ところで、無段変速機では、例えば、アクセル開度と車速(又はエンジン回転数)などの車両の運転状態を示すパラメータに基づいて定められる目標変速比や要求クランプ力に応じて目標油圧(例えば、目標ライン圧、目標プライマリ圧、及び、目標セカンダリ圧等)が設定される。そして、目標油圧と実油圧との偏差(誤差)を、例えば、比例処理及び積分処理し、実油圧を目標油圧と一致させるようにフィードバック(F/B)制御が行われる。
ここで、例えば、ライン圧を調圧(降圧)してセカンダリプーリに供給される油圧(セカンダリプーリ圧、以下、単に「セカンダリ圧」ともいう)を生成するように構成された無段変速機では、ライン圧を検出するライン圧センサとセカンダリ圧を検出するセカンダリ圧センサの特性バラツキによっては、セカンダリ圧のフィードバック補正値(より具体的には、例えばセカンダリ圧を調圧するセカンダリソレノイドバルブに印加される目標制御値の補正値)が最大となっても、実セカンダリ圧が目標セカンダリ圧に追従できない状態、すなわちセカンダリ圧を調圧するセカンダリソレノイドバルブを含む調圧バルブが最大まで開弁されているにも関わらず、実セカンダリ圧が目標セカンダリ圧に届かない状態が発生し得る。
より具体的には、例えば、ライン圧センサが実際のライン圧(実ライン圧)より高い値を出力し、セカンダリ圧センサが実際のセカンダリ圧(実セカンダリ圧)より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついている場合、目標ライン圧に実際には到達していない(実ライン圧が目標ライン圧よりも低い)にもかかわらず、目標ライン圧に到達したとコントローラでは判断される。一方、セカンダリ圧センサは実際のセカンダリ圧(実セカンダリ圧)より低い値を出力し、また、セカンダリ圧は、元圧であるライン圧を超えることはできないため、例えば、目標ライン圧と目標セカンダリ圧とが略等しい場合には、実セカンダリ圧が目標セカンダリ圧に到達していないと判断されて、セカンダリ圧を上昇させるようにフィードバックが繰り返し行われ(補正値が演算され)、補正値が最大値まで増大することが生じ得る。
このような状態、すなわち、フィードバックの補正値がセカンダリ圧を上昇させる側に最大値となっている状態で、上述した固着診断(アクティブ診断、以下「固着判定」ともいう)が行われると、すなわち、半吐出状態の最大吐出圧よりも高いライン圧になるように調圧制御が行われると、ライン圧の上昇につられてセカンダリ圧が上昇し、変速比変動が生じ、運転者等の身体に感じられる(体感可能な)車両挙動となって現れるおそれがある。
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、例えば、ライン圧センサが実際のライン圧より高い値を出力し、セカンダリ圧センサが実際のセカンダリ圧より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついている場合であっても、運転者などの搭乗者に対して、オイルポンプの固着診断に起因する違和感を与えることを防止することが可能なオイルポンプの固着検知装置を提供することを目的とする。
本発明に係るオイルポンプの固着検知装置は、吸入口から吸入したオイルを昇圧して複数の吐出口から吐出するオイルポンプと、オイルポンプの吐出状態を、複数の吐出口すべてがライン圧油路と連通される全吐出状態、又は、複数の吐出口のうち一部の吐出口がライン圧油路に連通され、かつ他の一部の吐出口がオイルポンプの吸入口と連通される部分吐出状態に切り替える吐出状態切替手段と、オイルポンプが全吐出状態又は部分吐出状態で固着しているか否かを判定するための診断用目標ライン圧を設定する目標ライン圧設定手段と、ライン圧油路のライン圧が診断用目標ライン圧と一致するように調圧するライン圧調圧手段と、ライン圧調圧手段により調圧されたライン圧に基づいて、オイルポンプが全吐出状態又は部分吐出状態で固着しているか否かを判定する固着判定手段と、無段変速機を構成するプーリに供給されるプーリ圧の目標プーリ圧と実プーリ圧との偏差に基づいて、ライン圧を降圧してプーリ圧を調圧するプーリ圧調圧手段の目標制御値を補正する補正値を演算し、該補正値で目標制御値を補正して、実プーリ圧が目標プーリ圧と一致するようにフィードバック制御を行うプーリ圧制御手段と、補正値の絶対値が所定値以上の場合に、禁止・中断条件が満足されたと判断して、オイルポンプが固着しているか否かを判定する固着判定の実行を禁止又は中断する固着判定禁止手段とを備え、オイルポンプが固着しているか否かを判定する固着判定を実行する際に、目標ライン圧設定手段が、診断用目標ライン圧として、部分吐出状態の最大圧よりも高い値を設定し、ライン圧調圧手段が、ライン圧が診断用目標ライン圧と一致するように調圧し、吐出状態切替手段が、オイルポンプの吐出状態を部分吐出状態とする制御を行い、固着判定手段が、部分吐出状態とする制御が行われた後のライン圧と、部分吐出状態の最大圧との関係に基づいて、オイルポンプが全吐出状態で固着しているか否かを判定し、固着判定禁止手段が、上記禁止・中断条件が満足された場合に、目標ライン圧設定手段、ライン圧調圧手段、吐出状態切替手段、及び、固着判定手段による固着判定の実行を禁止又は中断することを特徴とする。
本発明に係るオイルポンプの固着検知装置によれば、オイルポンプが固着しているか否かを判定する固着判定が行われる際、すなわち、オイルポンプの吐出状態を部分吐出状態とする制御が行われ、診断用目標ライン圧として、部分吐出状態での最大圧よりも高い値が設定され、ライン圧が診断用目標ライン圧と一致するように調圧される際(すなわち、部分吐出高圧状態となる際)に、目標プーリ圧と実プーリ圧との偏差に基づいて演算され、プーリ圧調圧手段の目標制御値を補正する補正値の絶対値が所定値以上の場合には、禁止・中断条件が満足されたと判断されて、オイルポンプが固着しているか否かを判定する固着判定の実行が禁止又は中断される。すなわち、目標ライン圧設定手段、ライン圧調圧手段、吐出状態切替手段、及び、固着判定手段による固着判定の実行が禁止又は中断される。そのため、例えば、ライン圧センサが実際のライン圧(実ライン圧)より高い値を出力し、セカンダリ圧センサが実際のセカンダリ圧(実セカンダリ圧)より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついており、上記補正値が所定値以上に大きくなっている場合には、固着判定の実行が禁止又は中断される。よって、固着判定の実行に伴うライン圧の上昇につられてセカンダリ圧が上昇することが防止される。その結果、例えば、ライン圧センサが実際のライン圧より高い値を出力し、セカンダリ圧センサが実際のセカンダリ圧より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついている場合であっても、運転者などの搭乗者に対して、オイルポンプの固着診断に起因する違和感を与えることを防止することが可能となる。
