JP2022086445A - 非水系アルカリ金属蓄電素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】負極プレドープ量を高めて高容量化する為に非水系電解液へのアルカリ金属炭酸塩の溶出を考慮した正極前駆体及び非水系電解液の設計とアルカリ金属炭酸塩の溶出を考慮して正極活物質層のエネルギー密度を高めた非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体の提供。【解決手段】正極活物質として炭素材料を含む正極前駆体、負極活物質を含む負極、セパレータ、及びNaイオン又はKイオンを含む非水系電解液を含む非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体が提供され、正極前駆体は、Al含有正極集電体と、正極集電体の片面/両面に設けられた正極活物質を含む正極活物質層とを有し、負極は、Al含有負極集電体と、負極集電体の片面/両面に設けられた負極活物質を含む負極活物質層とを有し、正極前駆体と非水系電解液はM2CO3{M=Na,K)で示されるアルカリ金属炭酸塩を含み、正極活物質層中のアルカリ金属炭酸塩の含有量が20.0~28.0質量%である。【選択図】図1

Description

本発明は、非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体、および非水系アルカリ金属蓄電素子に関する。
近年、地球環境の保全および省資源を目指すエネルギーの有効利用の観点から、風力発電の電力平滑化システムまたは深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システム等が注目を集めている。
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)または燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時に高い出力放電特性を発揮する蓄電システムが要求されている。
現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
電気二重層キャパシタのうち、電極に活性炭を用いたものは、0.5~1kW/L程度の出力特性を有する。この電気二重層キャパシタは、出力特性が高いだけでなく、耐久性(サイクル特性および高温保存特性)もまた高く、上記の高出力が要求される分野で最適のデバイスであると考えられてきた。しかしながら、そのエネルギー密度は1~5Wh/L程度に過ぎないため、更なるエネルギー密度の向上が必要である。
他方、現在、ハイブリッド電気自動車で一般に採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度および出力特性をより一層高めるとともに、耐久性(特に、高温における安定性)を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(すなわち、蓄電素子の放電容量に対する放電量の割合(%))50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されている。しかしながら、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計である。また、その耐久性(サイクル特性および高温保存特性)は、電気二重層キャパシタに比べ劣るため、そのようなリチウムイオン電池は、実用的な耐久性を持たせるために、放電深度が0~100%の範囲よりも狭い範囲で使用される。実際に使用できるリチウムイオン電池の容量はさらに小さくなるから、耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
上記のように、高エネルギー密度、高出力特性、および高耐久性を兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められている。しかしながら、上述した既存の蓄電素子には、それぞれ一長一短があるため、これらの技術的要求を充足する新たな蓄電素子が求められている。その有力な候補として、リチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子が注目され、開発が盛んに行われている。
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩等のアルカリ金属塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(以下、「非水系アルカリ金属蓄電素子」ともいう。)の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着および脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵および放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。
上記の蓄電素子に一般的に用いられる電極材料とその特徴をまとめると、一般的に、電極に活性炭等の材料を用い、活性炭表面のイオンの吸着および脱離(非ファラデー反応)により充放電を行う場合は、高出力かつ高耐久性が得られるが、エネルギー密度が低くなる(例えば1倍とする。)。他方、電極に酸化物または炭素材料を用い、ファラデー反応により充放電を行う場合は、エネルギー密度が高くなる(例えば、活性炭を用いた非ファラデー反応の10倍とする。)が、耐久性および出力特性に課題がある。
これらの電極材料の組合せとして、電気二重層キャパシタは、正極および負極に活性炭(エネルギー密度1倍)を用い、正負極共に非ファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって高出力かつ高耐久性を有するが、エネルギー密度が低い(正極1倍×負極1倍=1)という特徴がある。
リチウムイオン二次電池は、正極にリチウム遷移金属酸化物(エネルギー密度10倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正負極共にファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって高エネルギー密度(正極10倍×負極10倍=100)を有するが、出力特性および耐久性に課題がある。さらに、ハイブリッド電気自動車等で要求される高耐久性を満足させるためには放電深度を制限しなければならず、リチウムイオン二次電池では、そのエネルギーの10~50%しか使用できない。
リチウムイオンキャパシタは、正極に活性炭(エネルギー密度1倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって、電気二重層キャパシタおよびリチウムイオン二次電池の特徴を兼ね備えた非対称キャパシタである。リチウムイオンキャパシタは高出力かつ高耐久性でありながら、高エネルギー密度(正極1倍×負極10倍=10)を有し、リチウムイオン二次電池のように放電深度を制限する必要がないことが特徴である。
しかしながら、肝心のリチウムは地殻中の濃度が平均20ppm程度しかなく、しかも産出地が偏在しているという問題がある。これからは、より多く普遍的に存在する元素をリチウムの代替としていく必要があり、ナトリウムやカリウムといったアルカリ金属元素を蓄電デバイスに用いる研究が精力的に進められており、ナトリウムイオンキャパシタやカリウムイオンキャパシタの開発が進められている。
上記ナトリウムイオンキャパシタおよびカリウムイオンキャパシタの更なる高出力化については、様々な検討が行われている(特許文献1~4)。
特許文献1には、充放電を繰り返しても充放電容量が劣化し難く、寿命が長いカリウムイオン二次電池が開示されている。
特許文献2には、キャパシタ中の電解液の分解を抑制するために、炭酸カリウム等の制酸剤を正極に含有させる技術が開示されている。
特許文献3には、電解液または正極中に存在するアルカリ金属化合物の分解を抑制する技術が提案されている。
特許文献4には、高温保存時のガス発生が少なく、高負荷充放電サイクル特性を高めるために、正極前駆体に含まれるアルカリ金属化合物と負極前駆体の単位面積当たりの容量を最適化した非水系ハイブリッドキャパシタが提案されている。
しかしながら、いずれの文献にも、負極のプレドープ効率を高めるために、非水系電解液中へのアルカリ金属炭酸塩の溶出を考慮した正極前駆体および非水系電解液を設計すること、さらにはアルカリ金属炭酸塩の溶出を考慮して正極活物質層のエネルギー密度を高めた非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体については、全く言及されていない。
なお、本明細書において、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出されるが、BJH法は非特許文献1において提唱されており、かつMP法は、「t-プロット法」(非特許文献2)を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、およびマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、非特許文献3において示される。
国際公開第2016/059907号 特開2006-261516号公報 特開2018-026411号公報 国際公開第2017/126687号
E.P.Barrett,L.G.Joyner and P.Halenda,J.Am.Chem.Soc.,73,373(1951) B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965) R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45(1968)
以上の現状に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、負極のプレドープ量を高めて高容量化するために、非水系電解液中へのアルカリ金属炭酸塩の溶出を考慮した正極前駆体および非水系電解液を設計すること、さらにはアルカリ金属炭酸塩の溶出を考慮した正極活物質層のエネルギー密度を高めた非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体を提供することである。
上記課題は以下の技術的手段により解決される。すなわち、本発明は、以下のとおりのものである:
[1]
正極活物質として炭素材料を含む正極前駆体と、負極活物質を含む負極と、セパレータと、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンを含む非水系電解液とを有する非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体であって、
前記正極前駆体は、アルミニウムを含む正極集電体と、前記正極集電体の片面または両面上に設けられた、前記正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
前記負極は、アルミニウムを含む負極集電体と、前記負極集電体の片面または両面上に設けられた、前記負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
