JP2022032261A - 抗菌・抗ウィルス部材 - Google Patents

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Masaaki Kato
真次 田中
Shinji Tanaka
玲子 山本
Reiko Yamamoto
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Abstract

【課題】抗菌性・抗ウィルス性に特に優れた抗菌・抗ウィルス部材を提供する。【解決手段】少なくとも表面に銅又は銅合金からなる銅層が形成されており、前記銅層は、遺伝子分解能を有していることを特徴とする。前記銅層は、銅の含有量が45質量%以上の銅又は銅合金で構成されていることが好ましい。また、前記遺伝子は、DNAおよびRNAの一つまたは複数であることが好ましい。さらに、前記銅層は、乾式で遺伝子分解能を有していることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、抗菌性および抗ウィルス性に優れた抗菌・抗ウィルス部材に関するものである。
一般に、医療機関、公共施設、衛生管理に厳しい研究施設(例えば食品、化粧品、医薬品等)において使用される机、椅子、棚等の什器や、手すり、ドアノブ等においては、複数の人が触れるおそれがあるため、伝染病の予防、ウィルスや菌の拡散防止の観点からも抗菌性・抗ウィルス性を有していることが望ましい。
ここで、銅又は銅合金においては、抗菌・抗ウィルス性を有することが知られている。このため、例えば特許文献1,2には、机、椅子、棚等の什器や、手すり、ドアノブ等の各種製品に抗菌・抗ウィルス性のある銅又は銅合金を使用することで、様々な菌、ウィルスによる感染を予防することが開示されている。
また、既存の製品の表面に抗菌性を付与するものとして、例えば特許文献3,4に示すように、フィルムの表面に、銅又は銅合金の膜を成膜した抗菌フィルム(抗ウィルスフィルム)が提案されている。
特許第5245015号公報 特許第6177441号公報 特開2010-247450号公報 特開2018-134753号公報
ところで、近年では、各種菌やウィルスを原因とする感染症が広く蔓延することがあり、従来よりもさらに抗菌性・抗ウィルス性に優れた抗菌・抗ウィルス部材が求められている。
本発明は、以上のような事情を背景としてなされたものであって、抗菌性・抗ウィルス性に特に優れた抗菌・抗ウィルス部材を提供することを目的としている。
この課題を解決するために、本発明の抗菌・抗ウィルス部材は、少なくとも表面に銅又は銅合金からなる銅層が形成されており、前記銅層は、遺伝子分解能を有していることを特徴としている。
この構成の抗菌・抗ウィルス部材においては、人が接触するおそれがある少なくとも表面に銅又は銅合金からなる銅層が配置されており、この銅層が遺伝子分解能を有しているので、銅又は銅合金が菌又はウィルスの遺伝子に直接作用することで、従来にも増して優れた抗菌性・抗ウィルス性を得ることができる。
ここで、本発明の抗菌・抗ウィルス部材においては、前記銅層は、銅の含有量が45質量%以上の銅又は銅合金で構成されていることが好ましい。
この場合、銅層における銅の含有量が45質量%以上とされているので、抗菌性・抗ウィルス性を十分に確保することができる。
また、本発明の抗菌・抗ウィルス部材においては、前記遺伝子は、DNA又はRNAの一つまたは複数であることが好ましい。
この場合、DNA又はRNAに対して分解能を有していることから、各種菌およびウィルスに対して有効である。
さらに、本発明の抗菌・抗ウィルス部材においては、前記銅層は、乾式で遺伝子分解能を有していることが好ましい。
この場合、前記銅層が乾式で遺伝子分解能を有しているので、水分が無い状態でも、抗菌性・抗ウィルス性を発揮することが可能となる。
また、本発明の抗菌・抗ウィルス部材においては、前記銅層の表面のXPS分析におけるCuとOのピークから求めたそれぞれの元素の存在比率Cu/Oが0.10以上であることが好ましい。
この場合、CuとOのピーク強度から求めたそれぞれの元素の存在比率Cu/Oが0.10以上とされているので、銅層の抗菌性・抗ウィルス性を十分に確保することができる。
さらに、本発明の抗菌・抗ウィルス部材においては、前記銅層の表面のXPS分析におけるCuのピークのうち、CuとCuOの合計(Cu+CuO)とCuOの比率(Cu+CuO)/CuOが1以上であることが好ましい。