また、本発明に係るオイルポンプの固着検知装置では、上記プーリ圧制御手段が、目標プーリ圧と実プーリ圧の偏差の時間積分に応じて、プーリ圧調圧手段の目標制御値を補正する積分項の蓄積動作を行うとともに、該積分項を含む補正値を演算し、上記固着判定禁止手段が、補正値の絶対値、又は、積分項の値の絶対値が所定値以上の場合に、禁止・中断条件が満足されたと判断して、オイルポンプが固着しているか否かを判定する固着判定の実行を禁止又は中断することが好ましい。
この場合、目標プーリ圧と実プーリ圧の偏差の時間積分に応じて、プーリ圧調圧手段の目標制御値を補正する積分項の蓄積動作が行われるとともに、該積分項を含む補正値が演算され、補正値の絶対値、又は、積分項の値の絶対値が所定値以上の場合に、禁止・中断条件が満足されたと判断されて、オイルポンプが固着しているか否かを判定する固着判定の実行が禁止又は中断される。そのため、例えば、ライン圧センサが実際のライン圧より高い値を出力し、セカンダリ圧センサが実際のセカンダリ圧より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついており、プーリ圧調圧手段の目標制御値を補正する積分項が所定値以上に蓄積されている場合には、固着判定の実行が禁止又は中断される。よって、固着判定の実行に伴うライン圧の上昇につられてセカンダリ圧が上昇することを防止できる。
また、本発明に係るオイルポンプの固着検知装置では、上記プーリ圧制御手段が、無段変速機を構成するセカンダリプーリに供給されるセカンダリプーリ圧の目標セカンダリプーリ圧と実セカンダリプーリ圧との偏差の時間積分に応じて、プーリ圧調圧手段の目標制御値を補正する積分項の蓄積動作を行うとともに、該積分項を含む補正値を演算することが好ましい。
この場合、無段変速機を構成するセカンダリプーリに供給されるセカンダリプーリ圧の目標セカンダリプーリ圧と実セカンダリプーリ圧との偏差の時間積分に応じて、プーリ圧調圧手段の目標制御値を補正する積分項の蓄積動作が行われる構成の無段変速機において、例えば、ライン圧センサが実際のライン圧より高い値を出力し、セカンダリ圧センサが実際のセカンダリ圧より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついている場合であっても、運転者などの搭乗者に対して、オイルポンプの固着診断に起因する違和感を与えることを防止することが可能となる。
さらに、本発明に係るオイルポンプの固着検知装置では、上記プーリ圧調圧手段が、セカンダリプーリ圧を調圧するソレノイドバルブを含み、上記プーリ圧制御手段が、セカンダリプーリ圧の目標セカンダリプーリ圧と実セカンダリプーリ圧との偏差の時間積分に応じて、ソレノイドバルブの目標制御値を補正する積分項の蓄積動作を行うとともに、該積分項を含む補正値を演算することが好ましい。
この場合、セカンダリプーリ圧の目標セカンダリプーリ圧と実セカンダリプーリ圧との偏差の時間積分に応じて、ソレノイドバルブの目標制御値を補正する積分項の蓄積動作が行われるとともに、該積分項を含む補正値が演算され、補正値の絶対値、又は、積分項の値の絶対値が所定値以上の場合に、禁止・中断条件が満足されたと判断されて、オイルポンプが固着しているか否かを判定する固着判定の実行が禁止又は中断される。そのため、例えば、ライン圧センサが実際のライン圧より高い値を出力し、セカンダリ圧センサが実際のセカンダリ圧より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついており、セカンダリソレノイドバルブの目標制御値を補正する積分項が所定値以上に蓄積されている場合には、固着判定の実行が禁止又は中断される。よって、固着判定の実行に伴うライン圧の上昇につられてセカンダリ圧が上昇することを防止できる。
特に、本発明に係るオイルポンプの固着検知装置では、上記ソレノイドバルブが、印加される電流値に応じてバルブの駆動量が調節されるリニアソレノイドバルブであり、上記プーリ圧制御手段が、セカンダリプーリ圧の目標セカンダリプーリ圧と実セカンダリプーリ圧との偏差の時間積分に応じて、リニアソレノイドバルブの目標電流値を補正する積分項の蓄積動作を行うとともに、該積分項を含む補正値を演算することが好ましい。
この場合、セカンダリプーリ圧の目標セカンダリプーリ圧と実セカンダリプーリ圧との偏差の時間積分に応じて、リニアソレノイドバルブの目標電流値を補正する積分項の蓄積動作が行われるとともに、該積分項を含む補正値が演算され、補正値の絶対値、又は、積分項の値の絶対値が所定値以上の場合に、禁止・中断条件が満足されたと判断されて、オイルポンプが固着しているか否かを判定する固着判定の実行が禁止又は中断される。そのため、例えば、ライン圧センサが実際のライン圧より高い値を出力し、セカンダリ圧センサが実際のセカンダリ圧より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついており、リニアリソレノイドバルブの目標電流値を補正する積分項が所定値以上に蓄積されている場合には、固着判定の実行が禁止又は中断される。よって、固着判定の実行に伴うライン圧の上昇につられてセカンダリ圧が上昇することを防止できる。
また、本発明に係るオイルポンプの固着検知装置では、固着判定手段が、部分吐出状態とする制御が行われた後、ライン圧が部分吐出状態の最大圧以下である場合は全吐出状態で固着していないと判定し、ライン圧が部分吐出状態の最大圧よりも高い場合は全吐出状態で固着していると判定することが好ましい。
このようにすれば、部分吐出状態とする制御が行われた後のライン圧と、部分吐出状態の最大圧との関係に基づいて、オイルポンプが全吐出状態で固着しているか否かを適確に判定することができる。
本発明に係るオイルポンプの固着検知装置では、オイルポンプが全吐出状態又は部分吐出状態で固着しているか否かを判定する固着判定を行う際に、吐出状態切替手段が、オイルポンプの吐出状態を全吐出状態とする制御を行い、目標ライン圧設定手段が、診断用目標ライン圧として、部分吐出状態での最大圧よりも高い値を設定し、ライン圧調圧手段が、ライン圧が診断用目標ライン圧と一致するように調圧し、その後、吐出状態切替手段が、オイルポンプの吐出状態を全吐出状態から部分吐出状態に切り替える制御を行い、固着判定手段が、全吐出状態から部分吐出状態に切り替える制御が行われた後、所定時間以内に、ライン圧が所定値以上低下した場合は全吐出状態で固着していないと判定し、ライン圧が所定値以上低下しなかった場合は全吐出状態で固着していると判定することが好ましい。
