JP2022080364A - グリーンラスト、その製造方法、顔料および陰イオン交換体 - Google Patents

グリーンラスト、その製造方法、顔料および陰イオン交換体 Download PDF

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Abstract

【課題】耐酸化性が高くて安定で経時変化が少なく、高い陰イオン交換性をもつグリーンラストおよびその製造方法を提供する。【解決手段】グリーンラストは、3価の鉄FeIIIと2価の鉄FeIIを含有する層状複水酸化物であって、FeIIIとFeIIの原子数比FeIII/(FeIII+FeII)が0.80以上0.99以下であり、層状複水酸化物をX線回折測定を行ったときの基本間隔d(003)における信号波形の半値幅(FWHM)が0.06°以上0.5°以下とする。その製造方法は、3価の鉄塩、核形成剤および還元性の溶媒を混合することと、混合されたものに熱処理を施すことと、溶媒を混合されたものから除去後、混合されたものに対して洗浄を施すことからなる。【選択図】図1

Description

本発明は、グリーンラスト、その製造方法、顔料および陰イオン交換体に関する。
第一鉄と第二鉄の水酸化物が層状をなす青緑色の物質であるグリーンラストは、重金属を還元、吸着する性質があることから、重金属を含んだ汚染水や汚泥の浄化剤および再資源化に寄与する物質として着目されており、例えば、特許文献1や非特許文献1に開示がある。また、グリーンラストは、針状ゲータイト粒子粉末を製造する際の中間処理剤でも活用され、例えば特許文献2に開示がある。
ここで、グリーンラストを吸着剤として利用する場合は、吸着効率を高めるためポーラスな構造とする検討などが行われていた(非特許文献1)。
特開2007-117809号公報 特開平5-70146号公報
Dalt.Trans.,2016,Vol.45,Pages17508-17520
重金属や汚染水の処理を安定して行うためには、処理剤として使用するグリーンラストの耐酸化性を高める必要がある。汚染水には溶存酸素が存在することから、耐酸化性を高めると高効率かつ安定性の高い吸着剤になる。耐酸化性を高めると、グリーンラストを陰イオン交換体として使用する場合も、経時変化などの安定性を高めやすくなる。
グリーンラストは、そこに含まれている金属は鉄であり、人体に悪影響を及ぼしにくいと考えられる。
そこで、発明者は、汚染水等の吸着剤はもとより、緑色性と無害性を活かした化粧品、層状間の担持性と無害性を活かしたドラッグデリバリーなどへのグリーンラストの新規応用も合わせて検討した。
このような応用を指向した場合もグリーンラストには高い耐酸化性が求められる。
化粧品やドラッグデリバリーへグリーンラストを使用した場合、耐酸化性が高いと化粧品自体の経時変化は少なく品質が安定するとともに、酸化による人体への悪影響も抑制される。
しかし、従来のグリーンラストは、酸化に対する安定性は十分ではなかった。そこで、本発明者は、耐酸化性を高め、経時変化の少ないグリーンラストを提供することを目的として検討を行ってきた。
本発明では、経時変化が少なく品質が安定する耐酸化性に優れるグリーンラストを提供することを課題とする。
課題を解決するための本発明の構成を下記に示す。
(構成1)
3価の鉄FeIIIと2価の鉄FeIIを含有する層状複水酸化物であって、
前記FeIIIとFeIIの原子数比FeIII/(FeIII+FeII)が0.80以上0.99以下であり、
前記層状複水酸化物をX線回折測定を行ったときの基本間隔d(003)における信号波形の半値幅(FWHM)が0.06°以上0.5°以下である、グリーンラスト。
(構成2)
前記原子数比FeIII/(FeIII+FeII)が0.85以上0.96以下である、構成1記載のグリーンラスト。
(構成3)
前記原子数比FeIII/(FeIII+FeII)が0.90以上0.95以下である、構成1または2記載のグリーンラスト。
(構成4)
前記半値幅(FWHM)が0.1°以上0.3°以下である、構成1から3の何れか1つに記載のグリーンラスト。
(構成5)
前記層状複水酸化物の層間に炭酸イオンまたは乳酸イオンの少なくとも何れか1つが存在する、構成1から4の何れか1つに記載のグリーンラスト。
