JP2021031651A - 摩擦材用熱硬化性接着剤シートおよび摩擦部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた接着力を有するとともに、使用時の取扱い性に優れ、湿式摩擦材用途に好適に使用できる接着剤シート、およびこの接着剤シートを用いる摩擦部材の製造方法を提供する。【解決手段】レゾール型フェノール樹脂と、ポリビニルアセタール樹脂と、を含み、シート状である、摩擦材用の熱硬化性接着剤シート。【選択図】なし
Description
本発明は、摩擦材用の熱硬化性接着剤シートおよび摩擦部材の製造方法に関する。
従来、例えば、車両等のブレーキパッドやブレーキライニング、クラッチフェーシング等の摩擦材は、金属製のバックプレートやブレーキシュー、コアプレート等の金属基材と接合して、摩擦部材が作製されている。金属基材と摩擦材との接合には、有機溶剤を含んだ樹脂系やゴム系の接着剤が使用される。例えば、樹脂系接着剤においては、機械的特性、電気的特性および接着性に優れた樹脂材料であるレゾール型フェノール樹脂が一般に使用されている。このようなレゾール型フェノール樹脂系接着剤は、得られる湿式摩擦材の摩擦特性や耐摩耗特性を改善するため、および接着強度等の硬化特性を改善するために、従来から種々の検討がなされており、たとえば、特許文献1では、短い硬化時間で高い耐熱性を有する摩擦材用接着剤として、レゾール型フェノール樹脂と、ポリビニルブチラール樹脂と、多価の金属塩である酢酸ニッケルまたは酢酸コバルトと、亜硝酸の金属塩または亜硝酸のエステルとを含む液状の接着剤組成物が開示されている。
一方で、有機溶剤を含む接着剤は、摩擦材の製造工程において有機溶剤が揮発するため、環境負荷や作業環境の観点から不利であった。そのため、環境負荷の低減や作業性の改善を目的として、有機溶剤を含まないフィルム状接着剤の検討が進められてきた。このような検討の一環として、例えば、特許文献2では、繊維基材にフェノール樹脂を含浸して得られる摩擦材用接着剤シートが提案されている。
しかし、特許文献2の接着剤シートは、取扱い性や作業性に優れるものの、摩擦材に適用するには、接着強度や耐熱性が不十分であった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、接着強度および耐熱性に優れるとともに、作業性や取扱い性が良好なシート状の摩擦材用接着剤を提供するものである。
本発明者は、特定の成分を含む接着剤組成物を、シート状物として提供することにより、高い接着強度を有するとともに、使用時の取扱い性に優れた、摩擦材用途に好適に使用できる接着剤シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
レゾール型フェノール樹脂と、
ポリビニルアセタール樹脂と、を含み、
シート状である、摩擦材用の熱硬化性接着剤シートが提供される。
レゾール型フェノール樹脂と、
ポリビニルアセタール樹脂と、を含み、
シート状である、摩擦材用の熱硬化性接着剤シートが提供される。
また本発明によれば、
金属基材と摩擦材とからなる摩擦部材を製造する方法であって、
金属基材と摩擦材とを、上記熱硬化性接着剤シートを介して積層して積層物を得る工程と、
前記積層物を加熱して、前記熱硬化性接着剤シートを硬化させることにより、前記金属基材と摩擦材とを結合して得られる摩擦部材の製造方法が提供される。
金属基材と摩擦材とからなる摩擦部材を製造する方法であって、
金属基材と摩擦材とを、上記熱硬化性接着剤シートを介して積層して積層物を得る工程と、
前記積層物を加熱して、前記熱硬化性接着剤シートを硬化させることにより、前記金属基材と摩擦材とを結合して得られる摩擦部材の製造方法が提供される。
本発明によれば、優れた接着力を有するとともに、使用時の取扱い性に優れ、摩擦材用途に好適に使用できる接着剤シート、およびこの接着剤シートを用いる摩擦部材の製造方法が提供される。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の摩擦材用接着剤は、シート状物であり、レゾール型フェノール樹脂と、ポリビニルアセタール樹脂とを含む。本実施形態の接着剤は、熱硬化型接着剤であり、使用前は未硬化または半硬化状態にあり、使用時に熱処理されることにより硬化する。具体的には、本実施形態の接着剤シートは、摩擦部材の製造工程において、金属製基材とライニング材等の摩擦材との間に配置された後、熱処理により硬化されて、基材と摩擦材とを接着して一体化するよう働く。以下、本実施形態の摩擦材用接着剤シートを、「接着剤シート」と称する。本実施形態の接着剤シートは、ワニス状の接着剤組成物をシート状に成形して作製される。以下に、接着剤シートに用いられる各成分について説明する。