この場合、オイルポンプが全吐出状態又は部分吐出状態で固着しているか否かを判定する固着判定が行われるときに、まず、オイルポンプの吐出状態を全吐出状態とするように制御が行われ、オイルポンプが全吐出状態又は部分吐出状態で固着しているか否かを判定するための診断用目標ライン圧として、部分吐出状態の最大圧よりも高い値が設定され、ライン圧油路のライン圧が診断用目標ライン圧と一致するように調圧される。すなわち、診断用目標ライン圧と一致するように実ライン圧を上昇させる際に、全吐出状態に制御することにより、正常時(すなわち部分吐出固着していないとき)には、部分吐出高圧状態となる時間を削減することができる。
そして、その後、オイルポンプの吐出状態を全吐出状態から部分吐出状態に切り替える制御が行われ、所定時間以内に、ライン圧が所定値以上低下した場合は全吐出状態で固着していないと判定され、ライン圧が所定値以上低下しなかった場合は全吐出状態で固着していると判定される。そのため、全吐出状態から部分吐出状態に切り替える制御が行われた後、比較的短時間で全吐出固着の有無を判定することができる。以上のようにして、部分吐出状態かつ高圧状態となる時間を短くすること、すなわち、部分吐出高圧状態で発生し得る異音の発生時間を短くすることができる。
また、本発明に係るオイルポンプの固着検知装置では、固着判定手段が、オイルポンプの吐出状態を全吐出状態から部分吐出状態に切り替える制御が行われた後、所定時間以内に、ライン圧が所定値以上低下し、かつ、ライン圧が部分吐出状態の最大圧以下に低下した場合は全吐出状態で固着していないと判定し、ライン圧が所定値以上低下しなかった場合、又は、ライン圧が部分吐出状態の最大圧以下に低下しなかった場合は全吐出状態で固着していると判定することが好ましい。
この場合、オイルポンプの吐出状態を全吐出状態から部分吐出状態に切り替える制御が行われた後、所定時間以内に、ライン圧が所定値以上低下し、かつ、ライン圧が部分吐出状態の最大圧以下に低下した場合は全吐出状態で固着していないと判定され、ライン圧が所定値以上低下しなかった場合、又は、ライン圧が部分吐出状態の最大圧以下に低下しなかった場合は全吐出状態で固着していると判定される。すなわち、ライン圧の低下量に加えてライン圧の値に基づいて全吐出固着の判定が行われる。そのため、比較的短時間で(すなわち、部分吐出状態での高圧保持時間を短縮しつつ)、より確実に全吐出固着の判定を行うことが可能となる。
本発明に係るオイルポンプの固着検知装置では、固着判定手段が、エンジン回転数と、油温とに基づいて、上記所定値を設定することが好ましい。
ところで、オイルポンプの吐出圧は、オイルポンプを駆動するエンジンの回転数と油温とによって変化する。この場合、エンジン回転数と油温とに基づいて、上記所定値が設定されるため、より精度よく全吐出固着の判定を行うことが可能となる。
また、本発明に係るオイルポンプの固着検知装置では、固着判定手段が、オイルポンプの吐出状態が全吐出状態となるように制御されているときに、調圧されたライン圧が部分吐出状態での最大圧を超えて上昇した場合は部分吐出状態で固着していないと判定し、ライン圧が部分吐出状態での最大圧を超えて上昇しない場合は部分吐出状態で固着していると判定することが好ましい。
この場合、オイルポンプの吐出状態が全吐出状態となるように制御されているときに、調圧されたライン圧が部分吐出状態での最大圧を超えて上昇した場合は部分吐出状態で固着していないと判定され、ライン圧が部分吐出状態での最大圧を超えて上昇しない場合は部分吐出状態で固着していると判定される。そのため、正常時(すなわち部分吐出固着していないとき)には、全吐出状態を維持したままで部分吐出固着の有無を判定することにより、部分吐出高圧状態となる時間を削減することができる。
本発明に係るオイルポンプの固着検知装置では、固着判定を行う際に、目標ライン圧設定手段が、一定の傾きを持って、部分吐出状態での最大圧を超える値まで、診断用目標ライン圧を徐々に上げることが好ましい。
この場合、固着判定を行う際に、実ライン圧が追従できるように、一定の傾きを持って、部分吐出状態での最大圧を超える値まで、診断用目標ライン圧が徐々に上げられる。よって、ライン圧の追従性(遅れ)を考慮して診断用目標ライン圧を上昇することにより、誤判定を防止することが可能となる。
本発明に係るオイルポンプの固着検知装置では、目標ライン圧設定手段が、診断用目標ライン圧を部分吐出状態での最大圧を超える値まで上昇させた後、当該診断用目標ライン圧を保持し、固着判定手段が、診断用目標ライン圧が部分吐出状態での最大圧を超える値まで上昇した後、所定時間が経過したときに、部分吐出状態で固着しているか否かの判定を開始することが好ましい。
この場合、診断用目標ライン圧が部分吐出状態での最大圧を超える値まで上昇された後、当該診断用目標ライン圧が保持(固定)され、診断用目標ライン圧が部分吐出状態での最大圧を超える値まで上昇した後、所定時間が経過したときに、部分吐出状態で固着しているか否かの判定が開始される。よって、ライン圧の追従性(遅れ)を考慮して判定を開始することにより、誤判定を防止することが可能となる。
また、本発明に係るオイルポンプの固着検知装置では、固着判定手段が、エンジン回転数と、油温とに基づいて、部分吐出状態の最大圧を求めるとともに、上記診断用目標ライン圧を設定することが好ましい。
上述したように、オイルポンプの吐出圧は、エンジン回転数と油温とによって変化する。この場合、エンジン回転数と油温とに基づいて、部分吐出状態の最大圧が求められるとともに、診断用目標ライン圧が設定されるため、より精度よく固着判定を行うことが可能となる。
本発明によれば、全吐出状態と部分吐出状態とに切り替え可能なオイルポンプが固着しているか否かを検知するオイルポンプの固着検知装置において、例えば、ライン圧センサが実際のライン圧より高い値を出力し、セカンダリ圧センサが実際のセカンダリ圧より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついている場合であっても、運転者などの搭乗者に対して、オイルポンプの固着診断に起因する違和感を与えることを防止することが可能なオイルポンプの固着検知装置を提供することが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
まず、図1及び図2を併せて用いて、実施形態に係るオイルポンプの固着検知装置1の構成について説明する。オイルポンプの固着検知装置1は、オイルポンプ10の全吐出状態又は半吐出状態(特許請求の範囲に記載の部分吐出状態に相当)での固着を検知するものである。なお、ここでは、本発明を無段変速機(CVT)110に適用した場合を例にして説明する。図1は、オイルポンプの固着検知装置1の構成を示す図である。図2は、オイルポンプの固着検知装置1が適用される無段変速機110の構成を示す図である。
無段変速機110は、例えば、トルクコンバータ(図示省略)を介して、エンジン160のクランク軸に接続され、エンジン160からの駆動力を変換して出力する。無段変速機110は、トルクコンバータの出力軸と接続されるプライマリ軸(入力軸)120と、該プライマリ軸120と平行に配設されたセカンダリ軸(出力軸)130とを有している。
