JP2022142481A - 高圧ポンプ - Google Patents
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Abstract
【課題】プランジャとタペットの接触面に摩耗が生じにくい高圧ポンプを提供する。【解決手段】高圧ポンプ1は、燃料を加圧するプランジャ3と、プランジャを作動させるカム11と、カムの動作をプランジャへ押圧力として伝達するタペット4を備えている。互いに接触するプランジャの第1凸曲面F1とタペットの第2凸曲面F2は凸球面であり、接平面TPを基準として対称形状である(図2(c)) 。タペットがプランジャを押圧すると、第1凸曲面と第2凸曲面に発生する水平方向の変位が同方向となり、大きさも同程度となる(図2(d)) 。両面の間には相対的な滑りが発生しにくく、接触面での摩耗の発生の軽減がより顕著になる(図4)。【選択図】図1
Description
本発明は、カムの動作をタペットによりプランジャに伝達して往復動作させ、燃料を加圧して噴射する高圧ポンプに係り、特に、プランジャとタペットの接触面に摩耗が生じにくい高圧ポンプに関するものである。
下記特許文献1には、燃料供給ポンプの発明が開示されている。この燃料供給ポンプでは、プランジャが軸方向に沿って二体に分割され、カム15で押される吸入側のプランジャ(低圧油密部6B)と、低圧油密部6Bによって押される圧送側のプランジャ(高圧油密部6A)とされており、これら二つのプランジャの各端面の少なくとも一方が凸曲面となっている(請求項1)。また図1には、下側に位置する吸入側のプランジャ(低圧油密部6B)の端面が凸曲面とされることが記載されている。また付加的な記載として、圧送側プランジャ(高圧油密部6A)の端面31および吸入側プランジャ(低圧油密部6B)の端面32を、共に凸曲面とすることができる旨も記載されている(0034段落)。
下記特許文献2には、燃料供給装置の発明が開示されている。この燃料供給装置は、コモンレールシステムの高圧ポンプを実施形態としており、カムの力を受けるタペットの受圧面の外周近傍であるタペット側壁に溝を設けることで、タペットにおける応力の局部的集中を防止することができるものとされている(請求項1)。また、ピストン(プランジャ)26のタペット28と当接する面は、タペット28の方に僅かに膨らんだ凸状を呈することが記載されている(0006段落)。
上記特許文献1に開示された燃料供給ポンプは、筒内直接噴射式の燃料噴射装置に装備される燃料供給ポンプであり、コモンレールシステムの高圧ポンプよりも低い圧力で用いられるものであって、コモンレールシステムに必要な高い圧力の発生については考慮されていない。
上記特許文献2に開示された燃料供給装置では、タペット28と当接するピストン(プランジャ)26の面には、タペット28の方に僅かに膨らんだ凸状が形成されていることが記載されているが、このような構造はコモンレールシステムの高圧ポンプでは一般に採用実績のあるものであり、圧力、負荷がそれほど高くない場合には所期の性能を発揮することができる。しかしながら、コモンレールシステムにおいて、より高いコモンレール圧力を得るために、より高圧力、高負荷で運転する場合には問題が生じることを、後に発明の詳細な説明で説明するように、本願発明者等は確認している。
本発明は、上述した従来の技術とその課題、さらに本願発明者等の見出した課題に鑑みてなされたものであり、プランジャとタペットの接触面に摩耗が生じにくい高圧ポンプを提供することを目的としている。
請求項1に記載された高圧ポンプは、
燃料を加圧するプランジャと、
前記プランジャを往復して動作させるためのカムと、
前記プランジャと前記カムとの間に設けられ前記カムの動作を前記プランジャへ押圧力として伝達するタペットと、を備えた高圧ポンプであって、
前記プランジャの前記タペットとの接触面は第1凸曲面とされ、かつ、前記タペットの前記プランジャとの接触面は第2凸曲面とされていることを特徴としている。
燃料を加圧するプランジャと、
前記プランジャを往復して動作させるためのカムと、