本実施形態の摩擦材用接着剤は、シート状物であり、レゾール型フェノール樹脂と、ポリビニルアセタール樹脂とを含む。本実施形態の接着剤は、熱硬化型接着剤であり、使用前は未硬化または半硬化状態にあり、使用時に熱処理されることにより硬化する。具体的には、本実施形態の接着剤シートは、摩擦部材の製造工程において、金属製基材とライニング材等の摩擦材との間に配置された後、熱処理により硬化されて、基材と摩擦材とを接着して一体化するよう働く。以下、本実施形態の摩擦材用接着剤シートを、「接着剤シート」と称する。本実施形態の接着剤シートは、ワニス状の接着剤組成物をシート状に成形して作製される。以下に、接着剤シートに用いられる各成分について説明する。
(レゾール型フェノール樹脂)
本実施形態の接着剤シートに用いられるレゾール型フェノール樹脂は、フェノール樹脂とアルデヒド類とを、塩基性触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
本実施形態の接着剤シートに用いられるレゾール型フェノール樹脂は、フェノール樹脂とアルデヒド類とを、塩基性触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
レゾール型フェノール樹脂の合成のために使用されるフェノール類としては、フェノール;o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール類;o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール類;イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のブチルフェノール類;p−tert−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール類;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール類;p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体:1−ナフトール、2−ナフトール等の1価のフェノール類;およびレゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類等が挙げられる。これらは、単独でかまたは2種以上混合して使用できる。
レゾール型フェノール樹脂の合成のために使用されるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上組み合わせて使用してもよい。また、これらのアルデヒド類の前駆体あるいはこれらのアルデヒド類の溶液を使用することもできる。中でも、製造コストの観点から、ホルムアルデヒド水溶液を使用することが好ましい。
レゾール型フェノール樹脂の合成のために使用される塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;石灰等の酸化物;亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;リン酸ナトリウム等のリン酸塩;アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン等のアミン類等が挙げられる。
レゾール型フェノール樹脂の合成のために使用される反応溶媒としては、水が一般的であるが、有機溶媒を使用してもよい。このような有機溶媒の具体例としては、アルコール類、ケトン類、芳香族類等が挙げられる。またアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。芳香族類の具体例としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。
レゾール型フェノール樹脂の形態としては、固形、水溶液、溶剤溶液、および水分散液が挙げられる。中でも、作業性が良好となる点から、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、およびアセトンの溶剤溶液であることが好ましい。
(ポリビニルアセタール樹脂)
本実施形態の接着剤シートに用いられるポリビニルアセタール樹脂は、液状の接着剤組成物を固形化する作用を有し、シート形成材として働く。また得られた接着剤シートに、加工性を付与できる。よって、本実施形態の接着剤シートは、目的の用途に応じて打ち抜き加工することができる。ポリビニルアセタール樹脂は、酸触媒の存在下、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより得られる樹脂である。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピラール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。中でも、入手容易性の観点から、ポリビニルブチラールが好ましく用いられる。