前記正極前駆体および前記非水系電解液は、式MCO{式中、Mは、NaまたはKを表す}で示されるアルカリ金属炭酸塩を含み、
前記正極前駆体の前記正極活物質層に含まれる前記アルカリ金属炭酸塩の含有量が、20.0質量%以上28.0質量%以下である非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体。
[2]
前記非水系電解液は、前記アルカリ金属炭酸塩の飽和濃度電解液である[1]に記載の非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体。
[3]
前記非水系電解液に含まれる前記アルカリ金属炭酸塩の濃度が、0.01g/L以上0.20g/L以下である[1]または[2]に記載の非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体。
[4]
(1)炭素材料を含む正極活物質と、式MCO{式中、Mは、NaまたはKを表す}で示されるアルカリ金属炭酸塩とを含む正極前駆体、負極、およびセパレータから成る電極積層体を外装体に収納する工程、
(2)前記外装体内に、前記アルカリ金属炭酸塩、およびアルカリ金属イオンを含有する電解質を含む非水系電解液を注入して、非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体を作製する工程、並びに
(3)前記正極前駆体と前記負極との間に電圧を印加して、前記アルカリ金属炭酸塩を分解する工程
を、上記に記載の順で含む非水系アルカリ金属蓄電素子の製造方法。
[5]
前記非水系電解液が、前記アルカリ金属炭酸塩の飽和濃度電解液である[4]に記載の非水系アルカリ金属蓄電素子の製造方法。
本発明によれば、正極前駆体に含有されるアルカリ金属炭酸塩の非水系電解液中への溶出を抑制することにより、正極前駆体中のアルカリ金属炭酸塩の含有量が低くとも負極へのプレドープ量を高めて高容量化することができ、かつ正極のエネルギー密度を高めた非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体が提供される。
正極前駆体1を非水系電解液1に45℃環境下3時間浸漬した後の正極前駆体、正極前駆体1を非水系電解液1に25℃環境下3時間浸漬した後の正極前駆体、正極前駆体1、および炭酸カリウムについて、XRF(蛍光X線分析)測定をそれぞれ実施した結果を示すグラフである。 炭酸カリウムの混合量を変化させた正極前駆体について、XRF測定によるカリウムのKα線の強度を基に作成した炭酸カリウムの検量線である。 作用極として負極1、対極としてカリウム金属を用いて定電流充放電試験を行った結果である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本実施形態の各数値範囲における上限値および下限値は任意に組み合わせて任意の数値範囲を構成することができる。
一般に、非水系アルカリ金属蓄電素子は、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを主な構成要素として含有する。電解液としては、有機溶媒中にアルカリ金属イオンを溶解した溶液(以下、「非水系電解液」ともいう。)を用いる。
<正極>
本実施形態の非水系アルカリ金属蓄電素子における正極は、正極集電体と、その上に配置された、より詳細には、その片面または両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する。本実施形態に係る正極活物質層は、正極活物質を含み、さらにアルカリ金属炭酸塩を含むことが好ましい。
後述のように、本実施形態では、蓄電素子組み立て工程内で、負極にアルカリ金属イオンをプレドープすること(以下、「アルカリ金属ドープ工程」ともいう)が好ましく、そのプレドープ方法としては、アルカリ金属炭酸塩を含む正極前駆体、負極、セパレータ、外装体、およびアルカリ金属炭酸塩を含む非水系電解液を用いて非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体を組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。この場合、アルカリ金属炭酸塩は、正極前駆体中にいかなる態様で含まれていてもよい。例えば、アルカリ金属炭酸塩は、正極集電体と正極活物質層との間に存在してよく、正極活物質層の表面上に存在してよく、正極活物質層中に存在していてよい。アルカリ金属炭酸塩は、正極前駆体の正極集電体上に形成された正極活物質層に含有されることが好ましい。このような態様では、負極へのアルカリ金属イオンのプレドープに伴って、正極活物質層中に空孔が形成されて、正極活物質層の実効面積が増大する。
本明細書では、アルカリ金属ドープ工程前における正極を「正極前駆体」、アルカリ金属ドープ工程後における正極を「正極」と定義する。
[正極活物質層]
正極活物質層は、正極活物質を含み、さらにアルカリ金属炭酸塩を含むことが好ましい。正極活物質層は、これら以外に、必要に応じて、後述の任意成分を含んでいてもよい。
[正極活物質]
正極活物質は、活性炭を含むことが好ましく、活性炭の他に、グラフェン、導電性高分子等をさらに含んでいてもよい。
活性炭を正極活物質として用いる場合、活性炭の種類およびその原料には特に制限はないが、高い入出力特性と、高いエネルギー密度とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV(cm/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV(cm/g)とするとき、
(1)高い入出力特性のためには、0.3<V≦0.8、および0.5≦V≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下である活性炭(以下、活性炭1ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V≦2.5、および0.8<V≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下である活性炭(以下、活性炭2ともいう。)が好ましい。
本実施形態における活物質のBET比表面積およびメソ孔量、マイクロ孔量、平均細孔径は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。
試料を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行なう。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法またはBET1点法により、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。
BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett,Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(非特許文献1)。
また、MP法とは、「t-プロット法」(非特許文献2)を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、およびマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、R.S.Mikhail, Brunauer,Bodorにより考案された方法である(非特許文献3)。
また、平均細孔径とは、液体窒素温度下で、各相対圧力下における窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる、試料の質量当たりの全細孔容積を上記BET比表面積で除して求めたものを指す。
(活性炭1)
活性炭1のメソ孔量Vは、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cm/gより大きい値であることが好ましい。Vは、正極の嵩密度の低下を抑える点から、0.8cm/g以下であることが好ましい。Vは、より好ましくは0.35cm/g以上0.7cm/g以下、さらに好ましくは0.4cm/g以上0.6cm/g以下である。
活性炭1のマイクロ孔量Vは、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cm/g以上であることが好ましい。Vは、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという点から、1.0cm/g以下であることが好ましい。Vは、より好ましくは0.6cm/g以上1.0cc/g以下、さらに好ましくは0.8cm/g以上1.0cm/g以下である。
マイクロ孔量Vに対するメソ孔量Vの比(V/V)は、0.3≦V/V≦0.9の範囲内であることが好ましい。すなわち、高容量を維持しながら出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという観点から、V/Vが0.3以上であることが好ましい。一方で、高出力特性を維持しながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという観点から、V/Vは0.9以下であることが好ましい。より好ましいV/Vの範囲は0.4≦V/V≦0.7であり、さらに好ましいV/Vの範囲は0.55≦V/V≦0.7である。
活性炭1の平均細孔径は、得られる蓄電素子の出力を最大にする観点から、17Å以上(すなわち、17×10-10m以上)であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが最も好ましい。また容量を最大にする観点から、活性炭1の平均細孔径は25Å以下であることが好ましい。
活性炭1のBET比表面積は、1,500m/g以上3,000m/g以下であることが好ましく、1,500m/g以上2,500m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1,500m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が3,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つために結着剤を多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
上記のような特徴を有する活性炭1は、例えば、次に説明する原料および処理方法を用いて得ることができる。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではないが、例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、およびこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応およびコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、およびそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
