JP2023031064A - 肝線維化モデルマウス - Google Patents

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Abstract

【課題】短期間で取得可能な肝線維化モデルマウスを提供する。【解決手段】以下の(i)及び(ii)の特徴を有する、肝臓特異的にFGF18を過剰発現するトランスジェニックマウス:(i)ROSA26遺伝子座に、5’末端側より、プロモーター配列、loxP配列、ストップコドン、loxP配列、FGF18遺伝子を、この順で含むDNA構築物が導入され、かつ、(ii)5’末端側より、アルブミンプロモーター、Cre遺伝子をこの順で含む、DNA構築物が導入されている。【選択図】なし

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 〔刊行物による公開〕 発行日 :令和3年3月8日 刊行物名:第17回東邦大学5学部合同学術集会抄録集 〔集会での発表による公開〕 開催日 :令和3年3月13日 集会名 :第17回東邦大学5学部合同学術集会 開催場所:オンライン開催
本発明は、肝線維化モデルマウス及びその利用に関する。
肝臓の線維化(肝線維化)は、慢性ウイルス性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎(NASH:nonalcoholic steato-hepatitis)の疾患において、慢性に進行する炎症や細胞死、酸化ストレスなどに伴って生じる病態であり、最終的には肝硬変や肝癌に至る病態である。上記の疾患の進展を抑制するためには、炎症をいかに抑制するかに加えて、進行性の線維化をいかに抑制するかが重要な要素となり得る。その観点から、肝線維化の誘導メカニズムの研究は非常に多くなされてきた。しかしながら、いまだに肝線維化を抑制する治療方法の開発には至っていない。
近年、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease)が増加しており、現在、国民の約30%がNAFLDと推定されている。NAFLDは肝臓に脂肪が蓄積しただけの単純脂肪肝(NAFL:nonalcoholic fatty liver又はSS)と、肝細胞死と炎症を伴う進行性のNASHに大別される。NASHは線維化により肝硬変、さらには肝がんに進行するリスクの高い疾患であるが、NAFLDの約10%がNASHと推定されており、その患者数の増加が問題となっている(非特許文献1)。NASHの発症及び進行、特に肝線維化の進行のメカニズムは明確には解明されておらず、現在のところ、NASHの根本的な治療方法は存在しない。
病態発症のメカニズムの解析、治療薬・治療方法のスクリーニング等には、通常、その病態のモデル動物(例えば、モデルマウス)が使用される。NASHのモデルマウスとしては、食餌によりマウスにNASHを発症させたモデルが報告されている(例えば、非特許文献2及び3)。
線維芽細胞増殖因子18(Fibroblast Growth Factor 18(FGF18))は、肺、肢芽、口蓋、骨格、中枢神経系、毛包などの一部の組織の発達に関与するタンパク質として知られる(非特許文献4)。また、FGF18をノックアウトしたマウスは、出生直後に呼吸障害で死亡することが報告されている(非特許文献5)。特許文献1では、NAFLDと診断された患者のうち、特にNASHにおいて血清中のFGF18タンパク質の濃度が健常者と比較して高値を示すことが報告されている。しかし、いずれにおいても、FGF18の肝線維化への関与は、直接的に示されていない。
特開2020-106382号公報
日本肝臓学会編 「NASH・NAFLDの診療ガイド2021」 文光堂 M. Charlton, et al., Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 301, G825-G834 (2011) A. Asgharpour, et al., et al., J. Hepatol., 65, 579-588 (2016) A. S. Hagan, et al., Development Dynamics, 248, 882-893 (2019) N. Ohbayashi, et al., Genes Dev. 16, 870-879 (2002)
