JP2022147326A - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶着性の高い材料を高速断続切削、高速連続切削加工に供した場合であっても、優れた耐摩耗性、耐欠損性を長期間にわたり発揮する表面被覆切削工具の提供【解決手段】工具基体と該工具基体の表面に被覆層を有し、前記被覆層は、その平均層厚が0.5~10.0μmであり、平均組成を組成式:(Ti1-x-yAlxNiy)Nで表したとき、xは0.50~0.65、yは0.06~0.20であり、平均粒径が20~100nmのNaCl型面心立方構造を有する結晶粒を含み、かつ、大きな混入液滴が占める面積割合が0.100%以下で、小さな混入液滴が占める面積割合が0.001~0.100%である、ことを特徴とする表面被覆切削工具。【選択図】なし
Description
この発明は、表面被覆切削工具(以下、被覆工具ということがある)に関する。
従来、WC基超硬合金等を工具基体とし、この工具基体の表面に被覆層を蒸着法により形成した被覆工具が知られている。この被覆工具は耐摩耗性を有しているが、この耐摩耗性をさらに向上させるべく、種々の提案がなされ、被覆層の組成に関する提案もなされている。
例えば、特許文献1には、工具基体上の被覆層が、Ti元素と、Al元素と、Ni、Co、Fe、Mn、Yの中の少なくとも1種の金属元素と、炭素および/または窒素の非金属元素とでなる単層もしくは多層である被覆工具が記載され、該被覆工具は、低速から高速の切削に至るまで長寿命であるとされている。
また、例えば、特許文献2には、超硬合金表面に(Ti1-u-v-wAluNivMw)(CxN1-x)(M:窒化物形成元素、0≦u≦0.75、0.005≦v≦0.05、0≦w≦0.3、u+v+w<1、0≦x≦0.5)の被覆層を有する被覆工具が記載され、該被覆工具の被覆層は高温潤滑性を有し、耐酸化性に優れているとされている。
本発明は、前記事情や提案を鑑みてなされたもので、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼のような、被覆工具に対する溶着性の高い材料を高速連続切削加工に供した場合であっても、優れた耐摩耗性、耐欠損性を長期間にわたり発揮する表面被覆切削工具を得ることを目的とする。
ここで、溶着性の高い材料に対する高速連続切削加工とは、例えば、オーステナイトステンレス鋼では、60m/minよりも速い切削速度において切削工具の刃先が連続して切削を行う加工をいう。
本発明の実施形態に係る表面被覆切削工具は、
工具基体と該工具基体の表面に被覆層を有し、
前記被覆層は、
その平均層厚が0.5~10.0μmであり、
平均組成を組成式:(Ti1-x-yAlxNiy)Nで表したとき、xは0.50~0.65、yは0.06~0.20であり、
平均粒径が20~100nmのNaCl型面心立方構造を有する結晶粒を含み、
かつ、
大きな混入液滴が占める面積割合が0.100%以下で、小さな混入液滴が占める面積割合が0.001~0.100%である。
工具基体と該工具基体の表面に被覆層を有し、
前記被覆層は、
その平均層厚が0.5~10.0μmであり、
平均組成を組成式:(Ti1-x-yAlxNiy)Nで表したとき、xは0.50~0.65、yは0.06~0.20であり、
平均粒径が20~100nmのNaCl型面心立方構造を有する結晶粒を含み、
かつ、
大きな混入液滴が占める面積割合が0.100%以下で、小さな混入液滴が占める面積割合が0.001~0.100%である。
さらに、前記実施形態に係る表面被覆切削工具は、次の事項(1)を満足してもよい。
(1)前記被覆層のナノインデンテーション硬さが30GPa以上であること。
前記によれば、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼のような、被覆工具に対する溶着性の高い材料を高速連続切削加工に供した場合であっても、優れた耐摩耗性、耐欠損性を長期間にわたり発揮する。
本発明者は、前記特許文献1~2に記載された被覆工具について検討した結果、次の(1)~(3)を認識した。
(1)特許文献1に記載された被覆工具は、アークイオンプレーティングを用いた成膜を行っていることにより被覆層中に大きな混入液滴が存在し、この混入液滴を起点とした被覆層の欠損やチッピングが発生しやすいこと。
(2)特許文献1に記載された被覆工具は、S45Cなどの炭素鋼の切削加工においては優れた靭性を示すが、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼の高速切削においては、耐欠損性・耐溶着性が満足ではなく、一段の工具寿命の改善が必要であること。
(3)特許文献2に記載された被覆工具は、被覆層がNi酸化物による固体潤滑性を有し、合金鋼または高硬度鋼の切削性能に関して優れた耐摩耗性を示すものの、オーステナイト系ステンレス鋼の切削においては耐熱性に劣り、一段の工具寿命延長が必要であること。
