JP2022106062A - 水産物の漬込み液、及び水産物の漬込み方法 - Google Patents

水産物の漬込み液、及び水産物の漬込み方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、魚肉または体表が赤色を呈する水産物における、保存中または流通中の褐変や退色等の変色を抑制する技術を提供することを課題とする。【解決手段】梅酢を含有する漬込み液に、水産物を漬込むことにより、該水産物の変色を抑制する。該漬込み液中のクエン酸濃度は0.1~20.0重量%であり、リンゴ酸濃度が0.02~4.0重量%であることが好ましく、塩化ナトリウム濃度が0.4~5.0重量%であることが好ましく、またpHが7.0~10.0であることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、水産物の変色を抑制する技術に関する。
水産物の多くは、鮮度を保持するために冷凍又は冷蔵で流通される。生の水産物は瑞々しく、繊維感と弾力を具えた独特の食感が魅力となる食品である。しかしながら、冷凍保管された水産物においては、冷凍保管中に進行する退色や、解凍時に生じるドリップの発生による品質低下が問題となり、冷蔵保管された水産物においては、冷蔵保管中に進行する退色が問題となる。水産物の変色は商品価値を大きく下げ、また、ドリップ発生は水産物本来の食感や風味を低下させる。また、それに伴い歩留まりも低下する。これを解決するために、古くから水産物を、塩やアルカリを含有する漬込み液に漬込み処理を施すことにより、水産物の品質低下を抑制する技術が工夫されてきた。
例えば、漬込み液のイオン強度を高める成分の配合量を多くすることにより、味や食感への影響が少なく、歩留まりを保持することができることが見出されている(特許文献1)。また、梅酢及びアルカリ金属塩を含有する漬込み液が、魚介類等の食感、食味を改善することも知られている(特許文献2)。
しかしながら、特に、魚肉または体表が赤色を呈する水産物の場合は、冷凍又は冷蔵による保存中や流通中に褐変や退色が生じることが問題となり、従来の漬込み液では商品価値を十分に保つことができなかった。
魚肉等における変色は、ミオグロビンやカロチノイド色素の変化が原因の一つであるところ、クエン酸3ナトリウムがマグロのミオグロビンのメト化を遅延させることや(非特許文献1)、クエン酸やアスコルビン酸ナトリウムがカロチノイドの酸化を防止すること(非特許文献2)があることが報告されている。
特許第6641518号 特開2009-240294号公報
塚正泰之「養殖クロマグロ肉の冷蔵中の品質変化と色調保持」、21世紀CОEプログラム2003~2004(平成15~16)年度中間成果報告書(2005)163-166. 杉本昌明「冷凍冷蔵中における水産物の色調変化」、日本コールドチェーン研究会誌「食品と低温」、Vol.12,No.4, 137-142, (1986)
しかしながら、これらの従来技術における水産物の変色抑制効果は必ずしも満足いくものではなかった。また、消費者からは、人工添加物は忌避される傾向にあり、自然食材に由来する調味料の需要がある。
かかる状況に鑑みて、本発明は、水産物における経温、及び/又は経時での褐変や退色等の変色を抑制する技術を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、梅酢を含有する漬込み液
に水産物を漬込むことにより、その変色を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]梅酢を含有する水産物の変色抑制用の漬込み液であって、
漬込み液中のクエン酸濃度が0.1~20.0重量%である、漬込み液。
[2]漬込み液中のリンゴ酸濃度が0.02~4.0重量%である、[1]に記載の漬込み液。
[3]漬込み液中の塩化ナトリウム濃度が0.4~5.0重量%である、[1]又は[2]に記載の漬込み液。
[4]pHが7.0~10.0である、[1]~[3]の何れかに記載の漬込み液。
[5]イオン強度が0.5~3.0mol/kgである、[1]~[4]の何れかに記載の漬込み液。