上記の通りNASH等の疾患における肝線維化のメカニズムや治療薬・治療方法等の解明において、モデル動物、特にモデルマウスの使用は非常に有用である。しかしながら、例えば非特許文献2及び3等に記載のモデルマウスは、食餌により肝線維化を生じさせるまでに24~52週間という長期間を要するため、より短期間で効率よく取得可能な肝線維化モデルマウスが望まれる。
本発明の目的は、短期間で取得可能な肝線維化モデルマウスを提供することである。
本発明者らは、肝線維化を発症したマウスの肝細胞において、FGF18が高発現していることを見出し、さらに肝臓特異的にFGF18を発現するトランスジェニック(Tg)マウスを構築したところ、該Tgマウスにおいて短期間に高効率で肝線維化が見られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)肝臓特異的に線維芽細胞増殖因子18(FGF18)を過剰発現するトランスジェニックマウス。
(2)以下の(i)及び(ii)の特徴を有する、(1)に記載のトランスジェニックマウス:
(i)ROSA26遺伝子座に、5’末端側より、プロモーター配列、loxP配列、ストップコドン、loxP配列、FGF18遺伝子を、この順で含むDNA構築物が導入され、かつ、
(ii)5’末端側より、アルブミンプロモーター、Cre遺伝子をこの順で含む、DNA構築物が導入されている。
(3)前記FGF18遺伝子が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、又は配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、(2)に記載のトランスジェニックマウス。
(4)ROSA26遺伝子座に、5’末端側から、プロモーター配列、loxP配列、ストップコドン、loxP配列、FGF18遺伝子を、この順で含むDNA構築物が導入された、肝臓特異的にFGF18を過剰発現するトランスジェニックマウスを作製するためのトランスジェニックマウス。
(5)前記FGF18遺伝子が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、又は配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、(4)に記載のトランスジェニックマウス。
(6)前記プロモーター配列がCAGプロモーター配列であり、前記DNA構築物が、さらに3’末端側にポリAシグナルを含む、(4)又は(5)に記載のトランスジェニックマウス。
(7)(4)~(6)のいずれかに記載のトランスジェニックマウスとAlbumin-Creマウスとを交配させることを含む、トランスジェニックマウスの作製方法。
(8)(7)に記載の方法により得られる、トランスジェニックマウス。
(9)肝線維化モデルマウスである、(1)、(2)又は(8)に記載のトランスジェニックマウス。
本発明によれば、短期間で取得可能な肝線維化モデルマウスを提供することが可能である。
参考例2において、マウスの肝細胞にFGF18遺伝子及びGFP遺伝子のそれぞれのcDNAを導入し、導入一週間後に摘出した肝臓について、抗Ki67抗体を用いた免疫染色を行った画像である。スケールバーは100μmを示す。 参考例2において、マウスの肝細胞にFGF18遺伝子及びGFP遺伝子のそれぞれのcDNAを導入し、導入一週間後に摘出した肝臓について、抗Ki67抗体を用いた免疫染色を行った画像の全組織領域に占めるKi67陽性領域の割合を比較したグラフである(n=4)。図中の「*」は、対応のない両側スチューデントt検定においてp<0.05であったことを示す。 構築したベクターが相同組換えによりROSA26遺伝子座に挿入されたTgマウス(CAG-LSL-FGF18 Tgマウス)と、CAG-LSL-FGF18 TgマウスとAlbumin-Creマウスとを交配して得られるTgマウス(FGF18 Tgマウス)のROSA26遺伝子座の構造を示す概略図である。CAG-LSL-FGF18 Tgマウスでは、FGF18遺伝子は上流に存在するストップコドンのために翻訳されない。FGF18 Tgマウスにおいて、2つのloxP配列に挟まれたストップコドンが除かれるため、FGF18遺伝子が翻訳される。 6週齢のFGF18 Tgマウス及び野生マウスより摘出した肝臓重量が全体重に占める割合(%)を示す棒グラフである。野生型マウスでは肝臓の全体重に占める割合が約5%であったのに対して、FGF18 Tgマウスは約8%までに増加していた(n=5)。図中の「****」は、対応のない両側スチューデントt検定においてp<0.0001であったことを示す。 6週齢のFGF18 Tgマウス及び野生マウスより摘出した肝臓の組織切片について、抗Ki67抗体を用いた免疫染色を行った結果を示す画像である。