この場合、銅層の表面において、CuとCuOの合計(Cu+CuO)がCuOよりも多く存在していることになり、銅層の抗菌性・抗ウィルス性を十分に確保することができる。
また、本発明の抗菌・抗ウィルス部材においては、前記銅層の表面のXPS分析におけるCuのピークのうちCuOの比率が40%以下であることが好ましい。
この場合、銅層の表面におけるCuOの比率が抑えられており、銅層の表面が酸化した場合であっても、銅層の抗菌性・抗ウィルス性を十分に確保することができる。
さらに、本発明の抗菌・抗ウィルス部材においては、前記銅層の表面に形成された表面酸化物皮膜の厚みが3μm以下であることが好ましい。
この場合、表面酸化物皮膜の厚みが3μm以下に抑えられているので、銅層の表面が酸化して表面酸化物皮膜が形成された場合であっても、銅層の抗菌性・抗ウィルス性を十分に確保することができる。
また、本発明の抗菌・抗ウィルス部材においては、前記銅層は、Zn,Sn,Ni,Al,Si,Mnから選択される1種又は2種以上を合計で0.1質量%以上含むとともに、銅の含有量が45質量%以上である銅合金で構成されていることが好ましい。
この場合、抗菌性・抗ウィルス性を十分に確保したまま、耐食性、耐変色性を向上させることができる。
さらに、本発明の抗菌・抗ウィルス部材においては、前記銅層は、0.9質量%NaCl水溶液中の腐食電位が100mV以下である銅又は銅合金で構成されていることが好ましい。
この場合、銅層の遺伝子分解能がさらに向上し、抗菌性・抗ウィルス性にさらに優れている。
また、本発明の抗菌・抗ウィルス部材においては、前記銅層の表面には複数の凸部が形成されており、前記凸部の高さが100nm以上10μm以下の範囲内、前記凸部の断面の円相当径が100nm以上10μm以下の範囲内、前記凸部同士の間隔が10μm以下とされていることが好ましい。
この場合、銅層の表面に形成された凸部により、対象となる菌およびウィルスの膜損傷を促進させることができ、細胞内の遺伝子を効率的に分解することが可能となる。よって、さらなる抗菌性・抗ウィルス性の向上を図ることができる。
また、本発明の抗菌・抗ウィルス部材においては、手すり、ドアノブ、ドアハンドル、レバーハンドル、ポール、机、椅子、棚、ナースカート取手の部材、ベッドサイドレール、グリップ、筆記具、包交車、台車、搬送台車、カート、机や椅子の構成材、キー材、医療用器具の部材、バルブハンドル、屋内電気スイッチ、機械装置のボタン、洋食器、および楽器として使用されるものとしてもよい。
この場合、上述の各種製品において、優れた抗菌性・抗ウィルス性を発現することが可能となる。
本発明によれば、抗菌性・抗ウィルス性に特に優れた抗菌・抗ウィルス部材を提供することができる。
本発明の実施形態における抗菌・抗ウィルス部材の一例を示す説明図である。 本発明の実施形態における抗菌・抗ウィルス部材の銅層の表面の拡大説明図である。
以下に、本発明の一実施形態である抗菌・抗ウィルス部材について説明する。
本実施形態である抗菌・抗ウィルス部材は、例えば、机、椅子、棚等の什器や、手すり、ドアノブ等の不特定多数の人が接触するような各種製品に適用され、これら各種製品の表面に抗菌性・抗ウィルス性を付与するものである。
ここで、本実施形態である抗菌・抗ウィルス部材10は、グラム陽性菌、グラム陰性菌のいずれに対しても抗菌性を有している。なお、グラム陽性菌としては、たとえば、ブドウ球菌、腸球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、炭疽菌、破傷風菌、ウェルシュ菌、ディフィシル菌、リステリア菌、ジフテリア菌、結核菌などが挙げられる。グラム陰性菌としては、たとえば、大腸菌、緑膿菌、百日咳菌、野兎病菌、レジオネラ菌、チフス菌、サルモネラ菌、赤痢菌、肺炎桿菌、セラチア菌、プロテウス菌、エンテロバクター菌、ペスト菌、腸炎ビブリオ、コレラ菌、インフルエンザ菌、淋菌、髄膜炎菌、カタール球菌、アシネトバクター、ピロリ菌などが挙げられる。また、これら菌の中でも特定の抗菌薬に対して耐性を持つ、いわゆる薬剤耐性菌にも効果を発揮する。
また、本実施形態である抗菌・抗ウィルス部材10は、各種ウィルスに対して抗ウィルス性を有している。対象となるウィルスは、例えば、エンベロープを持つウィルスとしては、インフルエンザウィルス、コロナウィルス、エボラウィルス、ジカウィルスなどが挙げられ、エンベロープなしのウィルスとしては、ネコカリシウィルス、ノロウィルスなどが挙げられる。
