b)と図15の(d)では、更にインダクタ33Lのみに並列に抵抗33Rs1を接続してもよい(図15に破線で示す)。
同様に、図6の(a)、(c)についても、インダクタ34L(正極側付加インダクタ)に並列に抵抗を接続してもよい。この場合の類型を図16に示す。図16の(a)は、図6の(a)の場合のインダクタ34Lのみに並列に抵抗34Rs1を接続した例であり、図16の(b)は、図6の(a)の場合の抵抗34R(正極側付加抵抗)とインダクタ34Lの直列回路に並列に抵抗34Rs2を接続した例である。
また、図16の(c)は、図6の(c)の場合のインダクタ34Lのみに並列に抵抗34Rs1を接続した例であり、図16の(d)は、図6の(c)の場合の抵抗34Rとインダクタ34Lの直列回路に並列に抵抗34Rs2を接続した例である。尚、図16の(b)と図16の(d)では、更にインダクタ34Lのみに並列に抵抗34Rs1を接続してもよい(図16に破線で示す)。
このように、インダクタ33Lや34L、抵抗33Rとインダクタ33Lの直列回路や抵抗34Rとインダクタ34Lの直列回路に抵抗33Rs1や抵抗33Rs2、抵抗34Rs1や抵抗34Rs2を接続することにより、高周波領域で共振が起きた場合に、抵抗33Rs1や抵抗33Rs2、抵抗34Rs1や抵抗34Rs2によって共振を抑制することができるようになる。
以上のように、本発明では正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15(基準電位導体)間に抵抗33R(正極側付加抵抗)を接続すると共に、負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間に抵抗34R(負極側付加抵抗)を接続し、正極側経路16のインダクタンスのインピーダンスをZv、負極側経路17のインダクタンスのインピーダンスをZg、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15間の容量と抵抗33Rを含むインピーダンスをZt、負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間の容量と抵抗34Rを含むインピーダンスをZbとしたとき、インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件であるZb×Zv=Zg×Ztの関係が成立、若しくは、略成立するように、インピーダンスZt、及び、Zbを設定するようにしたので、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15間の容量、及び、負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間の容量における共振点近辺で、インピーダンスZtとインピーダンスZbが急激に低下してしまう不都合を、抵抗33Rと抵抗34Rにより補い、インピーダンスZtとインピーダンスZbの比率を維持することができるようになる。
これにより、インピーダンスバランスの効果が得られる帯域を広げることができるようになり、コモンモード電流によるノイズを広帯域で効果的に抑制することができるようになる。
この場合、実施例のように抵抗33Rに直列にコンデンサ33C(正極側付加容量)を接続し、及び/又は、抵抗34Rに直列にコンデンサ34C(負極側付加容量)を接続して、インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件が成立、若しくは、略成立するように、抵抗33R、及び、抵抗34Rの抵抗値と、コンデンサ33C、及び/又は、コンデンサ34Cの容量を設定するようにすれば、コンデンサ33Cやコンデンサ34Cの容量を寄生容量より十分大きくすることにより、寄生容量の影響を受けること無く、インピーダンスバランスをとることができるようになる。即ち、コンデンサ33Cやコンデンサ34Cの容量を、寄生容量を考慮して選定することにより、寄生容量を調整すること無く、一層容易にインピーダンスバランスをとることができるようになる。
また、実施例のように抵抗33Rに直列にインダクタ33L(正極側付加インダクタ)を接続し、及び/又は、抵抗34Rに直列にインダクタ34L(負極側付加インダクタ)を接続すると共に、インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件が成立、若しくは、略成立するように、抵抗33R、及び、抵抗34Rの抵抗値と、インダクタ33L、及び/又は、インダクタ34Lのインダクタンスを設定するようにすれば、周波数が高い帯域において、インピーダンスZtとインピーダンスZbの比率を、インダクタ33Lとインダクタ34L等のインダクタンスの比率により維持することができるようになる。これにより、インピーダンスバランスの効果が得られる帯域をより一層広げることができるようになる。
