JP2022119103A - 架橋性フッ素ゴム組成物及びこれを用いた配線材 - Google Patents

架橋性フッ素ゴム組成物及びこれを用いた配線材 Download PDF

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瞳 遠藤
Hitomi Endo
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Abstract

【課題】外観不良の発生と目やにの発生とを抑制した成形が可能となり、可撓性、耐摩耗性及び外観特性に優れた絶縁層を形成できる架橋性フッ素ゴム組成物、並びに可撓性、耐摩耗性及び外観特性に優れた絶縁体を備えた配線材を提供する。【解決手段】テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体100質量部に対して、シリカ10~30質量部と架橋助剤7.5~30質量部と過酸化物とを含有し、シリカの含有量に対する架橋助剤の含有量の質量比[架橋助剤の含有量/シリカの含有量]が0.4~1.2である架橋性フッ素ゴム組成物、及び、この架橋性フッ素ゴム組成物の架橋物で形成された絶縁層を導体の外周面上に有する配線材。【選択図】なし

Description

本発明は、架橋性フッ素ゴム組成物及びこれを用いた配線材に関する。
フッ素ポリマーは、その優れた特性から、絶縁電線、ケーブル、コード、光ファイバー心線又は光ファイバーケーブル等の配線材、更には封止剤やパッキン等の多種多様な製品若しくは部品の材料として、広く用いられている。フッ素ポリマーの中でも、高耐熱性、高耐オイル性、高耐溶剤性を持つフッ素ポリマーは、汎用的なポリオレフィンやハロゲン系ポリマーでは適用しえない、過酷な環境で使用される封止剤、パッキン、配線材、保護具等の原料として、好適に用いられる。
フッ素ポリマーとしては、例えば、エチレン-四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、及びヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体(FKM)、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体(TFEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロビニルエーテル共重合体(FFKM)等のフッ素ゴムが挙げられる。
このようなフッ素ポリマーを含む組成物として、例えば、特許文献1には、「フッ素ゴム100重量部に対し、平均比表面積200m/g以上のシリカ粉末5~20重量部が配合されている電気絶縁組成物」が記載されている。また、特許文献2には、「テトラフルオロエチレン-炭素数3~4のα-オレフィン系共重合体(第1の含フッ素共重合体)及びエチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体(第2の含フッ素共重合体)を含むベースポリマーと、平均粒径1μm~10μmの無機充填剤と、エポキシ基を有するシラン化合物と、架橋助剤とを含有し、前記第1の含フッ素共重合体と前記第2の含フッ素共重合体の配合質量比(第1の含フッ素共重合体:第2の含フッ素共重合体)は90:10~50:50であり、前記無機充填剤の配合量は前記ベースポリマー100質量部に対して60~120質量部であり、前記エポキシ基を有するシラン化合物の配合量は前記無機充填剤の配合量に対し0.2~2質量%である含フッ素エラストマー組成物」が記載されている。
特開2007-246619号公報 特開2016-017124号公報
フッ素ポリマーの中でも、フッ素ゴムは、フッ素樹脂よりも柔軟性に優れているため、配線材等の絶縁体(絶縁層)を形成する被覆材料として好適に用いられる。特に、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体は、フッ素ゴムの中でも高い電気絶縁性を示すことから、絶縁体材料として優れている。
しかし、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体をはじめとするフッ素ゴムを絶縁体材料として用いる場合、フッ素ゴムを含む組成物の粘度が高くなりやすく、絶縁体の成形性に劣ることがある。そのため、配線材の製造に好適な押出成形法にて絶縁体を成形すると、組成物の押出負荷が大きくなってメルトフラクチャーが発生しやすく、得られる絶縁体は表面平坦性が損なわれて外観不良となる。外観不良となった絶縁体を備えた配線材は、配線しにくいうえ、電気絶縁性の低下、更には耐摩耗性の低下をも、引き起こす。
フッ素ゴム組成物の成形性はオイル等の可塑剤を含有させることで改善することができる反面、押出成形時に組成物の成形カス(目やに)が吐出孔に付着して成形不良を引き起こし、更には絶縁体から可塑剤がブリードアウトするという問題も発生する。
ところで、上述のフッ素ゴムで形成された絶縁体を備えた配線材は柔軟であるため配線作業がしやすいという利点を有する。一方で、近年、配線材が配設される電気機器、例えば、自動車、家電製品、OA機器等に装着される電気機器の小型化若しくは軽量化が急速に進行しており、それに伴って配線材が配設されるスペースも狭小化されている。そのため、配線材には更に狭小化されたスペースにも配設可能とする配線作業性の更なる向上(配線材の可撓性の更なる向上)に加えて、狭小スペースに配設された際の、近接する部材や他の配線材との接触や擦れ等による絶縁体のより高い損傷防止特性(耐摩耗性)も求められている。