(構成6)
3価の鉄塩、核形成剤および還元性の溶媒を混合することと、
前記混合されたものに熱処理を施すことと、
前記溶媒を前記混合されたものから除去した後、前記混合されたものに対して洗浄を施すこと、からなるグリーンラストの製造方法。
(構成7)
前記鉄塩は、FeCl、Fe(NO、Fe(SOおよびFe(OH)(CHCOO)からなる群より選ばれる1つ以上である、構成6記載のグリーンラストの製造方法。
(構成8)
前記鉄塩は、無水の鉄塩である、構成6または7記載のグリーンラストの製造方法。
(構成9)
前記核形成剤は、CHCOONa、CHCOOKおよびCHCOONa・3HOからなる群より選ばれる1つ以上である、構成6から8の何れか1つに記載のグリーンラストの製造方法。
(構成10)
前記還元性の溶媒は、グリセロール水溶液である、構成6から9の何れか1つに記載のグリーンラストの製造方法。
(構成11)
前記熱処理の温度は、50℃以上350℃以下である、構成6から10の何れか1つに記載のグリーンラストの製造方法。
(構成12)
前記熱処理の温度は、100℃以上250℃以下である、構成6から10の何れか1つに記載のグリーンラストの製造方法。
(構成13)
前記熱処理の温度は、150℃以上250℃以下である、構成6から10の何れか1つに記載のグリーンラストの製造方法。
(構成14)
前記熱処理は、酸素が存在する環境で施される、構成6から13の何れか1つに記載のグリーンラストの製造方法。
(構成15)
前記熱処理は、不活性ガス環境または真空中で施される、構成6から13の何れか1つに記載のグリーンラストの製造方法。
(構成16)
構成1から5の何れか1つに記載のグリーンラストを含有する、顔料。
(構成17)
構成1から5の何れか1つに記載のグリーンラストを含有する、陰イオン交換体。
本発明によれば、耐酸化性が高く、安定で経時変化が少なく、高い陰イオン交換容量をもつグリーンラストが提供される。
また、その光吸収特性と素材の無毒性、耐酸化特性から化粧品に好適な緑色顔料が提供される。
本発明の材料構造を示す説明図である。 本発明の材料の製造工程を示すフローチャート図である。 XRD測定データである。 メスバウアースペクトル測定データである。 FTIRスペクトル測定データである。 XPSスペクトル測定データである。 TG-DTA特性曲線の測定データである。 本発明のグリーンラストのSEM写真である。 本発明のグリーンラストのTEM写真である。 本発明のグリーンラストのAFM測定データである。 本発明のグリーンラストのTEM-EDX測定データである。 様々なpHの水溶液で処理した後の本発明のグリーンラストのXRD測定データである。 本発明のグリーンラストの量子収率(AQY)および光吸収の波長依存性を示す特性図である。 本発明のグリーンラストのアンモニアボランからの光触媒的水素脱着特性を示す特性図である。
以下本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
発明者は、従来のグリーンラストは層状複水酸化物(LDH:Layered Double Hydroxide)の結晶性が低く欠陥が多いため、そこに酸素や酸素を含む物質が入り込みやすく、その結果酸化が起こって不安定になることを見出した。
発明者の詳細な研究の結果、グリーンラスト層状複水酸化物をX線回折測定を行ったときの基本間隔(003)における信号波形の半値幅FWHM(Full width half maximum)が0.06°以上0.5°以下、より好ましくは0.1°以上0.5°以下であると、耐酸化性、安定性が高いグリーンラストが得られることがわかった。ここで、基本間隔(003)におけるFWHM0.06°は、構造計算によって求められたグリーンラスト構造に基づいてシミュレートされた理論値に相当する。
さらに、発明者は、グリーンラストの耐酸化性や安定性を高めるには、LDHの層間を密にすることが重要であることを見出した。
LDHでは、その層の電荷密度を高めれば層間には逆の電荷をもつ物質を引き込みやすい。したがって、層に正の電荷を与え、その電荷密度を高めることによって、層間が陰イオンで密に満たされ、耐酸化性や安定性を高めることが可能になる。また、層間に多くの陰イオンを導入できれば、それと置き換えられる陰イオンの数も増し、能力の高い陰イオン交換体となる。
