JP2021020872A - 複合コアセルベート、タンパク質内包複合コアセルベートの製造方法、タンパク質の濃縮方法、複合コアセルベート形成用溶液及び複合コアセルベート形成用キット - Google Patents
複合コアセルベート、タンパク質内包複合コアセルベートの製造方法、タンパク質の濃縮方法、複合コアセルベート形成用溶液及び複合コアセルベート形成用キット Download PDFInfo
- Publication number
- JP2021020872A JP2021020872A JP2019138044A JP2019138044A JP2021020872A JP 2021020872 A JP2021020872 A JP 2021020872A JP 2019138044 A JP2019138044 A JP 2019138044A JP 2019138044 A JP2019138044 A JP 2019138044A JP 2021020872 A JP2021020872 A JP 2021020872A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polymer
- protein
- segment
- solution
- coacervate
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Polyethers (AREA)
- Immobilizing And Processing Of Enzymes And Microorganisms (AREA)
- Medicinal Preparation (AREA)
- Peptides Or Proteins (AREA)
Abstract
【課題】事後的にタンパク質を内包させることが可能な複合コアセルベートを提供すること【解決手段】本開示の一側面は、荷電を有する第一のセグメントを含む第一の重合体と、上記第一の重合体とは反対の荷電を有する第二のセグメントを含み、上記第一の重合体と静電結合を形成する第二の重合体と、を備え、上記第一のセグメントの荷電密度より上記第二のセグメントの荷電密度が小さい、複合コアセルベートを提供する。【選択図】なし
Description
本開示は、複合コアセルベート、タンパク質内包複合コアセルベートの製造方法、タンパク質の濃縮方法、複合コアセルベート形成用溶液及び複合コアセルベート形成用キットに関する。
高分子電解質は水溶液中で静電相互作用によって複合体を形成することが知られている。当該複合体はポリイオンコンプレックスとも呼ばれる。ポリイオンコンプレックスは、医薬等の物質のキャリアとして注目されている。近年、種々のポリイオンコンプレックスの中でも調製が比較的に容易であることから、特に複合コアセルベートの検討がなされている。
特許文献1には、例えば、水系溶媒中で、(A1)非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントを含むブロックコポリマーと、(i)非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマー及び(ii)カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマー(ただし、非荷電性親水性ポリマー鎖セグメントを含まない)を含むポリマー混合物とを混合することにより得られる、泡状ポリマー中空微粒子が提案されている。
しかし、従来のタンパク質内包複合コアセルベートの製造方法において、タンパク質の複合コアセルベート内への取り込みは、複合コアセルベート形成と同時に行われる。複合コアセルベート内に内包させるタンパク質の量を調整すること、及び一定の品質を有するタンパク質内包複合コアセルベートを製造することなどについては未だ十分に検討されていない。
本開示は、事後的にタンパク質を内包させることが可能な複合コアセルベートを提供することを目的とする。本開示はまた、タンパク質内包複合コアセルベートを容易に調製可能なタンパク質内包複合コアセルベートの製造方法を提供することを目的とする。本開示はまた、タンパク質の濃縮を容易に行うことが可能なタンパク質の濃縮方法を提供することを目的とする。
本開示の一側面は、荷電を有する第一のセグメントを含む第一の重合体と、上記第一の重合体とは反対の荷電を有する第二のセグメントを含み、上記第一の重合体と静電結合を形成する第二の重合体と、を備え、上記第一のセグメントの荷電密度より上記第二のセグメントの荷電密度が小さい、複合コアセルベートを提供する。
上記複合コアセルベートは、第一のセグメントの荷電密度より第二のセグメントの荷電密度が小さいことから、事後的にタンパク質を内包させることができる。上述のような効果が得られる理由は定かではないが、第二のセグメントの荷電密度を第一のセグメントの荷電密度よりも小さくすることによって、複合コアセルベートを構成する第一の重合体と第二の重合体との静電結合の強さを制御することができ、当該複合コアセルベートは溶液中で比較的容易に個々の重合体に解離したり、静電結合によって会合したりすることができる。そして、上記複合コアセルベートを溶液中でタンパク質と共存させることによって、事後的なタンパク質の取り込みを容易に行うことができるようになったものと本発明者らは推定する。従来の複合コアセルベートにおいては、複合コアセルベートを構成する重合体同士の結びつきが強く、重合体間にタンパク質が浸入することが困難であり、複合コアセルベート内に事後的にタンパク質を内包させることは容易でない。
上記第二のセグメントが、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸の塩に由来する構造単位と、上記アミノ酸のエステル及び前記アミノ酸のアミドからなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造単位と、を有してもよい。第二のセグメントが上記構成を有することによって、第二のセグメントの荷電密度の調整が容易であり、内包させるタンパク質の種類、大きさ及び荷電等に応じた種々の複合コアセルベートを提供することができる。
上記第二のセグメントが、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1種を有してもよい。第二のセグメントが上記構成を有することで、タンパク質の取り込み効率を調整することができる。
一般式(1)及び一般式(2)中、R1及びR2は、互いに独立に、−NHC3H6OH、−OC3H6OH、−OC2H4OCOCH3、−OC4H9、−OC2H4OCH3、又は−OC2H4OPO4CH2N(CH3)3を示す。上記一般式(1)及び(2)中、m、n、q及びrは、それぞれ正の整数を示す。
上記第二のセグメントが、リシンの塩に由来する構造単位と、リシンのアミドからなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造単位と、を有してもよい。第二のセグメントが上記構成を有することによって、第二のセグメントの荷電密度の調整が容易であり、内包させるタンパク質の種類、大きさ及び荷電等に応じた種々の複合コアセルベートを提供することができる。
本開示の一側面は、上述の複合コアセルベートを含む溶液に、タンパク質を加え、タンパク質内包複合コアセルベートを調製する工程を有する、タンパク質内包複合コアセルベートの製造方法を提供する。
上記タンパク質内包複合コアセルベートの製造方法は、上述の複合コアセルベートを含む溶液を用いており、タンパク質を事後的に複合コアセルベートに内包させることができることから、タンパク質内包複合コアセルベートを容易に製造することができる。
本開示の一側面は、上述の複合コアセルベートを含む溶液に、タンパク質を加え、上記複合コアセルベート内にタンパク質を濃縮する工程を有する、タンパク質の濃縮方法を提供する。
上記タンパク質の濃縮方法は、上述の複合コアセルベートを含む溶液を用いていることから、タンパク質を事後的に複合コアセルベート内に濃縮することができる。
本開示の一側面は、荷電を有する第一のセグメントを含む第一の重合体と、上記第一の重合体とは反対の荷電を有する第二のセグメントを含み、上記第一の重合体と静電結合を形成可能な第二の重合体と、を含み、上記第一のセグメントの荷電密度より上記第二のセグメントの荷電密度が小さい、複合コアセルベート形成用溶液を提供する。
上記複合コアセルベート形成用溶液は、第一の重合体と、第二の重合体を含むことから、容易に複合コアセルベートを形成することができ、また形成される複合コアセルベートは、事後的にタンパク質を取り込むことも可能である。
本開示の一側面は、荷電を有する第一のセグメントを含む第一の重合体を含む溶液Aと、上記第一の重合体とは反対の荷電を有する第二のセグメントを含み、上記第一の重合体と静電結合を形成可能な第二の重合体を含む溶液Bと、を備え、上記第一のセグメントの荷電密度より上記第二のセグメントの荷電密度が小さい、複合コアセルベート形成用キットを提供する。
上記複合コアセルベート形成用キットは、第一の重合体を含む溶液Aと、第二の重合体を含む溶液Bを備えることから、溶液Aと溶液Bとの混合によって、容易に複合コアセルベートを形成することができ、また形成される複合コアセルベートは、事後的にタンパク質を取り込むことが可能である。
本開示によれば、事後的にタンパク質を内包させることが可能な複合コアセルベートを提供することができる。本開示によればまた、タンパク質内包複合コアセルベートを容易に調製可能なタンパク質内包複合コアセルベートの製造方法を提供することができる。本開示によればまた、タンパク質の濃縮を容易に行うことが可能なタンパク質の濃縮方法を提供することができる。
以下、場合によって図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書において、「〜」で示される数値範囲は、特に断らない限り、それぞれの上限値及び下限値を範囲内に含む。
