本発明のシーラント材用ゴム組成物(シーラント材)は、製造後60日以内の期間における任意の10日間、25℃で保存した後に、保存前後において、それぞれ測定した−20℃における粘度の差(粘度の上昇幅)が4.0kPa・s以下である。
図10は、シーラント材の粘度変化の様子の一例を模式的に示す図である。図10に示す通り、本発明者の検討の結果、製造後に粘度が上昇するものの、製造後60日以内の期間における任意の10日間、25℃で保存した後に、保存前後において、それぞれ測定した−20℃における粘度の上昇(差)が4.0kPa・s以下であれば、すなわち、製造後60日以内の期間における任意の10日間における粘度の上昇速度が特定値以下であれば、製造から100日程度で粘度が安定することが分かった。一方、粘度の上昇(差)が4.0kPa・sより大きいものは、すなわち、製造後60日以内の期間における任意の10日間における粘度の上昇速度が特定値を超えるものは、製造から120日経過してもまだ粘度が上昇していることが分かった。
このように、製造後60日以内の期間における任意の10日間、25℃で保存した後に、保存前後において、それぞれ測定した−20℃における粘度の差(粘度の上昇幅)を特定値以下とすることで、製造から100日程度でシーラント材の粘度が安定するため、低温シール性(−50℃におけるシール性)の持続性に優れたシーラント材を提供することができる。製造から100日程度でシーラント材の粘度が安定することにより、経年による粘度の上昇が抑制され、粘度の影響が大きい低温域(−50℃)においても良好な流動性を確保でき、経年による低温シール性の低下を抑制でき、低温シール性の持続性に優れるものと推測される。
本発明のゴム組成物は、製造後60日以内の期間における任意の10日間、25℃で保存した後に、保存前後において、それぞれ測定した−20℃における粘度の差が4.0kPa・s以下であり、好ましくは3.5kPa・s以下、より好ましくは3.0kPa・s以下、更に好ましくは2.5kPa・s以下である。また、粘度の差は小さいほうが好ましいため、下限は、特に限定されないが、好ましくは0.5kPa・s以上、より好ましくは1.0kPa・s以上である。
なお、本明細書において、−20℃におけるシーラント材用ゴム組成物(シーラント材)の粘度は、JIS K 6833に準拠し、−20℃の条件で、回転式粘度計により測定される値であり、具体的には実施例の方法により測定される値である。
更に、本明細書において、シーラント材用ゴム組成物を25℃で10日間保存する方法としては、シーラント材用ゴム組成物を25℃、常圧で10日間(240時間)静置すればよい。
製造後60日以内の期間における任意の10日間とは、製造後60日以内の期間内に収まる10日間であれば特に限定されない。例えば、製造直後(例えば、シーラント材用ゴム組成物を調製してから6時間以内)から25℃で10日間保存し、製造直後と、製造後25℃で10日間保存した後に、それぞれ測定した−20℃における粘度の差を算出すればよい。これにより、製造したシーラント材の低温シール性の持続性の評価をより迅速に行うことができる。なお、シーラント材のタイヤ内面への塗布方法は特に限定されないが、連続混練機により調製されたシーラント材をタイヤ内周面に直接塗布する場合、シーラント材の製造直後とは、シーラント材のタイヤ内面への塗布直後を意味する。
上記ゴム組成物において、製造後60日以内の期間における任意の10日間、25℃で保存した後に、保存前後において、それぞれ測定した−20℃における特定の粘度の差は、該ゴム組成物を後述する所定の配合とすることにより、付与することができる。
本発明者の検討の結果、製造後におけるシーラント材の粘度上昇の主な要因は、架橋の進行であることが判明した。そのため、粘度上昇を抑える最も重要な技術的ポイントは、ゴムと架橋剤の反応を抑えることである。そこで、架橋剤量が多いと未反応の架橋剤量が多くなり、この未反応の架橋剤により常温でも徐々に架橋が進行することによって粘度上昇の原因となるため、架橋剤量を最適化させることで、無駄な架橋反応を防ぎ、結果的に架橋反応による粘度上昇を低減できる。また、ゴムとして、ブチル系ゴムを用いる場合は、反応性が高いハロゲン化ブチルゴムではなく、ハロゲン化されていないブチルゴムを使用することが好ましい。
粘度上昇を抑えるためのより具体的な手法としては、後に詳述するシーラント材として、ゴム成分として、ブチルゴムを使用すること、液状ポリマー(好ましくは比較的高分子量の(後述する動粘度を有する)液状ポリマー)の含有量を特定量以上とすること、架橋剤(有機過酸化物、硫黄)の含有量を特定量以下とすること、架橋助剤の含有量を特定量以下とすること、可塑剤量(オイル量)を特定量以上とすることにより、上記粘度差を低減できる。
本発明のシーラント材用ゴム組成物(シーラント材)は、シーラントタイヤのトレッド等、パンク可能性があるタイヤ内面の部位に適用されるものであり、以下において、シーラントタイヤの製造方法の好適例を説明しつつ、該シーラント材について説明する。
シーラントタイヤは、例えば、シーラント材を構成する各成分を混合してシーラント材を調製し、次いで、得られたシーラント材を塗布等によりタイヤ内周面に貼り付け、シーラント層を形成することにより、製造できる。該シーラントタイヤは、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有する。
以下、本発明のシーラントタイヤの製造方法の好適例について説明する。
シーラントタイヤは、例えば、シーラント材を構成する各成分を混合してシーラント材を調製し、次いで、得られたシーラント材を塗布等によりタイヤ内周面に貼り付け、シーラント層を形成することにより、製造できる。該シーラントタイヤは、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有する。
シーラント材はゴム成分と架橋の量により、硬さ(粘度)をコントロールして、使用温度に応じた粘度にコントロールする必要がある。そこでゴム成分のコントロールとして、液状ポリマー、可塑剤、カーボンブラックの種類や量を調整する。一方、架橋の量のコントロールのために、架橋剤と架橋助剤の種類や量を調整する。
シーラント材としては、粘着性を有するものであれば特に限定されず、タイヤのパンクシールに用いられる通常のゴム組成物を使用することができる。ゴム組成物の主成分を構成するゴム成分として、ブチル系ゴムが用いられる。ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム(IIR)の他、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)などのハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等も挙げられる。なかでも、流動性等の観点から、ブチルゴム、若しくはハロゲン化ブチルゴムのどちらか一方、又は両方を好適に使用できる。また、ブチル系ゴムは、ペレット化されたものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機にブチル系ゴムを精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
上記ブチル系ゴムは、ブチルゴムであることが好ましい。ブチルゴムを用いることで上記粘度差を低減することに寄与でき、低温シール性の持続性の良好なシーラント材がより好適に得られる。
本発明のゴム組成物が、ブチルゴムと有機過酸化物とを(好ましくは架橋助剤も)含む場合、架橋が適度な速度で進行するため、混練時間が比較的短時間である二軸混練押出機等の連続混練機を用いて調製されることに適している。これにより、過架橋等の問題を抑制でき、より良好な低温シール性の持続性が得られる。
上記ブチル系ゴムは、シーラント材の流動性をより好適に確保できるという観点から、125℃のムーニー粘度ML1+8は20〜60が好ましく、40〜60がより好ましい。20未満であると、流動性が低下するおそれがあり、60を超えると、シール性が低下するおそれがある。また、ムーニー粘度が上記範囲内のブチル系ゴムを使用することにより、上記粘度差を低減することに寄与でき、低温シール性の持続性の良好なシーラント材がより好適に得られる。
なお、125℃のムーニー粘度ML1+8は、JIS K−6300−1:2001に準拠し、試験温度125℃で、L形の形状を有するロータを余熱時間1分間とし、ロータの回転時間を8分間として測定されるものである。
上記ブチル系ゴムの含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。これにより、上記粘度差を低減することに寄与でき、低温シール性の持続性の良好なシーラント材がより好適に得られる。
上記ゴム成分に加えて、ゴム成分として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴム等、他の成分を併用しても良い。
上記ゴム成分として、ブチル系ゴムを用いずに、上記ジエン系ゴムのみを使用してもよい。ジエン系ゴムの中でも、良好なシール性能が得られ、低温シール性の持続性の良好なシーラント材がより好適に得られるという理由から、NR、BRが好ましい。
上記NRの含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記BRの含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜80質量%である。
シーラント材は、液状ポリマーを含むことが好ましい。
シーラント材中の液状ポリマーとして、液状ポリブテン、液状ポリイソブテン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリα−オレフィン、液状イソブチレン、液状エチレンα−オレフィン共重合体、液状エチレンプロピレン共重合体、液状エチレンブチレン共重合体等が挙げられる。なかでも、粘着性付与等の観点から、液状ポリブテンが好ましい。液状ポリブテンとしては、イソブテンを主体とし、更にノルマルブテンを反応させて得られる長鎖状炭化水素の分子構造を持った共重合体等が挙げられ、水素添加型液状ポリブテンも使用可能である。液状ポリマーとしては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
液状ポリブテン等の液状ポリマーの100℃における動粘度は、好ましくは3540mm2/s以上、より好ましくは3600mm2/s以上、更に好ましくは3650mm2/s以上である。3540mm2/s未満であると、シーラント材の粘度が下がり過ぎて、タイヤ使用中に流動しやすくなり、シール性、ユニフォミティーが悪化するおそれがある。