本発明は、トレードオフの関係にある、外観不良の発生と目やにの発生とを抑制した成形が可能となり、可撓性、耐摩耗性及び外観特性に優れた絶縁体を形成できる架橋性フッ素ゴム組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、可撓性、耐摩耗性及び外観特性に優れた絶縁体を備えた配線材を提供することを課題とする。
本発明者らは、フッ素ゴムを含有する架橋性ゴム組成物において、フッ素ゴムに対して、フッ素ゴムの架橋助剤とシリカとを、特定の含有量で、かつ特定の質量比(以下、単に含有量比ともいう。)で、併用することにより、この架橋性ゴム組成物を外観不良の発生と目やにの発生とを抑制しながら成形することができ、しかも成形後の組成物を架橋処理することにより可撓性に優れながらも高い耐摩耗性を示す絶縁体を形成できることを見出した。
本発明者らはこの知見に基づき更に研究を重ね、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
<1>テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体100質量部に対して、シリカ10~30質量部と、架橋助剤7.5~30質量部と、有機過酸化物とを含有し、
前記シリカの含有量に対する前記架橋助剤の含有量の質量比[架橋助剤の含有量/シリカの含有量]が0.4~1.2である、架橋性フッ素ゴム組成物。
<2>前記質量比[架橋助剤の含有量/シリカの含有量]が0.47~0.90である、<1>に記載の架橋性フッ素ゴム組成物。
<3>前記テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体のムーニー粘度ML(1+10)121℃が50~160Mである、<1>又は<2>に記載の架橋性フッ素ゴム組成物。
<4>前記有機過酸化物の含有量が0.5~5質量部である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の架橋性フッ素ゴム組成物。
<5>導体の外周面上に絶縁層を有する配線材であって、
前記絶縁層が上記<1>~<4>のいずれか1項に記載の架橋性フッ素ゴム組成物の架橋物で形成されている、配線材。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、外観不良の発生と目やにの発生とを抑制した成形を可能とし、可撓性、耐摩耗性及び外観特性に優れた絶縁体(成形体)を形成できる。また、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物を用いた、可撓性、耐摩耗性及び外観特性に優れた絶縁体を備えた配線材を提供できる。
[架橋性フッ素ゴム組成物]
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、必須成分として、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体とシリカと架橋助剤と有機過酸化物とを含有する。各成分の含有量の詳細は後述するが、シリカと架橋助剤との含有量は、それぞれ、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体100質量部に対して、10~30質量部及び7.5~30質量部に設定され、かつ、シリカの含有量に対する架橋助剤の含有量の質量比[架橋助剤の含有量/シリカの含有量]が0.4~1.2の範囲に設定される。上記各成分をシリカと架橋助剤との上記含有量及び含有量比を満たす範囲で含有することにより、外観不良の発生と目やにの発生とを抑制した成形が可能となり、その結果、可撓性、耐摩耗性及び外観特性に優れた架橋物(成形体ともいう。好ましくは配線材の絶縁体)を形成できる。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、外観不良の発生と目やにの発生とを抑制しながら押出成形が可能で、しかも上記特性を併せ持つ絶縁体を形成できる。更には、成形時における溶融混合物から架橋助剤の分離やブリードアウト、及び絶縁体から架橋助剤のブリードアウトも防止できる。そのため、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、押出成形用組成物として好適であり、更に配線材の絶縁体形成材料(押出被覆層形成材料)として好適である。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の粘度は、特に制限されず、適宜に設定できる。本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、外観不良の発生と目やにの発生とを抑制しながら成形可能であるため、比較的高粘度にすることもできる。例えば、ムーニー粘度ML(1+4)100℃としては、通常、30M以上とすることができるが、本発明では、65~80Mの範囲に設定することもできる。架橋性フッ素ゴム組成物体のムーニー粘度は後述するTFE-PP共重合体と同じ測定方法に準拠して測定した値である。