本明細書における「複合コアセルベート」とは、ポリイオンコンプレックスを形成可能な化合物又は高分子の溶液から、当該化合物同士又は高分子同士の組織化に伴う相分離によって形成される高分子濃縮溶液のことを意味する。ポリイオンコンプレックスとは、表面に複数の荷電を有する高分子が、水溶液中で静電相互作用によって複合体を形成したものをいう。ポリイオンコンプレックスは、例えば、プラスの電荷を有する高分子電解質と、マイナスの電荷を有する高分子電解質とが、水溶液中で静電相互作用によって複合体を形成したもの等であり、高分子電解質に限らず、表面に複数の荷電を持つコロイド粒子全般等であってもよい。なお、ポリイオンコンプレックスを構成する荷電を有する物質のいずれかが高分子量でなくてもよい。複合コアセルベートは種々の形態を有することができ、例えば、微細構造を有する液滴、ミセル、及びベシクルであってもよい。
複合コアセルベートの一実施形態は、荷電を有する第一のセグメントを含む第一の重合体と、上記第一の重合体とは反対の荷電を有する第二のセグメントを含み、上記第一の重合体と静電結合を形成する第二の重合体と、を備える。上記第一のセグメントの荷電密度より上記第二のセグメントの荷電密度が小さい。
第一の重合体及び第二の重合体は、互いに反対の荷電を有するセグメントを含んでいればよく、例えば、第一の重合体がポリカチオンであり、第二の重合体がポリアニオンであってよく(以下、第一態様ともいう)、また第一の重合体がポリアニオンであり、第二の重合体がポリカチオンであってもよい(以下、第二態様ともいう)。まず、第一態様に係る複合コアセルベートについて説明する。
第一の重合体を構成する第一のセグメントは、例えば、リシン、アルギニン及びヒスチジンからなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸の塩に由来する構造単位を有してもよい。第一のセグメントは上記アミノ酸の塩に由来する構造単位からなってもよく、例えば、ポリリシン塩であってもよい。上記アミノ酸の塩としては、例えば、臭化水素塩、塩酸塩、フッ化水素塩、ヨウ化水素塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、及び硝酸塩等であってよい。
第一のセグメントの重合度は、例えば、10〜250であってよく、30〜150であってよい。第一のセグメントの重合度が上記範囲内であることによって、複合コアセルベートの安定性をより向上させ得る。第一のセグメントの重合度が上記範囲内であることによってまた、複合コアセルベートをより一層均一なものとし得る。
第一の重合体は第一のセグメントの他に、荷電を有しないセグメント(非荷電セグメントともいう)を独立したブロックとして含んでいてもよい。第一の重合体が非荷電セグメントを有することで、複合コアセルベート内により均一なミクロ相分離構造を形成し得る。第一の重合体は、例えば、第一のセグメント及び非荷電セグメントからなってよく、第一のセグメントのみからなるブロック及び非荷電セグメントのみからなるブロックからなってよい。第一の重合体は混合物であってもよく、例えば、第一のセグメント及び非荷電セグメントからなる重合体と、第一のセグメントのみからなる重合体との混合物であってもよい。
上記非荷電セグメントは、例えば、ポリオキシアルキレン鎖、及び双性イオンを側鎖に持つポリマー鎖等であってよい。ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシメチレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、及びポリオキシプロピレン鎖等が挙げられる。双性イオンを側鎖に持つポリマー鎖としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンポリマー、カルボキシベタイン系ポリマー、及びスルホベタイン系ポリマー等が挙げられる。
非荷電セグメントがポリオキシエチレン鎖である場合、非荷電セグメントの重合度は、例えば、10〜500であってよく、25〜400であってよく、又は40〜300であってもよい。
第一の重合体の分散度は、例えば、2.5以下であってよく、1.4以下であってよく、1.3以下であってもよい。第一の重合体の分散度が上記範囲内であることによって、複合コアセルベートの安定性をより向上させ得る。第一の重合体の分散度が上記範囲内であることによってまた、複合コアセルベートをより一層均一なものとし得る。第一の重合体の分散度が上記範囲内であることによって、複合コアセルベートの調製及びタンパク質の事後の取込みの際における複合コアセルベート形成の再現性が得られ易くなる。
第一の重合体は、市販の重合体を用いてもよく、別途合成したものを用いてもよい。第一の重合体を合成する場合には、例えば、第一のセグメントに対応するアミノ酸を用いたペプチド合成、及び第一のセグメントに対応するアミノ酸無水物(例えば、リシン等)の開環重合等によって調製することができる。ペプチド合成としては、例えば、Fmoc固相合成等が挙げられる。第一の重合体が非荷電セグメントからなるブロックを有する場合には、第一のセグメントと反応可能な官能基を有するポリマー(例えば、片末端アミノ化ポリエチレングリコール等)を第一のセグメントからなるブロックと反応させる、あるいは、重合開始剤となる官能基を有する非荷電性セグメントポリマー(例えば、片末端アミノ化ポリエチレングリコール等)を用いて開環重合を行うことによって調製することができる。
第二の重合体を構成する第二のセグメントは、例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸の塩に由来する構造単位と、上記アミノ酸のエステル及び前記アミノ酸のアミドからなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造単位と、を有してもよい。第二のセグメントは、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸の塩に由来する構造単位と、上記アミノ酸のエステル及び前記アミノ酸のアミドからなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造単位とからなってもよく、例えば、アスパラギン酸の塩に由来する構造単位と、アスパラギン酸のエステルに由来する構造単位とからなってもよく、アスパラギン酸の塩に由来する構造単位と、アスパラギン酸のアミドに由来する構造単位とからなってもよい。上記アミノ酸の塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩等であってよい。
第二の重合体を構成する第二のセグメントは、例えば、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1種を有してもよい。下記一般式(1)で表される構造単位は、α−アミド構造を有するポリアスパラギン酸の誘導体を示し、アスパラギン酸由来の一部のカルボキシ基がエステル又はアミドとなっている構造を示している。また、下記一般式(2)で表される構造単位は、β−アミド構造を有するポリアスパラギン酸の誘導体を示し、アスパラギン酸由来の一部のカルボキシ基がエステル又はアミドとなっている構造を示している。
第二のセグメントは、例えば、アスパラギン酸の塩に由来する構造単位と、アスパラギン酸のエステル又はアミドに由来する構造単位とのランダム共重合体であってよい。ここで、第二のセグメントは、アスパラギン酸の塩とアスパラギン酸のエステル又はアミドとの共重合によって得られるものに限らず、アスパラギン酸のエステル又はアミドの単独重合体を加水分解等することによって一部のエステル又はアミドを塩の形に変換し、結果として下記一般式(1)又は下記一般式(2)で示される構造単位を備えるものとなった共重合体も含む。
上記一般式(1)及び(2)中、R1及びR2は、互いに独立に、−NHC3H6OH、−OC3H6OH、−OC2H4OCOCH3、−OC4H9、−OC2H4OCH3、又は−OC2H4OPO4CH2N(CH3)3を示す。上記一般式(1)及び(2)中、m、n、q及びrは、それぞれ正の整数を示す。
第二のセグメントの重合度は、例えば、10〜250であってよく、30〜150であってもよく、60〜90であってもよい。第二のセグメントの重合度が上記範囲内であることによって、複合コアセルベートの安定性をより向上させ得る。第一のセグメントの重合度が上記範囲内であることによってまた、複合コアセルベートをより一層均一なものとし得る。
第二の重合体の分散度は、例えば、2.5以下であってよく、1.4以下であってよい。第二の重合体の分散度が上記範囲内であることによって、複合コアセルベートの安定性をより向上させ得る。第二の重合体の分散度が上記範囲内であることによってまた、複合コアセルベートをより一層均一なものとし得る。第二の重合体の分散度が上記範囲内であることによって、複合コアセルベートの調製及びタンパク質の事後の取込みの際における複合コアセルベート形成の再現性が得られ易くなる。
第二の重合体は第二のセグメントの他に、荷電を有しないセグメント(非荷電セグメントともいう)を独立したブロックとして含んでいてもよい。第二の重合体が非荷電セグメントを有することで、複合コアセルベート内により一層均一なミクロ相分離構造を形成し得る。第二の重合体は、例えば、第二のセグメント及び非荷電セグメントからなってよく、第二のセグメントのみからなるブロック及び非荷電セグメントのみからなるブロックからなってよい。第二の重合体における非荷電セグメントとしては、上記第一の重合体における非荷電セグメントとして例示したものであってよい。第二の重合体における非荷電セグメントと、上記第一の重合体における非荷電セグメントとは同一でも異なってもよい。
非荷電セグメントがポリオキシエチレン鎖である場合、非荷電セグメントの重合度は、例えば、10〜500であってよく、25〜400であってよく、又は40〜300であってもよい。
第二の重合体は混合物であってもよく、例えば、第二のセグメント及び非荷電セグメントからなる重合体と、第二のセグメントのみからなる重合体との混合物であってよい。第二の重合体が混合物であると、非荷電セグメント含有量を容易に連続的に制御することができ、その結果、複合コアセルベートの物理的性質及び微細構造等の制御をより容易に行い得る。