該100℃における動粘度は、好ましくは4010mm2/s以下、より好ましくは3900mm2/s以下、更に好ましくは3800mm2/s以下である。4010mm2/sを超えると、シール性が悪化するおそれがある。
液状ポリブテン等の液状ポリマーの40℃における動粘度は、好ましくは120000mm2/s以上、より好ましくは150000mm2/s以上である。120000mm2/s未満であると、シーラント材の粘度が下がり過ぎて、タイヤ使用中に流動しやすくなり、シール性、ユニフォミティーが悪化するおそれがある。
該40℃における動粘度は、好ましくは200000mm2/s以下、より好ましくは170000mm2/s以下である。200000mm2/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
なお、動粘度は、JIS K2283−2000に準拠し、100℃、40℃の条件で測定される値である。
液状ポリマーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは120質量部以上である。50質量部未満では、粘着性が低下するおそれがある。また、上記粘度差を充分に低減できないおそれがある。該含有量は、好ましくは400質量部以下、より好ましくは350質量部以下、更に好ましくは300質量部以下、特に更に好ましくは250質量部以下である。400質量部を超えると、シーラント材の流動が生じるおそれがある。
中でも、上記液状ポリマーとしては、100℃における動粘度及び40℃における動粘度が上記範囲内である液状ポリマーを1種のみ、上述した含有量で用いることが好ましい。このような種類、含有量の液状ポリマーを用いることにより、上記粘度差を低減することに寄与でき、低温シール性の持続性の良好なシーラント材がより好適に得られる。
具体的には、ゴム成分100質量部に対して、液状ポリマーを100質量部(好ましくは120質量部)以上配合すること、更には、液状ポリマーとして、100℃における動粘度及び40℃における動粘度が上記範囲内である液状ポリマーを使用することにより、上記粘度差を好適に特定値以下とすることができる。
架橋剤としては、有機過酸化物、硫黄等が使用できる。なかでも、架橋が適度な速度で進行するため、混練時間が比較的短時間である二軸混練押出機等の連続混練機を用いて調製されることに適しており、過架橋等の問題を抑制でき、より良好な低温シール性の持続性が得られるという理由から、有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物(架橋剤)としては特に限定されず、従来公知の化合物を使用できる。有機過酸化物架橋系において、ブチル系ゴムや液状ポリマーを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性が改善される。
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド等のアシルパーオキサイド類、1−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル類、メチルエチルケトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,3−ビス(1−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのアルキルパーオキサイド類、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、粘着性、流動性の観点から、アシルパーオキサイド類が好ましく、ジベンゾイルパーオキサイドが特に好ましい。また、有機過酸化物(架橋剤)は、粉体状態のものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機に有機過酸化物(架橋剤)を精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
有機過酸化物(架橋剤)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。0.5質量部未満では、架橋密度が低くなり、上記粘度差を充分に低減できないおそれがある。該含有量は、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。8質量部を超えると、未反応の有機過酸化物が多くなり常温でも緩やかに架橋反応が進行し、上記粘度差を充分に低減できないおそれがある。
ゴム成分100質量部に対して、有機過酸化物を8質量部(好ましくは5質量部)以下配合することにより、上記粘度差を好適に特定値以下とすることができる。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.5質量部未満では、架橋密度が低くなり、上記粘度差を充分に低減できないおそれがある。該含有量は、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。4質量部を超えると、未反応の硫黄が多くなり常温でも緩やかに架橋反応が進行し、上記粘度差を充分に低減できないおそれがある。
ゴム成分100質量部に対して、硫黄を4質量部(好ましくは3質量部、より好ましくは2.5質量部)以下配合することにより、上記粘度差を好適に特定値以下とすることができる。
架橋助剤(加硫促進剤)としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオ尿素系、グアニジン系、ジチオカルバミン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサントゲン酸系、及びキノンジオキシム化合物(キノイド化合物)からなる群より選択される少なくとも1種を使用することができるが、例えば、キノンジオキシム化合物(キノイド化合物)を好適に使用可能である。有機過酸化物に更に架橋助剤を添加した架橋系において、ブチル系ゴムや液状ポリマーを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性が改善される。
キノンジオキシム化合物としては、p−ベンゾキノンジオキシム、p−キノンジオキシム、p−キノンジオキシムジアセテート、p−キノンジオキシムジカプロエート、p−キノンジオキシムジラウレート、p−キノンジオキシムジステアレート、p−キノンジオキシムジクロトネート、p−キノンジオキシムジナフテネート、p−キノンジオキシムスクシネート、p−キノンジオキシムアジペート、p−キノンジオキシムジフロエート(difuroate)、p−キノンジオキシムジベンゾエート、p−キノンジオキシムジ(o−クロロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−クロロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−ビトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(m−ビトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(3,5−ジニトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−メトキシベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(n−アミルオキシベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(m−ブロモベンゾエート)等が挙げられる。なかでも、粘着性、シール性、流動性の観点から、p−ベンゾキノンジオキシムが好ましい。また、架橋助剤(加硫促進剤)は、粉体状態のものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機に架橋助剤(加硫促進剤)を精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
キノンジオキシム化合物等の架橋助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。0.5質量部未満では、上記粘度差を充分に低減できないおそれがある。該含有量は、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。8質量部を超えると、未反応のキノンジオキシム化合物が多くなり、有機過酸化物との相互作用で常温でも緩やかに架橋反応し、上記粘度差を充分に低減できないおそれがある。
ゴム成分100質量部に対して、架橋助剤を8質量部(好ましくは5質量部)以下配合することにより、上記粘度差を好適に特定値以下とすることができる。
シーラント材には、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ等の無機充填剤、芳香族系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル等の可塑剤を添加しても良い。
無機充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。1質量部未満では、紫外線による劣化により、シール性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。50質量部を超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
紫外線による劣化を防止する観点から、無機充填剤としてカーボンブラックが好ましい。この場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。1質量部未満では、紫外線による劣化により、シール性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。50質量部を超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
可塑剤(オイル)としては、低温の軟化状態を維持するため軟化点温度は低い方がよいという理由から、ジオクチルフタレート(DOP)が好ましい。
なお、本明細書において、可塑剤には、上記液状ポリマーは含まれない。
可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。15質量部未満では、上記粘度差を充分に低減できないおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。40質量部を超えると、混練機内ですべりが生じ、シーラント材を混練することが困難となるおそれがある。