[6]漬込み液中の遊離アスパラギン及び遊離アスパラギン酸の合計濃度が、0.002~0.3重量%である[1]~[5]の何れか記載の漬込み液。
[7][1]~[6]の何れかに記載の漬込み液に、水産物を漬込む工程を含む、水産物の変色抑制方法。
[8]漬込み時間が1秒間~48時間である、[7]に記載の方法。
[9]0~20℃で漬込みを行う、[7]又は[8]に記載の方法。
[10][1]~[6]の何れかに記載の漬込み液に水産物を漬込むことにより製造された、水産物処理物。
本発明により、水産物、特に魚肉または体表が赤色を呈する水産物において、本発明の一態様においては、冷凍時における変色を抑制できる。また、本発明の一態様においては、冷蔵時における変色を抑制できる。また、本発明の一態様においては、解凍時における変色を抑制できる。ここでいう変色には、経温、及び/又は経時での褐変や退色が含まれる。また、本発明により処理された水産物は、歩留まり及び/又は保水力にも優れる。そのため、保存中または流通中の品質低下を抑制することができる。さらに、本発明は、自然食材を利用するものであるため、人工添加物フリーの需要にも応えるものである。
漬込み処理後のマアジの遠心ドリップ率を示すグラフ。 漬込み処理後に冷凍保存し解凍後のマアジの赤色(a*/b*値)を示すグラフ。 漬込み処理後のカツオの遠心ドリップ率を示すグラフ。 漬込み処理後に冷凍保存し解凍後のカツオの赤色(a*/b*値)を示すグラフ。 漬込み処理後に冷凍保存し解凍後のサケの赤色(a*値)を示すグラフ。 漬込み処理後に冷凍保存し解凍後に焼成したサケの赤色(a*値)を示すグラフ。 漬込み処理後に冷凍保存し解凍後のサケの赤色(a*値)の経時変化(0日目からの差ΔE*ab)を示すグラフ。
本発明の漬込み液は、梅酢を含有する。
梅酢は、梅の実を塩漬けして得られる抽出液である。本発明における梅酢は、白梅酢、紫蘇の葉を加えた赤梅酢のいずれでもよいが、白梅酢がより好ましい。また、脱塩されていてもいなくても、いずれでもよいが、脱塩されていないものがより好ましい。また、粉末化した梅酢であってもよい。
梅酢には、通常、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸等の有機酸;ポリフェノール類(ab梅リグナン等);塩化ナトリウム;遊離アミノ酸が含まれ、それらの含有量は原料梅や梅酢の製造方法により異なる。
本発明の漬込み液を調製するに際し、通常は、梅酢を水で希釈して後述の成分を調整することができる。
本発明の漬込み液中のクエン酸濃度は、0.1~20.0重量%であり、好ましくは0.14~10.0重量%であり、より好ましくは0.4~3.0重量%である。
また、本発明の漬込み液中のリンゴ酸濃度は、好ましくは0.02~4.0重量%であり、より好ましくは0.02~2.0重量%であり、さらに好ましくは0.05~0.5重量%である。
これら漬込み液中に含まれる有機酸は、梅酢に由来するものであることが好ましく、通常は漬込み液の調製の際に梅酢を添加することにより上記濃度に調整される。
漬込み液中に含まれる有機酸における、梅酢由来の有機酸の比率は、50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%以上である。
本発明の漬込み液中の塩化ナトリウム濃度は、好ましくは上限5.0重量%であり、より好ましくは0.1~5.0重量%であり、さらに好ましくは0.4~3.5重量%である。
漬込み液中の塩化ナトリウム濃度は、漬込み後の水産物に求められる塩味の程度に応じて調整することができる。
漬込み液中に含まれる塩化ナトリウムは、梅酢に由来するものであることが好ましく、通常は漬込み液の調製の際に梅酢を添加することにより上記濃度に調整される。
漬込み液中に含まれる塩化ナトリウムにおける、梅酢由来の塩化ナトリウムの比率は、10重量%以上であり、より好ましくは30重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%以上である。
本発明の漬込み液は、塩化ナトリウム以外のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩も含んでもよい。かかる塩を含めることにより、漬込み液のpHを上げることができ、それにより漬込む水産物の歩留まりを向上させる、及び/又は、変色抑制効果をより高めることができる。