前記プランジャと前記カムとの間に設けられ前記カムの動作を前記プランジャへ押圧力として伝達するタペットと、を備えた高圧ポンプであって、
前記プランジャの前記タペットとの接触面は第1凸曲面とされ、かつ、前記タペットの前記プランジャとの接触面は第2凸曲面とされていることを特徴としている。
請求項2に記載された高圧ポンプは、請求項1に記載の高圧ポンプにおいて、
前記第1凸曲面と前記第2凸曲面は、前記第1凸曲面と前記第2凸曲面の接平面を基準とした対称形状であることを特徴としている。
前記第1凸曲面と前記第2凸曲面は、前記第1凸曲面と前記第2凸曲面の接平面を基準とした対称形状であることを特徴としている。
請求項3に記載された高圧ポンプは、請求項1又は2に記載の高圧ポンプにおいて、
前記第1凸曲面と前記第2凸曲面が凸球面であり、
前記凸球面の半径が、
前記タペットの傾きによる前記プランジャと前記タペットの接触面の作用点のずれを許容値以下とする値を上限値とすることを特徴としている。
前記第1凸曲面と前記第2凸曲面が凸球面であり、
前記凸球面の半径が、
前記タペットの傾きによる前記プランジャと前記タペットの接触面の作用点のずれを許容値以下とする値を上限値とすることを特徴としている。
請求項4に記載された高圧ポンプは、請求項1乃至3の何れか一つに記載の高圧ポンプにおいて、
前記第1凸曲面と前記第2凸曲面が凸球面であり、
前記凸球面の半径が、
前記プランジャと前記タペットを構成する材料に応じ、前記プランジャと前記タペットの内部せん断応力を許容値以下とする値を下限値とすることを特徴としている。
前記第1凸曲面と前記第2凸曲面が凸球面であり、
前記凸球面の半径が、
前記プランジャと前記タペットを構成する材料に応じ、前記プランジャと前記タペットの内部せん断応力を許容値以下とする値を下限値とすることを特徴としている。
請求項5に記載された高圧ポンプは、請求項1~4のいずれかに記載の高圧ポンプにおいて、
前記タペットには、前記プランジャとの接触面に前記タペットの本体よりも硬い材質からなるプレートが備えられ、当該プレートに前記第2凸曲面が設けられていることを特徴としている。
前記タペットには、前記プランジャとの接触面に前記タペットの本体よりも硬い材質からなるプレートが備えられ、当該プレートに前記第2凸曲面が設けられていることを特徴としている。
請求項1に記載された高圧ポンプによれば、タペットからプランジャに対して押圧力が加わると、プランジャの第1凸曲面とタペットの第2凸曲面の接触面には圧縮変形が生じ、この圧縮変形によって水平方向の変位(変形)が生じる。ここで、プランジャとタペットが接触しているのは何れも凸曲面なので、第1凸曲面と第2凸曲面に発生する水平方向の変位(変形)は接触面の中央部を中心として外側に向いているため、プランジャの第1凸曲面とタペットの第2凸曲面の間に発生する変位には実質的な差が生じにくい。このため、両面の間に発生する相対的な滑りの程度は小さく抑えられ、接触面には有害な摩耗が生じにくいという効果が得られる。
請求項2に記載された高圧ポンプによれば、第1凸曲面と第2凸曲面が接平面を基準とした対称形状であるため、プランジャとタペットの材料の物性が同等か又はその差が許容範囲内である場合には、タペットからプランジャに対して押圧力が加わった場合、第1凸曲面と第2凸曲面に発生する水平方向の変位(変形)が互いに実質的に同方向に向き、大きさも実質的に同程度となる。このため、プランジャの第1凸曲面とタペットの第2凸曲面の間に発生する変位には差が生じにくく、両面の間には相対的な滑りが発生しにくい状態となるので、接触面での摩耗の発生の軽減がより顕著になる。
請求項3に記載された高圧ポンプによれば、第1凸曲面と第2凸曲面が凸球面であるため、タペットからプランジャに対して押圧力が加わった場合、第1凸曲面と第2凸曲面に発生する水平方向の変位(変形)が互いに同方向に向き、大きさが同程度となるため、両面の間には相対的な滑りが発生せず、接触面で摩耗が発生しにくい。また、第1凸曲面と第2凸曲面の半径の上限値が決められているため、タペットがプランジャに押圧力を加えた時にタペットに生じる傾きに起因して生じるプランジャとタペットの接触面の作用点のずれが小さくなる。このため、プランジャとタペットの接触面に偏摩耗が生じにくい。