ゴム成分100質量部に対して、可塑剤を15質量部(好ましくは20質量部)以上配合することにより、上記粘度差を好適に特定値以下とすることができる。
シーラント材としては、ペレット化したブチル系ゴム、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤を混合することにより調製されたものであることが好ましく、ペレット化したブチル系ゴム、液状のポリブテン、可塑剤、粉体のカーボンブラック、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤を混合することにより調製されたものであることがより好ましい。これにより、連続混練機に各原料を好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
シーラント材としては、ブチル系ゴムを含むゴム成分に対して、所定量の液状ポリマー、有機過酸化物、架橋助剤を配合したものが好ましい。
シーラント材に、ブチル系ゴムに液状ポリブテン等の液状ポリマーを配合したものを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性がバランス良く改善される。これは、ゴム成分としてブチル系ゴムを用いた有機過酸化物架橋系に、液状ポリマー成分を導入して粘着性が付与されるとともに、液状ポリマーや固形ブチル系ゴムにより高速走行時のシーラント材の流動が抑制されることで、粘着性、シール性、流動性、加工性がバランス良く改善される。
また、シーラント材としては、流動性、耐劣化性に優れているため、ハロゲン化ブチルゴムを含むゴム成分と、有機過酸化物とを含むものも好ましい。
シーラント材の粘度(40℃)は特に限定されないが、粘着性、流動性、及びシーラント材がタイヤの内周面に塗布された時点で、シーラント材が略紐状形状を好適に保持する等の観点から、好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは5000Pa・s以上であり、また、好ましくは70000Pa・s以下、より好ましくは50000Pa・s以下である。3000Pa・s未満であると、シーラント材の塗布後にタイヤを停止したときにシーラント材が流動し、膜厚を維持できないおそれがある。また、70000Pa・sを超えると、ノズルからシーラント材を吐出させることが困難となる。
なお、シーラント材の粘度は、JIS K 6833に準拠し、40℃の条件で、回転式粘度計により測定される値である。
前述の各材料を混合してシーラント材を調製し、作製されたシーラント材をタイヤ内周面(好ましくはインナーライナーのタイヤ半径方向内側部分)に適用することにより、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有するシーラントタイヤを製造できるが、シーラント材を構成する各材料の混合は、例えば、公知の連続混練機を用いて実施できる。なかでも、同方向回転又は異方向回転の多軸混練押出機、特に二軸混練押出機を用いて混合することが好ましい。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)は、原料を供給する供給口を複数有することが好ましく、少なくとも3つの供給口を有することがより好ましく、少なくとも上流側、中流側、下流側の3つの供給口を有することが更に好ましい。連続混練機(特に、二軸混練押出機)に上記各種原料を順次供給することにより、上記各種原料が混合され、順次連続的にシーラント材が調製される。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)への原料の供給は、粘度の高い材料から順に行うことが好ましい。これにより、各材料が充分に混合され、品質が一定のシーラント材を調製できる。また、粉体材料を投入すると混練性が良くなる為なるべく上流で投入する事が望ましい。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)への有機過酸化物の供給は、下流側の供給口から行うことが好ましい。これにより、有機過酸化物を供給してからシーラント材をタイヤに塗布するまでの時間を短くできるので、シーラント材の硬化が進む前にタイヤに塗布でき、より安定的にシーラントタイヤを製造できる。
液状ポリマーを一度に多量に連続混練機(特に、二軸混練押出機)へ投入すると混練がうまくいかないため、連続混練機(特に、二軸混練押出機)への液状ポリマーの供給は、複数の供給口から行うことが好ましい。これにより、シーラント材の混練をより好適に行うことができる。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)を用いる場合、シーラント材は、少なくとも3つの供給口を有する連続混練機(特に、二軸混練押出機)を用い、当該連続混練機(特に、二軸混練押出機)の上流側の供給口から、ブチル系ゴム等のゴム成分、無機充填剤、及び架橋助剤を供給し、中流側の供給口から、液状ポリマーを供給し、下流側の供給口から、有機過酸化物、及び可塑剤を供給し、混練押出することにより調製されることが好ましい。なお、各供給口からは、液状ポリマー等の各材料の全量又は一部を供給してもよいが、各材料の全量中の95質量%以上を供給することが好ましい。
連続混練機に投入される全ての原料が、定量供給制御可能な供給装置により制御されて、連続混練機に投入されることが好ましい。これにより、連続的かつ自動化された状態でシーラント材を調製することが可能となる。
供給装置は、定量供給制御可能であれば特に限定されず、公知の供給装置を使用でき、例えば、スクリュー式フィーダー、プランジャーポンプ、ギアポンプ、モーノポンプ等を使用できる。
ペレット化されたブチル系ゴム、粉体のカーボンブラック、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤等の固形原料(特に、ペレットや粉体)は、スクリュー式フィーダーを用いて定量供給することが好ましい。これにより、固形原料を精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
また、各固形原料は、それぞれ別個の供給装置で供給することが好ましい。これにより、事前に各原料をブレンドする必要が無いため、量産時の材料の供給が容易になる。
可塑剤は、プランジャーポンプを用いて定量供給することが好ましい。これにより、可塑剤を精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
液状ポリマーは、ギアポンプを用いて定量供給することが好ましい。これにより、液状ポリマーを精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
供給される液状ポリマーは、定温管理されていることが好ましい。定温管理することにより、より精度良く液状ポリマーを定量供給することが可能となる。供給される液状ポリマーの温度は、好ましくは20〜90℃、より好ましくは40〜70℃である。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の混合は、混合の容易性、押し出し性、硬化促進速度のコントロールの観点から、バレル温度30(好ましくは50)〜150℃で実施することが好ましい。
充分な混合性の観点から、上流側で供給する材料の混合時間は、1〜3分、中流側で供給する材料の混合時間は、1〜3分であることが好ましい。一方、架橋を防止(制御)する観点から、下流側で供給する材料の混合時間は、0.5〜2分であることが好ましい。なお、各混合時間は、連続混練機(特に、二軸混練押出機)に供給されてから排出されるまでの滞留時間をいい、例えば、下流側で供給された材料の混合時間は、下流側の供給口への供給時から排出されるまでの滞留時間である。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)のスクリューの回転数や、温調機の設定で、排出口から吐出されるシーラント材の温度を調整でき、ひいてはシーラント材の硬化促進速度をコントロールでき、良好な流動性をシーラント材に付与できる。連続混練機(特に、二軸混練押出機)は、スクリューの回転数を上げると混練性と材料温度が上がる。なお、スクリューの回転数は吐出量には影響しない。スクリューの回転数は、充分な混合性、及び硬化促進速度のコントロールの観点から、50〜700(好ましくは550)rpmであることが好ましい。連続混練機(特に、二軸混練押出機)内の圧力は、充分な混合性、可塑性及び硬化促進速度のコントロールの観点から、1.0〜10.0MPaであることが好ましい。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口から吐出されるシーラント材の温度は、充分な混合性、及び硬化促進速度のコントロールの観点から、70〜150℃であることが好ましく、90〜130℃であることがより好ましい。シーラント材の温度が上記範囲内であると、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。また、後述の架橋工程を必要としない。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口から吐出されるシーラント材の量は、供給口への原料の供給量に基づいて決定される。供給口への原料の供給量は、特に限定されず、当業者であれば適宜設定可能である。ユニフォミティー及びシール性により優れたシーラントタイヤが好適に得られるという理由から、排出口から吐出されるシーラント材の量(吐出量)が実質的に一定であることが好ましい。
ここで、本明細書において、吐出量が実質的に一定とは、吐出量の変動が93〜107%(好ましくは97〜103%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口にはノズルを接続することが好ましい。連続混練機(特に、二軸混練押出機)は材料を高圧で吐出できるので、ノズル(好ましくは抵抗の大きい小径ノズル)を排出口に取付けることにより、調製したシーラント材を細い略紐状形状(ビード状)にしてタイヤに貼り付けることができる。すなわち、シーラント材を連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから吐出して順次タイヤの内周面に塗布することで、シーラント材の厚さが実質的に一定となり、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