本実施形態の接着剤シートに用いられるポリビニルアセタール樹脂は、液状の接着剤組成物を固形化する作用を有し、シート形成材として働く。また得られた接着剤シートに、加工性を付与できる。よって、本実施形態の接着剤シートは、目的の用途に応じて打ち抜き加工することができる。ポリビニルアセタール樹脂は、酸触媒の存在下、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより得られる樹脂である。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピラール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。中でも、入手容易性の観点から、ポリビニルブチラールが好ましく用いられる。
ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、取り扱い性等の観点から、好ましくは1.0×104〜1.0×106であり、より好ましくは2.0×104〜5.0×105であり、さらに好ましくは3.0×104〜2.0×105である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されたポリスチレン換算によるものをいう。
ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、200〜3000の範囲のものが好ましい。重合度を200以上とすることにより、得られる接着剤シートの機械的強度を確保することができ、重合度を3000以下とすることにより、得られる接着剤シートが適度な可撓性を有し、取扱い性に優れたものとなる。
ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、レゾール型フェノール樹脂100重量部に対し、好ましくは、1重量部以上50重量部以下であり、より好ましくは、5重量部以上30重量部以下である。ポリビニルブチラールの含有量を下限値以上とすることにより、得られる接着剤シートは摩擦材用として使用するのに十分な接着強度を有するとともに、接着剤シート自体の機械的強度を確保することができ、上記上限値以下とすることにより、得られる接着剤シートが適度な可撓性を備え、取扱い性に優れる。
(その他の成分)
本実施形態の接着剤シートは、レゾルシン類をさらに含んでもよい。レゾルシン類を含むことにより、接着剤シートの硬化速度を向上することができる。レゾルシン類の具体例としては、レゾルシン、2−メチルレゾルシン、5−メチルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン等のメチルレゾルシン類、4−エチルレゾルシン、4−クロロレゾルシン、2−ニトロレゾルシン、4−ブロモレゾルシン、4−n−ヘキシルレゾルシンなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。中でも、製造コストとシート成型性の観点から、レゾルシン、またはメチルレゾルシンを用いることが好ましい。
本実施形態の接着剤シートは、レゾルシン類をさらに含んでもよい。レゾルシン類を含むことにより、接着剤シートの硬化速度を向上することができる。レゾルシン類の具体例としては、レゾルシン、2−メチルレゾルシン、5−メチルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン等のメチルレゾルシン類、4−エチルレゾルシン、4−クロロレゾルシン、2−ニトロレゾルシン、4−ブロモレゾルシン、4−n−ヘキシルレゾルシンなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。中でも、製造コストとシート成型性の観点から、レゾルシン、またはメチルレゾルシンを用いることが好ましい。
本実施形態の接着剤シートは、上記成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、ニトリルブタジエンゴムおよびスチレンブタジエンゴム等のエラストマー、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤、着色剤、シランカップリング剤等の添加剤を含んでもよい。
(接着剤シートの作製)
本実施形態の接着剤シートは、上記成分を有機溶剤に溶解して得られる液状またはワニス状の接着剤組成物を、シート状に成形することにより作製される。接着剤シートの厚みは、5μm以上200μm以下であることが好ましい。接着剤シートは、幅10mm以上100mm以下の範囲のテープ状、または幅10cm以上200cm以下の範囲のシート状とし、巻き芯に巻きつけた巻物とすることができる。巻物とすることで、保存や搬送が容易となる。
