JP2022116519A - フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022116519000001
【課題】金属特有の質感である美麗性と優れた防眩性を両立したフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】鋼板表面粗さの最大高さSzが2.0μm以上10μm以下、
凹凸の山の頂点密度Spdが300個/mm以上1200個/mm以下、
面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μmの位置における凹部の断面積と、面粗さ測定における基準面からの距離が+1.0μmの位置における凸部の断面積との和が、面粗さ測定における基準面の面積に対して0%以上50%未満存在する、
フェライト系ステンレス鋼板。
【選択図】図1

Description

本発明は、防眩性に優れたフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法に関する。
屋根材や外壁材などの用途に用いられる鋼板は、空港やドームの屋根などの大型建造物に用いられる場合が多い。このような用途においては、耐食性などの耐環境性に優れ、比較的安価で、メンナンスが容易な鋼板が用いられている。例えば、フェライト系ステンレス鋼板は、特有の黒色系の金属感や質感を有することで外観の美麗性に優れることから、屋外の大型建造物への適用が進められている。
大型建造物による光の反射は、周囲を歩行する歩行者や走行する車両等の運転者の視界を妨げる。このため、大型建造物の屋根材や外壁材などに金属板を使用する場合には、安全性の観点で「防眩性」が要求される。「防眩性」とは、光の反射によって人が主観的に感じる眩しさを軽減させる度合いのことを指す。この防眩性という概念は、主観的な概念ではあるものの、屋外の建造物や厨房製品などを設計する上で重要な要素とされる。金属素材である鋼板を建築物等に使用する場合には、コンクリートや石材、樹脂などの素材とは異なり、金属特有の質感が備える美麗性を前提として、優れた防眩性が要求される。大型建造物による反射光は、近くからでも、遠くからでも歩行者や車両の運転者の視界に入ることがある。このため、大型建造物のように屋外で使用される鋼板の場合、数m以内の近距離から観察した場合の防眩性と、10m以上の遠距離から眺めた場合の防眩性の両方を向上させる必要がある。
これに対して、特許文献1は、冷間圧延前の鋼板の鏡面反射指数、冷間圧延における圧下率、圧延ロールの鏡面反射指数を所定の条件とすることで、防眩性を向上させた鋼板の製造方法が記載されている。鏡面反射指数とは、光が鋼板表面に照射された際の、鏡面反射光の三次元的な広がり(拡散)を考慮した指標とされる。これは、反射光の広がり具合を数値化した指標であり、鏡面反射指数が小さいほど、鏡面反射は鈍く反射光線に鋭さがなくなり、防眩性が向上することを示している。
特許文献2では、光の反射光の広がりを表す反射光分布によって防眩性が決まることを前提に、反射光の広がりが大きくなるような鋼板表面の凹凸形態を規定している。具体的には、2次元粗さ測定から得られる中心線平均粗さRaが0.5~5μmであって、凹凸の平均傾斜角が4~11°である防眩性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。特許文献2では、表面凸部の先端部である稜角が小さいほど、入射光を乱反射させやすいため、凹凸の傾斜角を大きくすることによって防眩性が向上するとされている。また、特許文献2では、このような鋼板の製造方法として、表面にCrめっき層を有するダルロールを用いた冷間圧延による製造方法が開示されている。
特許文献3には、表面の凹凸として、2次元粗さ測定から得られる最大粗さRmaxが10μm以下であって、1μm以上の差を持つ凹凸の個数が10個/mm以上であるフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。また、所定の凹凸を有するダルロールを用いた軽圧下圧延によって、トータル伸び率0.2~0.8%を付与するフェライト系ステンレス鋼板の製造方法が開示されている。ここで、伸び率とは、圧延前後の材料長さの差から算出される指標であるが、伸び率が1%以下の場合には、圧延前後の板厚差から算出される圧下率の値とほぼ同じである。
特許第3688763号公報 特許第3287302号公報 特許第3338538号公報
特許文献1では、変角式分光色彩計を用いて、受光側の検出器を正反射位置近傍で走査することにより、反射光の三次元的な広がりを求めている。このとき、測定対象物である反射面と受光側の検出器の距離は概ね固定されているため、反射光強度の角度分布を検出していることに相当する。しかし、測定対象物に反射した光を見て人が感じる眩しさは、鋼板からどの程度離れて観察するかによって異なる。特許文献1では、反射光強度の角度分布を測定しているだけである。したがって、鋼板からの距離によって人が感じる眩しさの違いを評価していない。さらに、このような指標を満足する鋼板は、必要以上に強い防眩性を備える必要が生じる。また、このような鋼板は全体として過度に白色化した表面となって、金属特有の質感が損なわれ、美麗性に劣る懸念がある。
特許文献2に記載された防眩性に優れたフェライト系ステンレス鋼板は、反射光の広がり(反射光強度の角度分布)によって防眩性が決まることを前提に、表面の凹凸形状を規定したものである。この場合も、鋼板からの距離によって人が感じる眩しさの違いまでは考慮していない。また、凹凸の平均傾斜角を大きくするために、凹凸の振幅として、平均粗さや最大粗さを大きくする必要がある。そのため、全体として過度に白色化した表面となって、金属特有の質感が損なわれ、美麗性に劣る懸念がある。