請求項4に記載された高圧ポンプによれば、プランジャとタペットを構成する材料の物性に応じて第1凸曲面と第2凸曲面の凸球面としての半径の下限値が決められているため、タペットからプランジャに対して押圧力が加えられた際にタペットとプランジャに働く内部せん断応力の値を許容値よりも小さい値に抑えることができ、第1凸曲面と第2凸曲面の半径を下限値よりも大きくすることで接触面の変形、破損を確実に防止することができる。
請求項5に記載された高圧ポンプによれば、プランジャと接触するタペットの接触面に、タペットの本体よりも硬い材質からなるプレートを設けたので、プランジャとタペットの接触面の硬さの差を小さくすることができ、プランジャとタペットの両方について、接触面での摩耗の発生を軽減することができる。一般にタペットはプランジャと比較した場合、径がより大きく、より複雑な形状をしていることから、より加工のし易い材料が選定される例が多く、その結果としてプランジャの材料よりもタペットの材料の方が柔らかい材料が選定されることが多い。柔らかい材料では、内部せん断応力の許容値も低くなり、第2凸曲面の半径を設定するために設けた前記下限値に制約が生じる。また、プランジャの第1凸曲面とタペットの第2凸曲面を、接平面を基準とした対称形状とした場合においても、プランジャとタペットを構成する材料に上述したような物性の差があれば、接触面の圧縮変形による相対的な滑りを十分に減少させることはできない。しかし、この高圧ポンプでは、プランジャと接触するタペットの接触面に、タペットの本体よりも硬い材質からなるプレートを設けたので、上述したような加工上の要求を満足しつつ、接触面での摩耗の発生を軽減することができる。
本発明の実施形態を図1~図6を参照して説明する。
まず、図1を参照して実施形態の高圧ポンプ1の構成を説明する。
図1に示す実施形態の高圧ポンプ1は、燃料蓄圧器(コモンレール)を使用して内燃機関に高圧で燃料を供給する燃料供給システムに用いられるものであり、一例としてコモンレールに供給可能な燃料圧力として160MPa~250MPa程度を想定している。
まず、図1を参照して実施形態の高圧ポンプ1の構成を説明する。
図1に示す実施形態の高圧ポンプ1は、燃料蓄圧器(コモンレール)を使用して内燃機関に高圧で燃料を供給する燃料供給システムに用いられるものであり、一例としてコモンレールに供給可能な燃料圧力として160MPa~250MPa程度を想定している。
図1に示すように、高圧ポンプ1は、円筒状のバレル2と、バレル2の内部に軸方向に沿って摺動可能に設けられた円柱状のプランジャ3と、プランジャ3の下端部に当接するとともに、バレル2の内部に軸方向に沿って摺動可能に設けられたタペット4を有している。タペット4の上側には、開口した円筒状の受け部5が設けられており、この受け部5にはばね受け6が設けられている。ばね受け6はプランジャ3の下端部に係合しており、このばね受け6と、バレル2の上部にある燃料室シリンダ7との間には、燃料の供給後にプランジャ3を下方に戻すためのばね8が、プランジャ3及び燃料室シリンダ7を外挿するように設けられている。また、タペット4の下側には、凹部9が設けられており、この凹部9にはローラ10が回動可能に設けられている。このローラ10には、内燃機関のカムシャフトに連動するカム11が当接している。内燃機関の駆動に伴ってカム11が回動すれば、タペット4が上方に移動し、プランジャ3に押圧力を与えて上方へ移動させ、プランジャ3が燃料室7内の燃料を必要な圧力に加圧して必要なタイミングでコモンレールに供給することができる。