本実施形態の接着剤シートは、上記成分を有機溶剤に溶解して得られる液状またはワニス状の接着剤組成物を、シート状に成形することにより作製される。接着剤シートの厚みは、5μm以上200μm以下であることが好ましい。接着剤シートは、幅10mm以上100mm以下の範囲のテープ状、または幅10cm以上200cm以下の範囲のシート状とし、巻き芯に巻きつけた巻物とすることができる。巻物とすることで、保存や搬送が容易となる。
ワニス状の接着剤組成物に用いられる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶媒、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒及びこれらの混合物が挙げられる。中でも、メタノールが好ましく用いられる。
ワニス状接着剤組成物は、上記成分を有機溶剤中で混練して作製される。混練は、通常の攪拌機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。
接着剤組成物をシート状に成形する工程は、シート状の基材に、ワニス状接着剤組成物を塗布し、加熱乾燥して有機溶剤を除去して、接着剤層を形成させることにより行われる。加熱乾燥の条件は、使用された有機溶剤が揮発する条件であればよく、例えば、50℃〜150℃の温度で、1分〜90分間の時間で行われる。
上述のようにして得られた接着剤層は、さらに加熱処理を行うことにより、半硬化(Bステージ)状態としてもよい。半硬化状態とするための加熱処理としては、100〜200℃の温度で、1分〜60分の時間の条件を用いることができる。
シート状基材としては、上述の加熱乾燥条件に耐え得るものであれば特に制限されず、例えば、ポリエステル系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリーエーテルケトン系フィルム等が使用される。これらのシート状基材は、その表面が離型剤で処理されていてもよい。基材シートは、接着剤層が形成された後に除去してもよい。また、このようにして得られた接着剤シートは、基材シートと対向した面とは反対の面に、保護シートが設けられてもよい。保護シートとしては、基材シートと同様のものを用いることができる。
このようにして得られた本実施形態の接着剤シートは、遊離フェノールの量が、接着剤シート全体に対して0.001質量%以上5質量%以下である。ここで、遊離フェノールは、使用されるレゾール型フェノール樹脂に含まれる未反応のフェノール類である。本実施形態の接着剤シートは、遊離フェノールの量が上記下限値以上であることにより、遊離フェノールを完全に除去するための特別な装置や工程が不要であるため、製造コストを抑えることができる。また、本実施形態の接着剤シートは、遊離フェノールの量が上記上限値以下であることにより、適度な可撓性を有する。
本実施形態の接着剤シートは、遊離アルデヒドの量が、接着剤シート全体に対して0.001質量%以上3質量%以下の量である。ここで、遊離アルデヒドは、使用されるレゾール型フェノール樹脂に含まれる未反応のアルデヒド類である。本実施形態の接着剤シートは、遊離アルデヒドの量が上記下限値以上であることにより、遊離アルデヒドを完全に除去するための特別な装置や工程が不要であるため、製造コストを抑えることができる。また、本実施形態の接着剤シートは、遊離アルデヒドの量が上記上限値以下であることにより、適度な可撓性を有する。
本実施形態の接着剤シートは、水の量が、接着剤シート全体に対して、0.001質量%5質量%以下の量である。ここで、接着剤シートに含まれる水は、使用される上記成分に含まれるか、またはワニス状の接着剤組成物を調製する際に用いられた有機溶剤に含まれる。本実施形態の接着剤シートは、水の量が上記下限値以上であることにより、水を完全に除去するための特別な装置や工程が不要であるため、製造コストを抑えることができる。また、本実施形態の接着剤シートは、水の量が上記上限値以下であることにより、適度な可撓性を有する。
(接着剤シートの用途)
本実施形態の接着剤シートは、摩擦部材を作製するために使用される。摩擦部材は、補強裏板として働く金属製の基材と、摩擦材とを、本実施形態の接着剤シートを介して接合して作製される。より詳細には、ペーパークラッチフェーシングは、ドーナツ状またはセグメント状などの所定の形状に打ち抜きまたは裁断加工され、金属製のコアプレートに接合される。本実施形態の接着剤シートは、基材および摩擦板の形状に合わせて打ち抜き加工または裁断加工される。所定の形状を有するこれらの基材、接着剤シートおよび摩擦板は、この順に積層され、加熱、加圧することにより接着剤シートが硬化して、基材と摩擦板とが接合され、摩擦材が製造される。加熱、加圧の条件は、例えば、140℃〜280℃の温度、3MPa〜50MPaの圧力が用いられる。