また、実施例のようにインダクタ33L(正極側付加インダクタ)、及び/又は、インダクタ34L(負極側付加インダクタ)に、並列に抵抗Rs1、Rs2を接続すれば、高周波領域で共振が起きた場合に、抵抗Rs1、Rs2によって共振を抑制することができるようになる。尚、この抵抗Rs1、Rs2は、抵抗33Rとインダクタ33Lの直列回路、及び/又は、抵抗34Rとインダクタ34Lの直列回路に並列に接続してもよい。
更に、実施例のようにEMIフィルタ18に正極側経路16と負極側経路17にそれぞれ接続されたノーマルモードコイル22及び30を設けることで、ノーマルモード電流がコモンモード電流として筐体15に流出する不都合を抑制することができる。特に、正極側経路16と負極側経路17の双方にノーマルモードコイル22及び30を接続することで、正極側と負極側のインピーダンスを等しくし、平衡度を保つことができるようになり、インピーダンスバランスの効果を最大限に引き出すことが可能となる。
尚、実施例では正極側経路16と負極側経路17の何れにもノーマルモードコイルを接続しない場合にも平衡度を保つことはできるが、その場合にはノーマルモード電流がコモンモード電流として流出する不都合を抑制することができなくなる。
(4)中間付加インピーダンスZm1を接続したことによる利点
また、実施例では中間経路31U~31WとモータMとの間に中間付加インピーダンスZm1(ノーマルモードコイル35、三相コモンモードコイル28、フェライトコア29)を接続している。これにより、実施例の如く駆動対象が三相モータMである場合にも、寄生容量37を経由する経路のインピーダンスが十分に大きくなる。これにより、インピーダンスバランス(平衡)をとる際に、中間インピーダンスZmが関わる値、即ち、式(I)の分子第二項と分母第二項が無視できる程に小さくなるので、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15(基準電位導体)間のインピーダンスZtと負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間のインピーダンスZb(実施例では抵抗33R、34Rの抵抗値、コンデンサ33C、34Cの容量、インダクタ33L、34Lのインダクタンスの選定)によるブリッジ回路の平衡(バランス)がとり易くなり、容易、且つ、効果的にノイズを低減することができるようになる。
また、実施例では中間経路31U~31WとモータMとの間に中間付加インピーダンスZm1(ノーマルモードコイル35、三相コモンモードコイル28、フェライトコア29)を接続している。これにより、実施例の如く駆動対象が三相モータMである場合にも、寄生容量37を経由する経路のインピーダンスが十分に大きくなる。これにより、インピーダンスバランス(平衡)をとる際に、中間インピーダンスZmが関わる値、即ち、式(I)の分子第二項と分母第二項が無視できる程に小さくなるので、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15(基準電位導体)間のインピーダンスZtと負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間のインピーダンスZb(実施例では抵抗33R、34Rの抵抗値、コンデンサ33C、34Cの容量、インダクタ33L、34Lのインダクタンスの選定)によるブリッジ回路の平衡(バランス)がとり易くなり、容易、且つ、効果的にノイズを低減することができるようになる。
また、実施例のように中間経路31U~31WとモータMとの間に中間付加インピーダンスZm1(ノーマルモードコイル35、三相コモンモードコイル28、フェライトコア29)を追加して接続したことで、寄生容量37を経由する経路のインピーダンスが増加することになり、この経路から流出するコモンモード電流を低減させることができるようになる。これにより、モータMと筐体15間の寄生容量37が大きい場合にも、インピーダンスバランスの効果を向上させることが可能となり、大型のEMIフィルタを搭載すること無く、ノイズを一層抑制することができるようになる。