これらの原料を上記活性炭1とするための炭化および賦活の方式としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、またはこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400℃~700℃(好ましくは450℃~600℃)程度において、30分~10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
上記で説明された炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。これらのうち、賦活ガスとして、水蒸気または二酸化炭素を使用する方法が好ましい。この賦活方法では、賦活ガスを0.5~3.0kg/h(好ましくは0.7~2.0kg/h)の割合で供給しながら、得られた炭化物を3時間~12時間(好ましくは5時間~11時間、より好ましくは6時間~10時間)掛けて800℃~1,000℃まで昇温して賦活するのが好ましい。
さらに、上記で説明された炭化物の賦活処理に先立ち、予め炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素材料を水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活する方法が、好ましく採用できる。
上記で説明された炭化方法における焼成温度および焼成時間と、賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度および最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本実施形態において使用できる活性炭1を製造することができる。
活性炭1の平均粒子径は、2~20μmであることが好ましい。平均粒子径が2μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。なお、平均粒子径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒子径が2μm以上であればそのような欠点が生じ難い。一方で、平均粒子径が20μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。活性炭1の平均粒子径は、より好ましくは2~15μmであり、さらに好ましくは3~10μmである。
(活性炭2)
活性炭2のメソ孔量Vは、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cm/gより大きい値であることが好ましい。Vは、蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cm/g以下であることが好ましい。Vは、より好ましくは1.00cm/g以上2.0cm/g以下、さらに好ましくは、1.2cm/g以上1.8cm/g以下である。
活性炭2のマイクロ孔量Vは、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.8cm/gより大きい値であることが好ましい。Vは、活性炭の電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、3.0cm/g以下であることが好ましい。Vは、より好ましくは1.0cm/gより大きく2.5cm/g以下、さらに好ましくは1.5cm/g以上2.5cm/g以下である。
上述したメソ孔量およびマイクロ孔量を有する活性炭2は、従来の電気二重層キャパシタまたはリチウムイオンキャパシタ用として使用されていた活性炭よりもBET比表面積が高いものである。活性炭2のBET比表面積の具体的な値は、2,300m/g以上4,000m/g以下であることが好ましく、3,000m/g以上4,000m/g以下であることがより好ましく、3,200m/g以上3,800m/g以下であることがさらに好ましい。BET比表面積が2,300m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、BET比表面積が4,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つために結着剤を多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
上記のような特徴を有する活性炭2は、例えば次に説明するような原料および処理方法を用いて得ることができる。
活性炭2の原料として用いられる炭素質材料としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、およびフラン樹脂は、高比表面積の活性炭を作製するのに適しており特に好ましい。
これらの原料を炭化する方式、或いは賦活処理時の加熱方法としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の公知の方式が挙げられる。加熱時の雰囲気は窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、またはこれらの不活性ガスを主成分として他のガスとの混合したガスが用いられる。炭化温度は400℃~700℃程度で、焼成時間は0.5時間~10時間程度で、焼成する方法が一般的である。
炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法、およびアルカリ金属化合物と混合した後に加熱処理を行うアルカリ金属賦活法があるが、高比表面積の活性炭を作製するにはアルカリ金属賦活法が好ましい。この賦活方法では、炭化物とKOH、NaOH等のアルカリ金属化合物との質量比が1:1以上(アルカリ金属化合物の量が、炭化物の量と同じかこれよりも多い量)となるように混合した後に、不活性ガス雰囲気下で600℃~900℃の範囲において、0.5時間~5時間加熱を行い、その後アルカリ金属化合物を酸および水により洗浄除去し、さらに乾燥を行ってもよい。
マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないためには、賦活する際に炭化物の量を多めにしてKOHと混合するとよい。マイクロ孔量およびメソ孔量の双方を大きくするためには、KOHの量を多めに使用するとよい。また、主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に水蒸気賦活を行うことが好ましい。
活性炭2の平均粒子径は、2μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以上10μm以下である。
(活性炭の使用態様)
活性炭1および2は、それぞれ、1種の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって前記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。
上記の活性炭1および2は、これらのうちのいずれか一方を選択して使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
正極活物質は、活性炭1および2以外の材料(例えば、上記で説明された特定のVおよび/若しくはVを有さない活性炭、または活性炭以外の材料(例えば、導電性高分子等))を含んでもよい。例示の態様において、活性炭1および2の合計含有量は、40.0質量%以上70.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは45.0質量%以上65.0質量%以下である。この値が40.0質量%以上であれば、エネルギー密度を高めることができる。この値が70.0質量%以下であれば、高温耐久性と高電圧耐久性を向上させることができる。
(アルカリ金属炭酸塩)
本実施形態に係る正極前駆体の正極活物質層は、アルカリ金属炭酸塩を含む。アルカリ金属炭酸塩は、正極前駆体中で分解して陽イオンを放出し、負極で還元されることにより、負極にプレドープすることが可能である。このようなアルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等が挙げられ、単位質量当たりの容量が高いという観点からは、式MCO{式中、Mは、NaまたはKを表す}で示されるアルカリ金属炭酸塩、具体的には、炭酸ナトリウム、または炭酸カリウムが、特に好適に用いられる。
本実施形態に係る正極前駆体としては、少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩を含んでいればよい。本実施形態に係る正極前駆体は、上記のアルカリ金属炭酸塩とともに、ナトリウム(Na),カリウム(K)等をアルカリ金属イオンとして含む酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、およびカルボン酸塩から選択されるアルカリ金属化合物を1種以上含んでいてもよい。
アルカリ金属炭酸塩は、微粒子状であることが好ましい。具体的には、本実施形態において、アルカリ金属炭酸塩の平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。平均粒子径が0.1μm以上であれば正極前駆体中での分散性に優れる。平均粒子径が10μm以下であれば、アルカリ金属炭酸塩の表面積が増えるために分解反応が効率よく進行する。
また、アルカリ金属炭酸塩の平均粒子径は、上記で説明された活性炭の平均粒子径より小さいことが好ましい。アルカリ金属炭酸塩の平均粒子径が活性炭の平均粒子径より小さければ、正極活物質層の電子伝導が高まるために、電極体または蓄電素子の低抵抗化に寄与することができる。
正極前駆体中におけるアルカリ金属炭酸塩の平均粒子径の測定方法については特に限定されないが、正極断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像、および走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)画像から算出することができる。正極断面の形成方法については、正極上部からアルゴン(Ar)ビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するボロード・イオン・ビーム(BIB)加工を用いることができる。
アルカリ金属炭酸塩の微粒子化には、様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
正極前駆体の正極活物質層に含まれるアルカリ金属炭酸塩の含有割合は、正極活物質層の全質量を100質量%としたときに、20.0質量%以上28.0質量%以下であることが好ましく、21.0質量%以上27.5質量%以下であることがより好ましく、22.0質量%以上27.0質量%以下であることがさらに好ましい。この値が20.0質量%以上であれば、負極に十分な量のアルカリ金属イオンをプレドープすることができ、非水系アルカリ金属蓄電素子の容量が高まる。この値が28.0質量%以下であれば、正極前駆体中の電子伝導を高めてアルカリ金属炭酸塩の分解を効率よく行うことができ、また、正極前駆体中の正極活物質比率を高めることができるために高エネルギー密度化できる。