図1に示すように、プランジャ3と接触するタペット4の受け部5の底部には、プランジャ3と接触する円形のプレート12が設けられている。なお本明細書では、プランジャ3と接触するプレート12の上面と、プレート12の上面に接触するプランジャ3の下端面を、何れも接触面と称している。これら部品の構成材料の一例を挙げると、プランジャ3は高炭素クロム軸受鋼鋼材であるSUJであり、タペット4の本体は、ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材であるSNCM439であり、プレート12は、クロムモリブデン鋼鋼材であるSCM415を浸炭処理した鋼材である。浸炭処理したSCM415からなるプレート12は、SNCM439からなるタペット4の本体より硬く、SUJからなるプランジャ3と同程度の硬さとなっている。
プランジャ3がタペット4と接触する接触面を特に第1凸曲面と称する。第1凸曲面の曲面形状は、図1においては視認が困難であるほど微小なものであるが、下方に突出した凸球面、すなわち球面の外面の一部からなる形状となっている。第1凸曲面の球面としての半径SRを図1中に矢印付きの半径として示す。タペット4がプランジャ3と接触する接触面、すなわちプレート12の上面を特に第2凸曲面と称する。第2凸曲面の曲面形状は、図1においては視認が困難であるほど微小なものであるが、上方に突出した凸球面、すなわち球面の外面の一部からなる形状となっている。第2凸曲面の球面としての半径SRを図1中に矢印付きの半径として示す。なお、これは一数値例にすぎないが、第1凸曲面と第2凸曲面の球面の半径SRは、プランジャ径を15mmとした場合、250mm程度である。
図2~図4を参照して、プランジャ3の接触面とタペット4(プレート12)の接触面が何れも凸曲面(第1凸曲面及び第2凸曲面)であることが必要な理由乃至その効果、特に第1凸曲面と第2凸曲面が何れも凸球面であることで得られる本実施形態の優れた効果について説明する。
図2は、プランジャ3とタペット4(プレート12)の接触面を拡大して模式的に示した断面図(切断面を示す斜線は付していない)である。分図(a)、(b)は、プランジャ3aとタペット4aの接触面の一方が凸球面で他方が平面である比較例を示しており、ここではプランジャ3aの接触面(図中上側)が凸球面であり、タペット4aの接触面(図中下側)が平面である場合を比較例としている。分図(c)、(d)は実施形態を示している。
図2を参照して比較例を説明する。分図(a)は、比較例において、押圧力が付加されない状態でプランジャ3aとタペット4aが接した状態を示している。分図(b)は、タペット4aからプランジャ3aに対して押圧力が付加された状態を示している。分図(b)に示すように、タペット4aからプランジャ3aに対して押圧力が付加されると、プランジャ3aの凸球面の側には圧縮変形が生じ、この圧縮変形により接触面の中心から外側に向かう変位(図中水平方向の矢印で示す。)が発生する。この変位は、接触面の中心ではゼロであり、同心円状に外側の位置ほど大きくなる。一方、平面の接触面に発生する圧縮変形は少なく、変位もほとんど生じない。この結果、プランジャ3aとタペット4aのそれぞれの接触面の間には球面の圧縮変形による相対滑りが生じる。
図3は、図2(a)、(b)に示すような比較例の高圧ポンプについて耐久試験を行なった結果を示す図であり、試験開始前後のタペット4a(プレート)の接触面の断面形状を重ねて示している。試験結果は太い実線で示し、試験開始前の形状に対応する設計上の形状は丸を接続した細い実線で示す。図2(a)、(b)に示した比較例では、プランジャ3aの接触面が凸球面で、タペット4aの接触面が平面であったが、図3に結果を示した耐久試験は、プランジャの接触面が平面で、タペット4a(プレート)の接触面が凸球面である比較例について行なった。なお、図2(a)、(b)に示した通りの構造を有する比較例について同様の耐久試験を行なった場合も、図3と同様の結果が得られている。
図3においては、横軸の表示の単位がmm、縦軸の表示の単位がμmであって、横軸方向の寸法に対して縦軸方向の寸法を概ね20倍程度に拡大しており、凸球面の円弧の形状が誇張して示されている。なお、図3から分かるように、タペット4aのプレートの直径は大略22mm程度であり、横軸の+11mm付近と-11mm付近には、凸球面に連続するプレートの側周面を示す縦線が表れている。
