JP2023034205A - イオンセンサおよびイオンの測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数のイオンセンサ間で測定結果のばらつきが小さいイオンセンサを提供する【解決手段】本発明のイオンセンサ100は、電流を測定して対象イオン31の測定を行う電流測定型のイオンセンサであって、対象イオン31を含む試料30と界面を形成することが可能な有機相を含む有機相保持層13と、有機相保持層13が積層され、無機化合物で構成される第1のインサーション材料を含む第1電極11と、有機相保持層13と対向するように配置され、試料30と接触する第2電極12と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、イオンセンサおよびイオンの測定方法に関する。
特許文献1には、対象イオンを含む試料と界面を形成することが可能な有機相を含む有機相保持層と、有機相保持層が積層された有機相用電極と、試料と接触する水相用電極と、を備え、有機相保持層と水相用電極とが、対向するように配置されているイオンセンサが開示されている。この特許文献1のイオンセンサでは、有機相用電極の有機相内における電極電位を固定するために、有機相用電極と有機相保持層との間に導電性高分子膜が設けられている。
特開2012-122883号公報
特許文献1のような従来のイオンセンサでは、同じ試料を複数のイオンセンサで測定した場合に、イオンセンサ間で測定結果のばらつきが生じるおそれがあった。ここで、例えば、イオンセンサを使い捨てとし、測定の都度、イオンセンサを交換する場合には、複数のイオンセンサ間で測定結果のばらつきが生じると、測定結果の変動が、試料中の測定対象イオンの濃度の変動によるものか、イオンセンサ間での測定結果のばらつきによるものかの区別が難しくなるという課題があった。
この発明の目的は、複数のイオンセンサ間で測定結果のばらつきが小さいイオンセンサおよびイオンの測定方法を提供することにある。
本発明のイオンセンサ(100、200)は、電流を測定して対象イオン(31)の測定を行う電流測定型のイオンセンサであって、対象イオン(31)を含む試料(30)と界面を形成することが可能な有機相を含む有機相保持層(13)と、有機相保持層(13)が積層され、無機化合物で構成される第1のインサーション材料を含む第1電極(11)と、有機相保持層(13)と対向するように配置され、試料(30)と接触する第2電極(12)と、を備える。
本発明のイオンの測定方法は、イオンセンサ(100、200)を用いたイオンの測定方法であって、有機相保持層(13)と第2電極(12)とに試料(30)を接触させる工程と、第1電極(11)と第2電極(12)との間に電圧を印加することにより、試料(30)に含まれる対象イオンを有機相に移動させる工程と、第1電極と第2電極との間に流れる電流を測定する工程と、を備える。
本発明によれば、複数のイオンセンサ間で測定結果のばらつきが小さいイオンセンサおよびイオンの測定方法を提供することができる。
イオンセンサを示した断面模式図である。 イオンセンサを示した試料滴下前の斜視図である。 イオンセンサを示した試料滴下時の斜視図である。 イオンセンサを示した試料滴下後の斜視図である。 イオンセンサのイオンの測定方法を説明するための図である。 測定例1において、実施例1のイオンセンサにより電流測定を行った結果を示したボルタモグラムである。 測定例1において、実施例2のイオンセンサにより電流測定を行った結果を示したボルタモグラムである。 測定例1において、比較例のイオンセンサにより電流測定を行った結果を示したボルタモグラムである。 測定例1において、実施例3のイオンセンサにより電流測定を行った結果を示したボルタモグラムである。 測定例2において、実施例3のイオンセンサにより電流測定を行った結果を示したボルタモグラムである。 測定例2において、比較例のイオンセンサにより電流測定を行った結果を示したボルタモグラムである。 測定例3において、実施例3のイオンセンサにより電流測定を行った結果を示したボルタモグラムである。 測定例3において、比較例のイオンセンサにより電流測定を行った結果を示したボルタモグラムである。 測定例3において、実施例2のイオンセンサにより電流測定を行った結果を示したボルタモグラムである。 測定例4において、実施例4のイオンセンサにより電流測定を行った結果を示したボルタモグラムである。 測定例5において、実施例4のイオンセンサにより電流測定を行った結果を示したボルタモグラムである。 測定例5において、実施例5のイオンセンサにより電流測定を行った結果を示したボルタモグラムである。 変形例によるイオンセンサを示した平面図である。 変形例によるイオンセンサを示した側面模式図である。 図18の300-300線に沿った断面模式図である。 第2電極が積層された絶縁基板を示した底面図である。 図21の310-310線に沿った断面模式図である。 変形例によるイオンセンサの接着層を示した平面図である。 第1電極及び有機相保持層が積層された絶縁基板を示した平面図である。 図24の320-320線に沿った断面模式図である。
以下、図面を参照しながら、本発明に係るイオンセンサおよびイオンの測定方法の実施形態の一例について詳細に説明する。なお、本発明は以下で説明する実施形態および変形例に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。たとえば、以下で説明する複数の実施形態および変形例の各構成要素を選択的に組み合わせることは本開示の範囲内である。
(イオンセンサの構成)
図1は、イオンセンサ100の断面模式図を示す。図1に示すように、イオンセンサ100は、電流を測定して試料30に含まれる対象イオンの測定を行う電流測定型のイオンセンサである。
イオンセンサ100は、第1電極11と、第2電極12と、有機相保持層13と、シート14と、絶縁基板15と、絶縁基板16と、を備える。イオンセンサ100の第1電極11は、導線23を介して、電流を測定する電流測定部22に接続されている。第2電極12は、導線24を介して、電圧を印加する電圧印加部21に接続されている。電流測定部22は、電流測定器を含む。電圧印加部21は、印加電圧が可変である直流電源装置を含む。電圧印加部21および電流測定部22は、導線25で互いに接続されている。
第1電極11は、第2電極12に対向するように配置されている。第1電極11の第2電極12側には、有機相保持層13が積層されている。
第1電極11は、有機相用電極として機能する。第1電極11は、電極材と、電極材にインサーション材料が塗布されることにより形成されるインサーション材料の膜(この膜を、インサーション塗布膜とよぶ)と、を含む。電極材は、たとえば、カーボンペーパにより形成されている。インサーション塗布膜は、インサーション材料のみで構成されていてもよいし、固体電解質、導電剤および結着剤の少なくとも一つをさらに含んでいてもよい。
なお、第1電極11は、インサーション材料を含んでいればよい。例えば、無機化合物により構成されるインサーション材料自体に導電性の材料が含まれていて、インサーション材料が良好な導電性を有する場合には、電極材は設けなくてもよい。この場合、インサーション材料を結着剤により結着し、絶縁基板15に配置することが好ましい。
電極材は、導電性材料を含有するものである限り、特に制限されない。導電性材料としては、たとえば、白金、金、銀、銅、炭素、パラジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、インジウム、錫などの金属、これらの金属の少なくとも1つを含む合金、これらの金属の塩化物などの金属ハロゲン化物、これら金属の酸化物(例えば、酸化インジウムスズ)などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、白金、金、銀、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、炭素等が挙げられる。導電性材料は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