第二の重合体は、市販の重合体を用いてもよく、別途合成したものを用いてもよい。第二の重合体を合成する場合には、例えば、第二のセグメントに対応するアミノ酸を用いたペプチド合成、及び第二のセグメントに対応するアミノ酸無水物(例えば、アスパラギン酸等)の開環重合等によって調製することができる。ペプチド合成としては、例えば、Fmoc固相合成等が挙げられる。第二の重合体が非荷電セグメントからなるブロックを有する場合には、第二のセグメントと反応可能な官能基を有するポリマー(例えば、片末端アミノ化ポリエチレングリコール等)を第二のセグメントからなるブロックと反応させる、あるいは、重合開始剤となる官能基を有する非荷電性セグメントポリマー(例えば、片末端アミノ化ポリエチレングリコール等)を用いて開環重合を行うことによって調製することができる。
第二のセグメントの荷電密度は第一のセグメントの荷電密度より小さい。第二のセグメントの荷電密度は、例えば、アスパラギン酸の塩に由来する構造単位の物質量に対する、アスパラギン酸のエステル又はアミドに由来する構造単位の物質量の割合を変更することで調製することができる。
本明細書における「荷電密度」とは、第一のセグメントを構成する全構造単位に占める荷電を有する構造単位の割合、及び第二のセグメントを構成する全構造単位に占める荷電を有する構造単位の割合を意味する。荷電密度は、電気泳動によって測定することができる。
上述の複合コアセルベートにおいて、第一の重合体と第二の重合体との含有量の比は、第一の重合体が有する総荷電量と、第二の重合体が有する総荷電量との比に基づいて調整してよい。第一の重合体が有する総荷電量に対する第二の重合体が有する総荷電量の比は、0.5〜2.0であってよく、0.7〜1.5であってよく、0.8〜1.2であってよく、1.0であってもよい。本明細書における「総電荷量」とは、高分子一分子あたりに含まれる荷電モノマー単位数と対象高分子の物質量との積を意味する。
上述の複合コアセルベートは、例えば、以下のような方法で調製することができる。複合コアセルベートの調製方法の一実施形態は、上記第一の重合体と、上記第二の重合体と、水とを含む溶液中で複合コアセルベートを形成する工程を有する。上記第一の重合体及び上記第二の重合体は高分子電解質でもあることから、水を含む溶液中で静電相互作用によって複合コアセルベートを形成することができる。
溶液に配合する上記第一の重合体と、上記第二の重合体との配合比は、上記第一の重合体に対する上記第二の重合体との荷電比が0.5〜2.0となるように調整してもよい。また上記複合コアセルベートを形成する工程は、上記溶液の温度を調整して行ってもよく、上記溶液の温度は、例えば、25℃以下、20℃以下、15℃以下、10℃以下、又は5℃以下であってよく、また2℃以上又は4℃以上であってよい。上記溶液の温度を調整するために、上記溶液は、例えば、塩を含んでもよい。塩としては、例えば、塩化ナトリウム、及び塩化カリウム等であってよい。上記複合コアセルベートを形成する工程は、例えば、1〜5時間かけてよく、1〜3時間かけてよい。
次に、第一の重合体がポリアニオンであり、第二の重合体がポリカチオンである例(第二態様)について説明する。ただし、各セグメントの重合度、非荷電セグメントの種類及び重合度、並びに重合体の各分散度、製法等、第一態様と重複する説明は省略する。
第二態様に係る第一の重合体を構成する第一のセグメントは、例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸の塩に由来する構造単位を有してもよい。第二のセグメントは、上記アミノ酸の塩に由来する構造単位からなってもよく、例えば、ポリアスパラギン酸塩であってよい。上記アミノ酸の塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩等であってよい。
第二態様に係る第二の重合体を構成する第二のセグメントは、例えば、リシンの塩に由来する構造単位と、リシンのアミドからなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造単位と、を有してもよい。第二のセグメントは、リシンの塩に由来する構造単位と、リシンのアミドからなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造単位と、からなってもよい。上記リシンの塩としては、例えば、臭化水素塩、塩酸塩、フッ化水素塩、ヨウ化水素塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、及び硝酸塩等であってよい。
第二態様に係る第二の重合体を構成する第二のセグメントは、リシンの塩に由来する構造単位と、リシンのアミドからなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造単位と、に加えて、その他の構造単位を有してもよい。その他の構造単位としては、例えば、アルギニンに由来する構造単位、及びヒスチジンに由来する構造単位等が挙げられる。アルギニンに由来する構造単位及びヒスチジンに由来する構造単位は、例えば、カルボベンゾキシ基、グアニジノ基及びイミダゾール基を有してもよい。
第一態様及び第二態様に係る複合コアセルベートは、いずれもタンパク質を取り込むことができる。また上述の複合コアセルベートは、複合コアセルベートを調製する際にタンパク質を内部に内包させることもできる。複合コアセルベートを調製し事後的にタンパク質を取り込む方が、タンパク質の取り込み量等の調整が容易である。
タンパク質内包複合コアセルベートの製造方法の一実施形態は、上述の複合コアセルベートを含む溶液に、タンパク質を加え、タンパク質内包複合コアセルベートを調製する工程を有する。上述の複合コアセルベートを含む溶液に対してタンパク質を加える手段としては、例えば、タンパク質を直接加えてもよく、タンパク質を含む溶液又は分散液を加えてもよい。タンパク質を含む溶液は、例えば、タンパク質を含む水溶液であってよい。
上記タンパク質は、マイナスの荷電を有するタンパク質、プラスの荷電を有するタンパク質、荷電を有しないタンパク質のいずれも用いることができ、その混合物であってもよい。上記タンパク質としては、マイナスの荷電を有するタンパク質のみであってもよい。
上記タンパク質の分子量は、例えば、10,000〜1,500,000であってよく、50,000〜1,000,000であってよく、100,000〜500,000であってよい。タンパク質の分子量が上記範囲内であると、溶液への溶解性を適度なものとすることができ、複合コアセルベート内に取り込むタンパク質の量を調整しやすい。タンパク質の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー−多角度光散乱測定によって決定される値を意味する。
タンパク質としては、例えば、β−D−ガラクトシダーゼ、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、酸化酵素(例えば、ジアミンオキシダーゼ等)、フェリチン、免疫グロブリン、ペルオキシダーゼ、及びカタラーゼ等が挙げられる。タンパク質は、好ましくは荷電を有するタンパク質である。荷電を有するタンパク質は、プラスの荷電を有してもよく、マイナスの荷電を有してもよい。マイナスの荷電を有するタンパク質としては、例えば、β−D−ガラクトシダーゼ、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、及びジアミンオキシダーゼ等が挙げられる。
上記タンパク質を含む溶液は、タンパク質と溶媒とを含む。溶媒は、例えば、水、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド、及びN,N−ジメチルホルムアミド等を含んでもよく、水であってもよい。
上記タンパク質を含む溶液の濃度は、複合コアセルベートに内包させるタンパク質の量に合わせて調整することができる。上記タンパク質を含む溶液の濃度は、例えば、0.01〜100mg/mLであってよく、0.1〜50mg/mLであってよく、0.5〜10mg/mLであってよい。タンパク質の含有量を上記範囲内とすることによって、複合コアセルベートへのタンパク質の取り込みを均一かつ効率的なものとすることができる。
上述の複合コアセルベートは、タンパク質を濃縮するために好適に使用することができる。タンパク質の濃縮方法の一実施形態は、上述の複合コアセルベートを含む溶液に、タンパク質を加え、上記複合コアセルベート内にタンパク質を濃縮する工程を有する。上述の複合コアセルベートを含む溶液に対してタンパク質を加える手段としては、例えば、タンパク質を直接加えてもよく、タンパク質を含む溶液又は分散液を加えてもよい。タンパク質を含む溶液は、例えば、タンパク質を含む水溶液であってよい。
本開示に係る複合コアセルベート及びタンパク質内包複合コアセルベートは、タンパク質の濃縮及び保持に好適に用いることができる。本開示に係る複合コアセルベート及びタンパク質内包複合コアセルベートは、例えば、薬物の送達剤、薬物の徐放性基材、化粧品及び機能性食品などに有用である。
上述の複合コアセルベートは、例えば、塩等を配合し、第一の重合体と第二の重合体との静電結合を阻害することによって、第一の重合体と第二の重合体の静電結合の程度を調製することもできる。さらに、保存安定性の観点から、塩等の配合量を調整し複合コアセルベートの形成を阻害して、当該複合コアセルベートを構成する高分子が溶解した溶液の状態で保存することもできる。このような保存状態の溶液は、複合コアセルベート形成用溶液ということができる。複合コアセルベート形成用溶液の一実施形態は、荷電を有する第一のセグメントを含む第一の重合体と、上記第一の重合体とは反対の荷電を有する第二のセグメントを含み、上記第一の重合体と静電結合を形成可能な第二の重合体と、を含み、上記第一のセグメントの荷電密度より上記第二のセグメントの荷電密度が小さい。当該複合コアセルベート形成用溶液は、使用時に、例えば、透析等の手段によって脱塩することで複合コアセルベートを形成させることができる。
複合コアセルベート形成用キットの一実施形態は、荷電を有する第一のセグメントを含む第一の重合体を含む溶液Aと、上記第一の重合体とは反対の荷電を有する第二のセグメントを含み、上記第一の重合体と静電結合を形成可能な第二の重合体を含む溶液Bと、を備える。上記第一のセグメントの荷電密度より上記第二のセグメントの荷電密度が小さい。
