JP2021052663A - 多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物の作製方法 - Google Patents

多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物を作製するための方法、当該方法により作成されたシート状物、当該シート状物を作製するためのキットおよび当該シート状物を適用する方法を提供することを目的とする。【解決手段】多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物を作製するための方法であって、以下:細胞を基材上に間隙を介して配置するステップ、該細胞間の間隙をゲルで埋めてシート状にするステップ、を含む、前記方法により、上記課題が解決された。【選択図】図1

Description

本発明は、多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物を作製するための方法、当該方法により作成されたシート状物、当該シート状物を作製するためのキットおよび当該シート状物を適用する方法に関する。
近年、損傷した組織などの修復のために、種々の細胞を移植する試みが行われている。例えば、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患により損傷した心筋組織の修復のために、胎児心筋細胞、骨格筋芽細胞、間葉系幹細胞、心臓幹細胞、ES細胞、iPS細胞などの利用が試みられている(非特許文献1)。
このような試みの一例として、スキャフォールドを利用して形成した細胞構造物(特許文献1)や、細胞をシート状に成形したシート状細胞培養物(非特許文献2)などの移植を目的とした細胞調製物が開発されており、それらの一部は臨床応用の段階に入っている。
このような細胞調製物の作製において、様々な目的のために、ゲルが用いられている。例えば、シート状細胞培養物の上にゲル積層し、操作性を向上させたもの(特許文献2)や、心筋細胞、平滑筋および線維芽細胞をヒドロゲルに包埋後、培養することにより作製されたCardiopatch(非特許文献3)などがある。
特許第4943844号公報 特開2016−52272号公報
Haraguchi et al., Stem Cells Trans1 Med. 2012 Feb;1(2):136-41 Sawa et al., Surg Today. 2012 Jan;42(2):181-4 Ilya Y. Shadrin et al., Nature Communications 8: 1825, 2017
本発明は、多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物を作製するための方法、当該方法により作製されたシート状物、当該シート状物を作製するためのキットおよび当該シート状物を適用する方法を提供することを目的とした。
シート状細胞培養物を作製する際に、細胞を凍結させる操作や解凍する操作が行われるが、これらの操作によって細胞の接着能が低下することがある。これら以外にも原因が不明のまま細胞の接着能が低下することがある。従来のシート状細胞培養物を作製する方法にこのような接着能の低い状態にある細胞を用いた場合には、細胞は凝集塊の形成や細胞剥離をしてしまい、細胞間での均一な細胞間接着は形成されず、シート状の細胞培養物を得ることができない。
本発明者らは、このような接着能の低い状態にある細胞によっても、細胞を含有するシートを作製することができることを見出し、かかる知見に基づき、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物を作製するための方法であって、以下:
細胞を基材上に間隙を介して配置するステップ、
該細胞間の間隙をゲルで埋めてシート状にするステップ、
を含む、前記方法。
[2]細胞を基材と接着させるステップをさらに含む、[1]に記載の方法。
[3]細胞が、細胞塊の形態である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の方法。
[5]ゲルが、フィブリンゲル、ゼラチンまたはコラーゲンを含有する、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の方法。
[6]ゲルが、2液を混合することによりゲル化が生じるものである、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の方法。
[7]基材が、刺激応答性材料を有する基材である、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の方法。
[8][1]〜[7]のいずれか一つに記載の方法により作製された、多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物。
[9][8]に記載の多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物を作製するためのキットであって、
多能性幹細胞由来の分化誘導細胞、該細胞を配置するための基材、および該細胞をシート状にするためのゲルを含む、前記キット。
[10]多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物の適用により改善される疾患を処置する方法であって、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法により作製されたシート状物を、それを必要とする対象に適用することを含む、前記方法。