導電性材料の含有量は、電極材100質量部に対して、たとえば、70質量部以上100質量部以下、好ましくは85質量部以上100質量部以下、より好ましくは、95質量部以上100質量部以下である。
電極材の形状は特に制限されないが、好ましくは、扁平状である。電極材の層構造は特に制限されない。電極材は、単一の組成からなる1つの層からなる単層構造であってもよいし、互いに同一又は異なる組成からなる複数の層からなる複層構造であってもよい。電極材の厚みは、導電性が著しく損なわれない限り、特に制限されない。電極材の厚みは、たとえば、1μm以上10μm以下である。製造効率、製造コスト等の観点から、電極材の厚みは、好ましくは、1μm以上5μm以下である。
インサーション材料は、無機化合物で構成される限り、特に制限されない。インサーション材料として、好ましくは、電気化学的な反応により、構造内で測定イオンの挿入(インサーション)および脱離を行うことができるもの(イオン-電子伝導体)を使用することができる。つまり、インサーション材料は、イオン-電子伝導体であってもよい。この場合、インサーション材料は、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンに対するイオン-電子伝導体であってもよい。
インサーション材料として、たとえば、金属酸化物、酸素レドックス材料、プルシアンブルー類似体等が挙げられ、これらの中でも好ましくは金属酸化物が挙げられる。これらは、測定する対象イオンに応じて、適宜選択することができる。
インサーション材料の金属酸化物として、たとえば、MMnO、MNiO、MCoO、MNi0.5Mn0.5、MFeO、M2/3Fe1/3Mn2/3、MNi1/3Co1/3Mn1/3、MNi0.5Ti0.5、MVO、MCrO、MFePO(ただし、Mは、各々独立に、NaまたはKであり、xは任意の正数を示す)等が挙げられる。これらの中でも、より好ましくは、MMnOが挙げられ、特に好ましくは、NaMnOが挙げられる。
xは、通常は0<x≦1である。xは、好ましくは、0.15以上0.66以下であり、より好ましくは0.2以上0.5以下であり、さらに好ましくは、0.22以上0.28以下、0.30以上0.36以下、または0.41以上0.47以下であり、特に好ましくは、0.245以上0.255以下、0.325以上0.335以下、または0.435以上0.445以下である。
インサーション材料の金属酸化物の結晶構造は、イオンセンサ100の電極として使用可能なものである限り、特に制限されない。結晶構造としては、たとえば、直方晶系結晶構造、正方晶系結晶構造、三方晶系結晶構造、六法晶系結晶構造、立法晶系結晶構造、三斜晶系結晶構造、単斜晶系結晶構造等が挙げられ、これらの中でも好ましくは直方晶系結晶構造が挙げられる。
インサーション材料の酸素レドックス材料は、遷移金属だけでなく酸化物イオンの酸化還元反応を利用することができる材料であり、この限りにおいて特に制限されない。酸素レドックス材料として、たとえば、NaMn、Na2/3Mg0.28Mn0.72、NaRuO、Na1.3Nb0.3Mn0.4、Na0.6Li0.2Mn0.8等が挙げられる。
インサーション材料のプルシアンブルー類似体は、シアノ基が遷移金属イオンを架橋した構造体であり、この限りにおいて特に制限されない。プルシアンブルー類似体として、たとえば、NaMn[Fe(CN)]、NaCO[Fe(CN)0.90・2.9HO(ただし、yは任意の正数を示す)、K-FeHCF(鉄ヘキサシアノ鉄カリウム)、K-NiHCF(ニッケルヘキサシアノ鉄カリウム)、K-CuHCF(銅ヘキサシアノ鉄カリウム)、Na-NiHCF(ニッケルヘキサシアノ鉄ナトリウム)、Ca-NiHCF(ニッケルヘキサシアノ鉄カルシウム)等が挙げられる。
インサーション材料の形態は特に制限されないが、インサーション材料は好ましくは粒子である。インサーション材料の粒子は、たとえば、ウロコ状、柱状、球状、楕円体状など任意の形状である。
インサーション材料の粒子の平均粒径は、固体電解質との密着性を高め、イオンセンサ100の電極としての性能を高めることができるという観点から、好ましくは、1μm以上20μm以下、より好ましくは、2μm以上15μm以下、さらに好ましくは、5μm以上12μm以下である。なお、平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定することができる。
インサーション材料の材質および形状は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
インサーション材料の含有量は、インサーション塗布膜の100質量部に対して、たとえば、20質量部以上70質量部以下、好ましくは、25質量部以上65質量部以下、より好ましくは、30質量部以上60質量部以下である。
固体電解質として、たとえば、イオン伝導性セラミックスを使用することができる。固体電解質としてのイオン伝導性セラミックスは、イオンが伝導可能な固体である限り、特に制限されない。イオン伝導性セラミックスとして、測定対象のイオンを伝導可能なものを使用することができる。
イオン伝導性セラミックスは、たとえば、カリウムイオン伝導性セラミックス、ナトリウムイオン伝導性セラミックス、リチウムイオン伝導性セラミックス、カルシウム伝導性セラミックス、マグネシウム伝導性セラミックス等が挙げられる。また、イオン伝導性セラミックスとして、好ましくは、カリウムイオン伝導性セラミックス、ナトリウムイオン伝導性セラミックス、リチウムイオン伝導性セラミックス等が挙げられる、また、イオン伝導性セラミックスとして、特に好ましくは、カリウムイオン伝導性セラミックスが挙げられる。
イオン伝導性セラミックスは、測定対象のイオンに応じて、適宜選択することができる。イオン伝導性セラミックスとして、たとえば、β”アルミナ、βアルミナ、ペロブスカイト型酸化物、NASICON型酸化物、ガーネット型酸化物等の酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、安定化ジルコニア、イオン交換体等が挙げられる。なお、イオン交換体としては、イオン交換現象を示す物質である限り特に制限されず、たとえば、ゼオライト(ゼオライトは内部にNaイオン、Kイオン、Hイオンなどカチオンを含むことができる)、イオン交換樹脂酸等が挙げられる。
イオン伝導性セラミックスの中でも、水に対する安定性が高く、イオンセンサ100の電極として好適に使用できるという観点から、イオン伝導性セラミックスは、特に好ましくは、β”アルミナ、βアルミナ、ゼオライト等が挙げられる。
β”/βアルミナは、イオン伝導層とスピネルブロックとからなる層状構造を含み、イオン伝導層内でイオン(測定する対象イオン)の移動が起こる。β”アルミナとβアルミナとは結晶構造において相違しており、これらの内β”アルミナの方が、結晶構造内のナトリウムイオン含有量が高く、また、相対的にイオン導電性が高い。β”/βアルミナは、好ましくは、ナトリウムイオンが伝導することができるNa-β”/βアルミナである。Na-β”アルミナは、通常、化学組成がNaO・xAl(x=5以上7以下)である物質である。また、Na-βアルミナは、通常、化学組成がNaO・xAl(x=9以上11以下)である物質である。
