JP2022080888A - 樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度が強く、燃焼後残渣の強度が高く、燃焼後の残渣が自重で崩れ落ちにくい成形体、およびその成形体を成形可能な樹脂組成物を提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と、屈伏点が300℃~700℃の範囲にある無機物(D)と、無機繊維(E)とを含む樹脂組成物であり、前記樹脂組成物の燃焼残渣が、本質的に、前記無機物(D)および前記無機繊維(E)の合計となる樹脂組成物。前記無機繊維(E)はガラス繊維であることが好ましい。【選択図】なし
Description
本開示は、樹脂組成物およびその成形体に関する。より具体的には、電気自動車等のバッテリー式電動輸送機器のバッテリーモジュール筐体部品または周辺部品用途に適する樹脂組成物およびその成形体に関する。
電気自動車等のバッテリーケースは、強度および靭性が優れる点で、主にアルミニウムまたはスチール等の金属で形成されている。しかしながら、金属で形成されたバッテリーケースは、重く腐食し易い。このため、軽量化および耐蝕性のある材料で形成できることが求められている。
金属以外の組成物で形成されたバッテリーケースとして、例えば、特許文献1に自己消火性樹脂成形体が開示されている。自己消火性樹脂成形体は、(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)リン系難燃剤、および(C)ガラス繊維を含む樹脂組成物から得られる。
バッテリーケースの樹脂成形体は、強度が強く、難燃性に優れることはもとより、燃焼後の残渣の強度も高いことが求められる。例えば、燃焼後の残渣の強度が低い場合、燃焼後の残渣が自重で崩れ落ちる。崩れ落ちたバッテリーケースの残渣は、バッテリーケースの内部に存在する電池に接触する場合がある。バッテリーケースの残渣が電池に接触すると、バッテリーケース外部の熱が残渣を介して電池に伝わり、電池が熱で爆発するおそれがある。また、周辺部品においては、難燃性が必要ないものもあるが、トラブル発生時に高温ガスが発生し高温ガスに晒された後にも、形状を保持し、内部部品を保護、例えば露出させない、他部品等と接触させないといった機能が必要なものもある。
従って、本開示の目的は、強度が強く、燃焼後残渣の強度が高く、燃焼後の残渣が自重で崩れ落ちにくい成形体およびその成形体を成形可能な樹脂組成物を提供することにある。
本開示に係る発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂(A)と屈伏点が300℃~700℃の範囲にある無機物(D)と無機繊維(E)とを含む樹脂組成物で、樹脂組成物の燃焼残差が、本質的に、無機物(D)および無機繊維(E)の合計となる樹脂組成物が、燃焼後残渣の強度が高く、燃焼後の残渣が自重で崩れ落ちにくいことを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものである。また、熱可塑性樹脂(A)と、臭素系難燃剤(B)と、アンチモン系難燃助剤(C)と、屈伏点が300℃~700℃の範囲にある無機物(D)と、無機繊維(E)としてのガラス繊維とを含む難燃性樹脂組成物から得られる成形体は、強度が強く、難燃性に優れかつ燃焼後残渣の強度が高く、燃焼後の残渣が自重で崩れ落ちにくいことを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
すなわち、本開示は、熱可塑性樹脂(A)と屈伏点が300℃~700℃の範囲にある無機物(D)と無機繊維(E)とを含む樹脂組成物で、樹脂組成物の燃焼残渣が、本質的に、無機物(D)および無機繊維(E)の合計となる樹脂組成物を提供する。
上記無機繊維(E)はガラス繊維であることが好ましい。
また、本開示は、熱可塑性樹脂(A)と、臭素系難燃剤(B)と、アンチモン系難燃助剤(C)と、屈伏点が300℃~700℃の範囲にある無機物(D)と、無機繊維(E)としてのガラス繊維を含む難燃性樹脂組成物を提供する。
上記臭素系難燃剤(B)の含有量は、上記熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して10~60重量部であることが好ましい。
上記アンチモン系難燃助剤(C)の含有量は、上記熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して5~30重量部であることが好ましい。
上記無機物(D)はフリットであることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂(A)はポリオレフィンであることが好ましい。
上記無機物(D)の含有量は上記難燃性樹脂組成物中0.5~40重量%であることが好ましい。
上記無機繊維(E)の含有量は上記難燃性樹脂組成物中5~60重量%であることが好ましい。
上記無機繊維(E)はEガラスであることが好ましい。
また、本開示は、上記樹脂組成物の成形体を提供する。
本開示の樹脂組成物からなる成形体は、強度が強く、燃焼後残渣の強度が高く、燃焼後の残渣が自重で崩れ落ちにくい。また、本開示の難燃性樹脂組成物からなる成形体は、さらに難燃性にも優れる。
以下に、本開示の実施の形態を詳細に説明する。
[樹脂組成物]
本開示の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、無機物(D)と、ガラス繊維(E)とを含む。また、本開示の樹脂組成物は、さらに、難燃剤を含む難燃性樹脂組成物であってもよい。難燃性樹脂組成物は、成形体を形成した際に難燃性を有する。本開示の樹脂組成物は、上記成分以外にも他の成分を含んでいてもよい。
本開示の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、無機物(D)と、ガラス繊維(E)とを含む。また、本開示の樹脂組成物は、さらに、難燃剤を含む難燃性樹脂組成物であってもよい。難燃性樹脂組成物は、成形体を形成した際に難燃性を有する。本開示の樹脂組成物は、上記成分以外にも他の成分を含んでいてもよい。
