JP2021052658A - 生体由来組織からの生細胞の分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 生体由来組織からの細胞分離法を提供する。【解決手段】 生体由来組織から生細胞を分離する方法であって、採取した前記組織を押圧により破砕するステップを含む、前記方法。【選択図】 図1

Description

本発明は、生体由来組織からの生細胞分離方法、同方法に使用するための容器、同方法に使用するためのキット、同方法により得られた生細胞を用いて製造した移植片に関する。
近年の心臓病に対する治療の革新的進歩にかかわらず、重症心不全に対する治療体系は未だ確立されていない。心不全の治療法としては、βブロッカーやACE阻害剤による内科治療が行われるが、これらの治療が奏功しないほど重症化した心不全には、補助人工心臓や心臓移植などの置換型治療、つまり外科治療が行われる。
その一方、最近、重症心不全治療の解決策として新しい再生医療の展開が不可欠と考えられている。重症心筋梗塞等においては、心筋細胞が機能不全に陥り、さらに線維芽細胞の増殖、間質の線維化が進行し心不全を呈するようになる。心不全の進行に伴い、心筋細胞は傷害されてアポトーシスに陥るが、心筋細胞は殆ど細胞分裂をおこさないため、心筋細胞数は減少し心機能の低下もさらに進む。
このような重症心不全患者に対する心機能回復には細胞移植法が有用とされ、既に骨格筋芽細胞よる臨床応用が開始されている。
近年、その一例として、骨格筋芽細胞を含む心臓に移植可能な三次元に構成された細胞培養物と、その製造方法が提供された(特許文献1)。このような細胞移植に用いる骨格筋芽細胞は、通常移植する対象の骨格筋組織から骨格筋芽細胞および筋衛星細胞などのCD56陽性細胞を分離して得るが、骨格筋組織から分離された細胞に含まれるCD56陽性細胞の割合を高める方策として、例えば、骨格筋組織をタンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬して酵素処理を行って得られた酵素処理液を廃棄した後に、再度タンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬して酵素処理を行って得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収する方法などが知られている(特許文献2)。
特表2007−528755号公報 特開2011−110368号公報
このように生体由来組織から生細胞を分離するため、様々な分離方法や分離条件が考案されてきた。しかしながら、各種生体組織を構成する細胞は多様であり、なかでも幹細胞や前駆細胞は生体組織中に占める割合が低く、特殊なニッチに存在するものが多い。例えば、骨格筋組織は、筋線維から構成され、筋線維の実質は形質膜に囲まれた多核化細胞であるが、その前駆細胞である筋衛星細胞および/また骨格筋芽細胞などのCD56陽性細胞は、筋線維の基底膜と形質膜との間にのみ局在するため、対象の骨格筋組織から、これらのCD56陽性細胞を分離するためには筋線維の基底膜の結合を緩めつつ、CD56陽性細胞を破壊しない程度に骨格筋組織を破砕する必要がある。
これまで骨格筋組織からのCD56陽性細胞の分離は、手作業による細切処理および酵素分解処理が主として行なわれてきた。細切作業により筋線維を破壊する作業は、煩雑かつ長時間を要し、また見極めも作業者の勘に依存することから作業者間での回収生細胞数やバイアビリティ等のばらつきが存在していた。このように種々の生体由来組織から様々な生細胞を簡便に安定して分離する方法は未だ見出されていない。
本発明者等は、上述した問題を解決するために鋭意検討した結果、生体由来組織、特に骨格筋組織を押圧により破砕することで前駆細胞等(以下、幹細胞ともいう)の回収生細胞数、バイアビリティおよび純度を高められることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下に関する。
<1> 生体由来組織から生細胞を分離する方法であって、
採取した前記組織を押圧により破砕するステップを含む、前記方法。
<2> 前記組織の押圧が、生体由来組織を含む容器を介して行なわれる、<1>に記載の方法。
<3> 生体由来組織が、筋組織、脂肪組織、造血組織、骨組織、皮膚組織、軟骨組織、腱組織、靭帯組織、間柔組織、脳組織、血管組織、循環器系組織、消化器系組織、代謝系組織、リンパ系組織、血液からなる群から選択される1以上の組織を含む、<1>または<2>に記載の方法。
<4> 生体由来組織が骨格筋組織であり、生細胞がCD56陽性細胞である、<1>〜<3>のいずれか一項に記載の方法。
<5> 容器が、袋状容器である、<2>〜<4>に記載の方法。
<6> 押圧が、少なくとも2箇所に逐次的に加えられる、<1>〜<5>に記載の方法。
<7> 押圧が、ホモジナイザーのパドルにより加えられる、<1>〜<6>のいずれか一項に記載の方法。
<8> パドルの表面が、凹凸の形状を備える、<7>に記載の方法。
<9> 押圧が、緩衝材を介して加えられる、<1>〜<8>のいずれか一項に記載の方法。
<10> 緩衝材が、液体を収容する袋状容器である、<9>に記載の方法。
<11> さらに細切する工程および/または酵素処理に供する工程をさらに含む、<1>〜<10>のいずれか一項に記載の方法。
<12> <1>〜<11>に記載の方法に使用するための生細胞分離用ホモジナイザー。
<13> <12>に記載のホモジナイザーを含む、生細胞分離用キット。
<14> <1>〜<11>に記載の方法で分離された細胞を、移植片に培養する工程を含む、移植片の製造方法。
<15> <14>に記載の方法により製造された、移植片。
<16> <14>に記載の方法によって製造された移植片の治療有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、前記対象における疾患の治療方法。
本発明の分離方法および/または分離用容器を用いることで、分離時間を短縮、し、さらに回収生細胞数、バイアビリティおよび幹細胞の純度を安定化させつつ高めることが出来る。
図1は、筋衛星細胞(A)が、骨格筋を構成する筋線維の基底膜(B)と形質膜(C)との間に存在することを示す模式図である。 図2は、本発明の試料破砕用容器であり、1つの仕切りによって下部空間7の左側に開口部に向けて突出する突出部が形成されている態様を示す。 図3は、本発明の試料破砕用容器であり、2つのハノ字状の仕切りによって下部空間7の中央に開口部に向けて突出する突出部が形成されている態様を示す。 押圧により破砕処理を行った直後の組織処理液を示す。 試料破砕用容器へ試料および酵素消化液を投入し、封止した際の模式図を示す 破砕処理前(A)と2分間の破砕処理後(B)の試料の変化を示す。2分間の破砕により骨格筋組織の大部分が懸濁されることが分かる。 比較例6(A)と実施例5(B)により分離された骨格筋芽細胞数の比較を示す。2分間の破砕処理と細切処理を組み合わせることで(B)大幅に細胞数が増加することが分かる。 実施例6により得られたシート状細胞培養物を示す。
以下、本発明の好適な実施態様に基づき、本発明を説明する。
[生細胞の分離方法]
本発明は、生体由来組織から生細胞を分離する方法であって、採取した前記組織を押圧により破砕するステップを含む、前記方法が含まれる。
本発明の方法により分離された細胞は、細胞の回収生細胞数およびバイアビリティが高く、高比率の幹細胞を含有する。
以下、本実施態様の各ステップについて説明する。
<押圧により破砕するステップ>
本開示において、生体由来組織は、生体由来であれば特に限定されず、例えば筋組織、脂肪組織、皮膚組織、軟骨組織、腱組織、靭帯組織、間柔組織、血管組織、脳組織、循環器系組織、消化器系組織、代謝系組織、リンパ系組織、骨髄組織、血液などであり、好ましくは筋組織、脂肪組織、骨髄組織、血液であり、さらに好ましくは骨格筋組織である。
本開示における生細胞とは、生体由来組織から分離された任意の生細胞を含むことができる。非限定的に、心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞などおよび幹細胞(例えば、筋芽細胞(例えば、骨格筋芽細胞)、筋衛星細胞、間葉系幹細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、末梢血、皮膚、毛根、筋組織、子宮内膜、胎盤、臍帯血由来のものなど)、心臓幹細胞などの組織幹細胞、胚性幹細胞など)が挙げられる。本発明における生細胞は平面で接触する複数の膜の間において複数の膜と直接接触または複数の膜に隣接するようにして膜に取り囲まれるようにして局在する細胞であってよい。本発明において生細胞は、好ましくは骨格筋芽細胞、筋衛星細胞などの骨格筋組織中のCD56陽性細胞または骨髄、脂肪組織、末梢血由来の間葉系幹細胞が挙げられる。
