JP2023045939A - 皮膚幹細胞増殖促進剤及び皮膚再生促進剤 - Google Patents

皮膚幹細胞増殖促進剤及び皮膚再生促進剤 Download PDF

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悠一郎 大形
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Katsuma Miyachi
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歩美 眞田
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怜子 川上
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靖司 長谷川
Yasushi Hasegawa
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【課題】皮膚幹細胞に対して高い増殖促進活性と、表皮層と真皮層の両方の皮膚組織の再生促進活性を有する新たな物質を見出し、皮膚幹細胞増殖促進剤及び皮膚再生促進剤として提供することを課題とする。【解決手段】下記の一般式(A):【化1】TIFF2023045939000017.tif3350(式中、R1及びR2は互いに独立して炭素数1~5のアルキル基を示し、R3は水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~9のアリール基、炭素数3~7のシクロアルキル基、又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示す。)で表される化合物を有効成分として含有する、皮膚幹細胞増殖促進剤又は皮膚再生促進剤。【選択図】なし

Description

本発明は、皮膚幹細胞増殖促進剤及び皮膚再生促進剤に関する。
脊椎動物(特に哺乳動物)の組織は、傷害若しくは疾患、又は加齢等に伴い細胞・臓器の損傷が起こった場合、再生系が働き、細胞・臓器の損傷を回復しようとする。この作用に、当該組織に備わる幹細胞が大きな役割を果たしている。幹細胞は、骨髄、肝臓、膵臓、皮膚、脂肪、脳等、あらゆる臓器・組織に存在することが明らかにされ、各臓器・組織の再生及び恒常性維持を司っていることがわかってきた。
近年、臓器・組織に存在する幹細胞が老化することが明らかになりつつある(非特許文献1参照)。具体的に幹細胞の老化とは、増殖能力や分化能力が低下することであり、臓器や組織の再生能力の低下の原因と考えられている。例えば、脳に存在する神経幹細胞や血液細胞を生み出す造血幹細胞の増殖能力は、加齢に伴い著しく低下することが報告されている(非特許文献2、3参照)。また、皮膚や皮下脂肪組織に存在する幹細胞は、加齢により数が減少し、分化能力が低下することが報告されている(非特許文献4、5参照)。よって、各臓器・組織に存在する幹細胞を増殖能力や分化能力を向上させる技術は、組織恒常性維持、損傷組織の修復・再生、各種疾患の予防・治療・改善等、抗加齢(抗老化)の用途に極めて有効であると考えられる。特に、皮膚組織は、複雑な三次元構造を取っており、また、人の身体の最外層に備わっているため、外的傷害によるダメージを受けやすい組織である。また、人の外観や美容に大きく関わる組織であり、この組織の再生技術を進歩させることは極めて重要である。
Beane O.S.ら, PLoS One, 2014年, Vol. 9, 12号, e115963 Molofsky A.V.ら, Nature, 2006年, Vol. 443, 7110号, pp. 448-452 Geiger H.ら, Nat. Rev. Immunol., 2013年, Vol. 13, 5号, pp. 376-389 Akamatsu H.ら,J. Dermatol., 2016年, Vol. 43, pp. 311-313 Yamada T.ら,J. Dermatol. Sci., 2010年,Vol. 58, pp. 36-42
本発明は、皮膚幹細胞に対して高い増殖促進活性と、表皮層と真皮層の両方の皮膚組織の再生促進活性を有する新たな物質を見出し、皮膚幹細胞増殖促進剤及び皮膚再生促進剤として提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、1個のスルホニル基と2個のアルコシキ基を有するベンゼン環を共通構造として含む特定の化合物が、優れた皮膚幹細胞の増殖促進効果と皮膚再生促進効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]下記の一般式(A):
Figure 2023045939000001
(式中、R及びRは互いに独立して炭素数1~5のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~9のアリール基、炭素数3~7のシクロアルキル基、又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示す。)で表される化合物を有効成分として含有する、皮膚幹細胞増殖促進剤。
[2]下記の一般式(A):
Figure 2023045939000002
(式中、R及びRは互いに独立して炭素数1~5のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~9のアリール基、炭素数3~7のシクロアルキル基、又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示す。)で表される化合物を有効成分として含有する、皮膚再生促進剤。