上記複合コアセルベート形成用キットは、例えば、予め調製された第一の重合体を含む溶液Aのライブラリと、あらかじめ調製された第二の重合体を含む溶液Bのライブラリとから、内包させたいタンパク質の種類等に応じて適切な溶液の組合せを選択することができるため、汎用性に優れる。
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定される必要ものではない。
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
合成例、実施例及び比較例では特に断らない限り下記の材料を用いた。
[試薬]
PEG−NH2:片末端アミノ化ポリエチレングリコール、分子量:2000、日油株式会社製;sunbrightシリーズ;Sephadex CM C−50カラムを用いて精製したものを用いた。
BLA−NCA:β−Benzyl−L−aspartate N−carboxy−anhydride、中央化成品株式会社製;購入したものをそのまま用いた。
3−amino−1−propanol:純度99%超、東京化成株式会社製;ベンゼン共沸法によってジオキサンを用い乾燥させたものを用いた。
n−butyl amine:特級、富士フイルム和光純薬株式会社製;窒素気流下でCaH2を用いて蒸留したものを用いた。
[試薬]
PEG−NH2:片末端アミノ化ポリエチレングリコール、分子量:2000、日油株式会社製;sunbrightシリーズ;Sephadex CM C−50カラムを用いて精製したものを用いた。
BLA−NCA:β−Benzyl−L−aspartate N−carboxy−anhydride、中央化成品株式会社製;購入したものをそのまま用いた。
3−amino−1−propanol:純度99%超、東京化成株式会社製;ベンゼン共沸法によってジオキサンを用い乾燥させたものを用いた。
n−butyl amine:特級、富士フイルム和光純薬株式会社製;窒素気流下でCaH2を用いて蒸留したものを用いた。
[溶媒]
超脱水DMF:超脱水N,N−dimethylformamide、関東化学株式会社製;購入したものをそのまま用いた。
超脱水DCM:超脱水Dichloromethane、関東化学株式会社製;購入したものをそのまま用いた。
クロロホルム:CHCl3;購入したものをそのまま用いた。
ヘキサン:関東化学株式会社製;購入したものをそのまま用いた。
酢酸エチル:関東化学株式会社製;購入したものをそのまま用いた。
超脱水Benzene:富士フイルム和光純薬株式会社製、購入したものをそのまま用いた。
超脱水DMF:超脱水N,N−dimethylformamide、関東化学株式会社製;購入したものをそのまま用いた。
超脱水DCM:超脱水Dichloromethane、関東化学株式会社製;購入したものをそのまま用いた。
クロロホルム:CHCl3;購入したものをそのまま用いた。
ヘキサン:関東化学株式会社製;購入したものをそのまま用いた。
酢酸エチル:関東化学株式会社製;購入したものをそのまま用いた。
超脱水Benzene:富士フイルム和光純薬株式会社製、購入したものをそのまま用いた。
[触媒]
DIPEA:N,N−Diisopropylethylamine、Sigma Aldrich社製;購入したものをそのまま用いた。
[透析膜等]
湿潤処理済み再生セルロース透析チューブ:Spectra/Por、分画分子量(MWCO):3500、Spectrum Laboratories,INC.(Rancho Dominguez,USA)社製;購入したものをそのまま用いた。「Spectra/Por」は登録商標
PTFE membrane フィルター:孔径0.2μm、Advantec社製;購入したものをそのまま用いた。
DIPEA:N,N−Diisopropylethylamine、Sigma Aldrich社製;購入したものをそのまま用いた。
[透析膜等]
湿潤処理済み再生セルロース透析チューブ:Spectra/Por、分画分子量(MWCO):3500、Spectrum Laboratories,INC.(Rancho Dominguez,USA)社製;購入したものをそのまま用いた。「Spectra/Por」は登録商標
PTFE membrane フィルター:孔径0.2μm、Advantec社製;購入したものをそのまま用いた。
(合成例1)
[Poly(ethylene glycol−co−β−benzyl−L−aspartate)(PEG−PBLA)の合成]
PEG−PBLAは、BLA−NCA(β−Benzyl−L−aspartate N−carboxy−anhydride)の開環重合によって合成した。この際、PEG−NH2を開始剤として用いた。
[Poly(ethylene glycol−co−β−benzyl−L−aspartate)(PEG−PBLA)の合成]
PEG−PBLAは、BLA−NCA(β−Benzyl−L−aspartate N−carboxy−anhydride)の開環重合によって合成した。この際、PEG−NH2を開始剤として用いた。
具体的には、0.134mmolのPEG−NH2をシュレンクフラスコ内でベンゼンに溶解し、圧力:50Pa未満、及び温度:−50℃の条件下で、一晩凍結乾燥した。凍結乾燥したPEG−NH2を、窒素気流下で超脱水DMFに溶解して、PEG−NH2溶液を調製した。また、3.5g(14mmol)のBLA−NCAを、グローブつきバッグ内で、窒素気流下、シュレンクフラスコ内で超脱水DCM及び超脱水DMF(体積比で2:1となるように混合した混合溶液)に溶解させ、BLA−NCA溶液を調製した。
続いて、BLA−NCA溶液を窒素気流下でPEG−NH2溶液に加え、温度:40℃の条件下で48時間反応させ、白濁反応液を得た。得られた白濁反応液にクロロホルムを加え分散質を溶解させ、透明な溶液を得た。得られた溶液をヘキサン−酢酸エチル混合溶液(体積比で6:4となるように混合した混合溶液)に滴下し、ポリマーを再沈殿させ、その後、吸引ろ過によって回収した。回収したポリマーは、クロロホルムに溶解した後、ベンゼンを加えて凍結乾燥することによって、PEG−PBLAを得た。PEG−PBLAは、1H−NMRによって同定した。PBLA部分の重合度は、85であった。図1は、PEG−PBLAの1H−NMRの測定結果を示すグラフである。
(合成例2)
[Poly(ethylene glycol−co−L−aspartate)(PEG−PAsp)の合成]
合成例1で調製したPEG−PBLAを加水分解することでPEG−PAspを合成した。具体的には、252mg(13.0μmol)のPEG−PBLAを5mLのアセトニトリルに分散させ分散液を得た。得られた分散液に、PEG−PBLAの有する側鎖の物質量1当量に対して5当量となるようにNaOH水溶液(濃度:0.5M)を加え、室温にて1時間反応させた。反応終了後の溶液を、分画分子量が3500の透析膜を用いて、超純水に対して2日間透析し、透析後、得られた濃縮液を凍結乾燥することによって、PEG−PAspを得た。PEG−PAspは、1H−NMR及びサイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography:SEC)によって評価、同定した。PEG−PAspの分散度は1.15であった。図2は、PEG−PAspの1H−NMRの測定結果を示すグラフである。図3は、PEG−PAspのSECの測定結果を示すグラフである。
[Poly(ethylene glycol−co−L−aspartate)(PEG−PAsp)の合成]
合成例1で調製したPEG−PBLAを加水分解することでPEG−PAspを合成した。具体的には、252mg(13.0μmol)のPEG−PBLAを5mLのアセトニトリルに分散させ分散液を得た。得られた分散液に、PEG−PBLAの有する側鎖の物質量1当量に対して5当量となるようにNaOH水溶液(濃度:0.5M)を加え、室温にて1時間反応させた。反応終了後の溶液を、分画分子量が3500の透析膜を用いて、超純水に対して2日間透析し、透析後、得られた濃縮液を凍結乾燥することによって、PEG−PAspを得た。PEG−PAspは、1H−NMR及びサイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography:SEC)によって評価、同定した。PEG−PAspの分散度は1.15であった。図2は、PEG−PAspの1H−NMRの測定結果を示すグラフである。図3は、PEG−PAspのSECの測定結果を示すグラフである。
(合成例3)
[Poly(ethylene glycol−co−L−aspartamide−propanol)(PEG−PAsp−Pr−OH)の合成]
PEG−PAspの部分的なアミノリシス反応によって、ヒドロキシル末端基をアスパラギン酸側鎖へ導入して、PEG−PAsp−Pr−OHを合成した。
[Poly(ethylene glycol−co−L−aspartamide−propanol)(PEG−PAsp−Pr−OH)の合成]
PEG−PAspの部分的なアミノリシス反応によって、ヒドロキシル末端基をアスパラギン酸側鎖へ導入して、PEG−PAsp−Pr−OHを合成した。
具体的には、窒素気流下、PEG−PBLAを超脱水DMF溶媒に溶解させ溶液を調製し、PEG−PBLAが有するアスパラギン酸側鎖の物質量に対して等量となるように3−amino−propan−1−olを加え、室温にて3時間反応させた。反応には、PEG−PBLAが有するアスパラギン酸側鎖の物質量1当量に対して0.3当量のDIPEAを触媒として用いた。反応終了後の溶液に、ジエチルエーテルを加えて生成物を再沈殿させ、吸引ろ過することによって回収した。回収したポリマーに0.5MのNaOH水溶液を加えて撹拌し、残存するベンジルエステルを加水分解することで、PEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAspを得た。PEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]は、1H−NMR及びSECによって評価、同定した。図4は、PEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]の1H−NMRの測定結果を示すグラフである。図5は、PEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]のSECの測定結果を示すグラフである。