以下に、本発明に用いる各成分及び含有量について説明する。
<テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体>
テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体は、テトラフルオロエチレン(TFE)とプロピレン(PP)との共重合体であり、ゴム弾性を示す。このTFE-PP共重合体は、架橋性フッ素ゴム組成物に成形時における外観不良の発生抑制、更には絶縁体の外観及び可撓性の改善に寄与する。この共重合体は、有機過酸化物の存在下で後述する架橋助剤の架橋性基とラジカル反応可能な部位を主鎖中又はその末端に有しており、架橋助剤に由来する部分構造を含む架橋構造により架橋される。このようなラジカル反応可能な部位としては、特に制限されないが、例えば、炭素鎖の不飽和結合部位、水素原子を有する炭素原子が挙げられる。テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体における構成成分の結合様式は、特に制限されないが、ゴム弾性を発現する点で、ブロック結合(ブロック共重合体)であることが好ましい。
TFE-PP共重合体における、テトラフルオロエチレンとプロピレンとのモル比[TFE/PP]は、特に制限されず、適宜に設定されるが、好適なゴム弾性を示し、更に、耐熱性、加工安定性、成形安定性等の点で、95/5~30/70であることが好ましく、90/10~45/55であることがより好ましい。
TFE-PP共重合体は、主成分のテトラフルオロエチレンとプロピレンに加えて、これらと共重合可能な成分に由来する構成成分を有していてもよい。共重合可能な成分としては、エチレン性二重結合を有する化合物が挙げられ、具体的には、エチレン、1-ブテン、イソブテン、アクリル酸及びそのアルキルエステル、メタクリル酸及びそのアルキルエステル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、クロロエチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等が挙げられる。TFE-PP共重合体における、共重合可能な成分の含有量は、特に制限されず適宜に設定できる。
TFE-PP共重合体の粘度は、特に制限されず、適宜に設定できる。本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は外観不良の発生と目やにの発生とを抑制した成形が可能となるため、比較的高粘度のTFE-PP共重合体を用いることもできる。例えば、TFE-PP共重合体のムーニー粘度ML(1+10)121℃としては、通常、30M以上とすることができるが、本発明では、比較的高粘度である、50~160Mの範囲に設定することもでき、50~100Mの範囲に設定することが好ましい。TFE-PP共重合体のムーニー粘度は日本産業規格(JIS) K 6300:2013に記載の方法に準拠して測定した値である。
TFE-PP共重合体は、適宜に合成して用いることもできるし、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、アフラス(AGC社製)等が挙げられる。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、TFE-PP共重合体を1種又は2種以上を含有することができる。
<シリカ>
シリカとしては、特に限定されず、結晶性シリカ、非結晶性シリカ、また、溶融法で製造されたシリカ、湿式法で製造されたシリカ、乾式法で製造されたシリカ等のいずれも用いることができる。シリカとしては結晶性シリカが好ましい。
シリカは、シランカップリング剤やその他の表面処理剤で表面処理されたものを用いることもできるが、表面無処理のシリカ(シリカ100質量部に対して1質量部以下の表面処理剤で表面処理されたものを含む)を用いることが好ましい。
シリカのBET比表面積(m/g)は、特に限定されないが、後述する架橋助剤の吸着性が高まり、成形時の目やに発生を効果的に抑制できる点で、更には架橋助剤のブリードアウトを抑制できる点で、90~250m/gであることが好ましく、110~200m/gであることがより好ましい。シリカのBET比表面積(m/g)は、日本産業規格(JIS) Z 8830:2013の「キャリアガス法」に準拠して、吸着質として窒素ガスを用いて、測定される値である。測定機器としては、例えば、比表面積・細孔分布測定装置「フローソーブ」(島津製作所社製)が挙げられる。
シリカは粒子であることが好ましく、その平均粒径は、特に制限されず、例えば、0.2~10μmの範囲に設定できる。平均粒径は、シリカをアルコールや水で分散させて、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等の光学式粒径測定器によって求めた値とする。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、シリカを1種又は2種以上を含有することができる。
<架橋助剤>