図3に示すように、耐久試験前のタペット4aの接触面の断面形状と、耐久試験後の測定による断面形状を比較すると、次のようなことが分かる。すなわち、耐久試験後の測定ではタペット4aの接触面の接触範囲の全体にわたって摩耗が見られるが、中心付近の摩耗は比較的に少なく、突起状に材料が残存しており、中心での摩耗量Wは概ね25μmである。その一方で、中心の周囲の領域には、中心よりも大きな摩耗が同心円状に発生している。これは、前述した圧縮変形による相対滑りが生じることにより、接触面の中心から離れるほど強く摩耗が発生し、材料がより多く摺り減っていることを裏付けるものである。
次に図2を参照して実施形態を説明する。分図(c)に示すように、押圧力が付加されない状態では、プランジャ3とタペット4は変形することなく接している。分図(d)に示すように、タペット4からプランジャ3に対して押圧力が付加されると、第1凸曲面F1及び第2凸曲面F2の各凸球面には圧縮変形が生じ、これにより矢印で示すように接触面の中心から外側に向かう変位が発生する。しかし、第1凸曲面F1と第2凸曲面F2は、半径SRが同一であり、両曲面に共通の接平面TPについて対称であるため、第1凸曲面F1に生じる変位と第2凸曲面F2に生じる変位も前記接平面TPについて対称となり、このため凸球面である第1凸曲面F1と第2凸曲面F2の圧縮変形による相対滑りは軽減される。
図4は、図2(c)、(d)に示す実施形態の高圧ポンプ1について耐久試験を行なった結果を示す図であり、実施形態の高圧ポンプ1について耐久試験を行なった後に、タペット4の第2凸曲面F2の形状を実際に測定した結果と、タペット4の第2凸曲面F2の理論的な形状(設計上の形状)を重ねて示したものである。図4は、縦軸と横軸の表示の単位は何れもmmであるが、その尺度が異なっており、横軸方向の寸法に対して縦軸方向の寸法が拡大され、凸球面の円弧の形状が誇張して示されている。
図4に示すように、実施形態の高圧ポンプ1について行なった耐久試験の結果、耐久試験後に計測したタペット4のプレート12の第2凸曲面F2は、第2凸曲面F2の理論的な形状、すなわち設計上の形状にほぼ一致していることが分かった。これは、プランジャ3とタペット4の接触面では、図2(d)を参照して説明したように圧縮変形による相対滑りがほとんど生じておらず、相対滑りに起因する摩耗の発生が実際に軽減されていることを意味する。これは、実施形態では、プランジャ3の材料と、タペット4のプレート12の材料の各物性を同等とし、あるいはその差が許容範囲に収まるように材料を選択したため、第1凸曲面F1と第2凸曲面F2を図2(c)に示した接平面TPについて対称形状とすることで、接触面の圧縮変形による相対滑りがゼロに近くなり、接触面での摩耗の発生の軽減がより顕著になったものと考えられる。このため、実施形態の高圧ポンプ1によれば、長寿命化、メンテナンス間隔の長期化の効果が得られる。
なお、第1凸曲面F1及び第2凸曲面F2の形態としては、実施形態のように両方とも凸球面とするのが好ましいが、放物面など他の凸曲面の形態であっても、段差がない滑らかな凸曲面であれば、相応の効果が得られる。さらに、第1凸曲面F1と第2凸曲面F2の凸球面としての半径は同一の符号SRを付して説明したように同一であったが、これも好ましい例であって、プランジャ3とタペット4(プレート12)の具体的な形状・寸法の相違や、材料の相違によっては、必ずしも同一であることが要求されるものではない。
次に、図5を参照して、実施形態においてプランジャ3及びタペット4の偏摩耗等を避けるために、凸球面の半径SRの適切な範囲を定める必要性、特に半径SRの値に上限値を設けることが好ましい理由について説明する。
図5は、プランジャ3とタペット4の接触面を凸球面とした実施形態において、同一である第1凸曲面F1と第2凸曲面F2の半径SRと、両凸曲面の接触状態を示す模式図である。この模式図は、説明のために接触面の凸球面の湾曲の程度を誇張して示している。