本発明者は、この認識を基に、被覆層の組成、混入液滴について鋭意検討した。その結果、被覆層の成分としてTi、Alの他にNiを加え、混入液滴の大きさを制御することによって、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼のような、被覆工具に対する溶着性の高い材料を高速連続切削加工に供した場合であっても、優れた耐摩耗性、耐欠損性を長期間にわたり発揮する被覆工具を得ることができるという知見を得た。
以下、本発明の一実施形態の表面被覆切削工具について、説明する。なお、本明細書および特許請求の範囲において数値範囲を「A~B」(A、Bはともに数値である)と表現するとき、その範囲は上限(B)および下限(A)の数値を含んでおり、上限(B)と下限(A)の単位は同じである。また、数値は公差を含む。
1.被覆層
(1)平均層厚
被覆層の平均層厚は、0.5~10.0μmであることが好ましい。その理由は、平均層厚が、0.5μm未満であると、長期にわたって耐摩耗性、耐欠損性を発揮することが難しく、一方、10.0μmを超えると、被覆層が有する残留応力によって被覆層の工具基体からの剥離が生じやすくなり、チッピングが発生しやすくなるためである。
被覆層の平均層厚は、0.5~3.0μmであることがより好ましい。
(1)平均層厚
被覆層の平均層厚は、0.5~10.0μmであることが好ましい。その理由は、平均層厚が、0.5μm未満であると、長期にわたって耐摩耗性、耐欠損性を発揮することが難しく、一方、10.0μmを超えると、被覆層が有する残留応力によって被覆層の工具基体からの剥離が生じやすくなり、チッピングが発生しやすくなるためである。
被覆層の平均層厚は、0.5~3.0μmであることがより好ましい。
なお、被覆層の平均層厚は、例えば、集束イオンビーム装置(FIB:Focused Ion Beam system)、クロスセクションポリッシャー装置(CP:Cross section Polisher)等を用いて、硬質被覆層を任意の位置の縦断面(インサートでは、工具基体表面の微小な凹凸を無視して、工具基体の表面が平らな面として扱ったときのこの面に対する垂直方向の断面。軸物工具では軸に対して垂直な断面。)で切断して観察用の試料を作製し、その縦断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いた観察により複数箇所(3箇所以上)の層厚の測定結果を平均したものである。
(2)平均組成
被覆層の平均組成は、組成式:(Ti1-x-yAlxNiy)Nで表したとき、xは0.50~0.65、yは0.06~0.20であることが好ましい。
その理由は、次のとおりである。
xが0.50未満であると、被覆層の硬さおよび耐酸化性が不十分ではなく、一方、0.65を超えると六方晶構造の結晶粒の析出量が増大し硬さが低下するためである。
被覆層の平均組成は、組成式:(Ti1-x-yAlxNiy)Nで表したとき、xは0.50~0.65、yは0.06~0.20であることが好ましい。
その理由は、次のとおりである。
xが0.50未満であると、被覆層の硬さおよび耐酸化性が不十分ではなく、一方、0.65を超えると六方晶構造の結晶粒の析出量が増大し硬さが低下するためである。
yは0.06以上でないと、Niのもたらす高温潤滑性、すなわち、切削時の高温によりNiが酸素と反応して酸化ニッケルが生成される固体潤滑性を利用して耐摩耗性を向上させることができず、一方、0.20を超えると被覆層を構成する結晶の結晶構造が乱れて硬さが低下するためである。
xは0.56~0.61、yは0.07~0.10であることがより好ましい。
平均組成は、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)を用い、電子線を硬被覆層の表面、もしくは、被覆層の任意の位置の縦断面の5箇所に照射し、それぞれの箇所から得られた被覆層を構成する元素に対応する特性X線を解析することで各元素の含有量の定量化を行い、その結果を算術平均して求める。
なお、後述する製造法の一例に従えば、(Ti1-x-yAlxNiy)とNとの比は、1:1となるように製造されるが、不可避的に(意図せずに)1:1とならないものが存在することがある。
(3)NaCl型面心立方構造の結晶粒
被覆層は、硬度を与えるために、NaCl型面心立方構造の結晶粒を有することが好ましく、NaCl型面心立方構造の結晶粒の割合は、縦断面において、面積割合として70%以上であることが好ましい。この面積割合の上限は100%、すなわち、全ての結晶粒がNaCl型面心立方構造であってよい。
被覆層は、硬度を与えるために、NaCl型面心立方構造の結晶粒を有することが好ましく、NaCl型面心立方構造の結晶粒の割合は、縦断面において、面積割合として70%以上であることが好ましい。この面積割合の上限は100%、すなわち、全ての結晶粒がNaCl型面心立方構造であってよい。
