JP2023028266A - 板反転用治具、及び金属板の反転方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このように、台に載置した鋼板を反転する反転作業が必要な場合がある。しかし、重量物である鋼板を手作業で反転させることは困難である。
従来、鋼板を反転させる簡易な方法としては、例えば特許文献1等に記載されているクレーンを用いた反転方法がある。
また、クレーンを用いない鋼板の反転方法としては、例えば、特許文献2や特許文献3に記載のような、鋼板の反転装置を用いた方法もある。
一方、特許文献1のような、クレーンを用いた鋼反転方法は、クレーンが設置されていれば、鋼板の反転を簡易に行うことができる。しかし、特許文献1のように、鋼板の端部を吊り上げて反転させる場合に、次のような課題がある。
本発明は、上記のような点に着目したもので、既に工場に設置されているクレーンを用いて、クレーン操作の熟練者でなくても、簡単かつ安全に反転作業が可能になる技術を提供することを目的とする。
課題解決のために、本発明の一態様は、台の上に、一方の面を上方に向けて載置された金属板の端部を吊り上げて、その金属板を反転させる際に使用される板反転用治具であって、上記金属板の吊り上げ側とは反対側の端部に対し着脱可能に固定する把持部と、上記把持部と一体に形成され上記反対側の端部から離れる方向に延在する突出部と、を備え、上記突出部の先端部の位置は、上記金属板に取り付けられた状態で、上記金属板の厚さ方向において、上記金属板の厚さ方向中央位置に対し、上記金属板の他方の面側に偏心している、ことを要旨とする。
このため、単純に金属板の端部を吊り上げるだけで、金属板が鉛直な姿勢状態となる前に、接地している治具先端部を支点として、金属板に対し反転方向へのモーメントが発生する。このため、単純に金属板を吊り上げ吊り降ろすだけで、金属板を反転させることが可能となる。
本実施形態では、金属板として鋼板を例に挙げて説明する。本発明は、鋼板以外の金属板に対しても適用可能である。
また、本実施形態では、金属板の形状として対向する2辺を有する板形状の場合を例に挙げて説明する。
また、本実施形態では、台の上に載置された鋼板を反転する場合を例として示す。
反転前における、鋼板の上面が一方の面となり、下面が他方の面となる。
なお、鋼板1は、例えば、磁石によって吊られて、台5の上に載置される。
図1及び図2では、鋼板1に吊り治具2及び板反転用治具4が取り付けられた状態が図示されているが、鋼板1を台5に載置してから、鋼板1に、吊り治具2及び板反転用治具4を取り付ければよい。
まず、板反転用治具4の構成について説明する。
本実施形態の板反転用治具4は、台5の上に、一方の面を上方に向けて載置された鋼板1の端部を吊り上げて、その鋼板1を反転させる際に使用される治具である。
板反転用治具4は、図1、図3に示すように、把持部4Aと突出部4Bとを備える。
把持部4Aは、鋼板1の端部に固定するための把持機構を構成する部分である。
本実施形態の把持部4Aは、図3に示すように、差し込み部44と締付け構造(把持機構)とを備える。
差し込み部44は、対向する一対の板部41、42と、一対の板部41、42の一端部側を連結する底板部43とによって、一辺が開口した略U次状に形成されている。上記一対の板部41、42は、処理対象の鋼板1のうちの一番板厚が厚い板の板厚より広い間隔を空けて対向配置されている。
また、把持機構は、ボルトを用いた機構に限定されず、他の公知の把持機構を採用しても良い。例えば把持機構は、例えば油圧等を用いた把持機構でも良いし、対向する一対の板部41、42の一方が対向方向に移動するようなクランプ機構でも良い。すなわち、把持機構は、鋼板1の端部に固定できればとくに制限しない。
突出部4Bは、図1に示すように、把持部4Aと一体に形成され、把持部4Aから離れる方向に延在する。