本発明の方法によれば、接着能の低い状態にある細胞からであっても、シート状物を得ることができる。非特許文献2に記載のCardiopatchにおいては、細胞がパッチの内部に入り込んでいるものであるところ、本発明に係るシート状物においては、細胞を基材上に配置させた後にゲルによりシートを形成させているため、細胞がシート状物の一面に局在し、その一面において露出している。したがって、本発明によるシート状物においては、細胞は露出している面から酸素や栄養などを摂取することができ、またそれらの細胞から産生されるサイトカインは、ゲルに妨げられることなく、シート状物を適用した部位の周辺の細胞に直接的に、および/または間接的に作用することができる。
加えて、本発明に係るシート状物は、従来のシート状細胞培養物と異なり、剥離後に収縮しないため、作製に使用した基材と同じ大きさのシート状物が得られ、同じ大きさの基材で作製されたシート状細胞培養物よりも大きなシートが得られる。
図1は、シート状物1の写真である。 図2は、フィブリンゲルとシート状細胞培養物との積層体の写真である。 図3は、シート状物1の断面図である。破線で囲まれた部分に細胞が局在し、一点鎖線で囲まれた部分にゲルが存在している。 図4は、シート状物2の断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一側面は、多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物を作製するための方法であって、細胞を基材上に間隙を介して配置するステップ、該細胞間の間隙をゲルで埋めてシート状にするステップ、を含む方法に関する。
本発明において、「シート状物」とは、細胞がシート状に成形された物を指す。本発明の一態様において、シート状物は、細胞とゲルとを含み、好ましくはゲル以外のスキャフォールド(支持体)を含まない。スキャフォールドは、その表面上および/またはその内部に細胞を付着させ、シート状物の物理的一体性を維持するために当該技術分野において用いられることがあり、例えば、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)製の膜等が知られている。本発明のシート状物は、かかるスキャフォールドがなくともその物理的一体性を維持することができる。
本発明において、「細胞を基材上に間隙を介して配置する」とは、細胞同士が間隙を有している状態で、細胞を基材上の底表面に接触または接着している状態にすることを指す。細胞同士は、一部において間隙を有していればよく、細胞同士が接触していないことを意味するものではない。本発明において、細胞を基材上に間隙を介して配置された状態は、例えば、基材上に島状の細胞集団が複数存在し、その島状の細胞集団同士の間に間隙を有している状態も含まれる。本発明において、基材一面が細胞によって連続的には覆われている状態は、細胞を基材上に間隙を介して配置された状態には含まれない。
一態様において、細胞の基材上への配置は、細胞の播種後、細胞を自然沈降させることによってなされる。自然沈降は、例えば、1分〜24時間静置すること、好ましくは、5分〜6時間、より好ましくは、5分〜1時間静置することによってなされる。
一態様において、細胞の基材上への配置は、細胞の播種後、遠心分離することによってなされる。遠心分離は、遠心分離機を用いて、遠心力、遠心にかける時間、遠心分離機の機内温度を適宜設定して行われる。遠心力は、例えば、10G〜1000G、好ましくは、50G〜1000G、より好ましくは、50G〜400Gに設定される。遠心にかける時間は、例えば、10秒〜2時間、好ましくは、1分〜60分、より好ましくは、1〜15分、さらに好ましくは、1分〜10分に設定される。機内温度は、例えば、0℃〜42℃、好ましくは、4℃〜37℃に設定される。
一態様において、配置された細胞は、基材に接触している。本発明において、細胞が基材に接触している状態とは、細胞が基材に接している状態であるが、細胞と基材は、細胞により産出された細胞外マトリックスを介した接合をしていない状態を指す。
本発明において、細胞と基材との接触は、種々の条件によるが、例えば、細胞の播種後、5分〜24時間、例えば、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約18時間、約24時間培養することにより生じる。
別の態様において、配置された細胞は、基材に接着している。本発明において、細胞が基材に接着している状態とは、細胞と基材が、細胞により産出された細胞外マトリックスを介して接合している状態を指す。
本発明の方法は、一態様において、細胞を基材と接着させるステップをさらに含む。
本発明において、細胞と基材との接着は、種々の条件によるが、例えば、細胞の播種後、24時間以上、例えば、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間、培養することにより生じる。
培養に用いるための培地は、細胞を培養するために用いられる任意の既知のものであって良い。このような培地としては、これらに限定されるものではないが、例えば、DMEM、MEM、F12、DME、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、120、131、153、199など)、L15、SkBM、RITC80−7、DMEM/F12などが挙げられる。
本発明の態様において、細胞は細胞塊の形態である。本発明において、「細胞塊」とは、2個以上の細胞が、密に接着し、塊状になっているものを指す。本発明において、細胞塊の大きさは、例えば、直径が10μm〜1000μmである。好ましくは、直径50μm〜500μm、より好ましくは、直径100μm〜300μmである。一態様において、細胞塊の大きさは、均一でなくてもよい。本発明において、細胞塊の大きさが均一であるとは、例えば、セルアナライザーなどによって測定された細胞塊の個々の大きさに対する相対標準偏差が40%未満、好ましくは、30%未満、より好ましくは20%未満であることを指し、細胞塊の大きさが均一でないとは、当該相対標準偏差が60%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは45%以上であることを指す。細胞塊はスフェロイドとも称される。