また、実施例では中間付加インピーダンスZm1をノーマルモードコイル35と、三相コモンモードコイル28と、フェライトコア29により構成している。このように中間付加インピーダンスZm1として三相コモンモードコイル28とフェライトコア29を設けることにより、コモンモードインピーダンスを増加させてコモンモード電流の流出を減少させることができるようになる。一方、中間付加インピーダンスZm1としてノーマルモードコイル35を設けることにより、スイッチングサージを効果的に抑制することが可能となり、結果として三相線間のモード変換(ノーマルモードからコモンモード)の抑制となるので、これらにより、モータMと筐体15間の寄生容量37の影響を受け難くすることができるようになる。
また、ノーマルモードコイル35は、コモンモードコイルと異なり、三相線の結合が不要なことから、別々に配置することが可能であり、実施例の如くバスバーアセンブリ12に配置する際にも、配置上の制約が少なく、コモンモードコイルの場合よりも小型化し易い。尚、ノーマルモードコイル35は、実施例の如く出力経路32U~32W(三相)の全てに入れなくとも、例えば二相のみに入れてもよい。それによっても、ノイズ低減効果が得られることから、使い勝手がよいという利点がある。
(4-1)ノイズ低減効果
次に、図13、図14を参照しながら、本発明によるノイズ低減効果について説明する。図13はノーマルモードコイル35、三相コモンモードコイル28、フェライトコア29、コンデンサ33、34を設けない電力変換装置100の電気回路図を示している。尚、この図において図1と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとする。
次に、図13、図14を参照しながら、本発明によるノイズ低減効果について説明する。図13はノーマルモードコイル35、三相コモンモードコイル28、フェライトコア29、コンデンサ33、34を設けない電力変換装置100の電気回路図を示している。尚、この図において図1と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとする。
この図中、N1で示す矢印はモータMから寄生容量37を介して筐体15に流出するコモンモード電流(ノイズ)、N2で示す矢印はインバータ回路2から寄生容量36を介して筐体15に流出するコモンモード電流(ノイズ)、N3で示す矢印は筐体15からYコンデンサ24、26を介してインバータ回路2の上下アームスイッチング素子3~8に還流するコモンモード電流(ノイズ)、N9で示す矢印は筐体15に取り付けられたHVコネクタのシールド線を通って正極側(+)及び負極側(-)のLISN16、17に流入するコモンモード電流(ノイズ)をそれぞれ示している。また、N4で示す矢印は筐体15から車体27に流出するコモンモード電流(ノイズ)、N5~N8で示す矢印は、車体27からLISN17、LISN16を経由してEMIフィルタ18に流入するコモンモード電流(ノイズ)を示している。尚、図中の矢印は単一方向のみで示しているが、実際にはコモンモード電流の流れは単純ではなく、各場所において双方向で流出/流入している。
図13の電力変換装置100の場合、モータMから寄生容量37を介して流出するコモンモード電流(N1)が大きくなる。また、このコモンモード電流とインバータ回路2から筐体15に流出するコモンモード電流(N2)はYコンデンサ24、26を介してノイズ源であるインバータ回路2の上下アームスイッチング素子3~8に還流するが(N3)、モータMやインバータ回路2からYコンデンサ24、26は離れているため、還流経路が長くなり、Yコンデンサ24、26のフィルタ効果(コモンモード電流を還流させる効果)が十分に得られなくなる。
一方、実施例では図1、図14に示す如くコンデンサ33C、抵抗33R、インダクタ33L、コンデンサ34C、抵抗34R、インダクタ34Lを接続してインピーダンスバランスをとり、コモンモード電圧Vcを零、若しくは、極めて小さくしているのでコモンモード電流(N1)を抑制し、ノイズを解消、若しくは、著しく低減することが可能となる。
特に、実施例では中間経路31U~31WとモータMとの間に中間付加インピーダンスZm1(ノーマルモードコイル35、三相コモンモードコイル28、フェライトコア29)を接続しているので、寄生容量37を経由する経路のインピーダンスが十分に大きくなっている。これにより、インピーダンスバランス(平衡)をとる際に、中間インピーダンスZmが関わる値(式(I)の分子第二項と分母第二項)が無視できる程に小さくなるので、正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15(基準電位導体)間のインピーダンスZtと、負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間のインピーダンスZbの調整、即ち、実施例でのコンデンサ33Cの容量、抵抗33Rの抵抗値、インダクタ33Lのインダクタンス、コンデンサ34Cの容量、抵抗34Rの抵抗値、インダクタ34Lのインダクタンスの選定によるブリッジ回路の平衡(バランス)がとり易くなり、容易、且つ、効果的にノイズを低減することができるようになる。