次いで、混合したシーラント材を連続混練機(特に、二軸混練押出機)等押出機の排出口に接続されたノズルから吐出することで、加硫成形済みのタイヤの内周面に直接フィードし、内周面に適用すること等により、シーラントタイヤが製造される。これにより、二軸混練押出機等で混合され、かつ押出機内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に塗布できるため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、好適に架橋反応が進行する。これにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材は、好適に略紐状形状を保持したままシーラント層を形成する。従って、一連の工程でシーラント塗布加工が可能になり、生産性もより向上する。また、加硫成形済みのタイヤの内周面にシーラント材を塗布することにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。更に、連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することが好ましい。これにより、連続混練機(特に、二軸混練押出機)内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に連続的に塗布できるため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、好適に架橋反応が進行し、より生産性良く重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
タイヤの内周面へのシーラント材の塗布は、少なくともトレッド部に対応するタイヤの内周面、より好ましくは、少なくともブレーカーに対応するタイヤの内周面に行えばよい。シーラント材の塗布が不要な部分への塗布を省略することにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
ここで、トレッド部に対応するタイヤの内周面とは、路面に接するトレッド部のタイヤ半径方向内側に位置するタイヤの内周面を意味し、ブレーカーに対応するタイヤの内周面とは、ブレーカーのタイヤ半径方向内側に位置するタイヤの内周面を意味する。なお、ブレーカーとは、トレッドの内部で、かつカーカスの半径方向外側に配される部材であり、具体的には、図9のブレーカー16などに示される部材である。
通常、未加硫タイヤは、ブラダーを使用して加硫する。このブラダーは、加硫時に膨張し、タイヤの内周面(インナーライナー)に密着することとなる。そこで、加硫が終了した際に、ブラダーとタイヤの内周面(インナーライナー)とが癒着しないように、通常、タイヤの内周面(インナーライナー)には離型剤が塗布されている。
離型剤としては、通常、水溶性ペイントや離型用ゴムが使用される。しかしながら、タイヤの内周面に離型剤が存在すると、シーラント材とタイヤの内周面との粘着性が低下するおそれがある。そのため、タイヤの内周面から予め離型剤を除去しておくことが好ましい。特に、タイヤの内周面のうち、少なくともシーラント材の塗布を開始する部分において、予め離型剤を除去しておくことがより好ましい。なお、タイヤの内周面のうち、シーラント材を塗布する全ての部分から予め離型剤を除去しておくことが更に好ましい。これにより、シーラント材のタイヤの内周面への付着性がより向上し、よりシール性の高いシーラントタイヤを製造できる。
タイヤの内周面から離型剤を除去する方法としては、特に限定されず、バフ処理、レーザー処理、高圧水洗浄、洗剤(好ましくは中性洗剤)による除去等の公知の方法が挙げられる。
ここで、図7を使用して、シーラントタイヤの製造方法に用いる製造設備の一例を簡単に説明する。
製造設備は、二軸混練押出機60、二軸混練押出機60に原料を供給する材料フィーダー62、タイヤ10を固定して回転させるとともに、タイヤの幅方向及び半径方向に移動させる回転駆動装置50を有する。二軸混練押出機60は、供給口61を5個有している。具体的には、上流側の供給口61aを3個、中流側の供給口61bを1個、下流側の供給口61cを1個有している。更に、二軸混練押出機60の排出口にはノズル30が接続されている。
原料が材料フィーダー62から、二軸混練押出機60が有する供給口61を介して二軸混練押出機60に順次供給され、各原料が二軸混練押出機60により混練され、シーラント材が順次調製される。調製されたシーラント材は、二軸混練押出機60の排出口に接続されたノズル30から連続的に吐出される。タイヤ駆動装置でタイヤを回転させながらトラバース及び/又は昇降させ(タイヤの幅方向及び/又は半径方向に移動させ)、ノズル30から吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することにより、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることが可能となる。すなわち、タイヤを回転させながらタイヤの幅方向及び/又は半径方向に移動させつつ、連続混練機(特に、二軸混練押出機)から連続的に吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することにより、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることが可能となる。
タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることにより、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。また、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることにより、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向(特に、タイヤ周方向)においてシーラント材が均一なシーラント層を形成できるため、シール性に優れたシーラントタイヤを安定的に生産性良く製造できる。なお、シーラント材は、幅方向に重ならないように貼り付けられていることが好ましく、隙間なく貼り付けられていることがより好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止できると共に、より均一なシーラント層を形成できる。
また、原料を連続混練機(特に、二軸混練押出機)に順次供給し、連続混練機(特に、二軸混練押出機)によりシーラント材が順次調製され、調製されたシーラント材が、連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから連続的に吐出され、シーラント材が順次タイヤの内周面に直接塗布される。これにより、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
シーラント層は、略紐状形状のシーラント材を、連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することにより形成されることが好ましい。これにより、タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状のシーラント材によって構成されたシーラント層をタイヤの内周面に形成することが可能となる。シーラント層は、シーラント材が積層されて形成されてもよいが、シーラント材1層からなることが好ましい。
シーラント材が、略紐状形状であると、シーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することにより、シーラント材1層からなるシーラント層を形成できる。シーラント材が、略紐状形状であると、塗布されるシーラント材にある程度の厚さがあるため、シーラント材1層からなるシーラント層であっても、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れると共に、良好なシール性を有するシーラントタイヤを製造できる。また、シーラント材を何層も積層することなく、1層塗布するだけでよいため、より生産性よくシーラントタイヤを製造できる。
このように、シーラント材として、上述した特定の粘度特性を有する本発明のシーラント材用ゴム組成物(シーラント材)を用い、略紐状形状のシーラント材を、連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することによりシーラント層を形成することにより、低温シール性の持続性に優れたシーラント層を有する空気入りタイヤ(シーラントタイヤ)を安定的に生産性良く製造できる。
シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数は、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れると共に、良好なシール性を有するシーラントタイヤをより生産性よく製造できるという理由から、好ましくは20〜70回、より好ましくは20〜60回、更に好ましくは35〜50回である。ここで、巻き付ける回数が2回とは、タイヤ内周面を2周するようにシーラント材が塗布されていることを意味し、図4において、シーラント材を巻き付ける回数は、6回である。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)を使用する事により、シーラント材の調製(混練)とシーラント材の吐出(塗布)を同時に連続的に行うことができ、高粘度で粘着性が高く取り扱いが難しいシーラント材をハンドリングすることなく直接タイヤの内周面に塗布でき、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。また、バッチ式混練装置で硬化剤も含めて混練し、シーラント材を調製した場合、シーラント材の調製からタイヤに貼り付けるまでの時間が一定とならないが、有機過酸化物を含む原料を連続混練機(特に、二軸混練押出機)により混合することにより順次調製されるシーラント材を順次タイヤの内周面に塗布することにより、シーラント材の調製からタイヤに貼り付けるまでの時間が一定となるため、ノズルを使用してシーラント材を塗布する場合には、ノズルからのシーラント材の吐出量が安定し、更には、シーラント材のタイヤへの粘着性の低下を抑制しつつ一定の粘着性となり、高粘度で粘着性が高く取り扱いが難しいシーラント材を使用しても精度良くタイヤの内周面に塗布でき、安定的に一定の品質のシーラントタイヤを製造できる。