プライマリ軸120には、プライマリプーリ121が設けられている。プライマリプーリ121は、プライマリ軸120に接合された固定シーブ121aと、該固定シーブ121aに対向して、プライマリ軸120の軸方向に摺動自在でかつ相対回転不能に装着された可動シーブ121bとを有し、それぞれのシーブ121a,121bのコーン面間隔、すなわちプーリ溝幅を変更できるように構成されている。一方、セカンダリ軸130には、セカンダリプーリ131が設けられている。セカンダリプーリ131は、セカンダリ軸130に接合された固定シーブ131aと、該固定シーブ131aに対向して、セカンダリ軸130の軸方向に摺動自在でかつ相対回転不能に装着された可動シーブ131bとを有し、プーリ溝幅を変更できるように構成されている。
プライマリプーリ121とセカンダリプーリ131との間には駆動力を伝達するチェーン140が掛け渡されている。プライマリプーリ121及びセカンダリプーリ131の溝幅を変化させて、各プーリ121,131に対するチェーン140の巻き掛け径の比率(プーリ比)を変化させることにより、変速比が無段階に変更される。なお、チェーン140のプライマリプーリ121に対する巻き掛け径をRpとし、セカンダリプーリ131に対する巻き掛け径をRsとすると、変速比iは、i=Rs/Rpで表される。また、変速速度は、di/dtで表される。
ここで、プライマリプーリ121(可動シーブ121b)にはプライマリ駆動油室(油圧シリンダ室)122が形成されている。一方、セカンダリプーリ131(可動シーブ131b)にはセカンダリ駆動油室(油圧シリンダ室)132が形成されている。プライマリプーリ121、セカンダリプーリ131それぞれの溝幅は、プライマリ駆動油室122に導入されるプライマリ圧と、セカンダリ駆動油室132に導入されるセカンダリ圧とを調節することにより設定・変更される。
無段変速機110を変速させるための油圧、すなわち、上述したプライマリ圧及びセカンダリ圧は、コントロールバルブ(バルブボディ)によってコントロールされる。コントロールバルブは、複数のスプールバルブと該スプールバルブを動かすソレノイドバルブ(電磁弁)を用いて内部に形成された油路を開閉等することで、オイルポンプ10から吐出された高圧のオイルを調圧して、上述した無段変速機110のプライマリ駆動油室122及びセカンダリ駆動油室132に供給する。なお、図1にはコントロールバルブの一部の回路(ライン圧調圧回路、吐出状態切替回路、及び、セカンダリ圧調圧回路)のみを示した。
オイルポンプ10は、エンジン出力によって駆動され、オイルパンに貯留されているオイル(ATF)を、第1吸入油路80A及び吸入口106を通して吸入し、昇圧して2つの吐出口(第1吐出口107A及び第2吐出口107B)から吐出する。オイルポンプ10としては、例えば、2つの吐出口を有する2ポート型のベーンポンプなどが好適に用いられる。なお、2つの吐出口(第1吐出口107A及び第2吐出口107B)それぞれに対応するように2つの吸入口を有する構成としてもよい。第1吐出口107Aには第1ライン圧油路70Aが接続されており、第1吐出口107Aから吐出されたオイルは第1ライン圧油路70Aに圧送される。一方、第2吐出口107Bには第2ライン油路70Bが接続されており、第2吐出口107Bから吐出されたオイルは第2ライン油路70Bに圧送される。第2ライン圧油路70Bは、切替制御バルブ60を介して、第1ライン圧油路70Aと連通されるように構成されている(詳細は後述する)。
第1ライン圧油路70Aには、オイルポンプ10から吐出されるオイルの油圧(吐出圧)を無段変速機110に要求される油圧(ライン圧)に調圧するためのライン圧コントロールバルブ30が設けられている。
ライン圧コントロールバルブ30は、後述するライン圧リニアソレノイド20と連通する第1制御圧油路91、第1ライン圧油路70A、及び、オイルを排出するドレン油路93と接続されている。ライン圧コントロールバルブ30は、その内部に、スプール31を軸方向に摺動自在に収容している。このスプール31の端部にはスプリング32が配設されており、ライン圧リニアソレノイド20により生成されたライン圧制御圧による押力(ライン圧制御圧×受圧面積)と、スプリング32のバネ力(付勢力)とのバランスに応じてスプール31が軸方向に駆動されることにより、第1ライン圧油路70Aからドレン油路93に排出されるオイルの量が調節され、ライン圧の調圧が行われる。
すなわち、ライン圧コントロールバルブ30は、バネ力(付勢力)がライン圧制御圧による押力よりも大きい場合に、第1ライン圧油路70Aとドレン油路93とを連通して、第1ライン圧油路70Aのオイルをドレン油路93を通して排出することによりライン圧を調節する。一方、ライン圧コントロールバルブ30は、スプリング32のバネ力(付勢力)がライン圧制御圧による押力よりも小さい場合には、第1ライン圧油路70Aとドレン油路93とを連通を遮断し、第1ライン圧油路70Aからのオイルの排出を停止する。
ライン圧リニアソレノイド20は、無段変速機110に要求されるライン圧に基づいてトランスミッション制御ユニット(以下「TCU」という)150から印加される電流値に応じてバルブを軸方向に変位させるリニアソレノイドを有しており、該リニアソレノイドに印加される電流に応じて第1ライン圧油路70Aからの供給圧とドレンとのバランスを調節することにより、ライン圧制御圧を調圧する。調圧されたライン圧制御圧が第1制御圧油路91を通してライン圧コントロールバルブ30に供給されることにより、上述したように、ライン圧コントロールバルブ30が駆動制御される。ここで、ライン圧リニアソレノイド20に印加される電流値が増大するほど、ライン圧制御圧がリニアに増大し、それに伴い、実ライン圧もリニアに増大する。
上述したように、オイルポンプ10の第2吐出口107Bは、第2ライン圧油路70B、切替制御バルブ60を介して、第1ライン圧油路70Aに連通される。また、オイルポンプ10の第2吐出口107Bは、第2ライン圧油路70B、切替制御バルブ60、第2吸入油路80Bを介して、直接的又は間接的に第1吸入油路80Aに連通されている。
切替制御バルブ60は、スプリング62のバネ力(付勢力)と、後述するスイッチ圧ソレノイド50により生成されたスイッチ油圧による押力とに基づいて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先を、第1ライン圧油路70A(高圧油路)と、第1吸入油路80A(吸入口106)に直接的又は間接的に連通する第2吸入油路80B(低圧油路)との間で切替える。