また、図1、図14のようにコンデンサ33C、抵抗33R、インダクタ33L、コンデンサ34C、抵抗34R、インダクタ34Lをバスバーアセンブリ12に配置することにより、モータMから寄生容量37を介して流出するコモンモード電流(N1)とインバータ回路2から筐体15に流出するコモンモード電流(N2)のうちの一部は、図14に矢印N10で示すように、コンデンサ33C、抵抗33R、インダクタ33Lの直列回路と、コンデンサ34C、抵抗34R、インダクタ34Lの直列回路を介してノイズ源であるインバータ回路3の上下アームスイッチング素子3~8に還流する効果が得られる。
バスバーアセンブリ12はフィルタ基板13よりもモータMやインバータ回路2の上下アームスイッチング素子3~8に近い位置に設けられるので、これらコンデンサ33C、抵抗33R、インダクタ33L、コンデンサ34C、抵抗34R、インダクタ34Lをバスバーアセンブリ12に配置することで還流経路が短くなり、効果的にフィルタ効果を得ることができるようになる。これにより、従来の如く電源入力部に大型のコモンモードコイルを挿入すること無く、ノイズを抑制することが可能となり、小型化を図りながら、効果的にノイズを抑制することができるようになる。
また、実施例ではインバータ回路2の上下アームスイッチング素子3~8とモータM間のバスバーアセンブリ12にノーマルモードコイル35と三相コモンモードコイル28とフェライトコア29を配置したので、寄生容量37を経由する経路のインピーダンスが増加し、寄生容量37を経由して流出するコモンモード電流(ノイズ。矢印N1で示す)は小さくなる。これによっても、大型のコモンモードコイルを電源入力部に挿入する必要がなくなり、インバータ一体型電動圧縮機1の小型化を図りながら、効果的にノイズの抑制を図ることが可能となる。
尚、前述した寄生容量の調整については、例えば、各スイッチング素子3~8を放熱させるヒートシンクと放熱シート間の距離を変更することや、コレクタとヒートシンクの間の寄生結合、エミッタとヒートシンクの間の寄生結合が異なるスイッチング素子を選定することによって行うことができる。
ヒートシンクと放熱シート間の距離の変更は、寄生容量の調整となり、図3の寄生容量44の値が変わることになるので、インピーダンスZtが変わる(調整)ことになる。スイッチング素子自体は内部インピーダンス+寄生容量の値及び位置によって変更(調整)することができる。内部インピーダンスが変われば、図4のZ1、Z2が変わるが、インピーダンスバランスにおいてはZ1、Z2は支配的な要因ではないため、寄生容量44が変わるのみとなる。
また、実施例では中間付加インピーダンスZm1としてノーマルモードコイル35と三相コモンモードコイル28とフェライトコア29を接続したが、それに限らず、何れか一つのみ、或いは、それらのうちの二つの組み合わせ(ノーマルモードコイル35と三相コモンモードコイル28の組み合わせ、又は、ノーマルモードコイル35とフェライトコア29の組み合わせ、若しくは、三相コモンモードコイル28とフェライトコア29の組み合わせ)を接続して中間付加インピーダンスZm1としてもよい。
また、実施例では正極側経路16と負極側経路17の双方にノーマルモードコイル22及び30を接続したが、請求項7以外の発明では正極側経路16と負極側経路17のうちの何れか一方にのみノーマルモードコイル(22か30)を接続するようにしてもよい。
更に、実施例では電力変換装置1により電動圧縮機のモータMを駆動する三相インバータで本発明を説明したが、請求項9以外の発明ではそれに限らず、例えば、単一のスイッチング素子をスイッチングすることで昇圧し、昇圧された直流電圧を負荷に印加する昇圧コンバータ等の電源回路(電力変換装置)にも本発明は有効である。
1 電力変換装置
2 インバータ回路
3~8 上下アームスイッチング素子
11 制御基板
14 バッテリ(直流電源)
15 筐体(基準電位導体)
16 正極側経路
17 負極側経路
18 EMIフィルタ
22、30 ノーマルモードコイル
28 三相コモンモードコイル(Zm1)
29 フェライトコア(Zm1)
31U~31W 中間経路
32U~32W 出力経路
33C コンデンサ(正極側付加容量)