FGF18 Tgマウスの肝細胞と太い血管の内皮細胞がKi67陽性であり、これらの細胞が増殖していることが明らかとなった。スケールバーは100μmを示す。 6週齢のFGF18 Tgマウス及び野生マウスより摘出した肝臓の組織切片について、Sirius Red染色を行った結果を示す画像である。FGF18 Tgマウスにで、染色(陽性)領域の増加が見られた。スケールバーは100μmを示す。 6週齢のFGF18 Tgマウス及び野生マウスより摘出した肝臓の組織に含まれるヒドロキシプロリンの量を測定した結果を示すグラフである(n=5)。FGF18 Tgマウスの肝臓でヒドロキシプロリン量が増加していた。統計学的な有意差は全組織領域に占めるKi67陽性領域の割合を比較したグラフである。図中の「*」は、対応のない両側スチューデントt検定においてp<0.05であったことを示す。
1.第1の実施形態 LSL-FGF18 トランスジェニックマウス
本発明の第1の実施形態は、肝臓特異的に線維芽細胞増殖因子18(FGF18)を過剰発現するトランスジェニック(Tg)マウスを作製するためのTgマウスであって、ROSA26遺伝子座に、5’末端側から、プロモーター配列、loxP配列、ストップコドン、loxP配列、FGF18遺伝子を、この順で含むDNA構築物が導入されたことを特徴とするTgマウスである。より具体的には、本発明の第1の実施形態は、生殖により、肝臓特異的にFGF18を過剰発現するマウスを産生するためのTgマウスである。以下、導入されたDNA構築物の構造より、「LSL-FGF18 Tgマウス」とも称する。
本明細書において、「線維芽細胞増殖因子18(Fibroblast Growth Factor 18(FGF18))」とは、配列番号1で表されるアミノ酸配列又は配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質を指す。ここでいう「配列同一性」とは、BLAST(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)等のタンパク質検索システムを用いて、ギャップを導入して、又はギャップを導入しないで、決定することができる値をいう。
DNA分子内に2つのリコンビナーゼ認識配列が同じ向きで存在し、かつ、リコンビナーゼが存在するとき、リコンビナーゼが該配列を認識して、2つのリコンビナーゼ認識配列の間で部位特異的組換えが生じ、2つのリコンビナーゼ認識配列で挟まれた配列を切り出し欠失させる。リコンビナーゼとその認識配列を組合せた部位特異的組換えシステムとして、Cre-loxPシステムやFLP-FRTシステム等が知られる。本発明では、特にCre-loxPシステムを使用する。Cre-loxPシステムにおけるリコンビナーゼ認識配列としては、loxP配列(ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTAT、配列番号2)が挙げられ、さらにloxP配列の変異配列であるlox511(ATAACTTCGTATAGtATACATTATACGAAGTTAT、配列番号3)、lox2272(ATAACTTCGTATAGgATACtTTATACGAAGTTAT、配列番号4)、loxFAS(ATAACTTCGTATAtacctttcTATACGAAGTTAT、配列番号5)等も用いることができる。本発明においては、loxP配列の変異配列も「loxP配列」と称する。
本発明の第1の実施形態は、少なくとも、5’末端側から、プロモーター配列と、LSL構造(loxP配列、ストップコドン及びloxP配列)及びFGF18遺伝子(以下、「LSL-FGF18」とも称する)とを、この順で含む前記DNA構築物を含む。2つのloxP配列の間のストップコドンの上流に、さらにマーカー遺伝子を含ませてもよい。マーカー遺伝子としては、細胞への遺伝子導入を確認できるマーカーの遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、ネオマイシン(neo)耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子、HPRT(hypoxanthine phosphoribosyl transferase)遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子等が挙げられる。ストップコドンとマーカー遺伝子が2つのloxP配列に挟まれたDNA構築物を、LoxP flanked stopカセット(ストップカセット)と呼ぶことがある。Creが存在しない場合は、遺伝子の転写が始まった場合でも2つのloxPの間のストップコドンで転写が終結するので、下流のFGF18遺伝子が転写、翻訳されることはない。一方、Creが存在する場合は、2つのloxP間のストップコドンは欠失するので、下流のFGF18遺伝子が転写、翻訳され、FGF18タンパク質が過剰発現する。
