JP2023032364A - 磁気ディスク用アルミニウム合金基板及び当該磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスク - Google Patents

磁気ディスク用アルミニウム合金基板及び当該磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスク Download PDF

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畠山英之
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Yuma Kokubun
熊谷航
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Abstract

【課題】うねりを低減することにより平滑性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金基板並びにこの磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスクを提供する。【解決手段】磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、Mg:3.50~4.50mass%及びCr:0.04~0.20mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、当該アルミニウム合金中において最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系金属間化合物の分布密度が1個/0.001mm2以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、うねりの低減により平滑性を向上させた磁気ディスク用アルミニウム合金基板及び当該磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスクに関する。
ハードディスクドライブ(以下、「HDD」と省略する)は、コンピュータや映像記録装置等の電子機器における記憶装置として多用されている。HDDには、データを記録するための磁気ディスクが組み込まれている。磁気ディスクは、アルミニウム合金からなり円環状を呈する磁気ディスク用アルミニウム合金基板と、この表面を覆うNi-Pめっき処理層と、Ni-Pめっき処理層上に積層された磁性体層とを有している。
近年、サーバやデータセンター等の業務用、及び、パーソナルコンピュータや映像記録装置等の家庭用のいずれの用途においても、HDDに記録する情報量が多くなってきている。かかる状況に対応してHDDの容量を大きくするため、HDDに組み込まれる磁気ディスクの記録密度を高めることが求められている。磁気ディスクの記録密度を高くするためには、アルミニウム合金基板上に平滑なNi-Pめっき処理層を形成する必要がある。
磁気ディスクは、通常、以下の方法により作製される。まず、アルミニウム合金の圧延板を円環状に打ち抜いてディスクブランクを作製する。次いで、ディスクブランクを厚み方向の両側から加圧しつつ加熱してディスクブランクの反りを小さくする。その後、ディスクブランクに切削加工及び研削加工を行い、所望の形状に成形することによりアルミニウム合金基板が得られる。このようにして得られるアルミニウム合金基板に、Ni-Pめっき処理層を形成するための前処理、無電解Ni-Pめっき処理及び磁性体層のスパッタリングを順次行うことにより、磁気ディスクを作製することができる。
ここで、アルミニウム合金基板に用いられるアルミニウム合金としては、JIS A5086合金が多用されている。
磁気ディスクには、マルチメディア等のニーズから大容量化及び高密度化が求められている。更なる大容量化のため、読み書き時のヘッドの浮上量を低減する傾向があるが、磁気ディスクの表面にうねりが存在すると、磁気ヘッドと衝突することで記録エラーの原因となる。そのため、このようなうねりの低減が求められている。また、従来から安定した加工及び使用ができるように、磁気ディスク用アルミニウム合金基板には高い耐力が求められている。
うねりの低減により磁気ディスク表面の平滑性をより向上させることを目的として、アルミニウム合金板の表面における平均結晶粒径を低減する技術などが検討されている。例えば、特許文献1には、Mg:4.5質量%以上6.0質量%以下、Mn:0.10質量%以上0.55質量%以下、Si:0.025質量%以下、Fe:0.025質量%以下、残部がAl及び不可避的不純物からなる磁気ディスク基板用アルミニウム合金板において、平均結晶粒径を微細にする方法が記載されている。
特開2017-014584号公報
特許文献1の方法によれば、Mn等を添加することで結晶粒径を微細にし、うねりを低減することができるとしている。しかしながら、特許文献1の方法では、結晶粒径の微細化が不十分で、ヘッド浮上量の低下に十分に対応することが困難である問題があった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、うねりの低減により平滑性を向上させた磁気ディスク用アルミニウム合金基板及び当該磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスクの提供を目的とする。
