以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品装着システム、管理コンピュータ、部品装着ライン、部品装着装置、部品供給装置、保管装置、搬送装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図2、および後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX軸(図1における左右方向)、基板搬送方向に直交するY軸(図1における左右方向)が示される。また、図2、および後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ軸(図2における上下方向)が示される。
まず図1を参照して、部品装着システム1の構成を説明する。部品装着システム1は、フロアFに設置された3本の部品装着ラインL1~L3が有線または無線の通信ネットワーク2によって接続され、管理コンピュータ3によって管理される構成となっている。各部品装着ラインL1~L3は、後述するように部品装着装置を含む複数の製造装置を連結して構成され、基板に部品を装着した実装基板を生産する機能を有している。なお、部品装着システム1が備える部品装着ラインL1~L3は3本である必要はなく、1本、2本及び4本以上でも良い。
フロアFには、部品装着ラインL1~L3が備える部品装着装置に補給される部品や、印刷装置に補給されるクリームはんだなどの部材が収納される収納棚4が設置されている。部品は、トレイの上に載置された状態や、キャリアテープに保持されてリールに巻回収納された状態で、収納棚4の所定の保管棚に保管されている。収納棚4に収納されている部品の位置は、保管される部品名、トレイ番号、リール番号などに紐付けられて管理コンピュータ3によって管理されている。
図1、図2において、フロアFの天井Faには、複数(ここでは8台)の撮影装置S1~S8が設置されている。撮影装置S1~S8は、それぞれ通信ネットワーク2によって管理コンピュータ3と接続されている。撮影装置S1~S8はカメラを有する撮影部を備えており、撮影部によってフロアFで作業する作業者Wや搬送装置Qを撮影し、撮影データを管理コンピュータ3に送信する。撮影装置S1~S8は、いずれかの撮影装置S1~S8によって、フロアFで作業する作業者Wや搬送装置Qが撮影できるように台数および設置位置が設定される。
図1において、フロアFで作業する作業者Wは情報端末5を携帯している。情報端末5は、スマートフォンやタブレットPCなどであり、管理コンピュータ3が備える管理側通信部3aと無線で通信して情報の授受を行う端末側通信部6、表示機能と入力機能を有するタッチパネル7を備えている。情報端末5は、管理コンピュータ3から受信した各種情報を表示処理してタッチパネル7に表示する。また、情報端末5は、タッチパネル7から入力された各種情報などを管理コンピュータ3に送信する。
図1において、フロアFには、部品(トレイ、リール)や部材などの被搬送物を搬送し、製造装置に補給する搬送装置Q(搬送ロボット)が稼働している。図1、図3に示す搬送装置Qは、被搬送物を搭載する被牽引車Cと、被牽引車Cを牽引する自動搬送車Vを備えて構成されている。被牽引車Cは、搬送する被搬送物に対応して異なる種類が用意されている。自動搬送車Vは、管理コンピュータ3から送信される情報に従って、被牽引車Cを牽引してフロアF内を移動する。
被牽引車Cには、3軸方向(XYZ軸)の加速度を計測する加速度センサや、6軸方向の加速度を計測するジャイロセンサなどを備える加速度計Aが設置されている。なお、加速度計Aは、被牽引車Cに搭載される被搬送物に設置するようにしてもよい。加速度計Aによる計測結果は、無線により管理コンピュータ3に送信される。または、加速度計Aによる計測結果を、計測時間と関連付けて搬送装置Qが備える記憶装置(ロガー)に一時的に記憶し、計測後に管理コンピュータ3に計測結果を転送するようにしてもよい。
なお、図1、図3に示す搬送装置Qは、自動搬送車Vが被牽引車Cを牽引するトレーラタイプであったが、搬送装置Qは自動搬送車Vと被牽引車Cが一体構成されたトラックタイプであってもよい。このように、製造装置が設置されたフロアFにおいて用いられる被搬送物を搬送する搬送装置Qには、加速度を計測する加速度計Aが設置されている。
次に図2を参照して、部品装着ラインL1~L3の詳細な構成を説明する。部品装着ラインL1~L3は同様の構成をしており、以下、部品装着ラインL3について説明する。図2は、部品装着ラインL3が設置されたフロアF内をフロント側(図1における下方側)から見た概略図である。部品装着ラインL3には、基板搬送方向(X軸)の上流(紙面左側)から下流(紙面右側)に向けて、基板供給装置M1、印刷装置M2、印刷検査装置M3、部品装着装置M4,M5、装着検査装置M6、リフロー装置M7、基板回収装置M8などの製造装置が直列に連結されている。
基板供給装置M1は、収納部に収納する複数の基板を下流の装置に供給する。印刷装置M2は、スクリーンマスクを介して基板にクリームはんだを印刷する。印刷検査装置M3は、基板に印刷されたクリームはんだの印刷状態を検査する。部品装着装置M4,M5は、基板に部品を装着する。装着検査装置M6は、基板に装着された部品の装着状態を検査する。リフロー装置M7は、基板を加熱して基板の電極部と部品の端子とをはんだ接合させる。基板回収装置M8は、リフロー後の基板を収納部に回収する。このように、フロアFには、基板に対して所定の作業を行う1以上の製造装置が設置されている。
次に図3を参照して、部品装着装置M5の詳細について説明する。図3は、部品装着装置M5をリア側(図1における上方側)から見た概略図である。部品装着装置M5のフロント側とリア側の両側(Y軸の前後方向)には、それぞれ部品供給部11が設置されている。リア側の部品供給部11には、複数のテープフィーダ12がX軸に沿って並列に装着された台車13が取り付けられている。台車13には、部品を格納したキャリアテープ14を巻回状態で収納するリール15が保持されている。キャリアテープ14は、ベーステープに形成された複数のポケットにそれぞれ部品を格納し、カバーテープでポケットを封止した構成をしている。
リール15から引き出されたキャリアテープ14は、テープフィーダ12に装着される。テープフィーダ12は、装着されたキャリアテープ14を内部でピッチ送りしながら、カバーテープを剥離してポケットに格納された部品を部品装着装置M5に供給する。部品補給の際には、テープフィーダ12に新たなキャリアテープ14が装着され、または部品供給中のキャリアテープ14の後端に新たなキャリアテープ14が継合される。補給される部品を格納したキャリアテープ14(被搬送物)は、リール15に収納された状態で搬送装置Qによって搬送される。以下、リール15に収納されたキャリアテープ14に格納され、テープフィーダ12によって部品装着装置M4,M5に供給される部品を「テープ部品」と称する。