特許文献3に記載の鋼板は、表面の最大粗さと、凹凸の個数密度を高めることにより、防眩性を向上させようとするものである。しかし、上記と同様に、反射光を観察する距離に応じて人が感じる防眩性の違いを考慮していない。特に、特許文献3では、ダルロールによる圧下率が1%未満の条件で製造されるため、鋼板の表面にはロール凸部の転写よって局部的な凹みが形成され、凸部は点在した平滑面として残存する。平滑面は強く光を反射するため、近づいて観察すると、鋼板一面に点状の反射光が高密度に存在する状態となり、観察する角度によって「ギラツキ感」といった、やや不快な眩しさを感じさせる外観を呈する。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、金属特有の質感である美麗性と優れた防眩性を両立したフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]鋼板表面粗さの最大高さSzが2.0μm以上10μm以下、
凹凸の山の頂点密度Spdが300個/mm以上1200個/mm以下、
面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μmの位置における凹部の断面積と、面粗さ測定における基準面からの距離が+1.0μmの位置における凸部の断面積との和が、面粗さ測定における基準面の面積に対して0%以上50%未満存在する、
フェライト系ステンレス鋼板。
[2]鋼板表面の最大高さRzが2.0μm以上10μm以下、
山の頂点数が5個/mm以上30個/mm以下、
線粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μmおよび+1.0μmにおける基準線との平行線で切断した際に、線粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μm以上+1.0μm以下の範囲に粗さ曲線が存在する切断長さの和が、測定長に対し90%以上100%以下である、
フェライト系ステンレス鋼板。
[3]算術平均粗さRaで0.0010μm以上0.30μm以下の表面粗さの鋼板を、
算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールを用いて、
圧下率5.0%以上15%以下で冷間圧延する、フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
[4]表面の算術平均粗さRaが0.50μm以下である圧延ロールを用いて、1パス当たりの圧下率を5~25%として、1パス以上の圧延を施した後、
冷間圧延の最終パスで、算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールを用いて、圧下率5.0%以上15%以下で圧延する、フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
[5]算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールとして、
ダル加工を行った圧延ロールである、
[3]または[4]に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
[6]前記圧延ロールは、
液体ホーニングでダル加工を行った圧延ロールである、[5]に記載のステンレス鋼板の製造方法。
本発明によれば、金属特有の質感を維持しつつ、鋼板を観察する距離にかかわらず優れた防眩性を有するフェライト系ステンレス鋼板を得ることができる。したがって、本発明のフェライト系ステンレス鋼板であれば、建造物のデザイン上の選択肢が拡大する。
図1は、面粗さ測定における表面の凹凸の様子を示す模式図であるとともに、面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μm以上+1.0μm以下の高さの範囲を超える凹凸の様子を示す模式図である。 図2は、面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μmの位置および+1.0μmの位置において、基準面に対して平行な断面を示す断面図であり、図2(a)は-1.0μmの位置における断面図、図2(b)は+1.0μmの位置における断面図である。 図3は、線粗さ測定における粗さ曲線、および、本発明における切断長さを表す模式図である。
(3次元粗さ測定による表面凹凸の特定)
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、面粗さ測定で特定される鋼板表面の最大高さSzが2.0μm以上10μm以下、山の頂点密度Spdが300個/mm以上1200個/mm以下、面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μmの位置における凹部の断面積と、面粗さ測定における基準面からの距離が+1.0μmの位置における凸部の断面積との和が、面粗さ測定における基準面の面積に対して0%以上50%未満存在することを特徴とする。
鋼板表面の最大高さSzが2.0μm以上10μm以下
本発明において、ISO25178に準拠して測定した鋼板表面粗さの最大高さSzが2.0μm以上10μm以下であれば防眩性および美麗性に優れる。最大高さSzが2.0μm未満の場合には、遠距離および近距離で観察した場合の防眩性をいずれも満足しない。一方、最大高さSzが10μmを超えると、近距離から観察した場合の防眩性を満足しない。また、最大高さSzが10μmを超えると、鋼板が白色化し、美麗性が悪化する。なお、防眩性向上の観点から、最大高さSzは4μm以上10μm以下であることが好ましい。