プロモーター配列としては、3’末端側、すなわち下流の遺伝子発現を促進し得るプロモーター配列であれば特に限定されないが、特に、CAGプロモーターを使用することができる。プロモーター配列としてCAGプロモーターを使用する場合、さらに3’末端側にポリAシグナルを有することが好ましい。
FGF18遺伝子の5’側には、翻訳の開始に関与するKozak配列やFLAG等のエピトープタグを連結させてもよく、3’側にはストップコドンを付加する。また、FGF18遺伝子の3’側にはIRES配列-GFPを配し、FGF18遺伝子を発現した細胞がGFP陽性細胞として分取できるようにしてもよい。
本発明の第1の実施形態のTgマウスは、LSL-FGF18を含むDNA構築物をベクター上で構築し、ターゲティングベクターを作製する。ターゲティングベクターは、CTV、pBluescriptII等の市販のプラスミドベクターを利用して構築することができる。該ターゲティングベクターを胚性幹細胞(ES細胞)に導入し、例えばCRISPR/Cas9法を用いた相同組換え等の既知の手法により、前記DNA構築物をES細胞のROSA26遺伝子座に挿入する。ROSA26遺伝子座は、遺伝子を安全に挿入することができるセーフハーバー遺伝子座として知られる。ターゲティングベクターをES細胞に導入する方法は限定されないが、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム法等の公知の方法により行うことができる。
図3に本発明の第1の実施形態のTgマウスの一例について、そのROSA26遺伝子座の配列構造を示す。図示例においては、プロモーターとしてCAGプロモーターが使用され、プロモーターの下流に2つの同じ向きのloxP配列とこれらに挟まれたマーカー遺伝子とストップコドンを有し、さらにその下流にFGF18遺伝子、ストップコドン、ポリAシグナルを含む。本明細書において、以降、図示例の配列構造の遺伝子を有するTgマウスを、「CAG-LSL-FGF18 Tgマウス」とも称する。
ターゲティングベクターが導入されたES細胞は、ベクター中のマーカーにより選択することができる。例えば、ネオマイシン耐性遺伝子をマーカーとして用いる場合、G418を添加したES細胞用培地中で培養することによりターゲティングベクターが導入されたES細胞を選択することができる。また、所望のDNA構築物が導入されているかは、サザンブロッティングやPCR法によるジェノタイプ解析により確認することができる。
ターゲティングベクターが導入されたESクローンを受精卵または8細胞期胚等の初期胚に導入する。導入は、マイクロインジェクション法やアグリゲーション法等により行うことができる。受精卵または初期胚を仮親マウスに移植し、発生させ、キメラマウスを得ることができる。得られたキメラマウスを同系のマウスと交配し、LSL-FGF18の配列が挿入されているDNA構築物をヘテロで有するF1マウスを得ることができる。さらに、F1マウス同士を交配することにより、LSL-FGF18の配列が挿入されているDNA構築物をホモで有するマウスを得ることができる。
2.第2の実施形態-肝臓特異的にFGF18を過剰発現するTgマウス(FGF18 Tgマウス)
本発明の第2の実施形態は、肝臓特異的にFGF18を過剰発現するTgマウスである。具体的には、以下の(i)及び(ii)の特徴を有する、Tgマウスである。
(i)ROSA26遺伝子座に、5’末端側より、プロモーター配列、loxP配列、ストップコドン、loxP配列、FGF18遺伝子を、この順で含むDNA構築物が導入され、かつ、
(ii)5’末端側より、アルブミンプロモーター、Cre遺伝子をこの順で含む、DNA構築物が導入されている。
以下、本発明の第2の実施形態のTgマウスを「FGF18 Tgマウス」とも称する。
本発明の第2の実施形態のTgマウスでは、肝臓特異的にFGF18が過剰発現するとともに、出生後6週間程度という比較的短期間で肝臓の線維化が生じる。そのため、本発明の第2の実施形態のTgマウスは、哺乳類、特にヒトの肝線維化のモデルマウスとして有用であり、短期間で構築可能である、という利点を有する。