本開示の樹脂組成物の燃焼残渣は、本質的に、無機物(D)および無機繊維(E)の合計となる。これにより、燃焼後残渣の強度が高く、燃焼後の残渣が自重で崩れ落ちにくい。なお、樹脂組成物の燃焼残渣が本質的に無機物(D)および無機繊維(E)の合計となることは、例えば、上記樹脂組成物の成形体を、ISO5660-1に準拠した燃焼試験行って得られる燃焼後の残渣において、本質的に無機物(D)および無機繊維(E)からなることをいう。例えば、上記燃焼試験後の重量を測定し、上記樹脂組成物中の無機物(D)および無機繊維(E)の合計重量(x)に対する、上記燃焼後の重量(y)の割合[y/x×100]が、110重量%以下であることが好ましく、より好ましくは100重量%以下、さらに好ましくは98重量%以下である。前記割合の下限値は、例えば50重量%である。
<熱可塑性樹脂(A)>
樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、スチレン系樹脂;低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;芳香族ポリエステル樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂;ビニル系樹脂;ポリアセタール樹脂;芳香族および脂肪族ポリケトン樹脂;熱可塑性澱粉樹脂;MS樹脂;芳香族ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリ-4-メチルペンテン-1等が挙げられる。熱可塑性樹脂(A)としては、中でも、軽量化、コスト、耐熱性、耐水性、および耐薬品性の面から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、スチレン系樹脂;低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;芳香族ポリエステル樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂;ビニル系樹脂;ポリアセタール樹脂;芳香族および脂肪族ポリケトン樹脂;熱可塑性澱粉樹脂;MS樹脂;芳香族ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリ-4-メチルペンテン-1等が挙げられる。熱可塑性樹脂(A)としては、中でも、軽量化、コスト、耐熱性、耐水性、および耐薬品性の面から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ブテン共重合体、環状オレフィン系樹脂、エチレン-ヘキセン共重合体等が挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂は、単独で使用してもよく、または二種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリオレフィン系樹脂としては、中でも、軽量化、コスト、耐熱性、耐水性、および耐薬品性面から、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)であってもよく、プロピレンと他の共重合性単量体との共重合体であってもよい。他の共重合性単量体としては、例えば、オレフィン系単量体(例えば、エチレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン等のC2-20鎖状α-オレフィン、環状オレフィン等)、ビニルエステル系単量体(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、(メタ)アクリル系単量体[例えば、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル系モノマー等]、ジエン系単量体(例えば、ブタジエン等)、不飽和多価カルボン酸またはその酸無水物(例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸またはその酸無水物等)、イミド系単量体[例えば、マレイミド、N-アルキルマレイミド(例えば、N-C1-4アルキルマレイミド等)等のN-置換マレイミド]等が挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
より詳細な幾つかの例においては、ポリプロピレン系樹脂としては、単独重合体であるホモポリプロピレンの他、共重合体として、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体等のプロピレン含有量が80重量%以上のプロピレン-C2-20鎖状α-オレフィン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体等)等が挙げられる。例えば、ポリプロピレン系樹脂はホモポリプロピレン、プロピレン-C2-20鎖状α-オレフィン共重合体(特に、プロピレン-エチレン共重合体)(ランダム共重合体、ブロック共重合体等)が好ましい。これらのポリプロピレン系樹脂は、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱可塑性樹脂(A)としてポリオレフィン系樹脂を使用するときは、ガラス繊維(E)に含浸させやすくするため、無変性のポリオレフィン系樹脂と酸変性ポリオレフィンとを併用することが好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、マレイン酸変性ポリオレフィン(マレイン酸変性ポリプロピレン)、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(無水マレイン酸変性ポリオレフィン)等が好ましい。
上記無変性のポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。上記酸変性ポリオレフィンとしては、酸変性ポリプロピレンが好ましい。
熱可塑性樹脂(A)中の上記無変性のポリオレフィン系樹脂の含有割合は、60~99.5重量%が好ましく、より好ましくは80~99重量%、さらに好ましくは90~98重量%である。熱可塑性樹脂(A)中の上記酸変性のポリオレフィン系樹脂の含有割合は、0.5~40重量%が好ましく、より好ましくは1~20重量%、さらに好ましくは2~10重量%である。