山の頂点密度Spdが300個/mm以上1200個/mm以下
本発明において、ISO25178に準拠して測定した山の頂点密度Spdが、300個/mm以上1200個/mm以下であれば、防眩性に優れる。山の頂点密度Spdとは、単位面積あたりの山頂点の個数を表す。山の頂点密度Spdが300個/mm未満の場合には、鋼板表面の凹凸間のピッチが大きくなり、近距離から観察した場合の防眩性を満足しない。これは、最大高さSzが大きくても、凹凸のピッチが大きい場合に、鋼板からの乱反射光が局所的に集中し「ギラツキ感」を呈することによると考えられる。そのため、山の頂点密度Spdは300個/mm以上とする。なお、近距離で観察した場合の防眩性を満足させる点から、Spdは600個/mm以上であることが好ましい。一方、山の頂点密度Spdが1200個/mmを超えると、最大高さSzが2.0μm以上10μm以下であっても、遠距離から観察した場合の防眩性を満足しない。これは、近くから観察すると乳白色を呈するものの、離れた位置で観察すると表面がガラスのような平滑さを呈しており、遠くから観察した場合の防眩性が低下するためである。
面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μmの位置における凹部の断面積と、面粗さ測定における基準面からの距離が+1.0μmの位置における凸部の断面積との和が、面粗さ測定における基準面の面積に対して0%以上50%未満存在
フェライト系ステンレス鋼板の表面の凹凸は、少ない方が美麗性に優れるといえる。本発明者らが鋭意検討した結果、面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μm以上+1.0μm以下の高さの範囲に鋼板表面の凹凸が収まれば、美麗性に優れるという知見を得た。図1に示すように、面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μm以上+1.0μm以下の高さの範囲を超える凹凸は、少ない方が望ましい。図2は、面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μmの位置および+1.0μmの位置において、基準面に平行な断面を示す図である。面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μmの位置における凹部の存在量(基準面に平行な断面における凹部の面積であり、図2(a)の実線部内側)と、面粗さ測定における基準面からの距離が+1.0μmの位置における凸部の存在量(基準面に平行な断面における凸部の面積であり、図2(b)の実線部内側)が少なければ、面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μm以上+1.0μm以下の高さの範囲に表面の凹凸が収まっているということになる。そこで本発明では、面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μmの位置における凹部の断面積(図2(a)の実線部内側)と、面粗さ測定における基準面からの距離が+1.0μmの位置における凸部の断面積(図2(b)の実線部内側)との和が、面粗さ測定における基準面の面積に対して0%以上50%未満であることを特徴とする。面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μmの位置における凹部の断面積と、面粗さ測定における基準面からの距離が+1.0μmの位置における凸部の断面積との和が、面粗さ測定における基準面の面積に対して50%以上では、鋼板表面の最大高さSzが2.0μm以上10μm以下であって、山の頂点密度Spdが、300個/mm以上1200個/mmを満足しても、鋼板表面が全体として白色化して、美麗性が低下する。凹部と凸部の断面積の和は、少なければ少ない方が好ましいので、本発明では下限を0%とする。
面粗さ測定における基準面からの距離が+1.0μmおよび-1.0μmの位置における凹凸の断面積の求め方について、説明する。面粗さ測定における凹凸の基準面は、測定面内の凹凸の平均を代表する面として決定される。したがって、3次元粗さ測定機による高さ分布の情報から、面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μm以上+1.0μm以下の高さの範囲を適宜特定できる。例えば、図2(a)に示すように、面粗さ測定における基準面から+1.0μmの位置において、基準面に平行な断面積を求め、+1.0μmよりも高い領域である面積(図中の実線部内側)の和を、面粗さ測定における基準面からの距離が+1.0μmの位置における凸部の断面積とする。また、図2(b)のように、粗さ測定における基準面から-1.0μmの位置において、基準面に平行な断面積を求め、-1.0μmよりも低い領域(図中の実線部内側)の和を、面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μmの位置における凹部の断面積とする。これら凹部と凸部の断面積の総和が、面粗さにおける基準面の面積に対してどれほど存在するかを算出すればよい。面粗さ測定における基準面からの距離が+1.0μmおよび-1.0μmの位置における凹凸の断面積の総和の割合が少ないほど、美麗性に優れる。なお、+1.0μmおよび-1.0μmの位置における凹凸が、面粗さにおける基準面に対して同一の位置(同一の座標軸)に存在することはないものと考える(仮に、1点で同じ座標軸上に上下の凹凸が存在していたとしても、連続する傾斜が存在するという理由で、同一座標軸には存在しないものと考える。)。