通常、LSL構造と目的の遺伝子を含むDNA構築物を含むTgマウスと、Cre発現ベクターを導入したCre発現Tgマウスとを交配することにより、目的の遺伝子を発現するTgマウスを作製することができる。あるいは、LSL構造と目的の遺伝子を含むターゲティングベクターを導入したES細胞に、さらにCre発現ベクターを導入して得られたES細胞クローンからマウスを得ることによっても同様のTgマウスを作製することができる。
本発明のFGF18 Tgマウスは、肝線維化に関与することが見いだされたFGF18遺伝子を肝臓において過剰発現することを要する。一方、FGF18遺伝子は、肺、肢芽、口蓋、骨格、中枢神経系、毛包などの一部の組織の発達に関与するタンパク質であることから、肝臓以外において過剰発現することで、マウスの生存にかかわる機能に影響を与える可能性がある。そのため、Tgマウスに導入したFGF18遺伝子は、肝臓特異的に発現させる必要がある。そこで、本発明のFGF18 Tgマウスにおいて、導入されるCre遺伝子は、肝臓特異的に発現誘導するアルブミンプロモーターと共に、アルブミンプロモーターに制御される形で(Albumin-Cre)導入されることを要する。
本発明のFGF18 Tgマウスは、一例として、本発明の第1の実施形態のTgマウス(LSL-FGF18 Tgマウス)と、Albumin-Creマウスとを交配させることを含む、Tgの作製方法により作製することができる。本明細書において、「Albumin-Creマウス」とは、アルブミンプロモーターの制御下でCreを発現するTgマウスを指す。Albumin-Creマウスは、例えば、L. Wu, et al., Genesis, 36, 177-181 (2003)に記載のものを使用できる。また、Albumin-Creマウスは、例えば、The Jackson Laboratoryから入手することができる。
本発明のLSL-FGF18 TgマウスとAlbumin-Creマウスを交配して得られたTgマウスにおいては、肝細胞においてのみCreリコンビナーゼが作用し、ストップカセット(LSL)が除去されて終止コドンが除去される。その結果、FGF18遺伝子が肝臓特異的に過剰発現する。
Cre-loxPシステムの代わりに、FLP-FRTシステムを用いる場合には、Creリコンビナーゼの代わりにFLPリコンビナーゼを用い、loxP配列の代わりにFRT配列を利用することができる。
本発明の第2の実施形態において、FGF18、loxP配列、Cre、マーカー遺伝子の構造・遺伝子塩基配列、使用する材料等の詳細な条件は、特に矛盾のない限り、「1.第1の実施形態 LSL-FGF18 トランスジェニックマウス」の項に記載した通りである。また、本発明は、第2の実施形態のTgマウスに加えて、本発明の第1の実施形態のTgマウスとAlbumin-Creマウスとを交配させることを含む、Tgマウスの作製方法をも包含する。作製方法の詳細な条件についても、特に矛盾のない限り、「1.第1の実施形態 LSL-FGF18 トランスジェニックマウス」の項に記載した通りである。
3.本発明の第2の実施形態のTgマウス(FGF18 Tgマウス)の表現形
本発明の第2の実施形態のTgマウス(FGF18 Tgマウス)は、以下のような表現型を有する。
(1)肝臓特異的にFGF18を過剰発現する。
(2)肝組織のKi67陽性領域がコントロールと比較して大きい。
(3)体重に占める肝臓の重量割合が約8%以上である。
(4)肝臓血管壁でコラーゲンII及びIIIの発現が亢進する。
(5)肝臓組織中のヒドロキシプロリン量が亢進する。
(6)20週齢を過ぎると肝臓に大きな嚢胞を形成する。
4.本発明のTgマウス(LSL-FGF18 Tgマウス、FGF18 Tgマウス)の利用
本発明の第1の実施形態のTgマウス(LSL-FGF18 Tgマウス)は、肝線維化のモデルマウスとなり得る、本発明の第2の実施形態のTgマウス(FGF18 Tgマウス)の作製に利用することができる。
本発明の第2の実施形態のTgマウス(FGF18 Tgマウス)は、肝臓において短期間で自然に線維化を発症することから、線維化のメカニズム解析や線維化を標的とした治療薬のin vivoでの評価に利用できると考えられる。発明者らは、チオアセトアミド(TAA)による肝臓の線維化時にFGF18の発現が上昇することを見出すとともに、ヒトのNASH発症のモデルとなるコリン欠乏食+エチオニン添加水(CDE)食をFGF18 Tgマウスに投与することで、NASHの病態が急速に進展するという結果を得た。従来の高脂肪食投与によるNASHモデルマウス作製には、その線維化を誘導するのに1年以上という非常に長い時間を要する。FGF18 Tgマウスは、高脂肪食投与による線維化に至る時間を大幅に短縮することが可能である。本発明で樹立されたFGF18 Tgマウスは、病態の増悪に線維化が関与する疾患について、モデルマウスを介した疾患解析、治療薬スクリーニング等を短期間で実施するのに非常に有用である。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[参考例1]チオアセトアミド誘導性肝線維化マウスの遺伝子発現解析