図3において、リア側の部品供給部11には、パレット16の上面に保持されたトレイ17に収容された部品を部品装着装置M5に供給する部品供給装置21が取り付けられている。また、部品供給装置21のリア側には、部品供給装置21へとパレット16を供給する保管装置22が取り付けられている。保管装置22には、部品装着装置M5に供給する部品が収容されたトレイ17を保持する複数のパレット16が保管されている。保管装置22に保管されるパレット16は、複数のパレット収容部19(図4(a)参照)を有するトレイマガジン20に収納(保管)された状態で、保管装置22に補給され、また回収される。保管装置22のリア側には、トレイマガジン20を交換するためのマガジン交換用窓23が配置されている。
部品装着装置M5に部品を供給して空となったトレイ17を保持するパレット16を収容するトレイマガジン20(以下、「回収マガジン」と称する)は、マガジン交換用窓23から取り出される。そして、部品を収容するトレイ17を保持するパレット16を収容するトレイマガジン20(以下、「補給マガジン」と称する)は、マガジン交換用窓23から保管装置22に補給される。補給マガジンは、搬送装置Qによって搬送される被搬送物である。トレイマガジン20の交換は、作業者Wにより、または、自動補給装置38(図8参照)を備えた搬送装置Qにより行われる。以下、パレット16に保持されたトレイ17に格納され、部品供給装置21によって部品装着装置M4,M5に供給される部品を「トレイ部品」と称する。
図3において、保管装置22のリア側には、ドッキング部24が配置されている。補給マガジンに収容された状態で搬送されるパレット16を保管装置22に自動で補給する自動補給装置38を有する搬送装置Qは、ドッキング部24に結合された状態で、マガジン交換用窓23を介して回収マガジンを回収し、補給マガジンを保管装置22に補給する。このように、パレット16は、トレイマガジン20に保管された状態で搬送装置Qにより保管装置22まで搬送される。保管装置22は、パレット16を保管するトレイマガジン20を収納する。そして、保管装置22は、トレイ17を保持するパレット16を収納するパレット収納部19を有し、部品供給装置21へとパレット16を供給する。
図4において、トレイ17の上面には、トレイ部品を収容する複数の収容部18が形成されている。トレイ17は、収容する部品のサイズ、形状に対応して収容部18が形成された複数の種類が用意されている。例えば、図4(b)に示す、大型の部品P1を収容するトレイ17Aには、大きくて深い収容部18Aが形成されている。また、図4(c)に示す、小型の部品P2を収容するトレイ17Bには、小さくて浅い収容部18Bが形成されている。
次に図5、図6を参照して、部品供給装置21と保管装置22の詳細について説明する。保管装置22は、パレット供給部22Aとパレットストック部22Bから構成されている。パレット供給部22Aは部品供給装置21のリア側に配置されている。パレットストック部22Bは、パレット供給部22Aのリア側に配置されている。パレット供給部22Aには、複数のパレット16を保持する複数のパレット収納部19を上下に有する第1保持部25が配置されている。部品供給装置21には、第1保持部25のパレット収納部19のフロント側からパレット16を引き出して、トレイ17に収容された部品を部品装着装置M5に供給する部品取り出し位置まで移動させる第1パレット移動部26が配置されている。
パレットストック部22Bには、複数のパレット16を保持する複数のパレット収納部19を上下に有する第2保持部27が配置されている。第2保持部27のうち、マガジン交換用窓23が形成されている部分はトレイマガジン20を出し入れ可能なマガジン保持部28となっている。マガジン保持部28の下部には、トレイマガジン20を保持し、結合された搬送装置Qとの間でトレイマガジン20の受け渡しを行うマガジン移動部29が配置されている。
パレットストック部22Bにおいて、第1保持部25のリア側であって、第2保持部27の横の位置には第2パレット移動部30が配置されている。第2パレット移動部30は、第2保持部27のパレット収納部19からパレット16を引き出して、第1保持部25のパレット収納部19にリア側から収容させる。その逆に、第2パレット移動部30は、第1保持部25のパレット収納部19のリア側からパレット16を引き出して、第2保持部27のパレット収納部19に収容させる。
ここで図7を参照して、第2パレット移動部30が第2保持部27に保持されているパレット16を第1保持部25に移動させる工程について説明する。図7(a)において、まず、第2パレット移動部30は、第1保持部25の所定のパレット収納部19に保持されているパレット16を引き出す(矢印a)。図5(b)において、次いで第2パレット移動部30は、引き出したパレット16を90度旋回させる(矢印b)。図5(c)において、次いで第2パレット移動部30は、パレット16をリア側に移動させて、第1保持部25の所定のパレット収納部19に移動させる(矢印c)。なお、第2パレット移動部30が第1保持部25に保持されているパレット16を第2保持部27に移動させる工程では、上述の工程とは逆の制御が行われる。
図5において、パレット供給部22Aの上部には、第1パレット移動部26によって部品取り出し位置まで移動したパレット16が保持するトレイ17に収容されている部品の状態を撮像する第1カメラ31が配置されている。図6において、パレットストック部22Bの第2パレット移動部30の上方には、第2パレット移動部30が第2保持部27から引き出したパレット16が保持するトレイ17に収容されている部品の状態を撮像する第2カメラ32が配置されている。
パレット供給部22Aのリア側で作業者Wが作業する位置には、作業者Wが操作するタッチパネル33が設置されている。タッチパネル33は、その表示部に各種情報を表示し、また表示部に表示される操作ボタンなどを使って作業者Wがデータ入力や部品供給装置21、保管装置22の操作を行う。作業者Wは、マガジン保持部28に保持されているトレイマガジン20を補給用のトレイマガジン20と交換する作業を行う際は、タッチパネル33を操作しながら作業を実行する。
図5において、部品装着装置M5は、ヘッド移動機構34(図17参照)によって水平方向(X軸方向、Y軸方向)に移動して、部品取り出し位置のトレイ17から部品を取り出して基板35に装着する装着ヘッド36を備えている。また、部品装着装置M5は、装着ヘッド36と一体的に設けられ、ヘッド移動機構34によって水平方向に移動して下方を撮像するヘッドカメラ37を備えている。ヘッドカメラ37は、部品取り出し位置の上方に移動することで、部品取り出し位置のトレイ17に収容されている部品の状態を撮像することができる。
次に図8を参照して、搬送装置Qが搬送した補給部品を収容するトレイ17を保持するパレット16を、部品装着装置M4,M5に装着された部品供給装置21に供給する保管装置22に補給する工程について説明する。ここでは、補給されるパレット16はトレイマガジン20(以下、「補給マガジン20A」と称する。)に保管された状態で搬送され、搬送装置Qが備える自動補給装置38によって保管装置22に自動で補給される工程について説明する。