熱可塑性樹脂(A)として酸変性ポリオレフィンを併用するとき、熱可塑性樹脂(A)中の酸量(酸変性ポリオレフィンに含まれる酸の熱可塑性樹脂(A)中の量)が、無水マレイン酸換算で平均0.005~0.5重量%の範囲になるように配合することが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂(A)がホモポリプロピレンおよび酸変性ポリプロピレンからなる場合、酸変性ポリプロピレンの含有量は、熱可塑性樹脂(A)全量100重量%に対して0.5~10重量%であることが好ましく、より好ましくは1~7重量%、さらに好ましくは2~4重量%である。
難燃性樹脂組成物は、難燃剤を含有する。難燃性樹脂組成物に含まれる難燃剤は、例えば公知の有機系または無機系の難燃剤等が挙げられる。有機系難燃剤としては、以下に示すような臭素系難燃剤(B)が好ましい。また、難燃剤に難燃助剤を組み合わせてもよい。難燃助剤としては、アンチモン系難燃助剤(C)が好ましい。臭素系難燃剤(B)とアンチモン系難燃助剤(C)と無機物(D)とを組み合わせることにより、難燃性樹脂組成物からなる成形体が加熱された場合に、難燃性に優れながら、燃焼後残渣の強度が高く、燃焼後の残渣が自重で崩れ落ちることを抑制できる。
<臭素系難燃剤(B)>
臭素系難燃剤(B)としては、具体的には、2,2-ビス〔3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル〕プロパン等の臭素化ビスフェノールA誘導体、ビス(3,5-ジブロモ,4-ジブロモプロピルオキシフェニル)スルホン等の臭素化ビスフェノールS誘導体、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の臭素化イソシアヌレート誘導体、デカブロモフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェニル)アルカン、エタン-1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス臭素化フタルイミド、トリフェニルホスフェート、トリクレジホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリス(臭素化ネオペンチル)ホスフェート、臭素化ポリスチレン等が挙げられる。なお、臭素系難燃剤(B)は、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
臭素系難燃剤(B)としては、具体的には、2,2-ビス〔3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル〕プロパン等の臭素化ビスフェノールA誘導体、ビス(3,5-ジブロモ,4-ジブロモプロピルオキシフェニル)スルホン等の臭素化ビスフェノールS誘導体、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の臭素化イソシアヌレート誘導体、デカブロモフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェニル)アルカン、エタン-1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス臭素化フタルイミド、トリフェニルホスフェート、トリクレジホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリス(臭素化ネオペンチル)ホスフェート、臭素化ポリスチレン等が挙げられる。なお、臭素系難燃剤(B)は、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
臭素系難燃剤(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して10~60重量部であることが好ましく、より好ましくは20~50重量部、さらに好ましくは40~50重量部である。臭素系難燃剤(B)の含有量が熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して10~60重量部であると、難燃性樹脂組成物に対して十分な難燃効果が得られる。
<アンチモン系難燃助剤(C)>
アンチモン系難燃助剤(C)は、具体的には、三酸化アンチモン、三酸化二アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。なお、アンチモン系難燃助剤(C)は、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
アンチモン系難燃助剤(C)は、具体的には、三酸化アンチモン、三酸化二アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。なお、アンチモン系難燃助剤(C)は、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
アンチモン系難燃助剤(C)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して5~30重量部であることが好ましく、より好ましくは7~25重量部、さらに好ましくは10~20重量部である。アンチモン系難燃助剤(C)の含有量が熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して5~30重量部であると、難燃性樹脂組成物に対して十分な難燃効果が得られる。
<無機物(D)>
樹脂組成物に含まれる無機物(D)の屈伏点(1010dPa・sの粘度に相当する温度)は、300℃~700℃である。無機物(D)の屈伏点は、より好ましくは300℃~650℃であり、さらに好ましくは300℃~600℃である。
樹脂組成物に含まれる無機物(D)の屈伏点(1010dPa・sの粘度に相当する温度)は、300℃~700℃である。無機物(D)の屈伏点は、より好ましくは300℃~650℃であり、さらに好ましくは300℃~600℃である。
無機物(D)の屈伏点が300℃以上であれば、樹脂組成物からなる成形体の形成時において、樹脂組成物中の無機物(D)は軟化・流動することを比較的抑制できる。このため、無機物(D)は固体状態のまま混合されて比較的均一に、無機繊維(E)の間に入り込むことができる。