鋼板表面の粗さの特定については、ISO25178に準拠して、3次元粗さ測定法を用いた面粗さの評価を行えばよい。面粗さの測定には、触針式三次元粗さ測定器を用いればよい。測定視野は特に制限されないが、例えば、圧延方向に0.8mm、圧延方向と垂直方向に2.0mmとし、触針のスキャンスピードは0.5mm/sとすればよい。各種粗さおよび形状パラメータを付属の解析ソフト(例えば、株式会社東京精密製 SURFCOM Map)を用いて、カットオフ0.8mmの条件で解析すればよい。
(2次元粗さ測定による表面凹凸の特定)
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、線粗さ測定で特定される鋼板表面の最大高さRzが2.0μm以上10μm以下、山の頂点数が5個/mm以上30個/mm以下、線粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μmおよび+1.0μmにおける基準線との平行線で切断した際に、線粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μm以上+1.0μm以下の範囲に粗さ曲線が存在する切断長さの和が、測定長に対し90%以上100%以下であることを特徴とする。
鋼板表面の最大高さRzが2.0μm以上10μm以下
本発明において、JIS B0601に準拠して測定した最大粗さRzが2.0μm以上10μm以下であれば、防眩性に優れる。最大粗さRzが2.0μm未満の場合には、遠距離から観察した場合の防眩性を満足しない。一方、最大粗さRzが10μmを超えると、近距離から観察した場合の防眩性を満足しない。また、最大粗さRzが10μmを超えると、鋼板が全体的に白色化し、美麗性が悪化する。なお、防眩性向上の観点から、最大高さRzは4.0μm以上であることが好ましい。
山の頂点数が5個/mm以上30個/mm以下
本発明では、最大粗さRzが2.0μm以上10μm以下であると同時に、JIS B0601に準拠して測定した山の頂点数が5個/mm以上30個/mm以下であるフェライト系ステンレス鋼板が、防眩性に優れる。山の頂点数とは、単位長さあたりの凸部の個数を表す。山の頂点数については、粗さパラメータとして規格化されていない。そこで本発明では、凹凸波長パラメータRSm(粗さ曲線における要素長さの平均)を用いて、山の頂点数を算出した。本発明における山の頂点数は、基準線から任意に1mm抜粋した長さの範囲にRsm[mm]の凹凸がいくつ存在するか、すなわち、山の頂点数=1[mm]/RSm[mm]により算出される値により定義する。
山の頂点数が5個/mm未満の場合には、鋼板表面の凹凸間のピッチが大きくなり、近距離から観察した場合の防眩性を満足しない。これは、最大粗さRzが大きくても、凹凸のピッチが大きい場合に、鋼板からの乱反射光が局所的に集中し「ギラツキ感」を呈することによると考えられる。そのため、山の頂点数は5個/mm以上とする。また、近距離で観察した場合の防眩性を満足させる点から、山の頂点数は10個/mm以上であることが好ましい。一方、山の頂点数が30個/mmを超えると、最大粗さRzが2.0μm以上10μm以下であっても、遠距離から観察した場合の防眩性を満足しない。これは、近くから観察すると乳白色を呈するものの、離れた位置で観察すると表面がガラスのような平滑さを呈しており、遠くから観察した場合の防眩性が低下するためである。
線粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μmおよび+1.0μmにおける基準線との平行線で切断した際に、線粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μm以上+1.0μm以下の範囲に粗さ曲線が存在する切断長さの和が、測定長に対し90%以上100%以下
フェライト系ステンレス鋼板の表面の凹凸は、少ない方が美麗性に優れるといえる。図3に示すように、線粗さ測定により求められる粗さ曲線において、-1.0μm以上+1.0μm以下の範囲に粗さ曲線が収まれば、凹凸が少なく美麗性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が得られるという知見を得た。すなわち、線粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μmおよび+1.0μmにおける基準線との平行線で切断した際に、線粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μm以上+1.0μm以下の範囲に粗さ曲線が存在する切断長さをそれぞれM、M…Mとしたとき、この切断長さの和(M+M+…+M)が、測定長Lに対して90%以上100%以下であれば、美麗性に優れるといえる。
切断長さの和が測定長に対して90%未満であると、鋼板表面の最大粗さRzが2.0μm以上10μm以下であって、山の頂点数が5個/mm以上30個/mm以下を満足しても、表面が全体として白色化して、美麗性が低下する。また、切断長さの和が測定長さを超えることはないため、上限を100%以下とした。
基準線との平行線で切断した際の切断長さの求め方について説明する。線粗さ測定における凹凸の基準線は、粗さ曲線で表される凹凸平均線により決定される。図3に示すように、粗さ測定プロフィール(表面凹凸の二次元高さ情報、すなわち粗さ曲線)に対して、粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μmおよび+1.0μmにある線を適宜特定できる。-1.0μmより低い部分の切断長さと+1.0μmより高い部分の切断長さを除いた切断長さの和、すなわち、M+M+…+Mが本発明で定義する切断長さの和である。全体の観察長さ(測定長L)に対して、この切断長さの和が占める割合を求める。