[3]前記一般式(A)で表される化合物が、下記の構造式(1)~(9)のいずれかで表される化合物である、[1]又は[2]に記載の剤。
Figure 2023045939000003
[4]皮膚幹細胞を、下記の一般式(A):
Figure 2023045939000004
(式中、R及びRは互いに独立して炭素数1~5のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~9のアリール基、炭素数3~7のシクロアルキル基、又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示す。)で表される化合物を含有する培地で培養する工程を含む、皮膚幹細胞を増殖させるための培養方法。
[5]皮膚幹細胞を、下記の一般式(A):
Figure 2023045939000005
(式中、R及びRは互いに独立して炭素数1~5のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~9のアリール基、炭素数3~7のシクロアルキル基、又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示す。)で表される化合物を含有する培地で培養する工程を含む、三次元培養皮膚の製造方法。
[6]前記一般式(A)で表される化合物が、下記の構造式(1)~(9)のいずれかで表される化合物である、[4]又は[5]に記載の方法。
Figure 2023045939000006
本発明によれば、表皮幹細胞及び真皮幹細胞を効率的に増殖させることができる皮膚幹細胞増殖促進剤、及び表皮層と真皮層を含む皮膚組織全体の再生を促進することができる皮膚再生促進剤が提供される。従って、本発明の皮膚幹細胞増殖促進剤及び皮膚再生促進剤は、乾燥や紫外線、加齢などによる皮膚の様々な症状(アトピー性皮膚炎や乾燥肌等の皮膚疾患、バリア機能やターンオーバーの低下、シミ、シワ、タルミ、ハリ・弾力の低下など)の治療、改善、及び予防に有効であり、再生医療、再生美容、抗加齢の分野において大きく貢献できるものである。
図1は、化合物未添加条件(コントロール、DMSO)及び化合物添加条件で皮膚幹細胞を培養して作製した三次元培養皮膚の表皮組織切片の染色像及び表皮層の厚さ比(%)、ならびに同三次元培養皮膚の外観及び直径比(%)を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.皮膚幹細胞増殖促進剤及び皮膚再生促進剤
本発明に係る皮膚幹細胞増殖促進剤及び皮膚再生促進剤(以下、「本発明の剤」と記載する場合がある)は、下記の一般式(A):
Figure 2023045939000007
(式中、R及びRは互いに独立して炭素数1~5のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~9のアリール基、炭素数3~7のシクロアルキル基、又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示す。)で表される化合物を有効成分として含有する。
、R、Rにおける「炭素数1~5のアルキル基」とは、炭素原子を1~5個有する直鎖状又は炭素原子を3~5個有する分岐鎖状の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基等が挙げられる。Rにおける「炭素数6~9のアリール基」としては、フェニル基、トリル基、メシチル等が挙げられる。「炭素数3~7のシクロアルキル基」としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。置換若しくは非置換の含窒素複素環基の「含窒素複素環」としては、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基等が挙げられる。含窒素複素環の窒素原子の数は1~3個が好ましい。また、含窒素複素環基の場合の置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルファニル基が挙げられ、スルファニル基は、2-(メチルスルファニル)エチル基が好ましい。
より具体的には、上記一般式(A)で表される化合物として、次の構造式(1)~(9)で表される各化合物(それぞれ化合物1~9という)が挙げられる。
Figure 2023045939000008
本発明において、「皮膚幹細胞」は、表皮、真皮、皮下組織に存在する幹細胞であれば特に限定はされない。本発明において、「表皮幹細胞」とは、表皮角化細胞(ケラチノサイト)への分化が可能な細胞をいい、「真皮幹細胞」とは、真皮線維芽細胞への分化が可能な細胞をいう。皮膚幹細胞の由来は、限定されず、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の哺乳動物の皮膚幹細胞に対して効果を発揮することができる。
本発明の剤は、上記一般式(A)で表される化合物(以下、「化合物A」という)の具体例である、上記化合物1~9のいずれか1種を有効成分として用いてもよいが、2種以上の化合物を組み合わせてもよい。
化合物Aは、生体レベル(生体内)でも又は培養レベル(生体外)でも皮膚幹細胞を増殖させる作用及び皮膚再生促進作用を有するので、本発明の剤は、ヒトを含む哺乳動物(サル、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等)に対して投与することによって皮膚幹細胞の増殖や皮膚再生を促進するための薬剤として、医薬品、医薬部外品、化粧品等への配合や応用が可能である。また、本発明の剤は、皮膚幹細胞の増殖を促進し、皮膚幹細胞や培養皮膚を製造するための培養用培地添加剤、研究用試薬、医療用試薬としても使用することができる。