本発明のグリーンラストは、3価の鉄FeIIIと2価の鉄FeIIを含有する層状複水酸化物(LDH:Layered Double Hydroxide)であって、FeIIIとFeIIの原子数比FeIII/(FeIII+FeII)(3価鉄比率)が0.80以上0.99以下、好ましくは0.85以上0.96以下、より好ましくは0.90以上0.95以下であることを特徴とする。参考までに、そのグリーンラストの構造を図1に示す。ここで、同図中の11は鉄(Fe)、12は酸素(O)、13は炭素(C)そして14は水素(H)の各原子を示している。
ここで、3価鉄比率が0.80を下回ると安定性が損なわれ、0.85以上で安定性と層間内の密度が増し、0.90以上で安定性と層間内の密度がさらに一層増す。
一方、0.99を超えるとLDHの構造を維持できない。0.96以下にすると、層間内に比較的嵩の大きな陰イオンを使用することが可能になって陰イオン交換体としての適用範囲が広がる。0.95以下にすると、層間内にさらに嵩の大きな陰イオンを使用することが可能になって陰イオン交換体としての適用範囲がさらに広がる。
高い結晶性と、3価と2価の鉄原子数比が規定された本構造により、ダングリングボンドや結晶欠陥などのいわゆる欠陥部からの酸素の侵入が抑制され、また層間が密な構造になって不安定な酸化が起こりにくくなり、安定で経時変化が少なく、高い陰イオン交換性をもつグリーンラストを提供することが可能になる。
なお、2価鉄比率FeIII/(FeIII+FeII)は、メスバウアー分光法で測定することができる。
また、前記層状複水酸化物の層間には、炭酸イオンまたは乳酸イオンの少なくとも何れか1つが存在することが好ましい。
炭酸イオンは、大気等酸素を含んだ環境下で材料合成を行うことにより容易に前記層状複水酸化物の層間に導入することができる。
乳酸イオンは、グリセロールやエチレングリコールなどの還元性溶媒を用いて材料合成を行うことにより容易に前記層状複水酸化物の層間に導入することができる。乳酸イオンは、適度な大きさと適度な電気陰性度をもつため、グリーンラスト外部にある陰イオンと置換しやすく、汎用なイオン交換性をもち置換性能の高い陰イオン交換体を提供するのに好適である。
また、前記層状複水酸化物の層間には、塩素イオンが存在することも好ましい。塩素イオンは、適度な電気陰性度をもつため、グリーンラスト外部にある陰イオンと置換しやすく、置換性能の高い陰イオン交換体を提供するのに好適である。前記層状複水酸化物層間への塩素イオン導入は、真空か不活性ガス環境下で、塩素を含む還元性無機溶媒を用いた材料合成で行うことができる。
このグリーンラストは、製造工程をフローチャートで示した図2に示すように、3価の鉄塩、核形成剤および還元性の溶媒を混合すること(工程S1)と、その混合物に熱処理を施すこと(工程S2)と、溶媒をその混合物から除去すること(工程S3)と、その混合物に対して洗浄を施すこと(工程S4)によって製造することができる。
ここで、鉄塩としては、FeCl、Fe(NO、Fe(SOおよびFe(OH)(CHCOO)からなる群より選ばれる1つ以上を挙げることができる。鉄塩をこのようにすると、安定で経時変化の少なく、高い陰イオン交換性をもつグリーンラストを提供することが可能になる。
さらに、鉄塩を無水の鉄塩とすると、層状複水酸化物の生成効率が上がるという効果が生じる。
核形成剤としては、CHCOONa(酢酸ナトリウム)、CHCOOK(酢酸カリウム)、CHCOONa・3HO(酢酸ナトリウム三水和物)からなる群より選ばれる1つ以上を挙げることができる。核形成剤をこのようにすると、安定で経時変化が少なく、高い陰イオン交換性をもつグリーンラストを提供することが可能になる。
還元性の溶媒としては、グリセロール水溶液を好んで用いることができる。また、還元性の溶媒としてエチレングリコール水溶液を用いることもできる。このような還元性の溶媒を用いることにより、層状複水酸化物の層間に乳酸イオンが導入され、安定で経時変化が少なく、高い陰イオン交換性をもつグリーンラストを提供することが可能になる。