より詳細には、切替制御バルブ60は、スイッチ圧ソレノイド50と連通する第2制御圧油路(スイッチ圧油路)92、第1ライン圧油路70A、第2吐出口107Bと連通する第2ライン圧油路70B、及び、第1吸入油路80A(吸入口106)と直接的又は間接的に連通する第2吸入油路80Bと接続されている。切替制御バルブ60は、その内部に、スプール61を軸方向に摺動自在に収容している。このスプール61の一方の端部にはスプリング62が配設されており、スプリング62のバネ力(付勢力)Fspring(=K×X(バネ潰れ代))と、スイッチ圧ソレノイド50により生成されたスイッチ油圧PSWによる押力FSW(スイッチ油圧PSW×受圧面積ASW)とのバランスに応じてスプール61が軸方向に駆動されることにより、第2ライン圧油路70Bに連通する油路が、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替えられる。
より具体的には、切替制御バルブ60は、バネ力がスイッチ油圧による押力よりも大きい場合には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aとなるように切替える。一方、切替制御バルブ60は、バネ力がスイッチ油圧による押力未満の場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bとなるように切替える。
そのため、切替制御バルブ60は、後述するスイッチ圧ソレノイド50からスイッチ油圧が供給された場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bとなるように(半吐出状態となるように)切り替える。一方、切替制御バルブ60は、例えば、スイッチ圧ソレノイド50からスイッチ油圧が供給されない場合(スイッチ油圧がゼロの場合)には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aとなるように(全吐出状態となるように)切り替える。
スイッチ圧ソレノイド50は、無段変速機110の運転状態などに基づいて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先を、第1ライン圧油路70Aと、第2吸入油路80Bとの間で切り替える(すなわち全吐出状態と半吐出状態とを切り替える)スイッチ油圧(切替油圧)を生成する。スイッチ圧ソレノイド50には、上述した第1ライン圧油路70A、及び第2制御圧油路(スイッチ圧油路)92が接続されている。スイッチ圧ソレノイド50が開弁されることにより、第1ライン圧油路70Aからの供給圧が、第2制御圧油路92を通して、切替制御バルブ60の一方(スプリング62と対向する側)の端部にスイッチ油圧(切替油圧)として供給される。一方、スイッチ圧ソレノイド50が閉弁されることにより、上記スイッチ油圧の供給が停止される。なお、その際に、第2制御圧油路92内のオイルがドレンされ、スイッチ油圧はゼロとされる。
スイッチ圧ソレノイド50としては、例えば、電圧が印加されることにより開弁し、電圧の印加が停止されることにより閉弁するオン・オフソレノイドが好適に用いられる。なお、電圧の印加/停止と開弁/閉弁との関係は逆(ノーマリ・オープン)であってもよい。スイッチ圧ソレノイド50の開弁/閉弁はTCU150によって制御される。
第1ライン圧油路70Aには、ライン圧を検出するライン圧センサ153が取り付けられている。ライン圧センサ153はTCU150と電気的に接続されており、ライン圧センサ153の出力、すなわち、ライン圧に応じた電気信号(例えば電圧)は、TCU150に読み込まれる。
セカンダリ駆動油室132に供給されるセカンダリ圧は、セカンダリ圧コントロールバルブ54及びセカンダリリニアソレノイド53(特許請求の範囲に記載のリニアソレノイドバルブに相当)によって、ベルト140に要求される伝達容量に見合った圧力に調整される。また、プライマリ駆動油室122に供給されるプライマリ圧は、アップシフト用ソレノイド・ダウンシフト用ソレノイド(図示省略)によって、目標変速比などに応じた値に調整される。
セカンダリ圧コントロールバルブ54は、セカンダリ駆動油室132と連通するセカンダリ圧油路72と接続されている。セカンダリ圧コントロールバルブ54は、オイルポンプ10から吐出され第1ライン圧路70Aを通して供給されるライン圧を元圧として、セカンダリ駆動油室132に供給するセカンダリ圧を調圧してセカンダリ圧油路72に供給する。
セカンダリ圧コントロールバルブ54は、その内部に、スプール55を軸方向に摺動自在に収容している。このスプール55の端部にはスプリング56が配設されており、セカンダリリニアソレノイド53により生成された制御油圧とバネ力とのバランスに応じてスプール55が軸方向に駆動されることにより、油路の開度調節等が行われる。
セカンダリリニアソレノイド53は、TCU150から印加される電流値に応じてバルブを軸方向に変位させるリニアソレノイドを有しており、該リニアソレノイドに印加する電流を制御して、パイロット油路からの供給圧(パイロット圧)とドレンとのバランスを調節することにより、パイロット圧(制御油圧)を調圧する。調圧されたパイロット圧(制御油圧)がセカンダリ圧コントロールバルブ54に供給されることにより、上述したように、セカンダリ圧コントロールバルブ54が駆動制御される。
TCU150には、ライン圧センサ153、セカンダリ圧センサ154、プライマリ圧センサ155の他、例えば、シフトレバーの選択位置を検出するレンジスイッチ151、及び無段変速機110のオイルの温度(油温)を検出する油温センサ152等を含む各種センサが接続されている。また、TCU150は、CAN(Controller Area Network)190を介して、エンジン160を総合的に制御するエンジン・コントロールユニット(以下「ECU」という)170、及び、自動加圧によるブレーキ制御とエンジン160のトルク制御により、横滑りを抑制し、旋回時の車両安定性を確保するビークルダイナミック・コントロールユニット(以下「VDCU」という)180等と相互に通信可能に接続されている。
ここで、ECU170には、エンジン160のクランクシャフトの位置を検出するクランク角センサ171等が接続されている。ECU170では、クランク角センサ171によって検出されたクランクシャフトの回転位置の変化からエンジン回転数が求められる。ECU170は、CAN190を介してエンジン回転数や、冷却水温度、エンジントルク、アクセルペダル開度等の情報をTCU150等に対して送信する。
一方、VDCU180には、車両の各車輪の回転速度(車速)を検出する車速センサ181等が接続されている。VDCU180は、検出した車輪速(車速)等の情報を、CAN190を介してTCU150に対して送信する。