このNaCl型面心立方構造の結晶粒の平均粒径は、20~100nmであることが好ましい。その理由は、20nm未満であると、粒界界面の増加により酸素や被削材成分の拡散が発生しやすくなって、耐凝着性が低下し、一方、100nmを超えると、凝着による凝着破壊が発生したときの破壊単位が大きくなり、耐チッピング性が低下するためである。
ここで、前記平均粒径は、次のようにして求める。すなわち、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による、自動結晶方位マッピング(ACOM:Automated Crystal Orientation Mapping)-TEMを用いた解析を行い、粒界を規定する。その後、粒界によって閉じた範囲を結晶粒とし、その結晶粒の最大長さを粒径と定める。任意の20個の結晶粒に対し、それぞれ粒径を求め、その算術平均を平均粒径とする。
(4)混入液滴
被覆層において、大きな混入液滴が占める面積割合が0.100%以下(0.000%であってもかまわない)で、小さな混入液滴が占める面積割合が0.001~0.100%であることが好ましい。
その理由は、大きな混入液滴が占める面積割合が0.100%以下であれば、大きな混入液滴が存在しないと扱うことができ、被覆層における欠損の起点が少なく、耐摩耗性に優れるためであり、一方、小さな混入液滴が占める面積割合が0.001~0.100%であると、小さな混入液滴の量が適切に存在することにより、金属酸化物が生成されることによって固体潤滑性を与えるためである。
被覆層において、大きな混入液滴が占める面積割合が0.100%以下(0.000%であってもかまわない)で、小さな混入液滴が占める面積割合が0.001~0.100%であることが好ましい。
その理由は、大きな混入液滴が占める面積割合が0.100%以下であれば、大きな混入液滴が存在しないと扱うことができ、被覆層における欠損の起点が少なく、耐摩耗性に優れるためであり、一方、小さな混入液滴が占める面積割合が0.001~0.100%であると、小さな混入液滴の量が適切に存在することにより、金属酸化物が生成されることによって固体潤滑性を与えるためである。
また、このように混入液滴を制御することにより、被覆層がNiを含んでいてもNaCl型面心立方構造の結晶粒を有することができる。
ここで、混入液滴は次のようなものをいう。すなわち、被覆層の縦断面に対して、SEM-EDSのマッピング分析およびTEM-EDSマッピング分析により、Al、Ti、Ni、N成分を測定したとき、Al、Ti、Niの金属成分が検出され、かつNが検出されない領域を混入液滴と扱う。
混入液滴の大きさは、その最大長さ、すなわち、混入液滴の輪郭線上の任意の2点間の最大長さで規定する。特許請求の範囲、明細書でいう大きな混入液滴とは、この最大長さが50nm以上のものであり、小さな混入液滴とは10nm以上50nm未満のものである。
混入液滴の面積割合は、次のようにして決定する。
大きな混入液滴の面積割合は、それぞれ2μm(工具基体の表面に平行な方向)×2μm(工具基体の表面に垂直な方向、ただし、層厚が1μm未満の場合には層厚)の観察視野にて、3箇所以上をSEM-EDSマッピング分析により倍率50000倍にて縦断面を観察し、混入液滴の占める面積割合を求める。
小さな混入液滴の面積割合は、それぞれ1μm(工具基体の表面に平行な方向)×1μm(工具基体の表面に垂直な方向、ただし、層厚が1μm未満の場合には層厚)の観察視野にて、10箇所以上をTEM-EDSマッピング分析により倍率100000倍にて観察し、混入液滴の占める面積割合を求める。
大きな混入液滴の面積割合は、それぞれ2μm(工具基体の表面に平行な方向)×2μm(工具基体の表面に垂直な方向、ただし、層厚が1μm未満の場合には層厚)の観察視野にて、3箇所以上をSEM-EDSマッピング分析により倍率50000倍にて縦断面を観察し、混入液滴の占める面積割合を求める。
小さな混入液滴の面積割合は、それぞれ1μm(工具基体の表面に平行な方向)×1μm(工具基体の表面に垂直な方向、ただし、層厚が1μm未満の場合には層厚)の観察視野にて、10箇所以上をTEM-EDSマッピング分析により倍率100000倍にて観察し、混入液滴の占める面積割合を求める。
ここで、工具基体の表面とは、縦断面においてエネルギー分散型X線分析法(EDS:Energy dispersive X-ray spectroscopy)を用いた元素マッピングを実施し、得られた元素マップに対して公知の画像処理を行うことで被覆層と工具基体の界面を定め、こうして得られた被覆層と工具基体との界面の粗さ曲線について、平均線を算術的に求め、これを工具基体の表面とする。そして、この平均線に対して、垂直な方向を工具基体に垂直な方向(層厚方向)とする。