正極前駆体が、アルカリ金属炭酸塩の他に上記のアルカリ金属化合物を含む場合は、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属化合物の総量を、上記の範囲内とすることが好ましい。
上記アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属化合物に由来するアルカリ金属元素の定量は、誘導結合プラズマ-発光分光分析法(ICP-AES)、原子吸光分析法、蛍光X線分析法、中性子放射化分析法、誘導結合プラズマ-質量分析法(ICP-MS)等により行うことができる。
(正極活物質層のその他の成分)
本発明における正極前駆体の正極活物質層には、必要に応じて、正極活物質、およびアルカリ金属炭酸塩の他に、例えば、分散剤、導電性フィラー、結着剤、pH調整剤等の任意成分を含んでいてもよい。
(分散剤)
分散剤としては、特に制限されるものではないが、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、界面活性剤等から選択される1種または2種以上が好適に用いられる。特に、上記分散剤を2種以上用いることにより、カーボンナノチューブの分散性と塗工液との安定性を両立させることができる。分散剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースと、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールから選択される1種以上と、を含むことが、特に好ましい。
分散剤の総使用量は、正極活物質層中の固形分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上10.0質量%以下である。分散剤の量が10.0質量%以下であれば、活物質へのイオンの出入りおよび拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
(結着剤)
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、ポリイミド、ラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリル共重合体、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩等を使用することができる。正極活物質層における結着剤の使用量は、正極活物質100質量%に対して、0~20質量%が好ましく、0.1~15質量%の範囲がさらに好ましい。
上記導電性フィラーは、正極活物質よりも導電性の高い導電性炭素質材料から成ることが好ましい。このような導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ等、およびこれらの混合物等から選択される1種以上が好ましい。カーボンブラックは、例えば、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等を包含する。黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛等を包含する。導電性フィラーとしては、特にカーボンブラック、またはカーボンナノチューブが好適に用いられる。
正極前駆体の正極活物質層における導電性フィラーの含有割合は、正極活物質100質量%に対して、0~20質量%が好ましく、1~15質量%の範囲がより好ましい。導電性フィラーは、高入力の観点からは、できるだけ多く配合する方が好ましい。しかしながら、配合量が20質量%よりも多くなると、正極活物質層における正極活物質の含有割合が少なくなるために、正極活物質層体積当たりのエネルギー密度が低下するので、20質量%以下に調整されることが好ましい。
正極活物資層形成用の塗工液の溶媒に水を使用する場合には、アルカリ金属炭酸塩を加えることによって塗工液がアルカリ性になることがある。そのため、正極活物資層形成用の塗工液には、必要に応じてpH調整剤を塗工液に添加してもよい。
pH調整剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素等のハロゲン化水素;次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸等のハロゲンオキソ酸;蟻酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸;硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、二酸化炭素等の酸等を用いることができる。
[正極集電体]
本実施形態に係る正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出および電解質またはイオンとの反応等による劣化が起こらない材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施形態に係る非水系アルカリ金属蓄電素子又はその前駆体における正極集電体としては、アルミニウムを含むことが好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。
金属箔は凹凸または貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
後述されるアルカリ金属ドープ工程の観点からは、無孔状のアルミニウム箔がさらに好ましく、アルミニウム箔の表面が粗面化されていることが特に好ましい。
正極集電体の厚みは、正極の形状および強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1~100μmであることが好ましい。
上記金属箔の表面に、例えば黒鉛、鱗片状黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維等の導電性材料を含むアンカー層を設けることが好ましい。アンカー層を設けることで正極集電体と正極活物質層間の電気伝導が向上し、低抵抗化できる。アンカー層の厚みは、正極集電体の片面当たり0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。
[正極前駆体の製造]
本実施形態において、非水系アルカリ金属蓄電素子の正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質およびアルカリ金属炭酸塩、ならびに必要に応じて使用されるその他の任意成分を水または有機溶剤中に分散または溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体上の片面または両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることができる。さらに、得られた正極前駆体にプレスを施して、正極活物質層の膜厚または嵩密度を調整してもよい。
正極活物質層形成用塗工液の調製方法は、特に制限されるものではないが、好適にはホモディスパー、多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機を用いて行うことができる。良好な分散状態の塗工液を得るためには、塗工液を、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。周速1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解または分散するため好ましい。周速50m/s以下であれば、分散による熱またはせん断力により各種材料が破壊されることなく、再凝集が抑制されるため、好ましい。
塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、粒ゲージで測定した粒度として、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。この範囲の粒度であれば、塗工液の調製時に、材料を破砕することなく、塗工時のノズルの詰まり、塗膜のスジ発生等が抑制され、安定な塗工ができることとなる。
塗工液の粘度(ηb)は、100mPa・s以上10,000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは300mPa・s以上5,000mPa・s以下、さらに好ましくは500mPa・s以上3,000mPa・s以下である。粘度(ηb)が100mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅および厚みが良好に制御できる。また、粘度が10,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく、安定に塗工でき、塗膜厚みの制御が容易となる。
塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅および厚みが良好に制御できる。
正極活物質層の塗膜の形成には、特に制限されるものではないが、好適にはダイコーターまたはコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることができる。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工して形成してもよい。多層塗工の場合には、塗膜各層内の成分の含有量が異なるように塗工液組成を調整してもよい。
正極集電体上に塗膜を塗工する際、多条塗工してもよいし、間欠塗工してもよいし、多条間欠塗工してもよい。
正極集電体の両面に正極活物質層を形成する場合、正極集電体の片面に塗工、乾燥し、その後もう一方の面に塗工、乾燥する逐次塗工を行ってもよいし、正極集電体の両面に同時に塗工液を塗工、乾燥する両面同時塗工を行ってもよい。また、この場合、正極集電体の表面および裏面の正極活物質層の厚みの差は、両者の平均厚みの10%以下であることが好ましい。表面および裏面における正極活物質層の質量比、および膜厚比が1.0に近いほど、一方の面に充放電の負荷が集中することがないため、高負荷充放電サイクル特性が向上する。
正極集電体上に正極活物質層の塗膜を形成した後、その塗膜の乾燥を行う。
正極前駆体の塗膜の乾燥は、好ましくは熱風乾燥、赤外線(IR)乾燥等の適宜の乾燥方法により、好ましくは遠赤外線、近赤外線、または熱風で行なわれる。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的に温度を変えて乾燥させてもよい。複数の乾燥方法を組み合わせて乾燥させてもよい。
乾燥温度は、25℃以上200℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以上180℃以下、さらに好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることが出来る。他方、200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れまたはマイグレーションによる結着剤の偏在、正極集電体または正極活物質層の酸化を抑制できる。