本実施形態の接着剤シートは、摩擦部材を作製するために使用される。摩擦部材は、補強裏板として働く金属製の基材と、摩擦材とを、本実施形態の接着剤シートを介して接合して作製される。より詳細には、ペーパークラッチフェーシングは、ドーナツ状またはセグメント状などの所定の形状に打ち抜きまたは裁断加工され、金属製のコアプレートに接合される。本実施形態の接着剤シートは、基材および摩擦板の形状に合わせて打ち抜き加工または裁断加工される。所定の形状を有するこれらの基材、接着剤シートおよび摩擦板は、この順に積層され、加熱、加圧することにより接着剤シートが硬化して、基材と摩擦板とが接合され、摩擦材が製造される。加熱、加圧の条件は、例えば、140℃〜280℃の温度、3MPa〜50MPaの圧力が用いられる。
本実施形態の摩擦部材の製造方法は、接着剤シートを用いるため、有機溶剤を含む液状の接着剤を用いた場合に必要であった接着剤を塗布、乾燥する工程およびそのための装置が不要である。また、接着剤シートは有機溶剤をほとんどまたは全く含まないため、加熱処理において揮発溶媒がない。そのため、作業環境が確保される。接着剤シートを配置することにより、均一な接着剤を一工程で適用することができるため、製造効率を向上することができる。このようにして得られる摩擦部材は、金属基材と摩擦材とが強固に接着されているため、高い機械的強度を有する。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
[レゾール型フェノール樹脂の合成]
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール100重量部、37%ホルマリン水溶液117重量部(F/Pモル比=1.2)、30%アンモニア水溶液4重量部を添加し、還流条件下で40分間反応させた。その後、91kPaの減圧条件下で脱水を行いながら系内の温度が70℃に達したところでメタノールを20重量部加えて、80℃で1時間反応させた。次いで、メタノールを80重量部加えることにより、不揮発分50%のレゾール型フェノール樹脂を得た。
[レゾール型フェノール樹脂の合成]
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール100重量部、37%ホルマリン水溶液117重量部(F/Pモル比=1.2)、30%アンモニア水溶液4重量部を添加し、還流条件下で40分間反応させた。その後、91kPaの減圧条件下で脱水を行いながら系内の温度が70℃に達したところでメタノールを20重量部加えて、80℃で1時間反応させた。次いで、メタノールを80重量部加えることにより、不揮発分50%のレゾール型フェノール樹脂を得た。
[摩擦材用接着剤樹脂組成物の作製]
得られたレゾール型フェノール樹脂100重量部と、メタノールに固形分50%となるよう溶解したポリビニルブチラール樹脂溶液24重量部を混合し、摩擦材用接着剤組成物を得た。
得られたレゾール型フェノール樹脂100重量部と、メタノールに固形分50%となるよう溶解したポリビニルブチラール樹脂溶液24重量部を混合し、摩擦材用接着剤組成物を得た。
[摩擦材用接着剤シートの作製]
厚さ40μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、上記接着剤組成物を乾燥後の厚さが約30μmとなるように塗布し、その後80℃で20分間乾燥させることにより溶媒を除去し、熱硬化性接着剤シートを得た。本シート中の遊離フェノール量は3.5%、遊離ホルムアルデヒド量は0.2%、水分量は3.0%であった。
厚さ40μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、上記接着剤組成物を乾燥後の厚さが約30μmとなるように塗布し、その後80℃で20分間乾燥させることにより溶媒を除去し、熱硬化性接着剤シートを得た。本シート中の遊離フェノール量は3.5%、遊離ホルムアルデヒド量は0.2%、水分量は3.0%であった。
(比較例1)
ポリビニルブチラール樹脂溶液を添加せず、レゾール型フェノール樹脂を接着剤シート作製に適用した以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性接着剤シートを得た。本シート中の遊離フェノール量は3.6%、遊離ホルムアルデヒド量は0.2%、水分量は3.1%であった。
ポリビニルブチラール樹脂溶液を添加せず、レゾール型フェノール樹脂を接着剤シート作製に適用した以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性接着剤シートを得た。本シート中の遊離フェノール量は3.6%、遊離ホルムアルデヒド量は0.2%、水分量は3.1%であった。
(参考例1)