図8(a)において、保管装置22(パレット供給部22A)のマガジン保持部28には、収容していた部品を部品装着装置M4,M5に供給して空となったトレイ17を保持するパレット16を保管するトレイマガジン20(以下、「回収マガジン20B」と称する)が保持されている。自動補給装置38は、自動搬送車Vに牽引される被牽引車Cに配置されている。補給マガジン20Aを回収マガジン20Bと入れ替える補給作業は、被牽引車Cに配置された結合部39と保管装置22が備えるドッキング部24が結合された状態で実行される。
自動補給装置38は、上段マガジン保持棚40、下段マガジン保持棚41および保持棚昇降機構42を備えて構成されている。上段マガジン保持棚40は、その上面にトレイマガジン20を保持する。下段マガジン保持棚41は上段マガジン保持棚40の下方に配置され、その上面にトレイマガジン20を保持する。保持棚昇降機構42は、上段マガジン保持棚40と下段マガジン保持棚41を一体的に昇降させる。保持棚昇降機構42は、搬送装置Qが備える搬送制御装置70の補給処理部75(図10)によって制御される。補給マガジン20Aを保管装置22に自動で補給する際は、補給処理部75と保管装置22が備える保管制御装置112のマガジン移動処理部114(図17)が連携して補給を実行する。
図8(a)において、まず、補給処理部75は保持棚昇降機構42を制御して、上段マガジン保持棚40の高さ位置を、回収マガジン20Bを保持しているマガジン保持部28の位置に移動させる。次いでマガジン移動処理部114はマガジン移動部29を制御して、回収マガジン20Bを上段マガジン保持棚40に保持させる(矢印d)。
図8(b)において、次いで補給処理部75は保持棚昇降機構42を制御して、補給マガジン20Aを保持する下段マガジン保持棚41の高さ位置を、空となったマガジン保持部28の位置に移動させる(矢印e)。次いでマガジン移動処理部114はマガジン移動部29を制御して、下段マガジン保持棚41から補給マガジン20Aを引き出して、マガジン保持部28に保持させる(矢印f)。このように、自動補給装置38と保管装置22によって、回収マガジン20Bを自動補給装置38に回収し、補給マガジン20Aを保管装置22に補給する補給作業が自動で実行される。
次に図9、図10を参照して、部品装着システム1(搬送システム)が備える管理コンピュータ3(制御システム)と搬送装置Qの制御系の構成のうち、フロアFにおいて被搬送物を製造装置などの搬送先に搬送する機能について説明する。図9において、管理コンピュータ3は、管理処理部50、管理記憶部56、入力部62、表示部63、通信部64、管理側通信部3aを備えている。管理処理部50はCPUなどのデータ処理装置であり、管理情報取得部51、警告判定部52、管理出力部53、搬送制御部54、画像解析部55を備えている。管理記憶部56は記憶装置であり、フロア情報57、被搬送物情報58、加速度情報59、警告情報60、経路情報61などが記憶されている。
入力部62は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部63は液晶パネルなどの表示装置であり、管理記憶部56が記憶する各種データを表示する他、入力部62による操作のための操作画面、入力画面などの各種情報を表示する。通信部64は、通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品装着ラインL1~L3を構成する製造装置との間でデータの送受信を行う。管理側通信部3aは、情報端末5の端末側通信部6、搬送装置Qの搬送側通信部80(図10参照)と、無線で各種情報を送受信する。なお、管理コンピュータ3は、ひとつのコンピュータで構成する必要はなく、複数のデバイスで構成してもよい。例えば、記憶部、処理部の全てもしくは一部をサーバを介してクラウドに備えてもよい。
図10において、搬送装置Qは、搬送制御装置70、保持棚昇降機構42、走行装置79、搬送側通信部80、加速度計Aを備えている。搬送制御装置70は、走行処理部71、位置情報取得部72、搬送判定部73、搬送出力部74、補給処理部75、搬送記憶部76を備えている。搬送記憶部76は記憶装置であり、搬送経路情報77、補給保留情報78などが記憶されている。搬送側通信部80は、管理コンピュータ3の管理側通信部3aと無線で各種情報を送受信する。搬送側通信部80は、管理コンピュータ3から後述する経路情報61を受信して、搬送経路情報77として搬送記憶部76に記憶させる。また、搬送側通信部80は、加速度計Aの計測データを管理コンピュータ3に送信する。
走行装置79は、自動搬送車Vの車輪を駆動するモータや、車輪の方向を変更する機構などを備えている。走行処理部71は、搬送記憶部76に記憶された搬送経路情報77、または、管理コンピュータ3からの指示に従い、走行装置79を制御して、搬送装置QをフロアF内の指定された搬送経路を指定された速度(最大速度)で走行させる。補給処理部75は、搬送記憶部76に記憶された補給保留情報78、または、管理コンピュータ3からの指示に従い、保持棚昇降機構42を制御して、搬送したトレイマガジン20(補給マガジン20A)を保管装置22に補給させる(図8参照)。その際、補給処理部75は、補給保留情報78に補給を保留させる旨の情報が記憶されている場合は、補給マガジン20Aの補給を保留する。
図10において、加速度計Aは、被搬送物を搬送している搬送装置Qの走行時の加速度を計測する。位置情報取得部72は、走行装置79が備えるセンサなどからフロアFにおける搬送装置Qの位置情報を取得する。搬送側通信部80は、加速度計Aが計測した加速度と、位置情報取得部72が取得した搬送装置Qの位置情報を関連付けて、管理コンピュータ3に送信する。
図9において、管理情報取得部51は、搬送装置Qから送信された加速度と位置情報を加速度情報59として管理記憶部56に記憶させる。このように、管理情報取得部51(情報取得部、第2情報取得部)は、搬送装置Qの走行時のフロアFにおける位置情報と、搬送装置Qが搬送している被搬送物が受けた可能性がある加速度とを取得する。フロア情報57には、フロアFに配置された部品装着ラインL1~L3の製造装置の位置(座標)、フロアFに設定されている搬送経路の情報(座標)、搬送経路に設けられた区間の最高速度などの情報が含まれている(図12参照)。被搬送物情報58には、フロアFに設置されている製造装置において用いられる部品やクリームはんだなどの被搬送物を、搬送装置Qが搬送するための情報が含まれている。
ここで、図11を参照して、部品を被搬送物とする被搬送物情報58の一例について説明する。被搬送物情報58には、部品名90毎に、容器91、クラス92、最高速度93などが含まれている。容器91は、搬送装置Qに搭載される際の部品の保持形態を示しており、「トレイ」はトレイ17に収容されたトレイ部品であることを、「テープ」はキャリアテープ14に格納されてリールに収納されたテープ部品であることを示している。