熱処理の温度は、50℃以上350℃以下が好ましい。50℃以上により反応効率が上がってグリーンラストの効率的な製造を行うことが可能になり、350℃以下とすることにより層状複水酸化物の構造変化防止、有機溶媒劣化抑制などができ、安定的に品質の高いグリーンラストを製造することが可能になる。
また、熱処理の温度は、100℃以上250℃以下がさらに好ましく、150℃以上250℃以下がさらに一層好ましい。100℃以上、より好ましくは150℃以上とすることにより反応効率がさらに上がってグリーンラストを一層効率的に製造することが可能になる。250℃以下とすることにより、有機溶媒の劣化、変質をさらに一層抑制することが可能になる。
ここで、熱処理は、酸素が存在する環境で施されると、層状複水酸化物の層間に炭酸イオンが導入され、層状複水酸化物の層間の密度が高まって安定性が向上するという効果が期待できる。
また、熱処理が不活性ガス環境または真空中で施されると、炭素イオン以外の陰イオン、例えば塩素イオンも導入することが容易になるという効果が生じる。
上記グリーンラストは、500nm以下の紫外可視域と550nmから近赤外域の波長域に吸収帯をもち、耐酸化性も高く、しかも無毒性の素材からなることから、化粧品に好適な緑色顔料となる。なお、緑色顔料は希少であり、価値が高い。
また、上記グリーンラストは、層状複水酸化物の層間に取り込むイオンの置換対象であるイオン交換体が密に多量に詰まっているため、高い陰イオン交換性を有し、しかも安定で経時変化が少ないため、陰イオン交換体に好適である。
以下では実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、この実施例はあくまで本発明の理解を助けるためここに挙げたものであり、本発明をこれに限定するものではない。
(実施例1)
<材料合成>
3価の鉄塩として無水FeCl(2.7mg、0.0167mol、Merk製、純度98%以上)、核形成剤として酢酸ナトリウム三水和物(7.2mg、0.05mol、Merk製、純度99.0%以上)を準備し、それらを還元性溶媒であるグリセロール(100mL、1.37mol、Sigma Aldrich製、純度99.5%以上)に溶解させ、ガラスビーカーにて80℃30分間攪拌させた。
次に、その溶液をテフロン(登録商標)でライニングしたオートクレーブ(200mL)に移し、密閉し、静的状態で200℃、24時間加熱した。
最後に、緑色のウェットパウダーを反応混合物から収集し、超純水(Milli-Q水)とエタノールの混合液(1:1容量、200mL)で3回洗浄し、60℃で空気乾燥して、グリーンラストを得た。
以上の合成条件をまとめたものを表1に示す。なお、表1には、主要条件を表中記載の条件に変更し、その他の条件は上記グリーンラスト合成条件とした結果も参考例として示している。ここで、グリーンラストを合成したNo.1以外は磁鉄鉱、赤鉄鉱、炭の何れかになった。
Figure 2022080364000002
<材料評価>
まず、合成されたグリーンラストの構造を下記に示す各種方法によって評価した。
(1)XRD評価
本実施例で合成されたグリーンラスト(GR)試料をXRD(X-Ray diffration)にて測定した結果を、炭酸塩型グリーンラスト試料(Reference GR)、マグネタイト(Magnetite)の測定結果と合わせて図3に示す。ここで、XRDの測定にはSmart-lab Rigaku X線回折計を用い、Cuターゲットを用いて40kV,40mAの条件で測定を行った。
その結果、共沈法によって調製された層間空間に炭酸アニオンを有する炭酸塩型グリーンラスト試料([FeII FeIII (OH)12]・[CO]・4[HO])は、新鮮なものを室温、空気中で数時間保持すると、マグネタイトを含むより安定な相に変化したが、本実施例のGRは、XRDパターンが炭酸塩型GRと類似しているにもかかわらず、新鮮なものを室温、空気中で90日間保持しても有意な変化は認められず、安定していた。
ここで特徴的なことは、本実施例のGRは、基本間隔(d(003)値)が0.794nmであり、炭酸塩型グリーンラストの報告値(0.750-0.787nm)より少し大きい。なお、この値は、図3のXRD測定データの2θの値からブラッグの公式を用いて求められる。