乾燥後の正極活物質層に含まれる水分は、正極活物質層の全質量を100質量%としたときに、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。水分量が0.1質量%以上であれば、過剰な乾燥による結着剤の劣化を抑え、低抵抗化できる。水分量が10質量%以下であれば、アルカリ金属イオンの失活を抑え、高容量化できる。
塗工液の調製にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いた場合、乾燥後の正極活物質層におけるNMPの含有量は、正極活物質層の全質量を100%としたときに、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
正極活物質層に含まれる水分量は、例えばカールフィッシャー滴定法(JIS 0068(2001)「化学製品の水分測定方法」)により測定することができる。
正極活物質層に含まれるNMP量は、25℃環境下、正極活物質層の質量の50~100倍の質量のエタノールに正極活物質層を24時間含浸させてNMPを抽出し、その後GC/MSを測定し、予め作成した検量線に基づいて定量することができる。
正極活物質層のプレスには、好適には、油圧プレス機、真空プレス機、ロールプレス機等の適宜のプレス機を用いることができる。正極活物質層の膜厚、嵩密度および電極強度は、後述するプレス圧力、プレスロール間の隙間、プレス部の表面温度により調整できる。プレス圧力は、0.5kN/cm以上20kN/cm以下であることが好ましく、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。他方、プレス圧力が20kN/cm以下であれば、正極に撓みおよびシワが生じることがなく、正極活物質層を所望の膜厚または嵩密度に調整できる。
プレスにロールプレス機を使用する場合、プレスロール間の隙間としては、正極活物質層が所望の厚みおよび嵩密度となるように、適宜の値を設定できる。
プレス速度は、正極に撓みおよびシワが生じない適宜の速度に設定できる。
プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要によりプレス部を加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用する結着剤の融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくは結着剤の融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは結着剤の融点マイナス30℃以上である。他方、加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、使用する結着剤の融点プラス50℃以下が好ましく、より好ましくは結着剤融点プラス30℃以下、さらに好ましくは結着剤の融点プラス20℃以下である。
例えば、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(融点150℃)を用いる場合、プレス部を90℃以上200℃以下に加温することが好ましく、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下に加熱することである。また、結着剤にスチレン-ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、プレス部を、40℃以上150℃以下に加温することが好ましく、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下に加温することである。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温したときに、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
正極活物質層を多条塗工した場合には、プレスの前にスリットすることが好ましい。多条塗工された正極活物質層をスリットせずに正極のプレスを行うと、正極活物質層が塗工されていない正極集電体部分に過剰の応力が掛かり、皺ができる場合がある。プレス後に、正極活物質層を再度スリットしてもよい。
本実施形態に係る正極活物質層の厚みは、正極集電体の片面当たり10μm以上200μm以下であることが好ましい。正極活物質層の厚みは、より好ましくは片面当たり20μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上100μm以下である。この厚みが10μm以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。他方、この厚みが200μm以下であれば、電極内のイオン拡散抵抗を低く維持することができる。そのため、十分な出力特性が得られるとともに、セル体積を縮小することができ、従ってエネルギー密度を高めることができる。
なお、正極集電体が貫通孔または凹凸を有する場合における正極活物質層の厚みとは、正極集電体の貫通孔または凹凸を有していない部分の片面当たりの厚みの平均値をいう。
<負極>
本発明の負極は、負極集電体と、その片面または両面上に存在する負極活物質層とを有する。
[負極活物質層]
負極活物質層は、負極活物質を含み、これ以外に、必要に応じて、分散剤、導電性フィラー、結着剤等の任意成分を含んでよい。
(負極活物質)
負極活物質は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能な物質を用いることができる。具体的には、炭素材料、チタン酸化物等が例示される。
本実施態様の負極活物質は炭素材料を含み、好ましくは負極活物質の総量に対する炭素材料の含有率が50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。炭素材料の含有率は、100質量%であることができるが、他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、例えば、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下でもよい。炭素材料の含有率の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素材料;易黒鉛化性炭素材料;カーボンナノ粒子;人造黒鉛;天然黒鉛;黒鉛化メソフェーズカーボン小球体を挙げることができる。
本実施形態では、アルカリ金属イオンとしてナトリウムイオンを用いる場合、これらの中でも、負極へのプレドープ量を高める観点から、難黒鉛化性炭素材料が好適に用いられる。
本実施形態では、アルカリ金属イオンとしてカリウムイオンを用いる場合、これらの中でも、負極の抵抗を低くする観点から、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン小球体等から選択される黒鉛質材料1種以上と、
石油系のピッチ、石炭系のピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等の炭素質材料前駆体1種以上と
を共存させた状態で熱処理を行い、黒鉛質材料と炭素質材料前駆体由来の炭素質材料とを複合させた複合炭素材料を用いることが好ましい。
炭素質材料前駆体としては、熱処理により炭素質材料となるものであれば特に制限はないが、石油系のピッチまたは石炭系のピッチが特に好ましい。
熱処理を行う前に、炭素質材料前駆体の融点より高い温度において、黒鉛質材料と炭素質材料前駆体とを混合してもよい。熱処理温度は、使用する炭素質材料前駆体の揮発または熱分解によって発生する成分が炭素質材料となる温度であればよいが、好ましくは400℃以上2,500℃以下、より好ましくは500℃以上2,000℃以下、さらに好ましくは550℃以上1,500℃以下である。熱処理を行う雰囲気は特に制限はないが、非酸化性雰囲気が好ましい。
複合炭素材料のBET比表面積は、好ましくは1m/g以上50m/g以下、より好ましくは1.5m/g以上40m/g以下、さらに好ましくは2m/g以上25m/g以下である。複合炭素材料のBET比表面積が1m/g以上であれば、非水系電解液中のリチウムイオンとの反応サイトを十分に多く確保できるため、高い入出力特性を示すことができる。複合炭素材料のBET比表面積が50m/g以下であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上し、かつ充放電中の非水系電解液の還元分解が抑制されるため、高い高負荷充放電サイクル特性を示すことができる。
複合炭素材料の平均細孔径は、好ましくは1.5nm以上25nm以下、より好ましくは2nm以上22nm以下、さらに好ましくは3nm以上20nm以下、特に好ましくは3.5nm以上18nm以下である。複合炭素材料の平均細孔径が1.5nm以上であれば、非水系電解液中の溶媒和したリチウムイオンのサイズ(約0.9nm~1.2nm)よりも大きい細孔が多いため、複合炭素材料内における溶媒和したリチウムイオンの拡散が良好となり、これを用いた非水系アルカリ金属蓄電素子は高い入出力特性を示すことができる。他方、複合炭素材料の平均細孔径が25nm以下であれば、これを用いた負極活物質層の嵩密度を十分に向上できるため、高いエネルギー密度を示すことができる。
複合炭素材料は、粒子状であってよく、その平均粒子径は、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上8μm以下、さらに好ましくは3μm以上6μm以下である。複合炭素材料の平均粒子径が1μm以上であれば、リチウムイオンの充放電効率を向上できるため、高い高負荷充放電サイクル特性を示すことができる。複合炭素材料の平均粒子径が10μm以下であれば、非水系電解液中のリチウムイオンとの反応サイトが増加するため、高い入出力特性を示すことができる。
複合炭素材料における、黒鉛質材料に対する炭素質材料の質量比率は、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは1.2質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上10質量%以下、よりさらに好ましくは2質量%以上5質量%以下である。炭素質材料の質量比率が1質量%以上であれば、炭素質材料により非水系電解液中のリチウムイオンとの反応サイトを十分に増加でき、かつリチウムイオンの脱溶媒和も容易となるため、高い入出力特性を示すことができる。炭素質材料の質量比率が20質量%以下であれば、炭素質材料と黒鉛質材料との間のリチウムイオンの固体内拡散を良好に保持できるため、高い入出力特性を示すことができ、また、リチウムイオンの充放電効率が向上できるため、高い高負荷充放電サイクル特性を示すことができる。
複合炭素材料の単位質量当たりのアルカリ金属イオンのドープ量は、好ましくは50mAh/g以上700mAh/g以下、より好ましくは70mAh/g以上500mAh/g以下、さらに好ましくは90mAh/g以上400mAh/g以下、よりさらに好ましくは100mAh/g以上350mAh/g以下である。
負極にアルカリ金属イオンをドープすることにより、負極電位が低くなる。従って、アルカリ金属イオンがドープされた複合炭素材料を含む負極を正極と組み合わせた場合には、非水系アルカリ金属蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。そのため、得られる非水系アルカリ金属蓄電素子の容量およびエネルギー密度が高くなる。