本発明の剤は、有効成分である化合物Aが、表皮幹細胞又は真皮幹細胞のいずれか又は両方の幹細胞の増殖促進作用を有するので、表皮幹細胞又は真皮幹細胞の増殖能低下又は不全により、正常に表皮角化細胞(ケラチノサイト)又は真皮線維芽細胞が形成されないことに起因する疾患又は病態を治療、改善、及び予防するのに有効である。表皮幹細胞の増殖能低下又は不全により、正常に表皮角化細胞(ケラチノサイト)が形成されないことに起因する疾患又は病態としては、例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬(紅斑、鱗屑、落屑を伴う)、熱傷や創傷の治癒の遅れ、肌荒れ、乾燥肌、敏感肌、角質肥厚、シミ、くすみ、毛穴のひらき等が挙げられる。また、真皮幹細胞の増殖能低下又は不全により、正常に真皮線維芽細胞が形成されないことに起因する疾患又は病態としては、例えば、シワ、タルミ、ほうれい線(鼻唇溝)、マリオネットライン、ハリや弾力の低下、潤いやツヤの不足、ごわつき、くすみ、日光弾性線維症、強皮症、線維肉腫、色素性乾皮症、皮膚組織球腫、線状皮膚萎縮症(皮膚線条)、創傷、熱傷、褥瘡、瘢痕、母斑、肝斑等が挙げられる。
本発明の剤における化合物Aの配合量は、特に限定されないが、例えば、当該薬剤全量に対し、0.00001~10重量%であることが好ましく、0.0001~1重量%とすることがより好ましい。0.00001重量%未満であると効果が十分に発揮されにくい場合がある。
本発明の剤を生体内に投与する場合は、そのまま投与することも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適当な添加物とともに化粧品、医薬部外品、医薬品等の各種組成物に配合して提供することができる。なお、本発明の医薬品には、動物に用いる薬剤、即ち獣医薬も包含されるものとする。
本発明の剤を化粧品や医薬部外品に配合する場合は、その剤形は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、粉末分散系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油二層系、又は水-油-粉末三層系等のいずれでもよい。また、当該化粧品や医薬部外品は、本発明の剤とともに、皮膚外用組成物において通常使用されている各種成分、添加剤、基剤等をその種類に応じて選択し、適宜配合し、当分野で公知の手法に従って製造することができる。その形態は、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、スプレー状等のいずれであってもよい。皮膚外用組成物の配合成分としては、例えば、油脂類(オリーブ油、ヤシ油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等)、ロウ類(ラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ等)、炭化水素類(流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、ワセリン等)、脂肪酸類(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等)、高級アルコール類(ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル等)、有機酸類(クエン酸、乳酸、α-ヒドロキシ酢酸、ピロリドンカルボン酸等)、糖類(マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、N-アセチル-D-グルコサミン等)、蛋白質及び蛋白質の加水分解物、アミノ酸類及びその塩、ビタミン類、植物・動物抽出成分、種々の界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、安定化剤、防腐剤、殺菌剤、香料等が挙げられる。
化粧品や医薬部外品の種類としては、例えば、化粧水、乳液、ジェル、美容液、一般クリーム、日焼け止めクリーム、パック、マスク、洗顔料、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、浴用剤、ボディローション、ボディシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、育毛剤等が挙げられる。
本発明の剤を医薬品に配合する場合は、薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物と混合し、患部に適用するのに適した製剤形態の各種製剤に製剤化することができる。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、その剤形、用途に応じて、適宜選択した製剤用基材や担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤、湿潤化剤、緩衝剤、溶解剤又は溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、噴射剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、香料等を適宜添加し、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。本発明の医薬品を上記の各形態で提供する場合、通常当業者に用いられる製法、たとえば日本薬局方の製剤総則[2]製剤各条に示された製法等により製造することができる。