また、工具基体がドリル、エンドミルのように曲面の表面を有する場合であっても、被覆層の層厚に対して工具径が十分に大きければ、測定領域における被覆層と工具基体との間の界面は略平面となることから、同様の手法により工具基体の表面を決定することができる。
すなわち、例えばドリル、エンドミルであれば、軸方向に垂直な断面の被覆層の縦断面においてEDSを用いた元素マッピングを実施し、得られた元素マップに対して公知の画像処理を行うことで被覆層と工具基体の界面を定め、こうして得られた被覆層と工具基体との界面の粗さ曲線について、平均線を算術的に求め、これを工具基体の表面とする。そして、この平均線に対して、垂直な方向を工具基体に垂直な方向と(層厚方向)する。
(5)ナノインデンテーション硬さ
ナノインデンテーション硬さが30GPa以上であることがより好ましい。ナノインデンテーション硬さが30GPa以上であると、より耐摩耗性が向上し、加工硬化したステンレス鋼に対してもより優れた切削性能を発揮することができる。
ナノインデンテーション硬さが30GPa以上であることがより好ましい。ナノインデンテーション硬さが30GPa以上であると、より耐摩耗性が向上し、加工硬化したステンレス鋼に対してもより優れた切削性能を発揮することができる。
ナノインデンテーションの硬さは超微小押込み硬さ試験機を用いて測定する。押込み硬さは、被覆層の厚さ方向に垂直に所定荷重1.96×10-3N(200mgf)で所定の圧子(例えば、ベルコビッチ形状圧子とよばれる三角錐形状のダイヤモンド圧子)を押し込み、圧子が押し込んだ押込み深さに基づいて算出する。
2.工具基体
(1)材質
材質は、従来公知の工具基体の材質であれば、前述の目的を達成することを阻害するものでない限り、いずれのものも使用可能である。一例をあげるならば、超硬合金(WC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいは、さらに、Ti、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含むもの等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの等)、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、cBN焼結体、またはダイヤモンド焼結体のいずれかであることが好ましい。
(1)材質
材質は、従来公知の工具基体の材質であれば、前述の目的を達成することを阻害するものでない限り、いずれのものも使用可能である。一例をあげるならば、超硬合金(WC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいは、さらに、Ti、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含むもの等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの等)、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、cBN焼結体、またはダイヤモンド焼結体のいずれかであることが好ましい。
(2)形状
工具基体の形状は、切削工具として用いられる形状であれば特段の制約はなく、インサートの形状、ドリルの形状が例示できる。
工具基体の形状は、切削工具として用いられる形状であれば特段の制約はなく、インサートの形状、ドリルの形状が例示できる。
3.製造方法
スパッタンリング法または混入液滴の抑制が容易な高出力パルススパッタリング(High Power Impulse Magnetron Sputtering:HiPIMS)法を用いることができる。
スパッタンリング法または混入液滴の抑制が容易な高出力パルススパッタリング(High Power Impulse Magnetron Sputtering:HiPIMS)法を用いることができる。
次に、実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
原料粉末として、いずれも1~3μmの平均粒径を有するWC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末、およびCo粉末を用意した。これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した。その後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結した。焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体1~2を作製した。ついで、切り刃部分にホーニング加工を施さないISO規格・DCGT11T302Mのインサート形状を持ったWC基超硬合金製の工具基体3~4を同様に作製した。
続いて、これら工具基体1~4に対して、以下の(a)~(c)の手順により被覆層を形成した。