複合炭素材料の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が50mAh/g以上であれば、複合炭素材料におけるアルカリ金属イオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもアルカリ金属イオンが良好にドープされるため、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、および耐久性は向上する。
複合炭素材料の単位質量当たりのアルカリ金属イオンのドープ量が700mAh/g以下であれば、アルカリ金属の析出等の副作用が発生し難くなる。
複合炭素材料に用いる黒鉛質材料のBET比表面積は、好ましくは0.5m/g以上80m/g以下、より好ましくは1m/g以上70m/g以下、さらに好ましくは1.5m/g以上60m/g以下である。複合炭素材料に用いる黒鉛質材料のBET比表面積が上記範囲であれば、複合炭素材料のBET比表面積を上述する範囲に調整できる。
複合炭素材料に用いる黒鉛質材料は、粒子状であってよく、その平均粒子径は、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上8μm以下である。複合炭素材料に用いる黒鉛質材料の平均粒子径が1μm以上10μm以下の範囲内であれば、複合炭素材料の平均粒子径を上述する範囲に調整できる。
複合炭素材料の原料として用いる炭素質材料前駆体とは、熱処理することにより、黒鉛質材料に炭素質材料を複合させることができる、固体、液体、または溶剤に溶解可能な有機材料である。この炭素質材料前駆体としては、例えば、ピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、および合成樹脂、例えばフェノール樹脂等を挙げることができる。これらの炭素質材料前駆体の中でも、安価であるピッチを用いることが、製造コスト上、好ましい。ピッチは、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。石油系ピッチとしては、例えば原油の蒸留残査、流動性接触分解残査(デカントオイル等)、サーマルクラッカーに由来するボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタール等が例示される。石炭系ピッチとしては、例えば、コールタールピッチ(CP)等が挙げられる。
負極活物質は、高負荷充放電サイクル特性と出力特性のバランスの観点から、粒子状であることが好ましい。
負極前駆体の負極活物質層における負極活物質の含有割合は、負極活物質層の全質量を位基準として、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。また、この含有割合の上限値は、例えば、100質量%以下、又は100質量%未満でよい。
(負極活物質層中のその他の成分)
負極活物質層中の分散剤、導電性フィラー、および結着剤は、それぞれ、正極活物質層中の分散剤、導電性フィラー、および結着剤として上記に例示したものから適宜選択して使用してよい。
負極活物質層中の分散剤、および結着剤の含有割合は、それぞれ、正極活物質中の分散剤、および結着剤の含有割合として上記した範囲内であってよい。
[負極集電体]
本実施形態に係る負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出、電解質またはイオンとの反応による劣化等が起こらない材料であることが好ましく、例えば金属箔であってよい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施形態に係る非水系アルカリ金属蓄電素子における負極集電体としては、アルミニウムを含むものが好ましく、アルミニウム箔がより好適に用いられる。
負極集電体としての金属箔は、凹凸または貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
負極集電体の厚みは、負極の形状および強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1~100μmである。
[負極の製造]
負極は、負極集電体の片面上または両面上に負極活物質層を有して成る。典型的な態様において負極活物質層は負極集電体に固着している。
負極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、負極活物質を含む各種材料を水または有機溶剤中に分散または溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を負極集電体上の片面または両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより、負極を得ることができる。さらに得られた負極にプレスを施して、負極活物質層の膜厚または嵩密度を調整してもよい。
負極活物質層形成用塗工液の調製、負極集電体上への塗工液の塗工、塗膜の乾燥、およびプレスは、それぞれ、正極前駆体の製造について上述した方法に準じて行うことができる。
負極活物質層の厚みは、好ましくは、負極集電体の片面当たり10μm以上70μm以下であり、より好ましくは15μm以上60μm以下である。この厚みが10μm以上であれば、良好な充放電容量を発現することができる。他方、この厚みが70μm以下であれば、セル体積を縮小することができるから、エネルギー密度を高めることができる。
なお、負極集電体に孔がある場合の負極活物質層の厚みとは、それぞれ、負極集電体の孔を有していない部分の片面当たりの厚みの平均値をいう。
<セパレータ>
正極前駆体および負極は、セパレータを介して積層され、または積層および捲回され、正極前駆体、負極およびセパレータを有する電極積層体または電極捲回体が形成される。
セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、または電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙、ガラス繊維等から形成される織布又は不織布セパレータ、ガラス粒子又はシリカ粒子含有層が基材に積層されたセパレータ等を用いることができる。これらのセパレータの片面または両面に、有機または無機の微粒子からなる膜が積層されていてもよい。また、セパレータの内部に有機または無機の微粒子が含まれていてもよい。
セパレータの厚みは5μm以上35μm以下が好ましい。5μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、35μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
また、有機または無機の微粒子からなる膜の厚みは、1μm以上10μm以下が好ましい。この膜を1μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、この膜を10μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
<外装体>
外装体としては、金属缶、ラミネートフィルム等を使用できる。金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。金属缶は、例えば、角形、丸型、円筒型等の形態でよい。ラミネートフィルムとしては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内装樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロンまたはポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分およびガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内装樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン等が好適に使用できる。
<電解液>
本実施形態における電解液は、非水系電解液である。すなわち、この電解液は、非水溶媒を含む。非水系電解液は、非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上の電解質塩を含有する。すなわち、非水系電解液は、アルカリ金属塩を電解質として含む。非水系電解液に含まれる非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等に代表される環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等に代表される鎖状カーボネートが挙げられる。
上記のような非水溶媒に溶解するアルカリ金属イオンを含む電解質塩としては、例えば、MをNaまたはKとして、MFSI、MTFSI、MBF、MPF、MClO、LiB(C、LiBF(C)等を用いることができる。
電解液における電解質塩濃度は、0.5~2.0mol/Lの範囲内にあることが好ましい。0.5mol/L以上の電解質塩濃度では、アニオンが十分に存在し、非水系アルカリ金属蓄電素子の容量が維持される。一方で、2.0mol/L以下の電解質塩濃度では、塩が電解液中で十分に溶解し、電解液の適切な粘度および伝導度が保たれる。
本実施形態の非水系電解液には、式MCO{式中、Mは、NaまたはKを表す}で示されるアルカリ金属炭酸塩、および式中のMと対応するアルカリ金属イオンが含まれる。アルカリ金属炭酸塩としては、式MCO{式中、Mは、NaまたはKを表す}で示されるアルカリ金属炭酸塩、具体的には、炭酸ナトリウム、または炭酸カリウムから選ばれる1種以上が、好適に用いられる。正極前駆体の正極活物質層にアルカリ金属炭酸塩として炭酸ナトリウム、または炭酸カリウムを含有させた場合、これらのアルカリ金属炭酸塩は徐々に非水系電解液中に溶出してしまう。その結果、正極前駆体中のアルカリ金属炭酸塩の含有量が低下するため、負極へプレドープされるアルカリ金属イオン量が減少するために容量が低下してしまう。また、正極活物質層中に余分な空隙ができてしまうためにエネルギー密度が低下してしまう。そのため、予め炭酸ナトリウム、または炭酸カリウムを非水系電解液に溶解させておき、その後で電極積層体または電極捲回体に該非水系電解液を注液することで、正極前駆体中のアルカリ金属炭酸塩の溶出を抑制することができる。このとき、飽和濃度となるように炭酸ナトリウム、または炭酸カリウムを非水系電解液に溶解させることが好ましい。なお、アルカリ金属炭酸塩として炭酸リチウムを用いた場合には、炭酸リチウムが非水系電解液に溶解しないため、上記課題は考慮する必要がない。このような観点から、本実施形態に係る非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体において、非水系電解液に含まれるアルカリ金属炭酸塩の濃度は、例えば、0.01g/L以上0.20g/L以下でよい。
上記で説明された観点から、本実施形態に係る非水系電解液は、アルカリ金属炭酸塩に加えて、その塩中のアルカリ金属と対応するアルカリ金属イオン、具体的にはナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンも含むことができる。