イオン伝導性セラミックスの形態は特に制限されないが、好ましくは粒子である。固体電解質としてのイオン伝導性セラミックスの粒子は、たとえば、ウロコ状、柱状、球状、楕円体状など任意の形状である。
イオン伝導性セラミックスの粒子の平均粒径は、インサーション材料との密着性を高め、イオンセンサ100の電極としての性能を高めることができるという観点から、好ましくは、0.02μm以上7μm以下、より好ましくは、0.05μm以上5μm以下、さらに好ましくは、0.1μm以上3μm以下である。なお、平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定することができる。
インサーション塗布膜の層においては、イオン伝導性セラミックスの平均粒径がインサーション材料の平均粒径より小さいことが好ましい。具体的には、インサーション材料の平均粒径に対するイオン伝導性セラミックスの平均粒径の比(=イオン伝導性セラミックスの平均粒径/インサーション材料の平均粒径)は、たとえば、0.001以上0.3以下、好ましくは、0.005以上0.1以下、より好ましくは、0.01以上0.05以下である。または、インサーション材料の平均粒径に対するイオン伝導性セラミックスの平均粒径の比(=イオン伝導性セラミックスの平均粒径/インサーション材料の平均粒径)は、たとえば、0.001以上0.7以下、好ましくは、0.005以上0.6以下、より好ましくは、0.01以上0.05以下である。
イオン伝導性セラミックスの材質および形状は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
イオン伝導性セラミックスの含有量は、インサーション塗布膜の100質量部に対して、たとえば、15質量部以上70質量部以下、好ましくは、20質量部以上65質量部以下、より好ましくは、25質量部以上60質量部以下である。
インサーション塗布膜におけるインサーション材料とイオン伝導性セラミックスとの質量比(インサーション材料:イオン伝導性セラミックス)は、たとえば、5:1~1:5、好ましくは、2:1~1:2、より好ましくは、1.5:1~1:1.5、さらに好ましくは、1.2:1~1:1.2、よりさらに好ましくは、1.1:1~1:1.1である。
なお、固体電解質として、イオン伝導性セラミックスに代えて、または、イオン伝導性セラミックスとともに、イオン交換を行うことが可能なイオン交換体を用いてもよい。イオン交換体としては、フッ石類、酸性白土、パームチットなどの無機物でもよいし、セルロースイオン交換体、アルギン酸などの有機物でもよい。
インサーション塗布膜は、更に、導電剤を含むことが好ましい。これにより、インサーション塗布膜の導電性を向上させ、イオンの出入りによる体積変化に対する緩衝作用を向上させ、測定の再現性を高めることができる。
導電剤としては、特に制限されないが、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボン粉末、およびグラファイト粉末等の炭素材料、金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の有機導電性材料等を用いることができる。
導電剤の成分は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
導電剤の含有量は、インサーション塗布膜100質量部に対して、たとえば、0.1質量部以上20質量部以下、好ましくは、1質量部以上15質量部以下、より好ましくは、2質量部以上10質量部以下である。
インサーション塗布膜におけるインサーション材料と導電剤との質量比(インサーション材料:導電剤)は、たとえば、20:1~1:1、好ましくは、15:1~3:1、より好ましくは、10:1~6:1である。
インサーション塗布膜におけるイオン伝導性セラミックスと導電剤との質量比(イオン伝導性セラミックス:導電剤)は、たとえば、20:1~1:1、好ましくは、15:1~3:1、より好ましくは、10:1~6:1である。
インサーション塗布膜は、更に、結着剤を含むことが好ましい。これにより、インサーション塗布膜内の各成分をより強固に結着させることができる。
結着剤としては、特に制限されないが、たとえば、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、アクリルエマルジョン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等の重合体や、これらの重合体と同様の骨格を持つ類似化合物、さらには複数の重合体からなるの複合剤を用いることができる。これらの中でも、好ましくは(a)ポリフッ化ビニリデン、(b)スチレンブタジエンラテックスおよびカルボキシメチルセルロースを含有する混合剤、(c)ポリアミド、ポリイミド、およびカルボジイミドを含有する混合剤、(d)ポリテトラフルオロエチレン、(e)アクリルエマルジョン等が挙げられ、より好ましくは、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
結着剤の成分は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
結着剤の含有量は、インサーション塗布膜100質量部に対して、たとえば、0.1質量部以上20質量部以下、好ましくは、1質量部以上15質量部以下、より好ましくは、2質量部以上10質量部以下である。
インサーション塗布膜におけるインサーション材料と結着剤との質量比(インサーション材料:結着剤)は、たとえば、20:1~1:1、好ましくは、15:1~3:1、より好ましくは、10:1~6:1である。
インサーション塗布膜におけるイオン伝導性セラミックスと結着剤との質量比(イオン伝導性セラミックス:結着剤)は、たとえば、20:1~1:1、好ましくは、15:1~3:1、より好ましくは、10:1~6:1である。
インサーション塗布膜には、上記以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、たとえば、MnCO、NaCO、Al等が挙げられる。
インサーション塗布膜における、インサーション材料およびイオン伝導性セラミックスの合計含有量(さらに、導電剤、結着剤を含む場合は、それらも含めた合計含有量)は、インサーション塗布膜100質量部に対して、たとえば、70質量部以上100質量部以下、好ましくは、80質量部以上100質量部以下、より好ましくは、90質量部以上100質量部以下、さらに好ましくは、95質量部以上100質量部以下、よりさらに好ましくは99以上100質量部以下である。
インサーション塗布膜においては、各成分が混合状態であることが好ましい。
インサーション塗布膜の層構造は特に制限されない。インサーション塗布膜は、単一の組成からなる1つの層からなる単層構造であってもよいし、互いに同一又は異なる組成からなる複数の層からなる複層構造であってもよい。
インサーション塗布膜の厚みは、導電性が著しく損なわれない限り、特に制限されない。インサーション塗布膜の厚みは、たとえば、1μm以上200μm以下である。製造効率、製造コスト等の観点から、インサーション塗布膜の厚みは、好ましくは、1μm以上100μm以下、より好ましくは、1μm以上50μm以下、さらに好ましくは、1μm以上20μm以下である。