本発明の医薬品の形態としては、特に制限されるものではないが、例えば錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、液剤、丸剤、乳剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤などの経口剤、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、座剤、軟膏剤、ローション剤、点眼剤、噴霧剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤などの非経口剤などが挙げられる。また、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよく、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
経口投与用製剤には、例えば、デンプン、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖、ソルビトール、マンニトール、結晶セルロース、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、又はデキストリン等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプン、又はヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール、又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤などを用いることができるが、これらに限定はされない。
非経口投与用製剤には、蒸留水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール、ミョウバン水、植物油等の溶剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D-マンニトール等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤などを用いることができるが、これらに限定はされない。
本発明の剤を、前記皮膚関連の損傷や疾患を治療、改善、及び予防するための医薬品として用いる場合に適した形態は外用製剤であり、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、液剤、貼付剤(パップ剤、プラスター剤)、フォーム剤、スプレー剤、噴霧剤などが挙げられる。軟膏剤は、均質な半固形状の外用製剤をいい、油脂性軟膏、乳剤性軟膏、水溶性軟膏を含む。ゲル剤は、水不溶性成分の抱水化合物を水性液に懸濁した外用製剤をいう。液剤は、液状の外用製剤をいい、ローション剤、懸濁剤、乳剤、リニメント剤等を含む。
本発明の医薬品は、上記疾患の発症を抑制する予防薬として、及び/又は、正常な状態に改善する治療薬として機能する。本発明の剤を前述の疾患の治療、改善、及び予防用医薬として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して広い範囲の投与量で経口的に又は非経口的に投与することができる。
本発明の医薬品の投与量は、疾患の種類、投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度などに応じて適宜決定することができる。例えば、成人に経口投与する場合には、一日の投与量は、化合物として0.1~1000mg、好ましくは1~500mg、より好ましくは5~300mgである。
本発明の化粧品、医薬部外品、医薬品における本発明の剤の含有量は特に限定されないが、製剤(組成物)全重量に対して、上記化合物の含有量として0.001~30重量%が好ましく、0.01~10重量%がより好ましい。上記の量があくまで例示であって、組成物の種類や形態、一般的な使用量、効能・効果などを考慮して適宜設定・調整すればよい。また、製剤化における有効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加してもよく、作業性を考えて適宜選択すればよい。
2.皮膚幹細胞の培養方法
本発明はまた、皮膚幹細胞を、上記化合物Aを含有する培地で培養する工程を含む、皮膚幹細胞の培養方法に関する。
本発明の培養方法において、皮膚幹細胞を培養する培地、また同時に用いる添加剤としては、特に限定はされず、皮膚幹細胞(表皮幹細胞又は真皮幹細胞)の増殖のために一般的に使用されている培地及び添加剤を用いればよい。