マウス(6~8週齢、C57BL/6(日本クレア社より入手))3匹について、チオアセトアミド(TAA)を300mg/L含む飲料水を4週間飲水させたところ、全てのマウスにおいて肝臓の線維化が誘導された。肝臓が線維化したマウス(肝線維化マウス)と、TAAを含まない飲料水を飲水させた以外は同様の条件で飼育したマウス(対照マウス)について、それぞれ肝臓を摘出し、肝線維化マウスにのみ多く発現する遺伝子を解析した結果、これまで肝線維化に関与することが報告されていない因子としてFGF18が検出された。
[参考例2] FGF18の一過性発現
HTVi(Hydrodynamic tail vein injection)法を用いて、マウスにFGF18を一過性に過剰発現させた。まず、マウスFGF18 cDNAをpLIVE(Mirus社より入手)に組み込んだプラスミドベクターを作製した。このプラスミドベクターは、マウスAFPエンハンサーおよびマウスAlbuminプロモーターの下流で目的の遺伝子を肝細胞特異的に発現させる特徴を有する。1匹当たり10μgのプラスミドベクターを2mLのリンゲル液に溶解して、マウス(6~8週齢、C57BL/6(日本クレア社より入手))4匹に、尾静脈から注入した(試験マウス)。FGF18cDNAに代えてGFPcDNA(配列番号7の塩基配列)をpLIVEに組み込んだプラスミドベクターを調製し、同様に4匹のマウスに注入した(対照マウス)。注入の1週間後に各マウスより肝臓を摘出し、ホルマリンで固定した後、パラフィン切片を作製した。各パラフィン切片について、抗Ki67抗体(No.Ab16667(Abcam社より)を用いて免疫染色を行った。
図1は、試験マウス及び対照マウスの肝組織について、抗Ki67抗体による免疫染色を行った画像である。図2は、試験マウス及び対照マウスの肝組織について、抗Ki67抗体による免疫染色を行った画像の全組織領域に占めるKi67陽性領域の割合を比較したグラフである。図中の「*」は、対応のある両側スチューデントt検定においてp<0.05であったことを示す。少なくともFGF18を一過性に発現させるだけでは肝臓の線維化を誘導することはできなかった。
[実施例1] 肝臓特異的にFGF18を過剰発現するマウスの作製
肝臓特異的にFGF18を過剰発現するマウスを以下の手法で樹立した。ROSA26遺伝子座にCAGプロモーター、loxP配列、ストップコドン、ネオマイシン耐性遺伝子(neo)逆向き配列、loxP配列及びポリAシグナルが挿入された配列を含む市販のベクター(CTV(Plasmid #15912、Addgene社より入手)よりIRES配列及びEGFP遺伝子を切り出し、AscIサイトを用いてFGF18遺伝子を挿入して発現ベクターを調製した。調製したベクターの塩基配列は、配列番号8に示す通りである。調製したベクターを、マウスES細胞(C57BL/6xCBA、熊本大学より入手)のROSA26遺伝子座に、CRISPR/Cas9法を用いてエレクトロポレーションにより導入した。ベクターを導入したES細胞とICRマウス由来の卵とを合わせてキメラを作製し、キメラマウスを得た。キメラマウスとC57/BL6マウスを交配し生殖系列移行(germline transmission)を確認した。得られたキメラマウスを、F0世代マウスとして同系マウスと交配させて、導入したDNA構築物の遺伝子配列をホモで有するTgマウス(CAG-LSL-FGF18 Tgマウス)を得た。
CAG-LSL-FGF18 TgマウスをAlbuminプロモーター(肝細胞で発現)依存性にCreリコンビナーゼを発現するマウス(Albumin-Creマウス(No.003574、Jackson Laboratoryより入手))と交配させて交配マウスを得た。交配マウスでは、肝細胞で特異的にCreが発現するため、肝細胞ではCAGプロモーターの直下に存在するストップコドンが排除されて、FGF18が過剰発現する。以下、前記交配マウスを「FGF18 Tgマウス」と表記する。