プランジャ3及びタペット4は、往復運動をする中心軸Cに対し並行で傾きが無いことが望ましい。しかし実際には、プランジャ3及びタペット4は、バレル2に対して摺動するために、バレル2の内面との間に一定のクリアランスが必要であり、このため、プランジャ3及びタペット4には中心軸Cに対して傾きが生じる。この傾きは、摺動面の長さとクリアランスの関係から、タペット4の方でより顕著である。タペット4が傾くと接触面の作用点に中心からのずれが生じる。ずれが生じると、プランジャ3及びタペット4の偏摩耗等の障害の一因となる。
図5(a)及び(b)は、半径SRが比較的小さい場合を示している。図5(a)はタペット4がプランジャ3に押圧力を加えないで接触している状態を示し、図5(b)はタペット4がプランジャ3に押圧力を加えており、接触面の作用点が形状的な中心からずれL1が生じている状態を示している。
図5(c)及び(d)は、図5(a)及び(b)の場合に較べ、半径SRが比較的大きい場合を示している。図5(c)はタペット4がプランジャ3に押圧力を加えないで接触している状態を示し、図5(d)はタペット4がプランジャ3に押圧力を加えており、接触面の作用点が形状的な中心からずれL2(>L1)が生じている状態を示している。
このように、タペット4の傾きが同じである場合には、半径SRが比較的小さい場合のずれL1(図5(b))は、半径SRが比較的大きい場合のずれL2(図5(d))よりも小さくなる。従って、タペット4とプランジャ3の材質(材料)にもよるが、接触面の偏摩耗、変形、破損等を防止するためには、前記ずれの値をなるべく小さくすることが好ましく、そのためにはタペット4の第1凸曲面F1とプランジャ3の第2凸曲面F2の半径SRには上限値を設けることが好ましい。
例えば、本願発明者等による実験の結果によれば、プランジャ3の径を約φ15mmとした場合、前述したずれの大きさを許容範囲に収めて接触面の偏摩耗等を軽減するためには、半径SRは400mm以下とするのが好ましく、より望ましくは300mm以下とするのがよい。
なお、プランジャ3とタペット4は、材質が同一であることを前提として、各々の変位(変形)がなるべく同一となるように、第1凸曲面F1の半径SRと第2凸曲面F2の半径SRは同一であることが好ましいものとして説明した。しかしながら、設計的に定められる寸法上の理由等により、両部材の半径SRを同一にできない場合もありうる。その場合には、部材により異なる材料を採用することで同等の耐摩耗性を実現するようにしてもよい。例えば、半径SRを大きく設定せざるを得ない部材については、変形を抑えるためにヤング率が相対的に大きい材料を選択し、相対的に半径SRを小さく設定した部材についてはヤング率が相対的に小さい材料を選択することができる。
次に、図6を参照して、実施形態においてプランジャ3及びタペット4のスポーリングなどの損傷を避けるために、凸球面の半径SRの適切な範囲を定める必要性、特に半径SRの値に下限値を設けることが好ましい理由について説明する。
図6は、プランジャ3とタペット4に用いられる材料の機械的性質(左縦軸の内部せん断応力(τw)と、右縦軸のヴィッカース硬さ(HV))と、最大となる内部せん断応力が発生する位置の材料の表面からの深さ(横軸(mm))と、プランジャ3とタペット4の凸球面の半径SRとの関係を示す図である。材料のせん断強度は硬度から換算して求めることが一般に行われており、そのせん断強度に対して、安全率を考慮し、0.55倍以下のせん断応力の範囲では接触面に損傷が発生しないことが知られている。その硬度と損傷が発生しない許容せん断応力の関係性を図6の縦軸で示し、高圧ポンプの負荷圧力160MPaと250MPaの場合に発生するせん断応力を図内にプロットした。
図6に示すように、プランジャ3とタペット4の間で所定の押圧力を発生させる場合、半径SRが小さいほど内部せん断応力は大きくなる。また、材料のせん断強さに対して、内部せん断応力を一定の比率以下に抑えればスポーリングなどの損傷を防止できることも知られている。