本実施例のGRの基本間隔d(003)におけるXRD測定信号のFWHMは0.32°であった。一方、炭酸塩型グリーンラストのそれは1.0°前後であり、本実施例のGRは従来型のグリーンラストより極めて狭い半値幅を有していた。
(2)メスバウアー分光評価
本実施例のGRをメスバウアー分光法にて評価した結果を図4に示す。そこでは、名古屋工業大学で透過法により57Feのメスバウアースペクトルを測定した。ここで、メスバウアー分光法は、2価鉄比率FeIII/(FeIII+FeII)の測定に対して高い感度を有する。
その結果、本実施例のGRの2価鉄比率FeIII/(FeIII+FeII)は0.94を示し、従来のグリーンラストの報告値の0.25-0.33に対して3倍以上の高い値を示した。
(3)FTIR評価
本実施例のGRに対してFTIR(Fourier transform infrared)測定を行って層間の陰イオン種の特定を行った。装置としてはShimadzu FTIR-4200を使用した。
その結果を示す図5から、本実施例のGRは、カルボキシレートグループ、ヒドロキシグループ、ヒドロキシグループにリンクされたCH、およびメチルグループに対応する場所に吸収があり、乳酸イオン(CH-CHOH-COO-)の存在が示唆された。
また、エーテル基による吸収バンドも検出され、乳酸イオンの一部がオリゴマー化されたことが示唆された。
さらに、炭酸イオンによる吸収帯が1373cm-1に検出されている。
以上から、本実施例のGRは、層間に炭酸イオンと乳酸イオンが存在することが確認された。
(4)XPS評価
本実施例のGRに対してXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)測定を行った。ここで、装置としては、JPS-9010(JEOL製)を用い、全ての結合エネルギーはCl(285.0eV)にて校正した。
その結果、乳酸イオンおよび炭酸イオン由来と考えられるC元素が検出された一方で、従来のグリーンラストでの代表的な層間イオンのCl由来のCl元素は検出されていない(図6)。
(5)TG-DTA評価
本実施例のGRを空気中でTG-DTA(Thermogravimetric-differential thermal analysis、熱重量示差熱分析)評価した。ここで、装置としてはHitachi TG/DTA6200を用い、空気中で室温から1000℃まで、10℃/分の加熱速度で測定した。
その結果、乳酸イオンの酸化分解に起因する質量損失(330-360℃および480-680℃)と、炭酸イオンからのCO遊離由来の信号(360-480℃)が検出された(図7)。
(6)CHN元素分析
図6の挿入図に基づいて本実施例のGRのCHN元素分析を行い、乳酸イオンと炭酸イオンのモル比は約3と見積もられた。
この結果は、以下の評価に基づく。
CHN元素分析は、広島大学自然科学研究開発センター(N-BARD)のPerkinElmer2400II CHNアナライザーを使用して実施した(C=14.90wt%,H=3.23wt%,N=トレース)。
ここで、H値は、乳酸アニオン、吸着水、構造水に由来する。約330℃TG-DTA曲線(約330℃での質量損失)から吸着水を1wt%と推定して、吸着水のH含有量は0.1wt%として計算した。TG-DTA後の灰分(49.5%)を原因として、構造水のH含有量は1.2wt%として計算した。
乳酸アニオンのH含有量は、1.9wt%(3.23-0.1-1.2)と見積もった。
CHN分析のC値(14.90wt%)は、乳酸イオンの13.6wt%と炭酸イオンの1.3wt%(14.90-13.6)に分け、乳酸アニオンと炭酸アニオンのモル比は、CHN分析の誤差(±0.5wt%)を考慮して、約3と算出した。
(7)形状評価
本実施例のGRの形状を、SEM(Scanning electron microscope)、TEM(Transmittance electron microscope)およびAFM(Atomic force microscope)を用いて測定した。ここで、SEMおよびTEM装置としては、JEOL JEM-2100Fを用い、AFM装置としてはSPA-400システム(セイコーインスツルメンツ製)を用いた。SEM、TEM、AFMの測定結果をそれぞれ図8、9および10に示す。