クラス92は、搬送装置Qによる搬送時に受ける振動により被搬送物の状態に異常が生じる感度(耐性)の区分けである。この例では、クラス92は「0」から「3」の4つに区分されており、数字が小さいほど振動に強く、数字が大きくなると振動に弱いことを示している。例えば、テープ部品である部品名90が「D006」と「D007」は、振動に起因する部品のずれは発生しないため、クラス92が「0」となっている。
また、トレイ部品であっても、例えば、図4(b)に示す大型で振動に対する耐性が高い部品P1は、クラス92は「1」に区分される。また、図4(c)に示す小型で振動に対する耐性が低い部品P2は、搬送中に受ける大きな振動でトレイ17Bから飛び出す可能性があり、クラス92は「2」または「3」に区分される。以下、クラス92が「1」の部品を「クラス1の部品」などと称する。
図11において、最高速度93は、その部品を搬送中に許される最高速度を示している。最高速度93は、搬送中の部品が受ける可能性がある加速度の大きさで、複数に区分されている。この例では、Z軸方向の加速度が「-0.8G以上」の第1速度93a、Z軸方向の加速度が「-0.8Gから-1.2G」の第2速度93b、Z軸方向の加速度が「-1.2G以下」の第3速度93cの3つの区分に分かれている。
Gは重力加速度であり、-1.0Gは地球の重力と釣り合うだけのZ軸方向の加速度が部品に加わっていることを示す。Z軸方向にマイナスの加速度が加わると、トレイ17の収容部18内における部品の状態が不安定となる。この間にトレイ17が水平方向に高速で移動すると、収容部18から部品が飛び出たり、収容部18内で部品が反転したりするなど、部品の収容状態に異常が発生することがある。
図11の例では、Z軸方向の加速度が「-0.8G」と「-1.2G」の2つの閾値が設定されている。以下、Z軸方向の加速度が「-0.8G」を「第1閾値」と、「-1.2G」を「第2閾値」と称する。第1速度93aは、いずれの部品も「1.0m/s」に設定されている。クラス0の部品では、第2速度93bと第3速度93cは、第1速度93aと同じ「1.0m/s」に設定されている。
一方、クラス1の部品では、第2速度93bは第1速度63aと同じ「1.0m/s」であるが、第3速度93cは「0.8m/s」に設定されている。また、クラス2の部品では、第2速度93bが「0.8m/s」に、第3速度93cが「0.5m/s」に設定されている。また、クラス3の部品では、第2速度93bが「0.5m/s」に、第3速度93cが「0.3m/s」に設定されている。すなわち、振動に対する耐性が低い部品を搬送する際にマイナスの加速度を受ける可能性がある場合は、最高速度93を低くする(遅くする)ように設定されている。
なお、図11に示す被搬送物情報58において設定されるクラス92の区分数、最高速度93の区分数、閾値の値は一例であり、区分は3つであっても5つ以上であってもよい。また、Z軸方向の加速度の閾値も、部品のサイズ、重さ、トレイ17の収容部18の形状に応じて、実験結果などに基づいて自由に設定される。例えば、所定の閾値は、被搬送物に対応して設定するようにしてもよい。また、閾値となる加速度も、Z軸方向の成分だけでなく、水平方向(X軸方向、Y軸方向)も成分も考慮して決定するようにしてもよい。このように、第1閾値、第2閾値(所定の閾値)は、搬送装置Qによるトレイマガジン20またはパレット16(被搬送物)の搬送時に、トレイ17内の部品の収容状態(被搬送物の状態)に異常が生じる加速度に基づいて設定されている。
図9において、警告判定部52(判定部)は、取得された加速度情報59に基づいて、搬送装置Qの走行時の加速度が所定の閾値(第1閾値、第2閾値)を超えたか否かを判定する。そして、加速度が所定の閾値を超えた地点(以下、「警告地点H」と称する。)がある場合は(図13参照)、警告判定部52は、警告地点Hの位置情報(座標)と計測された加速度の値を関連付けて、警告情報60として管理記憶部56に記憶させる。すなわち、警告情報60には、加速度が所定の閾値を超えた地点(警告地点H)に関する情報が含まれる。管理出力部53(出力部、第3出力部)は、加速度が所定の閾値を超えた場合に警告情報60を所定の出力先(表示部63、搬送装置Q、情報端末5、部品装着装置M4,M5、部品供給装置21、保管装置22)に出力する。
例えば、管理出力部53は、管理コンピュータ3が備える表示部63に警告情報60を表示させる。すなわち、表示部63は、警告情報60に基づいて警告を報知する報知部である。また、管理出力部53は、作業者Wが使用する端末(情報端末5)に警告情報60を出力する。これにより、作業者Wは、フロアF内の搬送経路の警告地点Hにおいて、継ぎ目や床のうねり、落下物などの障害が発生している可能性があることを知ることができる。
また、計測された加速度が所定の閾値(第1閾値、第2閾値)を超えた場合は、搬送装置Qが搬送している被搬送物の状態(トレイ17に収容されている部品の収容状態)に異常が発生した可能性がある。そこで、管理出力部53は、その搬送装置Qに対して被搬送物の搬送先(製造装置)への補給を保留する旨の補給保留情報78を出力する。これにより、加速度が所定の閾値を超えた場合に、搬送装置Qが備える自動補給装置38は、警告情報60が出力されると被搬送物の製造装置への補給を保留する。
また、管理出力部53は、パレット16(被搬送物)が補給される部品装着装置M4,M5(製造装置)に警告情報60を出力する。これにより、パレット16が補給された部品装着装置M4,M5において、基板35にトレイ17の部品を装着する部品装着作業前に、加速度が所定の閾値を超えたトレイ17に収容されている部品の状態を確認(撮像)することができる。
なお、管理出力部53(撮像判定部)は、警告情報60に含まれるトレイ17が受けた加速度とトレイ17に収容された部品の関係(被搬送物情報58)に基づいて、トレイ17内の部品の状態を確認する(部品を撮像する)か否かを判断し、状態を確認すると判断した場合にのみ警告情報60を出力するようにしてもよい。例えば、補給マガジン20Aに保管して搬送されたトレイ部品のうち、そのトレイ部品に指定された第1閾値を超えている場合に、撮像判定部は部品を撮像すると判断する。
また、管理出力部53は、作業者Wが使用する端末(情報端末5)に搬送装置Qが搬送している被搬送物の搬送先の情報を出力する。被搬送物が補給マガジン20Aの場合、管理出力部53は、被搬送物情報58に基づいて、補給マガジン20Aに保管されたいずれかのパレット16が保持するトレイ17に収容されている部品の収容状態が異常である可能性がある場合は、その搬送装置Qに補給保留情報78を出力する。また、管理出力部53は、異常の可能性があるパレット16を特定する情報も含めて、作業者Wが使用する情報端末5に出力する。