無機物(D)の屈伏点が700℃以下であれば、無機物(D)は比較的低温で加熱された場合でも、軟化・流動する。このため、樹脂組成物からなる成形体が加熱された場合において、無機物(D)は無機繊維(E)の間に広がり易く、無機繊維(E)同士を接着することができる。このように、無機物(D)は比較的低温でも成形体全体に膜状に広がることができる。従って、無機物(D)は、樹脂組成物からなる成形体に高い耐熱性や強度を付与することができる。このため、樹脂組成物からなる成形体は、燃焼後残渣の強度が高く、燃焼後の残渣が自重で崩れ落ちることを抑制できる。
屈伏点が300℃~700℃の範囲にある無機物(D)は、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。このような無機物(D)は、好ましくはフリットが挙げられる。
フリットは、ガラスを適度な大きさに粉砕した粉末ガラスを示す。フリットとしては、好ましくはガラスフリットが挙げられる。ガラスフリットとしては、リン酸塩系ガラスフリット、ホウ珪酸塩系ガラスフリット、ビスマス系ガラスフリットなどが挙げられる。
フリットは、加熱により軟化・流動する。フリットは軟化・流動した後、結晶化させることもできる。例えば、フリットが加熱されることにより樹脂組成物に含まれる無機繊維(E)の間を接合する場合、無機繊維(E)同士の形状を維持できる。従って、無機物(D)がフリットであると、無機物(D)は樹脂組成物からなる成形体が高熱に晒された場合であっても、高い耐熱性や強度を付与することができる。
無機物(D)は、いわゆる低融点ガラスであることが好ましい。無機物(D)としては、例えば低融点ガラスからなるフリットが挙げられる。低融点ガラスからなるガラスフリットは、比較的低温で加熱された場合でも、軟化・流動させることができる。
低融点ガラスからなるフリットの具体的な市販品としては、例えば、製品名「807フリット」(ホウケイ酸ガラス,Na2O,Al2O3、屈伏点:577℃、宮脇グレイズ工業(株)製)が挙げられる。
無機物(D)の平均粒子径は、好ましくは1μm~1000μmであり、より好ましくは5μm~500μmであり、さらに好ましくは10μm~100μmである。無機物(D)の平均粒子径が1μm~1000μmの場合、樹脂組成物からなる成形体が加熱されると、無機物(D)を比較的低温で軟化・流動させることができる。これにより、樹脂組成物からなる成形体に高い耐熱性や強度を付与することができる。上記平均粒子径はレーザー回折・散乱法で測定した粒度分布における積算値50%での粒径(メディアン径)である。
無機物(D)の含有量は、樹脂組成物(100重量%)中、0.5~40重量%であることが好ましく、より好ましくは1~30重量%、さらに好ましくは1.5~25重量%、さらに好ましくは2.5~20重量%、特に好ましくは7.5~15重量%である。無機物(D)の含有量が樹脂組成物中0.5重量%以上であると、樹脂組成物からなる成形体が高熱に晒された場合であっても、成形体の残渣に対して十分な強度を付与することができる。無機物(D)の含有量が樹脂組成物中40重量%以下であると、樹脂組成物からなる成形体が高熱に晒された場合、無機物(D)が軟化・流動し過ぎるのを抑制でき、樹脂組成物における無機物(D)以外の他の組成物(例えば、無機繊維(E)等)により、成形体の残渣の形状を維持できる。
<無機繊維(E)>
無機繊維(E)は、一般的に耐熱性や強度に優れる。このため、無機繊維(E)を含む性樹脂組成物からなる成形体に耐熱性や強度を付与することができる。無機繊維としては、ガラス繊維、バサルト繊維、炭素繊維、含水ケイ酸マグネシウム繊維、アルミナ繊維や、ウオラストナイト、チタン酸カリウイスカー等の針状結晶フイラー等が挙げられる。このなかでも特にガラス繊維が好ましい。
無機繊維(E)は、一般的に耐熱性や強度に優れる。このため、無機繊維(E)を含む性樹脂組成物からなる成形体に耐熱性や強度を付与することができる。無機繊維としては、ガラス繊維、バサルト繊維、炭素繊維、含水ケイ酸マグネシウム繊維、アルミナ繊維や、ウオラストナイト、チタン酸カリウイスカー等の針状結晶フイラー等が挙げられる。このなかでも特にガラス繊維が好ましい。
無機繊維(E)は、屈伏点が700℃より高いことが好ましく、より好ましくは720℃以上であり、さらに好ましくは750℃以上である。無機繊維(E)の屈伏点が700℃より高いと、樹脂組成物からなる成形体が高熱に晒されて無機物(D)が軟化・流動しても、無機繊維(E)の変形は無機物(D)と比べて抑制される。従って、樹脂組成物からなる成形体が高熱に晒された場合であっても、成形体の形状を維持できる。
無機繊維(E)の軟化点(107.5dPa・sの粘度に相当する温度)は、750℃以上が好ましく、より好ましくは800℃以上であり、さらに好ましくは830℃以上である。ガラス繊維(E)の軟化点が750℃以上であると、樹脂組成物からなる成形体が高熱に晒されて無機物(D)が軟化・流動するような場合であっても、無機繊維(E)の変形は無機物(D)と比べて抑制される。なお、軟化点は、ファイバーエロンゲーション法によって得られる。ファイバーエロンゲーション法においては、無機繊維(E)の無機繊維(φ0.65mm)を電気炉につるし無機繊維(E)の伸びが1.0mm/minになった時の温度を測定する。
樹脂組成物に含まれ得るガラス繊維としては、例えばEガラスであることが好ましい。Eガラスは、例えば、極少量のアルカリ酸化物を含有するアルミノホウケイ酸ガラスであり、良好な電気絶縁性を有する。なお、Eガラスは、本開示の樹脂組成物の効果を損なわない限り、アルミノホウケイ酸ガラス以外の成分を含有していてもよい。
また、Eガラスは、比較的高温まで形状を維持できるため、高い耐熱性や強度を発現させることが可能である。従って、ガラス繊維がEガラスであると、ガラス繊維は樹脂組成物からなる成形体により高い耐熱性や強度を付与することができる。
無機繊維(E)の繊維径は、9~20μmが好ましく、より好ましくは10~17μmであり、さらに好ましくは13~17μmである。また、無機繊維(E)の繊維径は、単一の繊維径のもの、または二種以上の繊維径のものを組み合わせて使用してもよい。