本発明の一側面において、多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物を作製するための方法であって、以下:細胞塊を基材上に間隙を介して配置するステップ、該細胞塊間の間隙をゲルで埋めてシート状にするステップ、
を含む、前記方法に関する。
一態様において、本発明に係る方法は、細胞塊を基材上に間隙を介して配置するステップの前に、細胞を培養し、細胞塊を形成させるステップをさらに含む。
細胞塊を形成させる方法は、任意の既知の方法を用いることができ、これに限定されるものではないが、例えば、内面が細胞接着抑制剤に被膜され、基材表面に複数の窪み部を有し、該窪み部の間が非平坦である基材を用いて培養する方法(特願2012−533946号)がある。
細胞塊を播種した場合には、横から見た細胞部分の厚さに最小10μmから最大100μmまでといった差が生じるが、その差はゲルによって埋められてシート化される。したがって、シート自体の厚さは細胞部分の厚さによることなく均一であり、細胞塊から形成した場合においても、そのシート状物は容易に取り扱うことができる。
本発明において、シート状物に含まれる細胞は、多能性幹細胞から分化誘導された細胞であって、シート状物を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば、接着細胞(付着性細胞)を含む。接着細胞は、例えば、接着性の体細胞(例えば、心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞など)および幹細胞(例えば、筋芽細胞、心臓幹細胞などの組織幹細胞、間葉系幹細胞等)などを含む。体細胞は、幹細胞、特にiPS細胞から分化させたもの(iPS細胞由来接着細胞)であってもよい。シート状物を形成し得る細胞の非限定例としては、例えば、iPS細胞由来の心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞などが挙げられる。中でも回収率や生残率が移植片の品質に直接影響し得る心筋細胞が好ましい。
本発明において、「多能性幹細胞」は、当該技術分野で周知の用語であり、三胚葉、すなわち内胚葉、中胚葉および外胚葉に属する全ての系列の細胞に分化することができる能力を有する細胞を意味する。多能性幹細胞の非限定例としては、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、核移植胚性幹細胞(ntES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)などが挙げられる。人工多能性幹細胞(iPS細胞)は遺伝子を導入して誘導された細胞である。通常多能性幹細胞を特定の細胞に分化誘導する際には、まず多能性幹細胞を浮遊培養して、上記三胚葉のいずれかの細胞の凝集体を形成し、その後凝集体を形成する細胞を目的とする特定の細胞に分化誘導させる。
本発明において、「多能性幹細胞由来の分化誘導細胞」は、多能性幹細胞から特定の種類の細胞に分化するように分化誘導処理された任意の細胞を意味する。分化誘導細胞の非限定例は、心筋細胞、骨格筋芽細胞などの筋肉系の細胞、ニューロン細胞、オリゴデンドロサイト、ドーパミン産生細胞などの神経系の細胞、網膜色素上皮細胞などの網膜細胞、血球細胞、骨髄細胞などの造血系の細胞、T細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞、B細胞などの免疫関連の細胞、肝細胞、膵β細胞、腎細胞などの臓器を構成する細胞、軟骨細胞、生殖細胞などの他、これらの細胞に分化する前駆細胞や体性幹細胞などを含む。かかる前駆細胞や体性幹細胞の典型例としては、例えば心筋細胞における間葉系幹細胞、多分化性心臓前駆細胞、単能性心臓前駆細胞、神経系の細胞における神経幹細胞、造血系の細胞や免疫関連の細胞における造血幹細胞およびリンパ系幹細胞などが挙げられる。多能性幹細胞の分化誘導は、既知の任意の手法を用いて行うことができる。所望の細胞として、iPS由来心筋細胞等の多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を用いる場合、分化誘導後に未分化細胞の除去処理を行ってもよい。未分化細胞の除去処理は、当該技術分野において知られており、例えばWO2017/038562、WO2016/072519およびWO2007/088874等に記載された方法を用いることができる。
また分化誘導細胞は、リプログラミングのための遺伝子以外の任意の有用な遺伝子が導入されたiPS細胞から誘導された細胞であってもよい。かかる細胞の非限定例としては、例えば、Themeli M. et al. Nature Biotechnology, vol. 31, no. 10, pp. 928-933, 2013に記載のキメラ抗原受容体の遺伝子が導入されたiPS細胞から誘導されるT細胞などが挙げられる。また、多能性幹細胞から分化誘導された後、任意の有用な遺伝子が導入された細胞もまた、本発明の分化誘導細胞に包含される。