具体的には、皮膚幹細胞を培養する培地には、幹細胞の生存及び増殖に必要な成分(無機塩、炭水化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン、脂肪酸)を含む基本培地、例えば、Dulbecco' s Modified Eagle Medium(D-MEM)、Minimum Essential Medium(MEM)、RPMI 1640、Basal Medium Eagle(BME)、Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12(D-MEM/F-12)、Glasgow Minimum Essential Medium(Glasgow MEM)、ハンクス液(Hank's balanced salt solution)等が用いられる。また、上記培地には、細胞の増殖速度を増大させるために、必要に応じて、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)等の増殖因子、腫瘍壊死因子(TNF)、ビタミン類、インターロイキン類、インスリン、トランスフェリン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コラーゲン、ウシ血清アルブミン(BSA)、フィブロネクチン、プロゲステロン、セレナイト、B27-サプリメント、N2-サプリメント、ITS-サプリメント等を添加してもよく、また、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン等)等を添加してもよい。培地の各成分は、各々適する方法で滅菌して使用する。
また、上記以外には、1~20%の含有率で血清(例えば、10%FBS)が含まれることが好ましい。しかし、血清はロットの違いにより成分が異なり、その効果にバラツキがあるため、ロットチェックを行った後に使用することが好ましい。
皮膚幹細胞を培養する培地は、市販品を用いることもできる。市販品の培地としては、インビトロジェン製の間葉系幹細胞基礎培地や、三光純薬製の間葉系幹細胞基礎培地、TOYOBO社製のMF培地、Sigma社製のハンクス液(Hank’s balanced salt solution)等を用いることができる。
上記の本発明の皮膚幹細胞増殖促進剤あるいは本発明の培養方法に準じて、上記の化合物Aを、単独で、あるいは培地と別々に又は培地と混合し、皮膚幹細胞の増殖促進のための試薬キットとして提供することもできる。当該キットは、必要に応じて取扱い説明書等を含むことができる。あるいは、上記の化合物Aを培地と混合し、皮膚幹細胞の増殖促進用培地として提供することもできる。
皮膚幹細胞の培養に用いる培養器は、幹細胞の培養が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、フラスコ、シャーレ、ディッシュ、プレート、チャンバースライド、チューブ、トレイ、培養バッグ、ローラーボトルなどが挙げられる。培養器は、細胞非接着性であっても接着性であってもよく、目的に応じて適宜選択される。細胞接着性の培養器は、細胞との接着性を向上させる目的で、細胞外マトリックス等による細胞支持用基質などで処理したものを用いてもよい。細胞支持用基質としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ラミニン、フィブロネクチンなどが挙げられる。
皮膚幹細胞の培養に使用される培地に対する化合物Aの添加濃度は、上述の本発明に係る皮膚幹細胞増殖促進剤における化合物Aの含有量に準じて適宜決定することができるが、例えば1~1000μg/mL、好ましくは10~400μg/mLの濃度が挙げられる。また、幹細胞の培養期間中、化合物Aを定期的に培地に添加してもよい。
皮膚幹細胞の培養条件は、幹細胞の培養に用いられる通常の条件に従えばよく、特別な制御は必要ではない。例えば、培養温度は、特に限定されるものではないが約30~40℃、好ましくは約36~37℃である。COガス濃度は、例えば約1~10%、好ましくは約2~5%である。なお、培地の交換は2~3日に1回行うことが好ましく、毎日行うことがより好ましい。前記培養条件は、幹細胞が生存及び増殖可能な範囲で適宜変動させて設定することもできる。
皮膚幹細胞の増殖促進は、例えば、本発明に係る皮膚幹細胞増殖促進剤の非存在下で培養した幹細胞と比較して、本発明に係る皮膚幹細胞増殖促進剤の存在下で培養した該幹細胞の細胞数が有意に増加されているか否かで評価することができる。細胞数の測定は、例えば、MTT法やWST法などにより、市販の細胞数測定キットを用いて行うことができる。測定の結果、培養開始時の皮膚幹細胞の細胞数と本発明の皮膚幹細胞増殖促進剤の存在下で所定時間培養後の幹細胞の細胞数との相対比が、本発明の皮膚幹細胞増殖促進剤の非存在下で培養した場合の同相対比(コントロール)よりも大きい場合に皮膚幹細胞の増殖を促進できたと判定することができる。
本発明の培養方法により効率的に皮膚幹細胞を増殖させることができ、また、培養により製造された皮膚幹細胞は、一般的に体外で培養後、創傷部や組織を再生させたい部位に直接注射などで移植することが可能である。すなわち、本発明の培養方法にて製造された皮膚幹細胞は移植材料(細胞移植剤)として用いることができる。
3.三次元培養皮膚の製造方法
本発明はまた、皮膚幹細胞を、上記化合物Aを含有する培地で培養する工程を含む、三次元培養皮膚の製造方法に関する。皮膚幹細胞は、皮膚を構成する表皮、真皮、皮下組織に存在する皮膚細胞、具体的には表皮角化細胞(ケラチノサイト)及び真皮線維芽細胞中に存在する幹細胞を用いることができる。皮膚細胞の由来としては、哺乳動物であれば特に限定はされず、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ等が挙げられるが、ヒトであることが好ましい。また、使用する皮膚細胞は初代培養の細胞であってもよいが、ロット差を解消する目的で不死化した細胞を用いることが好ましい。