なお、線粗さの測定には、JIS B0601に準拠して、触針式二次元粗さ測定器を用いればよい。測定範囲は特に制限されないが、圧延方向および圧延方向と垂直方向に4.0mmとし、触針のスキャンスピードは0.5mm/s、カットオフ0.8mmの条件で測定および解析すればよい。また、各種粗さおよび形状パラメータの測定値は、圧延方向、圧延方向の垂直方向の測定値の平均値とする。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板の成分組成については、使用環境に応じて耐食性を有する成分系を選定することが好ましい。
(製造方法)
次に、本発明のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法について説明する。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、所定の粗さを付与した圧延ロールを用いた1パスの圧延によって表面に凹凸を付与するものである。そこで、圧延前における鋼板の表面粗さを所定の範囲に調整しておくことにより、効果的に粗さを付与することができる。
本発明においては、算術平均粗さRaで0.0010μm以上0.30μm以下の表面粗さの鋼板を、算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールを用いて、圧下率5.0%以上15%以下で冷間圧延する。または、表面の算術平均粗さRaが0.50μm以下である圧延ロールを用いて、1パス当たりの圧下率を5~25%として、1パス以上の圧延を施した後、冷間圧延の最終パスで、算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールを用いて、圧下率5.0%以上15%以下で圧延することにより、本発明のフェライト系ステンレス鋼板を得ることができる。
冷間圧延前の鋼板表面:算術平均粗さRaで0.0010μm以上0.30μm以下
冷間圧延前の鋼板表面の算術平均粗さRaが0.30μmを超えると、鋼板表面の最大高さSzおよび鋼板表面の最大高さRzが所望の範囲を満たさず、遠距離から観察した場合の防眩性を満足しない場合がある。一方、算術平均粗さRaを0.0010μm以上とするのは、コストの増大を防ぐためである。
算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールを用い、圧下率5.0%以上15%以下で圧延する
圧延ロール表面の算術平均粗さRaが1.0μm未満では、鋼板表面の最大高さSzを2.0μm以上とするのが難しい。また、圧延ロール表面の算術平均粗さRaが小さいと、圧延ロールの凹凸のピッチが小さいため、山の頂点密度Spdが増加して、Spdが1200個/mmを超える場合がある。また、山の頂点数も所望の範囲を満足しない場合がある。したがって、遠距離から観察した際の防眩性が低下する。一方、圧延ロール表面の算術平均粗さRaが2.0μmを超えると、鋼板表面の最大高さSzを10μm以下とするのが難しく、近距離から観察した場合の防眩性を満足しない。鋼板表面の最大高さRzについても、所望の範囲を満足しない。また、圧延ロール表面の算術平均粗さRaが大きいと、圧延ロールの凹凸のピッチも大きくなり、山の頂点密度Spdが小さくなる。これにより、Spdが300個/mm未満となる場合があり、近距離から観察した場合の防眩性を満足しない。さらにまた、山の頂点数も所望の範囲を満足しない。上記圧延ロールを用いて、圧下率5.0%以上15%以下の圧延を行う。圧下率が5.0%未満の場合には、圧延ロール表面の凹凸が鋼板に十分転写されないため、鋼板表面の最大高さSzを2.0μm以上とするのが難しい。また、山の頂点密度Spdが小さくなって、Spdが300個/mm未満となる場合がある。また、鋼板表面の最大高さRzおよび山の頂点数についても、所望の範囲とすることが難しくなる。一方、最終圧延パスにおける圧下率が15%を超えると、鋼板表面の最大高さSzを10μm以下とするのが難しい。
また、表面の算術平均粗さRaが0.50μm以下である圧延ロールを用いて、1パス当たりの圧下率を5~25%として、1パス以上の圧延を施すことにより、0.0010μm以上0.30μm以下の表面粗さの鋼板を得ることもできる。この場合、1パス以上の圧延を施した後、続けて冷間圧延の最終パスにあたる冷間圧延で、算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールを用いて、圧下率5.0%以上15%以下で圧延することにより、所望のフェライト系ステンレス鋼板を得ることができる。
表面の算術平均粗さRaが0.50μm以下である圧延ロールを用いる際、圧延油として動粘度5.0~20mm/sのニート油を用いて、直径が40~150mmのワークロールを用いたレバース式圧延機により行うのが好ましい。ここで、表面の算術平均粗さRaを0.50μm以下としたのは、0.50μmを超えると、ロールの凹凸が大きくなり、鋼板表面との間で焼付きが発生するためである。また、コスト、効率の観点で、広範囲の表面を均一に所望の表面粗さに整えるためには、少なくとも1パス以上圧延すれば良い。その際の圧下率が5%未満だと、ロール表面の鋼片への転写が弱いため圧延前の鋼板表面性状を均す効果がなく、圧下率が25%を超えると、表面に焼付き欠陥が生じるため、圧下率は5~25%とした。小径ワークロールにより、比較的粘度の低い圧延油を用いた圧延を行うことで、鋼板表面にオイルピットが生成されにくく、鋼板表面を算術平均粗さRaで0.0010μm以上0.30μm以下とすることができる。なお、圧延油として、動粘度5.0~30mm/sの基油を1~20%の濃度で水中に乳化・分散させたエマルション圧延油を用いてもよい。ロールバイトへ導入される油膜厚が薄く抑えられるため、鋼板表面にオイルピットが生成されにくいからである。