その結果、本実施例のGRは、長さが最大1μm、厚さが最大20nmのナノニードル/ナノプレートのような粒子状であった。
(8)EDX元素分析
本実施例のGRを、TEMエネルギー分散X線(EDX:Energy dispersive X-ray)測定し、C、FeおよびO元素の分布を調べた。使用した装置はJEOL JEM-2100Fである。
その結果、図11に示すように、、C、FeおよびO元素は一様に分布していることと、C元素が粒子上および内部に完全かつ密に分布していた。
本実施例のGRは、層間の空間が密な状態でしかも非多孔性の性質を考えると、反応物/基質が層間空間に浸透することは難しいと考えられる。したがって、ボディに対する表面の比率が高いナノニードルまたはナノプレートの形態が、触媒などへの応用に適していると考えられる。
(9)構造計算評価
密度汎関数理論(DFT:Density functional theory)計算で構造をシミュレーションした。
シミュレートされた最適構造のGRは、a=0.327655nm、b=1.70256nm、c=2.39178nmの斜方晶系単位格子をもつ化学式[FeII 0.33FeIII 5.67(OH)12]・3[C]・1.33[CO]で表される層状複水酸化物になり、そのGRの層間距離はXRD測定によって求めた実験値0.794nmとよく一致する0.796nmであった。そして、層間は炭酸イオンと乳酸イオンでいっぱいに満たされ、密な状態になっていた。
シミュレーションの詳細を下記に示す。。
スピン偏極した自己矛盾のない密度汎関数タイトバインディング(DFTB)計算を、DFTBコードと、原子形状を生成するtrans3d要素相互作用ライブラリを使用して実施した。
電子設定には、0.5nm-1の間隔の微細なモンクホルストパックkポイントグリッドを使用し、形状の最適化は、それぞれ0.01kcal/molおよび0.5kcal/mol/nmのエネルギーと力の収束基準で行った。
次に、9つのC および4つのCO 2-イオン(アニオン)の3つを層間空間に挿入し、構造を最適化した。
この最適化を行った結果、2価鉄比率FeIII/(FeIII+FeII)は、メスバウアー分光測定に見合った0.944を示した。
挿入された種の最も低いエネルギー位置を見つけるために、20のイオンの配置について検討した。図2に示されているのが、その中で最も安定した状態である。この状態でのFe(OH)シート間の層間距離は0.796nmであり、XRDに基づく実験測定0.794nmとよく一致した。
最後に、安定性を調べるために、最適化された構造に対して、300℃で1fsステップで5psの分子動力学分析を行った。その結果、アニオンの有意な動きも格子パラメーターの有意な変化も観察されず、安定な材料である結果が得られた。
<特性評価>
本実施例のGRの酸化安定性を下記の方法で調べた。
pHを2から12まで振った溶存Oを含む水溶液に本実施例のGRを浸漬させ、60℃で一晩風乾させたときのGRの変化をXRDによって評価した。その結果、図12に示すように、XRDパターンに有意の変化は認められず、本実施例のGRの安定性が確認された。
次に、本実施例のGRの光吸収特性を調べた。測定には積分球(ISV-722)を備えたJASCO(V-570)分光光度計を使用した。結果を図13に示す。
その結果、本実施例のGRは、波長約500nmのところに吸光度の極小値をもつ。そして、その極小近傍のバンド幅から緑色帯の顔料として適当な光吸収特性を有していることがわかる。
なお、同図には、グリセロール存在下でのGRの量子収量(AQY)の計算値も合わせて載せている。AQY特性と光吸収特性は一致しないという結果が得られている。
グリセロールを含む液中でのNHBHからのH生成を図14に示す。ここで、グリセロールは電子供与体として機能する。本実施例のGRは、最初のアクティビティを失うことなく、ほぼ同じ特性を繰り返し、再利用が可能なことが示唆された。
(実施例2)
実施例2では、鉄塩、還元剤、核形成剤および調製環境を表2に示す条件に変え、実施例1に示した手順に準拠させて生成物を作製した。
その結果、核形成剤が酢酸ナトリウム(CHCOONa)でも酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)でもグリーンラストが作製されることが確認された。