本実施形態である抗菌・抗ウィルス部材10は、少なくとも表面に銅又は銅合金からなる銅層12が形成されている。
本実施形態では、図1に示すように、基材11の表面に銅層12が形成された構造とされている。
ここで、基材11の材質等は特に制限はなく、例えば金属、ガラス、樹脂などで構成されたものであってもよい。
そして、上述の銅層12は、遺伝子分解能を有している。ここで、本実施形態においては、遺伝子分解能とは、銅層12の表面に付着したDNAまたはRNAの個数が6時間経過後に20%未満にまで減少する特性である。上述の菌やウィルスの遺伝子を分解することにより、優れた抗菌・抗ウィルス性が発揮されることになる。
ここで、上述の遺伝子分解能で対象となる遺伝子は、DNAおよびRNAの一つまたは複数であり、二重鎖構造、一重鎖構造に関わらず、分解されることになる。
また、本実施形態においては、銅層12は、乾式において上述の遺伝子分解能を有していることが好ましい。銅層12が乾燥した状態でも遺伝子を分解でき、優れた抗菌・抗ウィルス性を得ることが可能となる。
ここで、銅層12は、銅の含有量が45質量%以上の銅又は銅合金で構成されていることが好ましい。銅層12における銅の含有量が高い方が上述の遺伝子分解能が発現しやすくなる。
なお、銅層12における銅の含有量は、47.5質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。
また、銅層12は、Zn,Sn,Ni,Al,Si,Mnから選択される1種又は2種以上を合計で0.1質量%以上含むとともに、銅の含有量が45質量%以上である銅合金で構成されていてもよい。
このような銅合金は、耐食性および耐変色性に優れており、長期間使用した場合であっても外観の変化が少ない。
なお、Zn,Sn,Ni,Al,Si,Mnから選択される1種又は2種以上の合計含有量は5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。
また、本実施形態においては、銅層12の表面が酸化することがある。ここで、銅層12の表面にCuOが多く存在した場合には、銅層12の遺伝子分解能が低下するおそれがあることが分かった。
そこで、本実施形態においては、銅層12は、表面のXPS分析におけるCuとOのピーク強度から求めたそれぞれの元素の存在比率Cu/Oが0.10以上であることが好ましい。
銅層12が酸化した場合であっても、銅層12の表面のXPS分析におけるCuとOのピーク強度から求めたそれぞれの元素の存在比率Cu/Oを0.10以上とすることで、遺伝子分解能を十分に発現することができ、抗菌性・抗ウィルス性を向上させることが可能となる。
なお、銅層12の表面のXPS分析におけるCuとOのピーク強度から求めたそれぞれの元素の存在比率Cu/Oは、0.15以上であることがより好ましく、0.20以上であることがさらに好ましい。
さらに、本実施形態においては、銅層12は、表面のXPS分析におけるCuのピークのうち、CuとCuOの合計(Cu+CuO)とCuOの比率(Cu+CuO)/CuOが1以上であることが好ましい。
銅層12が酸化した場合であっても、銅層12の表面のXPS分析におけるCuのピークのうち、CuとCuOの合計(Cu+CuO)とCuOの比率(Cu+CuO)/CuOが1以上であれば、遺伝子分解能が十分に発現し、抗菌性・抗ウィルス性を向上させることが可能となる。
なお、銅層12の表面のXPS分析におけるCuのピークのうち、CuとCuOの合計(Cu+CuO)とCuOの比率(Cu+CuO)/CuOは、2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましい。
また、本実施形態においては、銅層12は、表面のXPS分析におけるCuのピークのうちCuOの比率が40%以下であることが好ましい。
銅層12が酸化した場合であっても、銅層12の表面のXPS分析におけるCuのピークのうちCuOの比率が40%以下であれば、遺伝子分解能が十分に発現し、抗菌性・抗ウィルス性を向上させることが可能となる。
なお、銅層12の表面のXPS分析におけるCuのピークのうちCuOの比率は35%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