情報端末5に被搬送物の搬送先が表示された作業者Wは、表示された情報に従って搬送先の製造装置の前で停止している搬送装置Qまで移動する。そして、作業者Wは、搬送装置Qから異常の可能性があるパレット16などの被搬送物を取り出し、被搬送物の状態(トレイ17に収容されている部品の収容状態)を確認し、部品の収容状態を修正した後に、被搬送物を搬送先の製造装置に補給する。これにより、搬送された被搬送物が異常な状態で補給されることを防止することができる。
図9において、搬送制御部54は、フロア情報57に含まれるフロアFに設定されている搬送経路の情報、被搬送物情報58、警告情報60に基づいて、搬送装置Qによる搬送作業を制御する。具体的には、搬送制御部54は、搬送装置Qが被搬送物を搬送先に搬送する際に参照される搬送経路に関する経路情報61を作成し、管理記憶部56に記憶させる。
さらに、搬送制御部54は、経路情報61をその被搬送物を搬送する搬送装置Qに送信する。経路情報61を受信した搬送装置Qは、受信した経路情報61を搬送経路情報77として搬送記憶部76に記憶し、搬送経路情報77に従って被搬送物を搬送先まで搬送する。または、搬送制御部54は、作成した経路情報61に基づいて、搬送装置Qに対して逐次指示を送信する。
また、搬送制御部54は、警告情報60に基づいて、搬送経路の警告地点Hを含む区間に搬送装置Qの走行速度(最高速度)を通常の走行速度(第1速度93a)より遅くする減速区間を設定する。そして、搬送制御部54は、被搬送物を搬送先に搬送するまでの間に警告地点Hを通過する搬送装置Qに対しては、減速区間の情報を含む経路情報61に基づく搬送作業の制御を行う。すなわち、搬送制御部54は、警告地点Hを通過する搬送装置Qの走行速度が遅くなるように搬送作業を制御する。
図9において、情報端末5に表示された警告地点Hを含む警告情報60を見た作業者Wは、警告地点Hまで移動して異常の原因を除去する。その後、作業者Wが情報端末5に修復報告を入力すると、管理コンピュータ3の管理情報取得部51が情報端末5から修復報告を取得する。修復報告が取得されると、警告判定部52は、管理記憶部56に記憶されている警告情報60から修復された警告地点Hの情報を削除する。また、搬送制御部54は、削除された警告情報60に該当する減速区間を解除して経路情報61を更新する。
すなわち、管理情報取得部51(情報取得部)は、警告地点Hにおいて加速度が所定の閾値を超えた原因が除去された旨の修復報告を取得する。そして、搬送制御部54は、修復報告が取得されると、当該警告地点Hを通過する搬送装置Qの走行速度が元に戻るように搬送作業を制御する。このように、搬送制御部54を備える管理コンピュータ3は、搬送経路に関する経路情報61に基づいて、搬送装置Qによる搬送作業を制御する制御システムを構成する。
次に図12~図14を参照して、搬送制御部54による経路情報61の作成の例について説明する。図12、図13は、部品装着ラインL1~L3と収納棚4が配置されたフロアFに設定された搬送経路の例を示している。図12において、フロアFの搬送経路は、分岐、曲がり角の地点B11~B20と、収納棚4に保管されていた被搬送物を載置された搬送装置Qが製造装置に向けてスタートする地点B10を加えた地点の間で、複数の区間E21~E34に区分けされている。図12は、搬送経路に警告地点Hが無くて、減速区間が設定されていないフロアFを示している。
図14(a)は、図12に示す収納棚4の前のスタート地点T0から、部品装着ラインL1の部品装着装置M5のリア側の搬送先T1に、クラス2のトレイ部品を搬送する際の経路情報61である。この場合、搬送制御部54は、スタート地点T0から区間E21~E26を最高速度が1.0m/s(第1速度93a)で走行して搬送先T1まで走行する経路情報61を作成する。また、搬送制御部54は、被搬送物を降ろした後の帰路として、搬送先T1から区間E26~E31を最高速度が1.0m/s(第1速度93a)で走行してスタート地点T0に戻る経路情報61を作成する。
図13は、区間E24において搬送装置Qの走行時の加速度が第1閾値を超えた警告地点Hが検出されたフロアFを示している。この例では、搬送制御部54は、警告地点Hを前後に延ばして、最高速度が第2速度93bである減速区間EY1を設定している。また、搬送制御部54は、区間E24における減速区間EY1以外の区間を区間E24aと区間E24bに設定している。なお、警告地点Hにおける加速度が第2閾値を超えた場合、搬送制御部54は、減速区間EY1における最高速度を第3速度93cに設定する。また、搬送制御部54は、警告地点Hを含む区間E24の全体を最高速度が第2速度93bである減速区間として設定するようにしてもよい。
図14(b)は、図13に示す減速区間EY1が設定されているフロアFの搬送経路において、スタート地点T0から搬送先T1にクラス2のトレイ部品を搬送する経路情報61である。図13では、スタート地点T0から搬送先T1までの間には、最高速度が第2速度93bの減速区間EY1が設定されている。そこで、搬送制御部54は、スタート地点T0から搬送先T1までの間に設定されている減速区間EY1の最高速度が0.8m/s(第2速度93b)となる経路情報61を作成する。
減速区間EY1が設定された経路情報61に基づいて搬送作業が制御される搬送装置Qは、減速区間EY1を通過する最高速度を第2速度93bまでに遅くする。例えば、搬送装置Qは、フロアFにおける位置情報を取得する位置情報取得部72(情報取得部)を備え、加速度が所定の閾値を超えた警告地点Hを含む減速区間EY1をその後に通過する際に、走行速度(最高速度)を遅くする。これにより、警告地点Hを通過する際に被搬送物が受ける加速度を第1閾値以下にすることができ、被搬送物を正常な状態に維持したまま警告地点Hを通過させることができる。
図9において、画像解析部55は、撮影装置S1~S8が撮像したフロアF内を走行する搬送装置Qの映像を解析して、走行中の搬送装置Qの状態を検出する。例えば、搬送装置Qに設置された加速度計Aが計測した加速度情報59に基づいて警告判定部52が警告地点Hを抽出する代わりに、画像解析部55が警告地点Hを抽出する場合、画像解析部55は走行中の搬送装置QのZ軸方向の変化量を検出する。
そして、画像解析部55は、検出したZ軸方向の変化量が所定の閾値を超えた地点を、警告地点Hとして警告情報60に記憶させる。そして、搬送制御部54は、画像解析部55が抽出した警告地点Hに基づいて、経路情報61を作成する。これにより、搬送装置Qが加速度計Aを備えていない場合であっても、製造装置が設置されたフロアFにおいて被搬送物を正常な状態で搬送することができる。
上記説明したように、走行時の加速度を計測するための加速度計Aを被搬送物または搬送装置Qに備え、フロアFにおいて用いられる被搬送物を搬送する搬送装置Qと、搬送経路に関する経路情報61に基づいて、搬送装置Qによる搬送作業を制御する搬送制御部54と、計測された加速度に関する加速度情報59を取得する管理情報取得部51(情報取得部)と、取得された加速度情報59に基づいて、加速度が所定の閾値(第1閾値、第2閾値)を超えたか否かを判定する警告判定部52(判定部)と、加速度が所定の閾値を超えた場合に警告情報60を出力する管理出力部53(出力部)と、を有する管理コンピュータ3(制御システム)は、フロアFにおいて被搬送物を搬送する搬送システムを構成する。これによって、製造装置が設置されたフロアFにおいて被搬送物を正常な状態で搬送することができる。