そのような塩としては、食用可能なものが好ましく、具体的にはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
本発明の漬込み液のpHは、好ましくは7.0~10.0であり、より好ましくは7.0~9.7であり、さらに好ましくは7.0~9.4である。一般に梅酢はpHが低いため、水酸化ナトリウム水溶液等を用いて上記pH範囲に調整するとよい。漬込み液をアルカリ性側にすることで、漬込む水産物の歩留まりを向上させる、及び/又は、変色抑制効果をより高めることができる。
なお、ここでpHは漬込みの際の温度における数値とする。
本発明の漬込み液のイオン強度は、好ましくは0.5~3.0mol/kgであり、より好ましくは0.55~3.0mol/kgであり、さらに好ましくは0.60~3.0mol/kgである。漬込み液のイオン強度は高い方が、漬込む水産物の歩留まりを向上させる、及び/又は、変色抑制効果をより高めることができる。
ここでいうイオン強度は、「水溶液イオン強度」を指し、下記の数式で表されるように、溶液中の全てのイオン種について、それぞれのイオンのモル濃度と電荷の二乗の積を加え合わせ、それを1/2にしたものである。
Figure 2022106062000002
ただし、本発明の漬込み液に水産物を漬込む時は、「全体イオン強度」を好ましくは0.2~1.5mol/kgであるが、好ましくは、0.3~1.5mol/kg、さらに好ましくは、0.4~1.5mol/kgとする。
これは、漬込み液の水溶液イオン強度を決定しても、水産物に対する漬込み液の量が変われば、その効果も変化してしまうためである。「全体イオン強度」は、水産物の重量を水の量とみなし、「水溶液イオン強度×水溶液量)/(水溶液量+水産物重量)」で定義
される。
水溶液イオン強度及び全体イオン強度は、食用に用いることができる有機酸塩及び/又は無機酸塩、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のいずれか又はそれらの組合せ、あるいは、クエン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、アスコルビン酸、エリソルビン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、重合リン酸塩、塩酸塩のいずれか又はそれらの組合せ等を用いて調整することができる。より具体的には、塩化ナトリウム、クエン酸3ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸3カリウム、クエン酸カルシウム、乳酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、エリソルビン酸ナトリウム、重合リン酸塩などが好ましく例示される。
本発明の漬込み液中の遊離アスパラギン及び遊離アスパラギン酸の合計濃度は、好ましくは0.002~0.3重量%であり、より好ましくは0.0025~0.2重量%であり、さらに好ましくは0.005~0.1重量%である。
これら漬込み液中に含まれる有機アミノ酸は、梅酢に由来するものであることが好ましく、通常は漬込み液の調製の際に梅酢を添加することにより上記濃度に調整される。
漬込み液中に含まれる有機アミノ酸における、梅酢由来の有機アミノ酸の比率は、50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%以上である。
本発明の漬込み液中のポリフェノール濃度は、好ましくは0.003~0.4重量%であり、より好ましくは0.005~0.2重量%であり、さらに好ましくは0.01~0.1重量%である。ポリフェノールとしては、梅リグナン(シリンガレシノール、ピノレシノール、エポキシリオニレシノール、レオニレシノール等)等が挙げられるが特に限定されない。
これら漬込み液中に含まれるポリフェノールは、梅酢に由来するものであることが好ましく、通常は漬込み液の調製の際に梅酢を添加することにより上記濃度に調整される。