(a)前記工具基体1~4のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、高出力パルススパッタリング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部に沿って装着した。一方、高出力パルススパッタリング装置内には、回転テーブルを挟んで対向する4か所にTiとAlとNiの焼結体ターゲットを配置した。
(b)前記装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら公転する工具基体に-200Vの直流バイアス電圧を印加した。その後、前記装置内へ放電・スパッタ用ガスとしてアルゴン(以下Arと表記する)ガスを導入し、2.0Paの雰囲気とした。さらに前記装置内に具備されるタングステンフィラメントへ40Aの電流を流すことによりArイオンを励起させ、前記工具基体を1時間、Arボンバード処理した。
(c)前記装置内にスパッタ用ガスとしてArガスと窒素ガスを導入して、装置内雰囲気を0.4~0.6Paとし、TiとAlとNiの焼結体ターゲットに表2に示される所定のパルススパッタ条件で、層厚に対応した時間で高出力パルススパッタを行った。これによって表3に示す実施例被覆インサート1~22(以下、実施例1~22と総称する)をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、これら工具基体1~4に対して、表4に示す条件で前記(a)~(c)の手順により被覆層を形成し、表5に示す比較被覆工具としての比較被覆インサート1~20 (以下、比較例1~20と総称する)をそれぞれ製造した。
次に、実施例1~22、比較例1~20に対して、以下の切削試験1および2を行い、その結果を、それぞれ、表6、および表7に示す。
実施例1~11および比較例1~10について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、以下の条件で、乾式高速連続切削加工試験(切削試験1)を実施した。
(切削条件1)
被削材:SUS304
工具形状:ISO-CNMG120408
切削方式:乾式連続旋削加工(ターニング)
切削速度:220m/min
切込み:1.0mm
送り:0.4mm
切削時間:25分
被削材:SUS304
工具形状:ISO-CNMG120408
切削方式:乾式連続旋削加工(ターニング)
切削速度:220m/min
切込み:1.0mm
送り:0.4mm
切削時間:25分
切削試験終了後に逃げ面摩耗幅を測定し、チッピングの有無を観察した。ただし、切削時間の満了前にチッピングが発生した場合は、切削を中止し切削開始からの時間を計測した。
次いで、実施例12~22および比較例11~20について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、以下の条件で湿式高速連続切削加工試験(切削試験2)を実施した。
被削材:SUS316
工具形状:ISO-DCGT11T302M
切削方式:湿式連続旋削加工(ターニング)
切削速度:70m/min
切込み:1.0mm
送り:0.06mm
切削時間:180分
工具形状:ISO-DCGT11T302M
切削方式:湿式連続旋削加工(ターニング)
切削速度:70m/min
切込み:1.0mm
送り:0.06mm
切削時間:180分
切削試験終了後に逃げ面摩耗幅を測定し、チッピングの有無を観察した。ただし、切削時間の満了前にチッピングが発生した場合は、切削を中止し切削開始からの時間を計測した。
表6、7に示す切削試験の結果から明らかなように、実施例1~22は、いずれも、高速連続切削加工に供しても逃げ面摩耗幅が少なく、優れた耐摩耗性、耐欠損性を有していた。これに対して、比較例1~20は、いずれも、切削試験が終了する前にチッピングが発生しており、短寿命であった。
Claims (2)
- 工具基体と該工具基体の表面に被覆層を有する表面被覆切削工具であって、
前記被覆層は、
その平均層厚が0.5~10.0μmであり、
平均組成を組成式:(Ti1-x-yAlxNiy)Nで表したとき、xは0.50~0.65、yは0.06~0.20であり、
平均粒径が20~100nmのNaCl型面心立方構造を有する結晶粒を含み、
かつ、
大きな混入液滴が占める面積割合が0.100%以下で、小さな混入液滴が占める面積割合が0.001~0.100%である、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。 - 前記被覆層のナノインデンテーション硬さが30GPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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