一態様において、多能性幹細胞由来の分化誘導細胞は、iPS細胞由来の心筋細胞である。iPS細胞由来の心筋細胞は、iPS細胞から心筋細胞を誘導すること、すなわち、iPS細胞を心筋細胞誘導処理に供することによって得ることができる。iPS細胞から心筋細胞を誘導する様々な手法が知られている(例えば、Burridge et al., Cell Stem Cell. 2012 Jan 6;10(1):16-28)。かかる誘導法の非限定例としては、例えば、胚様体形成による方法、単層分化培養による方法、強制凝集による方法などが挙げられる。一態様において、本発明のiPS細胞に由来する心筋細胞を含有するシート状物は、心筋細胞のほかに血管内皮細胞、壁細胞、線維芽細胞等を含んでいてもよい。本発明のシート状物に含まれる細胞の構成比は、例えば、心筋細胞約30〜70%、血管内皮細胞0.1%〜約20%、壁細胞約1%〜約40%、および線維芽細胞約1%〜約40%であってもよい。iPS細胞由来の心筋細胞は、誘導後に精製し、純度を高めることができる。精製方法としては、心筋細胞に特異的なマーカー(例えば、細胞表面マーカーなど)を用いた種々の分離法、例えば、磁気細胞分離法(MACS)、フローサイトメトリー法、アフィニティ分離法や、特異的プロモーターにより選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子など)を発現させる方法、さらにはこれらの方法の組合せなどが挙げられる(例えば、上記Burridge et al.など参照)。心筋細胞に特異的な細胞表面マーカーとしては、例えば、CD172a(別名SIRPAまたはSHPS−1)、KDR(別名CD309、FLK1またはVEGFR2)、PDGFRA、EMILIN2、VCAMなどが挙げられる。また、心筋細胞に特異的なプロモーターとしては、例えば、NKX2−5、MYH6、MLC2V、ISL1などが挙げられる。
シート状物を構成する細胞は、任意の生物に由来することができ、かかる生物は、これらに限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、げっ歯目動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットなど)、ウサギなどを含む。また、シート状物に含有される細胞の種類の数は特に限定されず、1種類のみの細胞であってもよいが、2種類以上の細胞を用いたものであってもよい。シート状物に含有される細胞が2種類以上ある場合、最も多い細胞の含有比率(純度)は、シート状物作製終了時において、60%以上、好ましくは、70%以上、より好ましくは75%以上である。
細胞は異種由来細胞であっても同種由来細胞であってもよい。ここで「異種由来細胞」は、細胞培養物が移植に用いられる場合、そのレシピエントとは異なる種の生物に由来する細胞を意味する。例えば、レシピエントがヒトである場合、サルやブタに由来する細胞などが異種由来細胞に該当する。また、「同種由来細胞」は、レシピエントと同一の種の生物に由来する細胞を意味する。例えば、レシピエントがヒトである場合、ヒト細胞が同種由来細胞に該当する。同種由来細胞は、自己由来細胞(自己細胞または自家細胞ともいう)、すなわち、レシピエントに由来する細胞と、同種非自己由来細胞(他家細胞ともいう)を含む。自己由来細胞は、移植しても拒絶反応が生じないため、臨床応用の観点から好ましい。しかしながら、異種由来細胞や同種非自己由来細胞を利用することも可能である。異種由来細胞や同種非自己由来細胞を利用する場合は、拒絶反応を抑制するため、免疫抑制処置が必要となることがある。なお、本明細書中で、自己由来細胞以外の細胞、すなわち、異種由来細胞と同種非自己由来細胞を非自己由来細胞と総称することもある。一態様において、細胞は自家細胞または他家細胞である。一態様において、細胞は自家細胞である。別の態様において、細胞は他家細胞である。
一態様において、本発明に供される細胞を得るための播種は、約1.0×10個/cm〜約5.0×10個/cm、約3.0×10個/cm〜約5.0×10個/cm、約3.5×10個/cm〜約5.0×10個/cm、約1.0×10個/cm〜約5.0×10個/cm、約1.0×10個/cm〜約3.4×10個/cm、約3.0×10個/cm〜約3.4×10個/cm、約3.5×10個/cm〜約3.4×10個/cm、約1.0×10個/cm〜約3.4×10個/cm、約3.0×10個/cm〜約1.7×10個/cm、約3.5×10個/cm〜約1.7×10個/cm、約1.0×10個/cm〜約1.7×10個/cmなどの密度で行うことができる。
本発明において、シート状物を形成するために用いられるゲルは、生体に悪影響を与えないものであれば、任意のものを使用することができる。生体に悪影響を及ぼさないゲルとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、フィブリンゲル、ゼラチン、コラーゲンおよびアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。一態様において、ゲルは生体内分解性ゲルであり、生体内において分解し、体内へ吸収され、代謝、排泄される。
一態様において、ゲルは2液を混合することによりゲル化が生じるものである。一態様において、ゲルは室温付近で固化状態にあるものである。一態様において、ゲルは温度による可逆性を示さない。このようなゲルとしては、これらに限定されないが、フィブリノゲン液とトロンビン液を混合させてなるフィブリンゲル、NHS化CMデキストリンおよびトレハロース水溶液と炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム水溶液を混合させてなる癒着防止剤などが挙げられる。これらは、例えばボルヒール(登録商標)組織接着用(帝人ファーマ社製)、ベリプラスト(登録商標)組織接着用(CSLベーリング社製)、アドスプレー(登録商標)(テルモ社製)として商業的に入手可能であり、本発明において使用することができる。本発明において、ゲルは好ましくは、フィブリンゲル、ゼラチンまたはコラーゲンであり、より好ましくはフィブリンゲルである。
本発明において、ゲルはシート状物を基材から剥離させる際、およびシート状物を適用のために移動させる際に、シート状物の破損を防ぐ支持体の役目を担っていてもよい。
本発明において、シート状物の厚さは、例えば10μm〜2000μmである。好ましくは、10μm〜500μm、より好ましくは50μm〜200μmである。