次に、以下において、タイヤの内周面にシーラント材を塗布する方法について説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態では、シーラントタイヤは、タイヤを回転させ、かつ、上記タイヤ及びノズルの少なくとも一方をタイヤの幅方向に移動させながら、粘着性のシーラント材を上記ノズルによって上記タイヤの内周面に塗布する際、非接触式変位センサによって上記タイヤの内周面と上記ノズルの先端との距離を測定する工程(1)と、測定結果に基づき、上記タイヤ及びノズルの少なくとも一方をタイヤの半径方向に移動させることで、上記タイヤの内周面と上記ノズルの先端との間隔を所定の距離に調整する工程(2)と、上記間隔が調整されたタイヤの内周面に上記シーラント材を塗布する工程(3)とを行うこと等により、製造できる。
非接触式変位センサを用いてタイヤの内周面とノズルの先端との距離を測定し、その測定結果をフィードバックすることで、タイヤの内周面とノズルの先端との間隔を一定の距離に保つことができる。そして、上記間隔を一定の距離に保ちながらタイヤの内周面にシーラント材を塗布していくため、タイヤ形状のばらつきやジョイント部等の凹凸による影響を受けることなく、シーラント材の厚さを均一にすることができる。さらに、従来のようにタイヤサイズごとに座標値を入力する必要がないため、効率良くシーラント材を塗布することができる。
図1は、シーラントタイヤの製造方法で用いる塗布装置の一例を模式的に示す説明図である。また、図2は、図1に示す塗布装置を構成するノズルの先端付近の拡大図である。
図1は、タイヤ10の一部を子午線方向に切った断面(タイヤの幅方向及び半径方向を含む平面で切った断面)を示しており、図2は、タイヤ10の一部をタイヤの周方向及び半径方向を含む平面で切った断面を示している。図1及び図2においては、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向がタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向である。
タイヤ10は、タイヤを固定して回転させるとともに、タイヤの幅方向及び半径方向に移動させる回転駆動装置(図示せず)にセットされている。この回転駆動装置により、タイヤの軸周りの回転、タイヤの幅方向の移動及びタイヤの半径方向の移動が独立して可能になっている。
また、回転駆動装置は、タイヤの半径方向の移動量を制御可能な制御機構(図示せず)を備えている。制御機構は、タイヤの幅方向の移動量及び/又はタイヤの回転速度を制御可能であってもよい。
ノズル30は、押出機(図示せず)の先端に取り付けられており、タイヤ10の内側に挿入することが可能である。そして、押出機から押し出された粘着性のシーラント材20が、ノズル30の先端31から吐出される。
非接触式変位センサ40は、ノズル30に取り付けられており、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間の距離dを測定する。
このように、非接触式変位センサが測定する距離dとは、タイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
本実施形態のシーラントタイヤの製造方法では、まず、加硫工程で成形されたタイヤ10を回転駆動装置にセットし、ノズル30をタイヤ10の内側に挿入する。そして、図1及び図2に示すように、タイヤ10を回転させ、かつ、タイヤ10を幅方向に移動させながら、シーラント材20をノズル30から吐出することによってタイヤ10の内周面11に連続的に塗布する。タイヤ10の幅方向の移動は、予め入力しておいたタイヤ10の内周面11のプロファイル形状に沿って行う。
後述するように、シーラント材20は略紐状形状であることが好ましく、より具体的には、シーラント材がタイヤの内周面に塗布された時点で、シーラント材が略紐状形状を保持することが好ましく、この場合、略紐状形状のシーラント材20は、連続的にタイヤ10の内周面11にらせん状に貼り付けられることになる。
なお、本明細書において、略紐状形状とは、幅よりも長さの方が長く、ある程度の幅及び厚さを有する形状を意味する。略紐状形状のシーラント材が連続的にタイヤの内周面にらせん状に貼り付けられた状態の一例を図4に模式的に示す。また、図4のシーラント材をシーラント材の塗布方向(長さ方向)と直交する直線AAで切断した際のシーラント材の断面の一例を図8に模式的に示す。このように、略紐状形状のシーラント材は、ある程度の幅(図8中、Wで示される長さ)とある程度の厚さ(図8中、Dで示される長さ)を有する。なお、ここで、シーラント材の幅とは、塗布後のシーラント材の幅を意味し、シーラント材の厚さとは、塗布後のシーラント材の厚さ、より具体的には、シーラント層の厚さを意味する。
略紐状形状のシーラント材は、具体的には、後述する、シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)の好ましい数値範囲、及びシーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、図4中、Wで示される長さ、図6中、W0で示される長さ)の好ましい数値範囲を満たすシーラント材、より好ましくは、後述する、シーラント材の厚さと、シーラント材の幅の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅)の好ましい数値範囲を満たすシーラント材である。また、後述する、シーラント材の断面積の好ましい数値範囲を満たすシーラント材でもある。
本実施形態のシーラントタイヤの製造方法では、以下の工程(1)〜(3)により、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する。
<工程(1)>
図2に示すように、非接触式変位センサ40により、シーラント材20を塗布する前のタイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との距離dを測定する。距離dの測定は、シーラント材20を各タイヤ10の内周面11に塗布する度に行い、シーラント材20の塗布開始から塗布終了まで行う。
<工程(2)>
距離dの測定データを回転駆動装置の制御機構に転送する。制御機構では、測定データに基づき、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔が所定の距離になるように、タイヤの半径方向の移動量を調整する。
<工程(3)>
シーラント材20は、ノズル30の先端31から連続的に吐出されているので、上記間隔が調整されたタイヤ10の内周面11に塗布されることになる。以上の工程(1)〜(3)により、タイヤ10の内周面11に均一な厚さのシーラント材20を塗布することができる。
図3は、タイヤに対するノズルの位置関係を模式的に示す説明図である。
図3に示すように、ノズル30がタイヤ10に対して(a)〜(d)で示す位置に移動する間、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔を所定の距離d0に保ちながらシーラント材を塗布することができる。
効果がより好適に得られるという理由から、調整後の間隔d0は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1.0mm以上である。0.3mm未満であると、ノズルの先端がタイヤの内周面に近すぎるため、所定の厚さを有するシーラント材を塗布することが困難となる。また、調整後の間隔d0は、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。3.0mmを超えると、シーラント材をタイヤにうまく貼り付けられず、製造効率が低下するおそれがある。
ここで、調整後の間隔d0とは、上記工程(2)により調整された後のタイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
また、効果がより好適に得られるという理由から、調整後の間隔d0は、塗布後のシーラント材の厚さの30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、また、塗布後のシーラント材の厚さの5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、特に好ましくは2.5mm以上であり、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは8.0mm以下、更に好ましくは5.0mm以下である。1.0mm未満であると、タイヤがパンクした際にパンク穴を確実に塞ぐことが困難となる。また、10mmを超えても、パンク穴を塞ぐ効果はあまり変わらず、タイヤの重量が増加してしまうため好ましくない。なお、シーラント材の厚さは、タイヤの回転速度、タイヤの幅方向の移動速度、ノズルの先端とタイヤの内周面との距離等を調整することにより調整することができる。
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ)は、実質的に一定であることが好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止でき、より重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
ここで、本明細書において、厚さが実質的に一定とは、厚さの変動が90〜110%(好ましくは95〜105%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
ノズルも目詰まりが少なく、操業安定性に優れるという理由、及び、効果がより好適に得られるという理由から、略紐状形状のシーラント材を使用することが好ましく、略紐状形状のシーラント材をタイヤの内周面にらせん状に貼り付けることがより好ましい。しかし、略紐状形状ではないシーラント材を使用し、タイヤの内周面にスプレーすることでシーラント材を塗布してもよい。
略紐状形状のシーラント材を使用する際、シーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、図4中、Wで示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。0.8mm未満であると、シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数が多くなり、製造効率が低下するおそれがある。また、シーラント材の幅は、好ましくは18mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは9.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下、最も好ましくは6.0mm以下、より最も好ましくは5.0mm以下である。18mmを超えると、重量アンバランスが発生しやすくなるおそれがある。