不死化は、不死化遺伝子を培養皮膚細胞に導入することによって行うことができる。ここで、「不死化遺伝子」とは、細胞を不死化し、無限増殖能を獲得させる遺伝子をいい、表皮角化細胞(ケラチノサイト)などの上皮細胞の培養皮膚細胞を不死化させ、かつ細胞死を誘導しない遺伝子であれば特に限定はされない。また、不死化遺伝子は、外因性遺伝子であり、細胞外から新たに導入される不死化遺伝子を意味する。さらに、不死化遺伝子は、ヒト以外に由来する不死化遺伝子であってもよく、標的細胞内で発現可能な形態に改変された不死化遺伝子であってもよい。本発明において用いる不死化遺伝子としては、例えば、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子、テロメラーゼの発現又は活性を調節する遺伝子(例えば、Myc遺伝子、Ras遺伝子等)、ウイルス遺伝子(SV40T、HPV E6-E7、EBV等)が挙げられるが、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子が好ましく、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子がより好ましい。
また、不死化遺伝子に加えて、細胞周期の移行促進因子をコードする遺伝子をさらに導入することが好ましい。細胞周期の移行促進因子(細胞周期の正の調節因子)としては、
細胞周期のG1からS期への進行に関与するサイクリン依存性キナーゼ(Cyclin-Dependent Kinase:CDK)とその結合パートナーであるサイクリン(Cyclin:CCN)が挙げられる。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)とサイクリン(CCN)は、いずれか一方であっても両方であってもよい。本発明において用いるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)としては、CDK1、CDK2、CDK3、CDK4、CDK6及びCDK7が挙げられ、これらの中でもCDK4及びCDK6が好ましく、CDK4がより好ましい。また、サイクリン(CCN)としては、上記CDKと結合して活性化できるものであればよく、例えばD型サイクリン(CCND1,CCND2,CCND3)が挙げられる。本発明において用いるCDK遺伝子及び/又はCCN遺伝子のヌクレオチド配列の情報は、NCBIデータベースから入手可能である。また、CDK遺伝子及び/又はCCN遺伝子は、好ましくは哺乳動物由来であることが好ましく、ヒト由来であることがより好ましい。
上記の不死化遺伝子や細胞周期の移行促進因子をコードする遺伝子を皮膚細胞に導入する方法は、一般に遺伝子導入に用いられている方法であれば限定はされないが、例えば、ウイルスベクターを用いる方法、リポフェクション法、リン酸カルシウム共沈法、エレクトロポレーション法などが挙げられるが、ウイルスベクターを用いる方法が好ましい。ウイルスベクターとしては、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター等が挙げられる。
次に、不死化皮膚細胞の集団から目的とする不死化皮膚幹細胞のシングルセルクローニングにより単一細胞を作製する。単一細胞の作製は、不死化皮膚細胞を分化誘導因子で分化させた際の分化マーカーの発現量を指標に、分化能の高い不死化幹細胞を選定・分離することにより行うことができる。不死化表皮幹細胞を作製する場合は、分化マーカーとして例えばフィラグリン(FLG)、インボルクリン(IVL)等を用いることができ、不死化真皮幹細胞を作製する場合は、分化マーカーとしてI型コラーゲン(COL1A1)等を用いることができる。
次に、作製した不死化表皮幹細胞を用いて三次元培養を行う。三次元培養は、増殖培養工程と分化誘導工程からなり、分化誘導工程の培地に化合物Aを添加する以外は、通常の三次元培養皮膚の作製において当分野で知られている方法に従って行うことができる。
まず、増殖培養工程前に、上記で得られた不死化真皮幹細胞を培養インサート内に添加して培養し真皮線維芽細胞の真皮層を形成させる。この際、不死化真皮幹細胞の支持体として、コラーゲンゲル、コラーゲンスポンジ等を用いることもできる。増殖培養工程においては、上記で得られた不死化表皮幹細胞(以下、単に「表皮幹細胞」という)を、真皮層上において浸漬培養、気液培養等を組み合わせてコンフルエントになるまで増殖培養させる。具体的には、表皮幹細胞を、細胞増殖用培地に分散し、この細胞分散液を、真皮層が形成されたインサート内に播種し、培養インサートの外部も同じ細胞増殖用培地で満たして、表皮幹細胞が細胞増殖用培地中に浸漬した状態で培養する。液透過性膜によって、培養インサートの内部と外部とは培地が透過可能なように連通している状態が維持される。ここで、真皮層上部に添加する表皮幹細胞の数は、特に限定されないが、通常15×10~120×10細胞/cmが好ましく、30×10~90×10細胞/cmがより好ましい。
培養インサートの液透過性膜は、播種した表皮幹細胞が接着又は固定され、その上で表皮幹細胞が増殖でき、支持体となりうるものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン等の膜が挙げられる。また、当該膜にコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン等の細胞外マトリックスやポリL-リジン等の細胞の接着を補助するものをコーティングしてもよい。
増殖培養は、例えば1~6日間、好ましくは2~4日間行う。また、この間、培地を適宜交換してもよい。培養インサートにおいて増殖した表皮幹細胞がコンフルエントの状態にあるかどうかは、CnT-ST-100 stain kit(CELLnTEC社製)等の細胞染色試薬により確認することができる。
次に、分化誘導工程では、培養インサートの内部及び外部の培地を細胞増殖用培地から