本発明に用いる生体由来組織は、任意の生物に由来し得る。かかる生物には、限定されずに、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(マウス、ラット、ハムスター、モルモットなど)、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジなどが含まれる。本発明で用いる生体由来組織は、生体由来組織から分離した細胞を移植に用いる場合には、移植対象(レシピエント)自身から採取された生体由来組織を用いて分離された自家細胞を用いることにより、拒絶反応を回避することができる。しかしながら、異種や同種非自己の生体由来組織を用いて分離された異種由来細胞や同種非自己由来細胞を利用することも可能である。
本発明における押圧は、生体由来組織の外側から押圧することにより組織間、組織-細胞間および/または細胞間など生体由来組織内部の結合を緩め、これを持続して破砕することにより、生体由来組織を構成する生細胞、特に組織の内部に局在する細胞を損傷することなく分離できる。
したがって、本発明において採取した生体由来組織の押圧は、組織の内部の結合を緩めることができれば、生体由来組織へ直接加えても、生体由来組織が投入された容器の外部から容器を介して加えてもよい。
生体由来組織を直接押圧する場合、例えば生理的に許容し得る液体を含むシャーレなどに生体由来組織を投入した状態で、ピンセットなどにより組織を固定し複数回押圧することにより行なうことができる。容器を介して押圧する場合、生理的に許容し得る液体とともに容器(例えば袋状容器)へ投入し、当該容器を固定して、容器自体を複数回押圧することにより行なうことができる。
本発明における押圧は、生体由来組織を含む容器を介して行なわれることが好ましい。容器を介して押圧することにより容器内部の生体由来組織を直接的に加圧できるだけでなく、容器内部の生理的に許容し得る液体の移動により発生する水流により加圧でき、これにより生体由来組織を均一かつ効率よく破砕することができる。
一般的に、生体由来組織から細胞を物理的に分離する手段として、例えば摩砕処理や超音波処理が用いられるが、これらの処理は、組織内部の構造を直接的に破壊し、均質化することにより細胞を分離するものであり、本発明の押圧による破砕とは異なる。
押圧は、組織内部の結合を緩めつつ、生細胞を破壊しない程度のせん断力が生ずれば任意の方法を使用することができ、当該方法は、手動であっても機械であってもよいが、温度を上げることなく破砕するためには機械が好ましい。本発明の一態様において、容器を介して押圧する場合、典型的にはパドル型ホモジナイザーが好ましい。
本発明の一態様において、容器を介して押圧する場合、容器の同一箇所を連続して押圧してもよいが、容器内部の生体由来組織を均等に加圧するとともに、容器内での水流発生を促し得ることから容器の少なくとも2箇所以上を逐次的に、例えば2箇所を交互に押圧することが好ましい。このようにして発生した水流は、生体由来組織を加圧するだけでなく攪拌するため、均一かつ効率よく破砕できる。
本発明の一態様において、押圧により破砕するステップの前に採取した生体由来組織を切断するステップ、例えば約1〜10mm角、好ましくは約5mm角に切断するステップを任意に設けることができる。
本発明において、パドル型ホモジナイザーは、試料入りの容器に向かうように往復運動するパドルと、パドルに対向して設けられた押し付け部との間で試料入りの容器を押圧して容器内の試料を破砕する装置を用いることができる。当該装置としては、例えば、開閉扉とパドル面との間に試料入り容器を配置可能な試料収容部が設けられ、試料収容部においてパドル面に設けられた2つパドルと開閉扉(押し付け部)との間で容器を交互に押圧するホモジナイザーを使用できる。このような装置としては、例えばPro media SH-IIM(エルメックス、コードNo.SH-2M)、バッグホモジナイザーBH-W(アズワン)、BagMixerR(InterScience、商品コード.021-110)等のホモジナイザーが挙げられる。このようなホモジナイザーのパドルとして、平板状のパドルまたは凹凸状のパドルを使用することができ、生体由来組織を十分に破砕するためには平板状のパドルと凹凸状のパドルで交互に押圧することが好ましい。例として、特開平07-284679公報に記載のホモジナイザーが挙げられる。
本発明における破砕は、生体由来組織の一部が、生理的に許容し得る液体中に分散または懸濁される程度に破砕されればよく、均質に分散または懸濁される程度に破砕されることを要さない。かかる粉砕は、例えば生体由来組織の平均組織長を約4mm角以下、約3mm角以下、約2mm角以下、約1mm以下に破砕することであってよい。かかる粉砕は、例えばパドル型ホモジナイザーによる30秒〜30分、2〜15分、3〜15分の処理であり、バイアビリティの低下を防ぎつつ一定の回収生細胞を得る観点から、1〜5分の処理が好ましい。
生理的に許容し得る液体は、生体由来組織に含まれる細胞が生存し得るものであれば特に限定されず、例えば、タンパク質分解酵素溶液、水、生理食塩水、種々の緩衝液(例えば、PBS、HBSSなど)、種々の液体培地(例えば、DMEM、MEM、F12、DME、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、131、153、199など)、L15、SkBM、RITC80−7、DMEM/F12など)等が挙げられる。混入微生物の生育を抑制するため、生理的に許容し得る液体は抗生物質、抗真菌剤などの抗微生物薬を含んでいてもよい。
タンパク質分解酵素溶液は、線維性組織を分解するコラゲナーゼやマトリックスメタロプロテアーゼ、細胞同士の接着や細胞と培養基材との接着を分離するトリプシン、TrypLE Select(ライフテクノロジーズ社)などのタンパク質分解酵素を含んでもよい。タンパク質分解酵素溶液は、タンパク質分解酵素を1種または2種以上含んでもよく、例えば、コラゲナーゼとトリプシンの両方を含んでもよい。コラゲナーゼの濃度は、0.01〜0.25%(W/V)、トリプシンの濃度は、0.001〜0.25%(V/V)であってもよい。具体的には、トリプシンとして、トリプシン−EDTA(1×)溶液(ライフテクノロジーズ社)を用いることができ、コラゲナーゼとして、コラゲナーゼA(ロシュ・アプライドサイエンス社)、Collagenase Lyophilized (Clostridium Histolyticum由来、ライフテクノロジーズ社)、Liberase MNP-S(ロシュ・アプライドサイエンス社)を用いることができる。生体由来組織に含まれるタンパク質の量に対して過剰量のタンパク質分解酵素を用いることが好ましい。例えば、骨格筋組織の重さが1〜2gである場合には、コラゲナーゼAを0.5mg/L含むTrypLE Select20mLを投入した場合に、過剰量のタンパク質分解酵素が添加されている。
タンパク質分解酵素溶液は、カルシウムイオンのキレーターであるEDTAまたはEGTAを含んでもよい。EDTAまたはEGTAの濃度は、0.02〜0.1%(W/V)であってもよい。EDTAまたはEGTAをタンパク質分解酵素に含ませない場合には、EDTAまたはEGTAの溶液をタンパク質分解酵素とは別に準備し、生体由来組織を、タンパク質分解酵素溶液に投入する前に、EDTAまたはEGTAの溶液に例えば浸漬することが好ましい。この場合のEDTAまたはEGTAの濃度も、0.02〜0.1%(W/V)であってよい。
本発明の一態様において、容器を介して押圧する場合、容器へ投入する生理的に許容し得る液体の容積は、生体由来組織を均一に押圧し、破砕出来れば特に限定されない。市販のホモジナイズ袋、例えばPYXON-20シリーズ(エルメックス、コードNo.PX0020等)を使用する場合、例えば300mL以下、200mL以下、100mL以下、75mL以下、50mL以下、25mL以下、20mL以下、10mL以下または7.5mL以下とすることができ、骨格筋組織を均等に粉砕分散し得る観点から15mLが好ましい。容器への投入は、切断した骨格筋組織と、生理的に許容し得る液体とを別々に投入しても、これらを予め別の容器で混合したものを投入してもよい。