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)と、シーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、図4中、Wで示される長さ)の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅)は、好ましくは0.6〜1.4、より好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.9〜1.1である。該比率が1.0に近いほど、シーラント材の形状が理想的な紐状形状となり、シール性の高いシーラントタイヤをより生産性良く製造できる。
シーラント材の断面積(塗布後のシーラント材の断面積、図8では、D×Wで算出される面積)は、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm2以上、より好ましくは1.95mm2以上、更に好ましくは3.0mm2以上、特に好ましくは3.75mm2以上であり、好ましくは180mm2以下、より好ましくは104mm2以下、更に好ましくは45mm2以下、特に好ましくは35mm2以下、最も好ましくは25mm2以下である。
シーラント材が貼り付けられている領域の幅(以下、貼り付け領域の幅、シーラント層の幅ともいい、図4では6×Wで表される長さ、図6ではW1+6×W0で表される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、トレッド接地幅の80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%以上が更に好ましく、また、120%以下が好ましく、110%以下がより好ましい。
シーラント層の幅は、効果がより好適に得られるという理由から、タイヤのブレーカー幅(ブレーカーのタイヤ幅方向の長さ)の85〜115%であることが好ましく、95〜105%であることがより好ましい。
なお、本明細書において、タイヤに複数のブレーカーが設けられている場合、ブレーカーのタイヤ幅方向の長さは、複数のブレーカーのうち、最もタイヤ幅方向の長さが長いブレーカーのタイヤ幅方向の長さを意味する。
本明細書において、トレッド接地幅は、以下のように定められる。まず、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置を「接地端」Teと定める。そして、この接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離をトレッド接地幅TWと定める。特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
上記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めているリムであり、JATMAであれば“標準リム”、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”となる。また、上記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
また、上記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば“最大負荷能力”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車用の場合には上記荷重の88%に相当する荷重とする。
シーラント材を塗布する際におけるタイヤの回転速度は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは30m/min以下、より好ましくは20m/min以下である。5m/min未満である場合及び30m/minを超える場合には、均一な厚さのシーラント材を塗布することが困難となる。
非接触式変位センサを用いることにより、シーラント材がセンサに付着することによる故障のリスクを低減させることができる。使用する非接触式変位センサとしては、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を測定できるものであれば特に限定されないが、例えば、レーザセンサ、光センサ、静電容量センサ等が挙げられる。これらのセンサは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴムを測定するという観点から、レーザセンサ、光センサが好ましく、レーザセンサがより好ましい。レーザセンサを使用する場合、タイヤの内周面にレーザを照射し、レーザの反射からタイヤの内周面とレーザセンサの先端との距離を測定し、その値からレーザセンサの先端とノズルの先端との距離を差し引くことにより、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を求めることができる。
非接触式変位センサの位置は、シーラント材を塗布する前のタイヤの内周面とノズルの先端との距離を測定できる位置であれば特に限定されないが、ノズルに取り付けることが好ましく、シーラント材が付着しない位置に設置することがより好ましい。
その他、非接触式変位センサの個数、大きさなどについても、特に限定されない。
非接触式変位センサは、熱に弱いため、ノズルから吐出される高温のシーラント材からの熱影響を防止するために、断熱材等を用いた保護及び/又はエアー等を用いた冷却を行うことが好ましい。これにより、センサの耐久性を向上させることができる。
第1実施形態の説明では、タイヤの幅方向及び半径方向の移動として、ノズルは移動せずタイヤが移動する例を説明したが、タイヤが移動せずノズルが移動してもよいし、タイヤ及びノズルの両方が移動してもよい。
また、回転駆動装置は、タイヤのビード部の幅を広げる手段を有することが好ましい。シーラント材をタイヤに塗布する際に、タイヤのビード部の幅を広げることにより、シーラント材をタイヤに容易に塗布することができる。特に、タイヤを回転駆動装置にセットした後に、タイヤの内周面近傍にノズルを導入する際に、ノズルを平行移動するだけでノズルを導入でき、制御が容易となり、生産性が向上する。
タイヤのビード部の幅を広げる手段としては、タイヤのビード部の幅を広げることが可能であれば特に限定されないが、互いに位置の変わらない複数(好ましくは2個)のロールを有する装置2組を用い、それぞれがタイヤ幅方向に動く機構等が挙げられる。該装置をタイヤ開口部両側からタイヤ内に入れてタイヤのビード部の幅を広げればよい。
上記製造方法では、二軸混練押出機等で混合され、かつ押出機内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に塗布するため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。そのため、シーラント材を塗布したシーラントタイヤを更に架橋する必要がなく、良好な生産性が得られる。
なお、必要に応じて、シーラント材を塗布したシーラントタイヤを更に架橋する架橋工程を行なってもよい。
架橋工程では、シーラントタイヤを加熱することが好ましい。これにより、シーラント材の架橋速度を向上でき、架橋反応をより好適に進行でき、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。加熱方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用できるが、オーブンを使用する方法が好適である。架橋工程は、例えば、シーラントタイヤを70℃〜190℃(好ましくは150℃〜190℃)のオーブン内に2〜15分間入れればよい。
なお、塗布直後の流動しやすいシーラント材でも流動を防ぎユニフォミティーを悪化させずに架橋反応を行うことができるという理由から、架橋する際に、タイヤをタイヤ周方向に回転させることが好ましい。回転速度は、好ましくは300〜1000rpmである。具体的には、例えば、オーブンとして回転機構付きオーブンを使用すれば良い。
また、架橋工程を別途行わない場合であっても、シーラント材の架橋反応が終了するまでタイヤをタイヤ周方向に回転させることが好ましい。これにより、塗布直後の流動しやすいシーラント材でも流動を防ぎユニフォミティーを悪化させずに架橋反応を行うことができる。回転速度は、架橋工程の場合と同様である。
シーラント材の架橋速度を向上させるために、シーラント材を塗布する前に予めタイヤを温めておくことが好ましい。これにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。タイヤの予熱温度は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜70℃である。タイヤの予熱温度を上記範囲内とすることにより、塗布時から架橋反応が好適に始まり、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。また、タイヤの予熱温度を上記範囲内とすることにより、架橋工程を行う必要がなくなるため、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)は一般に連続運転を行う。一方、シーラントタイヤを製造する際には、1のタイヤへの塗布が終了するとタイヤを取り替える必要がある。この際に、生産性の低下を抑制しつつ、より品質の高いシーラントタイヤを製造するために、以下の(1)、(2)の方法を採用すればよい。(1)の方法では、品質の低下、(2)の方法では、コストの増大というデメリットがあるため、状況に応じて適宜使い分ければ良い。
(1)連続混練機、全ての供給装置を同時に稼働、停止させることにより、シーラント材のタイヤの内周面への供給を制御する
すなわち、1のタイヤへの塗布が終了すると、連続混練機、全ての供給装置を同時に停止させ、タイヤを交換し(1分以内に交換することが好ましい)、連続混練機、全ての供給装置を同時に稼働させ、タイヤへの塗布を再開すればよい。タイヤの交換を速やかに(好ましくは1分以内に)行うことにより、品質の低下を抑制できる。
(2)連続混練機、全ての供給装置を稼働させたまま、流路を切り替えることにより、シーラント材のタイヤの内周面への供給を制御する