化合物Aを添加した細胞分化用培地に変更し、当該培地にて表皮幹細胞を6~48時間程度浸漬培養した後、培養インサートの内部及び外部のすべての培地をアスピレーターで除去し、インサート外部に細胞分化用培地を添加し、インサート内部の表皮幹細胞は空気(大気)に暴露し、5~12日間培養して、表皮角化細胞(ケラチノサイト)に分化誘導する。
上記の細胞増殖用培地としては、例えば、表皮角化細胞(ケラチノサイト)の増殖や継代培養に適した基本培地であれば、特に限定はされないが、無血清・低カルシウム濃度の基本培地であることが好ましく、例えば、MCDB153培地(Sigma社製)、HuMedia-KG2(クラボウ社製)、正常ヒト表皮角化細胞用無血清培地(DSファーマバイオメディカル社製)、Keratinocyte-SFM(ライフテクノロジーズ社製)等の市販の培地を使用すればよい。上記培地には、増殖因子として塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、白血球遊走阻止因子(LIF)、Stem Cell Factor(SCF)等が含有されていてもよい。また、増殖速度を増大させるために、必要に応じて、上皮細胞増殖因子(EGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、ビタミン類、インターロイキン類、インスリン、トランスフェリン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コラーゲン、ウシ血清アルブミン(BSA)、L-グルタミン、フィブロネクチン、プロゲステロン、セレナイト、B27-サプリメント、N2-サプリメント、ITS-サプリメントが含有されてもよい。また、必要に応じて、抗生物質を添加してもよい。細胞増殖用培地のカルシウム濃度は、約0.03~0.15mMが好ましい。
また、上記の細胞分化用培地としては、表皮角化細胞への分化誘導に適した基本培地であれば、特に限定はされないが、CnT-Prime 3D Barrier Culture Medium(CELLnTEC社製)等の市販の培地を使用すればよい。また、細胞分化用培地のカルシウム濃度は、約1.2~1.5mMが好ましい。
増殖及び分化誘導のための培養温度は、細胞の由来により異なるが、例えばヒト由来の場合30℃~40℃が好ましく、36~38℃がより好ましい。また、COガス濃度は、例えば約1~10%が好ましく、約2~5%がより好ましい。
上記の表皮幹細胞を培養して重層化した表皮角化細胞を作製する工程は、ケラチノサイト三次元培養スターターキット(フナコシ社製)等の市販の培養表皮作製用キットを利用してもよく、該キットに梱包された培地、培養インサートを用いて該キットに添付の指示書に従って行うことができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]不死化表皮幹細胞及び真皮線維幹細胞の作製及び幹細胞性の評価
(1)不死化表皮幹細胞及び不死化真皮幹細胞の樹立
HumediaKG2(クラボウ社製)に付属の添加因子を添加した培地で培養した初代培養ヒトケラチノサイトと、10%FBSを含有するDMEM培地(ナカライテスク社製)で培養した初代培養ヒト線維芽細胞の不死化を行った。初代培養ヒトケラチノサイト及び初代培養ヒト線維芽細胞の不死化は、それぞれテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)とCDK4(cyclin dependent kinase 4)とサイクリンD1の3遺伝子を導入することにより行った。不死化遺伝子の培養皮膚細胞への導入は、各不死化遺伝子をコードする遺伝子を挿入したベクターを作製し、これをトランスフェクション法によって培養皮膚細胞に導入することにより行った。上記の条件で不死化した細胞集団からシングルセルクローニングによって単一細胞を獲得した。獲得した不死化ケラチノサイトについては3mMのカルシウムで分化させた際の分化マーカー(FLG、IVL)の発現量を指標に、不死化線維芽細胞についてはTGFβで分化させた際のコラーゲン遺伝子(COL1A1)の発現量を指標に分化能の高い不死化表皮幹細胞モデル及び不死化真皮幹細胞モデルの単一クローン株を選定した。
(2)幹細胞に対する増殖促進効果の評価
(1)で作製した不死化表皮幹細胞モデル及び不死化真皮幹細胞モデルを、96ウェルプレート(FALCON社製)に各細胞を3×10個/ウェルで播種した。翌日、細胞が生着していることを確認し、終濃度が1μMとなるように下記表1に示す被験物質(化合物1~9)を溶解させた培地を添加し、48時間COインキュベーター内で培養を行った。培養後、Cell Count Normalization Kit(DOJINDO社製)を用いて、細胞の増殖率の解析を行った。被験物質未添加で溶媒(DMSO)のみを添加した条件のウェルをコントロールとして使用し、コントロールを100(%)とした場合の、被験物質添加時の細胞数の増減(%)を算出し、幹細胞増殖促進効果の評価を行った。これらの試験結果を表1に示す。
Figure 2023045939000009
Figure 2023045939000010
表1に示すように、化合物1~9は、皮膚幹細胞(表皮幹細胞及び/又は真皮幹細胞)に対していずれも優れた増殖促進効果が認められた。
[実施例2]三次元培養皮膚の作製
(1)三次元培養皮膚の作製
Cellmatrix Type 1-A(新田ゼラチン社製)に、実施例1で作製した不死化真皮幹細胞モデルを1×10cells/mLとなるように懸濁し、セルカルチャーインサート(グライナー社製)内に注ぎ、人工真皮を作製した。