また、無機繊維(E)は、長繊維でも短繊維であってもよい。なお、無機繊維(E)としては、長繊維と短繊維とを併用することもできる。
無機繊維(E)が長繊維であるときは、無機繊維(E)の長さは5~50mmが好ましく、より好ましくは7~25mmであり、さらに好ましくは9~15mmである。無機繊維(E)の長さが5~50mmであれば、無機繊維(E)からなる不織布形状が形成され易い。
無機繊維(E)が短繊維であるときは、無機繊維(E)の長さは0.1~4mmが好ましく、より好ましくは0.2~3mmである。無機繊維(E)の長さが0.1~4mmであれば、無機繊維(E)により不織布形状が形成され易い。無機繊維(E)は、例えば、チョップドストランド等であってもよく、表面処理された繊維であってもよい。
無機繊維(E)の含有量は、樹脂組成物(100重量%)中、5~60重量%であることが好ましく、より好ましくは10~45重量%、さらに好ましくは25~40重量%である。無機繊維(E)の含有量が樹脂組成物中5~60重量%であると、樹脂組成物からなる成形体に対して十分な強度を付与することができ、かつ該成形体の燃焼後残渣の強度が高く、燃焼後の残渣が自重で崩れ落ちることを抑制できる。
本開示の樹脂組成物は、本開示の樹脂組成物の効果を損なわない限り、必要に応じて、上記熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)、アンチモン系難燃助剤(C)、無機物(D)、および無機繊維(E)以外の添加剤を含有していてもよい。例えば、安定剤[熱安定剤、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等)等]、紫外線散乱剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、抗菌剤、滑剤、離型剤、金属石鹸類、加工助剤、着色剤(顔料、染料)、難燃助剤(含ハロゲン系化合物、リン系化合物等)、可塑剤、補強剤や充填剤(炭素繊維等)等を含有してもよい。なお、上記樹脂組成物の燃焼後の残渣が本質的に無機物(D)および無機繊維(E)から形成されることから、燃焼後の残渣において含まれることとなるその他の成分(その他の残渣形性成分)は本質的に配合しないことが好ましい。例えば、リン系難燃剤は燃焼後において炭化物として残存するため、本質的に配合しないことが好ましい。上記その他の残渣形性成分の含有量は、上記樹脂組成物の総量100重量%に対して、例えば5重量%以下であり、3重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%以下である。
なお、必要に応じて添加できる無機系難燃剤としては、他にポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸ピペラジン、硫酸メラミン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、赤燐等が挙げられる。
なお、樹脂組成物における熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)、アンチモン系難燃助剤(C)、無機物(D)、および無機繊維(E)の合計量は、樹脂組成物の総重量(100重量%)に対して、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは85重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上である。なお、臭素系難燃剤(B)および/またはアンチモン系難燃助剤(C)を含まない場合は熱可塑性樹脂(A)、無機物(D)、および無機繊維(E)の合計量が上記範囲内であることが好ましい。
本開示の樹脂組成物の用途としては、例えば、バッテリーモジュール筐体部品または周辺部品の材料等に用いられる。バッテリーモジュールは、例えばバッテリー式電動輸送機器等が挙げられる。バッテリー式電動輸送機器としては、例えば電気自動車等が挙げられる。上記周辺部品としては、燃焼後であっても形状を保持し、内部部品を保護、例えば露出させない、他部品等と接触させないものが挙げられ、例えば電池用バスバーカバーなどが挙げられる。
本開示の樹脂組成物は、以下の方法により製造することができる。初めに、熱可塑性樹脂(A)およびガラス繊維(E)を混合し、混合物を得る。なお、必要に応じて、臭素系難燃剤(B)およびアンチモン系難燃助剤(C)や、その他の添加剤を加えてもよい。混合には、例えば公知のタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ニーダー等の混合機を用いることができる。混合温度は、例えば10℃~100℃が好ましい。得られた混合物を無機物(D)と合わせて一軸または二軸押出機等の押出機で混練してペレットに調製してもよく、または加熱ロールやバンバリーミキサー等の混練機で溶融混練して混練物を調製してもよい。混練温度は、200℃~290℃が好ましい。混練温度が200℃~290℃であると、無機物(D)は固体状態のまま混練されて比較的均一に、無機繊維(E)の間に入り込むことができる。すなわち、無機物(D)が無機繊維(E)の間に存在する状態の樹脂組成物が得られる。
得られたペレットまたは混練物は、公知の技術、例えば、射出成形、押出成形、真空成形、異型成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形、ガス注入成形等によって各種成形体に成形することができる。射出成形の場合、射出時の温度は、200℃~290℃が好ましい。これにより、無機物(D)は固体状態のまま、無機繊維(E)の間に存在する状態で、成形体が成形される。すなわち、無機物(D)が無機繊維(E)の間で比較的均一に存在する状態の成形体が得られる。
[成形体]
本開示の成形体は、熱可塑性樹脂(A)と屈伏点が300℃~700℃の範囲にある無機物(D)と無機繊維(E)とを含み、燃焼残渣が、本質的に、無機物(D)および無機繊維(E)の合計となる。また、難燃性樹脂組成物から形成される成形体(難燃樹脂成形体)については、熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)、アンチモン系難燃助剤(C)、屈伏点が300℃~700℃の無機物(D)、および無機繊維(E)を含有する。以下に、成形体についてさらに詳細に説明する。