さらに、本実施形態においては、図2に示すように、銅層12は、その表面に形成された表面酸化物皮膜13の厚みtが3μm以下であることが好ましい。
銅層12が酸化した場合であっても、形成された表面酸化物皮膜13の厚みtが3μm以下であれば、遺伝子分解能が十分に発現し、抗菌性・抗ウィルス性を向上させることが可能となる。
なお、銅層12の表面に形成された表面酸化物皮膜13の厚みtは2.5μm以下であることがより好ましく、2.0μm以下であることがさらに好ましい。
また、銅層12は、0.9質量%NaCl水溶液中の腐食電位が100mV以下である銅又は銅合金で構成されていることが好ましい。
0.9質量%NaCl水溶液中の腐食電位が100mV以下である銅又は銅合金においては、上述の遺伝子分解能に優れていることから、銅層12を上述の銅又は銅合金で構成することにより、抗菌性・抗ウィルス性を向上させることが可能となる。
また、銅層12の表面には、図2に示すように、複数の凸部15が形成されていることが好ましい。そして、この凸部15の高さHが100nm以上10μm以下の範囲内、凸部15の延在方向に直交する断面の円相当径Dが100nm以上10μm以下の範囲内、凸部15同士の間隔Pが10μm以下とされていることが好ましい。
このように、銅層12の表面に複数の凸部15が形成されていることで、細胞の膜を破壊して内部の遺伝子を分解することができ、抗菌性・抗ウィルス性をさらに向上させることが可能となる。
なお、銅層12の酸化状態は、例えば、銅又は銅合金の表面をリン酸処理し、その後、熱酸化させることにより、調整することが可能となる。
また、超短パルスレーザーを用いて加工することで、銅層12の表面に複数の凸部15を形成することが可能となる。
以上のような構成とされた本実施形態である抗菌・抗ウィルス部材10によれば、少なくとも表面に銅又は銅合金からなる銅層12が配置されており、この銅層12が遺伝子分解能を有しているので、菌又はウィルスの遺伝子に直接作用することで、十分に優れた抗菌性・抗ウィルス性を得ることができる。
また、本実施形態において、銅層12が、銅の含有量が45質量%以上の銅又は銅合金で構成されている場合には、抗菌性・抗ウィルス性を十分に確保することができる。
さらに、本実施形態においては、銅層12は、DNA又はRNAに対して分解能を有していることから、各種菌およびウィルスに対して有効である。
また、本実施形態においては、銅層12は、乾式で遺伝子分解能を有しているので、水分が無い状態でも、抗菌性・抗ウィルス性を発揮することが可能となる。
さらに、本実施形態において、銅層12の表面が酸化した場合であっても、銅層12の表面のXPS分析におけるCuとOのピーク強度から求めたそれぞれの元素の存在比率Cu/Oが0.10以上である場合には、抗菌性・抗ウィルス性を十分に確保することができる。
あるいは、銅層12の表面のXPS分析におけるCuのピークのうち、CuとCuOの合計(Cu+CuO)とCuOの比率(Cu+CuO)/CuOが1以上である場合には、抗菌性・抗ウィルス性を十分に確保することができる。
また、銅層12の表面のXPS分析におけるCuのピークのうちCuOの比率が40%以下である場合には、抗菌性・抗ウィルス性を十分に確保することができる。
また、本実施形態において、銅層12の表面に形成された表面酸化物皮膜13の厚みtが3μm以下である場合には、表面酸化物皮膜13が形成された場合であっても、抗菌性・抗ウィルス性を十分に確保することができる。
また、本実施形態において、銅層12が、Zn,Sn,Ni,Al,Si,Mnから選択される1種又は2種以上を合計で0.1質量%以上含むとともに、銅の含有量が45質量%以上である銅合金で構成されている場合には、抗菌性・抗ウィルス性を十分に確保したまま、耐食性、耐変色性を向上させることができる。
さらに、本実施形態において、銅層12が、0.9質量%NaCl水溶液中の腐食電位が100mV以下である銅又は銅合金で構成されている場合には、銅層12の遺伝子分解能がさらに向上し、抗菌性・抗ウィルス性にさらに優れることになる。