液体の温度は、骨格筋芽細胞のバイアビリティや回収生細胞数を低下させなければ特に限定されないが、例えば、4〜37℃、10〜30℃または15〜25℃とすることができ、典型的には室温である。
本発明の一態様において、容器を介して押圧する場合、破砕するステップに使用する容器(試料破砕用容器ともいう)は、容器外側からの押圧により試料を破砕し得る程度の柔軟性を有するとともに、容器が押圧される間に骨格筋組織と液体を含む試料が漏れ出さない程度の気密性と強度を有する任意の容器で行なってよい。かかる容器の形状としては、ボトル状、筒状、チューブ状、箱状など形状は限定されないが、押圧により容器を均等に押し潰すことが可能であり、連続的な押圧にも耐え得る強度を付与し得ることから、袋状容器が好ましい。袋状容器の場合、多角形状(四角形状)やコーナー部を減らした曲線輪郭を持つ形状であってもよい。具体的には、例えば、ボトムシール袋、サイドシール袋、三方シール袋、ピロー袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ、円形シール袋等が挙げられる。
本発明の一態様において、容器を介して押圧する場合、試料破砕用容器の材質としては、連続的な押圧に耐えうる気密性と強度を有していればよく、樹脂製のフィルム又はシートが好ましい。かかるフィルム又はシートの材質としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート及び合成ゴム等から選ばれる一種又は二種以上を使用することができる。樹脂製のフィルム又はシートは、単層構造でもよいし、同じ又は異なる材質のものを重ねた積層構造でもよい。容器の厚さは、特に限定されないが、通常、例えば100μm以下の範囲内の厚さのものが用いられる。
試料破砕用容器の寸法は、当業者であれば、押圧の方法や使用する機器により適宜選択することができ、特に限定されない。例えばパドル型ホモジナイザーを用いる場合、ポリエチレンシートの両側縁部および底縁部をヒートシールによって作成した四角形状の袋状容器の他、市販のホモジナイズ袋を使用することが出来る。市販のホモジナイズ袋としては、例えばPYXON-20シリーズ(エルメックス、コードNo.PX0020等)、サニスペックテストバッグ(アズワン、カタログNo.2-6391-02)、RollBagR(InterScience、Ref.145 040)BagFilterバッグフィルター(InterScience、Ref.111 720)等を使用し得る。市販のホモジナイズ袋は、袋内部にフィルターを備えていても備えていなくてもよいが、フィルターを備えたホモジナイズ袋は袋内で骨格筋組織とフィルターとの間で摩擦を生じ得るため、より高いせん断力を発揮すると考えられる。
本発明の一態様において、押圧は、緩衝材を介して試料入り容器へ加えてもよい。すなわち、緩衝材へ加えられた押圧を介して試料入り容器を加圧してもよい。緩衝材への押圧を介して試料入り容器を加圧すると幹細胞の回収生細胞数およびバイアビリティを高くすることが出来る。押圧時の衝撃を緩衝材により和らげて加圧することができ、これにより細胞を破壊せずに組織の結合を緩めることが可能になるものと推測される。緩衝材は、押圧時の衝撃を吸収可能な素材であれば特に限定されず、例えばゴム、布もしくは発泡スチロールといった弾性体、または液体、ゲルもしくは粉体を収容した袋状容器などを使用することができる。緩衝材は、押圧による加圧を試料入り容器へ密着して伝達し得る観点から液体を収容した袋状容器が好ましい。
本発明の一態様において、容器を介して押圧する場合、緩衝材の寸法は、押圧時の衝撃を和らげるとともに試料入り容器へ密着し得るものであれば適宜選択することができ、例えばパドル型ホモジナイザーを用いる場合、液体を収容した袋状容器は、試料を押圧するための容器と同一寸法であることが好ましい。収容される液体の容積は、押圧時の衝撃を和らげて加圧し得れば特に限定されない。当業者は、押圧の方法や使用する機器により適宜選択することが出来、市販のホモジナイズ袋、例えばPYXON-20シリーズ(エルメックス、コードNo.PX0020等)を用いて押圧する場合、約20mL〜300mL、50mL〜200mL、75mL〜100mLでよく、100mLが好ましい。
上記破砕するステップを経た生体由来組織は、当該ステップを経ずに分離したものより高い回収生細胞数、バイアビリティおよび高い比率の幹細胞を含有する。回収生細胞数およびバイアビリティは、後述の酵素処理ステップを経た後に、それぞれ1.0×10個以上、1.0×10個以上、1.0×10個以上、1.0×10個以上、および、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上となり得る。ある一態様において、幹細胞の比率は、後述の酵素処理ステップを経た細胞集団を3回継代した後で、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上となり得る。
回収生細胞数およびバイアビリティは、任意の既知の手法を用いて決定することができる。かかる手法としては、例えば、細胞二重染色法などを用いて回収総細胞数および生細胞数を計数し、かかる生細胞数を総細胞数で除すことが挙げられる。骨格筋芽細胞の比率は、任意の既知の手法を用いて決定することができる。かかる手法としては、例えば、骨格筋芽細胞および/または筋衛星細胞に特異的な抗体で標識し、抗体が結合した陽性細胞数を、計数した総細胞数で除すことが挙げられる。細胞の計数は、特異的抗体で染色した標本の顕微鏡観察、顕微鏡像の画像解析、特異的抗体で染色した細胞集団のフローサイトメトリー解析などによって行うことができる。例えば、幹細胞が骨格筋芽細胞の場合、該細胞に特異的なマーカーとしては、限定されずに、例えば、CD56、α7インテグリン、ミオシン重鎖IIa、ミオシン重鎖IIb、ミオシン重鎖IId(IIx)、MyoD、Myf5、myogeninなどが挙げられる。幹細胞が筋衛星細胞に特異的なマーカーとしては、限定されずに、例えば、CD56、CD34、Myogenin、Myf5、Pax7などが挙げられる。
<細切するステップ>
本発明の分離方法は、破砕するステップの後に細切するステップを含んでも含まなくてもよい。破砕するステップの後に細切するステップを含まない場合は、破砕するステップの後に後述する酵素処理ステップを行なってよい。本開示において細切とは器具などの物理的な手段を用いて対象の組織をさらに小さいサイズの組織片にすることを言う。破砕するステップの後に細切するステップを行なう場合、押圧した組織破砕液をシャーレなどの細切を行なうための容器へ移し、破砕した骨格筋組織をさらに細切する。細切を開始する前に破砕液中の結合組織(白色の組織)を除去してもよい。
本発明の一態様において分離方法は、破砕するステップの後に、細切するステップに代えて摩砕するステップまたは超音波破砕するステップなど公知の物理的な細胞分離方法と組み合わせてもよい。本発明の破砕するステップを、摩砕するステップまたは超音波破砕するステップの前に行なうことで、組織間の結合が緩くすることができるため、一般的な摩砕や超音波破砕よりも緩和した条件で分離可能となり、したがって破砕するステップを経ずに分離したものより高い回収生細胞数、バイアビリティおよび高い比率の幹細胞を得ることができる。
<酵素処理ステップ>
細切するステップの後、酵素処理ステップを行ってもよい。酵素処理ステップにおいては、生体由来組織処理物を酵素処理に供し、酵素処理液から細胞を回収する。酵素処理は、生体由来組織処理物をタンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬することにより行うことができる。タンパク質分解酵素溶液については、上記で既に説明したとおりである。
酵素処理の処理温度は、使用する酵素の至適温度、失活温度などに依存するが、一般的に35〜40℃が好ましい。酵素溶液の体積は、生体由来組織処理物全体の結合組織を破壊するために、処理物全体が浸漬する体積であることが好ましい。また、酵素処理中は撹拌することが好ましい。
酵素処理液から細胞を回収する方法は特に限定されないが、例えば、酵素処理液を静置または遠心分離して得られた沈殿を回収する方法、酵素処理液を静置または遠心分離して得られた上清と沈殿を別々に回収し、沈殿はそのまま回収し、上清はさらに濾過し、濾過上清を遠心分離して得られた沈殿を回収する方法、などが挙げられる。また、セルストレーナー等を利用して、未消化の筋組織を分離し、これをさらなる酵素処理に供してもよい。