架橋助剤としては、TFE-PP共重合体と結合して架橋構造を形成可能な化合物であれば特に制限されず、重合体の過酸化物架橋に通常用いられる架橋助剤を用いることができる。本発明において、成形性の改善、更には柔軟性及び耐摩耗性の両立の点で、架橋性基としてアリル基を2以上有するアリル系架橋助剤が好ましい。このような架橋助剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート、フタル酸ジアリル、ジアヌル酸トリアリル、ジアリルメラミンが挙げられる。中でも、TAIC又はTACが好ましい。
架橋助剤は、常温(20~25℃)、常圧(1atm)で、液体(液状)のもの(常圧下で融点が常温未満で沸点が常温超えるもの)が好ましい。このような架橋助剤は、成形前にTFE-PP共重合体等とよく混和して均一な架橋構造を形成できるうえ、外観不良の発生を抑えて架橋性フッ素ゴム組成物を成形可能とする(成形性を改善できる)ことができる(可塑剤としても機能する)。そのため、常温で液状の架橋助剤を含有する場合、高粘度のTFE-PP共重合体を併用することができる。常温で液状の架橋助剤としては、例えば、TAIC、TACが挙げられる。
過酸化物を含有する架橋性重合体組成物において、架橋助剤は、形成される架橋構造に組み込まれやすいが、架橋構造に組み込まれない架橋助剤、特に過剰に含有している架橋助剤は、成形時の熱や圧力によって組成物中から滲出しやすく、目やにの発生やブリードアウトの発生等の問題を引き起こす。しかし、本発明においては、架橋助剤とシリカとを特定の含有量及び含有量比で併用することにより、上記問題の発生を抑制できる。更に、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、共重合体成分としてTFE-PP共重合体を含有しているため、上記問題の発生を効果的に抑制できる。その理由の詳細はまだ定かではないが次のように考えられる。すなわち、TFE-PP共重合体は反応活性が低いため、有機過酸化物の分解により生成するラジカルはTFE-PP共重合体よりも架橋助剤を優先的に活性化(ラジカル化)する。これにより、TFE-PP共重合体の存在下における架橋反応処理において、TFE-PP共重合体同士の直接的な架橋反応よりも、TFE-PP共重合体と架橋助剤との架橋反応が優先的に進行して、架橋助剤が架橋構造に組み込まれるためと考えられる。
<有機過酸化物>
有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、触媒として、TFE-PP共重合体と架橋助剤の架橋性基とのラジカル反応を生起させる働きをする。
有機過酸化物としては、重合体の架橋に通常用いるものを特に制限されることなく用いることができる。このような有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド(DCP)、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス-(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが挙げられる。
有機過酸化物の分解温度は、80~195℃が好ましく、125~180℃が特に好ましい。本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、有機過酸化物を1種又は2種以上を含有することができる。
<その他の成分>
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、各種成形体に通常用いられる各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、上記成分以外の成分(その他の成分ともいう。)であればよく、例えば、TEF-PP共重合体以外の重合体(他の重合体ともいう。)、オイル、可塑剤、シリカ以外の無機フィラー、酸化防止剤、滑剤、スコーチ防止剤、金属不活性剤等が挙げられる。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、その他の各成分を、それぞれ、1種又は2種以上を含有することができる。
(他の重合体)
他の重合体(樹脂、エラストマー、ゴム)としては、特に制限されないが、上述のラジカル反応可能な部位を主鎖中又はその末端に有する重合体が好ましく挙げられ、配線材の絶縁体等の各種成形体に使用される通常のものを使用することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂、塩素含有樹脂、TEF-PP共重合体以外のフッ素ポリマーが挙げられる。TEF-PP共重合体以外のフッ素ポリマーとしては、上述のフッ素ポリマーが挙げられるが、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物はETFEを含有しない態様とすることができる。
(オイル)
オイルは、特に限定されないが、有機油又は鉱物油が好ましく挙げられ、具体的には、パラフィンオイル、ナフテンオイル等が挙げられる。
(シリカ以外の無機フィラー)
本発明においては、シリカ以外の無機フィラーを、目的とする効果を損なわない範囲で、用いることができる。シリカ以外の無機フィラーとしては、特に限定されることなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカ、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク等の水酸基若しくは結晶水を有する化合物のような金属水和物が挙げられる。また、窒化ほう素、カーボン、クレー(焼成クレー)、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等が挙げられる。