33L インダクタ(正極側付加インダクタ)
33R 抵抗(正極側付加抵抗)
33Rs1、33Rs2、34Rs1、34Rs2 抵抗
34C コンデンサ(負極側付加容量)
34L インダクタ(負極側付加インダクタ)
34R 抵抗(負極側付加抵抗)
35 ノーマルモードコイル(Zm1)
M モータ(負荷)
N 負極側の寄生容量発生ポイント
P 正極側の寄生容量発生ポイント
Zb 負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間のインピーダンス
Zg 負極側経路のインダクタンスのインピーダンス
Zm 中間インピーダンス
Zm1 中間付加インピーダンス
Zt 正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15間のインピーダンス
Zv 正極側経路のインダクタンスのインピーダンス
2 インバータ回路
3~8 上下アームスイッチング素子
11 制御基板
14 バッテリ(直流電源)
15 筐体(基準電位導体)
16 正極側経路
17 負極側経路
18 EMIフィルタ
22、30 ノーマルモードコイル
28 三相コモンモードコイル(Zm1)
29 フェライトコア(Zm1)
31U~31W 中間経路
32U~32W 出力経路
33C コンデンサ(正極側付加容量)
33L インダクタ(正極側付加インダクタ)
33R 抵抗(正極側付加抵抗)
33Rs1、33Rs2、34Rs1、34Rs2 抵抗
34C コンデンサ(負極側付加容量)
34L インダクタ(負極側付加インダクタ)
34R 抵抗(負極側付加抵抗)
35 ノーマルモードコイル(Zm1)
M モータ(負荷)
N 負極側の寄生容量発生ポイント
P 正極側の寄生容量発生ポイント
Zb 負極側の寄生容量発生ポイントNと筐体15間のインピーダンス
Zg 負極側経路のインダクタンスのインピーダンス
Zm 中間インピーダンス
Zm1 中間付加インピーダンス
Zt 正極側の寄生容量発生ポイントPと筐体15間のインピーダンス
Zv 正極側経路のインダクタンスのインピーダンス
Claims (16)
- スイッチング素子のスイッチングにより変換された出力を負荷に印加する電力変換装置において、
直流電源の正極側から前記スイッチング素子に至る正極側経路と、
前記直流電源の負極側から前記スイッチング素子に至る負極側経路と、
正極側の寄生容量発生ポイントPと基準電位導体間に接続された正極側付加抵抗と、
負極側の寄生容量発生ポイントNと前記基準電位導体間に接続された負極側付加抵抗を備え、
前記正極側経路のインダクタンスのインピーダンスをZv、
前記負極側経路のインダクタンスのインピーダンスをZg、
前記正極側の寄生容量発生ポイントPと前記基準電位導体間の容量と前記正極側付加抵抗を含むインピーダンスをZt、
前記負極側の寄生容量発生ポイントNと前記基準電位導体間の容量と前記負極側付加抵抗を含むインピーダンスをZbとしたとき、
前記インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件に基づき、前記インピーダンスZt、及び、Zbが設定されていることを特徴とする電力変換装置。 - 前記平衡条件とは、Zb×Zv=Zg×Ztの関係が成立し、若しくは、Zb×Zv=Zg×Ztの関係が略成立することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
- 前記正極側付加抵抗に直列に接続された正極側付加容量と、前記負極側付加抵抗に直列に接続された負極側付加容量、のうちの何れか一方、又は、双方を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
- 前記正極側付加抵抗に直列に接続された正極側付加インダクタと、前記負極側付加抵抗に直列に接続された負極側付加インダクタ、のうちの何れか一方、又は、双方を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の電力変換装置。
- 前記正極側付加インダクタ、及び/又は、前記負極側付加インダクタに、並列に抵抗を接続したことを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
- 前記正極側付加抵抗と前記正極側付加インダクタの直列回路、及び/又は、前記負極側付加抵抗と前記負極側付加インダクタの直列回路に、並列に抵抗を接続したことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の電力変換装置。