TCU150は、CAN190を介して、ECU170からエンジン回転数やエンジントルク、アクセルペダル開度等の情報を受信するとともに、VDCU180から車速等の情報を受信する。なお、車速情報は、セカンダリ軸130の回転数、及び、セカンダリ軸130と車輪との間の総ギヤ比から算出してもよい。また、TCU150に車速センサを接続して直接的に車速を検出する構成としてもよい。
TCU150は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び、入出力I/F等を有して構成されている。
TCU150は、上述した各種センサ等から取得した各種情報に基づいて、変速マップに従い、アップシフト用ソレノイド・ダウンシフト用ソレノイド(図示省略)を駆動する。それにより、車両の運転状態(例えばアクセルペダル開度及び車速等)に応じて自動で変速比が無段階に変速される。なお、変速マップはTCU150内のEEPROMなどに格納されている。また、TCU150は、上述したライン圧リニアソレノイド20や、スイッチ圧ソレノイド50等の駆動を制御する。すなわち、TCU150は、オイルポンプ10の吐出状態(全吐出状態と半吐出状態)を切り替える。
特に、TCU150は、オイルポンプ10が全吐出状態又は半吐出状態で固着(すなわち、吐出状態を切り替えるスイッチ圧ソレノイド50及び/又は切替制御バルブ60が固着等)しているか否かを判定する際(固着診断時)に、例えば、ライン圧センサが実際のライン圧(実ライン圧)より高い値を出力し、セカンダリ圧センサ154が実際のセカンダリ圧(実セカンダリ圧)より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついている場合であっても、運転者などの搭乗者に対して、オイルポンプ10の固着診断に起因する違和感を与えることを防止する機能を有している。そのため、TCU150は、吐出状態切替部150a、目標ライン圧設定部150b、ライン圧調圧部150c、固着判定部150d、プーリ圧制御部150e、及び、固着判定禁止部150fを機能的に備えている。TCU150では、EEPROMなどに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、吐出状態切替部150a、目標ライン圧設定部150b、ライン圧調圧部150c、固着判定部150d、プーリ圧制御部150e、及び、固着判定禁止部150fの各機能が実現される。
プーリ圧制御部150eは、車両の運転状態(例えば、アクセル開度/エンジントルク等)に応じて、ライン圧を降圧してセカンダリ圧を調圧するセカンダリリニアソレノイド53の目標電流値(目標制御値)を設定する。また、プーリ圧制御部150eは、セカンダリ圧の目標セカンダリ圧と実セカンダリ圧との偏差に基づいて、セカンダリリニアソレノイド53の目標電流値を補正する補正値を演算する。そして、プーリ圧制御部150eは、求めた補正値でセカンダリリニアソレノイド53の目標電流値を補正して、実セカンダリ圧が目標セカンダリ圧と一致するようにフィードバック制御を行う。すなわち、プーリ圧制御部150eは、特許請求の範囲に記載のプーリ圧制御手段として機能する。
より具体的には、本実施形態では、油圧(セカンダリ圧)の制御に、PI制御(Proportional−Integral Controller)を適用した。すなわち、プーリ圧制御部150eは、目標セカンダリ圧と実セカンダリ圧との偏差に比例した比例項(P項)、残留偏差の時間積分に応じた積分項(I項)に基づいて、セカンダリ圧を調圧するセカンダリリニアソレノイド53の目標電流値を制御する。すなわち、プーリ圧制御部150eは、目標セカンダリ圧と実セカンダリ圧の偏差の時間積分に応じて、セカンダリリニアソレノイド53の目標電流値を補正する積分項の蓄積動作を行う。なお、比例項(P項)と積分項(I項)に加えて、上記偏差の変化の大きさに応じた微分項(D項)を用いてもよい(すなわち、PID制御を適用してもよい)。なお、プーリ圧制御部150eは、セカンダリ圧と同様にして、プライマリ圧を制御(調圧)する。
なお、ここで、例えば、ライン圧センサ153が実際のライン圧(実ライン圧)より高い値を出力し、セカンダリ圧センサ154が実際のセカンダリ圧(実セカンダリ圧)より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついている場合、目標ライン圧に実際には到達していない(実ライン圧が目標ライン圧よりも低い)にもかかわらず、目標ライン圧に到達したとTCU150では判断される。一方、セカンダリ圧センサ154は実際のセカンダリ圧より低い値を出力し、また、セカンダリ圧は、元圧であるライン圧を超えることはできないため、例えば、目標ライン圧と目標セカンダリ圧とが略等しい場合には、実セカンダリ圧が目標セカンダリ圧に到達していないと判断されて、セカンダリ圧を上昇させるようにフィードバックが行われ(すなわち、積分項が蓄積され続け)、セカンダリリニアソレノイド53の目標電流値の補正値が最大値まで増大することが生じ得る。
固着判定禁止部150fは、固着診断の実行前及び実行中に、セカンダリリニアソレノイド53の目標電流値を補正する補正値の絶対値、又は、積分項の値の絶対値が所定値以上の場合に、禁止・中断条件が満足されたと判断して、オイルポンプ10が固着しているか否かを判定する固着判定の実行を禁止又は中断する。そのため、例えば、ライン圧センサ153が実際のライン圧(実ライン圧)より高い値を出力し、セカンダリ圧センサ154が実際のセカンダリ圧(実セカンダリ圧)より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついており、セカンダリリニアソレノイド53の目標電流値を補正する補正値の絶対値、又は、積分項の値が所定値以上の場合には、固着判定の実行が禁止又は中断される。すなわち、固着判定禁止部150fは、特許請求の範囲に記載の固着判定禁止手段として機能する。
その際に、固着判定禁止部150fは、目標ライン圧設定部150b、ライン圧調圧部150c、吐出状態切替部150a、及び、固着判定部150dによる固着判定の実行、すなわち、オイルポンプ10が固着しているか否かの判定を行い、オイルポンプ10の固着を検知する一連のシーケンスの実行を禁止又は中断する。
なお、固着判定禁止部150fによって固着判定の実行が禁止又は中断された場合、後述する吐出状態切替部150a、目標ライン圧設定部150b、ライン圧調圧部150c、及び、固着判定部150dそれぞれは、固着判定の実行を開始することなく通常の制御を行う(又は固着判定の実行を中断して通常制御に戻る)。
吐出状態切替部150aは、スイッチ圧ソレノイド50を駆動して、オイルポンプ10の吐出状態を、2つの吐出口(第1吐出口107A、第2吐出口107B)が第1ライン圧油路70Aと連通される全吐出状態、又は、2つの吐出口(第1吐出口107A、第2吐出口107B)のうち第1吐出口107Aが第1ライン圧油路70Aに連通され、第2吐出口107Bがオイルポンプ10の吸入口106(第1吸入油路80A)と直接的又は間接的に連通される半吐出状態に切り替える。すなわち、吐出状態切替部150a、スイッチ圧ソレノイド50、及び、切替制御バルブ60は、特許請求の範囲に記載の吐出状態切替手段として機能する。