また、調製環境が大気でもアルゴンでもグリーンラストが作製されることが確認された。なお、表2中のAcは酢酸を示す。
一方で、核形成剤を用いないときは生成物はグリーンラストにはならず炭(Char)になり、また鉄塩としてFeCl・6HOを用いた場合は磁鉄鉱となってグリーンラストは生成されなかった。
Figure 2022080364000003
上述のように、本発明によるグリーンラストは、陰イオン交換性を有し、安定である。陽イオンを交換する物質は多々あるが、陰イオンを交換する物質は希少である。
陰イオン交換体の市場としては、例えばドラッグデリバリーがある。本発明のグリーンラストは、無毒性の素材からなっているため、その分野への展開も期待される。このため、本発明によるグリーンラストは、陰イオン交換体として産業に寄与すると考える。
また、本発明によるグリーンラストは、その光吸収特性、素材の無毒性および耐酸化特性から緑色顔料の化粧品に好適な特性を有しており、化粧品の分野でも産業に寄与すると考える。
1:グリーンラスト(層状複水酸化物)
11:鉄(Fe)
12:酸素(O)
13:炭素(C)
14:水素(H)

Claims (17)

  1. 3価の鉄FeIIIと2価の鉄FeIIを含有する層状複水酸化物であって、
    前記FeIIIとFeIIの原子数比FeIII/(FeIII+FeII)が0.80以上0.99以下であり、
    前記層状複水酸化物をX線回折測定を行ったときの基本間隔d(003)における信号波形の半値幅(FWHM)が0.06°以上0.5°以下である、グリーンラスト。
  2. 前記原子数比FeIII/(FeIII+FeII)が0.85以上0.96以下である、請求項1記載のグリーンラスト。
  3. 前記原子数比FeIII/(FeIII+FeII)が0.90以上0.95以下である、請求項1または2記載のグリーンラスト。
  4. 前記半値幅(FWHM)が0.1°以上0.3°以下である、請求項1から3の何れか1項に記載のグリーンラスト。
  5. 前記層状複水酸化物の層間に炭酸イオンまたは乳酸イオンの少なくとも何れか1つが存在する、請求項1から4の何れか1記載のグリーンラスト。
  6. 3価の鉄塩、核形成剤および還元性の溶媒を混合することと、
    前記混合されたものに熱処理を施すことと、
    前記溶媒を前記混合されたものから除去した後、前記混合されたものに対して洗浄を施すこと、からなるグリーンラストの製造方法。
  7. 前記鉄塩は、FeCl、Fe(NO、Fe(SOおよびFe(OH)(CHCOO)からなる群より選ばれる1つ以上である、請求項6記載のグリーンラストの製造方法。
  8. 前記鉄塩は、無水の鉄塩である、請求項6または7記載のグリーンラストの製造方法。
  9. 前記核形成剤は、CHCOONa、CHCOOKおよびCHCOONa・3HOからなる群より選ばれる1つ以上である、請求項6から8の何れか1項に記載のグリーンラストの製造方法。
  10. 前記還元性の溶媒は、グリセロール水溶液である、請求項6から9の何れか1項に記載のグリーンラストの製造方法。
  11. 前記熱処理の温度は、50℃以上350℃以下である、請求項6から10の何れか1項に記載のグリーンラストの製造方法。
  12. 前記熱処理の温度は、100℃以上250℃以下である、請求項6から10の何れか1項に記載のグリーンラストの製造方法。
  13. 前記熱処理の温度は、150℃以上250℃以下である、請求項6から10の何れか1項に記載のグリーンラストの製造方法。
  14. 前記熱処理は、酸素が存在する環境で施される、請求項6から13の何れか1項に記載のグリーンラストの製造方法。
  15. 前記熱処理は、不活性ガス環境または真空中で施される、請求項6から13の何れか1項に記載のグリーンラストの製造方法。
  16. 請求項1から5の何れか1項に記載のグリーンラストを含有する、顔料。
  17. 請求項1から5の何れか1項に記載のグリーンラストを含有する、陰イオン交換体。
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