本発明の分離方法によって回収された細胞は、さらに培養ステップ、培養した細胞を継代する継代ステップへ供してよい。細胞の培養および継代は、既知の任意の方法を用いて行うことができる。本発明の分離方法によって回収された細胞は、さらに遺伝子を導入する遺伝子導入ステップへ供してもよい。導入する遺伝子は、治療する疾患の治療に有用なものであれば特に限定されず、例えば、HGFなどのサイトカインであってもよい。遺伝子の導入は、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、超音波導入法、電気穿孔法、パーティクルガン法、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどのウイルスベクター利用する方法、マイクロインジェクション法などの既知の任意の方法を用いて行うことができる。
[試料破砕用容器]
次に、本発明の一態様において、容器を介して押圧する場合に使用し得る試料破砕用容器について説明する。
本発明は、試料を押圧により粉砕するための容器であって、開口部を備えた容器本体と、容器本体の上部空間と下部空間とを隔てる仕切りと、を有し、仕切りの少なくとも一部が、容器底部に対して水平ではない部分を有する試料破砕用容器を含む。
通常、試料破砕用容器を固定した状態で押圧すると、容器中の生体由来組織および生理的に許容し得る液体を含む試料が、容器中の押圧した部分以外の部分、特に試料破砕用容器の上部へ移動する。例えば、パドル型ホモジナイザーの一方のパドルで容器を押圧すると、容器内の試料は、動作していない他方のパドル側へ移動し、他方のパドルを押圧すると、動作していない一方のパドル側へ移動する。このとき容器本体が、上部空間および下部空間を隔てる仕切りを有することで、押圧時に試料の移動を下部空間に制限することができ、これにより生体由来組織を効率よく直接的に加圧することが出来る。さらに仕切りの少なくとも一部が、容器底部に対して水平ではない部分、例えば傾斜を有することにより、上部方向へ移動した試料が傾斜に沿って移動することによって、下部空間における試料の移動を特定方向へ誘導するガイドとして作用し得るため、押圧時に水流の発生を促すことができる。かかる水流は生体由来組織を加圧および攪拌し得るため、生体由来組織をより均一かつ効率よく破砕できる。
このような仕切の形状は、少なくとも一部が、容器底部に対して水平ではない部分を有していれば限定されることなく、例えば直線であっても曲線であってもよく、例えば略への字状、略ハの字、略円弧状などが挙げられ、仕切りが面状で存在する場合は、例えば略三角錐状または略ドーム状などのテーパー構造が挙げられる。このような仕切は、任意の数、例えば1つまたは複数(2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ)の仕切りから構成されてよい。
仕切りによって形成される上部空間と下部空間の容積比は、仕切りを設ける前に比べて生体由来組織の移動が制限されれば特に限定されず、例えば、上部空間と下部空間とを1〜100:1、1〜50:1、1〜25:1、1〜10:1の容積比で隔てればよい。仕切りは、上部空間と下部空間を隔てることができれば任意の手段で設ければよく、例えば容器本体を熱溶着(ヒートシール)、圧着または接着剤等で画分してもよいし、容器と同一または異なる任意の素材からなる仕切り部材を容器本体へヒートシール、圧着、接着等して設けてもよい。
上部空間の一部は、例えば押圧型ホモジナイザーの開閉扉の閉鎖時に把持されそれにより試料破砕用容器が固定することができる。
本発明の好ましい態様において、容器は、上部空間と下部空間とを連通可能にする連通孔を有している。かかる連通孔を通じて下部空間へ試料の投入および/または取り出しができる。連通孔は、上部空間を通じて下部空間へ試料を投入ができれば、どこに設けてもよいが、連通孔を下部空間の突出部の頂部に設けることで、試料の取り出しが簡便となる。特に、取り出し時に連通孔へピペットの先端を挿入して試料を吸い出すと下部空間の試料を取り残すことなく取り出すことが出来る。しかしながら、連通孔は、必ずしも試料の投入および取り出しの両方が実現される必要はなく、試料投入を目的とした連通孔5が突出部の以外の任意の場所にあっても、破砕処理後に突出部の頂部を切る等し、そこからピペットの先端を挿入して取り出してもよい。
本発明の好ましい態様において、連通孔を設ける場合、試料が上部空間へ移動することを妨げる封止部を有する。封止部は、押圧時に連通孔を通じて上部空間へ試料が移動しないように下部空間へ収容できれば、いかなる封止手段でもよく、容器と同一または異なる任意の素材からなるジッパーまたはチャックなどの封止部材を容器本体へ熱溶着(ヒートシール)、圧着、接着等して設けてよいし、例えば容器本体を熱溶着ヒートシール、圧着または接着剤等で封止することもできる。
以下図面に基づいて本発明の破砕するステップに好適に使用し得る試料破砕用容器を説明する。本発明に係る容器について、図面を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の一態様において、容器10は、図2および図3に示すように、開口部4を備えた容器本体1と、容器本体1を上部空間および下部空間に隔てる仕切り3とを備えており、容器底部に対して水平ではない1つの仕切り(図2)および2つの仕切り(図3)を有する。このように容器底部に対して水平ではない仕切りを設けることにより、図2では下部空間7の左側に、図3では下部空間7の中央に、開口部に向けて突出する突出部が形成される。
仕切り3は、上部空間6および下部空間7を完全に隔てておらず、上部空間6および下部空間7を連通可能にする連通孔5を有していてもよい。この連通孔5を通じて下部空間7へ生体由来組織および生理的に許容し得る液体を含む試料を投入および/または取り出しをすることができる。試料を投入した後、連通孔5をヒートシールなどで封止する。この状態で上部空間6の一部を固定し、下部空間7を押圧すると上部空間6への試料液の移動が仕切り3によって制限され、移動が制限された試料は、仕切り3の傾斜へ沿って移動するため押圧時に下部空間7における水流の発生を促すことができる。破砕後に容器本体の突出部の頂部が開口するように容器本体を横に切断し、形成された開口から下部空間7へピペットの先端を挿入して試料を吸い出すことができる。
図2は、下部空間7の同一箇所を押圧する際に好ましく用いられる容器であり、下部空間7の左上に突出部が形成されるように仕切り3が設けられている。
図3は、下部空間7の左側および右側を一定間隔で交互に押圧する際に好ましく用いられる容器であり、下部空間7の中央に連通孔5を介してハノ字状の突出部が形成されるように2つの仕切り3が配置されている。
[移植片の製造方法]
次に、本発明の移植片製造方法について説明する。
本発明において、「移植片」とは、生体内へ移植するための構造物を意味し、特に細胞を構成成分として含む移植用構造物を意味する。好ましい一態様においては、移植片は、細胞および細胞由来の物質以外の構造物(例えばスキャフォールドなど)を含まない移植用構造物である。本開示における移植片としては、これに限定するものではないが、例えばシート状細胞培養物、スフェロイド、細胞凝集塊などが挙げられ、好ましくはシート状細胞培養物またはスフェロイド、より好ましくはシート状細胞培養物である。
本開示において、「シート状細胞培養物」は、細胞が互いに連結してシート状になったものをいう。細胞同士は、直接(接着分子などの細胞要素を介するものを含む)および/または介在物質を介して、互いに連結していてもよい。介在物質としては、細胞同士を少なくとも物理的(機械的)に連結し得る物質であれば特に限定されないが、例えば、細胞外マトリックスなどが挙げられる。介在物質は、好ましくは細胞由来のもの、特に、シート状細胞培養物を構成する細胞に由来するものである。細胞は少なくとも物理的(機械的)に連結されるが、さらに機能的、例えば、化学的、電気的に連結されてもよい。シート状細胞培養物は、1の細胞層から構成されるもの(単層)であっても、2以上の細胞層から構成されるもの(積層体(多層)、例えば、2層、3層、4層、5層、6層など)であってもよい。また、シート状細胞培養物は、細胞が明確な層構造を示すことなく、細胞1個分の厚みを超える厚みを有する3次元構造を有してもよい。例えば、シート状細胞培養物の垂直断面において、細胞が水平方向に均一に整列することなく、不均一に(例えば、モザイク状に)配置された状態で存在していてもよい。