本発明者らは、アルミニウム合金のMg含有量とCr含有量、ならびに、Al-Cr系金属間化合物の分散密度を制御することにより、表面のうねりを低減して平滑性を向上させると共に高い耐力を有する磁気ディスク用アルミニウム合金基板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は請求項1において、Mg:3.50~4.50mass%及びCr:0.04~0.20mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板とした。
本発明は請求項2では請求項1において、前記アルミニウム合金が、Cr:0.07~0.20mass%を含有するものとした。
本発明は請求項3では請求項1又は2において、前記アルミニウム合金が、Cu:0.30mass%以下、Zn:0.60mass%以下、Fe:0.35mass%以下、Si:0.35mass%以下、Mn:0.60mass%以下及びBe:0.0020mass%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を更に含有するものとした。
本発明は請求項4では請求項1~3のいずれか一項において、前記アルミニウム合金中における最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系金属間化合物の分散密度が1個/0.001mm以上であるものとした。
本発明は請求項5では請求項1~4のいずれか一項において、前記磁気ディスク用アルミニウム合金基板の表面における結晶粒径が13.0μm以下であるものとした。
本発明は請求項6において、請求項1~5のいずれか一項に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板の表面に、無電解Ni-Pめっき処理層と、当該無電解Ni-Pめっき処理層の上の磁性体層とを有することを特徴とする磁気ディスクとした。
本発明により、アルミニウム合金において、Mg含有量とCr含有量、ならびに、Al-Cr系金属間化合物の分散密度を制御することで、うねりを低減して平滑性を向上させると共に高い耐力を有する磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びこの磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスクを提供することができる。
A.磁気ディスク用アルミニウム合金基板
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板(以下、「アルミニウム合金基板」又は「基板」と記す場合がある)について説明する。アルミニウム合金基板は、所定の合金組成のアルミニウム合金を用いてアルミニウム合金板を作製し、これを円環状に打ち抜いて磁気ディスク用アルミニウム合金ディスクブランク(以下、「アルミニウム合金ディスクブランク」又は「ディスクブランク」と記す場合がある)とする。次いで、ディスクブランクに加圧焼鈍を行った後、切削加工及び研削加工を順次行い、更に必要に応じて歪取り熱処理を行ってアルミニウム合金基板とする。
アルミニウム合金基板のアルミニウム合金は、必須元素として、Mg:3.50~4.50mass%(以下、単に「%」と記す)、Cr:0.04~0.20%、好ましくは0.07~0.20%を含有する。また、任意元素として、Cu:0.30%以下、Zn:0.60%以下、Fe:0.35%以下、Si:0.35%以下、Mn:0.60%以下及びBe:0.0020mass%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を更に含有する。アルミニウム合金は、上記の必須元素と任意元素と、残部Al及び不可避的不純物からなる。
更に、アルミニウム合金基板のアルミニウム合金における最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系金属間化合物の分散密度は1個/0.001mm以上である。これにより、加圧焼鈍時の再結晶粒の成長を抑制して結晶粒径を微細にすることができ、その結果、うねりを低減する効果が得られる。上記Al-Cr系金属間化合物の分散密度とすることで、アルミニウム合金基板表面における結晶粒径を13.0μm以下、好ましくは10.0μm以下にすることができる。
また、アルミニウム合金のMg含有量が3.50~4.50%であることによって高い耐力を達成することができる。この理由は、Mgは、主として固溶Mgとして存在し、強度を向上させる効果を発揮するが、Mg含有量を3.50~4.50%とすることで固溶Mg量が増えて耐力が向上するためである。
以上の結果、うねりの低減による平滑性の向上と高い耐力を両立させることができる。
A-1.アルミニウム合金の合金組成
アルミニウム合金基板に用いるアルミニウム合金の組成及びその限定理由について、以下に詳細に説明する。
Mg:3.50~4.50%