また、本実施形態において、図2に示すように、銅層12の表面に複数の凸部15が形成され、この凸部15の高さHが100nm以上10μm以下の範囲内、凸部15の断面の円相当径Dが100nm以上10μm以下の範囲内、凸部15,15同士の間隔Pが10μm以下とされている場合には、銅層12の表面に付着した菌およびウィルスの膜損傷を促進させることができ、これらの細胞内の遺伝子を効率的に分解することが可能となる。よって、さらなる抗菌性・抗ウィルス性の向上を図ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、銅層を構成する銅又は銅合金は、実施形態に記載したものに限定されることはなく、銅層が遺伝子分解能を有するものであれば、銅層を構成する銅又は銅合金に特に制限はない。
また、本実施形態では、基材の表面に銅層を形成した構造のものを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、部材全体が銅又は銅合金で構成されたものであってもよく、少なくともその表面が遺伝子分解能を有していればよい。
例えば、表面が遺伝子分解能を有していれば、銅又は銅合金で構成された線棒材、管材、板条材であってもよいし、これらの銅部材を素材として用いた各種加工品であってもよい。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
電気銅、及びその他市販の純度99質量%以上の純金属を用いて、表1に記載の組成となるように、各種成分調整した原料を真空溶解炉にて溶解させた。
その後、幅70mm×厚み35mm×長さ200mmの金型鋳型に溶湯を注ぎ、試験サンプルの板状鋳塊を得た。
板状鋳塊は全面の鋳肌部分及び酸化物を切削加工により取り除き、幅65mm×厚み30mm×長さ190mmの試料を作成した。
この鋳塊を800℃に加熱し、3パスで厚み8mmまで熱間圧延し、空冷及び冷却ファンを用いた強制空冷により冷却した。
熱間圧延した試料の表面の酸化物を研摩により除去した後、冷間圧延にて厚み1.0mmまで圧延し、連続炉(光洋サーモシステム製:810A)を用い、窒素雰囲気中で炉設定温度、送り速度を変化することにより、最高到達温度を650℃、最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度域での保持時間を0.3minの条件で熱処理した。
熱処理後に更に0.9mm(加工率10%)まで冷間圧延し、試料とした。
作成したサンプルに対して、純水にオルトリン酸を50質量%となるように調整した水溶液中で電解研磨を行った。条件はサンプルを正極側にセットし、2Vの電位差を10分間付与することで、平滑性の高く、かつ反応性の高い表面を露出させ、その直後に酸素分圧を制御した雰囲気で熱処理を行うことで表面の酸化物の状態を変化させた。このように酸化物を形成することで酸化物の厚みを均一化することが可能となる。
また、表1に記載のように、一部のサンプルに対して、超短パルスレーザーを用いて表面に複数の凸部を形成した。凸部の高さを2μm、凸部の延在方向に直交する断面の円相当径を2μm、凸部同士の間隔を2μmとした。
上述のようにして得られた抗菌・抗ウィルス部材について、以下の項目について測定した。
(乾式の遺伝子分解能の確認方法)
対象のサンプルの表面を十分に洗浄し、核酸試料溶液を塗布した後に、常温にて6時間静置した。
ポリエステルスワブにて塗布した核酸試料をふき取った後、界面活性剤水溶液中にて30秒間攪拌し核酸試料を回収した(以下、回収液)。
回収液に対し、アクリジンオレンジ(以下、AO)を添加し、常温にて5分保持後、その蛍光量により核酸の回収率を評価した。なお、AOは二重鎖(ds)DNAおよび一重鎖(ss)DNA・RNAのいずれにも結合するが、結合様式が異なるため別波長の蛍光を生じる。したがって、dsDNA、ssDNA・RNAを個別に評価できる。回収液中の核酸量は、あらかじめ濃度のわかっている核酸溶液の希釈系列に対して蛍光色素を添加、赤色および緑色波長の蛍光強度を測定し、検量線を作成して求めた。
回収率は、dsDNA、ssDNA+RNA塗布量に対する6時間経過後の回収液中のdsDNA、ssDNA+RNA量の比を用いて求めた。
そして、dsDNAの回収率が10%未満の場合を「◎」、10%以上20%未満を「〇」、20%以上50%未満を「△」、50%以上を「×」と表1および表2に記載した。
また、ssDNA+RNAの回収率が10%未満の場合を「◎」、10%以上20%未満を「〇」、20%以上50%未満を「△」、50%以上を「×」と表1および表2に記載した。
なお、dsDNAの回収率、またはssDNA+RNAの回収率の少なくとも一方が20%未満(つまり、○または◎)である部材について、遺伝子分解能を有するとした。