次に、カルチャーインサート外側に増殖培地:CnT-Prime Epithelial Culture Medium(CELLnTEC社製)を加え、続いてカルチャーインサート上部に、実施例1で作製した不死化表皮幹細胞モデルを1×10cells/mLとなるように同培地に懸濁した培地を加え、COインキュベーター内で48時間インキュベートした。培養後、カルチャーインサート内外の培地を分化培地:CnT-Prime 3D Barrier Culture Medium(CELLnTEC社製)に置換し、COインキュベーター内で24時間インキュベートした。その後、カルチャーインサート内側の培地を除去し、空気暴露を行った。カルチャーインサートの外側には終濃度1μMとなるように被験物質(化合物8、9)を溶解した培地に置換して培養を行い、2日毎に培地を交換しながら8日間培養することで三次元培養皮膚の作製を行った。
(2)表皮組織再生効果の評価
(1)で作製した三次元培養皮膚を10%中性緩衝ホルマリン液(富士フイルム和光純薬社製)に浸して、24時間固定処理を行った。固定後、組織包埋機によりパラフィンブロックを作成し、ミクロトームにより薄切切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色キット(ScyTeK社製)を用いて染色した。顕微鏡にて切片の染色像を撮影し、画像解析ソフトを用いて、三次元培養皮膚の表皮層の厚さを測定した。DMSOのみを添加した培地を用いて作製した表皮層の厚さをコントロール(100%)として、被験物質を添加した培地を用いて作製した表皮層の厚さの相対値(%)を算出した。
(3)真皮組織再生効果の評価
(1)で作製した三次元培養皮膚の外観を実体顕微鏡にて天面の撮影を行い、画像解析ソフトを用いて、三次元培養皮膚の天面の直径を測定した。DMSOのみを添加した培地を用いて作製した三次元培養皮膚の直径をコントロール(100%)として、被験物質を添加した培地を用いて作製した三次元培養皮膚の直径の相対値(%)を算出した。なお三次元培養皮膚の直径が小さいほど、真皮層の再生率が高いことを示す。
これらの試験結果(表皮組織切片の染色像、表皮層の厚さ、三次元培養皮膚の外観、直径)を図1に示す。
図1に示されるように、化合物8、9を添加した培地を用いて作製した三次元培養皮膚は、表皮層の厚さがコントロールに比べて顕著に増加した。また、同三次元培養皮膚の直径がコントロールに比べて小さいことから、真皮層の再生が促進されたことが示された。
本発明の皮膚幹細胞増殖促進剤及び皮膚再生促進剤は、生体内で又は生体外で、皮膚幹細胞の増殖を促進し、皮膚組織の再生を促進できる。よって、本発明は、表皮幹細胞や真皮幹細胞の機能低下や不全に起因する皮膚疾患や病態を治療、改善、及び予防するための化粧品や医薬品の製造分野、再生医療や再生美容のための移植材料の製造分野において利用できる。

Claims (6)

  1. 下記の一般式(A):
    Figure 2023045939000011
    (式中、R及びRは互いに独立して炭素数1~5のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~9のアリール基、炭素数3~7のシクロアルキル基、又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示す。)で表される化合物を有効成分として含有する、皮膚幹細胞増殖促進剤。
  2. 下記の一般式(A):
    Figure 2023045939000012
    (式中、R及びRは互いに独立して炭素数1~5のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~9のアリール基、炭素数3~7のシクロアルキル基、又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示す。)で表される化合物を有効成分として含有する、皮膚再生促進剤。
  3. 前記一般式(A)で表される化合物が、下記の構造式(1)~(9)のいずれかで表される化合物である、請求項1又は2に記載の剤。
    Figure 2023045939000013
  4. 皮膚幹細胞を、下記の一般式(A):
    Figure 2023045939000014
    (式中、R及びRは互いに独立して炭素数1~5のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~9のアリール基、炭素数3~7のシクロアルキル基、又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示す。)で表される化合物を含有する培地で培養する工程を含む、皮膚幹細胞を増殖させるための培養方法。
  5. 皮膚幹細胞を、下記の一般式(A):
    Figure 2023045939000015
    (式中、R及びRは互いに独立して炭素数1~5のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~9のアリール基、炭素数3~7のシクロアルキル基、又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示す。)で表される化合物を含有する培地で培養する工程を含む、三次元培養皮膚の製造方法。
  6. 前記一般式(A)で表される化合物が、下記の構造式(1)~(9)のいずれかで表される化合物である、請求項4又は5に記載の方法。
    Figure 2023045939000016
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