なお、搬送システムは、管理コンピュータ3が備える情報取得部、判定部、出力部と同様の機能を搬送装置Qが備える構成であってもよい。すなわち、図10において、搬送制御装置70が備える位置情報取得部72(情報取得部)は、搬送装置Qの位置情報の他に加速度計Aが計測した加速度に関する加速度情報を取得する。また、搬送制御装置70が備える搬送判定部73(判定部)は、加速度が所定の閾値(第1閾値、第2閾値)を超えたか否かを判定する。また、搬送制御装置70が備える搬送出力部74(出力部、第2出力部)は、加速度が所定の閾値を超えた場合に警告情報を管理コンピュータ3、情報端末5、部品装着装置M4,M5、部品供給装置21、保管装置22に送信(出力)する。
このように、走行時の加速度を計測するための加速度計Aを被搬送物または搬送装置Qに備え、位置情報取得部72(情報取得部)と、搬送判定部73(判定部)と、搬送出力部74(出力部、第2出力部)を有して、フロアFにおいて用いられる被搬送物を搬送する搬送装置Qと、搬送装置Qによる搬送作業を制御する搬送制御部54を有する管理コンピュータ3(制御システム)は、フロアFにおいて被搬送物を搬送する搬送システムを構成する。これによって、製造装置が設置されたフロアFにおいて被搬送物を正常な状態で搬送することができる。
次に図15のフローに沿って、フロアFにおいて用いられる被搬送物を搬送装置Qにより搬送する搬送方法について説明する。まず、管理コンピュータ3の管理情報取得部51は、被搬送物または搬送装置Qに設けられた加速度計Aによって計測された、搬送装置Qの走行時の加速度に関する加速度情報59を取得する(ST1:加速度情報取得工程)。加速度情報59には、搬送装置Qの走行時のフロアFにおける位置情報が含まれている。次いで警告判定部52は、取得された加速度情報59に基づいて、加速度が所定の閾値(第1閾値、第2閾値)を超えたか否かを判定する(ST2:判定工程)。加速度が閾値を超えていない場合(ST2においてNo)、加速度情報取得工程(ST1)が実行される。
加速度が所定の閾値を超えた場合(ST2においてYes)、管理出力部53は警告情報60を搬送装置Q、情報端末5に対して出力する(ST3:警告情報出力工程)。次いで搬送制御部54は、警告情報60に基づいて、フロアF内の搬送経路の警告地点Hを含む区間に減速区間EY1を設定する(ST4:減速区間設定工程)(図13参照)。さらに搬送制御部54は、減速区間EY1を含む経路情報61を作成して、警告地点Hを通過する搬送装置Qに送信する。これにより、加速度が所定の閾値を超えた警告地点Hをその後に通過する搬送装置Qの走行速度(最大速度)が遅くなるように当該搬送装置Qが制御される。
図15において、情報端末5に表示された警告地点Hを含む警告情報60を見た作業者Wが警告地点Hから加速度が閾値を超えた原因を除去して修復報告を情報端末5に入力すると、修復報告が管理コンピュータ3に送信される。管理コンピュータ3の管理情報取得部51が修復報告を受け取ると(ST5においてYes)、警告判定部52は修復された警告地点Hを含む警告情報60を削除し、搬送制御部54は減速区間EY1を解除する(ST6:減速区間解除工程)(図12参照)。
このように、警告地点Hを通過する搬送装置Qの走行速度が遅くなるようにした後(ST4)、警告地点Hにおいて加速度が所定の閾値を超えた原因が除去された旨の修復報告を取得すると(ST5においてYes)、その後に当該警告地点Hを通過する搬送装置Qの走行速度を元に戻すように搬送装置Qが制御される(ST6)。これによって、製造装置が設置されたフロアFにおいて被搬送物を正常な状態で搬送することができる。
次に図16のフローに沿って、補給マガジン20A(被搬送物)を搬送先の部品装着装置M4,M5(製造装置)まで搬送した搬送装置Qから部品装着装置M4,M5に補給マガジン20Aを補給する補給方法について説明する。まず、搬送先に到着した搬送装置Qの補給処理部75は、管理コンピュータ3または他の搬送装置Qから警告情報または補給保留情報78を取得したか否かを判断する(ST11:情報取得判断工程)。すなわち、搬送方法で説明した警告情報出力工程(ST3)において、管理コンピュータ3から警告情報60または補給保留情報78を取得したか否か、警告地点Hを検出した自己を含む搬送装置Qからの警告情報を取得したか否かが判断される。
情報取得判断工程(ST11)において、警告情報または補給保留情報78を取得したと判断した場合(ST11においてYes)、補給処理部75は、自動補給装置38による補給マガジン20Aの補給を保留させる(ST12)。次いで警告情報出力工程(ST3)において情報端末5に出力された警告情報60を見た作業者Wは、搬送先で停止している搬送装置Qまで移動して、部品が飛び出した可能性があるトレイ17を目視により確認し、異常がある場合は修正を行う(ST13)。その後、自動または手動で補給マガジン20Aを部品装着装置M4,M5に補給する(ST14:補給工程)。
情報取得判断工程(ST11)において、警告情報または補給保留情報78を取得していないと判断した場合(ST11においてNo)、補給処理部75は、自動補給装置38を制御して、補給マガジン20Aを部品装着装置M4,M5に補給させる(ST14)(図8参照)。このように、搬送中にトレイ部品の収容状態に異常が発生した可能性がある場合は(ST11においてYes)、作業者Wが確認と修正を行い(ST13)、搬送中に異常が発生した可能性がない場合は(ST11においてNo)、補給マガジン20Aが自動で補給される。
次に図17を参照して、部品装着装置M4,M5と、部品装着装置M4,M5に取り付けられた部品供給装置21と、部品供給装置21にパレット16を供給する保管装置22の制御系の構成のうち、搬送装置Qにより搬送されたパレット16が保持するトレイ17の収容された部品の収容状態を確認する機能について説明する。部品装着装置M4,M5は、装着制御装置100、ヘッド移動機構34、装着ヘッド36、ヘッドカメラ37を備えている。装着制御装置100は、装着動作処理部101、装着情報取得部102、装着判定部103、装着出力部104、装着記憶部105を備えている。装着記憶部105は記憶装置であり、装着データ106などが記憶されている。
装着データ106には、生産する実装基板の種類毎に、基板35のサイズ、搭載される部品の種類と装着位置(XY座標)、部品の供給情報、その他の部品装着作業に必要な情報が含まれている。装着動作処理部101は、装着データ106に基づいてヘッド移動機構34、装着ヘッド36、ヘッドカメラ37、装着されたテープフィーダ12、部品供給装置21を制御して、部品供給装置21やテープフィーダ12が供給する部品を装着ヘッド36で保持して基板35に装着する部品装着作業を制御する。