目標ライン圧設定部150bは、オイルポンプ10が全吐出状態又は半吐出状態で固着しているか否かを判定するための診断用目標ライン圧を設定する。目標ライン圧設定部150bは、オイルポンプ10が全吐出状態又は半吐出状態で固着しているか否かを判定する固着判定(診断)を行うときに、診断用目標ライン圧として、半吐出状態での最大圧よりも高い値(半吐出最大圧+所定値)を設定する。なお、所定値は、各種ばらつきを考慮して誤判定しない値とすることが好ましい。すなわち、目標ライン圧設定部150bは、特許請求の範囲に記載の目標ライン圧設定手段として機能する。
より具体的には、診断用目標ライン圧は、半吐出状態での最大圧よりも高く、かつ、全吐出状態での最大圧よりも低い値に設定されることが好ましい。ここで、半吐出状態での最大圧、及び、全吐出状態での最大圧それぞれは、例えば、エンジン回転数と油温と各最大圧との関係を定めたマップ(半吐出最大圧マップ、全吐出最大圧マップ)を予め記憶しておき、該マップをエンジン回転数と油温とで検索することにより求めることができる。なお、エンジン回転数が高くなるほど各最大圧は高くなる。一方、油温が高くなるほど各最大圧は低くなる。なお、目標ライン圧設定部150bは、固着判定(診断)を行わないとき、すなわち、通常運転時には、車両の運転状態(例えば車速やアクセル開度等)に応じて目標ライン圧を設定する。なお、エンジン回転数と油温と診断用目標ライン圧との関係を定めたマップ(診断用目標ライン圧マップ)を予め記憶しておき、該マップをエンジン回転数と油温とで検索することにより診断用目標ライン圧を直接求める構成としてもよい。上述したように設定された診断用目標ライン圧は、ライン圧調圧部150cに出力される。
ライン圧調圧部150cは、ライン圧リニアソレノイド20を駆動して、実ライン圧が診断用目標ライン圧と一致するように制御する。すなわち、ライン圧調圧部150cは、特許請求の範囲に記載のライン圧調圧手段として機能する。
固着判定部150dは、オイルポンプ10が全吐出状態又は半吐出状態で固着しているか否かを判定する。すなわち、固着判定部150dは、特許請求の範囲に記載の固着判定手段として機能する。ここで、図3を併せて参照しつつ、全吐出状態又は半吐出状態での固着の検知方法について詳細に説明する。図3は、オイルポンプの固着検知装置1による固着検知方法を説明するための図であり、固着検知実行時における、診断用目標ライン圧、半吐出時最大圧、及び、実ライン圧の変化の一例を示す。なお、図3では、通常の目標ライン圧(通常目標ライン圧)も併せて示した。図3の横軸は時間(sec)であり、縦軸はライン圧(MPa)である。図3では、実ライン圧を実線で、診断用目標ライン圧を破線で、半吐出状態での最大圧を点線で、通常時の目標ライン圧を一点鎖線でそれぞれ示した。
固着判定禁止部150fにより固着判定の実行が禁止又は中断されておらず(すなわち、許可されており)、オイルポンプ10の全吐出固着又は半吐出固着の診断が実行される際に、まず、吐出状態切替部150aは、スイッチ圧ソレノイド50を駆動して、オイルポンプ10の吐出状態を全吐出状態とする制御を行う(図3のt1参照)。
目標ライン圧設定部150bは、診断用目標ライン圧として、半吐出状態の最大圧よりも高い値を設定する。その際に、目標ライン圧設定部150bは、実ライン圧が追従できるように、一定の傾きを持って、半吐出状態の最大圧を超える値まで、診断用目標ライン圧を徐々に上げる(図3のt1〜t2参照)。ここで、上記一定の傾きは、実ライン圧の追従性を考慮して、例えば、油温とエンジン回転数とに応じて設定される。そして、目標ライン圧設定部150bは、診断用目標ライン圧を半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇させた後、当該診断用目標ライン圧をその値で保持(固定)する(図3のt2〜t4参照)。なお、半吐出状態の最大圧は、上述したように、エンジン回転数と油温とに基づいて求めることができる。
ライン圧調圧部150cは、ライン圧リニアソレノイド20を駆動して、実ライン圧が診断用目標ライン圧と一致するように制御する。
固着判定部150dは、診断用目標ライン圧が半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇された後、所定時間が経過したときに、半吐出状態で固着しているか否かの判定(診断)を開始する。より具体的には、固着判定部150dは、実ライン圧が半吐出状態の最大圧を超えて上昇した場合(例えば診断用目標ライン圧と略一致した場合)は半吐出状態で固着していないと判定する(図3のt2〜t3参照)。一方、実ライン圧が半吐出状態の最大圧を超えて上昇しない場合は半吐出状態で固着していると判定する。なお、半吐出固着の判定(診断)は省略してもよい。
半吐出固着診断が終了した後(半吐出固着がないと判定された場合)、吐出状態切替部150aは、スイッチ圧ソレノイド50を駆動して、オイルポンプ10の吐出状態を全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御を行う(図3のt3参照)。
固着判定部150dは、全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われた後、所定圧以上の圧力降下があったか否か、及び/又は、実ライン圧が所定圧(半吐出状態の最大圧)以下に低下したか否かに基づいて、全吐出状態の固着を判定する。すなわち、固着判定部150dは、全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われた後、所定時間以内に、実ライン圧が所定値以上低下した場合は全吐出状態で固着していないと判定する。一方、実ライン圧が所定値以上低下しなかった場合は全吐出状態で固着していると判定する(図3のt3〜t4参照)。その際に、上記所定時間は、正常時に半吐出状態に切り替えたときのライン圧の追従性を考慮して、例えば、油温とエンジン回転数とに応じて設定される。また、上記所定値は、診断用目標ライン圧と半吐出最大圧との差を考慮して、例えば、エンジン回転数と油温とに基づいて、又は、診断用目標ライン圧と半吐出最大圧との差に応じて設定される。また、固着判定部150dは、全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われた後、一定時間、実ライン圧が半吐出状態の最大圧以下に低下した場合は全吐出状態で固着していないと判定する。一方、実ライン圧が半吐出状態の最大圧以下に低下しなかった場合は全吐出状態で固着していると判定する(図3のt3〜t4参照)。ここで、上記一定時間は、固着判定の確実性を低下させない範囲で短く設定することが好ましい。固着判定(診断)が終了した後は、診断用目標ライン圧から通常の目標ライン圧に戻される(図3のt4〜参照)。