その突出部4Bの先端部4Baの位置は、把持部4Aを鋼板1に取り付けられた状態で、鋼板1の厚さ方向において、鋼板1の厚さ方向中央位置に対し、鋼板1の裏面1B側(下面側)に偏心している。好ましくは、突出部4Bの先端部4Baの位置は、鋼板1に取り付けられた状態で、鋼板1の厚さ方向において、鋼板1の裏面1B(下面)よりも外側(下方)に偏心していると良い。
また、本実施形態では、突出部4Bにおける、先端部4Baから鋼板1の表面1A側(上面側)に向かう輪郭形状が円弧状に形成されている。円弧形状の曲線形状とした場合、鋼板を、滑らかに反転させることができる。
ここで、先端部4Baができるだけ一方の板部42よりも外側に偏心していることが好ましい。
すなわち、図6に示すように、先端部4Baにおける、一方の板部42からの偏心量(オフセット量)H1[mm]は、(1)式で規定される条件を満たす必要がある。
H1 +H2 < D1 ・・・(1)
ここで、
H2[mm]:下側の板部42の外面(下面)から把持した鋼板1の下面1Bまでの距離(図6参照)
D1[mm]:台5の高さ
である。
ここで、突出部4Bにおける、把持部4Aと先端部4Baとを結ぶ輪郭形状は、直線や円弧に限定されず、他の輪郭形状であってもよい。先端部4Baが、鋼板1の板厚方向に偏心した形状となっていればよい。
本実施形態では、磁着などによって搬送してきた鋼板1を、図1及び図2のように、台5の上に載置する。なお、本実施形態では、鋼板1を左方向に向けて反転させるために、台5の右側に鋼板1を載置した。
図2中、符号10は、溶接ビードを示す。鋼板1に対する溶接処理は、前工程で実行しても良いし、台5に載置してから実行しても良い。
次に、図2に示すように、鋼板1の右辺に吊り治具2を取り付けると共に、鋼板1の左辺に対し、上記構成の板反転用治具4を取り付ける。なお、吊り治具2及び板反転用治具4は、安定性を考えて幅方向の2箇所に設ける。
板反転用治具4は、図1に示すように、突出部4Bの先端が床6側になる向きで、差し込み部44を構成する一対の板部41、42の間に鋼板1に差し込み、鋼板1の端面を底板部43に当接させる。なお、差し込み前に、板厚に応じて、下側の板部42のボルト46の螺合量(板部42の内面からの突出量)を調整しておく。
次に、天井クレーンの巻き下げたワイヤ30(若しくはチェーン)の先端部に設けたフックを、吊り治具2に引っ掛ける。図1中、符号3は、クレーンの巻上げ巻き戻し器である。
なお、天井クレーンの位置は、平面視において、治具の先端部4Baの上方位置よりも左側に位置することが好ましい。
このとき、治具の先端部4Baが床6に接地するまでは、台5に接触する、鋼板1の左辺の端面下部の角1Bbを支点として、鋼板1は回転しながら吊り上げられる。
治具の先端部4Baが床6に接地すると、その接地した治具の先端部4Baを支点として、鋼板1は回転ながら吊り上げられ、鋼板が起きてくる。
すなわち、鋼板1が鉛直に立ち上がる前、つまり、鋼板1が地切りされる前に、鋼板1は、自重で自動的に、反転側(左側)に傾こうとする。
クレーン操作者は、鋼板1が反転側に傾いたことを確認したら、クレーンによるワイヤ30の巻き上げを停止し、ワイヤ30を巻き戻すことで、鋼板1の自重でその後の反転作業が行われる。
さらに、クレーンの操作も簡単であり、鋼板1の片側を上げるためのクレーンによるワイヤ30の巻き上げと、鋼板1が反転側に傾いた後には、ワイヤ30の巻き下げだけで反転作業が可能であり、クレーン操作自体も簡易な操作で完了することができる。
また、治具も簡単な構成とすることができる。
また、既に工場に設置してあるクレーンを用いて鋼板1の反転作業が可能であるため、大掛かりな反転装置導入のためのコストを削減でき、わずかな治具の製作コストだけでよいというメリットがある。
ここで、図5は、図4に比べて、治具の先端部4Baの偏心量(オフセット量)を小さくした場合の例であり、先端部4Baを通過する鉛直線VL上に鋼板1の重心Cgが位置した時の、鉛直方向に対する鋼板1の傾きが、図4に比べて小さくなることが分かる。なお、図4及び図5に示す傾き角は例示である。
このように、確実に地切りを防止するためには、オフセット量H1は大きいことが好ましい(図6参照)。ただし、上記(1)式を満足しない場合には、鋼板1に対し治具を取り付けることが困難となる。