漬込み液中に含まれるポリフェノールにおける、梅酢由来のポリフェノールの比率は、50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%以上である。
本発明の漬込み液に、水産物を漬込むことにより、水産物の変色を抑制することができ
る。すなわち、本発明の漬込み液は、水産物の変色抑制のために好適に用いることができる。また、本発明により水産物の変色抑制方法が提供される。また、本発明の漬込み液に水産物を漬込むことにより製造された、水産物処理物は、変色が抑制されたものである。
水産物の漬込みは、水産物の品質に影響しない温度、通常は0~20℃で行うことができる。漬込み後の水産物が刺身等の生食用の場合は、許容される菌数の観点から、0~10℃で行うことが好ましい。
また、水産物を漬込む時間は、水産物のサイズ、形状、許容される菌数、または解凍後の保存期間に応じて、1秒間~48時間、より好ましくは、1秒間~24時間、さらに好ましくは1秒間~18時間漬込むことができる。漬込み後の水産物が刺身等の生食用の場合は、1秒間~10分間、好ましくは1秒間~5分間、さらに好ましくは1秒~1分間漬込むことができる。漬込み後の水産物が加熱用の場合は、1秒間~48時間、好ましくは10分間~24時間、さらに好ましくは1時間~18時間漬込むことができる。加熱用の場合は、解凍後数日間スーパー等に陳列されるため、長期間変色を抑制する必要があることから、生食用の場合よりも漬込み時間を長くすることが好ましい。
また、漬込みの方法としては、水産物を漬込み液に浸漬させる方法、漬込み液を水産物の表面に噴霧する方法のいずれでも良い。漬込み液は、漬け魚(味噌漬け、粕漬け、西京漬け等)の調味液の態様としても良い。
漬込み時間の上限は特にないが、水産物の品質に影響を与えないために不必要に長くつける必要はなく、その他の作業との関係で適当な時間を設定する。
水産物を漬込む量としては、水産物の重量に対して漬込み液が10~200重量%となるように調整することが好ましい。
本発明における水産物は、通常は、色素タンパク質またはカロチノイド色素を含有することにより魚肉または体表が赤色を呈するものである。
色素タンパク質により赤色を呈する魚は、一般に赤身魚と呼ばれ、色素タンパク質を100gあたり10mg以上含有する。
赤身魚には、例えば、スズキ目サバ科に属するサバ属(マサバ、ゴマサバ等)、マグロ属(ミナミマグロ、タイセイヨウクロマグロ、イソマグロ、メバチ等)、カツオ属(カツオ)、ソウダガツオ属(ソウダガツオ)、ハガツオ属(ハガツオ)、サワラ属(サワラ、カマスサワラ)、スズキ目シイラ科に属するシイラ属(アマシイラ、スマシイラ等)、スズキ目アジ科に属するマアジ属(マアジ、ムロアジ、マルアジ等)、ブリ属(ブリ、ハマチ、カンパチ、ヒラマサ)、ダツ目サンマ科に属するサンマ属(サンマ)、ニシン目ニシン科に属するマイワシ属、サルディナ属、ウルメイワシ属、カタクチイワシ属、テヌアロサ属(ジギョ)、ニシン属(タイセイヨウニシン等)、アカマンボウ目アカマンボウ科アカマンボウ属(アカマンボウ等)が挙げられる。
赤身魚の変色には、色素タンパク質ミオグロビンの酸化還元が関係する。デオキシミオグロビンは暗赤色、オキシミオグロビンは鮮赤色、メトミオグロビンは褐色を示す。生体内ではメトミオグロビンは還元反応によりデオキシミオグロビンとなるが、死後の魚肉中では還元反応が停止するためメトミオグロビンが蓄積し、死後の経過時間とともに魚肉の色調が褐色に変化し商品価値を失う。
カロチノイド色素により赤色を呈する魚としては、サケ目サケ科サケ属(サケ、マス)、スズキ目タイ科マダイ属、キンメダイ目キンメダイ科キンメダイ属に属する魚等が挙げられる。また、甲殻類であるエビ類も、カロチノイド色素により赤色を呈し、具体的にはテッポウエビ、クルマエビ、ウシエビ(ブラックタイガー)、バナメイ、シバエビ、サルエビ、ウチワエビ、サラサエビ、カクレエビ類、オトヒメエビ、イセエビ、セミエビ、ロブスター、サクラエビ、シラエビ、ホッコクアカエビ(アマエビ)、アカザエビ、イソスジエビ、ホッカイエビ、コシマガリモエビ、アシナガモエビ、テナガエビ類、スジエビ、
ヌマエビ類、ザリガニ、アメリカザリガニ等が挙げられる。