第2電極12は、水相用電極として機能する。第2電極12は、有機相保持層13と対向するように配置され、試料30と接触する。第2電極12は、絶縁基板16とシート14との間に配置される。第2電極12(水相用電極)としては試料30中の電極電位が一定に維持され、電極反応物が電極表面に固定されるものという観点からAg/AgCl板が用いられるが、材質はこれに限定されない。Ag/AgClに代わる材質としては、酸化還元体で修飾された炭素電極、カーボンペースト、白金、金、銅、ガラス電極などを使用することも可能である。試料30中に一定濃度の非測定対象イオンがある場合は、その非測定対象イオンに応答するイオン選択性電極などを使用することも可能である。また、第2電極12は、第2のインサーション材料を含んでいてもよい。この場合、第2のインサーション材料は、第1のインサーション材料と同一の材料にして、第2電極12を、第1電極11と同一の構成により形成してもよい。これにより、第1電極11および第2電極12を共通の部材を用いてイオンセンサ100を製造することができるので、部材の種類が多くなるのを抑制して、イオンセンサ100の量産性を向上させることができる。
有機相保持層13は、測定対象のイオンを含む試料30と界面を形成することが可能な有機相を含む。有機相は、水性溶媒に溶解したイオン性物質が水性溶媒から移動可能な有機溶媒と、当該有機溶媒に含まれる有機相用支持電解質とを含む。
有機溶媒としては、水相と界面を形成するものであればよく、ジクロロエタン、トリクロロメタンなどの含ハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、ニトロベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒、ヘキサンなどのアルカン系溶媒が挙げられる。また、有機溶媒として、非対称性アルキルアンモニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドなどの疎水性イオン液体を用いてもよい。
有機相用支持電解質としては、四級アンモニウム、テトラフェニルホスホニウム、アルキルホスホニウム、イミダゾリウムなどの疎水性カチオンと、ハロゲン化テトラフェニルホウ酸、各種スルホニルイミドなどの疎水性アニオンからなる疎水性塩などが挙げられる。また、有機溶媒と有機相用支持電解質としての機能を併せ持つものとして、非対称性アルキルアンモニウムハロゲン化テトラフェニルホウ酸塩などのイオン液体を用いてもよい。支持電解質の濃度は、10-3M以上0.1M以下とすることができる。
有機相は、高分子膜、有機相と親和性のある多孔質の無機絶縁体材料などにより保持されている。
高分子膜としては、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロプロピレン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられ、多孔質の無機絶縁体材料としては、アルミナ、炭化ケイ素の多孔質膜などが挙げられる。高分子膜は、単独で作製した高分子膜に有機相の溶媒を浸透させてもよいし、有機相の溶媒を高分子材料と混ぜ合わせて有機相の溶媒と高分子膜を一体化させてもよい。有機相保持層13の厚さは限定されるものではないが、有機相に移動したイオン性物質を水相に逆抽出する観点から薄い方が好ましい。ただし、試料30と第1電極11(有機相用電極)とが接しないようにする必要がある。たとえば、有機相保持層13の厚さは、5μm以上1000μm以下とすることができる。製造上の観点からは、有機相保持層13の厚さは、10μm以上200μm以下とすることが好ましい。
有機相保持層13には、イオノフォアが含まれていてもよい。これにより、測定対象のイオンを他のイオンと分離して精度よく測定することができる。イオノフォアは、たとえば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等の陽イオンを選択するために設けられている。
イオノフォアとしては、バリノマイシン、モネシン、ロドプシン、ノナクチン、モナクチン、イオノマイシン、グラミシジンA、ナイジェリシン、CCCP(カルボニルシアニド-m-クロロフェニルヒドラゾン)、FCCP(カルボニルシアニド-p-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン)、クラウンエーテル(一群の大環状ポリエーテル)、更には非環状のノニルフェノキシポリエタノール、DD16C5、Bis-12Crown-4、12-Crown-4、15-Crown-5、18-Crown-6、カレックスアレン等が挙げられる。イオノフォアは、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せで用いてもよい。
シート14は、有機相保持層13と第2電極12との間に設けられている。シート14は、たとえば、プラスチック製の薄板により形成されている。シート14には、図2に示すように、貫通口141が設けられている。図1に示すように、シート14が、第2電極12と有機相保持層13とに挟まれると、貫通口141により、試料30を収容するための空間が形成される。
絶縁基板15には、第1電極11が配置されている。絶縁基板15は、たとえば、プラスチック製の薄板により形成されている。
絶縁基板16には、第2電極12が配置されている。絶縁基板16は、たとえば、プラスチック製の薄板により形成されている。
絶縁基板15および16は、電極の導電性に影響を与えない絶縁性材料を含むものである限り、特に制限されない。絶縁性材料としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリイミド、ガラスエポキシ樹脂、ガラス、セラミック、紙などの繊維基材などが挙げられる。
ここで、図2~図4を用いて、イオンセンサ100に試料30をセットする方法について説明する。図2は、試料30をセットする前のイオンセンサ100の斜視図である。図2に示すように、絶縁基板15には、第1電極11が配置され、第1電極11上に有機相保持層13が被せられている。また、絶縁基板16には、第2電極12が配置されている。絶縁基板15、絶縁基板16及びシート14は、互いに同じ形状の長方形シートであり、一方の短辺が互いに接着されており、当該短辺を中心軸として回動させて互いに離隔および当接させることが可能である。
イオンセンサ100に試料30をセットする場合、図3に示すように、シート14を回動して絶縁基板15に当接させ、シート14の貫通口141によって形成された空間に試料30を滴下する。そして、図4に示すように、絶縁基板16を回動してシート14に当接させ、絶縁基板15、絶縁基板16及びシート14を圧着固定する。これにより、イオンセンサ100が組み立てられる。組み立てられたイオンセンサ100は、第1電極11が導線23(図1参照)と接続され、第2電極12が導線24(図1参照)と接続される。
イオンセンサ100が測定対象とするイオンは、特に制限されないが、たとえば、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられる。
イオンセンサ100は、好ましくは、カリウムイオンセンサとして使用することができる。高カリウム血症患者は、高カリウム食の過剰摂取等の血中カリウムを増加させる行動により、心電図に異常が現れる程度に心臓の電気的活動が変動したり、場合によっては致死的不整脈を起こす可能性が高い一方、血中カリウムレベルが高くない状態で投薬、透析等を行うと、過剰に血中カリウムの低下を引き起こし、それにより麻痺や筋肉痙攣が起こり、場合によっては死亡することがある。血中カリウムレベルは、患者の体質、病態、日常の食事内容等に応じて異なるので、血中カリウムレベルの過剰低下や過剰増加を起こさないように、血中カリウムレベルを患者自身が測定した上で、投薬タイミング、投薬量、食事内容等を適宜調節できることが望ましい。イオンセンサ100は、複数のイオンセンサ100間の電位のバラつきが低減されており、キャリブレーションの必要性がより低い(キャリブレーションフリーも可能な)イオンセンサであるので、高カリウム血症患者による測定(通常、キャリブレーションのような煩雑且つ専門的な作業は困難)に使用するカリウムイオンセンサとして、特に適している。