Mgはアルミニウム合金に必須元素として含有され、主として固溶Mgとして存在し、アルミニウム合金基板の強度を向上させる効果を発揮する。また、Mgは、アルミニウム合金基板のジンケート処理時のジンケート皮膜を均一に、薄く、かつ、緻密に付着させるので、ジンケート処理工程の次工程であるめっき工程において、無電解Ni-Pからなるめっき表面の平滑性を向上させる。
しかしながら、Mg含有量が3.50%未満では、アルミニウム合金基板の強度が不十分であり、切削や研削の加工時等に変形してしまう。更に、ジンケート処理により生成するジンケート皮膜が不均一となり、めっきの密着性や平滑性が低下する。一方、Mg含有量が4.50%を超えると、強度が高くなり過ぎて圧延時に割れが発生する。従って、本発明のアルミニウム合金基板では、アルミニウム合金のMg含有量を3.50~4.50%と規定する。なお、Mg含有量は、強度と製造性との兼合いから、好ましくは3.70~4.40%であり、より好ましくは3.80~4.30%である。
Cr:0.04~0.20%
Crはアルミニウム合金に必須元素として含有され、Al-Cr系金属間化合物や固溶Crとして存在し、アルミニウム合金基板の再結晶組織をより微細化させる効果を発揮する。その結果、基板表面のうねりが低減し、平滑性を高めることができる。
Cr含有量が0.04%未満では結晶粒径の微細化が不十分であり、うねりが発生してしまう。一方、Cr含有量が0.20%を超えると、アルミニウム合金基板中に粗大なAl-Cr系金属間化合物が形成され易くなる。このような粗大なAl-Cr系金属間化合物がアルミニウム合金基板の表面から脱落した場合、後工程の無電解Ni-Pめっき処理においてめっきピットが形成され易くなる。また、粗大晶出物と呼ばれる最長径1000μm程度のAl-Cr系金属間化合物が形成される場合があり、圧延時等にそれを起点とした割れの発生原因となる。従って、本発明のアルミニウム合金基板では、アルミニウム合金のCr含有量を0.04~0.20%と規定する。なお、Cr含有量は、結晶粒径と製造性との兼合いから、好ましくは0.07~0.20%であり、より好ましくは0.07%~0.10%である。
アルミニウム合金は、MgとCrに加えて、Cu、Zn、Fe、Si、Mn及びBeからなる群から選択される1種又は2種以上の元素を任意元素として更に含有していてもよい。以下では、各任意元素について詳細に説明する。
Cu:0.30%以下
アルミニウム合金は、任意元素として0.30%以下のCuを含有していてもよい。Cuは、磁気ディスクの製造過程においてジンケート処理を行う際に、アルミニウム合金からのAlの溶出を抑制する作用を有する。Cu含有量を0.30%以下にすることにより、ジンケート処理において、アルミニウム合金基板の表面に、ち密で厚みが薄く、かつ厚みのバラつきが小さいZn皮膜を付着させることができる。そして、このようなZn皮膜を形成することにより、後工程である無電解Ni-Pめっき処理によって平滑な無電解Ni-Pめっき処理層を形成することができる。
しかしながら、Cu含有量が0.30%を超えると、アルミニウム合金基板の耐食性が低下し、局所的にAlが溶出し易い領域が形成される。そのため、磁気ディスクの製造過程においてジンケート処理を行う際に、アルミニウム合金基板の表面においてAlの溶解量にムラが発生し、Zn皮膜の厚みのバラつきが大きくなり易い。その結果、無電解Ni-Pめっき処理層とアルミニウム合金基板との密着性の低下や、無電解Ni-Pめっき処理層の平滑性の低下を招くことになる。
このように、アルミニウム合金中のCu含有量を0.30%以下、好ましくは0.15%以下とすることにより、めっきピットの形成を抑制し、無電解Ni-Pめっき処理層の平滑性をより高めることができる。Cu含有量の下限値については、好ましくは0.005%であり、より好ましくは0.010%である。なお、Cu含有量は0%(0.000%)であってもよい。
Zn:0.60%以下
アルミニウム合金中は、任意元素として0.60%以下のZnを含有していてもよい。Znは、Cuと同様に、ジンケート処理におけるアルミニウム合金からのAlの溶出を抑制する作用を有する。Zn含有量を0.60%以下にすることにより、ジンケート処理において、アルミニウム合金基板の表面に、ち密で厚みが薄く、かつ厚みのバラつきが小さいZn皮膜を付着させることができる。そして、このようなZn皮膜を形成することにより、後工程である無電解Ni-Pめっき処理によって平滑な無電解Ni-Pめっき処理層を形成することができる。
しかしながら、Zn含有量が0.60%を超えると、アルミニウム合金基板の耐食性が低下し、局所的にAlが溶出し易い領域が形成される。そのため、ジンケート処理を行う際に、アルミニウム合金基板の表面においてAlの溶解量にムラが発生し、Zn皮膜の厚みのバラつきが大きくなり易い。その結果、無電解Ni-Pめっき処理層とアルミニウム合金基板との密着性の低下や、無電解Ni-Pめっき処理層の平滑性の低下を招くことになる。
このように、アルミニウム合金中のZn含有量を0.60%以下、好ましくは0.50%以下とすることにより、めっきピットの形成を抑制し、無電解Ni-Pめっき処理層の平滑性をより高めることができる。Zn含有量の下限値については、好ましくは0.10%であり、より好ましくは0.25%である。なお、Zn含有量は0%(0.00%)であってもよい。
Fe、Si:0.35%以下