[実施例2] FGF18 Tgマウスの肝線維化
FGF18 Tgマウスはメンデルの法則にしたがって出生し、生殖機能も有しており、外見上は異常を認めなかった。しかし、6~8週齢のマウスを解剖して摘出した肝臓重量を測定したところ、同腹の野生型マウスでは肝臓の全体重に占める割合が約5%であったのに対して、FGF18 Tgマウスは約8%までに増加していた(図4)(n=5)。図中の「****」は、対応のない両側スチューデントt検定においてp<0.0001であったことを示す。
摘出した肝臓をホルマリンで固定した後、パラフィン切片を作製し、組織学的な解析を実施した。その結果、FGF18 Tgマウスの肝臓では単核球の浸潤と、太い血管の内皮細胞の増加が認められた。さらに抗Ki67抗体を用いた免疫染色を行ったところ、肝細胞と太い血管の内皮細胞がKi67陽性であり、これらの細胞が増殖していることが明らかとなった(図5)。常法に従ってSirius Red染色を行ったところ、FGF18 Tgマウスで染色(陽性)領域の増加が見られた(図6)。図5及び図6のスケールバーは100μmをしめす。次いで、線維化に伴い増加するコラーゲンの構成成分であるヒドロキシプロリンの肝臓組織中の含有量を測定した。具体的には、各マウスの肝臓組織を加水分解した後、ヒドロキシプロリンアッセイキット(No.STA-675、Cell Biolabs Inc.より入手)を用いてヒドロキシプロリンの定量を行った(n=5)。その結果、FGF18 Tgマウスの肝臓で、ヒドロキシプロリンが野生型マウスと比較して増加していた(図7)。図中の「*」は、対応のない両側スチューデントt検定においてp<0.05あったことを示す。以上より、FGF18を肝細胞で過剰に発現させたマウスを、自然に肝臓で線維化が誘導できるマウスとして樹立することに成功した。
上記の方法で構築されたFGF18 Tgマウスに、人のNASHモデルであるコリン欠乏食+エチオニン添加水(CDE)食を投与したところ、線維化がさらに急速に進展することが確認された(データ示さず)。このことから、FGF18 TgマウスがNASHの病態を反映し得ることが示された。
本発明の肝線維化モデルマウスは、ヒトを含む哺乳類動物におけるNASH等の肝線維化に対する治療薬・治療方法の開発等に有用であり、医学分野、医薬品製造分野等において利用可能である。

Claims (9)

  1. 肝臓特異的に線維芽細胞増殖因子18(FGF18)を過剰発現するトランスジェニックマウス。
  2. 以下の(i)及び(ii)の特徴を有する、請求項1に記載のトランスジェニックマウス:
    (i)ROSA26遺伝子座に、5’末端側より、プロモーター配列、loxP配列、ストップコドン、loxP配列、FGF18遺伝子を、この順で含むDNA構築物が導入され、かつ、
    (ii)5’末端側より、アルブミンプロモーター、Cre遺伝子をこの順で含む、DNA構築物が導入されている。
  3. 前記FGF18遺伝子が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、又は配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のトランスジェニックマウス。
  4. ROSA26遺伝子座に、5’末端側から、プロモーター配列、loxP配列、ストップコドン、loxP配列、FGF18遺伝子を、この順で含むDNA構築物が導入された、肝臓特異的にFGF18を過剰発現するトランスジェニックマウスを作製するためのトランスジェニックマウス。
  5. 前記FGF18遺伝子が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、又は配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項4に記載のトランスジェニックマウス。
  6. 前記プロモーター配列がCAGプロモーター配列であり、前記DNA構築物が、さらに3’末端側にポリAシグナルを含む、請求項4又は5に記載のトランスジェニックマウス。
  7. 請求項4~6のいずれか1項に記載のトランスジェニックマウスとAlbumin-Creマウスとを交配させることを含む、トランスジェニックマウスの作製方法。
  8. 請求項7に記載の方法により得られる、トランスジェニックマウス。
  9. 肝線維化モデルマウスである、請求項1、2又は8に記載のトランスジェニックマウス。
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