本開示の移植片、特にシート状細胞培養物は、好ましくはスキャフォールド(支持体)を含まない。スキャフォールドは、その表面上および/またはその内部に細胞を付着させ、シート状細胞培養物などの移植片の物理的一体性を維持するために当該技術分野において用いられることがあり、例えば、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)製の膜等が知られているが、本開示の移植片は、かかるスキャフォールドがなくともその物理的一体性を維持することができる。また、本開示の移植片は、好ましくは、移植片を構成する細胞由来の物質のみからなり、それら以外の物質を含まない。
細胞は異種由来細胞であっても同種由来細胞であってもよい。ここで「異種由来細胞」は、移植片が移植に用いられる場合、そのレシピエントとは異なる種の生物に由来する細胞を意味する。例えば、レシピエントがヒトである場合、サルやブタに由来する細胞などが異種由来細胞に該当する。また、「同種由来細胞」は、レシピエントと同一の種の生物に由来する細胞を意味する。例えば、レシピエントがヒトである場合、ヒト細胞が同種由来細胞に該当する。同種由来細胞は、自己由来細胞(自己細胞または自家細胞ともいう)、すなわち、レシピエントに由来する細胞と、同種非自己由来細胞(他家細胞ともいう)を含む。自己由来細胞は、移植しても拒絶反応が生じないため、本開示においては好ましい。しかしながら、異種由来細胞や同種非自己由来細胞を利用することも可能である。異種由来細胞や同種非自己由来細胞を利用する場合は、拒絶反応を抑制するため、免疫抑制処置が必要となることがある。なお、本明細書中で、自己由来細胞以外の細胞、すなわち、異種由来細胞と同種非自己由来細胞を非自己由来細胞と総称することもある。本開示の一態様において、細胞は自家細胞(autologous cells)または他家細胞(allogeneic cells)である。
培養基材は、細胞がその上で細胞培養物を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば、種々の材質および/または形状の容器、容器中の固形もしくは半固形の表面などを含む。容器は、培養液などの液体を透過させない構造・材料が好ましい。かかる材料としては、限定することなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ナイロン6,6、ポリビニルアルコール、セルロース、シリコン、ポリスチレン、ガラス、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、金属(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮)等が挙げられる。また、容器は、少なくとも1つの平坦な面を有することが好ましい。かかる容器の例としては、限定することなく、例えば、細胞培養物の形成が可能な培養基材で構成された底面と、液体不透過性の側面とを備えた培養容器が挙げられる。かかる培養容器の特定の例としては、限定されずに、細胞培養皿、細胞培養ボトルなどが挙げられる。容器の底面は透明であっても不透明であってもよい。容器の底面が透明であると、容器の裏側から細胞の観察、計数などが可能となる。また、容器は、その内部に固形もしくは半固形の表面を有してもよい。固形の表面としては、上記のごとき種々の材料のプレートや容器などが、半固形の表面としては、ゲル、軟質のポリマーマトリックスなどが挙げられる。培養基材は、上記材料を用いて作製してもよいし、市販のものを利用してもよい。
好ましい培養基材としては、限定することなく、例えば、シート状細胞培養物の形成に適した、接着性の表面を有する基材、スフェロイドの形成に適した、低接着性の表面を有する基材および/または均一なウェル状構造を有する基材などが挙げられる。具体的には、シート状細胞培養物の形成の場合であれば、例えば、コロナ放電処理したポリスチレン、コラーゲンゲルや親水性ポリマーなどの親水性化合物を該表面にコーティングした基材、さらには、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンなどの細胞外マトリックスや、カドヘリンファミリー、セレクチンファミリー、インテグリンファミリーなどの細胞接着因子などを表面にコーティングした基材などが挙げられる。また、かかる基材は市販されている(例えば、Corning(R) TC-Treated Culture Dish、Corningなど)。またスフェロイドの形成の場合であれば、例えば軟寒天、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)をポリエチレングリコール(PEG)で架橋した温度応答性ゲル(市販名:メビオールゲル)、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル(ポリHEMA)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリスコリン(MPC)ポリマーなどのハイドロゲルなどの非細胞接着性化合物を表面にコーティングした基材および/または均一な凹凸構造を表面に有する基材などが挙げられる。かかる基材もまた市販されている(例えば、EZSPHERE(R)など)。培養基材は全体または部分が透明であっても不透明であってもよい。
培養基材は、刺激、例えば、温度や光に応答して物性が変化する材料で表面が被覆されていてもよい。かかる材料としては、限定されずに、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体(例えば、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−エトキシエチルメタクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド等)、N,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体(例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチルメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等)、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体(例えば、1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピロリジン、1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピペリジン、4−(1−オキソ−2−プロペニル)−モルホリン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−ピロリジン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−ピペリジン、4−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−モルホリン等)、またはビニルエーテル誘導体(例えば、メチルビニルエーテル)のホモポリマーまたはコポリマーからなる温度応答性材料、アゾベンゼン基を有する光吸収性高分子、トリフェニルメタンロイコハイドロオキシドのビニル誘導体とアクリルアミド系単量体との共重合体、および、スピロベンゾピランを含むN−イソプロピルアクリルアミドゲル等の光応答性材料などの公知のものを用いることができる(例えば、特開平2−211865、特開2003−33177参照)。これらの材料に所定の刺激を与えることによりその物性、例えば、親水性や疎水性を変化させ、同材料上に付着した細胞培養物の剥離を促進することができる。温度応答性材料で被覆された培養皿は市販されており(例えば、CellSeed Inc.のUpCell(R))、これらを本開示の製造方法に使用することができる。
培養基材は、種々の形状であってもよい。また、その面積は特に限定されないが、例えば、約1cm〜約200cm、約2cm〜約100cm、約3cm〜約50cmなどであってよい。例えば、培養基材として直径10cmの円形の培養皿が挙げられる。この場合、面積は56.7cmとなる。培養表面は平坦であってもよいし、凹凸構造を有していてもよい。凹凸構造を有する場合、均一な凹凸構造であることが好ましい。