イオンセンサ100は、電流を検出する測定法の一種であるクーロメトリーにより対象のイオンを測定することができる。クーロメトリーは、検出した電流を測定開始から測定終了までの範囲で積分して得られる電気量から、測定する対象イオンの物質量を測定する方法である。クーロメトリーは、測定精度が高いため、体液の組成など恒常的な値から外れた異常値を精確に検出することが要求される臨床検査の場面で有用である。また、試料中の対象イオンの全量に由来する電流を検出する原理であるため、検量線を不要とする絶対定量が可能な測定方法であり、ディスポーザブルセンサーとしての用途に適している。
クーロメトリーでは、イオンセンサ100に印加する電圧は、対象イオンの種類、サンプルの溶媒および有機相保持層の有機溶媒の種類によって適宜変更されるが、概ね、-1.5V以上1.5V以下とすることができる。具体的には、サイクリックボルタモグラムからピーク電流が得られるピーク電流電位を基準として印加することが好ましい。サンプル中の陽イオンを移動させて測定する場合には、第1電極11(有機相用電極)に対して、第2電極12(水相用電極)の電位が正の電流ピークを示す電位またはそれより高い電位となるように電圧を印加するとよく、陰イオンを移動させて測定する場合には、第1電極11(有機相用電極)に対して、第2電極12(水相用電極)の電位が負の電流ピークを示す電位またはそれよりも低い電位となるように電圧を印加するとよい。
クーロメトリーでは、電極間に電圧を印加し、陽イオンまたは陰イオンの移動に伴うイオン移動電流を測定し、測定開始から測定終了までの電流を積分することにより、クーロン数(電気量)を算出することができ、このクーロン数からイオンの物質量(モル数)が算出できる。なお、イオン移動電流が0Aに近づき、変化がなくなった状態になれば、陽イオンまたは陰イオンの移動が終了したものと判断できる。
次に、イオンセンサ100による対象イオンの測定方法について説明する。図5示すように、イオンセンサ100では、有機相保持層13と第2電極12とに試料30を接触させる。有機相保持層13と第2電極12とに試料30を接触させる方法には、例えば、図2~図4を用いて説明した方法を用いることができる。そして、第1電極11と第2電極12との間に電圧を印加することにより、試料30に含まれる対象イオン31を試料30(水相)から有機相保持層13(有機相)に移動させる。具体的には、対象イオン31を移動させる一定の電圧を、電圧印加部21(図1参照)により、第1電極11および第2電極12の間に印加することにより、対象イオン31を、試料30(水相)から有機相保持層13(有機相)に移動させる。
対象イオン31の移動により、電荷が移動して電流が流れる。この第1電極11と第2電極12との間に流れる電流を、電流測定部22(図1参照)により測定する。そして、測定した電流値を、電圧の印加開始から印加終了までの範囲で積分して得られる電気量(試料の電流積分値)に基づいて、対象イオンの量を求める。具体的には、イオン量(mol)は、Q/n・Fにより求められる。ただし、Qは測定した電気量(C)であり、nは対象イオン31の電荷数であり、Fはファラデー定数(約96485C/mol)である。Qは、上記した試料の電流積分値から、バックグラウンドの電流積分値を減ずることにより求められる。バックグラウンドの電流積分値は、水相に対象イオンが含まれていない場合に、第1電極11および第2電極12の間に電圧を印加することによって得られる電流値を、電圧の印加開始から印加終了までの範囲で積分して得られる電流積分値である。
(実施例)
以下に本実施形態のイオンセンサ100の実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、第1電極11(有機相用電極)は、カーボンペーパに、インサーション材料としての金属酸化物(Na0.33MnO(直方晶系結晶構造)、平均粒径7.3μm、りん片状)と、固体電解質(β”アルミナ:NaAl10.615.9、平均粒径0.99μm)と、導電材(アセチレンブラック)と、結着剤(ポリフッ化ビニリデン)とを含むペーストを、スキージを用いて塗布し、インサーション塗布膜を形成して作製した。
第2電極12(水相用電極)には、Ag/AgCl電極を用いた。
有機相保持層13は、有機溶媒であるニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)に、支持電解質として0.01MのBTPPATFPBを添加したものをテフロン多孔質膜(厚み:30μm)に含侵させて作製した。
実施例1のイオンセンサ100は、第1電極11のインサーション塗布膜上に、有機相保持層13を積層し、試料を保持するための直径5mmの貫通口141の空いたシート14(厚み:100μm)をその上に積層した。そして、シート14の貫通口141に試料1μLをマイクロピペットで滴下し、その後、第2電極12を被せた。また、第1電極11、有機相保持層13、試料の入ったシート14および第2電極12を、圧着固定して組み立てたセルを3個作製し、測定に用いた。
(実施例2)
実施例2では、第1電極11(有機相用電極)は、カーボンペーパに、インサーション材料としての金属酸化物(Na0.33MnO(直方晶系結晶構造)、平均粒径7.3μm、りん片状)と、導電材(アセチレンブラック)と、結着剤(ポリフッ化ビニリデン)とを含むペーストを、スキージを用いて塗布し、インサーション塗布膜を形成して作製した。つまり、実施例2の第1電極11は、実施例1に対して固体電解質(β”アルミナ)を含んでいない。なお、実施例2のその他の構成は、実施例1と同様である。
(実施例3)
実施例3では、第1電極11(有機相用電極)は、カーボンペーパに、インサーション材料としての金属酸化物(Na0.33MnO(直方晶系結晶構造)、平均粒径7.3μm、りん片状)と、固体電解質(β”アルミナ:NaAl10.615.9、平均粒径0.99μm)と、導電材(アセチレンブラック)と、結着剤(ポリフッ化ビニリデン)とを含むペーストを、静電塗布し、インサーション塗布膜を形成して作製した。つまり、実施例3の第1電極11は、実施例1に対してインサーション塗布膜を静電塗布することにより形成していることが異なっている。なお、実施例3のその他の構成は、実施例1と同様である。
(実施例4)
実施例4では、実施例1の有機相保持層13に対して、イオノフォア(0.01M Valinomycin)をさらに添加した。なお、実施例4のその他の構成は、実施例3と同様である。
(実施例5)
実施例5では、第2電極12(水相用電極)は、カーボンペーパに、インサーション材料としての金属酸化物(Na0.33MnO(直方晶系結晶構造)、平均粒径7.3μm、りん片状)と、固体電解質(β”アルミナ:NaAl10.615.9、平均粒径0.99μm)と、導電材(アセチレンブラック)と、結着剤(ポリフッ化ビニリデン)とを含むペーストを、スキージを用いて塗布し、インサーション塗布膜を形成して作製した。つまり、実施例5では、第1電極11と第2電極12とが同一の構成である。なお、実施例5のその他の構成は、実施例4と同様である。
(実施例6)
実施例6では、第1電極11及び第2電極12は実施例2と同様の構成であるが、有機相保持層13に対して、イオノフォア(0.01M Valinomycin)をさらに添加した。なお、実施例6のその他の構成は、実施例2と同様である。
(比較例)
比較例では、第1電極(有機相用電極)は、カーボンペーパーに、PEDOT-PEG:TFPB分散メタノール溶液(3g/L)を塗布し、乾燥させて塗布膜を形成して、作製した。なお、比較例のその他の構成は、実施例1と同様である。
実施例1~6および比較例のイオンセンサの構成をまとめると、以下の表1のようになる。