カロチノイド色素は天然に約200種類存在し、水産物では約30種が知られているが、その中でも多いのは赤色色素アスタキサンチンであり、ほぼ50%を占める。カロチノイド色素は多数の2重結合を有し、かつ共役化した炭素鎖を有する構造のため、酸化しやすく不安定である。低温保存中でも徐々に酸化し退色する。また、退色は日光や光線によっても促進される。
本発明の漬込み液は、これに含まれる梅酢に由来する成分により赤色の経時及び/又は経温での変色を抑制すると考えられる。具体的には、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸が、塩化ナトリウム及び/又はアルカリ金属塩との反応により、漬込み液中で有機酸塩を生じることによる還元作用が影響すると推測される。また、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸及び/又はポリフェノールの抗酸化作用により、色素タンパク質、カロチノイド色素、またはリン脂質の酸化が抑制され、変色が抑制される可能性も考えられる。
本明細書において「変色」とは、水産物が本来呈していた赤色が褐変したり退色したりすることをいう。また「変色抑制」とは、係る褐変や退色が、未処理の時よりも程度が小さくなること、進行が遅延すること、及び/又は本来呈していた赤色が維持されることを含む。また、アジ等の赤身魚のうちの青魚については、青黒く白っぽくなることが抑制されることを含んでもよい。
本発明の漬込み液で処理することにより、例えば-30℃~-5℃で1日~12か月凍結し解凍した後であっても、変色抑制効果が得られる。
また、漬込み後の水産物が生食用の場合は、解凍後に2℃~15℃で1時間~12時間保存した後であっても、変色抑制効果が得られる。
また、漬込み後の水産物が加熱用の場合は、解凍後に2℃~15で1日~5日保存した後であっても、変色抑制効果が得られる。
漬込み後の冷凍は、-30~-5℃、好ましくは-30℃~-10℃、さらに好ましくは-30℃~-20℃で冷凍することができる。冷凍は緩慢凍結でも急速凍結でも良いが、急速凍結が好ましい。漬込み液を除去した後に冷凍しても良いし、水産物に漬込み液が付着した状態で冷凍しても良い。
冷凍後の水産物は、-30~-5℃、好ましくは-30℃~-10℃、さらに好ましくは-30℃~-20℃で、1日~12か月保存することができる。冷凍保存は、冷凍庫での保管、冷凍温度帯での輸送、冷凍温度帯での商品の陳列を含むことができる。
冷凍後の水産物の解凍は、0~40℃で、送風解凍、流水解凍、溜水解凍、自然解凍により行うことができる。
このような処理により、漬込み後に冷凍した水産物、漬込み後に冷凍保管した水産物、漬込み後に冷凍または冷凍保管した後に解凍された水産物が得られる。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、単位は重量基準である。
<試験例1>マアジでの効果確認
(1)サンプル調製方法
本実施例で使用した梅酢は、食塩を3.5重量%、クエン酸を18.1重量%、リンゴ酸を3.1重量%、ポリフェノールを総量で0.4重量%、遊離アミノ酸を総量で0.441重量%含有するものである。なお、遊離アミノ酸の内訳は、表1に示す。
表2に示す配合で漬込み液を調製した。
水産物原料として、生鮮マアジを使用した。マアジを3枚におろし、フィレー処理した。1実施例あたり、フィレーを10枚用意し、マアジの重量に対して100重量%の漬込
み液を用いて、10℃で1分間漬込んだ後、-20℃で凍結した。-20℃で7日間保存後、流水(20℃)で10分間解凍し、解凍後は直ちにバットに重ならないよう並べ、ラップで覆い、10℃に設定した冷蔵庫で7時間保存した。
Figure 2022106062000003
Figure 2022106062000004
(2)評価方法
(i)Atago
漬込み液の塩分値(Atago(%))を、電気電動式塩分計(ES-421、ATAGAO)で測定した。測定は試料溶液を直接機器センサー部に滴下して行った。
(ii)Brix
漬込み液のBrix(%)は屈折率測定Brix計(APAL-1、AS ONE)で測定した。測定は試料溶液を直接機器センサー部に滴下して行った。Brix値は、可溶性固形分(糖、タンパク質、酸など水に溶ける物質全ての合算値)を指し、漬込み液の濃度の指標となる。