より高密度の移植片、特にシート状細胞培養物を形成するため、培養基材は血液由来成分および/または細胞接着性成分でコーティングされていてもよい。「血液由来成分および/または細胞接着性成分でコーティングされている」とは、培養基材の表面に血清などの血液由来成分および/または細胞接着性成分が付着している状態を意味し、かかる状態は、限定されずに、例えば、培養基材を血液由来成分および/または細胞接着性成分で処理することにより得ることができる。血液由来成分および/または細胞接着性成分による処理は、例えば血清および/または細胞接着性成分を培養基材に接触させること、および、必要に応じて所定期間インキュベートすることを含む。コーティングに用いる血清および/または細胞接着性成分は、播種細胞の由来種と同一種の血清(同種血清)であっても異なる種の血清(異種血清)例えばFBSであってもよいが、好ましくは同種血清であり、より好ましくは播種細胞の由来個体から得た血清(自家血清)である。他の血液由来成分としては、アルブミンや血小板溶解物が挙げられる。コーティングに用いる細胞接着性分は、例えばコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンなどの細胞外マトリックス、カドヘリンファミリー、セレクチンファミリー、インテグリンファミリーが挙げられる。
培養基材への細胞の播種は、既知の任意の手法および条件で行うことができる。培養基材への細胞の播種は、例えば、細胞を培養液に懸濁した細胞懸濁液を培養基材(培養容器)に注入することにより行ってもよい。細胞懸濁液の注入には、スポイトやピペットなど、細胞懸濁液の注入操作に適した器具を用いることができる。細胞の播種密度は、シート状細胞培養物を形成し得る密度で行われ、かかる密度は所望の細胞により異なり得るが、当業者であれば当該技術分野において公知の手法などから適切な密度を選択することができる。
より高密度の例としては、例えばコンフルエントに達する密度、すなわち播種した際に細胞が培養容器の接着表面一面を覆うことが想定される程度の密度、例えば、播種した際に、細胞が互いに接触することが想定される程度の密度、接触阻害が発生する密度、または接触阻害により細胞の増殖を実質的に停止する密度あるいはそれ以上であり得る。播種密度の上限は、特に制限されないが、密度が過度に高い場合には、死滅する細胞が多くなり、非効率となる。本開示の一態様において、播種密度は、約5.0×10個/cm〜約1.0×10個/cm、約5.0×10個/cm〜約5.0×10個/cm、約5.0×10個/cm〜約3.0×10個/cm、約1.0×10個/cm〜約1.0×10個/cm、約1.0×10個/cm〜約5.0×10個/cm、約1.0×10個/cm〜約3.0×10個/cm、約1.5×10個/cm〜約1.0×10個/cm、約1.5×10個/cm〜約5.0×10個/cm、約1.5×10個/cm〜約3.0×10個/cm、約2.0×10個/cm〜約1.0×10個/cm、約2.0×10個/cm〜約5.0×10個/cm、約2.0×10個/cm〜約3.0×10個/cmなどであり得る。好ましい一態様において、約7.5×10個/cm〜3.0×10個/cmであり、別の好ましい一態様においては、約1.76×10個/cm〜約2.33×10個/cmである。
播種される細胞集団は、所望の細胞を含んでいれば、他の細胞(繊維芽細胞)を含んでいてもよく、所望の細胞が骨格筋芽細胞または筋衛星細胞である場合は、例えば線維芽細胞や血管内皮細胞などがさらに含まれ得る。細胞集団は、組織から採取した細胞集団をそのまま用いてもよいし、凍結保存やプレ培養、繊維芽細胞の除去などを実施した後に用いてもよい。好ましい一態様において、播種される細胞集団は、生体由来組織からの分離後、培養基材上(好ましくは平面状の培養基材上)に播種して接着培養を行い、その後回収された細胞集団である。かかる接着培養の前または後に、凍結保存および解凍を実施してもよい。接着培養を行うことにより、その後の移植片の形成において、高品質な移植片の形成を、高確率で達成することが可能となる。
かかる接着培養ステップにおいて、培養条件などは、通常の接着培養を行う場合の条件に準じてよい。例えば、市販の接着培養用培養容器を用いて、37℃、5%CO条件下での培養などであってよい。細胞の播種密度は、細胞同士の接着および/または細胞と培養基材との接着の形成を妨げない密度であればいかなる密度であってもよく、例えばサブコンフルエントな密度であってもよいし、コンフルエントに達する密度またはそれ以上であってもよい。培養時間は、細胞同士の接着および/または細胞と培養基材との接着が形成される程度の時間であればよく、具体的には例えば2〜24時間、2〜12時間、2〜6時間、2〜4時間程度であればよい。
本発明の製造方法に用いる培養液は、細胞の生存を維持できるものであれば特に限定されないが、典型的には、アミノ酸、ビタミン類、電解質を主成分としたものが利用できる。本発明の一態様において、培養液は、細胞培養用の基礎培地をベースにしたものである。かかる基礎培地には、限定されずに、例えば、DMEM、MEM、F12、DMEM/F12、DME、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、120、131、153、199など)、L15、SkBM、RITC80−7などが含まれる。こ基礎培地は、標準的な組成のまま(例えば、市販されたままの状態で)用いてもよいし、細胞種や細胞条件に応じてその組成を適宜変更してもよい。したがって、本発明に用いる基礎培地は、公知の組成のものに限定されず、1または2以上の成分が追加、除去、増量もしくは減量されたものを含む。移植片形成媒体は、通常血清(例えば、ウシ胎仔血清などのウシ血清、ウマ血清、ヒト血清等)、種々の成長因子(例えば、FGF、EGF、VEGF、HGF等)などの添加物を含んでもよいが、シート状細胞培養物をゼノフリー条件下で製造する場合、特にウシ血清、ウマ血清などの異種血清を含まないことが好ましい。本開示は、細胞接着性成分を含む移植片形成媒体を用いて移植片形成培養することを特徴とし、これにより移植片形成媒体が無血清であっても高品質で移植片形成可能であるという効果を奏するものである。したがって好ましい一態様において、移植片形成媒体は血清を含まない。
本発明の別の側面において、上記移植片、特にシート状細胞培養物の製造、とくに増殖培養を経ないシート状細胞培養物の製造に用いる一部またはすべての要素を含む、移植片を製造するためのキットに関する。
本発明のキットは、限定されずに、例えば、生体由来組織を分離するための容器、
破砕に用いるための生理的に許容しえる液体、骨格筋芽細胞分離用ホモジナイザー、移植片を形成する細胞(例えば、凍結保存細胞、本発明の回収方法により回収された細胞等)、培養液、培養皿、器具類(例えば、ピペット、スポイト、ピンセット等)、シート状細胞培養物の製造方法に関する指示(例えば、使用説明書、製造方法や本発明の凍結保存細胞の回収方法に関する情報を記録した媒体、例えば、フレキシブルディスク、CD、DVD、ブルーレイディスク、メモリーカード、USBメモリー等)などを含んでいてもよい。
[治療方法]
次に、本発明の骨格筋芽細胞について説明する。
本開示の別の側面は、本開示の方法により分離された骨格筋芽細胞および/または筋衛星細胞、ならび、それら細胞製造された移植片の有効量を、それを必要とする対象に適用することを含む、前記対象における疾患を処置する方法に関する。処置の対象となる疾患は、上記したとおりである。
本開示において、用語「処置」は、疾患の治癒、一時的寛解または予防などを目的とする医学的に許容される全ての種類の予防的および/または治療的介入を包含するものとする。例えば、「処置」の用語は、組織の異常に関連する疾患の進行の遅延または停止、病変の退縮または消失、当該疾患発症の予防または再発の防止などを含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
本開示の処置方法においては、移植片の生存性、生着性および/または機能などを高める成分や、対象疾患の処置に有用な他の有効成分などを、本開示の移植片等と併用することができる。
本開示の処置方法は、本開示の製造方法に従って、本開示の移植片を製造するステップをさらに含んでもよい。本開示の処置方法は、移植片を製造するステップの前に、対象から移植片を製造するための骨格筋芽細胞および/または筋衛星細胞の供給源となる生体由来組織を採取するステップをさらに含んでもよい。一態様において、細胞または骨格筋芽細胞および/または筋衛星細胞の供給源となる組織を採取する対象は、細胞培養物、組成物、または移植片等の投与を受ける対象と同一の個体である。別の態様において、骨格筋芽細胞および/または筋衛星細胞または骨格筋芽細胞および/または筋衛星細胞の供給源となる組織を採取する対象は、細胞培養物、組成物、または移植片等の投与を受ける対象とは同種の別個体である。別の態様において、骨格筋芽細胞および/または筋衛星細胞または骨格筋芽細胞および/または筋衛星細胞の供給源となる組織を採取する対象は、移植片等の投与を受ける対象とは異種の個体である。