(XPSによる表面分析)
対象のサンプルに対し、XPSにて表面φ200μmの領域に対して分析を行った。表面のCuおよびOのピークについてそれぞれ積分強度値を取得し、相対感度係数法による濃度換算を実施し、CuとOの存在比率を求めて、Cu/Oの比率を算出した。表面のCu、CuO、CuOの比率については、Cuのピークを用い、化学状態分離をして求めた。具体的には、まずCu2p3/2ピークについて、CuO由来の933.7eV、およびCuまたはCuO由来の932.5~932.7eVの二つのピークに分離した。そして各ピークの積分強度値の比をそれぞれの存在量比とした。なお、CuとCuOは932.5~932.7eVのエネルギー帯にそれぞれにピークを持ち、原理的にピーク分離が難しいため、CuとCuOを合わせた形での存在量として算出した。また、CuのピークのうちCuOの比率は、CuO/(Cu+CuO+CuO)の値とした。表1に表面XPS分析結果を示す。
(酸化物皮膜の膜厚の計測)
サンプルに対しCP研磨(クロスセクションポリッシャ)にて断面出しの研磨を行い、断面方向からEPMAのマッピングを用いて酸化物の膜厚を観察し、50μm×50μmの視野において、異常点を除いた上で、最も厚い酸化物の膜厚を計測した。
その結果、実施例においては全てのサンプルで3μm以下であった。
(腐食電位の測定方法)
一部のサンプルについて、腐食電位を測定した。電気化学測定は、三電極法にて実施した。対極には白金メッシュを用い、参照電極は銀/塩化銀電極(3M NaCl)を使用し、試料片を作用電極とした。ポリカーボネート製の電気化学測定セルに、試料片を装着し、露出表面積は0.95cmとした。
電解液は0.9質量%NaCl水溶液を用い、35±1℃の恒温槽内に24時間静置し、ポテンショスタットにて開回路電位(以下、OCP)測定を実施した。その後、OCPよりも0.25V卑な電位より、1mV/sの速度で電流密度が1mA/cmを超える電位まで掃引し、動電位測定を実施した。得られた分極曲線より、腐食電位(Ecorr)を求めた。測定結果を表2に示す。
(抗菌性の評価方法)
抗菌性評価に用いる簡易抗菌性試験法はJIS Z 2801に倣い、フィルム法にて試料上に菌を播種し、一定時間経過後、EDTA―2Naを添加した生理食塩水にて菌を回収、生菌数をその呼吸活性を指標に蛍光色素法にて定量した。蛍光色素法を用いたことにより、短時間で生菌数評価が可能である。菌種としてはJIS指定の大腸菌(ATCC8739株)および黄色ブドウ球菌(ATTC6538株)を用いた。
ガラス容器の底面に、試料片を配置した。次いで、試料片の上面に、0.9質量%NaCl水溶液または500倍希釈普通ブイヨン(1/500NB)に懸濁した菌液を約1.0×10個播種し、この菌液上に、乾燥防止のためにポリエチレン(PE)シートを載せた。
その後、ガラス容器を35±1℃の培養環境下に静置し、菌の播種から一定時間経過後、PEシートを外し、EDTA-2Naを含む0.9質量%NaClを添加してピペッティングにより菌を回収した。
回収した菌液に蛍光色素(CTC)を添加し、35±1℃にて30分培養後、蛍光強度測定を実施、事前に作製した検量線を用い生菌数を求めた。その結果から菌数が1/10になる時間(T1/10)の測定を行った。
1/10が10分以内の場合に抗菌性「◎」、10分超え20分以下の場合に「○」、20分超え100分以下の場合に「△」、100分超えで1/10にならなかった場合に「×」と評価し、表1および表2に記載した。
(耐変色性の試験方法)
材料の耐変色性を評価する耐変色性試験は、恒温恒湿槽を用いて温度60℃、相対湿度95%の雰囲気中に各サンプルを暴露した。試験時間は24時間とし、試験後に試料を取り出し、外観の変化を確認した。
耐変色食性評価として外観上の変化が全面にわたって確認されないものを「A」、一部にわたって外観の変色が見られる場合を「B」、全面にわたって外観の変色が見られた場合を「C」とし、表1および表2に記載した。ここでいう外観の変色は、コニカミノルタ製の分光測色計「CM-700d」を使用し、SCI(正反射光込み)方式でJIS 8781-4に従い色差ΔEで示される色差10以上を基準とした。色差は試験前後でのそれぞれの変化を表し、色差が10以上では目視で十分に変色していることが確認できる。
Figure 2022032261000001