本発明において、該細胞間の間隙をゲルで埋めてシート状にするステップは、例えば、細胞がその表面に配置されている基材上に、ゲルを静かに添加することにより行われる。添加される量は、任意の量であってよいが、好ましくはシート状物が上記の厚さになる量である。一態様において、ゲルは2液を混合することによりゲル化が生じるものであり、このようなゲルを用いてゲル化する方法は、任意の既知の方法を用いることができる。かかる方法として、例えば、フィブリノゲン液とトロンビン液を同時に添加する方法や、フィブリノゲン液を細胞上に滴下し、その後トロンビン液を噴霧することによりフィブリンゲルを形成する方法(特許第6495603号公報)を用いることができる。
このステップにおいて、配置時に存在していた間隙(孔)はゲルで埋められ、シート状物の細胞が局在する一面において、細胞はゲルを介して存在しており、一面にわたって連続して存在していない。
本発明において、「基材」は、細胞がその上で細胞培養物を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば、種々の材質の容器、容器中の固形もしくは半固形の表面などを含む。容器は、培養液などの液体を透過させない構造・材料が好ましい。かかる材料としては、限定することなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ナイロン6,6、ポリビニルアルコール、セルロース、シリコン、ポリスチレン、ガラス、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、金属(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮)等が挙げられる。また、容器は、少なくとも1つの平坦な面を有することが好ましい。かかる容器の例としては、限定することなく、例えば、細胞培養皿、細胞培養ボトルなどが挙げられる。また、容器は、その内部に固形もしくは半固形の表面を有してもよい。固形の表面としては、上記のごとき種々の材料のプレートや容器などが、半固形の表面としては、ゲル、軟質のポリマーマトリックスなどが挙げられる。基材は、上記材料を用いて作製してもよいし、市販のものを利用してもよい。好ましい基材としては、限定することなく、例えば、シート状物の形成に適した、接着性の表面を有する基材が挙げられる。具体的には、親水性の表面を有する基材、例えば、コロナ放電処理したポリスチレン、コラーゲンゲルや親水性ポリマーなどの親水性化合物を該表面にコーティングした基材、さらには、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンなどの細胞外マトリックスや、カドヘリンファミリー、セレクチンファミリー、インテグリンファミリーなどの細胞接着因子などを表面にコーティングした基材などが挙げられる。また、かかる基材は市販されている(例えば、Corning(商標)TC-Treated Culture Dish、Corningなど)。
基材は、刺激、例えば、温度や光に応答して物性が変化する材料で表面が被覆されていてもよい。かかる材料としては、限定されずに、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体(例えば、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−エトキシエチルメタクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド等)、N,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体(例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチルメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等)、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体(例えば、1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピロリジン、1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピペリジン、4−(1−オキソ−2−プロペニル)−モルホリン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−ピロリジン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−ピペリジン、4−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−モルホリン等)、またはビニルエーテル誘導体(例えば、メチルビニルエーテル)のホモポリマーまたはコポリマーからなる温度応答性材料、アゾベンゼン基を有する光吸収性高分子、トリフェニルメタンロイコハイドロオキシドのビニル誘導体とアクリルアミド系単量体との共重合体、および、スピロベンゾピランを含むN−イソプロピルアクリルアミドゲル等の光応答性材料などの公知のものを用いることができる(例えば、特開平2−211865、特開2003−33177参照)。これらの材料に所定の刺激を与えることによりその物性、例えば、親水性や疎水性を変化させ、同材料上に付着した細胞培養物の剥離を促進することができる。温度応答性材料で被覆された培養皿は市販されており(例えば、株式会社セルシードのUpCell(登録商標)やDIC株式会社のCepallet(登録商標))、これらを本発明において使用することができる。
基材は、種々の形状であってもよいが、平坦であることが好ましい。また、その面積は特に限定されないが、典型的には、約1cm〜約200cm、好ましくは約2cm〜約100cm、より好ましくは約3cm〜約50cmである。