本開示において、有効量とは、例えば、疾患の発症や再発を抑制し、症状を軽減し、または進行を遅延もしくは停止し得る量(例えば、シート状細胞培養物のサイズ、重量、枚数等)であり、好ましくは、当該疾患の発症および再発を予防し、または当該疾患を治癒する量である。また、投与による利益を超える悪影響が生じない量が好ましい。かかる量は、例えば、マウス、ラット、イヌまたはブタなどの実験動物や疾患モデル動物における試験などにより適宜決定することができ、このような試験法は当業者によく知られている。また、処置の対象となる組織病変の大きさは、有効量決定のための重要な指標となり得る。
投与方法としては、例えば、静脈投与、筋肉内投与、骨内投与、髄腔内投与、組織への直接的な適用などが挙げられる。投与頻度は、典型的には1回の処置につき1回であるが、所望の効果が得られない場合には、複数回投与することも可能である。組織に適用する際、本発明の細胞培養物、組成物、またはシート状細胞培養物等を対象の組織に縫合糸やステープルなどの係止手段により固定してもよい。
以上、本発明を好適な実施態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明においては、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
<予備洗浄ステップ>
ブタ下肢より採取した骨格筋から約3gの組織を採取し、組織輸送液(HBSS(Hanks' Balanced Salt Solution、ライフテクノロジーズ社)中、ブドウ糖注(テルモ社)1.6mg/mL、ゲンタマイシン(富士製薬工業社)0.1mg/mL、ファンギゾン(ライフテクノロジーズ社)2.5μg/mL)に浸漬し、洗浄した。
比較例1:手で器具を操作して細切するステップ
[比較例1]
<細切するステップ>
食用ブタ下肢より骨格筋約2gを採取し、組織輸送液(Hanks' Balanced Salt Solution:GIBCO社、Glucose 1.45mg/mL:大塚製薬(株)、Gentamycin 0.1mg/mL:富士製薬(株)、Fungizone 2.5μg/mL:GIBCO社)に浸漬して、洗浄した。
次いで、洗浄した骨格筋を、室温で、10mLの酵素消化液(コラゲナーゼ含有溶液)中で細断した。この中から白色組織(結合組織)を取り除いた。
比較例2:gentleMACSにより破砕するステップ
[比較例2]
gentleMACSにより破砕するステップ>
骨格筋組織をメスで5mm角に切断した後、10mLの酵素消化液とともにgentleMACS C Tubes(Miltenyi Biotec K.K、Order no: 130-093-237)へ投入し、これをgentleMACS Octo Dissociator(Miltenyi Biotec K.K、Order no: 130-093-237)へ供し、骨格筋組織を破砕した。gentleMACS Octo Dissociatorでの破砕条件は下記の条件1および2で行なった。
・条件1:(1)3分、+60rpm、(2)9分、−30rpm、(3)5分 +/−30rpm×6回、(4)12分、−30rpm
・条件2:(1)30秒 +1000rpm、(2)10秒 −1000rpm、20秒 +1000rpm
(なお、刃の向きに対して「+」は順回転、「−」は逆回転を示す)
<酵素処理ステップ>
比較例1および比較例2で得た骨格筋組織処理物にそれぞれ酵素消化液を添加して37℃で酵素反応を行った。反応終了後、酵素消化物をコニカルチューブ(コニカルチューブ1という)で攪拌したあと、静置し、セルストレイナー(BD FalconTMセルストレーナー、40μm、日本BD社)を新たなコニカルチューブ(コニカルチューブ2という)にセットし、回収した上清をろ過して回収した。セルストレーナーを初代増殖用培地でリンスし、コニカルチューブに回収した。回収したろ液を遠心処理し沈殿した細胞に初代増殖用培地を添加して懸濁して、培養フラスコ(底面積175cm2)に播種した
<培養ステップ>
酵素処理ステップから回収した細胞を培養フラスコ(底面積175cm2)に移し、37℃、5%(V/V)CO2条件下で培養した。培養後、細胞を回収し、細胞数を計数した
比較例1および比較例2の結果を表1に示す。表1において、「細切」は、骨格筋組織を比較例1の手順に従って手で器具を使って細切処理したものを、「gentleMACS1」は比較例2の手順に従って条件1で破砕処理したものを、「gentleMACS2」は条件2で破砕処理したものをそれぞれ意味する。
Figure 2021052658
この結果から、通常の細胞用破砕装置であるgentleMACSで機械的に破砕処理すると大幅に回収生細胞数が低減することが分かる。
比較例3:手で器具を操作して細切するステップ
[比較例3]
2頭のブタ個体の下肢より骨格筋組織約3gを採取し(サンプル番号:633および805)、予備洗浄ステップの後に上述の比較例1と同じ手段で細切した。
実施例1:押圧により破砕するステップ
[実施例1]
<破砕するステップ>
上述の比較例3と同じ2頭のブタ個体の下肢より骨格筋組織約3gを採取し(サンプル番号:633および805)、これを予備洗浄ステップと同じ手順で洗浄しメスで5mm角に切断した後、15mLの酵素消化液(細切するステップで使用したもの)ともにホモジナイズ袋(エルメックス、PYXON-20、コードNo.PX0020)に投入し、これを押圧型ホモジナイザー(Pro media SH-IIM(エルメックス、コードNo.SH-2M))へ供し、装置の設定で15分間破砕した。完全に破砕されない組織が存在した場合、自立型50mL遠沈管(コーニング社)に移し、骨格筋組織が沈殿するまで静置し、ピペットで上清を吸引、分離した後、再度10mlの酵素消化液(細切するステップで使用したもの)で懸濁し、これを再度ホモジナイズ袋に投入し、再度、押圧型ホモジナイザーへ供し装置の設定で15分間破砕した。破砕処理直後の破砕処理液を含むホモジナイズ袋を図4に示す
比較例3および実施例1で得た骨格筋処理物を上述の比較例1および比較例2の酵素処理ステップと同じ手順に従って処理した。得られた細胞を培養ステップに供した。
<培養ステップ>
酵素処理ステップから回収した細胞を培養フラスコ(底面積175cm2)に移し、37℃、5%(V/V)CO2条件下で培養した。培養後、細胞を回収し、細胞数を計数した。必要に応じて継代培養を実施した。
比較例3および実施例1の結果を表2および表3に示す。
表2および3において、「細切」は、骨格筋組織を比較例3の手順に従って手で細切処理したものを、「押圧破砕1」および「押圧破砕2」は実施例1の手順に従って押圧により破砕するステップに供したものをそれぞれ意味する。
Figure 2021052658
Figure 2021052658
また押圧により破砕したサンプル番号:633のサンプルは、継代培養を経て細切したサンプルよりも細胞数を高めることができた。またサンプル番号:805のサンプルは初代培養および継代培養時のいずれも細切したサンプルよりも細胞数を高めることができた。このように継代培養を経て細切組織よりも多くの骨格筋芽細胞が培養されることから、押圧による破砕処理は、骨格筋芽細胞だけでなく筋衛星細胞を多く分離できることを示唆している。さらに押圧により破砕処理は、一般的な細胞破砕処理(gentleMACS)よりも大幅に高い細胞数が得られることから幹細胞の分離に適していることが明らかとなった。
[比較例4]
ブタ個体の下肢より骨格筋組織約3gを採取し、予備洗浄ステップの後に上述の比較例1と同じ手段で細切した。
実施例2:押圧により破砕するステップ
[実施例2]
ブタ個体の下肢より骨格筋組織約3gずつ4サンプルを採取し、予備洗浄ステップの後に上述の実施例1と同じ手順で5、10、15および20分間破砕した。
実施例3:破砕用容器を使った破砕するステップ
[実施例3]