図17において、装着情報取得部102(第1情報取得部)は、管理コンピュータ3から出力された、搬送装置Qによるパレット16の搬送時にトレイ17内の部品の収容状態に異常が生じた可能性があることを示す警告情報60を、通信ネットワーク2を介して取得する。装着判定部103は、警告情報60に基づいて、ヘッド移動機構34とヘッドカメラ37を制御して、搬送時に収容している部品の収容状態に異常が生じた可能性があるトレイ17(以下、「被疑トレイ」と称する。)の状態を撮像させる。
具体的には、装着判定部103は、被疑トレイが部品供給装置21によって部品取り出し位置に移動すると、ヘッド移動機構34によってヘッドカメラ37を移動させながら被疑トレイ内を撮像させる(図5参照)。すなわち、ヘッドカメラ37は、基板35に部品を装着する装着ヘッド36と一体的に設けられ、被疑トレイ内の部品を撮像する撮像部である。
さらに、装着判定部103は、被疑トレイ内の撮像結果を認識処理して、部品が被疑トレイの収容部18から飛び出したり、傾いたりする異常の発生の有無を判定する。すなわち、装着判定部103は、警告情報60が取得された場合に、撮像部(ヘッドカメラ37)による被疑トレイ内の部品の撮像結果に基づいて収容状態に異常があるかの判定を行う異常判定部である。
図17において、装着出力部104は、装着判定部103により被疑トレイの収容状態に異常があると判定されると、作業者Wが所持する情報端末5に異常があるトレイ17を保持するパレット16の交換の指示を出力する。または、装着出力部104は、部品供給装置21および保管装置22に、異常があるトレイ17を保持するパレット16をマガジン保持部28の回収マガジン20Bに回収し、異常があるトレイ17と同じ部品を収容するトレイ17を部品取り出し位置に移動するように指示を出力する。このように、装着出力部104は、被疑トレイの部品の収容状態に異常があると判定された場合に、異常がある旨を出力する第1出力部である。
なお、異常がある旨を部品装着装置M4,M5の装着出力部104から情報端末5、または部品供給装置21および保管装置22に送信するのではなく、管理コンピュータ3から送信するようにしてもよい。すなわち、装着出力部104(第1出力部)は、管理コンピュータ3(制御システム)に異常がある旨を出力し、管理コンピュータ3は、異常がある旨を取得した場合、異常があると判定されたトレイ17を保持するパレット16の交換の指示を出力する第2出力部を有する形態であってもよい。
図17において、部品供給装置21は、供給制御装置110、第1パレット移動部26を備えている。供給制御装置110は、供給動作処理部111を備えている。供給動作処理部111は、装着制御装置100の装着動作処理部101からの指令に従って第1パレット移動部26を制御して、パレット16を保管装置22の第1保持部25と部品取り出し位置の間で移動させる。
保管装置22は、保管制御装置112、第2パレット移動部30、マガジン移動部29、第1カメラ31、第2カメラ32、タッチパネル33を備えている。保管制御装置112は、パレット移動処理部113、マガジン移動処理部114、保管情報取得部115、保管判定部116、保管出力部117、保管記憶部118を備えている。保管記憶部118は記憶装置であり、第1保持部25と第2保持部27に保管されているパレット16の位置、トレイ17に収容されている部品の種類などの情報が記憶されている。
図17において、パレット移動処理部113は、第2パレット移動部30を制御して、パレット16を第2保持部27と第1保持部25との間で移動させる。マガジン移動処理部114は、マガジン移動部29を制御して、マガジン保持部28のトレイマガジン20(補給マガジン20A、回収マガジン20B)を出し入れさせる。保管情報取得部115(第1情報取得部)は、管理コンピュータ3から出力された、警告情報60を、通信ネットワーク2、部品装着装置M4,M5、部品供給装置21を介して取得する。
保管判定部116は、警告情報60に基づいて、第1カメラ31(撮像部)を制御して、被疑トレイの状態を撮像させる。具体的には、保管判定部116は、被疑トレイが部品供給装置21によって部品取り出し位置に移動すると、第1カメラ31によって被疑トレイ内を撮像させる(図5参照)。
または、保管判定部116は、警告情報60に基づいて、第2パレット移動部30と第2カメラ32(撮像部)を制御して、被疑トレイの状態を撮像させる。具体的には、保管判定部116は、第2保持部27から被疑トレイを保持するパレット16を引き出して、第2カメラ32によって被疑トレイ内を撮像させる(図6参照)。撮像の際、第2保持部27は、パレット16を第2カメラ32の焦点が合う高さ位置まで移動させる。このように、第2カメラ32は、第2パレット移動部30(引き出し部)を撮像可能な位置に設けられている撮像部である。
図17において、保管判定部116は、第1カメラ31または第2カメラ32による被疑トレイ内の撮像結果を認識処理して、部品の収容状態の異常の有無を判定する。保管出力部117は、保管判定部116により被疑トレイの収容状態に異常があると判定されると、情報端末5または管理コンピュータ3に異常がある旨を出力する。このように、保管判定部116は、警告情報60が取得された場合に、撮像部(第1カメラ31、第2カメラ32)による被疑トレイ内の部品の撮像結果に基づいて収容状態に異常があるかの判定を行う異常判定部である。また、保管出力部117は、被疑トレイの部品の収容状態に異常があると判定された場合に、異常がある旨を出力する第1出力部である。
なお、第1カメラ31は、部品供給装置21が備える構成であってもよい。その場合、供給制御装置110が警告情報60を取得する第1情報取得部と、第1パレット移動部26と第1カメラ31を制御する異常判定部を有する。そして、異常判定部は、第1パレット移動部26を制御して、被疑トレイを保持するパレット16を第1保持部25から部品取り出し位置に移動させて、第1カメラ31により被疑トレイ内を撮像させる。
上記説明したように、部品供給装置21から供給されるトレイ17に収容された部品を基板35に装着する部品装着装置M4,M5は、搬送装置Qによるトレイ17を保持するパレット16の保管装置22への搬送時にトレイ17内の部品の収容状態に異常が生じた可能性があることを示す警告情報60を取得する第1情報取得部(装着情報取得部102)と、トレイ17内の部品を撮像する撮像部(ヘッドカメラ37)と、警告情報60が取得された場合に、撮像部によるトレイ17内の部品の撮像結果に基づいて、トレイ17内の部品の収容状態に異常があるかの判定を行う異常判定部(装着判定部103)と、を有する。これによって、搬送されたトレイ17に収容された部品の収容状態を適切に判定することができる。