冷間圧延の最終パスで、算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールを用いて、圧下率5.0%以上15%以下で圧延する
圧延ロール表面の算術平均粗さRaが1.0μm未満では、鋼板表面の最大高さSzを2.0μm以上とするのが難しい。また、圧延ロール表面の算術平均粗さRaが小さいと、圧延ロールの凹凸のピッチが小さいため、山の頂点密度Spdが増加して、Spdが1200個/mmを超える場合がある。また、山の頂点数も所望の範囲を満足しない場合がある。したがって、遠距離から観察した際の防眩性が低下する。一方、圧延ロール表面の算術平均粗さRaが2.0μmを超えると、鋼板表面の最大高さSzを10μm以下とするのが難しく、近距離から観察した場合の防眩性を満足しない。鋼板表面の最大高さRzについても、所望の範囲を満足しない。また、圧延ロール表面の算術平均粗さRaが大きいと、圧延ロールの凹凸のピッチも大きくなり、山の頂点密度Spdが小さくなる。これにより、Spdが300個/mm未満となる場合があり、近距離から観察した場合の防眩性を満足しない。さらにまた、山の頂点数も所望の範囲を満足しない。上記圧延ロールを用いて、圧下率5.0%以上15%以下の圧延を行う。圧下率が5.0%未満の場合には、圧延ロール表面の凹凸が鋼板に十分転写されないため、鋼板表面の最大高さSzを2.0μm以上とするのが難しい。また、山の頂点密度Spdが小さくなって、Spdが300個/mm未満となる場合がある。また、鋼板表面の最大高さRzおよび山の頂点数についても、所望の範囲とすることが難しくなる。一方、最終圧延パスにおける圧下率が15%を超えると、鋼板表面の最大高さSzを10μm以下とするのが難しい。
なお、冷間圧延の最終圧延パスとは、鋼板の板厚を減厚する冷間圧延の最終パスを意味する。ただし、圧下率1%以下の軽圧下圧延は、本発明の「冷間圧延」には含まれない。
本発明において、算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールの表面はダル加工を行った圧延ロールであることが望ましい。ダル加工は圧延方向、板幅方向によらず、どの角度から見ても凹凸が確認できる表面形態であり、圧延後の鋼板表面に山谷形状の凹凸をランダムに付与し、光の反射の異方性を削減する上で有用である。
このようなダル加工表面を得る手段として、ショットブラスト、放電ダル加工などが挙げられるが、液体ホーニング加工を用いるのが工業的に有用であり好ましい。液体ホーニング加工は、細かい砥粒と水の混合液(防錆剤を含むことがある)をノズルから高速で噴射して工作物の表面を仕上げる加工法である。本法は汎用的に用いられるショットブラスト加工や放電加工と比較し、使用する砥粒の粒度や形状、混合液の濃度、ノズルの形状や噴射圧力など、圧延ロール表面の凹凸の深さや密度などを調整することが容易である。水を用いているため、固体粒子がロール表面に衝突する際の衝撃力が緩和され、他の加工法によるよりも柔らかな外観を呈し、ギラツキ感を抑制した表面外観を得ることができる。これにより、冷間圧延工程において圧延ロール表面から転写される鋼板表面についても、外観上の美麗性を得やすいという特徴がある。
算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールを用いた圧延では、鋼板との微視的な摺動による焼き付きが生じやすい。そのため、焼き付きによる表面疵を防止するために、圧延において、動粘度が5.0mm/s以上である圧延油を用いるのが好ましい。また、冷間圧延の最終圧延パスの入側の鋼板表面を、算術平均粗さRaで0.0010μm以上0.30μm以下とする際に用いる圧延油と、算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールを用いる際の圧延油について、同一の圧延油を用いることが好ましい。冷間圧延の最終圧延パスの入側の鋼板表面を、算術平均粗さRaで0.0010μm以上0.30μm以下とする際に用いる圧延油と、算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールを用いる際の圧延油を変更する必要がなくなるため、最終圧延パスの前に圧延ロールの交換することにより、同一の圧延機により両工程を実行することができ、鋼板の生産能率を向上させることができる。
圧延工程以外の製造条件については特段制限されないが、例えば、上記成分組成となるよう、溶鋼を転炉で調整した後、連続鋳造法によりスラブとする。製造したスラブは、熱間圧延を施した後、ショットブラストや酸洗などにより脱スケールを施し、必要に応じて焼鈍する。また、場合により重研削を行っても構わない。いずれも設備や条件は特に限定するものではなく、常法として用いられる方法で構わない。