すなわち、連続混練機に、タイヤの内周面に直接フィードするノズルとは別の流路を設けておき、1のタイヤへの塗布が終了すると、タイヤの交換が終了するまで、調製されたシーラント材を別の流路から排出すれば良い。この方法では、連続混練機、全ての供給装置を稼働させたままシーラントタイヤを製造できるため、より品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
なお、上記シーラントタイヤのカーカスに使用されるカーカスコードとしては、特に限定されず、繊維コード、スチールコード等が挙げられる。なかでも、スチールコードが好ましい。とりわけ、JISG3506に規定される硬鋼線材からなるスチールコードが望ましい。シーラントタイヤにおいて、カーカスコードとして、一般的に使用される繊維コードではなく、強度の高いスチールコードを使用することにより、大幅に耐サイドカット性能(縁石への乗り上げ等で生じるタイヤサイド部のカットに対する耐性)を改善することができ、サイド部も含めたタイヤ全体の耐パンク性をより改善することができる。
スチールコードの構造としては、特に限定されず、例えば、1×n構成の単撚りスチールコード、k+m構成の層撚りスチールコード、1×n構成の束撚りスチールコード、m×n構成の複撚りスチールコード等があげられる。ここで、1×n構成の単撚りスチールコードとは、n本のフィラメントを撚りあわせて得られる1層の撚りスチールコードのことである。また、k+m構成の層撚りスチールコードとは、撚り方向、撚りピッチの異なる2層構造を持ち、内層にk本のフィラメント、外層にm本のフィラメントを有するスチールコードのことである。また、1×n構成の束撚りスチールコードとは、n本のフィラメントを束ねて撚りあわせて得られる束撚りスチールコードのことである。また、m×n構成の複撚りスチールコードとは、n本のフィラメントを下撚りして得られるストランドのm本を撚りあわせて得られる複撚りスチールコードのことである。nは1〜27の整数、kは1〜10の整数、mは1〜3の整数である。
スチールコードの撚りピッチは、好ましくは13mm以下、より好ましくは11mm以下であり、また、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上である。
スチールコードには、螺旋状に型付けされた型付フィラメントが少なくとも1本含まれることが好ましい。このような型付フィラメントは、スチールコードに比較的大きな隙間を設けてゴム浸透性を向上しうるとともに、低荷重時の伸びを維持でき、加硫成形時の成形不良の発生を防ぎうる。
スチールコードの表面は、ゴム組成物に対する初期接着性を向上させるため、黄銅(真鍮)、Zn等でメッキすることが好ましい。
スチールコードは、50N負荷時の伸びが、0.5〜1.5%であるのが好ましい。なお、前記50N負荷時の伸びが1.5%を超えると、高荷重時において補強コードの伸びが小さくなり、外乱吸収性を維持できなくなるおそれがある。逆に、前記50N負荷時の伸びが0.5%未満であると、加硫成形時において十分に伸びることができず、成形不良が生じるおそれがある。このような観点より、前記50N負荷時の伸びは、より好ましくは0.7%以上、また、より好ましくは1.3%以下である。
スチールコードのエンズは20〜50(本/5cm)が好ましい。
<第2実施形態>
第1実施形態の方法のみでは、シーラント材が略紐状形状の場合に、タイヤの内周面へのシーラント材の貼り付けが難しい場合があり、特に、貼り付け開始部分のシーラント材が剥離しやすいという問題があることが本発明者の検討の結果明らかとなってきた。第2実施形態では、上記シーラントタイヤの製造方法において、タイヤの内周面とノズルの先端との間隔を距離d1にしてシーラント材を貼り付けた後、上記間隔を距離d1より大きい距離d2にしてシーラント材を貼り付けることを特徴としている。これにより、貼り付け開始時においてタイヤの内周面とノズルの先端との間隔を近づけることで、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることができ、少なくともトレッド部に対応するタイヤの内周面に、粘着性を有し、かつ略紐状形状のシーラント材が連続的にらせん状に貼り付けられており、シーラント材の長さ方向における端部の少なくとも一方が、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部であることを特徴とするシーラントタイヤを容易に製造することができる。該シーラントタイヤでは、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることにより、当該部分の接着力を改善し、当該部分におけるシーラント材の剥離を防止することができる。
なお、第2実施形態の説明では、主に第1実施形態と異なる点のみを説明し、第1実施形態と重複する内容については記載を省略する。
図5は、図1に示す塗布装置を構成するノズルの先端付近の拡大図であり、(a)がシーラント材の貼り付け開始直後の状態、(b)が所定時間経過後の状態を示している。
図5は、タイヤ10の一部をタイヤの周方向及び半径方向を含む平面で切った断面を示している。図5においては、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向がタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向である。
第2実施形態では、まず、加硫工程で成形されたタイヤ10を回転駆動装置にセットし、ノズル30をタイヤ10の内側に挿入する。そして、図1及び図5に示すように、タイヤ10を回転させ、かつ、タイヤ10を幅方向に移動させながら、シーラント材20をノズル30から吐出することによってタイヤ10の内周面11に連続的に塗布する。タイヤ10の幅方向の移動は、例えば、予め入力しておいたタイヤ10の内周面11のプロファイル形状に沿って行う。
シーラント材20は、粘着性を有し、かつ略紐状形状であるため、トレッド部に対応するタイヤ10の内周面11に、連続的にらせん状に貼り付けられることになる。
この際、貼り付け開始から所定時間の間は、図5(a)に示すように、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔を距離d1にしてシーラント材20を貼り付ける。そして、所定時間経過後、図5(b)に示すように、タイヤ10を半径方向に移動させることで上記間隔を距離d1より大きい距離d2に変更してシーラント材20を貼り付ける。
なお、シーラント材の貼り付けを終了する前に、上記間隔を距離d2から距離d1に戻してもよいが、製造効率、タイヤの重量バランスの観点からは、シーラント材の貼り付けを終了するまで距離d2であることが好ましい。
また、貼り付け開始から所定時間の間は上記距離d1の値を一定に保ち、所定時間経過後は上記距離d2の値を一定に保つことが好ましいが、d1<d2の関係を満たす限り、距離d1及びd2の値は必ずしも一定でなくてもよい。
上記距離d1の値は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上である。0.3mm未満であると、ノズルの先端がタイヤの内周面に近すぎるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、上記距離d1の値は、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下である。2mmを超えると、幅広部を設ける効果が充分に得られないおそれがある。
上記距離d2の値も特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下である。距離d2は、上述の調整後の間隔d0と同一であることが好ましい。
なお、本明細書において、タイヤの内周面とノズルの先端との距離d1、d2とは、タイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
シーラント材を貼り付ける際におけるタイヤの回転速度は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは30m/min以下、より好ましくは20m/min以下である。5m/min未満である場合及び30m/minを超える場合には、均一な厚さのシーラント材を貼り付けることが困難となる。
以上の工程により、第2実施形態のシーラントタイヤを製造することができる。
図6は、第2実施形態のシーラントタイヤに貼り付けられているシーラント材の一例を模式的に示す説明図である。
略紐状形状のシーラント材20は、タイヤの周方向に巻き付けられており、連続的にらせん状に貼り付けられている。そして、シーラント材20の長さ方向における一方の端部が、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部21となっている。この幅広部21が、シーラント材の貼り付け開始部分に対応している。
シーラント材の幅広部の幅(塗布後のシーラント材の幅広部の幅、図6中、W1で示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、幅広部以外の幅(図6中、W0で示される長さ)の103%以上が好ましく、110%以上がより好ましく、120%以上が更に好ましい。103%未満では、幅広部を設ける効果が充分に得られないおそれがある。また、シーラント材の幅広部の幅は、幅広部以外の幅の210%以下が好ましく、180%以下がより好ましく、160%以下が更に好ましい。210%を超えると、幅広部を形成するためにノズルの先端をタイヤの内周面に過度に近づける必要があるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、タイヤの重量バランスが崩れるおそれがある。
なお、シーラント材の幅広部の幅は、長さ方向において実質的に一定であることが好ましいが、実質的に一定でない箇所があってもよい。例えば、幅広部は、貼り付け開始部分の幅が最も広く、長さ方向につれて幅が狭くなっていく形状であってもよい。ここで、本明細書において、幅が実質的に一定とは、幅の変動が90〜110%(好ましくは97〜103%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
シーラント材の幅広部の長さ(塗布後のシーラント材の幅広部の長さ、図6中、L1で示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは650mm未満、より好ましくは500mm未満、更に好ましくは350mm未満、特に好ましくは200mm未満である。650mm以上であると、タイヤの内周面にノズルの先端を近づけている時間が長くなるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、タイヤの重量バランスが崩れるおそれがある。なお、シーラント材の幅広部の長さは短いほど好ましいが、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を制御することを考慮すると、10mm程度が限界である。