(合成例4)
[PEG鎖を有しないポリアニオン([(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp])の合成]
PBLA(Poly(β−benzyl−L−aspartate))を加水分解することでPAsp(Poly(L−aspartate))を調製し、更にPAspの部分的なアミノリシス反応によって、ヒドロキシル末端基をアスパラギン酸側鎖へ導入して、[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]を合成した。
[PEG鎖を有しないポリアニオン([(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp])の合成]
PBLA(Poly(β−benzyl−L−aspartate))を加水分解することでPAsp(Poly(L−aspartate))を調製し、更にPAspの部分的なアミノリシス反応によって、ヒドロキシル末端基をアスパラギン酸側鎖へ導入して、[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]を合成した。
具体的には、上記合成例1で得られたBLA−NCA溶液を用いて、BLA−NCAの開環重合を行い、PBLAを合成した。窒素気流下、PBLAを超脱水DMF溶媒に溶解させ溶液を調製し、PBLAが有するアスパラギン酸側鎖の物質量に対して等量となるように3−amino−propan−1−olを加え、室温にて3時間反応させた。反応には、PBLAが有するアスパラギン酸側鎖の物質量1当量に対して0.3当量のDIPEAを触媒として用いた。反応終了後の溶液に、ジエチルエーテルを加えて生成物を再沈殿させ、吸引ろ過することによって回収した。回収したポリマーに0.5MのNaOHを加えて撹拌し、残存するベンジルエステルを加水分解することで、[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]を得た。[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]の分散度は1.33であった。[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]は、1H−NMR及びSECによって評価、同定した。[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]の重合度は、70であった。図6は、[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]の1H−NMRの測定結果を示すグラフである。
(合成例5)
[Poly(ethylene glycol−co−L−aspartamide−Butyl)(PEG−[(PAsp−Bu)−ran−PAsp])の合成]
PEG−PAspの部分的なアミノリシス反応によって、ブチル基をアスパラギン酸側鎖へ導入して、PEG−PAsp−Buを合成した。
[Poly(ethylene glycol−co−L−aspartamide−Butyl)(PEG−[(PAsp−Bu)−ran−PAsp])の合成]
PEG−PAspの部分的なアミノリシス反応によって、ブチル基をアスパラギン酸側鎖へ導入して、PEG−PAsp−Buを合成した。
具体的には、窒素気流下、合成例1で調製したPEG−PBLAを超脱水DMF溶媒に溶解させ、PEG−PBLAが有するアスパラギン酸側鎖の物質量に対して等量のn−butyl amineを加え、室温にて5.5時間反応させた。反応には、PEG−PBLAが有するアスパラギン酸側鎖の物質量1当量に対して0.3当量のDIPEAを触媒として用いた。反応終了後の溶液に、ヘキサン−酢酸エチル混合溶液(体積比で6:4となるように混合した混合溶液)を加えて生成物を再沈殿させ、吸引ろ過することによって回収した。回収したポリマーに0.5MのNaOHを加えて撹拌し、残存するベンジルエステルを加水分解することでPEG−[(PAsp−Bu)−ran−PAsp]を得た。PEG−[(PAsp−Bu)−ran−PAsp]の分散度は1.32であった。図7は、PEG−[(PAsp−Bu)−ran−PAsp]の1H−NMRの測定結果を示すグラフである。図8は、PEG−[(PAsp−Bu)−ran−PAsp]のSECの測定結果を示すグラフである。
なお、NMR及びSECは、それぞれ以下の条件で測定を行った。
1H−NMRスペクトルの測定は、下記条件にしたがって行った。PEGのメチレンプロトン、又は末端のブチル基のプロトンを基準ピークとして用い、ポリアミノ酸部位の重合度を決定した。
装置:JNM−ECZ400(日本電子株式会社製、400MHz、商品名)
解析ソフト:Delta(日本電子株式会社製、version 5.0.5.1)サンプル濃度:10mg/mL
内部標準:TMS又はTMSP(いずれも、Cambridge Isotope Laboratories Inc.社製)
装置:JNM−ECZ400(日本電子株式会社製、400MHz、商品名)
解析ソフト:Delta(日本電子株式会社製、version 5.0.5.1)サンプル濃度:10mg/mL
内部標準:TMS又はTMSP(いずれも、Cambridge Isotope Laboratories Inc.社製)
サイズ排除クロマトグラフィーの測定は、下記条件にしたがって行い、ポリエチレンオキシド(PEO)の標準サンプル(Sigma Aldrich社製、商品名:Poly(ethylene glycol) standard ReadyCal Kit)を用いて作成した検量線を用いて、測定対象の分散度を決定した。
装置:GPC/SEC Viscotek system(Malvern社製、UK、商品名:Viscotek TDA 302)
カラム:SuperdexTM 200 10/300 GL カラム(GE Healthcare社製、UK、小委品名)
サンプル導入量:10mg/mL
溶離液:10mM PB、500mM NaCl、pH:7.4
送液速度:0.5mL/分
装置:GPC/SEC Viscotek system(Malvern社製、UK、商品名:Viscotek TDA 302)
カラム:SuperdexTM 200 10/300 GL カラム(GE Healthcare社製、UK、小委品名)
サンプル導入量:10mg/mL
溶離液:10mM PB、500mM NaCl、pH:7.4
送液速度:0.5mL/分
(実施例1)
[蛍光標識されたタンパク質の水溶液の調製]
遮光性容器中で、10mMのリン酸緩衝液(pH:8.0)にβ−D−ガラクトシダーゼ(富士フイルム和光純薬株式会社製、分子量:540000、等電点(pI):4.6以下)を溶解させて、4mg/mLの濃度となるようにβ−D−ガラクトシダーゼ溶液を調製した。NHSローダミン(N−hydroxysuccinimide導入ローダミン、Thermo Scientific社(Germany)製)を超脱水DMSO(関東化学株式会社製)に溶解させて、20mg/mLの濃度となるようにNHSローダミン溶液を調製した。
[蛍光標識されたタンパク質の水溶液の調製]
遮光性容器中で、10mMのリン酸緩衝液(pH:8.0)にβ−D−ガラクトシダーゼ(富士フイルム和光純薬株式会社製、分子量:540000、等電点(pI):4.6以下)を溶解させて、4mg/mLの濃度となるようにβ−D−ガラクトシダーゼ溶液を調製した。NHSローダミン(N−hydroxysuccinimide導入ローダミン、Thermo Scientific社(Germany)製)を超脱水DMSO(関東化学株式会社製)に溶解させて、20mg/mLの濃度となるようにNHSローダミン溶液を調製した。
上記β−D−ガラクトシダーゼ溶液に対して、β−D−ガラクトシダーゼ中のアミンの物質量に対しておよそ当量のNHSローダミンが添加されるように上記NHSローダミン溶液を加え、氷浴上で2時間撹拌しながら反応させ、蛍光標識されたタンパク質を調製した。得られた蛍光標識されたタンパク質を、脱塩・バッファー交換用自然落下/遠心分離型カラム(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製、商品名:PD−10)を用いて精製し、限外濾過によって濃縮し、蛍光標識されたタンパク質P1の水溶液を得た。限外濾過は、分画分子量が10000の限外濾過膜(Spectrum Laboratories,INC.社製)を用い、3000Gの圧力を印加して10分間行った。
蛍光標識されたタンパク質P1におけるタンパク質の蛍光標識によるラベル化率は、1タンパク質あたり平均0.15個であった。蛍光標識されたタンパク質P1の水溶液の濃度及びタンパク質の蛍光標識によるラベル化率は、紫外可視分光法及び蛍光法を用いて算出した。
[複合コアセルベートの調製]
まず、上記蛍光標識されたタンパク質P1の水溶液を、濃度が25mMのHEPES緩衝液(株式会社同仁化学研究所製、4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acidを溶解させた緩衝液)に加えて、上記蛍光標識されたタンパク質の濃度が1mg/mLであるタンパク質溶液P(pH:7.4)を調製した。
まず、上記蛍光標識されたタンパク質P1の水溶液を、濃度が25mMのHEPES緩衝液(株式会社同仁化学研究所製、4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acidを溶解させた緩衝液)に加えて、上記蛍光標識されたタンパク質の濃度が1mg/mLであるタンパク質溶液P(pH:7.4)を調製した。
ポリカチオンであるポリリシン塩(Poly−L−lysineの臭化水素塩(HBr塩)、Sigma Aldrich社製、平均重合度:108、凍結乾燥物)を、濃度が25mMのHEPES緩衝液に加えて、ポリリシン塩の濃度が5mg/mLであるポリカチオン溶液C(pH7.4)を調製した。