Figure 2022032261000002
表面にステンレス鋼からなるステンレス層が形成され、遺伝子分解能が確認されなかった比較例1においては、抗菌性の判定が「×」となった。
表面にNi-30質量%Cu合金からなるニッケル合金層が形成され、遺伝子分解能が確認されなかった比較例2においては、抗菌性の判定が「△」となった。
表面に純銅からなる銅層を形成したが、遺伝子分解能が確認されなかった比較例3においては、抗菌性の判定が「×」となった。銅層の表面酸化状態によって遺伝子分解能が確認されなかったものと推測される。
これに対して、表面に銅又は銅合金からなる銅層が形成され、銅層において遺伝子分解能が確認された本発明例1-13においては、抗菌性の判定が「〇」または「◎」となった。
以上の結果から、本発明例によれば、抗菌性・抗ウィルス性に特に優れた抗菌・抗ウィルス部材を提供可能であることが確認された。
10 抗菌・抗ウィルス部材
11 基材
12 銅層
13 表面酸化物皮膜
15 凸部

Claims (12)

  1. 少なくとも表面に銅又は銅合金からなる銅層が形成されており、
    前記銅層は、遺伝子分解能を有していることを特徴とする抗菌・抗ウィルス部材。
  2. 前記銅層は、銅の含有量が45質量%以上の銅又は銅合金で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の抗菌・抗ウィルス部材。
  3. 前記遺伝子は、DNAおよびRNAの一つまたは複数であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の抗菌・抗ウィルス部材。
  4. 前記銅層は、乾式で遺伝子分解能を有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウィルス部材。
  5. 前記銅層の表面のXPS分析におけるCuとOのピークから求めたそれぞれの元素の存在比率Cu/Oが0.10以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウィルス部材。
  6. 前記銅層の表面のXPS分析におけるCuのピークのうち、CuとCuOの合計(Cu+CuO)とCuOの比率(Cu+CuO)/CuOが1以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウィルス部材。
  7. 前記銅層の表面のXPS分析におけるCuのピークのうちCuOの比率が40%以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウィルス部材。
  8. 前記銅層の表面に形成された表面酸化物皮膜の厚みが3μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウィルス部材。
  9. 前記銅層は、Zn,Sn,Ni,Al,Si,Mnから選択される1種又は2種以上を合計で0.1質量%以上含むとともに、銅の含有量が45質量%以上である銅合金で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウィルス部材。
  10. 前記銅層は、0.9質量%NaCl水溶液中の腐食電位が100mV以下である銅又は銅合金で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウィルス部材。
  11. 前記銅層の表面には複数の凸部が形成されており、前記凸部の高さが100nm以上10μm以下の範囲内、前記凸部の断面の円相当径が100nm以上10μm以下の範囲内、前記凸部同士の間隔が10μm以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウィルス部材。
  12. 手すり、ドアノブ、ドアハンドル、レバーハンドル、ポール、机、椅子、棚、ナースカート取手の部材、ベッドサイドレール、グリップ、筆記具、包交車、台車、搬送台車、カート、机や椅子の構成材、キー材、医療用器具の部材、バルブハンドル、屋内電気スイッチ、機械装置のボタン、洋食器、および楽器として使用されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウィルス部材。
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