また、基板35に部品を装着する部品装着システム1は、基板35に部品を装着する部品装着装置M4,M5と、トレイ17に収容された部品を部品装着装置M4,M5に供給する部品供給装置21と、部品供給装置21へとパレット16を供給する保管装置22と、保管装置22へとパレット16を搬送する搬送装置Qを備えている。そして、部品装着装置M4,M5、部品供給装置21、または保管装置22は、第1情報取得部(装着情報取得部102、保管情報取得部115)と、撮像部(ヘッドカメラ37、第1カメラ31、第2カメラ32)と、異常判定部(装着判定部103、保管判定部116)とを有している。これによって、搬送されたトレイ17に収容された部品の収容状態を適切に判定することができる。
なお、搬送装置Qが搬送する補給マガジン20Aのパレット16が保持するトレイ17を撮像する撮像部を備える場合、警告情報60を取得した搬送装置Qの撮像部が搬送したトレイ17内を撮像して、部品の収容状態を判定するようにしてもよい。
次に図18のフローに沿って、搬送装置Qにより搬送されたパレット16が保持するトレイ17に収容された部品の収容状態に異常がないかの判定を行う判定方法について説明する。ここでは、保管装置22が第2カメラ32を使用して異常を判定する場合について説明する。まず、搬送装置Qは、自動補給装置38により搬送した補給マガジン20Aを保管装置22に自動補給する(ST21:自動補給工程)。
次いで保管情報取得部115が搬送装置Qによるパレット16の搬送時にトレイ17内の部品の収容状態に異常が生じた可能性があることを示す警告情報60を取得すると(ST22においてYes)、保管判定部116は第2カメラ32に被疑トレイ内を撮像させる(ST23:トレイ内撮像工程)。具体的には、保管判定部116は第2パレット移動部30を制御して、補給マガジン20Aから被疑トレイを保持するパレット16を引き出させて、第2カメラ32(撮像部)で被疑トレイ内の部品を撮像させる。
図18において、次いで保管判定部116は、被疑トレイ内の部品の撮像結果に基づいて、被疑トレイ内の部品の収容状態に異常がないかの判定を行う(ST24:異常判定工程)。収容状態に異常がある場合(ST24においてYes)、保管出力部117は、情報端末5または管理コンピュータ3に当該被疑トレイを保持するパレットの交換を指示する旨を出力する(ST25:交換指示出力工程)。そして、保管判定部116は、第2パレット移動部30に異常がある被疑トレイを保持するパレット16を元の補給マガジン20A(回収マガジン20B)に回収させる。
収容状態に異常がない場合(ST24においてNo)、保管判定部116は、第2パレット移動部30に異常がなかった被疑トレイを保持するパレット16を第1保持部25または第2保持部27の所定のパレット収納部19に収納させる。補給マガジン20Aに未確認の被疑トレイが残っている場合(ST26においてNo)、トレイ内撮像工程(ST23)に戻って、次の被疑トレイの収容状態が確認される(ST24~ST26)。警告情報60が取得されない場合は(ST22においてNo)、トレイ内撮像工程(ST23)を行うことなく判定処理が終了する。これによって、搬送されたトレイ17に収容された部品の収容状態を適切に判定することができる。
このように、トレイ内撮像工程(ST23)は、基板35に部品を装着する部品装着装置M4,M5にトレイ17に収容された部品を供給する部品供給装置21へとパレット16を供給する保管装置22にパレット16を補給した(ST21)後に行われる。また、保管装置22におけるトレイ内撮像工程(ST23)は、第2パレット移動部30が部品装着作業のための作業を行っていない空き時間に実行される。これによって、部品装着装置M4,M5による部品装着作業を妨げることがない。
次に図19を参照して、トレイ17に収容された部品を部品装着装置M4,M5に供給する部品供給装置と、部品供給装置へとパレット16を供給する保管装置の他の実施例について説明する。他の実施例の部品供給装置121は、第1パレット移動部123がX軸に沿って2つ並列に配置されているところが、部品供給装置21とは異なる。また、他の実施例の保管装置122は、第1保持部124にトレイマガジン20(補給マガジン20A、回収マガジン20B)を出し入れするところが保管装置22とは異なっている。すなわち、保管装置122は、第2保持部と第2パレット移動部を備えていない。また、保管装置122は、2つの第1パレット移動部123に対応して、2つのマガジン保持部125を備えている。
保管装置122のリア側には、2つのマガジン保持部125に対応して2つのマガジン交換用窓126が形成されている。マガジン保持部125の下部には、トレイマガジン20を保持し、搬送装置Qとの間でトレイマガジン20の受け渡しを行うマガジン移動部127がそれぞれ配置されている。マガジン交換用窓126の下方には、それぞれ、ドッキング部128が配置されている。搬送装置Qは、トレイマガジン20を補給する側のドッキング部128に結合部39を結合させ、自動補給装置38とマガジン保持部125を連携させて搬送したトレイマガジン20(補給マガジン20A)を保管装置122に補給させる。
図19において、第1パレット移動部123は、対応するマガジン保持部125に補給されたトレイマガジン20のパレット収納部19からパレット16を引き出して、トレイ17の収容された部品を部品装着装置M4,M5に供給する部品取り出し位置まで移動させる。保管装置122の上部には、第1パレット移動部123によって部品取り出し位置まで移動したパレット16が保持するトレイ17に収容されている部品の状態を撮像する2つの第1カメラ129が、2つの第1パレット移動部123に対応して配置されている。
保管装置122の第1情報取得部が警告情報60を取得すると、被疑トレイから部品を供給する前に、第1カメラ129が部品取り出し位置の被疑トレイ内の部品を撮像し、異常判定部が収容状態に異常があるかの判定を行う。収容状態に異常があると判定されると、保管装置122の第1出力部は異常がある旨を情報端末5または管理コンピュータ3に出力する。そして、第1パレット移動部123は、異常と判定されたパレット16をトレイマガジン20に回収する。
他の実施例の部品供給装置121と保管装置122は、一方のマガジン保持部125のトレイマガジン20が収容していたトレイ17の全ての部品が部品装着装置M4,M5に供給されたトレイマガジン20が空になると、他方の部品取り出し位置から部品が供給されている間に、一方のマガジン保持部125の空になったトレイマガジン20(回収マガジン20B)が、搬送装置Qが搬送した補給マガジン20Aと交換される。
なお、上記の実施例では、搬送システムとして基板に対して作業を行う製造装置が配置されたフロアFにおいてトレイマガジン20などの被搬送物を搬送する搬送装置Qを例に説明したが、これに限定されることはない。例えば、製造装置は半導体製品を製造する半導体製造ラインにおいてウェハ(ワーク)に対して生産作業を行う製造装置であり、被搬送物はウェハを収容したウェハキャリアであってもよい。また、製造装置は電気機器を組立てる組立て生産ラインや、食品加工製品を生産する食品加工ラインにおいて、生産作業を行う製造装置であり、被搬送物は実装基板や筐体、食品材料や容器であってもよい。