アルミニウム合金は、任意元素として0.35%以下のFe、Siを含有していてもよい。Feは、Alマトリクス中にほとんど固溶せず、Al-Fe系金属間化合物としてアルミニウム合金基板中に分散している。Siは、アルミニウム合金にMgが含有される場合に、Mgとの間にMg-Si系金属間化合物を形成する。
このようなAl-Fe系金属間化合物やMg-Si系金属間化合物がアルミニウム合金基板表面から脱落した場合、後工程である無電解Ni-Pめっき処理においてめっきピットが形成され易くなる。アルミニウム合金中のFe及びSiの含有量をそれぞれ、0.35%以下、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.01%以下とすることにより、アルミニウム合金基板中に存在する上記のAl-Fe系金属間化合物やMg-Si系金属間化合物の量をより低減することができる。その結果、めっきピットの形成を抑制し、Ni-Pめっき処理層の平滑性をより高めることができる。なお、FeとSiの含有量はそれぞれ0%(0.000%)であってもよい。
上記金属間化合物によるめっきピットの発生を抑制するためには、Fe及びSiの含有量を少なくすることが好ましい。しかしながら、これらの元素は、一般的な純度の地金はもとより、Alの純度が99.9%以上である高純度の地金にも含まれている。そのため、FeとSiを殆ど含有しないアルミニウム合金基板を作製しようとすると、鋳造時にこれらの元素を除去するための特殊な処理を行う必要があり、アルミニウム合金基板の製造コストの増大を招くことになる。
アルミニウム合金中のFe及びSiの含有量がそれぞれ0.01%以下のものを用いることにより、これらの元素を除去するための特殊な処理を行うことなくアルミニウム合金基板を作製することができる。その結果、アルミニウム合金基板の製造コストの増大を回避しつつ、その平滑性をより高めることができる。また、アルミニウム合金中のFe及びSiの含有量がそれぞれ0.01%を超えてもそれぞれが0.35%以下であれば、より純度の低い地金を用いてアルミニウム合金基板を作製することができる。これにより、上記のAl-Fe系金属間化合物やMg-Si系金属間化合物の生成を抑制しつつ、アルミニウム合金基板の材料コストの低減を図ることができる。
Mn:0.60%以下
アルミニウム合金は、任意元素として0.60%以下のMnを含有していてもよい。Mnの一部は、鋳造時に生じる微細な金属間化合物としてアルミニウム合金基板中に分散している。鋳造時に金属間化合物を形成しなかったMnはAlマトリクス中に固溶し、固溶強化によってアルミニウム合金基板の強度を向上させる作用を有する。
しかしながら、アルミニウム合金中のMn含有量が0.60%を超えると、アルミニウム合金基板中に粗大なAl-Mn系金属間化合物が形成され易くなる。このような粗大なAl-Mn系金属間化合物がアルミニウム合金基板の表面から脱落した場合、後工程の無電解Ni-Pめっき処理においてめっきピットが形成され易くなる。
このように、アルミニウム合金中のMn含有量を0.60%以下、好ましくは0.50mass%以下とすることにより、めっきピットの形成を抑制し、平滑なNi-Pめっき処理層を形成すると共に、アルミニウム合金基板の強度をより向上させることができる。Mn含有量の下限値については、好ましくは0.001%であり、より好ましくは0.005%である。なお、Mn含有量は0%(0.000%)であってもよい。
Be:0.0020%以下
Beは、Mgを含有するアルミニウム合金を鋳造する際に、Mgの酸化を抑制することを目的として溶湯内に添加される元素である。また、アルミニウム合金中に含有されるBeを0.0020%以下とすることにより、磁気ディスクの製造過程においてアルミニウム合金基板の表面に形成されるZn皮膜をより緻密にすると共に、厚みのバラつきをより小さくすることができる。その結果、アルミニウム合金基板上に形成される無電解Ni-P処理層の平滑性をより高めることができる。
しかしながら、アルミニウム合金中のBe含有量が0.0020%を超えると、アルミニウム合金基板の製造過程においてアルミニウム合金基板が加熱される際に、アルミニウム合金基板表面にBe系酸化物が形成され易くなる。また、アルミニウム合金が更にMgを含有する場合、アルミニウム合金基板が加熱される際に、アルミニウム合金基板表面にAl-Mg-Be系酸化物が形成され易くなる。これらのBe系酸化物やAl-Mg-Be系酸化物の量が多くなると、Zn皮膜の厚みのバラつきが大きくなり、めっきピットの発生を招く虞がある。
アルミニウム合金中のBe含有量を0.0020%以下、好ましくは0.0010%以下とすることにより、Be系酸化物やAl-Mg-Be系酸化物の量を低減し、無電解Ni-Pめっき処理層の平滑性をより高めることができる。なお、Be含有量の下限値については0%(0.0000%)であってもよいが、0.0002%とするのが好ましい。
その他の元素
アルミニウム合金には、上述した必須元素及び任意元素以外の不可避的不純物となる元素が含まれていてもよい。これらの元素としては、Zr、Ti、B、Gaなどが挙げられ、その含有量は、各元素について0.10%以下、合計で0.30%以下であれば本発明の作用効果を損なわない。