本発明は、カーボン以外のフィラーを含有する態様を含み、この態様において無機フィラーは、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー(焼成クレー)等が好ましい。
無機フィラーは粒子であることが好ましく、その平均粒径(上記測定方法による)は、特に制限されないが、0.2~10μmが好ましい。
次に、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物中における各成分の含有量について説明する。
<シリカ>
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物中におけるシリカの含有量は、TFE-PP共重合体100質量部に対して10~30質量部である。シリカの含有量が少なくなると、架橋性ゴム組成物の架橋物の耐摩耗性が低下する傾向にあり、10質量部未満であると十分な耐摩耗性を示さなくなる。一方、シリカの含有量が多くなると、架橋物の可撓性、更には機械強度が低下する傾向にあり、30質量部を超えると十分な可撓性を示さなくなる。
シリカの含有量は、架橋物の耐摩耗性及び可撓性を両立し、更に機械強度も強化できる点で、15~25質量部であることが好ましく、15~22.5質量部であることがより好ましい。
<架橋助剤>
一般的に、重合体組成物の過酸化物架橋において、架橋助剤の含有量は、目的とする特性に応じた架橋度となるように設定されるが、通常は少なめに設定される。例えば、TAICの場合、特許文献2においては、ベースポリマー100質量部に対して0.1~3質量部(実施例では1質量部)とされている。これは、多量の架橋助剤による目やに発生、更には架橋助剤のブリードアウトの発生等の問題を回避するためである。
しかし、本発明においては、目やにの発生及びブリードアウトの発生を抑制できるため、架橋性フッ素ゴム組成物中における架橋助剤の含有量をTFE-PP共重合体100質量部に対して7.5~30質量部に設定する。架橋助剤の含有量が少なくなると外観不良が発生しやすくなる傾向にあり、又は/更に架橋物の耐摩耗性が低下する傾向にある。架橋助剤の含有量が7.5質量部未満であると外観不良の発生を十分に抑制できず、また十分な耐摩耗性を示す架橋物を得られない。一方、架橋助剤の含有量が多くなると、本発明においても成形時に目やにが発生しやすくなる傾向にあり、30質量部を超えると目やにの発生を十分に抑制できず、更には架橋助剤のブリードアウトをも抑制できなくなる。
架橋助剤の含有量は、外観不良の発生と目やにの発生とを抑制した成形を可能とし、優れた耐摩耗性を示す架橋物を得られる点で、9~20質量部であることが好ましく、9~15質量部であることがより好ましい。
(シリカと架橋助剤の含有量比)
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、シリカ及び架橋助剤がそれぞれ上記範囲の含有量を満たしたうえで、シリカの含有量に対する架橋助剤の含有量の質量比[架橋助剤の含有量/シリカの含有量](含有量比)を0.4~1.2の範囲に設定する。
この含有量比が小さくなると、シリカが架橋助剤を吸着して目やにの発生を十分に抑制できるものの、外観不良が発生しやすくなる傾向にあり、0.4未満になると外観不良の発生を十分に抑制できなくなる。また、含有量比が小さくなると、可撓性又は耐摩耗性の低下を招いて、両者を高い水準で両立できなくなる傾向にある。一方、含有量比が大きくなると、外観不良の発生は効果的に抑制できるものの、シリカが架橋助剤を効果的に吸着できずに目やにが発生しやすくなる傾向にあり、1.2を超えると目やにの発生を十分に抑制できなくなる。
含有量比は、トレードオフの関係にある、外観不良の発生と目やにの発生との両者を十分に抑制した成形が可能となる点で、0.47~0.90であることが好ましい。
<有機過酸化物>
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物中における有機過酸化物の含有量は、適宜に決定できる。例えば、TFE-PP共重合体100質量部に対して、0.5~5質量部であることが好ましく、0.8~2質量部であることがより好ましい。
<その他の成分>
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物中におけるその他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲に、設定される。
[本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の調製方法]
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、通常、上記各成分を混合して調製することができる。各成分は、順次混合されてもよく、一度に混合されてもよいが、有機過酸化物以外の成分を予め混合した後に有機過酸化物を混合する方法が、混合時に架橋反応の生起を抑えられる点で、好ましい。