本開示の成形体は、熱可塑性樹脂(A)と屈伏点が300℃~700℃の範囲にある無機物(D)と無機繊維(E)とを含み、燃焼残渣が、本質的に、無機物(D)および無機繊維(E)の合計となる。また、難燃性樹脂組成物から形成される成形体(難燃樹脂成形体)については、熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)、アンチモン系難燃助剤(C)、屈伏点が300℃~700℃の無機物(D)、および無機繊維(E)を含有する。以下に、成形体についてさらに詳細に説明する。
上記難燃樹脂成形体は、臭素系難燃剤(B)、アンチモン系難燃助剤(C)、および無機繊維(E)を含有するため、強度および耐火性に優れる。また、耐火性試験において本開示の樹脂組成物からなる成形体を加熱すると、無機物(D)は軟化・流動する。軟化・流動した無機物(D)は、無機繊維(E)の間に広がり無機繊維(E)同士を接着することができる。これにより、無機物(D)は成形体全体に膜状に広がることができる。
また、無機繊維(E)の間に入り込んだ無機物(D)は、温度が下がると結晶化する。無機繊維(E)の間で結晶化した無機物(D)は、無機繊維(E)同士を接続する。これにより、成形体の形状および強度を維持させることができる。従って、本開示の成形体は、耐火性試験において燃焼した後の残渣の強度にも優れる。例えば、成形体をバッテリーケースとして使用した場合、燃焼後の残渣の強度が高い。成形体を燃焼させた場合であっても、成形体の残渣は崩壊しにくい。このため、成形体の内部に存在する電池に燃焼後の残渣が接触することを抑制できる。これにより、残渣を介して熱が電池に伝わることにより電池に爆発等が起こることを防止できる。
成形体は、燃焼試験後の残渣の残存率(%)が、好ましくは15~80%であり、より好ましくは20~70%であり、さらに好ましくは30~60%であり、特に好ましくは35~55%である。残渣の残存率(%)は、下記式により算出することができる。
残渣の残存率=(G1)/(G0)×100 (%)
上記式中、G0は、燃焼試験前の成形体の重量を示し、G1は、燃焼試験後の成形体(残渣)(以下、成形体残渣とも記す。)の重量を示す。なお、燃焼試験は、後で説明する実施例に記載の装置および条件により実施することができる。
残渣の残存率=(G1)/(G0)×100 (%)
上記式中、G0は、燃焼試験前の成形体の重量を示し、G1は、燃焼試験後の成形体(残渣)(以下、成形体残渣とも記す。)の重量を示す。なお、燃焼試験は、後で説明する実施例に記載の装置および条件により実施することができる。
成形体は、燃焼試験後の成形体残渣の形状の維持に優れる。例えば、燃焼試験後の成形体残渣の形状は、ガラスからなる不織布形状が形成されており、手で全体を持ち上げることができることが好ましい。成形体残渣の形状は、燃焼試験後の成形体残渣を手で持ち上げ、成形体残渣の形状保持性能を官能評価することができる。
成形体は、燃焼試験後の成形体残渣の強度に優れる。成形体残渣の強度は、例えば、燃焼試験後の成形体残渣を指で押さえたときの、成形体残渣の変化で官能評価することができる。成形体は、燃焼試験後の成形体残渣を指で押さえた時に穴が開きにくいことが好ましい。
成形体は、燃焼試験後の成形体残渣の強度に優れる。例えば、燃焼試験後の成形体残渣の強度は突き刺し試験によって評価することができる。突き刺し試験において、成形体残渣に針(Φ1mm、先端R0.5)を貫通させた時の最大荷重は、0.8N以上が好ましく、より好ましくは1.5N以上であり、さらに好ましくは2.0N以上である。なお、突き刺し試験は、後で説明する実施例に記載の装置および条件により実施することができる。
上記成形体は、上記特性を兼ね備える。そのため、本開示の樹脂組成物からなる成形体は、バッテリーモジュール筐体部品または周辺部品の材料等に好適である。バッテリーモジュールは、例えばバッテリー式電動輸送機器等が挙げられる。バッテリー式電動輸送機器としては、例えば電気自動車等が挙げられる。上記周辺部品としては、燃焼後であっても形状を保持し、内部部品を保護、例えば露出させない、他部品等と接触させないものが挙げられ、例えば電池用バスバーカバーなどが挙げられる。
上記の実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示に係る発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本開示に係る発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
以下、実施例により本開示をより具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
表1に記載の通り、熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)、アンチモン系難燃助剤(C)、無機物(D)、および各安定剤を仕込み、混合して混合物を得た。得られた混合物を二軸押出機(製品名「TEX30α」、(株)日本製鋼所製、230℃)のホッパーから供給し、ガラス繊維(E)をサイドフィーダーから供給し、溶融混練および賦形して難燃性樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを射出成形機(製品名「FANUC ROBOSHOTα-S150iA」、金型温度50℃、成形温度230℃、ファナック(株)製)に投入して、射出成形して成形体を得た。
表1に記載の通り、熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)、アンチモン系難燃助剤(C)、無機物(D)、および各安定剤を仕込み、混合して混合物を得た。得られた混合物を二軸押出機(製品名「TEX30α」、(株)日本製鋼所製、230℃)のホッパーから供給し、ガラス繊維(E)をサイドフィーダーから供給し、溶融混練および賦形して難燃性樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを射出成形機(製品名「FANUC ROBOSHOTα-S150iA」、金型温度50℃、成形温度230℃、ファナック(株)製)に投入して、射出成形して成形体を得た。