(iii)クエン酸3ナトリウム濃度
梅酢を含む漬込み液においては、梅酢由来のクエン酸が漬込み液中で全てクエン酸3ナトリウムに変換されたと仮定してクエン酸3ナトリウム濃度を算出した。
(iv)イオン強度
前述の定義に従って、「水溶液イオン強度」及び「全体イオン強度」を算出した。
(v)歩留まり
歩留まりは、漬込み前と、漬込み後凍結前の水産物の重量の増加率として算出した。
(vi)遠心ドリップ率
遠心ドリップ率は以下の方法で測定した。遠心ドリップ率の測定は、漬込み後凍結解凍後の水産物を約5mm角に細切し、かかる試料約3gを、遠沈管を用いて10℃、300G、10分間の遠心を行って得られたドリップ重量と、加熱乾燥法(105℃、3時間)にて求めた試料水分量から下記計算式1にて算出した。
計算式1:遠心ドリップ率(%)=ドリップ重量(g)÷試料水分量(g)
(vii)変色抑制効果の確認
変色抑制効果は、漬込み後に-20℃7日間凍結し解凍し10℃7時間冷蔵保存した後の水産物サンプルの赤色を色差測定することで評価した。色差測定は、色彩色差計(CR-400、コニカミノルタ)を用いて測定した。マアジの場合は青みが強いため、赤色を評価するaを青色を評価するbで除した、a/b値を評価指標とした。マアジ個体差の
影響を除くため、1実施例当たり10枚ずつ用意したフィレーに対して、1枚につき血合筋中心部表面を1スポット、計10スポット測定し、その平均値を算出した。
(3)結果
各評価結果を表3、図1及び図2に示す。
遠心ドリップ率が低いほど、水産物の保水力が高いことを意味する。実施例1は、無処理の比較例1に比べ、遠心ドリップ率が低く、保水力が向上していることが確認できた。アルカリ金属塩の添加によりpHをアルカリ性に調整した実施例2は、特に遠心ドリップ率が低く、保水力が大幅に向上していることが確認できた。
マアジの赤さを評価するa/b値は、実施例1及び実施例2は、比較例1及び比較例2に比べ、高い数値であった。このことから、実施例1及び実施例2は、マアジの変色を抑制していることが確認できた。
Figure 2022106062000005
<試験例2>カツオでの効果確認
(1)サンプル調製方法
表4に示す配合で漬込み液を調製した。
水産物原料として、生鮮カツオを使用した。生鮮カツオを3枚におろし、雄節と呼ばれるカツオ背中部分の肉を使用した。この部分の肉をスライスし、1枚当たり約10gとなるように切り身状に加工した。1実施例あたり、切り身は10枚用意し、10℃で1分間漬込んだ後、-20℃で凍結した。-20℃で7日間保存後、流水(20℃)で10分間解凍し、解凍後は直ちにバットに重ならないよう並べ、ラップで覆い、10℃に設定した冷蔵庫で7時間保存した。
Figure 2022106062000006
(2)評価方法
Atago、Brix、クエン酸3ナトリウム濃度、イオン強度、歩留まり、遠心ドリップ率、及び変色抑制効果の各評価は、それぞれ実施例1と同様の方法で測定した。
(3)結果
各評価結果を表5、図3及び図4に示す。
遠心ドリップ率が低い程、水産物の保水力が高いことを意味する。実施例3は、無処理の比較例3に比べ、遠心ドリップ率が低く、保水力が向上していることが確認できた。アルカリ金属塩の添加によりpHをアルカリ性に調製した実施例4は、特に遠心ドリップ率が低く、保水力が大幅に向上していることが確認できた。
カツオの赤さを評価するa/b値は、実施例3及び実施例4は、比較例3及び比較例4に比べ、高い数値であった。このことか、実施例3及び実施例4は、カツオの変色を抑制していることが確認できた。
Figure 2022106062000007
<試験例3>サケでの効果確認
(1)サンプル調製方法
表6に示す配合で漬込み液を調製した。
水産物原料として、アキザケを使用した。冷凍アキザケのドレスを解凍後、ロイン加工し、背側、腹側ともに25±2gの切り身にカットした。切り身を、サケの重量に対して、100重量%の漬込み液を用いて、5℃で18時間漬込んだ後、液切りして凍結し、アルミホイルで遮光して-30℃で3日間保存した。冷蔵保存開始日(0日目)に室温で送風解凍し、バットに重ならないよう並べ、ラップで覆い、1400Luxの光を照射しながら、10℃に設定した冷蔵庫で4日間保存した。