基材は、血清でコート(被覆またはコーティング)されていてもよい。「血清でコートされている」とは、基材の表面に血清成分が付着している状態を意味する。かかる状態は、限定されずに、例えば、基材を血清で処理することにより得ることができる。血清による処理は、血清を基材に接触させること、および、必要に応じて所定期間インキュベートすることを含む。
血清としては、異種血清および同種血清を用いることができる。異種血清は、シート状物を移植に用いる場合、そのレシピエントとは異なる種の生物に由来する血清を意味する。例えば、レシピエントがヒトである場合、ウシやウマに由来する血清、例えば、ウシ胎仔血清(FBS、FCS)、仔ウシ血清(CS)、ウマ血清(HS)などが異種血清に該当する。また、「同種血清」は、レシピエントと同一の種の生物に由来する血清を意味する。例えば、レシピエントがヒトである場合、ヒト血清が同種血清に該当する。同種血清は、自己血清(自家血清ともいう)、すなわち、レシピエントに由来する血清、およびレシピエント以外の同種個体に由来する同種他家血清を含む。なお、本明細書中で、自己血清以外の血清、すなわち、異種血清と同種他家血清を非自己血清と総称することもある。
基材をコートするための血清は、市販されているか、または、所望の生物から採取した血液から定法により調製することができる。具体的には、例えば、採取した血液を室温で約20分〜約60分程度放置して凝固させ、これを約1000G〜約1200G程度で遠心分離し、上清を採取する方法などが挙げられる。
基材上でインキュベートする場合、血清は原液で用いても、希釈して用いてもよい。希釈は、任意の媒体、例えば、限定することなく、水、生理食塩水、種々の緩衝液(例えば、PBS、HBSSなど)、種々の液体培地(例えば、DMEM、MEM、F12、DME、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、120、131、153、199など)、L15、SkBM、RITC80−7、DMEM/F12など)等で行うことができる。希釈濃度は、血清成分が基材上に付着することができれば特に限定されず、例えば、約0.5%〜約100%(v/v)、好ましくは約1%〜約60%(v/v)、より好ましくは約5%〜約40%(v/v)である。
インキュベート時間も、血清成分が基材上に付着することができれば特に限定されず、例えば、約1時間〜約72時間、好ましくは約4時間〜約48時間、より好ましくは約5時間〜約24時間、さらに好ましくは約6時間〜約12時間である。インキュベート温度も、血清成分が基材上に付着することができれば特に限定されず、例えば、約0℃〜約60℃、好ましくは約4℃〜約45℃、より好ましくは室温〜約40℃である。
インキュベート後に血清を廃棄してもよい。血清の廃棄手法としては、ピペットなどによる吸引や、デカンテーションなどの慣用の液体廃棄手法を用いることができる。本発明の好ましい態様においては、血清廃棄後に、基材を無血清洗浄液で洗浄してもよい。無血清洗浄液としては、血清を含まず、基材に付着した血清成分に悪影響を与えない液体媒体であれば特に限定されず、例えば、限定することなく、水、生理食塩水、種々の緩衝液(例えば、PBS、HBSSなど)、種々の液体培地(例えば、DMEM、MEM、F12、DMEM/F12、DME、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、120、131、153、199など)、L15、SkBM、RITC80−7など)等で行うことができる。洗浄手法としては、慣用の基材洗浄手法、例えば、限定することなく、基材上に無血清洗浄液を加えて所定時間(例えば、約5秒〜約60秒間)撹拌後、廃棄する手法などを用いることができる。
本発明において、基材を、成長因子でコートしてもよい。ここで、「成長因子」は、細胞の増殖を、それがない場合に比べて促進する任意の物質を意味し、例えば、上皮細胞成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)などを含む。成長因子による基材のコート手法、廃棄手法および洗浄手法は、インキュベーション時の希釈濃度が、例えば、約0.0001μg/mL〜約1μg/mL、好ましくは約0.0005μg/mL〜約0.05μg/mL、より好ましくは約0.001μg/mL〜約0.01μg/mLである以外は、基本的に血清と同じである。
本発明において、基材を、ステロイド剤でコートしてもよい。ここで「ステロイド剤」は、ステロイド核を有する化合物のうち、生体に、副腎皮質機能不全、クッシング症候群などの悪影響を及ぼし得るものをいう。かかる化合物としては、限定されずに、例えば、コルチゾール、プレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン等が含まれる。ステロイド剤による基材のコート手法、廃棄手法および洗浄手法は、インキュベーション時の希釈濃度が、デキサメタゾンとして、例えば、約0.1μg/mL〜約100μg/mL、好ましくは約0.4μg/mL〜約40μg/mL、より好ましくは約1μg/mL〜約10μg/mLである以外は、基本的に血清と同じである。
基材は、血清、成長因子およびステロイド剤のいずれか1つでコートしても、これらの任意の組合わせ、すなわち、血清と成長因子、血清とステロイド剤、血清と成長因子とステロイド剤、または、成長因子とステロイド剤の組合わせでコートしてもよい。複数の成分でコートする場合、これらの成分を混合して同時にコートしてもよいし、別々のステップでコートしてもよい。
基材は、血清等でコートした後直ちに細胞を播種してもよいし、コートした後に保存しておき、その後細胞を播種することもできる。コートした基材は、例えば約4℃以下、好ましくは約−20℃以下、より好ましくは約−80℃以下に保つことにより長期間保存することができる。
基材への細胞の播種は、既知の任意の手法および条件で行うことができる。基材への細胞の播種は、例えば、細胞を培養液に懸濁した細胞懸濁液を基材(培養容器)に注入することにより行ってもよい。細胞懸濁液の注入には、スポイトやピペットなど、細胞懸濁液の注入操作に適した器具を用いることができる。