[実施例2~5、比較例1~4]
実施例2~5、比較例1~4については、組成物の処方を表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物および成形体を得た。比較例2、3については、難燃剤としてリン系難燃剤(B’)を使用した。
実施例2~5、比較例1~4については、組成物の処方を表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物および成形体を得た。比較例2、3については、難燃剤としてリン系難燃剤(B’)を使用した。
実施例および比較例で得られた成形体について、以下に説明する燃焼試験後の残渣の残存率、残渣の形状、残渣の強度(突き刺し試験)をそれぞれ下記方法で評価した。
(燃焼試験)
燃焼試験は、ISO5660-1に準拠して行った。試料として、実施例および比較例で得られた成形体をそれぞれ、大きさ100mm×100mm、厚み2.0mmの平板状成形体に切り出した。平板状成形体のうち加熱面以外の面を、アルミニウム箔(厚さ12μm)で覆ったものを試料として準備した。試料を輻射熱強度50kW/m2にて、5分間加熱を行った。試験装置としては、製品名「コーンカロリーメータC4」((株)東洋精機製作所製)を使用した。なお、表1中コーンカロリーメータをCCMと表記する。
燃焼試験は、ISO5660-1に準拠して行った。試料として、実施例および比較例で得られた成形体をそれぞれ、大きさ100mm×100mm、厚み2.0mmの平板状成形体に切り出した。平板状成形体のうち加熱面以外の面を、アルミニウム箔(厚さ12μm)で覆ったものを試料として準備した。試料を輻射熱強度50kW/m2にて、5分間加熱を行った。試験装置としては、製品名「コーンカロリーメータC4」((株)東洋精機製作所製)を使用した。なお、表1中コーンカロリーメータをCCMと表記する。
(残渣の残存率)
成形体について、燃焼試験前の成形体の重量と、燃焼試験後の成形体残渣の重量とを測定した。残渣の残存率(%)は、下記式により算出した。
残渣の残存率=(G1)/(G0)×100 (%)
上記式中、G0は、燃焼試験前の成形体の重量を示し、G1は、燃焼試験後の成形体残渣の重量を示す。
成形体について、燃焼試験前の成形体の重量と、燃焼試験後の成形体残渣の重量とを測定した。残渣の残存率(%)は、下記式により算出した。
残渣の残存率=(G1)/(G0)×100 (%)
上記式中、G0は、燃焼試験前の成形体の重量を示し、G1は、燃焼試験後の成形体残渣の重量を示す。
(残渣の形状)
成形体について、燃焼試験後の成形体残渣を手で持ち上げ、成形体残渣の形状保持性能を官能評価した。成形体残渣の形状保持性能を下記基準で評価した。
成形体について、燃焼試験後の成形体残渣を手で持ち上げ、成形体残渣の形状保持性能を官能評価した。成形体残渣の形状保持性能を下記基準で評価した。
判定基準
○:ガラスからなる不織布形状が形成されており、手で成形体残渣全体を持ち上げることができる。
×:ガラスからなる不織布形状が形成されず、手で成形体残渣全体を持ち上げることができない。
○:ガラスからなる不織布形状が形成されており、手で成形体残渣全体を持ち上げることができる。
×:ガラスからなる不織布形状が形成されず、手で成形体残渣全体を持ち上げることができない。
(残渣の強度(官能評価))
成形体について、燃焼試験後の成形体残渣を指で押さえ、成形体残渣の変化を官能評価した。成形体残渣の強度における官能評価を下記基準で評価した。
成形体について、燃焼試験後の成形体残渣を指で押さえ、成形体残渣の変化を官能評価した。成形体残渣の強度における官能評価を下記基準で評価した。
判定基準
○:指で押さえてもほとんど沈み込まず穴が開かない。
△:指で押さえるとわずかに沈み込むが穴は開かない。
×:指で押さえると容易に穴が開く。
○:指で押さえてもほとんど沈み込まず穴が開かない。
△:指で押さえるとわずかに沈み込むが穴は開かない。
×:指で押さえると容易に穴が開く。
(残渣の強度)
成形体について、燃焼試験後の成形体残渣を突き刺し試験によって残渣の強度を評価した。突き刺し試験は、成形体残渣に針(Φ1mm、先端R0.5)を貫通させた時の最大荷重(N)を測定した。最大荷重の測定は、荷重変位計測ユニット(製品名「FSA-0.5K2-5N」、(株)イマダ製)を用いた。
成形体について、燃焼試験後の成形体残渣を突き刺し試験によって残渣の強度を評価した。突き刺し試験は、成形体残渣に針(Φ1mm、先端R0.5)を貫通させた時の最大荷重(N)を測定した。最大荷重の測定は、荷重変位計測ユニット(製品名「FSA-0.5K2-5N」、(株)イマダ製)を用いた。
(粒子径の測定)
無機物(D)について、レーザー回折式粒度分布計によって粒子径(メディアン径)を評価した。粒子径測定の測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA-960」を用いた。詳細な測定条件は、下記のとおりである。
使用治具 : 乾式セル 標準シューター
圧縮空気 : 0MPa(なし)
屈折率 : 石英(1.450-0.000i)/Air(1.000)
粒子径基準: 体積
無機物(D)について、レーザー回折式粒度分布計によって粒子径(メディアン径)を評価した。粒子径測定の測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA-960」を用いた。詳細な測定条件は、下記のとおりである。
使用治具 : 乾式セル 標準シューター
圧縮空気 : 0MPa(なし)
屈折率 : 石英(1.450-0.000i)/Air(1.000)
粒子径基準: 体積
熱可塑性樹脂(A):ホモポリプロピレン、製品名「PM600A」、サンアロマー(株)製
熱可塑性樹脂(A):酸変性ポリプロピレン、製品名「モディックP908」、三菱ケミカル(株)製
臭素系難燃剤(B):臭素系難燃剤、製品名「SAYTEX8010」、アルベマール日本(株)製
リン系難燃剤(B’):リン系難燃剤、製品名「ADEKA STAB FP-2100JC」、(株)ADEKA製
アンチモン系難燃助剤(C):三酸化二アンチモン、錫鉱山閃星金弟業有限責任公司製
無機物(D):低融点ガラスフリット、製品名「807フリット」、メディアン径(D50)13μm、宮脇グレイズ工業(株)製