混合温度は、有機過酸化物の存在下で各成分を混合する場合、架橋反応の生起を抑えるため、通常、有機過酸化物の分解温度未満の温度に設定され、好ましくは各成分を溶融混合可能な温度に設定される。有機過酸化物の種類により分解温度が変動するので混合温度は一義的に決定できないが、例えば、80~110℃に設定することができる。一方、有機過酸化物以外の成分を予め混合する場合の混合温度は、各成分が溶融混合可能な温度に設定され、例えば、80~180℃に設定することができる。こうして得られた混合物と有機過酸化物との混合温度は有機過酸化物の存在下で各成分を混合する場合の上記温度と同じであることが好ましい。
混合時間は適宜設定することができる。
混合方法としては、ゴム若しくは樹脂組成物の調製に通常採用される方法であれば、特に限定されない。例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又はニーダー等の各種混合装置を用いて混合することができる。
[本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の架橋物]
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、後述する架橋反応処理により、架橋助剤に由来する部分構造を含む架橋構造がTFE-PP共重合体の共重合鎖間に形成されることにより、TFE-PP共重合体が架橋された架橋物(架橋フッ素ゴム組成物)となる。この組成物の架橋物は、TFE-PP共重合体の共重合鎖同士が直接的(上記架橋構造を介さず)に架橋した架橋物を含んでいてもよい。本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の架橋物は、可撓性、耐摩耗性及び外観特性に優れ、更に好ましくは外部応力の作用により損傷や破断しにくい。そのため、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の架橋物は配線材の絶縁体として好適に用いられる。本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の架橋方法の詳細は後述する。
[配線材]
以下に、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の架橋物を絶縁体として用いた配線材について説明する。
本発明の配線材は、導体の外周面上に、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の架橋物で形成された絶縁層(絶縁体)を有している。この配線材は、可撓性、耐摩耗性及び外観特性のいずれにも優れている。
本発明の配線材は、導体の外周面に本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の架橋物からなる絶縁層(被覆層ともいう。)を少なくとも1層有していればよく、それ以外の構成は配線材の通常の構成と同様とすることができる。例えば、導体の外周面に少なくとも1層の被覆層を有する電線、このような電線若しくはこれら電線を複数束ねた電線束の外周面に被覆層としてシースを形成したケーブル等が挙げられる。また、上記架橋物からなる絶縁層は、導体の外周面上に直接設けられても、接着層等の他の層を介して間接的に設けられてもよい。絶縁層は単層でも複層でもよく、複層である場合少なくとも1層が本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の架橋物で形成されていればよい。また、ケーブルのシースを本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の架橋物で形成してもよい。
本発明の配線材としては、例えば、特許文献2の図1~3に示される各電線において押出被覆層3を上記架橋物で構成した電線を挙げることができる。
導体としては、配線材に応じた適宜の導体を用いることができる。例えば、適宜に、単線の導体、撚線の導体(抗張力繊維を縦添え若しくは撚り合わせた撚線を含む。)を用いることができる。例えば、絶縁電線等に用いる導体としては、裸線でも錫メッキ若しくはエナメル被覆したものでもよい。導体を形成する金属材料としては軟銅、銅合金、アルミニウム等が挙げられる。導体の外径等は用途等に応じて適宜に決定され、各用途に用いられる通常の配線材と同様に設定できる。例えば、0.5~4.0mmとすることができる。導体の外径を上記範囲に設定すると、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の架橋物の優れた可撓性を活かして可撓性に優れた配線材を実現できる。一方、光ファイバー心線、光ファイバーケーブルに用いる導体としては、石英ガラスや各種プラスチック等からなる導体が挙げられる。
絶縁層の厚さ(肉厚)は、用途等に応じて適宜に決定されるが、各用途に用いられる通常の配線材と同様の厚さに設定でき、例えば、絶縁電線等では、通常、0.15~10mm程度に設定され、光ファイバーケーブル等では、通常、0.1~10mm程度に設定される。
このような構造を有する配線材としては、電気・電子機器の内部配線若しくは外部配線に使用される電線、ケーブル、コード、光ファイバー心線、光ファイバーケーブル等が挙げられ、電線又はケーブルが好ましい。