一態様において、基材上に配置した細胞にゲルを添加する前に、培地を除去してもよい。さらなる態様において、培地を除去したあと、基材と接着した細胞を洗浄液で洗浄してもよい。一態様において、洗浄液としては、細胞と基材との接着を破壊しない任意のものを使用してもよい。細胞と基材との接着を破壊しない洗浄液としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ハンクス平衡塩緩衝液、HEPES、DMEM、RPMIおよびHam’s F−12などが挙げられる。
一態様において、本発明に係るシート状物を作製するための方法は、細胞を培養するための既知の任意のステップをさらに含めることができる。このようなステップの例として、これらに限定されるものではないが、凍結細胞を融解するステップ、融解した細胞に洗浄液を添加するステップ、洗浄液を添加した細胞を遠心分離にかけるステップ、などが挙げられる。
本発明の別の側面は、細胞を基材上に間隙を介して配置するステップ、該細胞の間隙をゲルで埋めてシート状にするステップ、を含む方法により作製された、多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物に関する。本発明において、該シート状物をシート状にするためのゲルは、好ましくは、フィブリンゲル、ゼラチンおよびコラーゲンであり、より好ましくはフィブリンゲルである。本発明において、細胞を配置するための基材は、好ましくは、刺激応答性材料を有する基材、より好ましくは、温度応答性材料を有する基材である。本発明の一態様において、細胞は、細胞塊の形態である。
本発明のまた別の側面は、細胞、該細胞を配置するための基材、および該細胞をシート状にするためのゲルを含む、多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物を作製するためのキットに関する。
本発明におけるキットは、これらに限定されるものではないが、例えば、培地、洗浄液、緩衝液、チューブ、細胞培養に使用する器具、輸送容器、使用方法に関する指示などをさらに含んでもよい。
細胞培養に使用する器具としては、例えば、ピペット、セルストレーナー、セルスクレーバーなどが挙げられる。
使用方法に関する指示としては、例えば、使用説明書、製造方法や使用方法に関する情報を記録した媒体、例えば、フレキシブルディスク、CD、DVD、ブルーレイディスク、メモリーカード、USBメモリーなどが挙げられる。
本発明のさらに別の側面は、多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物の適用により改善される疾患を処置する方法であって、本発明に係る方法を用いて作製したシート状物を、それを必要とする対象に適用することを含む方法に関する。
以下の実施例において、多能性幹細胞として、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)で樹立された臨床用ヒトiPS細胞を用いた。M. Nakagawa et al., Scientific Reports, 4:3594 (2014)を参考に、ヒトiPS細胞をフィーダーフリー法で維持した。次いで、Miki et al., Cell Stem Cell 16, 699-711, June 4, 2015やWO2014/185358およびWO2017/038562の記載を参考にして、ヒトiPS細胞を心筋細胞へと分化誘導して胚様体を得た。具体的には、フィーダー細胞を含まない培養液で維持培養したヒトiPS細胞を、EZSPERE(登録商標)(AGCテクノグラス社製)上で10μMのY27632(和光純薬)を含有するStemFit AK03培地(味の素)中で1日培養し、得られた胚様体をアクチビンA、骨形成タンパク質(BMP)4および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含有する培養液中で培養し、さらにWnt阻害剤(IWP3)およびBMP4阻害剤(Dorsomorphin)およびTGFβ阻害剤(SB431542)を含む培養液中で培養し、その後VEGFおよびbFGFを含む培養液中で培養を行うことで、iPS細胞由来のヒト心筋細胞を得た。得られた細胞における心筋細胞の割合は50%〜90%であった。
例1.シート状物の作製
細胞保存用保存液(10%DMSO含有MCDB培地)中で凍結保存したヒトiPS細胞由来心筋細胞を37℃で解凍し、10%FBS/DMEMで希釈後、遠心分離し、上清を除去したのち、細胞を2×10細胞/cmの密度で、10mLのヒト血清20%含有DMEM培地(Gibco社製)に懸濁し、直径6cmの温度応答性基材(UpCell(登録商標)、6cmディッシュ、CS3006、セルシード社製)に播種した。播種後、細胞集団を37℃、5%COに設定したインキュベーター(BNA−121D、エスペック社製)内で72時間培養した。培養後、基材をインキュベーターから取り出し、細胞が基材に接着していることを確認し、培地を廃棄した。播種した細胞は完全なシート状細胞培養物を形成せず、間隙(孔)を有した状態であることが観察された。
培地の廃棄後、基材上に、100μlのフィブリノゲン液(ベリプラスト(登録商標)組織接着用(CSLベーリング社製)のバイアル1の内容物(フィブリノゲン凍結乾燥粉末)をバイアル2の内容物(フィブリノゲン溶解液)で溶解したもの、フィブリノゲン濃度80mg/mL)と、100μlのトロンビン液(ベリプラスト(登録商標)組織接着用(CSLベーリング社製)のバイアル3の内容物(トロンビン凍結乾燥粉末)をバイアル4の内容物(トロンビン溶解液)で溶解したもの、トロンビン濃度300単位/mL)とを滴下し、約5分静置して、フィブリンゲルを形成した。