Figure 2023034205000002
(測定例1)
測定例1は、実施例1~3のイオンセンサについて、複数のイオンセンサ間の測定値の再現性、すなわちばらつきの大きさを評価するために行った。測定例1として、実施例1~3および比較例のイオンセンサを用いて、試料に含まれるカチオンの測定を行った。測定例1では、試料として、測定の対象イオンであるテトラエチルアンモニウムイオン(TEA)を含むテトラエチルアンモニウムクロリドを10-4M、支持電解質NaClを0.01Mを含む水溶液を使用した。
測定例1では、電圧印加部21(図1参照)により、第1電極11と第2電極12との間に所定の負の電圧を印加し、印加する電圧値を、段階的に毎秒20mVずつ、所定の正の電圧値まで正の方向に変化させ、所定の正の電圧値に到達した後に、印加する電圧値を、段階的に毎秒20mVずつ、前述した所定の負の電圧値まで負の方向に変化させた。なお、ここでは、第1電極11の電位に対して、第2電極12の電位が高い場合を正の電圧値とし、第2電極12の電位が低い場合を負の電圧値としている。また、各電圧値における電流値を電流測定部22(図1参照)により測定し、測定した電流値に基づいてサイクリックボルタモグラム(電流/電圧特性波形。以下、ボルタモグラムとよぶ)を作成した。
測定例1では、実施例1のイオンセンサ、実施例2のイオンセンサ、実施例3のイオンセンサ、及び比較例のイオンセンサについて、3個のセル(Cell 1~Cell 3)を用いて測定し、各セルについてボルタモグラムを作成した。
図6は、実施例1のイオンセンサを用いたボルタモグラムであり、図7は、実施例2のイオンセンサを用いたボルタモグラムであり、図8は、比較例のイオンセンサを用いたボルタモグラムであり、図9は、実施例3のイオンセンサを用いたボルタモグラムである。実施例1~3のイオンセンサを用いたボルタモグラムと、比較例のイオンセンサを用いたボルタモグラムとを比較すると、実施例1~3のボルタモグラムは、3個のセル(Cell 1~Cell 3)のボルタモグラムがほぼ重なっているのに対し、比較例のボルタモグラムは、3個のセル(Cell 1~Cell 3)のボルタモグラムが重なっていない。従って、実施例1~3のイオンセンサは、比較例のイオンセンサより、複数のイオンセンサ間の測定値のばらつきが小さいことが分かる。
ボルタモグラムにおいて、対象イオンに対応する電流ピークを示す電圧値が、対象イオンを最も効率よく移動させる電圧値であり、複数のイオンセンサ間での電流ピークのばらつきが小さいことも、複数のイオンセンサ間での対象イオンの測定値のばらつきが小さいことを示す。図6に示すように、実施例1のイオンセンサでは、正の電流のピークにおける電圧値のセル間のばらつきがV1である。図7に示すように、実施例2のイオンセンサでは、正の電流のピークにおける電圧値のセル間のばらつきがV2である。図8に示すように、比較例のイオンセンサでは、正の電流のピークにおける電圧値のセル間のばらつきがV3である。図6~図8に示すように、電圧値のセル間のばらつきは、V1<V2<V3である。実施例1のイオンセンサと比較例のイオンセンサとを比較すると、実施例1のイオンセンサの方が電圧値のセル間のばらつきが小さいため、比較例のイオンセンサより、複数のイオンセンサ間の測定値のばらつきが小さいことが分かる。同様に、実施例2のイオンセンサと比較例のイオンセンサとを比較すると、実施例2のイオンセンサの方が電圧値のセル間のばらつきが小さいため、比較例のイオンセンサより、複数のイオンセンサ間の測定値のばらつきが小さいことが分かる。
実施例1のイオンセンサと実施例2のイオンセンサとを比較すると、実施例1のイオンセンサの方が電圧値のセル間のばらつきが小さいため、実施例2のイオンセンサより、複数のイオンセンサ間の測定値のばらつきが小さいことが分かる。このことから、第1電極11に固体電解質(β”アルミナ)を含有させることにより、複数のイオンセンサ間の測定値のばらつきを更に小さくできることが分かる。
(測定例2)
測定例2は、実施例3のイオンセンサについて、経時変化による影響を評価するために行った。試料として、測定例1と同様に、対象イオンであるTEAイオンを含むテトラエチルアンモニウムクロリドを10-4M、支持電解質NaClを0.01Mを含む水溶液を使用した。測定例2では、同じセルについて、組み立て後1日目、2日目、3日目、5日目、および7日目に、測定例1と同様に電流測定を行い、ボルタモグラムを作成した。
図10は、実施例3のイオンセンサを用いたボルタモグラムであり、図11は、比較例のイオンセンサを用いたボルタモグラムである。実施例3のイオンセンサでは、1日目、2日目、3日目、5日目および7日目に測定を行った。比較例のイオンセンサでは、1日目、3日目、5日目、7日目および9日目に測定を行った。なお、測定例2では、同一のセルにより複数回測定を行うため、各測定後に、有機相から水相(試料)に対象イオンをすべて移動させ(逆抽出)、有機相に対象イオンが残らないようにしてから、試料を取り除いた状態で、電極を乾燥状態で保管した。
実施例3と比較例とを比較すると、図10に示す実施例3のイオンセンサでは、ボルタモグラムが、各測定についてほぼ同一の位置にプロットされているのに対し、図11に示す比較例のイオンセンサでは、ボルタモグラムが、測定日によって異なる位置にプロットされている。従って、実施例3のイオンセンサは、比較例のイオンセンサに比べて、時間が経った場合でも再現性がよいことが分かる。
(測定例3)
測定例3は、実施例1および実施例2のイオンセンサについて、アニオンの繰り返し測定による影響を評価するために行った。測定例3として、実施例1、2および比較例のイオンセンサを用いて、試料に含まれるアニオンの測定を行った。測定例3では、試料として、実施例1および2では、支持電解質として10mMのNaClを用いて、測定対象のピクリン酸イオンの塩であるピクリン酸Naを0.1mM添加した水溶液を使用した。また、試料として、比較例では、支持電解質として10mMのMgClを用いて、測定対象のピクリン酸イオンの塩であるピクリン酸Naを0.1mM添加した水溶液を使用した。測定例3では、実施例1のイオンセンサ、実施例2のイオンセンサ、および比較例のイオンセンサを1個ずつ使用し、測定例1と同様に、所定の負の電圧値から所定の正の電圧値に至り、所定の負の電圧値に戻る印加電圧値の変更を3~4回繰り返し、各電圧値において電流測定を行い、ボルタモグラムを作成した。
図12は、実施例3のイオンセンサを用いたボルタモグラムであり、図13は、比較例のイオンセンサを用いたボルタモグラムであり、図14は、実施例2のイオンセンサ用いたボルタモグラムである。
実施例3のイオンセンサでは、印加電圧が-0.15Vのときが、ピクリン酸イオンについての電流ピークであった。図12において、電流値a11は、1回目に-0.15Vの電圧を印加したときの電流値を示し、電流値a12は、2回目に-0.15Vの電圧を印加したときの電流値を示し、電流値a13は、3回目に-0.15Vの電圧を印加したときの電流値を示す。
比較例のイオンセンサでは、印加電圧が-0.3Vのときが、ピクリン酸イオンについての電流ピークであった。図13において、電流値ac1は、1回目に-0.3Vの電圧を印加したときの電流値を示し、電流値ac2は、2回目に-0.3Vの電圧を印加したときの電流値を示し、電流値ac3は、3回目に-0.3Vの電圧を印加したときの電流値を示す。実施例3と比較例とを比較すると、実施例3のイオンセンサでは、電流値a11から電流値a13までの電流値の変化が小さいのに対し、比較例のイオンセンサでは、電流値ac1から電流値ac3までの電流値の変化が大きい。従って、実施例3のイオンセンサは、比較例のイオンセンサより繰り返し測定による影響が抑制されていることが分かる。