[配線材の製造方法]
本発明の配線材は、適宜の方法により製造することができるが、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物を導体の外周面上に配置し、次いで架橋反応処理して、製造することが好ましい。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物を導体の外周面上に配置する方法は、架橋性フッ素ゴム組成物で導体を被覆できる方法であればよく、適宜の成形方法が適用される。例えば、成形方法としては、押出機を用いた押出成形、射出成形機を用いた射出成形、その他の成形機を用いた成形が挙げられる。本発明においては、導体と架橋性フッ素ゴム組成物とを共押出する押出成形が好ましい。
押出成形は、汎用の押出成形機を用いて、行うことができる。押出成形温度は、TFE-PP共重合体の融点(架橋性フッ素ゴム組成物の融点)、有機過酸化物の分解温度、更には押出速度(引取り速度)の諸条件に応じて適宜に設定され、通常、架橋反応の生起を抑えるため、有機過酸化物の分解温度未満の温度に設定される。このような押出成形温度としては、例えば、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の調製方法における、有機過酸化物の存在下で各成分を混合する場合の混合温度と同じ温度に設定することが好ましい。その他の押出成形条件は適宜に設定される。
架橋性フッ素ゴム組成物を導体の外周面上に配置する方法(架橋性フッ素ゴム組成物の配置)は、押出機を用いて、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の調製方法(押出機内での架橋性フッ素ゴム組成物の調製)と連続して一連の工程として(一挙に)に行うこともできる。
次いで、導体の外周面上に配置した本発明の架橋性フッ素ゴム組成物を架橋反応処理する。この架橋反応処理は、有機過酸化物を含有する架橋性組成物に通常適用される方法を特に制限されることなく適用できる。例えば、加熱炉、加熱管等の加熱装置を用いて、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物を外周面上に配置(押出成形、押出被覆)した導体を有機過酸化物の分解温度以上に加熱する方法が挙げられる。加熱温度は、有機過酸化物の分解温度以上であればよく、その一例を挙げると、140℃以上とすることができ、好ましくは150~220℃である。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
下記表1-1及び表1-2(併せて表1という。)において、各例の配合量に関する数値は特に断らない限り質量基準である。
実施例及び比較例に用いた各化合物の詳細を以下に示す。
TFE-PP(テトラフルオロエチレン-プロピレン)共重合体:アフラス400E(商品名)、AGC社製、ムーニー粘度ML(1+10)121℃:50M
シリカ:Nipsil SS-30P(商品名)、BET比表面積110m/g、東ソー・シリカ社製
クレー:Translink37(商品名)、BASF社製
架橋助剤:タイク、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、新菱社製
有機過酸化物:パーカドックス14S-FL(商品名)、1,3-ビス-(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、分解温度155℃、化薬ヌーリオン社製
炭酸カルシウム:ライトンBS-O(商品名)、備北粉化工業社製
滑剤:エキセルO-95R(商品名)、オレイン酸モノグリセライド、花王社製
スコーチ防止剤:ノクセラーTOT-N(商品名)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、大内新興化学工業社製
MgO:キョーワマグ150(商品名)、協和化学工業社製
[実施例1~8及び比較例1~7]
表1に示す組成の架橋性フッ素ゴム組成物をそれぞれ調製し、これらを導体の外周面上に押出成形(押出被覆)した後に架橋反応処理して形成した絶縁層を有する絶縁電線を製造し、更に下記方法にて下記試験サンプルを作製した。
(絶縁電線の製造)
まず、バンバリーミキサーを用いて表1に示す各成分のうち有機過酸化物以外の成分を混合温度120℃で約10分間混練した。次いで、オープンロールを用いて、得られた混合物と有機過酸化物とを混合温度80℃で約5分間混練して、架橋性フッ素ゴム組成物を調製した。
次いで、得られた架橋性フッ素ゴム組成物を押出機(スクリュー径:115mm、L/D(スクリュー有効長Lと径Dとの比):16)に投入し、スクリュー回転数7~10rpm、押出温度100℃で、全断面積30mmの多芯撚り線導体の外周面上に厚さ約1.2mmの断面環状に押出成形(押出被覆)した。得られた架橋性フッ素ゴム組成物を押出成形した多芯導体を190℃に設定した架橋管を用いて加熱して、押出成形された架橋性フッ素ゴム組成物を乾式熱架橋させてその架橋物で絶縁層を形成した。こうして各実施例及び比較例の絶縁電線をそれぞれ製造した。
(目やに発生試験用の試験サンプルの作製)