30%アンモニア水溶液を1重量部にした以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性接着剤シートを得た。本シート中の遊離フェノール量は7.5%、遊離ホルムアルデヒド量は0.4%、水分量は3.0%であった。
30%アンモニア水溶液を1重量部にした以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性接着剤シートを得た。本シート中の遊離フェノール量は7.5%、遊離ホルムアルデヒド量は0.4%、水分量は3.0%であった。
実施例、参考例および比較例の摩擦材用接着剤シートを、以下の項目について評価した。結果を以下の表1に示す。
<成膜性>
実施例、参考例および比較例で得られた摩擦材用接着剤シートの状態を観察し、塗工した接着剤樹脂組成物のはじき及びムラなく均一なフィルムが得られた場合を「○」、塗工した接着剤樹脂組成物のはじきまたはムラが観察された場合を「×」とした。
<加工性>
実施例、参考例および比較例で得られた摩擦材用接着剤シートを、トムソン刃を用いて打ち抜き加工を実施し、破断面の状態や粉落ちの有無、トムソン刃への付着状態を確認した。破断面が平滑で粉落ちがなく、トムソン刃への付着が無かった場合を「○」、破断面が平滑でなく、粉落ちまたはトムソン刃への付着があった場合を「×」として加工性を評価した。
<接着強度>
接着強度(非剥離面積率):酸洗鋼板に、得られた湿式摩擦材用接着剤組成物を塗布し、アラミド基材にフェノール樹脂を含浸・硬化させて作製した含浸紙を熱プレス(250℃、10MPa)で接着し、90℃折り曲げた時に接着面が剥離していない面積を測定し、折り曲げる前の接着面積に対する割合(%)(非剥離面積率)を算出した。表1に、接着強度を非剥離面積比率(%)として示す。
実施例、参考例および比較例で得られた摩擦材用接着剤シートの状態を観察し、塗工した接着剤樹脂組成物のはじき及びムラなく均一なフィルムが得られた場合を「○」、塗工した接着剤樹脂組成物のはじきまたはムラが観察された場合を「×」とした。
<加工性>
実施例、参考例および比較例で得られた摩擦材用接着剤シートを、トムソン刃を用いて打ち抜き加工を実施し、破断面の状態や粉落ちの有無、トムソン刃への付着状態を確認した。破断面が平滑で粉落ちがなく、トムソン刃への付着が無かった場合を「○」、破断面が平滑でなく、粉落ちまたはトムソン刃への付着があった場合を「×」として加工性を評価した。
<接着強度>
接着強度(非剥離面積率):酸洗鋼板に、得られた湿式摩擦材用接着剤組成物を塗布し、アラミド基材にフェノール樹脂を含浸・硬化させて作製した含浸紙を熱プレス(250℃、10MPa)で接着し、90℃折り曲げた時に接着面が剥離していない面積を測定し、折り曲げる前の接着面積に対する割合(%)(非剥離面積率)を算出した。表1に、接着強度を非剥離面積比率(%)として示す。
実施例の接着剤シートは、成膜性、加工性および接着強度のすべてにおいて優れていた。
Claims (8)
- レゾール型フェノール樹脂と、
ポリビニルアセタール樹脂と、を含み、
シート状である、摩擦材用の熱硬化性接着剤シート。 - 当該熱硬化性接着剤シートが積層されたシート状基材をさらに備える、請求項1に記載の熱硬化性接着剤シート。
- 5μm以上200μm以下の厚みを有する、請求項1または2に記載の熱硬化性接着剤シート。
- 前記ポリビニルアセタール樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化性接着剤シート。
- 遊離フェノールが、当該熱硬化性接着剤シート全体に対して、0.001質量%以上5質量%以下の量で含まれる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性接着剤シート。
- 遊離アルデヒドが、当該熱硬化性接着剤シート全体に対して、0.001質量%以上3質量%以下の量で含まれる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性接着剤シート。
- 水が、当該熱硬化性接着剤シート全体に対して、0.001質量%以上5質量%以下の量で含まれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱硬化性接着剤シート。
- 金属基材と摩擦板とからなる摩擦部材を製造する方法であって、
金属基材と摩擦板とを、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性接着剤シートを介して積層して積層物を得る工程と、
前記積層物を加熱して、前記熱硬化性接着剤シートを硬化させることにより、前記金属基材と前記摩擦材とを結合して摩擦部材を得る工程と、を含む摩擦部材の製造方法。
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