また、上述のように本発明においては、Fe、Siを任意成分として積極的に添加することもできるが、積極的に添加せず不可避的不純物として含有される場合もある。SiとFeは、一般的な純度の地金はもとより、Alの純度が99.9%以上である高純度の地金にも不可避的不純物として含まれる。そして、このように不可避的不純物として含まれる場合も任意成分の場合と同様に、Fe含有量とSi含有量がそれぞれ、0.35%以下、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.01%以下であれば、本発明の作用効果は損なわれない。
A-2.最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系金属間化合物の分散密度が1個/0.001mm以上
本発明のアルミニウム合金基板では、アルミニウム合金中に存在する最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系金属間化合物の分散状態の指標としての分散密度を1個/0.001mm以上とすることにより、アルミニウム合金基板の再結晶組織をより微細化させる効果が発揮される。その結果、アルミニウム合金基板表面のうねりが低減し、平滑性を高めることができる。ここで、Al-Cr系金属間化合物とはAl、Crを含有する析出物であり、透過電子顕微鏡のEDX(エネルギー分散型X線分析)分析により分散状態を確認できる。なお、AlとCr以外にFe等が含まれているものもあり、これらのものの分散状態もまた、透過電子顕微鏡のEDX分析により確認できる。
最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系金属間化合物の分散密度が1個/0.001mm未満の場合、微細化が不十分となってうねりが増加し、平滑性が低下する。また、この金属間化合物の最長径が0.01μm未満の場合、又は、1.00μmを超える場合は、微細化効果が十分に得られない。そのため、最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系金属間化合物の分散密度を1個/0.001mm以上とするのが好ましい。この分散密度は、より好ましくは2個/0.001mm以上であり、更により好ましくは10個/0.001mm以上である。この分散密度の上限値は特に設定するものではないが、本発明の合金組成や製造方法に拠れば50個/0.001mm程度である。なお、本発明において最長径とは、TEMによるアルミニウム合金基板の表面画像において、Al-Cr系金属間化合物の輪郭線上で最も離間した2点の距離として定義される。
A-3.結晶粒径
本発明に係るアルミニウム合金基板の表面における結晶粒径は、加圧焼鈍により再結晶したものとして、13.0μm以下が好ましく、10.0μm以下がより好ましく、8.0μm以下が更により好ましい。このように結晶粒径を小さくすることによって、基板表面のうねりが低減し、平滑性を高めることができる。このような結晶粒径は、上述の最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系化合物を1個/0.001mm以上とすることによって、加圧焼鈍時の再結晶粒の成長を抑制することによって達成されるものである。なお、アルミニウム合金基板の表面における結晶粒径は、グロー放電発光分析装置と後方散乱電子回折測定装置によって測定される。
A-4アルミニウム合金板の製造方法
(1)鋳造工程
所定の合金組成のアルミニウム材の原料を溶解し、溶湯を溶製してからこれを鋳造して鋳塊を作製する。鋳造としては、半連続鋳造(DC鋳造)法や金型鋳造法、連続鋳造(CC鋳造)法が用いられる。DC鋳造法においては、スパウトを通して注がれた溶湯が、ボトムブロックと、水冷されたモールドの壁、ならびに、インゴット(鋳塊)の外周部に直接吐出される冷却水で熱を奪われ、凝固し、鋳塊として下方に引き出される。金型鋳造法においては、鋳鉄等で作られた中空の金型に注がれた溶湯が、金型の壁に熱を奪われ、凝固し、鋳塊が出来上がる。CC鋳造法では、一対のロール(又は、ベルトキャスタ、ブロックキャスタ)の間に鋳造ノズルを通して溶湯を供給し、ロールからの抜熱で薄板を直接鋳造する。
このような鋳造工程において、溶湯中の溶存ガスを低減する脱ガス処理及び溶湯中の固形物を除去するろ過処理をインラインで行うことが好ましい。
脱ガス処理としては、例えば、SNIF(Spinning Nozzle Inert Flotation)プロセスと呼ばれる処理方法やAlpurプロセスと呼ばれる処理方法等を採用することができる。これらのプロセスにおいては、羽根付き回転体により溶湯を高速で攪拌しながらアルゴンガスやアルゴンと塩素との混合ガス等のプロセスガスを吹き込み、溶湯中にプロセスガスの微細な気泡を形成する。これにより、溶湯中に溶存した水素ガスや介在物を短時間で除去することができる。脱ガス処理には、インライン式の脱ガス装置を使用することができる。
ろ過処理としては、例えば、ケークろ過方式やろ材ろ過方式などを採用することができる。また、ろ過処理には、例えば、セラミックチューブフィルター、セラミックフォームフィルター、アルミナボールフィルタ-などのフィルターを使用することができる。
(2)均質化処理工程