ガラス繊維(E):チョップドガラス繊維(ECS03T-480、日本電気硝子(株)製)、繊維の平均径13μm、平均長さ3mm
安定剤(ステアリン酸カルシウム):製品名「SC-100」、堺化学工業(株)製
安定剤(リン系酸化防止剤):製品名「Irgafos168」、BASFジャパン(株)製
安定剤(フェノール系酸化防止剤):製品名「Irganox1010」、BASFジャパン(株)製
熱可塑性樹脂(A):酸変性ポリプロピレン、製品名「モディックP908」、三菱ケミカル(株)製
臭素系難燃剤(B):臭素系難燃剤、製品名「SAYTEX8010」、アルベマール日本(株)製
リン系難燃剤(B’):リン系難燃剤、製品名「ADEKA STAB FP-2100JC」、(株)ADEKA製
アンチモン系難燃助剤(C):三酸化二アンチモン、錫鉱山閃星金弟業有限責任公司製
無機物(D):低融点ガラスフリット、製品名「807フリット」、メディアン径(D50)13μm、宮脇グレイズ工業(株)製
ガラス繊維(E):チョップドガラス繊維(ECS03T-480、日本電気硝子(株)製)、繊維の平均径13μm、平均長さ3mm
安定剤(ステアリン酸カルシウム):製品名「SC-100」、堺化学工業(株)製
安定剤(リン系酸化防止剤):製品名「Irgafos168」、BASFジャパン(株)製
安定剤(フェノール系酸化防止剤):製品名「Irganox1010」、BASFジャパン(株)製
実施例1~5に示した、熱可塑性樹脂(A)と、無機物(D)と、無機繊維(E)とを含む組成物からなる成形体は、何れも燃焼試験後の残渣の残存率は29%以上であり、特に実施例3、4、5は40%以上とより優れていた。また、成形体の燃焼試験後重量は、樹脂組成物中の無機物(D)および無機繊維(E)の合計に対して110重量%以下であり、樹脂組成物の燃焼残渣は本質的に無機物(D)および無機繊維(E)の合計であると判断された。そして、燃焼試験後の残渣の形状は、官能評価において何れも○を示し、形状を維持できていることが確認された。燃焼試験後の残渣の強度は、官能評価において全て△または○を示しており、指で押さえても穴が開かず十分な強度を有すると判断された。これは、無機物(D)が無機繊維(E)同士を接続することにより、成形体の強度を向上させたものと推定される。残渣の強度(突き刺し試験)においては、何れも最大荷重は1.7(N)以上であり、特に実施例4は11(N)以上とより優れていた。
比較例1,4に示した、無機物(D)を含まない組成物からなる成形体は、燃焼試験後の残渣の残存率は29%未満と低く、燃焼試験後の残渣の形状および強度の官能評価はともに×であった。また、残渣の強度(突き刺し試験)においては、最大荷重が0.75(N)未満であり、脆く崩れやすいものであった。比較例2に示した、臭素系難燃剤(B)の代わりにリン系難燃剤(B’)を含む組成物からなる成形体は、燃焼試験後の残渣の残存率は59%以上と高く、燃焼試験後の残渣の形状の官能評価も〇であった。しかしながら、燃焼試験後の残渣の強度の官能評価は×であり、残渣の強度(突き刺し試験)においては、最大荷重が0.35(N)未満であり、非常に脆く崩れやすいものであった。比較例3に示した、無機物(D)を含まず、臭素系難燃剤(B)の代わりにリン系難燃剤(B’)を含む組成物からなる成形体は、燃焼試験後の残渣の残存率は63%以上であるが、燃焼試験後の残渣の形状の官能評価も〇であった。しかしながら、燃焼試験後の残渣の強度の官能評価は×であり、残渣の強度(突き刺し試験)においては、最大荷重が0.40(N)未満であり、非常に脆く崩れやすいものであった。これらの結果は、比較例2,3における成形体の燃焼試験後重量が、樹脂組成物中の無機物(D)および無機繊維(E)の合計に対して130重量%を超えており、無機物(D)および無機繊維(E)以外にリン系難燃剤(B’)が燃焼して形成された炭化物を多量に含み、樹脂組成物の燃焼残渣は本質的に無機粒子(D)および無機繊維(E)からなるものではないことによるものと推定された。
Claims (11)
- 熱可塑性樹脂(A)と、屈伏点が300℃~700℃の範囲にある無機物(D)と、無機繊維(E)とを含む樹脂組成物であり、前記樹脂組成物の燃焼残渣が、本質的に、前記無機物(D)および前記無機繊維(E)の合計となる樹脂組成物。
- 前記無機繊維(E)はガラス繊維である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂(A)と、臭素系難燃剤(B)と、アンチモン系難燃助剤(C)と、屈伏点が300℃~700℃の範囲にある前記無機物(D)と、前記ガラス繊維とを含み、難燃性を有する請求項2に記載の樹脂組成物。
- 前記臭素系難燃剤(B)の含有量は前記熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して10~60重量部である、請求項3に記載の樹脂組成物。
- 前記アンチモン系難燃助剤(C)の含有量は前記熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して5~30重量部である、請求項3または4に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記無機物(D)はフリットである請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂(A)はポリオレフィンである請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記無機物(D)の含有量は前記樹脂組成物中0.5~40重量%である請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記無機繊維(E)の含有量は前記樹脂組成物中5~60重量%である請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記無機繊維(E)はEガラスである請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物の成形体。
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