表1に示す成分組成を有する鋼材を用いて、熱間圧延機により板幅1200mm、板厚4mmの熱延鋼板を得た。その後、焼鈍を実施し、ショットブラスト処理、酸洗により脱スケールを行った。脱スケール後の鋼板については、通常の円筒研磨により表面を調整したブライトロールを用いて板厚0.45mmとなるまで冷間圧延を実施した。このとき、第15パスから第19パスに対して、表面の平均粗さが異なる圧延ロールを適用し、冷間圧延の最終圧延パスの入側における鋼板表面の算術平均粗さRaの制御を行った。なお、この際の鋼板表面の算術平均粗さRaを把握するにあたり、最終パス前にあらかじめコイルの先端部から板を10m払い出し、ハンディタイプの接触式二次元粗さ計を板面にセッティングして測定を行った。JIS B0601に準拠し、測定条件はカットオフ0.08mm、測定長さ0.4mmである。この測定により、算術平均粗さRaが0.0010μm以上0.30μm以下の条件を満足するコイルを選定した。
Figure 2022116519000002
冷間圧延の最終圧延パスの入側における鋼板表面に、表2に示す算術平均粗さRaを付与した後に、第20パス目の最終圧延パスを実施した。最終圧延パスにおける圧延ロールとしては、直径100mmの鍛鋼ロールを用いて、ロール表面に対して、液体ホーニング加工、ショットダル加工、放電ダル加工を施したものを用いた。また、表2に示す表面粗さの圧延ロールを用いた。
最終圧延パスでは、圧延油として動粘度12mm/sのニート油を用いて、圧下率2.0~20%の条件で単パス圧延を行った。
圧延後のフェライト系ステンレス鋼板から、寸法300×300mmの評価試験片を採取して、圧延時の上面を対象に、以下の評価を行った。
<鋼板表面の三次元粗さ測定>
得られた試験片の圧延時の上面について、ISO25178に準拠して、3次元粗さ測定法を用いた面粗さを測定した。面粗さの測定には、触針式三次元粗さ測定器を用いた。測定視野は、圧延方向に0.8mm、圧延方向と垂直方向に2.0mmとし、触針のスキャンスピードは0.5mm/sとした。各種粗さおよび形状パラメータを付属の解析ソフト(例えば、株式会社東京精密製 SURFCOM Map)を用いて、カットオフ0.8mmの条件で解析し、凹凸の最大高さSz、凹凸の山の頂点密度Spd、面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μmの位置における凹凸の断面積と、面粗さ測定における基準面からの距離が1.0μmの位置における凹凸の断面積との和が、面粗さ測定における基準面の面積に対してどれほどの割合か(面積率)を求めた。
<鋼板表面の二次元粗さ測定>
得られた試験片の圧延時の上面について、JIS B0601に準拠して、線粗さの測定を行った。測定には触針式二次元粗さ測定器を用いた。測定範囲は、圧延方向および圧延方向と垂直方向に4.0mmとし、触針のスキャンスピードは0.5mm/s、カットオフ0.8mmとした。最大高さRz、山の頂点数、線粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μmおよび+1.0μmにおける基準線との平行線で切断した際に、線粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μm以上+1.0μm以下の範囲に粗さ曲線が存在する切断長さの和について、測定長に対する割合を求めた。また、各種粗さおよび形状パラメータの測定値は、圧延方向、圧延方向の垂直方向の測定値の平均値とする。
<防眩性>
防眩性の評価は、人間の目視評価および写像性の評価により実施した。人間の目視評価については、晴天の日中に、太陽を背面とした立ち位置で鋼板を見た際に眩しさを感じるか否かで評価を行った。5人の評価者が5秒以上連続して鋼板を観察し、評価者の一人でも眩しいと感じたら×、全員が5秒以上連続して目視しても違和感がないと判断すれば○とした。鋼板から10m離れた遠距離から評価した場合を遠距離からの評価とし、鋼板から30~50cmの距離から見た際の評価を近距離での評価とした。
また、写像性の評価には、表面アナライザー(Canon製表面アナライザー:RA-532H)を用いた。鋼板の圧延方向と同方向から光を入射させた場合の測定値をL方向値、圧延方向と直交する方向から光を入射させた場合の測定値をC方向値とした。写像性の評価には、光学くしとして、スリット幅が0.25mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmのものを使用した。各光学くしのスリット部に対する受光量の最大値と最小値を用いて、以下の式で表される像鮮明度Cを測定した。
[%]=(Q-R)/(Q+R)×100
ただし、Cは光学くしのスリット幅wにおける像鮮明度、Qはスリット幅wにおける受光量の最大値、Rはスリット幅wにおける受光量の最小値を表す。
像鮮明度Cは、L方向値とC方向値の両方についていずれも2回ずつ(N=2)測定し、計4つの測定値の平均値を求め、以下の基準により遠距離および近距離の防眩性を評価した。遠距離および近距離の防眩性の評価結果がいずれも良好である場合を合格(〇)とした。
0.25mm、0.5mmおよび1.0mmのスリット幅を有する光学くしを用いて得られた像鮮明度の測定値C0.25、C0.5、C1.0がいずれも0.50%以下を満たす:遠距離(鋼板から10m離れた距離)における防眩性に優れる
2.0mmのスリット幅を有する光学くしを用いて得られた像鮮明度の測定値C2.0が10%以下:近距離(鋼板から30~50cm離れた距離)における防眩性に優れる
<白色度>
白色度の測定には分光色彩計(日本電色工業製;分光色彩計SD3000型)を用いて、ハンターLab色空間の明度を表すL値の値を白色度とした。白色度の測定は、採取した鋼板中央部に測定機器を置き、鋼板の圧延長手方向に対し、0°、45°、90°に鋼板の向きを変更して計3点の測定を行い、各測定で得られたL値の平均値を白色度とした。L値の平均値が70以下であれば、金属板と認識できる程度の黒色感を示すため、合格とした。70より大きい値を示す場合、紙のような白い板面となり、金属鋼板と認識できないため、不合格とした。
<総合判定>