非水系電解液に含まれるアルカリ金属炭酸塩の総量をA(g)とし、正極前駆体中に含まれるアルカリ金属炭酸塩の総量をB(g)とするとき、A/Bは0.01以上0.30以下であることが好ましく、0.02以上0.24以下であることがより好ましい。A/Bが0.01以上であれば正極前駆体からのアルカリ金属炭酸塩の溶出を抑制できるために蓄電素子を高容量化できる。A/Bが0.30以下であれば非水系電解液中のアルカリ金属炭酸塩が少ないために、高温環境下でのアルカリ金属炭酸塩の分解によるガス発生を抑制することができる。
<<非水系アルカリ金属蓄電素子>>
本実施形態の非水系アルカリ金属蓄電素子は、上記に説明した負極、正極、セパレータ、およびアルカリ金属イオンを含む電解液を有する。
<非水系アルカリ金属蓄電素子の製造方法>
本実施形態に係る非水系アルカリ金属蓄電素子の製造方法の一例は、以下の工程:
(1)炭素材料を含む正極活物質と、式MCO{式中、Mは、NaまたはKを表す}で示されるアルカリ金属炭酸塩とを含む正極前駆体、負極、およびセパレータから成る電極体を外装体に収納する工程、
(2)アルカリ金属炭酸塩、およびアルカリ金属イオンを含有する電解質を含む非水系電解液を外装体内に注入して、非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体を作製する工程、並びに
(3)正極前駆体と負極との間に電圧を印加して、アルカリ金属炭酸塩を分解する工程
を、工程(1)、(2)、(3)の順で含んでよい。
工程(1)~(3)を含む非水系アルカリ金属蓄電素子の製造方法は、非水系アルカリ金属蓄電素子及びその前駆体について上述された部材、材料、条件などを用いて行われることができる。工程(1)は、電極体を作製するための組立工程、及び電極体を外装体に収納する収納工程を伴ってよい。工程(2)は、所望により、外装体内への電解液の注液工程に加えて、電極体を非水系電解液に含浸する含浸工程、外装体の封止工程などを含んでよい。工程(3)は、負極活物質層にアルカリ金属イオンをプレドープするアルカリ金属ドープ工程、ガス抜き工程などを含んでよい。所望により、工程(3)後に、エージング工程、更なるガス抜き工程などを行なってよい。
[組立工程 電極体の作製]
一実施形態の組立工程では、例えば、枚葉の形状にカットした正極前駆体および負極を、セパレータを介して積層して成る積層体に、正極端子および負極端子を接続して、電極積層体を作製する。別の実施形態では、正極前駆体および負極を、セパレータを介して積層および捲回した捲回体に正極端子および負極端子を接続して、電極捲回体を作製してもよい。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子および負極端子の接続の方法は特に限定されないが、抵抗溶接、超音波溶接等の方法を用いることができる。
端子を接続した電極体(電極積層体、または電極捲回体)を乾燥して、残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法は限定されないが、真空乾燥等により乾燥することができる。残存溶媒は、正極活物質層または負極活物質層の合計質量当たり、1.5質量%以下であることが好ましい。残存溶媒が1.5質量%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性を悪化させるため好ましくない。
乾燥した電極体は、好ましくは露点-40℃以下のドライ環境下にて、金属缶またはラミネートフィルムに代表される外装体の中に収納し、非水系電解液を注液するための開口部を1方だけ残して封止することが好ましい。露点が-40℃より高いと、電極体に水分が付着してしまい、系内に水が残存し、自己放電特性を悪化させるため好ましくない。外装体の封止方法は特に限定されないが、ヒートシール、インパルスシール等の方法を用いることができる。
[注液、含浸、封止工程]
組立工程後に、外装体の中に収納された電極体に、非水系電解液を注液する。注液工程のために、上記で説明されたアルカリ金属炭酸塩と、その塩中のアルカリ金属元素と対応するアルカリ金属イオンを含有する電解質とを含む非水系電解液を提供することが好ましい。また、正極前駆体中のアルカリ金属炭酸塩の溶出を抑制するという観点から、アルカリ金属炭酸塩の飽和濃度電解液を提供することも好ましい。非水系電解液に含まれるアルカリ金属炭酸塩の飽和濃度は、特に限定されず、例えば、0.01g/L以上0.20g/L以下でよい。飽和濃度電解液は、例えば、電解質を含む非水溶媒に対して、アルカリ金属炭酸塩を過剰量で加えることにより調製されることができる。
注液後に、さらに含浸を行い、正極又はその前駆体、負極、およびセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが好ましい。正極又はその前駆体、負極、およびセパレータのうちの少なくとも一部に電解液が浸っていない状態では、後述するアルカリ金属ドープ工程において、アルカリ金属ドープが不均一に進むため、得られる非水系アルカリ金属蓄電素子の抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後の電極体を、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸後に、外装体が開口した状態の電極体を減圧しながら封止することで密閉することができる。
[アルカリ金属ドープ工程]
アルカリ金属ドープ工程では、正極前駆体と負極との間に電圧を印加して、正極前駆体中に好ましく含まれるアルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ金属化合物を分解して、アルカリ金属イオンを放出し、負極でアルカリ金属イオンを還元することにより、負極活物質層にアルカリ金属イオンをプレドープすることが好ましい。
アルカリ金属ドープ工程において、正極前駆体中のアルカリ金属化合物の酸化分解に伴い、CO等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;等を挙げることができる。
[エージング工程]
アルカリ金属ドープ工程後に、電極体にエージングを行うことが好ましい。エージング工程では、電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にアルカリ金属イオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば高温環境下で電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
[ガス抜き工程]
エージング工程後に、さらにガス抜きを行い、電解液、正極、および負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。電解液、正極、および負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系アルカリ金属蓄電素子の抵抗が上昇してしまう。
ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、外装体を開口した状態で電極体を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。ガス抜き後、外装体をシールすることにより外装体を密閉し、非水系アルカリ金属蓄電素子を作製することができる。
<アルカリ金属炭酸塩の定量方法>
正極前駆体中に含まれるアルカリ金属炭酸塩の定量方法を以下に記載する。正極前駆体を有機溶媒で洗浄し、その後蒸留水で洗浄し、蒸留水での洗浄前後の正極前駆体の重量変化からアルカリ金属炭酸塩を定量することができる。測定する正極前駆体の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5cm以上200cm以下であることが好ましく、更に好ましくは25cm以上150cm以下である。面積が5cm以上あれば測定の再現性が確保される。面積が200cm以下であればサンプルの取扱い性に優れる。有機溶媒による洗浄については正極表面に堆積した電解液分解物を除去できれば良いため、有機溶媒は特に限定されないが、アルカリ金属炭酸塩の溶解度が0.1g/L以下である有機溶媒を用いることでアルカリ金属炭酸塩の溶出が抑制されるため好ましい。例えば1,2-ジメトキシエタン(DME)等の極性溶媒が好適に用いられる。
正極前駆体の洗浄方法は、正極前駆体の重量に対し10~20倍のDME溶液に正極前駆体を3時間以上十分に浸漬させる。この時、DMEが揮発しないよう容器に蓋をするなどの対策を施すことが好ましい。その後正極前駆体をDMEから取り出し、真空乾燥(温度:100~200℃、圧力:0~100kPa、時間:1~20時間の範囲で正極前駆体中のDMEの残存量が1質量%以下になる条件とする。DMEの残存量については、後述する蒸留水洗浄後の水のGC/MSを測定し、予め作成した検量線を基に定量することができる。)し、その時の正極前駆体の重量をM(g)とする。続いて、正極前駆体の重量の100倍(100M(g))の蒸留水に正極を3時間以上十分に浸漬させる。この時、蒸留水が揮発しないよう容器に蓋をする等の対策を施すことが好ましい。3時間以上浸漬させた後、蒸留水から正極前駆体を取り出し、前記のDME洗浄と同様に真空乾燥する。この時の正極前駆体の重量をM(g)とし、続いて、得られた正極前駆体の集電体の重量を測定するため、スパチュラ、ブラシ、刷毛等を用いて集電体上の正極活物質層を取り除く。得られた正極集電体の重量をM(g)とすると、正極前駆体中に含まれるアルカリ金属炭酸塩の質量%であるZは、下記(1)式にて算出できる。
Z=100×[1-(M-M)/(M-M)] (1)
以下、実施例および比較例を示して本発明の実施形態を具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例および比較例により、何ら限定されるものではない。
<実施例1>
<正極活物質の調製>
破砕されたヤシ殻炭化物を小型炭化炉内へ入れ、窒素雰囲気下、500℃で3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、予熱炉で加温した水蒸気を1kg/hで賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間掛けて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた賦活された活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りし、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した。その後に、乾燥された活性炭に対してボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD-2000J)を用いて、活性炭1の平均粒子径を測定した結果、5.5μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB-1 AS-1-MP)を用いて、活性炭1の細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2360m/g、メソ孔量(V)が0.52cm/g、マイクロ孔量(V)が0.88cm/g、V/V=0.59であった。