例えば図6において、HV270を示す横軸に平行な線を想定すると、この線と、高圧ポンプの負荷圧力が160MPaにおける半径SRを示す曲線との交点におけるSRは約800mmとなる。従って、HV270の材料を用いる場合、半径SRが800mmより小さい範囲(HV270を示す線よりも上の範囲)では、内部せん断応力が許容値を超えることになるが、半径SRが800mmより大きい範囲(HV270を示す線よりも下の範囲)であれば、内部せん断応力は許容値よりも小さくなる。従って、内部せん断応力が、使用する材質における許容値を上回らないようにするためには、使用する材料の硬さ(HV) に応じて半径SRの下限を設定すればよい。上述したHV270の材料を用いる場合であれば、半径SRの下限を800mmとすること、すなわち半径SRは800mm以上とすることが好ましい。
また、同様に、他の数値例を挙げれば、前述した硬度HV650以上の材料を使用した場合には、高圧ポンプの負荷圧力が160MPaでは半径SRは200mm以上とすることが好ましく、高圧ポンプの負荷圧力が250MPaでは250mm以上とすることが好ましい。このように半径SRの下限を設定することにより、押圧力が付加された際に内部せん断応力が許容値に達する半径よりも、半径SRが大きく設定され、接触面の変形、破損が防止される。
ここで図5にて説明したように、半径SRには接触面の作用点のずれの大きさを許容範囲に収めるための上限が存在する。図5の例においてはこの上限が400mmであるので、HV270の材料を用いた場合には半径SRの下限値が800mmであり、上限値を上回ってしまい設計が成立しない。したがってプランジャおよびタペットの接触面を構成する材料の選定においては、図5の説明による上限値より図6の説明による下限値が小さくなるような硬度HVを有する材料を選択する必要がある。つまり、プランジャ3とタペット4の作用点のずれの大きさを許容範囲に収めるための半径SRの上限値と、内部せん断応力が許容せん断応力より小となる半径SRの下限値とが、等しくなる硬度HVの値よりも高い硬度HVを有する材料とされる。
例えば図6において、HV270を示す横軸に平行な線を想定すると、この線と、高圧ポンプの負荷圧力が160MPaにおける半径SRを示す曲線との交点におけるSRは約800mmとなる。従って、HV270の材料を用いる場合、半径SRが800mmより小さい範囲(HV270を示す線よりも上の範囲)では、内部せん断応力が許容値を超えることになるが、半径SRが800mmより大きい範囲(HV270を示す線よりも下の範囲)であれば、内部せん断応力は許容値よりも小さくなる。従って、内部せん断応力が、使用する材質における許容値を上回らないようにするためには、使用する材料の硬さ(HV) に応じて半径SRの下限を設定すればよい。上述したHV270の材料を用いる場合であれば、半径SRの下限を800mmとすること、すなわち半径SRは800mm以上とすることが好ましい。
また、同様に、他の数値例を挙げれば、前述した硬度HV650以上の材料を使用した場合には、高圧ポンプの負荷圧力が160MPaでは半径SRは200mm以上とすることが好ましく、高圧ポンプの負荷圧力が250MPaでは250mm以上とすることが好ましい。このように半径SRの下限を設定することにより、押圧力が付加された際に内部せん断応力が許容値に達する半径よりも、半径SRが大きく設定され、接触面の変形、破損が防止される。
ここで図5にて説明したように、半径SRには接触面の作用点のずれの大きさを許容範囲に収めるための上限が存在する。図5の例においてはこの上限が400mmであるので、HV270の材料を用いた場合には半径SRの下限値が800mmであり、上限値を上回ってしまい設計が成立しない。したがってプランジャおよびタペットの接触面を構成する材料の選定においては、図5の説明による上限値より図6の説明による下限値が小さくなるような硬度HVを有する材料を選択する必要がある。つまり、プランジャ3とタペット4の作用点のずれの大きさを許容範囲に収めるための半径SRの上限値と、内部せん断応力が許容せん断応力より小となる半径SRの下限値とが、等しくなる硬度HVの値よりも高い硬度HVを有する材料とされる。