ホモジナイズ袋(エルメックス、PYXON-20、コードNo.PX0020)の下部空間に八の字状の突出部が形成されるようにヒートシールして分離用容器を作成した。上述の比較例4と同じブタ個体の下肢より骨格筋組織を約3gずつ2サンプルを採取し、図5のように予備洗浄ステップの後にメスで5mm角に切断し、15mLの酵素消化液(細切するステップで使用したもの)とともに破砕用容器の下部空間へ投入し、八の字状の突出部の頂部をヒートシールで封止し、押圧型ホモジナイザー(Pro media SH-IIM(エルメックス、コードNo.SH-2M))で5および10分間破砕した。
比較例4および実施例2で得た骨格筋処理物を、上述の比較例1および2の酵素処理ステップと同じ手順に従って処理した。得られた細胞を培養ステップに供した。
<培養ステップ>
酵素処理ステップから回収した細胞を培養フラスコ(底面積175cm2)に移し、37℃、5%(V/V)CO2条件下で培養した。培養後、細胞を回収、細胞数を計数した。
比較例4、実施例2および3の結果を表4に示す。
表4において「細切」は、骨格筋組織を比較例4の手順に従って手で細切処理したものを、「押圧破砕_通常容器」は、実施例2の手順に従って押圧により破砕するステップに5〜20分間供したものを、「押圧破砕_破砕用容器」は、実施例3の手順に従って破砕用容器を用いた押圧により破砕するステップに5および10分間供したものを、それぞれ意味する。
なお、「押圧破砕_通常容器」および「押圧破砕_破砕用容器」ともに緩衝材を使用した。緩衝材はホモジナイズ袋(エルメックス、PYXON-20、コードNo.PX0020)に100mlの水を投入後ヒートシールで封止し、押圧型ホモジナイザー(Pro media SH-IIM(エルメックス、コードNo.SH-2M))の試料収容部内のパドル面に配置して使用した。
Figure 2021052658
押圧破砕をした場合、いずれの場合も5分の破砕で回収細胞数が最も高くなり、破砕時間を長くするにつれて回収生細胞数が少なくなることが分かる。破砕用容器を使った場合バイアビリティが低下するものの組織の深部まで破壊されることにより、十分な量の骨格筋芽細胞および/または筋衛星細胞が分離される。最適な分離方法は、破砕用容器を使い5分間の押圧破砕処理である。
[比較例5]
ブタ個体の下肢より骨格筋組織約4gを採取し、予備洗浄ステップの後に上述の比較例1と同じ手段で細切した。
実施例4:破砕用容器および緩衝材を使った破砕するステップ
[実施例4]
上述の比較例4と同様にブタの下肢より骨格筋組織約4.01gを採取し、これを予備洗浄ステップの後にメスで5mm角に切断し、実施例3で作成した分離用容器と同じ容器を作成し、10mLの酵素消化液を下部空間へ投入し、八の字状の突出部の頂部をヒートシールで封止した。さらに別のホモジナイズ袋(エルメックス、PYXON-20、コードNo.PX0020)を用意し、100mlの水を投入後ヒートシールで封止し、これを緩衝材として押圧型ホモジナイザー(Pro media SH-IIM(エルメックス、コードNo.SH-2M))の試料収容部内のパドル面に配置し、前記試料を投入したホモジナイズ袋を開閉扉面に配置して装置の設定で5分間破砕した。
これを開封後シャーレに移し、細切した。
比較例5および実施例4で得た骨格筋処理物を、上述の比較例1および2の酵素処理ステップと同じ手順に従ってと同じ手順に従って処理した。得られた細胞を培養ステップに供した。
<培養ステップ>
酵素処理ステップから回収した細胞を培養フラスコ(底面積175cm2)に移し、37℃、5%(V/V)CO2条件下で培養した。培養後、細胞を回収、細胞数を計数した。
<細胞純度測定ステップ>
培養が終了した細胞を回収し、その一部を骨格筋芽細胞の純度測定に供した。細胞に抗CD56抗体をそれぞれ反応させ、フローサイトメーターを用い、CD56陽性細胞の割合(骨格筋芽細胞純度)を測定した。
比較例5および実施例4の結果を表5に示す。
表5において「細切」は、比較例4の手順に従って手で細切処理したものを、実施例4は、実施例4の手順に従って試料破砕用容器および緩衝材を使って押圧により破砕するステップおよびその後ヒトの手による細切するステップに供したものをそれぞれ意味する。
Figure 2021052658
破砕用容器および緩衝材を使い押圧により破砕処理をするとバイアビリティ、回収生細胞数およびCD56陽性細胞の比率がいずれも高くなることが分かった。
[比較例6]
ブタ個体の下肢より骨格筋組織約3gを採取し、予備洗浄ステップの後に上述の比較例1と同じ手順で細切した。
実施例5:細切するステップおよび破砕するステップの組み合わせ
[実施例5]
比較例6と同じブタ個体の下肢より骨格筋組織約3gを採取し、破砕用容器を用いた実施例4と同じ手順で2分間破砕した。これを開封後シャーレに移し、細切した。
比較例6および実施例5を上述の比較例1および2の酵素処理ステップと同じ手順に従って処理した。得られた細胞を培養ステップに供した。
<培養ステップ>
酵素処理ステップから回収した細胞を培養フラスコ(底面積175cm2)に移し、37℃、5%(V/V)CO2条件下で培養した。培養後、細胞を回収、細胞数を計数した。
破砕前および2分の破砕処理後の変化を図6に示す。比較例6(A)および実施例5(B)の結果を図7に示す。細切するステップおよび押圧により破砕するステップの組み合わせにより(B)、細切するステップ(A)に比べて分離される骨格筋芽細胞数を大幅に増やせることが明らかとなった。
実施例6:実施例5で得られた分離細胞を用いたシート状細胞培養物の検討
[実施例6]
実施例5により分離した培養した骨格筋芽細胞を用いてシート状細胞培養物を調製した。温度応答性培養皿(UpCell(R)12穴マルチウェル、セルシード)に、20%ヒト血清含有DMEM/F12培地(Thermo Fisher Scientific Inc.)に懸濁した骨格筋芽細胞を、3.7×10個/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO下で2〜12時間シート化培養を行った。シート化培養後、培地を除去し、700μLの冷却したHBSS(+)(Thermo Fisher Scientific Inc.)を添加し、除去した。これを繰り返し2回目の緩衝液添加後10分静置し、その後静かにピペッティングしてシート状細胞培養物を完全に剥離させた。シート状細胞培養物を図8に示す。

Claims (16)

  1. 生体由来組織から生細胞を分離する方法であって、
    採取した前記組織を押圧により破砕するステップを含む、前記方法。
  2. 前記組織の押圧が、生体由来組織を含む容器を介して行なわれる、請求項1に記載の方法。
  3. 生体由来組織が、筋組織、脂肪組織、造血組織、骨組織、皮膚組織、軟骨組織、腱組織、靭帯組織、間柔組織、脳組織、血管組織、循環器系組織、消化器系組織、代謝系組織、リンパ系組織、血液からなる群から選択される1以上の組織を含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 生体由来組織が骨格筋組織であり、生細胞がCD56陽性細胞である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 容器が、袋状容器である、請求項2〜4に記載の方法。
  6. 押圧が、少なくとも2箇所に逐次的に加えられる、請求項1〜5に記載の方法。
  7. 押圧が、ホモジナイザーのパドルにより加えられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. パドルの表面が、凹凸の形状を備える、請求項7に記載の方法。
  9. 押圧が、緩衝材を介して加えられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 緩衝材が、液体を収容する袋状容器である、請求項9に記載の方法。
  11. さらに細切する工程および/または酵素処理に供する工程をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 請求項1〜11に記載の方法に使用するための生細胞分離用ホモジナイザー。
  13. 請求項12に記載のホモジナイザーを含む、生細胞分離用キット。
  14. 請求項1〜11に記載の方法で分離された細胞を、移植片に培養する工程を含む、移植片の製造方法。
  15. 請求項14に記載の方法により製造された、移植片。
  16. 請求項14に記載の方法によって製造された移植片の治療有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、前記対象における疾患の治療方法。
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