鋳塊を作製した後に熱間圧延を行うまでの間に、必要に応じて鋳塊の面削を行い、均質化処理を行ってもよい。均質化処理における保持温度は、500~570℃の範囲とすることが好ましい。また、均質化処理における保持時間は、例えば1~60時間の範囲から適宜設定することができる。
均質化処理を行った後であって熱間圧延を行う前に、鋳塊を350~400℃、好ましくは360~390℃の温度範囲で、1時間以上、好ましくは2~48時間保持する加熱処理を行うことが好ましい。微細なAl-Cr系金属間化合物の析出は、均質化処理後の350~400℃の温度域で最も発生し易いためである。この温度が350℃未満では微細なAl-Cr系金属間化合物は析出せず、400℃を超えるとAl-Cr系金属間化合物が粗大になる。また、保持時間が1時間未満では、微細なAl-Cr系金属間化合物の析出効果が十分に得られない。このように、均質化処理を行った後に、350~400℃の温度範囲で1時間以上保持することで、所望の最長径を有するAl-Cr系金属間化合物を所定の分散状態で析出させることができる。
(3)熱間圧延工程
次に、鋳塊に熱間圧延を行い、熱間圧延板を作製する。熱間圧延の圧延条件は特に限定されるものではないが、例えば、開始温度を300~550℃の範囲とし、終了温度を260~380℃の範囲として熱間圧延を行うことができる。
(4)冷間圧延工程
熱間圧延を行った後、得られた熱間圧延板に1パス以上の冷間圧延を行うことにより、冷間圧延板を得ることができる。冷間圧延の圧延条件は特に限定されることはなく、所望するアルミニウム合金板の厚み及び強度に応じて適宜設定すればよい。例えば、冷間圧延における総圧下率は20~95%とすることができる。また、冷間圧延板の厚みは、例えば、0.2~1.9mmの範囲から適宜設定することができる。
(5)焼鈍工程
上記態様の製造方法においては、冷間圧延における1パス目の前及びパス間のうち少なくとも一方において、必要に応じて焼鈍処理を行ってもよい。焼鈍処理は、バッチ式熱処理炉を用いて行ってもよいし、連続式熱処理炉を用いて行ってもよい。バッチ式熱処理炉を用いる場合、焼鈍時の保持温度を250~430℃、保持時間を0.1~10時間の範囲とすることが好ましい。また、連続式熱処理炉を用いる場合、炉内の滞在時間を60秒以内、炉内の温度を400~500℃とすることが好ましい。このような条件で焼鈍処理を行うことにより、冷間圧延時の加工性を回復させることができる。
以上の工程によって、アルミニウム合金板が作製される。
A-3.アルミニウム合金基板の製造方法
上記のアルミニウム合金板からアルミニウム合金基板を作製するに当たっては、例えば、以下の方法を採用することができる。まず、アルミニウム合金板に打ち抜き加工を行って円環状を呈するディスクブランクを作製する。その後、ディスクブランクを厚み方向の両側から加圧しながら加熱して加圧焼鈍を行うことにより、上述の均質化処理によって得られた所望の分散状態のAl-Cr系金属間化合物において、上述の所望の結晶粒径が達成され、更に、ディスクブランクの歪みを低減させることで、アルミニウム合金基板表面の平坦度が向上する。
加圧焼鈍における保持温度と圧力は、例えば、250~430℃、好ましくは290~350℃で1.0~3.0MPaの範囲から適宜選択することができる。温度が250℃未満の場合では、再結晶粒の成長抑制効果が十分に得られない。また、この温度が430℃を超えると再結晶粒が粗大となる。また、加圧焼鈍における保持時間は、例えば、30分以上とすることができる。
加圧焼鈍を行った後、ディスクブランクに切削加工及び研削加工を順次行い、次いで、150~350℃で0.1~10.0時間の条件で、加工時の歪を除去する歪取り熱処理を必要に応じて行う。これらの加工工程によって、所望の形状を有するアルミニウム合金基板とする。
B.磁気ディスク
B-1.磁気ディスクの構成
上記アルミニウム合金基板を備えた磁気ディスクは、例えば、以下の構成を有する。即ち、磁気ディスクは、アルミニウム合金基板と、このアルミニウム合金基板表面を覆う無電解Ni-Pめっき処理層と、この無電解Ni-Pめっき処理層上に積層された磁性体層とを有する。なお、無電解Ni-Pめっき処理層は、無電解めっき処理により形成した無電解Ni-Pめっき処理層であることが好ましい。
磁気ディスクは、更に、ダイヤモンドライクカーボンなどの炭素系材料からなり、磁性体層上に積層された保護層と、潤滑油からなり、保護層上に塗布された潤滑層とを有していてもよい。
B-2.磁気ディスクの製造方法
アルミニウム合金基板から磁気ディスクを製造するに当たっては、例えば、以下の方法を採用することができる。まず、アルミニウム合金基板に脱脂洗浄を行いアルミニウム合金基板の表面に付着した加工油等の油分を除去する。脱脂洗浄の後、必要に応じて、酸を用いてアルミニウム合金基板にエッチングを施してもよい。エッチングを行った場合には、エッチング後に、エッチングによって生じたスマットをアルミニウム合金基板から除去するデスマット処理を行なうことが好ましい。これらの処理における処理条件は、処理液の種類に応じて適宜設定することができる。