シーラント材の幅広部以外の幅(塗布後のシーラント材の幅広部以外の幅、図6中、W0で示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。0.8mm未満であると、シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数が多くなり、製造効率が低下するおそれがある。また、シーラント材の幅広部以外の幅は、好ましくは18mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは9.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下、最も好ましくは6.0mm以下、より最も好ましくは5.0mm以下である。18mmを超えると、重量アンバランスが発生しやすくなるおそれがある。W0は、上述のWと同一であることが好ましい。
なお、シーラント材の幅広部以外の幅は、長さ方向において実質的に一定であることが好ましいが、実質的に一定でない箇所があってもよい。
シーラント材が貼り付けられている領域の幅(以下、貼り付け領域の幅、シーラント層の幅ともいい、図6ではW1+6×W0で表される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、トレッド接地幅の80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%以上が更に好ましく、また、120%以下が好ましく、110%以下がより好ましい。
シーラント層の幅は、効果がより好適に得られるという理由から、タイヤのブレーカー幅(ブレーカーのタイヤ幅方向の長さ)の85〜115%であることが好ましく、95〜105%であることがより好ましい。
第2実施形態のシーラントタイヤでは、シーラント材は、幅方向に重ならないように貼り付けられていることが好ましく、隙間なく貼り付けられていることがより好ましい。
また、第2実施形態のシーラントタイヤでは、シーラント材の長さ方向におけるもう一方の端部(貼り付け終了部分に対応する端部)も、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部となっていてもよい。
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、特に好ましくは2.5mm以上であり、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは8.0mm以下、更に好ましくは5.0mm以下である。1.0mm未満であると、タイヤがパンクした際にパンク穴を確実に塞ぐことが困難となる。また、10mmを超えても、パンク穴を塞ぐ効果はあまり変わらず、タイヤの重量が増加してしまうため好ましくない。
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ)は、実質的に一定であることが好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止でき、より重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)と、シーラント材の幅広部以外の幅(塗布後のシーラント材の幅広部以外の幅、図6中、W0で示される長さ)の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅広部以外の幅)は、好ましくは0.6〜1.4、より好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.9〜1.1である。該比率が1.0に近いほど、シーラント材の形状が理想的な紐状形状となり、シール性の高いシーラントタイヤをより生産性良く製造できる。
シーラント材の断面積(塗布後のシーラント材の断面積、図8では、D×Wで算出される面積)は、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm2以上、より好ましくは1.95mm2以上、更に好ましくは3.0mm2以上、特に好ましくは3.75mm2以上であり、好ましくは180mm2以下、より好ましくは104mm2以下、更に好ましくは45mm2以下、特に好ましくは35mm2以下、最も好ましくは25mm2以下である。
第2実施形態では、シーラント材の粘度が上記範囲内であっても、特に、粘度が比較的高くても、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることにより、当該部分の接着力を改善し、当該部分におけるシーラント材の剥離を防止することができる。
第2実施形態のシーラントタイヤは、上記の製造方法で製造することが好ましいが、シーラント材の少なくとも一方の端部を幅広部とすることができる限り、他の任意適当な製造方法で製造してもよい。
上述の説明、特に、第1実施形態の説明では、タイヤの内周面にシーラント材を塗布する際に、非接触式変位センサを用いる場合について説明したが、非接触式変位センサによる測定を行わずに、予め入力しておいた座標値に基づいて、ノズル及び/又はタイヤの移動を制御してタイヤの内周面にシーラント材を塗布してもよい。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、実施例で用いた各種薬品について説明する。
臭素化ブチルゴム:ブロモブチル2255(エクソンモービル社製、125℃におけるムーニー粘度ML1+8=46、ハロゲン含有率:2.0質量%)
ブチルゴム:レギュラーブチル268(日本ブチル(株)製、125℃におけるムーニー粘度ML1+8=51)
液状ポリブテン:日石ポリブテンHV1900(JX日鉱日石エネルギー製、40℃における動粘度160,000mm2/s、100℃における動粘度3,710mm2/s、数平均分子量2,900)
カーボンブラック:N330(キャボットジャパン(株)製、HAFグレード、DBP吸油量102ml/100g)
可塑剤(オイル):田岡化学工業(株)製のジオクチルフタレート(DOP)
架橋助剤:バルノックGM(大内新興化学(株)製、p−ベンゾキノンジオキシム)
架橋剤:ナイパーNS(日油(株)製、ジベンゾイルパーオキサイド(40%希釈品、ジベンゾイルパーオキサイド:40% ジブチルフタレート:48%)、表1の配合量は純ベンゾイルパーオキサイド量)
NR:TSR
BR:宇部興産(株)製のBR150B
硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミ硫黄
<シーラントタイヤの製造>
表1の配合に従って、二軸混練押出機の上流側供給口から、ゴム成分、カーボンブラック及び架橋助剤を、中流供給口から、液状ポリブテンを、下流供給口から、可塑剤及び架橋剤(有機過酸化物又は硫黄)を投入し、バレル温度100℃、スクリュー回転数200rpm、圧力5.0MPaの条件下で、混練加工し、シーラント材を調製した。なお、液状ポリブテンについては、50℃の液状ポリブテンを供給口から投入した。
(各材料の混練時間)
ゴム成分、カーボンブラック及び架橋助剤の混合時間:2分
液状ポリブテンの混合時間:2分
可塑剤及び架橋剤(有機過酸化物又は硫黄)の混合時間:1.5分
次いで、二軸混練押出機の排出口に直接接続され、かつ先端がタイヤ内面に設置されたノズルから、周方向へ回転するタイヤ(予熱温度:40℃)の内面に、順次調製されるシーラント材(温度100℃、粘度20000Pa・s(40℃)、略紐状形状)を吐出し、図1〜4に従って、連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布し、シーラントタイヤを製造した。また、シーラント材の粘度は、JIS K 6833に準拠し、40℃の条件で、回転式粘度計により測定した。
1.粘度上昇
上記ノズルから採取したシーラント材について、1日間常温で放置した後、−20℃における粘度(25℃保存開始時の粘度)を測定した。
更に、上述の常温で放置したシーラント材を25℃、常圧で10日間(240時間)静置した後、−20℃における粘度(25℃で10日間保存した後の粘度)を測定した。
そして、25℃保存開始時の粘度と、25℃で10日間保存した後の粘度の差を算出した。具体的には、「25℃で10日間保存した後の粘度」から「25℃保存開始時の粘度」を引き算した。
なお、−20℃におけるシーラント材用ゴム組成物(シーラント材)の粘度は、JIS K 6833に準拠し、−20℃の条件で、回転式粘度計により測定した。
なお、測定試料の打ち抜き方法は、以下の条件により行った。
サンプル準備:測定対象のシーラント材から厚み15mmのシートを準備し、冷凍庫にて−40℃にて8時間冷却させた。8時間後に冷凍庫から23℃の環境下に取り出し、温度上昇する前(5分以内)に、以下の治具で冷凍されたシートを打ち抜き、打ち抜いた試料について粘度を測定した。
治具:Φ12mmの円形刃
2.粘度安定性
上記ノズルから採取したシーラント材について、採取後6.0時間以内に、−20℃における粘度(製造直後の粘度)を測定した。
更に、採取したシーラント材を25℃、常圧で静置した。静置したシーラント材は、1日おきに−20℃における粘度を測定し、製造直後の粘度との比較を行った。
3.低温シール性の持続性評価
195/65R15サイズの加硫後のタイヤ内面(周方向は全域、幅方向はブレーカーエッジ部からもう一方のブレーカーエッジ部まで)にシーラント材料を3mm厚さで塗布し、内圧230kPaに空気を充填した状態で、−50℃の環境下において、径4mm、長さ50mmの釘を打ち、3時間後に釘を抜いた直後の内圧の低下を測定した。
更に、シーラント材料を塗布した後、100日経過したタイヤを用いて同様の試験を行い、製造直後の場合と同様の条件下で内圧の低下を測定した。そして、製造直後のタイヤにおける内圧の低下と、100日経過したタイヤにおける内圧の低下とを比較し、低温シール性の持続性を評価した。結果は比較例1の結果を100として指数表示した。指数が大きいほど、低温シール性(−50℃におけるシール性)の持続性に優れることを示す。
製造後60日以内の期間における任意の10日間、25℃で保存した後に、保存前後において、それぞれ測定した−20℃における粘度の差が4.0kPa・s以下である実施例のシーラント材は、低温シール性の持続性に優れていた。