- 前記直流電源と前記スイッチング素子の間に接続されたEMIフィルタを備え、
該EMIフィルタは、前記正極側経路と前記負極側経路の双方にそれぞれ接続されたノーマルモードコイルを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載の電力変換装置。 - 上アームの前記スイッチング素子と、下アームの前記スイッチング素子を有し、
前記正極側経路は前記直流電源の正極側と前記上アームのスイッチング素子の高電位側端子とを接続し、前記負極側経路は前記直流電源の負極側と前記下アームのスイッチング素子の低電位側端子とを接続しており、
前記上アームのスイッチング素子の低電位側端子と前記下アームのスイッチング素子の高電位側端子とを接続する中間経路と前記負荷との間に接続された中間付加インピーダンスを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちの何れかに記載の電力変換装置。 - 各相の前記上アームのスイッチング素子と、前記下アームのスイッチング素子を有して三相交流出力を前記負荷としてのモータに印加することを特徴とする請求項8に記載の電力変換装置。
- 前記中間付加インピーダンスは、ノーマルモードコイル、三相コモンモードコイル、フェライトコアのうちの何れか、又は、それらのうちの二つの組み合わせ、若しくは、それらの全てにより構成されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の電力変換装置。
- スイッチング素子のスイッチングにより変換された出力を負荷に印加する電力変換装置の製造方法であって、
直流電源の正極側の寄生容量発生ポイントPと基準電位導体間に正極側付加抵抗を接続すると共に、前記直流電源の負極側の寄生容量発生ポイントNと前記基準電位導体間に負極側付加抵抗を接続し、
前記直流電源の正極側から前記スイッチング素子に至る正極側経路のインダクタンスのインピーダンスをZv、
前記直流電源の負極側から前記スイッチング素子に至る負極側経路のインダクタンスのインピーダンスをZg、
前記正極側の寄生容量発生ポイントPと基準電位導体間の容量と前記正極側付加抵抗を含むインピーダンスをZt、
前記負極側の寄生容量発生ポイントNと前記基準電位導体間の容量と前記負極側付加抵抗を含むインピーダンスをZbとしたとき、
前記インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件が成立、若しくは、略成立するように、前記インピーダンスZt、及び、Zbを設定することを特徴とする電力変換装置の製造方法。 - 前記平衡条件であるZb×Zv=Zg×Ztの関係を成立させ、若しくは、Zb×Zv=Zg×Ztの関係を略成立させることを特徴とする請求項11に記載の電力変換装置の製造方法。
- 前記正極側付加抵抗に直列に正極側付加容量を接続し、及び/又は、前記負極側付加抵抗に直列に負極側付加容量を接続すると共に、
前記インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件が成立、若しくは、略成立するように、前記正極側付加抵抗、及び、前記負極側付加抵抗の抵抗値と、前記正極側付加容量、及び/又は、前記負極側付加容量の容量を選択することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の電力変換装置の製造方法。 - 前記正極側付加抵抗に直列に正極側付加インダクタを接続し、及び/又は、前記負極側付加抵抗に直列に負極側付加インダクタを接続すると共に、
前記インピーダンスZv、Zg、Zt、及び、Zbで構成されるブリッジ回路の平衡条件が成立、若しくは、略成立するように、前記正極側付加抵抗、及び、前記負極側付加抵抗の抵抗値と、前記正極側付加インダクタ、及び/又は、前記負極側付加インダクタのインダクタンスを選択することを特徴とする請求項11乃至請求項13のうちの何れかに記載の電力変換装置の製造方法。 - 前記正極側付加インダクタ、及び/又は、前記負極側付加インダクタに並列に抵抗を接続することを特徴とする請求項14に記載の電力変換装置の製造方法。
- 前記正極側付加抵抗と前記正極側付加インダクタの直列回路、及び/又は、前記負極側付加抵抗と前記負極側付加インダクタの直列回路に、並列に抵抗を接続することを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の電力変換装置の製造方法。
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