フィブリンゲル形成後に、1mLのハンクス平衡塩溶液(HBSS(+)、Cat No.14025、Life Technologies社製)を加えて、3回洗浄し、未反応のフィブリノゲンおよびトロンビンを除去した。その後、温度応答性材料の温度処理のため室温(20〜25℃)で5〜30分間静置し、ピペッティングにより、シート状物を基材から剥離させ、シート状物を回収した(シート状物1)。
例2.シート状物の作製(比較例)
比較例として、基材上に細胞を配置させることなく、播種後ただちに上記シート状物1と同様の操作によりフィブリンゲルによりシート状に成形したシート状物2を作製した。
例3.フィブリンゲルとシート状細胞培養物との積層体の作製
細胞保存用保存液(10%DMSO含有MCDB培地)中で凍結保存したヒトiPS細胞由来心筋細胞を37℃で解凍し、0.5%血清アルブミンを含む生理緩衝液(Gibco社製)を用いて2回洗浄した。洗浄した細胞6.0×10個を、10mLのヒト血清20%含有DMEM培地(Gibco社製)に懸濁させ、直径10cmの基材(UpCell(登録商標)、10cmディッシュ、CS3005、セルシード社製)に播種した。播種後、細胞を37℃、5%COに設定したインキュベーター内で1日間培養した。培養後、基材をインキュベーターから取り出し、温度応答性材料の温度処理のため室温(20〜25℃)で5〜30分間静置し、その後ピペッティングにより、シート状細胞培養物を基材から剥離させ、回収した。
次いで、回収したシート状細胞培養物上に100μlのフィブリノゲン液(ベリプラスト(登録商標)組織接着用(CSLベーリング社製)のバイアル1の内容物(フィブリノゲン凍結乾燥粉末)をバイアル2の内容物(フィブリノゲン溶解液)で溶解したもの、フィブリノゲン濃度80mg/mL)と、100μlのトロンビン液(ベリプラスト(登録商標)組織接着用(CSLベーリング社製)のバイアル3の内容物(トロンビン凍結乾燥粉末)をバイアル4の内容物(トロンビン溶解液)で溶解したもの、トロンビン濃度300単位/mL)とを滴下し、約5分静置して、フィブリンゲルを形成した。フィブリンゲル形成後に、1mLのハンクス平衡塩溶液(HBSS(+)、Cat No.14025、Life Technologies社製)を用いて、3回洗浄し、未反応のフィブリノゲンおよびトロンビンを除去し、フィブリンゲルとシート状細胞培養物との積層体を得た。
例4.シート状物の評価
(1)シート状物1および積層体のサイズの評価
例1において作製したシート状物1と例3において作製した積層体とをそれぞれ10cmシャーレに移し替え、大きさを比較した。
図1にシート状物1の写真を、図2に積層体の写真を示す。シート状物1は収縮せずにその大きさは、作製したシャーレの大きさと同じく直径6cmであった。積層体は剥離後に収縮し、積層体の大きさは、直径2.5cmであった。
(2)シート状物1およびシート状物2の断面図の評価
例1で作製したシート状物1および例2で作製したシート状物2を、それぞれ4%パラホルムアルデヒド(和光純薬)に浸し、一晩固定化し、次いでシート状物をそれぞれ30%スクロース/PBSに浸した。その後、シート状物をそれぞれティシュー・テック(登録商標)O.C.T.コンパウンド(サクラファインテックジャパン)に浸し、凍結処理を行い、凍結切片を作製した。作製した凍結切片について、ヘマトキシリン・エオジン染色により、細胞核をヘマトキシリンで青紫色に、その他構造物をエオジンで種々の濃さの紅色に染色し、顕微鏡(100倍)で観察を行った。
図3にシート状物1の断面図を、図4にシート状物2の断面図を示す。シート状物1においては、細胞を配置した際に存在した間隙(孔)はゲルで埋められ、細胞は一面(破線で囲まれた部分)に局在し、ゲル部分(一点鎖線で囲まれた部分)とは分かれて存在していた。これに対して、シート状物2においては、細胞がシート状物中に満遍なく散在していた。

Claims (10)

  1. 多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物を作製するための方法であって、以下:
    細胞を基材上に間隙を介して配置するステップ、
    該細胞間の間隙をゲルで埋めてシート状にするステップ、
    を含む、前記方法。
  2. 細胞を基材と接着させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 細胞が、細胞塊の形態である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. ゲルが、フィブリンゲル、ゼラチンまたはコラーゲンを含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. ゲルが、2液を混合することによりゲル化が生じるものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 基材が、刺激応答性材料を有する基材である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法により作製された、多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物。
  9. 請求項8に記載の多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物を作製するためのキットであって、
    多能性幹細胞由来の分化誘導細胞、該細胞を配置するための基材、および該細胞をシート状にするためのゲルを含む、前記キット。
  10. 多能性幹細胞由来の分化誘導細胞を含有するシート状物の適用により改善される疾患を処置する方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法により作製されたシート状物を、それを必要とする対象に適用することを含む、前記方法。
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