防眩性および美麗性のいずれも満足するものを合格(〇)と判定した。防眩性、美麗性のいずれかもしくは両方を満足しないものを不合格(×)と判定した。
表2に評価結果を示す。
Figure 2022116519000003
No.1~8は、本発明例である。3次元粗さ、2次元粗さいずれの測定結果も、適切な範囲であり、防眩性、美麗性ともに満足する鋼板を得られることを確認した。なお、No.2とNo.7、No.8を比較すると、No.2が最も低い白色度を示し、防眩性を満足すると同時により金属感が残る板面であった。
No.9は、最終圧延パス入側での鋼板表面の算術平均粗さRaが大きいため、最終圧延パスで粗さを付与した後も、最終パス手前までに付与されたロール研磨目の転写痕が残存した。これにより、鋼板表面のSzおよびRzが大きくなってしまった。そのため、防眩性は十分であるが、表面全体が過度に白濁した色調となって、金属特有の質感が損なわれているため、美麗性に劣り不合格となった。
No.10は、最終圧延パスの圧下率を軽圧下とした場合の結果である。圧下率が低く最終圧延パスの凹凸付与が不十分になり、Sz、Rzが1.2μm、0.46μmと適切な範囲の下限を下回った。そのため、凹凸の転写はあるものの、光沢感のある板面であった。近距離および遠距離いずれから観察した際でも、鋼板表面に反射像が比較的鮮明に映り込み、防眩性が不良であった。
No.11、は最終圧延パスの圧下率を高くした場合の結果であるが、焼き付きを発生させてしまった。さらに、Szが上限を超え、凹凸の指標を示す三次元粗さにおける面積率、および二次元粗さにおける切断長さの割合も所定の範囲を満たさなかった。これにより、防眩性は満足するものの、表面全体が白濁した色調となって、金属特有の質感が損なわれているため、美麗性に劣るものであった。
No.12は、最終圧延パスに用いた圧延ロールの算術平均粗さが小さく、Sz、Rzおよび面積率と線分の長さ率は範囲内であったものの、Spd、および山の頂点数が多くなった。その結果、遠距離における防眩性に劣った。
No.13は、最終圧延パスに用いた圧延ロールの平均粗さが大きい例である。Szが範囲外であるほか、山個数、面積率と線分の長さ率も範囲外であった。近距離から見た防眩性が不合格であり、また、金属特有の色調感が損なわれた白濁面となり美麗性の観点で不合格である。
No.14は、最終圧延パスに用いた圧延ロールの平均粗さが小さく、かつ圧下率が大きい条件である。この場合、最終手前パスまでに付与される表面欠陥を均す効果が勝り、平滑な板面となった。Sz、Rzともに下限を下回った。また、三次元粗さにおける面積率、および二次元粗さにおける切断長さの割合も満たさなかった。そのため、防眩性の不良により不合格であった。
No.15は、最終圧延パスに用いた圧延ロールの平均粗さが大きい場合の例である。乱反射光が局所的に集中し、角度によって強い反射を示す点が点在するように感じる「ギラツキ感」を呈し、近距離からの防眩性が不良であった。また、美麗性にも劣った。
以上より、本発明であれば、防眩性と美麗性を両立するフェライト系ステンレス鋼板を得られることを確認した。

Claims (6)

  1. 鋼板表面粗さの最大高さSzが2.0μm以上10μm以下、
    凹凸の山の頂点密度Spdが300個/mm以上1200個/mm以下、
    面粗さ測定における基準面からの距離が-1.0μmの位置における凹部の断面積と、面粗さ測定における基準面からの距離が+1.0μmの位置における凸部の断面積との和が、面粗さ測定における基準面の面積に対して0%以上50%未満存在する、
    フェライト系ステンレス鋼板。
  2. 鋼板表面の最大高さRzが2.0μm以上10μm以下、
    山の頂点数が5個/mm以上30個/mm以下、
    線粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μmおよび+1.0μmにおける基準線との平行線で切断した際に、線粗さ測定の基準線からの距離が-1.0μm以上+1.0μm以下の範囲に粗さ曲線が存在する切断長さの和が、測定長に対し90%以上100%以下である、
    フェライト系ステンレス鋼板。
  3. 算術平均粗さRaで0.0010μm以上0.30μm以下の表面粗さの鋼板を、
    算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールを用いて、
    圧下率5.0%以上15%以下で冷間圧延する、フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  4. 表面の算術平均粗さRaが0.50μm以下である圧延ロールを用いて、1パス当たりの圧下率を5~25%として、1パス以上の圧延を施した後、
    冷間圧延の最終パスで、算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールを用いて、圧下率5.0%以上15%以下で圧延する、フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  5. 算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下の圧延ロールとして、
    ダル加工を行った圧延ロールである、
    請求項3または4に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  6. 前記圧延ロールは、
    液体ホーニングでダル加工を行った圧延ロールである、請求項5に記載のステンレス鋼板の製造方法。
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