これらのめっき前処理を行った後に、アルミニウム合金基板の表面にZn皮膜を形成するジンケート処理を行う。ジンケート処理においては、AlをZnに置換する亜鉛置換めっきを行うことにより、Zn皮膜を形成することができる。ジンケート処理としては、1回目の亜鉛置換めっきを行った後に、アルミニウム合金基板の表面に形成されたZn皮膜を一旦剥離し、再度亜鉛置換めっきを行ってZn皮膜を形成する、いわゆるダブルジンケート法を採用するのが好ましい。ダブルジンケート法によれば、1回目の亜鉛置換めっきのみによって形成されるZn皮膜に比べて、より緻密なZn皮膜をアルミニウム合金基板表面に形成することができる。その結果、後工程の無電解Ni-Pめっき処理において無電解Ni-Pめっき処理層の欠陥を低減することができる。
ジンケート処理によってアルミニウム合金基板の表面にZn皮膜を形成した後に、90℃前後にて無電解Ni-Pめっき処理を行うことにより、Zn皮膜をNi-Pめっき処理層によって置換することができる。そして、無電解Ni-Pめっき処理においてこのようなZn皮膜を無電解Ni-Pめっき処理層によって置換することにより、めっきピットが少なく平滑な無電解Ni-Pめっき処理層を形成することができる。
無電解Ni-Pめっき処理層の厚さを厚くすると、めっきピットが少なくなる傾向があり、平滑な無電解Ni-Pめっき処理層を形成することができる。従って、めっき厚は7μm以上が好ましく、より好ましくは18μm以上であり、更に好ましくは25μm以上である。なお、実用上、めっき厚の上限値は40μm程度である。
無電解Ni-Pめっき処理の後に、無電解Ni-Pめっき処理層を研磨することにより、無電解Ni-Pめっき処理層の表面の平滑性を更に高めることができる。
無電解Ni-Pめっき処理の後に(研磨処理も含めて)、無電解Ni-Pめっき処理層上に、スパッタリングによって磁性体を付着させて磁性体層を形成する。磁性体層は、単一の層から構成されていてもよく、又は、互いに異なる組成を有する複数の層から構成されていてもよい。スパッタリングを行った後に、CVDによって磁性体層上に炭素系材料からなる保護層を形成する。次いで、保護層上に潤滑油を塗布して潤滑層を形成する。以上により、磁気ディスクを得ることができる。
アルミニウム合金板及びその製造方法、ならびに、このアルミニウム合金板から作製するアルミニウム合金基板の例について説明する。
これらのアルミニウム合金板及びその製造方法、ならびに、このアルミニウム合金板から作製するアルミニウム合金基板及びその製造方法の具体的な態様は、以下に示す実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で実施例から適宜構成を変更することができる。
(1)アルミニウム合金板の作製
以下の方法により、本実施例において評価に使用するアルミニウム合金板を作製した。まず、溶解炉において、表1に示す合金組成を有する溶湯を調製した。
Figure 2023032364000001
次に、溶解炉内の溶湯を移し、表2に示すようにDC鋳造方法で鋳塊を作製した。次いで、鋳塊の表面を面削し、鋳塊表面に存在する偏析層を除去した。面削を行った後に鋳塊を表2に示す条件で均質化処理を行った。更に、均質化処理後の鋳塊に350~400℃で表2に示す時間加熱処理を行った。次いで、表2に示す条件で熱間圧延を実施して表2に示す厚さの熱間圧延板を得た。更に、冷間圧延を実施して表2に示す厚さの冷間圧延板を得た。
Figure 2023032364000002
(2)アルミニウム合金基板の作製
上記アルミニウム合金板に打ち抜き加工を施し、外径98mm、内径24mmの円環状を呈するアルミニウム合金ディスクブランクを得た。次いで、得られたアルミニウム合金ディスクブランクを厚み方向の両側から加圧しつつ、表2に示す温度で3時間保持して加圧焼鈍を実施した。更に、加圧焼鈍後の各アルミニウム合金ディスクブランクの外周端面及び内周端面に切削加工を施し、外径97mmで内径25mmのアルミニウム合金ディスクブランクに加工した。その後、各アルミニウム合金ディスクブランクの板面に、研削量が10μmとなるように研削加工を施した。以上により、アルミニウム合金基板を作製した。
なお、Cr含有量が0.20%を超える場合は、粗大晶出物が生成する可能性があることが熱力学的計算システム(サーモカルク)で判明したため試料を作製しなかった。また、Mg含有量が4.50%を超える場合は、熱間圧延時に大きな割れが生じたため、冷間圧延以降は実施しなかった。
最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系金属間化合物の分布密度の測定:
上述のようにして作製したアルミニウム合金基板の表面を機械研磨により約10μm程度の薄膜状に加工した後、電解研磨により透過型電子顕微鏡(TEM)観察用のサンプルを作製した。作製した薄片サンプルについて、Al-Cr系金属間化合物の個数分布を分散密度(個/0.001mm)として、下記のように測定した。
この測定には、板材の任意の面の走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察を用いた。Al-Cr系金属間化合物は、STEM-EDS分析でその特定を行った。観察は各サンプルについて倍率20000倍でSTEM画像の撮影を行い、当該金属間化合物が存在する場合は分析を行い、試料中の最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系金属間化合物の分散密度をEDX分析で調べた。なお、薄片サンプルの厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)に付属の電子エネルギー損失分光(EELS)検出器を用いて測定することが可能で、厚さ約50~300nmの領域にて測定を実施した。