実施例2のイオンセンサでは、印加電圧が-0.35Vのときが、ピクリン酸イオンについての電流ピークであった。図14において、電流値a21は、1回目に-0.35Vの電圧を印加したときの電流値を示し、電流値a22は、2回目に-0.35Vの電圧を印加したときの電流値を示し、電流値a33は、3回目に-0.35Vの電圧を印加したときの電流値を示す。実施例2と比較例とを比較すると、実施例2のイオンセンサでは、電流値a21から電流値a23までの電流値の変化が小さいのに対し、比較例のイオンセンサでは、電流値ac1から電流値ac3までの電流値の変化が大きい。従って、実施例2のイオンセンサは、比較例のイオンセンサより繰り返し測定による影響が抑制されていることが分かる。一方、実施例2と実施例1とを比較すると、実施例2のイオンセンサでは、電流値a21から電流値a23までの電流値の変化が大きいのに対し、実施例1のイオンセンサでは、電流値a11から電流値a13までの電流値の変化が小さい。従って、実施例1のイオンセンサは、実施例2のイオンセンサより繰り返し測定による影響が更に抑制されていることが分かる。すなわち、第1電極11に固体電解質(β”アルミナ)を含んでいる実施例1では、第1電極11に固体電解質(β”アルミナ)を含まない実施例2に比べて、繰り返し測定による影響が更に抑制されていることが分かる。このことから、アニオン測定を繰り返し行う場合には、第1電極11に固体電解質(β”アルミナ)を含んでいる方が好ましいといえる。
(測定例4)
測定例4は、実施例4のイオンセンサについて、カチオンの繰り返し測定による影響を評価するために行った。測定例4では、試料として、測定対象イオンであるNaイオンを含むNaClを14mM含む水溶液を使用した。測定例4では、実施例4のイオンセンサを1個使用し、測定例1と同様に、所定の負の電圧値から所定の正の電圧値に至り、所定の負の電圧値に戻る印加電圧値の変更を3~4回繰り返し、各電圧値において電流測定を行い、ボルタモグラムを作成した。
図15は、実施例4のイオンセンサを用いたボルタモグラムである。
実施例4のイオンセンサでは、印加電圧が0.4Vのときが、Naイオンについての電流ピークであった。図15において、印加電圧が0.4Vのときの電流値は、1回目から3回目の測定でほとんど変化していない。従って、実施例4のイオンセンサでは、水相である試料から有機相に移動したNaイオンが有機相から水相に戻ることが分かる。また、実施例4のイオンセンサでは、イオノフォアであるバリノマイシンは、Naイオンの繰り返し測定に影響を与えないことが分かる。従って、実施例4のイオンセンサでは、Naイオンを繰り返し測定可能であることが分かる。
(測定例5)
測定例5は、実施例4および実施例5のイオンセンサについて、2種類のカチオンを含む試料の測定の可能性を評価するために行った。測定例5では、対象イオンであるNaイオンおよびKイオンを含む第1試料として、14mMのNaClおよび0.4mMのKClを含む水溶液と、対象イオンであるNaイオンおよびKイオンを含む第2試料として、14mMのNaClおよび1.0mMのKClを含む水溶液と、測定対象イオンであるNaイオンを含む第3試料として、14mMのNaClを含む水溶液と、を使用した。測定例5では、実施例4および実施例5のイオンセンサを1個ずつ使用し、第1試料および第2試料の各々について、測定例1と同様に電圧値を変化させながら電流測定を行い、ボルタモグラムを作成した。
図16は、実施例4のイオンセンサを用いたボルタモグラムである。図17は、実施例5のイオンセンサを用いたボルタモグラムである。
実施例4のイオンセンサでは、第1試料を測定した結果、印加電圧が0.4Vのときが、Naイオンについての電流ピークであった。また、実施例4のイオンセンサでは、第3試料を測定した結果、印加電圧が0.4Vのときが、Naイオンについての電流ピークであった。実施例4のイオンセンサでは、第1試料および第3試料において、Naイオンについての電流ピークが同一であった。また、実施例4のイオンセンサでは、第1試料を測定した結果、Kイオンについての電流ピークが印加電圧が0.1Vのときに検出できた。このことから、実施例4のイオンセンサでは、複数種のイオンが含まれる試料であっても、対象イオンを測定可能であることが分かる。
実施例5のイオンセンサでは、第2試料を測定した結果、印加電圧が0.3Vのときが、Naイオンについての電流ピークであった。また、実施例5のイオンセンサでは、第3試料を測定した結果、印加電圧が0.3Vのときが、Naイオンについての電流ピークであった。実施例5のイオンセンサでは、第2試料および第3試料において、Naイオンについての電流ピークが同一であった。また、実施例5のイオンセンサでは、第2試料を測定した結果、Kイオンについての電流ピークが印加電圧が0Vのときに検出できた。このことから、実施例5のイオンセンサでは、複数種のイオンが含まれる試料であっても、対象イオンを測定可能であることが分かる。また、実施例5のイオンセンサでは、水相側電極である第2電極12(図1参照)にインサーション材料を含ませても、Naイオン、Kイオンの測定が可能であることがわかる。
(測定例6)
測定例6は、実施例4および実施例6のイオンセンサについて、クーロメトリーにより測定した電気量(前述の電気量Q)の精度を評価するために行った。実施例4のイオンセンサを用いた測定例6では、測定対象イオンであるKイオンを含む試料として、KClを0.2mM含む水溶液、KClを0.4mM含む水溶液、およびKClを0.8mM含む水溶液を使用した。各水溶液は更に、支持電解質としてNaClを14mMを含む。実施例4のイオンセンサを各濃度について、1個ずつ使用し、Kイオンのピーク電流がでる電圧である0.1Vを印加して、電流を測定し、前述の方法で電気量Qを算出した。測定は、1つの濃度について5回行い、各測定について算出した電気量Qの平均および標準偏差を求めた。また、各水溶液について、理論電気量を算出し、理論電気量と、各測定について算出した電気量Qの平均および標準偏差とから、電解効率を算出した。
結果は以下の表2のようになった。
Figure 2023034205000003
この結果から、電解効率は、100%に近い値となり、実施例4のイオンセンサは、精度よくKイオンを測定できることが分かる。
実施例6のイオンセンサを用いた測定例6では、測定対象イオンであるKイオンを含む試料として、KClを0.4mM含む水溶液、およびKClを0.8mM含む水溶液を使用した。各水溶液は更に、支持電解質としてNaClを14mMを含む。実施例6のイオンセンサ(セル)を各濃度について、2個ずつ使用し、Kイオンのピーク電流がでる電圧である0.1Vを印加して、電流を測定し、前述の方法で電気量Qを算出した。測定は、1つの濃度について、各セル1回ずつ(計2回)行い、各測定について電気量Qを算出した。また、各水溶液について、理論電気量を算出し、理論電気量と、各測定について算出した電気量Qとから、電解効率を算出した。
結果は以下の表3および表4のようになった。表3は0.4mMのKCl溶液の結果であり、表4は0.8mMのKCl溶液の結果である。
Figure 2023034205000004
Figure 2023034205000005
この結果から、電解効率は、100%に近い値となり、実施例6のイオンセンサは、精度よくKイオンを測定できることが分かる。従って、第1電極11に固体電解質(β”アルミナ)を含んでいなくても、クーロメトリー測定が可能であることが分かる。
(変形例)
なお、今回開示された実施形態(および実施例)は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態(および実施例)の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