<正極前駆体の製造例1>
活性炭1を57.5質量%、炭酸カリウム(KCO)を23.5質量%、カーボンブラック(CB)を5.0質量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を12.0質量%、およびPVP(ポリビニルピロリドン)を2.0質量部、ならびに分散溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を混合して正極塗工液1を得た。
ドクターブレードを用いて、厚さ15μmのアルミニウム箔の片面に正極塗工液1をブレードギャップ100μmで塗工し、180℃で12時間真空乾燥することにより、正極前駆体1を得た。
得られた正極前駆体1の全厚を任意の10か所で測定し、その平均値からアルミニウム箔の膜厚を減じて正極活物質層の膜厚を求めたところ、正極前駆体1の正極活物質層の膜厚は、50μmであった。また、正極前駆体1の正極活物質嵩密度と目付を表1に示す。
<非水系電解液に対するアルカリ金属炭酸塩の溶解度の算出>
KPFを0.8mol/Lの濃度となるようにエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比1:1の混合溶媒に溶解し、非水系電解液1を得た。上記にて作製した正極前駆体1を直径16mmの円形に打ち抜き、1.0mLの非水系電解液1に浸漬し、25℃環境下で3時間静置した。その後、1,2-ジメトキシエタン(DME)を用いて正極前駆体1を洗浄し、XRF(蛍光X線分析)を用いて正極前駆体1に残存した炭酸カリウムをカリウムのKα線強度から測定した(図1)。続いて、図2に示す検量線を用いて炭酸カリウムを定量した。図示される検量線は、正極前駆体1の他に、正極前駆体1に含まれる炭酸カリウムの全量を1として、0.64、0.21、0.13、および0.04となるように炭酸カリウムの混合量が異なる正極前駆体を4種作製し、それぞれの正極前駆体についてXRFを用いたカリウムのKα線強度を測定した結果から作成した。以上より、25℃環境下での炭酸カリウムの非水系電解液1への溶解度は0.02g/L(0.14mmol/L)であると算出した。
同様に45℃環境下での非水系電解液1への炭酸カリウムの溶解度を0.15g/L(1.09mmol/L)と算出し、45℃の非水系電解液1への浸漬処理後のXRFを、上記25℃の非水系電解液1への浸漬処理後のXRF、浸漬処理前のXRF、及び炭酸カリウム粉末のXRFと共に図1に示した。
<負極の製造例1>
市販の天然黒鉛(SECカーボン株式会社製、SNO3)を90.0質量%、カルボキシメチルセルロース(略称CMC,ダイセルミライズ株式会社製、品番2200)を10.0質量部、ならびに蒸留水を混合して負極塗工液を得た。厚さ15μmのアルミニウム箔の片面に、ドクターブレードを用いて負極塗工液を塗工し、ホットプレートを用いて乾燥して、負極1を作製した。負極1の目付は8.0g/m、活物質層嵩密度は0.9g/cmであった。
<負極1の電気化学特性>
負極1を直径16mmの円形に打ち抜き、150℃で12時間真空乾燥した。真空乾燥後の負極1を作用極とし、対極にカリウム金属、セパレータとしてガラスフィルターを用いてコインセルを組み立て、非水系電解液1を1.0cm注液してコインセルを作製した。作製したコインセルに対し、25℃環境下、電流密度を20mAh/g、上限電圧を2.0V、下限電圧を0.0Vとして定電流充放電試験を行った。製造例1の黒鉛負極に対するカリウムイオンの初回の充電容量は320mAh/gであり、放電容量は276mAh/gであり、2サイクル目以降も安定して充放電ができることを確認した。定電流充放電試験の結果を図3に示す。
<非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体の作製>
アルゴンガス雰囲気下、非水系電解液1を100cm採取し、炭酸カリウムを50mg加え、45℃に加温しながら3時間攪拌した後、上澄み液を採取して非水系電解液2を得た。
正極前駆体1を直径16mmの円形に打ち抜き、180℃で12時間真空乾燥した。負極1を直径16mmの円形に打ち抜き、150℃で12時間真空乾燥した。セパレータとしてガラスフィルターを用い、正極前駆体1および負極1を対向させてコインセルを組み立てた。非水系電解液2をコインセルに1.0cm注液して非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体1を作製した。
<非水系アルカリ金属蓄電素子の作製>
非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体1について、温度45℃、電流値0.5mA/cmで電圧4.55Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.55V定電圧充電を合計3時間継続する手法により、負極1にアルカリ金属ドープを行い、非水系アルカリ金属蓄電素子1を作製した。
<非水系アルカリ金属蓄電素子の評価>
得られた非水系アルカリ金属蓄電素子1について、温度25℃、電流値0.2mA/cm、上限電圧4.0V、下限電圧2.0Vとして定電流充放電試験を行った。試験結果を表1に示す。
<実施例2~4、比較例1~4>
各成分の使用量を表1に記載のとおりになるように調整した他は、<正極前駆体の製造例1>と同様にして、正極前駆体2~6を製造した。なお表1中、活性炭嵩密度とは活物質層嵩密度に活性炭1の組成比を乗じて算出した値である。
Figure 2022086445000002
表2に記載の正極前駆体と非水系電解液のセットを用いた以外は、実施例1と同様の方法で非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体を作製し、実施例1と同様の条件で負極1にアルカリ金属ドープを行い、非水系アルカリ金属蓄電素子を作製し、定電流充放電試験を行った。なお、表2中、正極エネルギー密度とは、非水系アルカリ金属蓄電素子に対し、放電容量を正極の活物質層の体積(正極前駆体の面積2.01cm、および正極前駆体1~6のそれぞれの膜厚から算出される値)で除して算出した値である。
Figure 2022086445000003
表1より、正極前駆体中のアルカリ金属炭酸塩の混合比率が高まると、活物質層嵩密度が上昇するが、活性炭嵩密度が低下する。一方、表1および表2より、正極前駆体中のアルカリ金属の混合比率が高まると負極へのアルカリ金属イオンのプレドープ量が高まるために高容量化できる。正極前駆体中のアルカリ金属炭酸塩が20質量%以上28質量%以下の場合に、活性炭嵩密度を高め、負極へのアルカリ金属イオンのプレドープ量を高めることができるため、正極エネルギー密度を高めることができる。また、予め非水系電解液にアルカリ金属炭酸塩を溶解させることで、正極前駆体からのアルカリ金属炭酸塩の溶出を抑制することができ、負極へのアルカリ金属イオンのプレドープ量が高まり、高容量化できる。
<実施例5>
NaPFを1.0mol/Lの濃度となるようにECとPCの体積比1:1の混合溶媒に溶解し、非水系電解液3を得た。5cmの非水系電解液3に炭酸ナトリウム10mgを加えて攪拌し、一部の炭酸ナトリウムが溶解することを確認した。
以上の結果より、アルカリ金属炭酸塩として炭酸ナトリウムを用いた場合においても、非水系電解液中へのアルカリ金属炭酸塩の溶出を考慮する必要があり、予め非水系電解液にアルカリ金属炭酸塩を溶解させることにより、正極エネルギー密度を高めることができると考えられる。
本発明の非水系アルカリ金属蓄電素子は、高温高電圧環境下での高い耐久性が求められる自動車のハイブリット駆動システムの電力回生システム、太陽光発電や風力発電等の自然発電やマイクログリッド等における電力負荷平準化システム、工場の生産設備等における無停電電源システム、マイクロ波送電や電解共鳴等の電圧変動の平準化及びエネルギーの蓄電を目的とした非接触給電システム、振動発電等で発電した電力の利用を目的としたエナジーハーベストシステムに用いられる非水系アルカリ金属蓄電素子として好適に利用できる。該非水系アルカリ金属蓄電素子は、例えば、複数個の非水系アルカリ金属蓄電素子を直列、又は並列に接続して蓄電モジュールを作ることができる。本発明の非水系アルカリ金属蓄電素子は、カリウムイオンキャパシタまたはナトリウムイオンキャパシタとして適用したときに、本発明の効果が最大限に発揮されるため、好ましい。

Claims (5)

  1. 正極活物質として炭素材料を含む正極前駆体と、負極活物質を含む負極と、セパレータと、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンを含む非水系電解液とを有する非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体であって、
    前記正極前駆体は、アルミニウムを含む正極集電体と、前記正極集電体の片面または両面上に設けられた、前記正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
    前記負極は、アルミニウムを含む負極集電体と、前記負極集電体の片面または両面上に設けられた、前記負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
    前記正極前駆体および前記非水系電解液は、式MCO{式中、Mは、NaまたはKを表す}で示されるアルカリ金属炭酸塩を含み、
    前記正極前駆体の前記正極活物質層に含まれる前記アルカリ金属炭酸塩の含有量が、20.0質量%以上28.0質量%以下である非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体。
  2. 前記非水系電解液は、前記アルカリ金属炭酸塩の飽和濃度電解液である、請求項1に記載の非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体。
  3. 前記非水系電解液に含まれる前記アルカリ金属炭酸塩の濃度が、0.01g/L以上0.20g/L以下である、請求項1または2に記載の非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体。
  4. (1)炭素材料を含む正極活物質と、式MCO{式中、Mは、NaまたはKを表す}で示されるアルカリ金属炭酸塩とを含む正極前駆体、負極、およびセパレータから成る電極積層体を外装体に収納する工程、
    (2)前記外装体内に、前記アルカリ金属炭酸塩、およびアルカリ金属イオンを含有する電解質を含む非水系電解液を注入して、非水系アルカリ金属蓄電素子前駆体を作製する工程、並びに
    (3)前記正極前駆体と前記負極との間に電圧を印加して、前記アルカリ金属炭酸塩を分解する工程
    を、上記に記載の順で含む非水系アルカリ金属蓄電素子の製造方法。
  5. 前記非水系電解液が、前記アルカリ金属炭酸塩の飽和濃度電解液である、請求項4に記載の非水系アルカリ金属蓄電素子の製造方法。
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