結晶粒径の測定:
結晶粒径の測定においては、まず、組織観察用のアルミニウム合金基板の試験材の圧延面に対して、グロー放電発光分析装置(Glow Discharge Spectroscopy:GDS、JY5000RF、HORIBA社製)を用いて、ガス圧力400Pa、出力30W、60sでスパッタリングを実施した。次いで、このスパッタリング面を、走査電子顕微鏡に付属の後方散乱電子回折測定装置(SEM-EBSD)で測定することによって、集合組織の方位情報を取得した。試料の測定領域は750μm×1000μmとし、測定ステップ間隔は結晶粒径が10μm以上の場合は3μmとし、結晶粒径が8.0μm以上10.0μm未満の場合は2.0μmとし、結晶粒径が8.0μm未満の場合は1.0μmとする。
次に、得られた方位データから、EBSD解析ソフト(TSL社製の「OIM Analysis」)を使用して結晶粒径を算出した。この際、ミスオリエンテーション5°以上の結晶境界線を結晶粒界とみなし、円相当として算出した直径を結晶粒径とした。
耐力の測定:
耐力は、JIS Z2241に準拠し、冷間圧延後のアルミニウム合金板を表2に示す温度で3時間の加圧焼鈍(加圧焼鈍模擬加熱)を行った後、圧延方向に沿ってJIS5号試験片を採取してn=1にて測定した。強度の評価は、耐力が90MPa以上の場合を合格(A)、90MPa未満を不合格(B)とした。なお、耐力の測定には、上述の金属間化合物の分散密度や結晶粒径の測定と同じくアルミニウム合金基板を用いるべきであるが、加圧焼鈍後の冷間圧延板とアルミニウム合金基板の耐力が同じ数値を示すことは確認済みである。
最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系金属間化合物の分布密度、結晶粒径及び耐力の測定結果を、耐力の評価と共に表2に示す。
表1及び2に示すように、実施例1~3では、本発明で規定する特定の合金組成を有していたため、結晶粒径が微細でありうねりを低減して良好な平滑性を得られる。また、高強度も達成することができた。更に、実施例1、2では、最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系金属間化合物の分布密度が1個/0.001mm以上であったので、結晶粒径を更に微細にすることができた。
一方、比較例2では、合金組成が本発明の規定範囲内になかったため、結晶粒径が粗大となり良好な平滑性が得られない。
比較例1と3では、アルミニウム合金がCrを含有していないことからAl-Cr系金属間化合物の分布密度の評価を行っていない。
比較例3では、耐力が低く高強度が達成できなかった。なお、耐力が低過ぎて加圧焼鈍後の剥離時にアルミニウム合金基板が変形してしまったため、結晶粒径の評価を行っていない。
比較例4では、Mg含有量が多過ぎたため、熱間圧延時に大きな割れが生じたため、冷間圧延以降は実施しなかった。
本発明により、Mg含有量とCr含有量、ならびに、Al-Cr系金属間化合物を制御することで、うねりを低減して平滑性を高くでき、かつ、高い耐力を有する磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びこの磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスクを提供することができる。

Claims (6)

  1. Mg:3.50~4.50mass%及びCr:0.04~0.20mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
  2. 前記アルミニウム合金が、Cr:0.07~0.20mass%を含有する、請求項1に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
  3. 前記アルミニウム合金が、Cu:0.30mass%以下、Zn:0.60mass%以下、Fe:0.35mass%以下、Si:0.35mass%以下、Mn:0.60mass%以下及びBe:0.0020mass%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を更に含有する、請求項1又は2に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
  4. 前記アルミニウム合金中における最長径0.01~1.00μmのAl-Cr系金属間化合物の分散密度が1個/0.001mm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
  5. 表面における結晶粒径が13.0μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板の表面に、無電解Ni-Pめっき処理層と、当該無電解Ni-Pめっき処理層の上の磁性体層とを有することを特徴とする磁気ディスク。
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