以上、実施形態におけるプランジャ3及びタペット4の凸球面の半径SRの適切な範囲について説明したが、タペット4とプランジャ3にHV650以上の硬度の材料を使用し、プランジャ3の径を約φ15mmとした上述の例では、好ましい範囲は200mm≦SR≦400mmとなり、より好ましく250mm≦SR≦300mmとなる。
1…高圧ポンプ
2…バレル
3…プランジャ
4…タペット
11…カム
12…タペットのプレート
F1…第1凸曲面
F2…第2凸曲面
TP…接平面
SR…凸球面である第1凸曲面及び第2凸曲面の半径
2…バレル
3…プランジャ
4…タペット
11…カム
12…タペットのプレート
F1…第1凸曲面
F2…第2凸曲面
TP…接平面
SR…凸球面である第1凸曲面及び第2凸曲面の半径
Claims (5)
- 燃料を加圧するプランジャと、
前記プランジャを往復して動作させるためのカムと、
前記プランジャと前記カムとの間に設けられ前記カムの動作を前記プランジャへ押圧力として伝達するタペットと、を備えた高圧ポンプであって、
前記プランジャの前記タペットとの接触面は第1凸曲面とされ、かつ、前記タペットの前記プランジャとの接触面は第2凸曲面とされていることを特徴とする高圧ポンプ。 - 前記第1凸曲面と前記第2凸曲面は、前記第1凸曲面と前記第2凸曲面の接平面を基準とした対称形状であることを特徴とする請求項1に記載の高圧ポンプ。
- 前記第1凸曲面と前記第2凸曲面は凸球面であり、
前記凸球面の半径は、
前記タペットの傾きによる前記プランジャと前記タペットの接触面の作用点のずれを許容値以下とする値を上限値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の高圧ポンプ。 - 前記第1凸曲面と前記第2凸曲面は凸球面であり、
前記凸球面の半径は、
前記プランジャと前記タペットを構成する材料に応じ、前記プランジャと前記タペットの内部せん断応力を許容値以下とする値を下限値とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の高圧ポンプ。 - 前記タペットには、前記プランジャとの接触面に前記タペットの本体よりも硬い材質からなるプレートが備えられ、当該プレートに前記第2凸曲面が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の高圧ポンプ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021042659A JP2022142481A (ja) | 2021-03-16 | 2021-03-16 | 高圧ポンプ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2021042659A JP2022142481A (ja) | 2021-03-16 | 2021-03-16 | 高圧ポンプ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022142481A true JP2022142481A (ja) | 2022-09-30 |
Family
ID=83420465
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2021042659A Pending JP2022142481A (ja) | 2021-03-16 | 2021-03-16 | 高圧ポンプ |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2022142481A (ja) |
-
2021
- 2021-03-16 JP JP2021042659A patent/JP2022142481A/ja active Pending
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