各実施例及び比較例で調製した架橋性フッ素ゴム組成物を押出機(スクリュー径:25mm、L/D:25)に投入し、スクリュー回転数60~70rpm、押出温度100℃でテープ状に押出成形をし、厚さ約2mmのテープ状試験サンプルを10m連続して、作製した。このテープ状試験サンプルは架橋反応処理していない。
(可撓性試験用の試験サンプルの作製)
各実施例及び比較例で調製した架橋性フッ素ゴム組成物を厚さ約2mmのシート状に加圧プレス(温度170℃、加圧時間20分、予熱無し)して、成形と同時に架橋反応を行い、シート状試験サンプルを作製した。
製造した各絶縁電線及び各試験サンプルについて、下記試験をし、その結果を表1に示した。
<押出外観試験>
各絶縁電線の表面平坦性(表面の変形度合い)を、絶縁層の表面(観測領域は長さ10mの絶縁層の全表面)におけるメルトフラクチャーの有無により、目視で確認した。
絶縁層の表面に、メルトフラクチャーを確認できなかった場合を「合格」(外観(表面平坦性)に優れる)とし、メルトフラクチャーを確認できた場合を「不合格」とした。
<耐摩耗性試験>
各絶縁電線の耐摩耗性を下記摩耗試験により評価した。
評価は、日本自動車技術会規格(JASO)D618に規定の試験を参考として、絶縁電線に荷重約2Nを加えてベルト摩耗試験を行った。摩耗テープの粗さはA-150を使用し、移動速度25mm/秒、テープ電極間150mmとし、本試験において、摩耗長が3000mm以上であった場合を「合格」(耐摩耗性に優れる)とした。
<目やに発生試験>
作製した各目やに発生試験用のテープ状試験サンプルを作製完了(上記の押出成形完了)までに目やにの発生状況を確認した。具体的には、テープ状試験サンプルを作製完了までの、ダイス端部に発生した組成物の成形カス(目やに)の蓄積度合い(蓄積量)を目視で確認した。作製完了時における成形カスの蓄積量が、大きさ1mm以上の目やにが5個未満であった場合(テープ状試験サンプルの表面に目やにに由来する付着物が確認できない)を「合格」(目やにの発生を抑制できる)とし、目やにが材料流れに巻き込まれてダイス端部から自然と取れてしまう場合(テープ状試験サンプルの表面に目やにに由来する付着物が確認できた場合)、又は大きさ1mm以上の目やに(上記目やにに由来する付着物を含む)が5個以上であった場合を「不合格」とした。
<可撓性試験>
作製した各可撓性試験用のシート状試験サンプルを用いて、伸び量100%時(全長は伸長前のシート状試験サンプルに対して200%)の応力を指標として、可撓性を評価した。具体的には、シート状試験サンプルから打ち抜いて、日本産業規格(JIS) K 6251に記載の「3号ダンベル試験片」を作製した。この3号ダンベル試験片を用いて、JIS K 6251に記載の方法に準拠し、標線距離20mm、引張速度500mm/minで引張試験を行い、伸び量100%時の応力を測定した。本試験において、測定された応力が7.0MPa以下であった場合を「合格」(可撓性に優れる)とする。
Figure 2022119103000001
Figure 2022119103000002
表1に示す結果から明らかなように、TFE-PP共重合体100質量部に対して、シリカ及び架橋助剤を特定の含有量及び含有量比で含有しない、比較例1~7の架橋性フッ素ゴム組成物は、成形時における、外観不良の発生及び目やにの発生をともに抑制できず、又は、成形体である絶縁層の可撓性及び耐摩耗性を両立できない。
これに対して、TFE-PP共重合体100質量部に対してシリカ及び架橋助剤を特定の含有量及び含有量比で含有する本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、いずれも、成形時に外観不良の発生及び目やにの発生を抑制でき、可撓性、耐摩耗性及び外観に優れた成形体としての絶縁体を成形できる。これは、TFE-PP共重合体に併用された架橋助剤が組成物全体の粘度を低下させる機能を発現しつつも、架橋助剤が、成形時(溶融混錬時)にはシリカに吸着され、架橋時には架橋構造内に組み込まれることにより、分離若しくはブリードしにくくなるためと考えられる。

Claims (5)

  1. テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体100質量部に対して、シリカ10~30質量部と、架橋助剤7.5~30質量部と、有機過酸化物とを含有し、
    前記シリカの含有量に対する前記架橋助剤の含有量の質量比[架橋助剤の含有量/シリカの含有量]が0.4~1.2である、架橋性フッ素ゴム組成物。
  2. 前記質量比[架橋助剤の含有量/シリカの含有量]が0.47~0.90である、請求項1に記載の架橋性フッ素ゴム組成物。
  3. 前記テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体のムーニー粘度ML(1+10)121℃が50~160Mである、請求項1又は2に記載の架橋性フッ素ゴム組成物。
  4. 前記有機過酸化物の含有量が0.5~5質量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載の架橋性フッ素ゴム組成物。
  5. 導体の外周面上に絶縁層を有する配線材であって、
    前記絶縁層が請求項1~4のいずれか1項に記載の架橋性フッ素ゴム組成物の架橋物で形成されている、配線材。
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