上記実施形態では、試料をシート14の貫通口141内に滴下してから第2電極12を被せる構成のイオンセンサ100の例を示したが、本発明はこれに限られない。変形例のイオンセンサ200は、図18から図25に示すように、第1電極11および第2電極12が対向するように配置された状態において、試料30を、第2電極12および有機相保持層13の間に供給するように構成してもよい。この場合、第2電極12および有機相保持層13の間の空間に、イオンセンサの側方から試料30を毛細管力により吸入させてもよい。
図18は、変形例のイオンセンサ200の平面図を示す。図19は、イオンセンサ200の側面模式図を示す。図20は、図18の300-300線に沿った断面模式図である。図21~図25は、イオンセンサ200の分解図である。図21は、第2電極12が積層された絶縁基板16の底面図であり、図22は、図21の310-310線に沿った断面模式図である。図23は、接着層17の平面図である。図24は、第1電極11及び有機相保持層13が積層された絶縁基板15の平面図であり、図25は、図24の320-320線に沿った断面模式図である。
イオンセンサ200は、図18、図19および図20に示すように、第1電極11と、第2電極12と、有機相保持層13と、絶縁基板15と、絶縁基板16と、接着層17と、を備える。イオンセンサ200の第1電極11は、導線23を介して、電流を測定する電流測定部22に接続されている。第2電極12は、導線24を介して、電圧を印加する電圧印加部21に接続されている。電圧印加部21および電流測定部22は、導線25で互いに接続されている。
イオンセンサ200は、第1電極11及び有機相保持層13が積層された絶縁基板15(図24、図25参照)上の、有機相保持層13を除く位置に接着層17を重ね、その上に、第2電極12が積層された絶縁基板16(図21、図22参照)を、第2電極12が下側に配置される向きに重ねることにより組み立てられる。組み立てられたイオンセンサ200は、図18、図19及び図20に示すように、第1電極11の上に有機相保持層13が積層され、第2電極12が、試料が吸引される空間34を介して有機相保持層13に対向する。イオンセンサ200の側面には、開口35及び開口36が設けられており、空間34は開放空間になっている。イオンセンサ200の使用者が、試料30を開口35又は開口36に接触させると、毛細管力により、試料30が空間34内に吸引される。試料30に含まれる対象イオンの測定は、イオンセンサ100と同様の方法により行われる。
11:第1電極、12:第2電極、13:有機相保持層、14:シート、15:絶縁基板、16:絶縁基板、21:電圧印加部、22:電流測定部、30:試料、31:対象イオン、100、200:イオンセンサ

Claims (22)

  1. 電流を測定して対象イオンの測定を行う電流測定型のイオンセンサであって、
    前記対象イオンを含む試料と界面を形成することが可能な有機相を含む有機相保持層と、
    前記有機相保持層が積層され、無機化合物で構成される第1のインサーション材料を含む第1電極と、
    前記有機相保持層と対向するように配置され、試料と接触する第2電極と、を備える、イオンセンサ。
  2. 前記第1電極は、電極材をさらに含み、前記第1のインサーション材料を含むインサーション塗布膜が前記電極材に設けられている、請求項1に記載のイオンセンサ。
  3. 前記第1電極の前記インサーション塗布膜は、結着剤および導電剤をさらに含む、請求項2に記載のイオンセンサ。
  4. 前記第1のインサーション材料は、金属酸化物、酸素レドックス材料またはプルシアンブルー類似体である、請求項1~3のいずれか1項に記載のイオンセンサ。
  5. 前記第1のインサーション材料は、イオン-電子伝導体である、請求項1~4のいずれか1項に記載のイオンセンサ。
  6. 前記第1のインサーション材料は、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンに対するイオン-電子伝導体である、請求項5に記載のイオンセンサ。
  7. 前記第1のインサーション材料は、金属酸化物であり、
    前記金属酸化物は、MMnO(MはNaまたはKを示し、xは任意の正数を示す)である、請求項1~6のいずれか1項に記載のイオンセンサ。
  8. 前記xは、0.2以上0.5以下である、請求項7に記載のイオンセンサ。
  9. 前記第1電極は、固体電解質をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のイオンセンサ。
  10. 前記固体電解質は、イオン伝導性セラミックスである、請求項9に記載のイオンセンサ。
  11. 前記固体電解質は、ナトリウムイオン伝導性セラミックス、カリウムイオン伝導性セラミックスまたはリチウムイオン伝導性セラミックスである、請求項10に記載のイオンセンサ。
  12. 前記固体電解質は、β”アルミナまたはβアルミナである、請求項10または11に記載のイオンセンサ。
  13. 前記第1のインサーション材料および前記固体電解質は、粒子である、請求項9~12のいずれか1項に記載のイオンセンサ。
  14. 前記固体電解質の粒子の平均粒径は、前記第1のインサーション材料の粒子の平均粒径より小さい、請求項13に記載のイオンセンサ。
  15. 前記第1のインサーション材料は、前記固体電解質に対して、0.5倍以上2倍以下の質量を有する、請求項13または14に記載のイオンセンサ。
  16. 前記結着剤は、
    (a)ポリフッ化ビニリデン、
    (b)スチレンブタジエンラテックスおよびカルボキシメチルセルロースを含有する混合剤、
    (c)ポリアミド、ポリイミドおよびカルボジイミドを含有する混合剤、
    (d)ポリテトラフルオロエチレン、または、
    (e)アクリルエマルジョン
    である、請求項3に記載のイオンセンサ。
  17. 前記導電剤は、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボン粉末、または、グラファイト粉末である、請求項3に記載のイオンセンサ。
  18. 前記有機相保持層は、イオノフォアを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載のイオンセンサ。
  19. 前記第2電極は、第2のインサーション材料を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載のイオンセンサ。
  20. 前記第2のインサーション材料は、前記第1のインサーション材料と同一の材料であり、
    前記第2電極は、前記第1電極と同一の構成により形成されている、請求項19に記載のイオンセンサ。
  21. 請求項1~20のいずれか1項に記載のイオンセンサを用いたイオンの測定方法であって、
    前記有機相保持層と前記第2電極とに試料を接触させる工程と、
    前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することにより、試料に含まれる前記対象イオンを前記有機相に移動させる工程と、
    前記第1電極と前記第2電極との間に流れる電流を測定する工程と、を備える、イオンの測定方法。
  22. 前記対象イオンを前記有機相に移動させる工程は、一定の電圧を印加することにより行われ、
    前記電流を測定する工程により取得された電流値を、電圧の印加時間で積分して得られる電気量に基づいて、前記対象イオンの量を求める工程をさらに備える、請求項21に記載のイオンの測定方法。
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