次に、ポリアニオンである、上記合成例3で調製したPEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]を、濃度が25mMのHEPES緩衝液に加えて、PEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]の濃度が5mg/mLであるポリアニオン溶液A(pH7.4)を調製した。
100μLのポリアニオン溶液Aと、50μLのタンパク質溶液Pを混合した後、ポリカチオンとポリアニオンの荷電比が1:1となるように、ポリカチオン溶液Cを更に加えて混合溶液を調製した。この際、ポリカチオン溶液Cの添加溶液量は126.6μLであった。タンパク質溶液との混合に際してタンパク質の変性を抑制するために上記混合溶液の温度を4℃に調整し、当該温度で3時間静置した。上記混合溶液に相分離が目視観測された。また相分離が発生した溶液に対する光学顕微鏡観察によって、複合コアセルベートの形成が確認された。光学顕微鏡観察には、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製、商品名:BZ−8000)を用いた。
上述のように調製された複合コアセルベートの溶液から20μLを測り取り、共焦点レーザー顕微鏡(confocal laser scanning microscope:CLSM、Carl Zeiss社製、商品名:LSM700)を用いてタンパク質の取り込み効率を確認した。結果を図9に示す。図9は、実施例1における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。図9に示すとおり、β−D−ガラクトシダーゼが複合コアセルベートに内包されていることが確認できる。すなわち、上述の方法でタンパク質内包複合コアセルベートを調製することができることが確認された。
また、上述のように調製された複合コアセルベートの溶液を300Gで10分間遠心分離した。得られた上澄みの蛍光強度を定量することによって、複合コアセルベートに取り込まれなかったタンパク質の量を測定した。得られた結果から、下記式(1)に基づいてタンパク質の取り込み効率を決定した。結果を図11に示す。実施例1におけるタンパク質の取り込み効率は58%であった。
取り込み効率[%]={1−(複合コアセルベートに取り込まれなかったタンパク質量/タンパク質の初期配合量)}×100・・・式(1)
取り込み効率[%]={1−(複合コアセルベートに取り込まれなかったタンパク質量/タンパク質の初期配合量)}×100・・・式(1)
(実施例2)
[蛍光標識されたタンパク質の水溶液の調製]
遮光性容器中で、10mMのリン酸緩衝液(pH:8.0)にウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA、Sigma Aldrich社製、購入したものをそのまま用いた)を溶解させて、15mg/mLの濃度となるようにBSA溶液を調製した。またFITC(Fluorescein isothiocyanate、Invitrogen社製、購入したものをそのまま用いた)を超脱水DMSO(関東化学株式会社製)に溶解させて、5mg/mLの濃度となるようにFITC溶液を調製した。
[蛍光標識されたタンパク質の水溶液の調製]
遮光性容器中で、10mMのリン酸緩衝液(pH:8.0)にウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA、Sigma Aldrich社製、購入したものをそのまま用いた)を溶解させて、15mg/mLの濃度となるようにBSA溶液を調製した。またFITC(Fluorescein isothiocyanate、Invitrogen社製、購入したものをそのまま用いた)を超脱水DMSO(関東化学株式会社製)に溶解させて、5mg/mLの濃度となるようにFITC溶液を調製した。
上記BSA溶液に対して、BSA中のアミンの物質量に対しておよそ2当量のFITCが添加されるように上記FITC溶液を加え、室温で3時間撹拌しながら反応させ、蛍光標識されたタンパク質を調製した。得られた蛍光標識されたタンパク質を、脱塩・バッファー交換用自然落下/遠心分離型カラム(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製、商品名:PD−10)を用いて精製し、限外濾過によって濃縮し、蛍光標識されたタンパク質P2の水溶液を得た。限外濾過は、分画分子量が10000の限外濾過膜(Spectrum Laboratories,INC.社製)を用い、3000Gの圧力を印加して10分間行った。
蛍光標識されたタンパク質P2におけるタンパク質の蛍光標識によるラベル化率は、1タンパク質あたり平均3個であった。蛍光標識されたタンパク質P2の水溶液の濃度及びタンパク質の蛍光標識によるラベル化率は、紫外可視分光法及び蛍光法を用いて算出した。
[複合コアセルベートの調製]
蛍光標識されたタンパク質P1に代えて、蛍光標識されたタンパク質P2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、複合コアセルベートを調製した。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図10及び図11に示す。図10は、実施例2における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。実施例2におけるタンパク質の取り込み効率は64%であった。
蛍光標識されたタンパク質P1に代えて、蛍光標識されたタンパク質P2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、複合コアセルベートを調製した。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図10及び図11に示す。図10は、実施例2における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。実施例2におけるタンパク質の取り込み効率は64%であった。
(実施例3)
ポリアニオンをPEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]に代えて、合成例5で調製したPEG−[(PAsp−Bu)−ran−PAsp]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、複合コアセルベートを調製した。ポリカチオン溶液Cの添加溶液量は81.6μLであった。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図12及び図14に示す。図12は、実施例3における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。実施例3におけるタンパク質の取り込み効率は45%であった。
ポリアニオンをPEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]に代えて、合成例5で調製したPEG−[(PAsp−Bu)−ran−PAsp]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、複合コアセルベートを調製した。ポリカチオン溶液Cの添加溶液量は81.6μLであった。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図12及び図14に示す。図12は、実施例3における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。実施例3におけるタンパク質の取り込み効率は45%であった。
(実施例4)
ポリアニオンをPEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]に代えて、合成例5で調製したPEG−[(PAsp−Bu)−ran−PAsp]を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、複合コアセルベートを調製した。ポリカチオン溶液Cの添加溶液量は83.9μLであった。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図13及び図14に示す。図13は、実施例3における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。実施例4におけるタンパク質の取り込み効率は49%であった。
ポリアニオンをPEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]に代えて、合成例5で調製したPEG−[(PAsp−Bu)−ran−PAsp]を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、複合コアセルベートを調製した。ポリカチオン溶液Cの添加溶液量は83.9μLであった。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図13及び図14に示す。図13は、実施例3における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。実施例4におけるタンパク質の取り込み効率は49%であった。
(実施例5)
ポリリシンとポリアニオンの荷電比が1:1となるように、ポリカチオン溶液Cと、ポリアニオン溶液Aとを混合し、混合溶液を調製した。混合溶液の温度を4℃に調整し、当該温度で3時間静置した。上記混合溶液に相分離が目視観測された。また相分離が発生した溶液に対する光学顕微鏡観察によって、複合コアセルベートの形成が確認された。光学顕微鏡観察には、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製、商品名:BZ−8000)を用いた。
ポリリシンとポリアニオンの荷電比が1:1となるように、ポリカチオン溶液Cと、ポリアニオン溶液Aとを混合し、混合溶液を調製した。混合溶液の温度を4℃に調整し、当該温度で3時間静置した。上記混合溶液に相分離が目視観測された。また相分離が発生した溶液に対する光学顕微鏡観察によって、複合コアセルベートの形成が確認された。光学顕微鏡観察には、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製、商品名:BZ−8000)を用いた。