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)台の上に、一方の面を上方に向けて載置された金属板の端部を吊り上げて、その金属板を反転させる際に使用される板反転用治具であって、
上記金属板の吊り上げ側とは反対側の端部に対し着脱可能に固定する把持部と、
上記把持部と一体に形成され上記反対側の端部から離れる方向に延在する突出部と、
を備え、
上記突出部の先端部の位置は、上記金属板に取り付けられた状態で、上記金属板の厚さ方向において、上記金属板の厚さ方向中央位置に対し、上記金属板の他方の面側に偏心している、
ことを特徴とする板反転用治具。
(3)台の上に、一方の面を上方に向けて載置された金属板の端部を吊り上げて、その金属板を反転させる際に使用される板反転用治具であって、
上記金属板の板厚より広い間隔を空けて対向する一対の板部を有する差し込み部を備え、当該一対の板部間に差し込んだ金属板の端部を把持可能な把持部と、
上記差し込み部と一体に形成され、上記差し込み部の差し込み側とは反対側に突出し、先端部が、上記一対の板部の対向方向において、上記一対の板部の一方の板部よりも外側に位置している突出部と、
を備えることを特徴とする板反転用治具。
上記金属板の端部に対し、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した板反転用治具を取付け、
上記板反転用治具を取り付けた端部から離れた金属板の端部を吊り上げることで、上記板反転用治具の上記先端部を地面に接地させ、金属板の自重で、当該先端部を支点として金属板を反転側に傾斜させる。
1A 表面(第1の面)
1B 裏面(他方の面)
1Bb 角
2 吊り治具
4 板反転用治具
4A 把持部
4B 突出部
4Ba 先端部
5 台
6 床
30 ワイヤ
41、42 板部
41a、42aボルト穴
43 底板部
44 差し込み部
46、47 ボルト
Cg 重心
H1 偏心量(オフセット量)
M 回転モーメント
VL 鉛直線
Claims (4)
- 台の上に、一方の面を上方に向けて載置された金属板の端部を吊り上げて、その金属板を反転させる際に使用される板反転用治具であって、
上記金属板の吊り上げ側とは反対側の端部に対し着脱可能に固定する把持部と、
上記把持部と一体に形成され上記反対側の端部から離れる方向に延在する突出部と、
を備え、
上記突出部の先端部の位置は、上記金属板に取り付けられた状態で、上記金属板の厚さ方向において、上記金属板の厚さ方向中央位置に対し、上記金属板の他方の面側に偏心している、
ことを特徴とする板反転用治具。 - 上記突出部の先端部の位置は、上記金属板に取り付けられた状態で、金属板の厚さ方向において、上記金属板の他方の面よりも外側に偏心している、
ことを特徴とする請求項1に記載した板反転用治具。 - 台の上に、一方の面を上方に向けて載置された金属板の端部を吊り上げて、その金属板を反転させる際に使用される板反転用治具であって、
上記金属板の板厚より広い間隔を空けて対向する一対の板部を有する差し込み部を備え、当該一対の板部間に差し込んだ金属板の端部を把持可能な把持部と、
上記差し込み部と一体に形成され、上記差し込み部の差し込み側とは反対側に突出し、先端部が、上記一対の板部の対向方向において、上記一対の板部のうちの一方の板部よりも外側に位置している突出部と、
を備えることを特徴とする板反転用治具。 - 台の上に載置された金属板を反転させる反転方法であって、
上記金属板の端部に対し、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した板反転用治具を取付け、
上記板反転用治具を取り付けた端部から離れた金属板の端部を吊り上げることで、上記板反転用治具の上記先端部を地面に接地させ、金属板の自重で、当該先端部を支点として金属板を反転側に傾斜させる、
ことを特徴とする金属板の反転方法。
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