Figure 2022106062000008
(2)評価方法
(i)Atago、Brix、クエン酸3ナトリウム濃度、イオン強度、及び歩留まりの
各評価は、それぞれ実施例1と同様の方法で測定した。
(ii)変色抑制効果の確認
10℃で4日間保存後のサンプルを、色差測定及び官能評価に供した。また、4日間保存後のサンプルを、250℃のオーブンで5分間焼成した後、色差測定及び官能評価に供した。
変色抑制効果は、サンプルの赤色を色差測定することで評価した。色差測定は、色彩色差計(CR-410、コニカミノルタ)を用い、赤色を評価するa値を評価指標として、背身と腹身それぞれについて、切り身一枚につき5スポットずつの測定を2セット、計10スポット測定し、その平均値を算出した。また、冷蔵保存開始時点(0日目)のa値を0とし、0~4日間の保存中の変色の経時変化(ΔEab)を比較した。
官能評価は、水産物の研究に5年以上従事している訓練されたパネリスト4名で行った。焼成前のサケの身の赤さについて、解凍後切り身にカットした直後のサケの身の赤さを5点、カットした後漬込み処理せずに1400Luxの光を照射しながら10℃に設定した冷蔵庫で1日保存後を4点、3日保存後を3点、4日保存後を2点、6日保存後を1点、7日間保存後を0点とすることを確認した上で、各サンプルの身の赤さを基準と比較して評価した。焼成後のサケの身の赤さについて、解凍後切り身にカットしてすぐに焼成したサケの身の赤さを5点、漬込み処理せずに1400Luxの光を照射しながら10℃に設定した冷蔵庫で1日保存後焼成したサケを4点、3日保存後焼成したサケを3点、4日保存後焼成したサケを2点、6日保存後焼成したサケを1点、7日間保存後焼成したサケを0点とすることを確認した上で、各サンプルの身の赤さを基準と比較して評価した。
(3)結果
漬込み液のAtago,Brix、クエン酸3ナトリウム濃度、イオン強度、及び歩留まりの各評価結果及びa値を評価指標とした色差測定結果を、表7、図5、及び図6に
、冷蔵保存開始時点(0日目)のa値を0とし、0~4日間の保存中の変色の経時変化(ΔEab)を表8及び図7に示す。
歩留まりは、実施例5が134重量%、実施例6が126重量%と、いずれも高い数値を示した。
サケの赤さを評価するa値は、焼成前、焼成後のいずれの場合も、実施例5及び実施例6は、比較例5及び比較例6に比べ、高い数値であった。特に、焼成前の変色抑制効果が高かった。このことから、実施例5及び実施例6は、サケの変色を抑制していることが確認できた。
官能評価においても、4名全員が同じ評点であり、実施例5及び実施例6はサケの変色を抑制しているという評価であった。
Figure 2022106062000009
Figure 2022106062000010

Claims (10)

  1. 梅酢を含有する水産物の変色抑制用の漬込み液であって、
    漬込み液中のクエン酸濃度が0.1~20.0重量%である、漬込み液。
  2. 漬込み液中のリンゴ酸濃度が0.02~4.0重量%である、請求項1に記載の漬込み液。
  3. 漬込み液中の塩化ナトリウム濃度が0.4~5.0重量%である、請求項1又は2に記載の漬込み液。
  4. pHが7.0~10.0である、請求項1~3の何れか一項に記載の漬込み液。
  5. イオン強度が0.5~3.0mol/kgである、請求項1~4の何れか一項に記載の漬込み液。
  6. 漬込み液中の遊離アスパラギン及び遊離アスパラギン酸の合計濃度が、0.002~0.3重量%である請求項1~5の何れか一項に記載の漬込み液。
  7. 請求項1~6の何れか一項に記載の漬込み液に、水産物を漬込む工程を含む、水産物の変色抑制方法。
  8. 漬込み時間が1秒間~48時間である、請求項7に記載の方法。
  9. 0~20℃で漬込みを行う、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 請求項1~6の何れか一項に記載の漬込み液に水産物を漬込むことにより製造された、水産物処理物。

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