次に、複合コアセルベートが形成された溶液中に対して、光学顕微鏡下で、タンパク質溶液Pをマイクロピペットで1滴だけ加え、タンパク質の取り込み状況を確認した。結果を図15に示す。図15は、実施例5におけるタンパク質の取り込み状況の時間経過を示す光学顕微鏡写真(明視野像と蛍光像の重ね合わせ画像)である。図15は、タンパク質溶液Pを添加する前、添加してから10分間後、16分間後、30分間後、40分間後、及び50分間後の状況を示す。図15の結果から、時間の経過と共に、タンパク質が複合コアセルベート内に取り込まれたことが確認できる。すなわち、上述のとおり、複合コアセルベートを調製した後であってもタンパク質を取り込み、タンパク質内包複合コアセルベートを調製することができることが確認された。
(実施例6)
実施例1で調製したタンパク質内包複合コアセルベートを用いて、タンパク質の放出性能を確認した。具体的には、実施例1で調製したタンパク質内包複合コアセルベートを含む溶液234μLに対して、1Mの塩化ナトリウム水溶液を1時間ごとに47μLずつ加えて、CLSMによって経過を観察した。結果を図16に示す。図16は、実施例6における塩添加に応答してのタンパク質の放出状況を示すCLSM画像である。図16の結果から、複合コアセルベート内に局在していたタンパク質が、塩化ナトリウム水溶液の添加と共に、複合コアセルベート外部に放出されていることが確認された。塩化ナトリウム水溶液の添加によって、タンパク質とポリカチオンとの静電相互作用、及びポリカチオンとポリアニオンとの静電相互作用が阻害され、タンパク質が放出されて、複合コアセルベートの状態が解除されたためと考えられる。
実施例1で調製したタンパク質内包複合コアセルベートを用いて、タンパク質の放出性能を確認した。具体的には、実施例1で調製したタンパク質内包複合コアセルベートを含む溶液234μLに対して、1Mの塩化ナトリウム水溶液を1時間ごとに47μLずつ加えて、CLSMによって経過を観察した。結果を図16に示す。図16は、実施例6における塩添加に応答してのタンパク質の放出状況を示すCLSM画像である。図16の結果から、複合コアセルベート内に局在していたタンパク質が、塩化ナトリウム水溶液の添加と共に、複合コアセルベート外部に放出されていることが確認された。塩化ナトリウム水溶液の添加によって、タンパク質とポリカチオンとの静電相互作用、及びポリカチオンとポリアニオンとの静電相互作用が阻害され、タンパク質が放出されて、複合コアセルベートの状態が解除されたためと考えられる。
(実施例7)
実施例2で調製したタンパク質内包複合コアセルベートを用いて、タンパク質の放出性能を確認した。具体的には、実施例2で調製したタンパク質内包複合コアセルベートを含む溶液234μLに対して、1Mの塩化ナトリウム水溶液を1時間ごとに47μLずつ加えて、CLSMによって経過を観察した。結果を図17に示す。図17は、実施例7における塩添加に応答してのタンパク質の放出状況を示すCLSM画像である。図17の結果から、複合コアセルベート内に局在していたタンパク質が、塩化ナトリウム水溶液の添加と共に、複合コアセルベート外部に放出されていることが確認された。
実施例2で調製したタンパク質内包複合コアセルベートを用いて、タンパク質の放出性能を確認した。具体的には、実施例2で調製したタンパク質内包複合コアセルベートを含む溶液234μLに対して、1Mの塩化ナトリウム水溶液を1時間ごとに47μLずつ加えて、CLSMによって経過を観察した。結果を図17に示す。図17は、実施例7における塩添加に応答してのタンパク質の放出状況を示すCLSM画像である。図17の結果から、複合コアセルベート内に局在していたタンパク質が、塩化ナトリウム水溶液の添加と共に、複合コアセルベート外部に放出されていることが確認された。
(実施例8)
ポリアニオンをPEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]に代えて、合成例4で調製した[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、複合コアセルベートを調製した。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図18に示す。図18は、実施例8における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。実施例8におけるタンパク質の取り込み効率は60.4%であった。
ポリアニオンをPEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]に代えて、合成例4で調製した[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、複合コアセルベートを調製した。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図18に示す。図18は、実施例8における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。実施例8におけるタンパク質の取り込み効率は60.4%であった。
(実施例9)
ポリアニオンをPEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]に代えて、合成例4で調製した[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、複合コアセルベートを調製した。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図19に示す。図19は、実施例9における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。実施例9におけるタンパク質の取り込み効率は39.2%であった。
ポリアニオンをPEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]に代えて、合成例4で調製した[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、複合コアセルベートを調製した。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図19に示す。図19は、実施例9における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。実施例9におけるタンパク質の取り込み効率は39.2%であった。
(比較例1)
ポリアニオンをPEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]に代えて、合成例2で調製したPEG−PAspを用いたこと、及び複合コアセルベートの調製条件を、25mMのHEPES緩衝液を用い、pH:7.4、150mMのNaCl、温度:30℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、複合コアセルベートを調製した。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図20に示す。図20は、比較例1における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。図20に示されるとおり、複合コアセルベートは形成されるもののタンパク質の取り込みは確認されなかった。
ポリアニオンをPEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]に代えて、合成例2で調製したPEG−PAspを用いたこと、及び複合コアセルベートの調製条件を、25mMのHEPES緩衝液を用い、pH:7.4、150mMのNaCl、温度:30℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、複合コアセルベートを調製した。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図20に示す。図20は、比較例1における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。図20に示されるとおり、複合コアセルベートは形成されるもののタンパク質の取り込みは確認されなかった。
ポリアニオンをPEG−[(PAsp−Pr−OH)−ran−PAsp]に代えて、合成例2で調製したPEG−PAspを用いたこと、及び複合コアセルベートの調製条件を、25mMのHEPES緩衝液を用い、pH:7.4、150mMのNaCl、温度:30℃としたこと以外は、実施例2と同様にして、複合コアセルベートを調製した。調製された複合コアセルベートについて、実施例1と同様にして、タンパク質の取り込み状況の確認、及び取り込み効率の測定を行った。結果を図21に示す。図21は、比較例2における複合コアセルベート溶液のCLSM画像である。図21に示されるとおり、複合コアセルベートは形成されるもののタンパク質の取り込みは確認されなかった。
本開示によれば、事後的にタンパク質を内包させることが可能な複合コアセルベートを提供することができる。本開示によればまた、タンパク質内包複合コアセルベートを容易に調製可能なタンパク質内包複合コアセルベートの製造方法を提供することができる。本開示によればまた、タンパク質の濃縮を容易に行うことが可能なタンパク質の濃縮方法を提供することができる。
Claims (8)
- 荷電を有する第一のセグメントを含む第一の重合体と、前記第一の重合体とは反対の荷電を有する第二のセグメントを含み、前記第一の重合体と静電結合を形成する第二の重合体と、を備え、
前記第一のセグメントの荷電密度より前記第二のセグメントの荷電密度が小さい、複合コアセルベート。 - 前記第二のセグメントが、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸の塩に由来する構造単位と、
前記アミノ酸のエステル及び前記アミノ酸のアミドからなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造単位と、を有する、請求項1に記載の複合コアセルベート。 - 前記第二のセグメントが、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1種を有する、請求項1又は2に記載の複合コアセルベート。
[一般式(1)及び一般式(2)中、R1及びR2は、互いに独立に、−NHC3H6OH、−OC3H6OH、−OC2H4OCOCH3、−OC4H9、−OC2H4OCH3、又は−OC2H4OPO4CH2N(CH3)3を示し、m、n、q及びrは、それぞれ正の整数を示す。] - 前記第二のセグメントが、リシンの塩に由来する構造単位と、
リシンのアミドからなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造単位と、を有する、請求項1に記載の複合コアセルベート。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合コアセルベートを含む溶液に、タンパク質を加え、タンパク質内包複合コアセルベートを調製する工程を有する、タンパク質内包複合コアセルベートの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合コアセルベートを含む溶液に、タンパク質を加え、前記複合コアセルベート内にタンパク質を濃縮する工程を有する、タンパク質の濃縮方法。
- 荷電を有する第一のセグメントを含む第一の重合体と、前記第一の重合体とは反対の荷電を有する第二のセグメントを含み、前記第一の重合体と静電結合を形成可能な第二の重合体と、を含み、
前記第一のセグメントの荷電密度より前記第二のセグメントの荷電密度が小さい、複合コアセルベート形成用溶液。 - 荷電を有する第一のセグメントを含む第一の重合体を含む溶液Aと、
前記第一の重合体とは反対の荷電を有する第二のセグメントを含み、前記第一の重合体と静電結合を形成可能な第二の重合体を含む溶液Bと、を備え、
前記第一のセグメントの荷電密度より前記第二のセグメントの荷電密度が小さい、複合コアセルベート形成用キット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019138044A JP2021020872A (ja) | 2019-07-26 | 2019-07-26 | 複合コアセルベート、タンパク質内包複合コアセルベートの製造方法、タンパク質の濃縮方法、複合コアセルベート形成用溶液及び複合コアセルベート形成用キット |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019138044A JP2021020872A (ja) | 2019-07-26 | 2019-07-26 | 複合コアセルベート、タンパク質内包複合コアセルベートの製造方法、タンパク質の濃縮方法、複合コアセルベート形成用溶液及び複合コアセルベート形成用キット |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2021020872A true JP2021020872A (ja) | 2021-02-18 |
Family
ID=74574947
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019138044A Pending JP2021020872A (ja) | 2019-07-26 | 2019-07-26 | 複合コアセルベート、タンパク質内包複合コアセルベートの製造方法、タンパク質の濃縮方法、複合コアセルベート形成用溶液及び複合コアセルベート形成用キット |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2021020872A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023199723A1 (ja) * | 2022-04-14 | 2023-10-19 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 | 単一高分子粒子、活性分子複合体、単一高分子粒子の製造方法、腫瘍サイズの計測方法、腫瘍内の微細構造の計測方法、生体組織のイメージング方法、ドラッグデリバリーシステム、造影剤キット |
-
2019
- 2019-07-26 JP JP2019138044A patent/JP2021020872A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023199723A1 (ja) * | 2022-04-14 | 2023-10-19 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 | 単一高分子粒子、活性分子複合体、単一高分子粒子の製造方法、腫瘍サイズの計測方法、腫瘍内の微細構造の計測方法、生体組織のイメージング方法、ドラッグデリバリーシステム、造影剤キット |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP1621569B1 (en) | Polyethylene glycol/polycation block copolymer | |
Huang et al. | Multifunctional micelles for cancer cell targeting, distribution imaging, and anticancer drug delivery | |
Kim et al. | siRNA delivery from triblock copolymer micelles with spatially-ordered compartments of PEG shell, siRNA-loaded intermediate layer, and hydrophobic core | |
JP5843763B2 (ja) | 物質内包ベシクル及びその製造方法 | |
JP2001146556A (ja) | コア−シェル構造のポリイオンコンプレックスミセル | |
US11471411B2 (en) | Polymer nanodiscs for biotechnology and medical applications | |
EP1878766B1 (en) | Electrostatic bonding type polymer vesicle | |
JP6566936B2 (ja) | 医薬組成物 | |
WO2010106700A1 (ja) | タンパク質の電荷調節剤、及びタンパク質内包高分子ミセル複合体 | |
Deming | Synthesis and self-assembly of well-defined block copolypeptides via controlled NCA polymerization | |
JP5679357B2 (ja) | 静電結合型ベシクル | |
Tappertzhofen et al. | Bioreducible Poly‐l‐Lysine–Poly [HPMA] Block Copolymers Obtained by RAFT‐Polymerization as Efficient Polyplex‐Transfection Reagents | |
JP2022122912A (ja) | タンパク質内包高分子ミセル | |
Iijima et al. | Synthesis of PEGylated poly (amino acid) pentablock copolymers and their self‐assembly | |
Capelôa et al. | Cross‐Linkable Polyion Complex Micelles from Polypept (o) ide‐Based ABC‐Triblock Copolymers for siRNA Delivery | |
JP2021020872A (ja) | 複合コアセルベート、タンパク質内包複合コアセルベートの製造方法、タンパク質の濃縮方法、複合コアセルベート形成用溶液及び複合コアセルベート形成用キット | |
Ulkoski et al. | Synthesis and structure formation of block copolymers of poly (ethylene glycol) with homopolymers and copolymers of l-glutamic acid γ-benzyl ester and l-leucine in water | |
Rodriguez et al. | Use of methionine alkylation to prepare cationic and zwitterionic block copolypeptide vesicles | |
Pippa et al. | Advanced nanocarriers for an antitumor peptide | |
Leung | Novel pH-responsive hybrid peptide block copolymers for intracellular delivery applications | |
Leung et al. | Self-Assembly of Poly (L-glutamate)-block-poly (2-(diethylamino) ethyl methacrylate) in Aqueous Solutions | |
JP2021020866A (ja) | 脂質膜構造体の表面修飾材 | |
Simic | Simic, L. |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A80 | Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80 Effective date: 20190814 |