次に、図4及び図5を併せて参照しつつ、オイルポンプの固着検知装置1の動作(固着検知方法)について説明する。図4及び図5は、オイルポンプの固着検知装置1による固着検知処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、主としてTCU150において、所定時間毎(例えば10ms毎)に繰り返して実行される。
ステップS100では、セカンダリ圧の目標セカンダリ圧と実セカンダリ圧との偏差に基づいて、セカンダリリニアソレノイド53の目標電流値を補正する補正値が演算され、該補正値で目標電流値が補正されて、実セカンダリ圧が目標セカンダリ圧と一致するようにフィードバック制御が行われる。より具体的には、目標セカンダリ圧と実セカンダリ圧との偏差に比例した比例項(P項)、残留偏差の時間積分に応じた積分項(I項)を含む補正値が演算され、該補正値に基づいて、セカンダリ圧を調圧するセカンダリリニアソレノイド53の目標電流値が補正され、そして、該目標電流値に基づいてセカンダリリニアソレノイド53が制御される。
次に、ステップS102では、セカンダリリニアソレノイド53の目標電流値を補正する補正値の絶対値(又は、積分項の値の絶対値)が所定値以上であるか否かについての判断が行われる。ここで、補正値の絶対値(又は、積分項の値の絶対値)が所定値未満の場合には、ステップS110に処理が移行する。一方、補正値の絶対値(又は、積分項の値の絶対値)が所定値以上のときには、ステップS140において、固着診断が禁止・中断された後、ステップS134に処理が移行する。
ステップS110では、スイッチ圧ソレノイド50を駆動して、オイルポンプ10の吐出状態を全吐出状態とする制御が行われる(図3のt1参照)。
続いて、ステップS112では、診断用目標ライン圧として、半吐出状態の最大圧よりも高い値(半吐出最大圧+所定値)が設定される。その際、実ライン圧が追従できるように、一定の傾きを持って、半吐出状態の最大圧を超える値まで、診断用目標ライン圧が徐々に上げられる。また、実ライン圧が診断用目標ライン圧と一致するように調圧される(図3のt1〜t2参照)。
ステップS114では、診断用目標ライン圧が半吐出状態の最大圧を超える値(半吐出最大圧+所定値)まで上昇(到達)したか否かについての判断が行われる。ここで、診断用目標ライン圧が半吐出状態での最大圧を超える値まで上昇していない場合には、ステップS112に処理が移行し、診断用目標ライン圧が半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇するまで、上述したステップS112〜ステップS114の処理が繰り返して実行される。一方、診断用目標ライン圧が半吐出状態での最大圧を超える値まで上昇したときには、ステップS116に処理が移行する。
診断用目標ライン圧が半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇された場合、ステップS116では、診断用目標ライン圧がその値で保持(固定)される(図3のt2〜t4参照)。そして、診断用目標ライン圧が半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇された後、所定時間が経過したときに、ステップS118において、半吐出状態で固着しているか否かの判定(診断)が開始される。
続くステップS120では、診断が開始された後、一定時間、実ライン圧が半吐出状態での最大圧を超えたか否かについての判断が行われる。ここで、一定時間、実ライン圧が半吐出状態の最大圧を超えた場合には、ステップS122に処理が移行する。一方、一定時間、実ライン圧が半吐出状態での最大圧を超えていないときには、ステップS136に処理が移行する。
実ライン圧が半吐出状態の最大圧を超えた場合(例えば診断用目標ライン圧と略一致した場合)、ステップS122において、半吐出状態で固着していないと判定される(図3のt2〜t3参照)。
半吐出固着診断が終了した後(半吐出固着がないと判定された場合)、ステップS124では、スイッチ圧ソレノイド50を駆動して、オイルポンプ10の吐出状態を半吐出状態に切り替えるように制御が行われる(図3のt3参照)。
そして、ステップS126では、全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われた後、所定時間以内に、実ライン圧が所定値以上低下したか否か(すなわち、所定圧以上の圧力降下があったか否か)についての判断が行われる。ここで、所定時間以内に、実ライン圧が所定値以上低下(圧力降下)した場には、ステップS128に処理が移行する。一方、所定時間以内に、実ライン圧が所定値以上低下(圧力降下)しなかったときには、ステップS132において、全吐出状態で固着していると判定(異常判定)された後、ステップS134に処理が移行する。
ステップS128では、一定時間、実ライン圧が所定圧(半吐出最大圧)以下に低下したか否かについての判断が行われる。ここで、一定時間、実ライン圧が所定圧(半吐出最大圧)以下に低下した場合には、ステップS130において、全吐出状態で固着していないと判定(正常判定)され、その後、ステップS134に処理が移行する。一方、一定時間、実ライン圧が所定圧(半吐出最大圧)以下に低下しないときには、ステップS132において、全吐出状態で固着していると判定(異常判定)され、その後、ステップS134に処理が移行する(図3のt3〜t4参照)。
ステップS134では、固着診断が終了され、目標ライン圧が、診断用目標ライン圧から通常の目標ライン圧に戻される(図3のt4〜参照)。
一方、上述したステップS120が否定された場合、ステップS136では、さらに一定時間、実ライン圧が半吐出状態での最大圧以下であるか否かについての判断が行われる。ここで、一定時間、実ライン圧が半吐出状態での最大圧以下である場合には、ステップS138において、半吐出状態で固着していると判定(異常判定)され、その後、ステップS134に処理が移行する。一方、一定時間、実ライン圧が半吐出状態での最大圧以下でないときには、ライン圧がハンチングしていると推測され、ステップS140において、固着診断(判定)が中断された後、ステップS134に処理が移行する。
上述したように、ステップS134では、固着診断が終了され、目標ライン圧が、診断用目標ライン圧から通常の目標ライン圧に戻される。
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、オイルポンプ10が固着しているか否かを判定する固着判定が行われる際、すなわち、オイルポンプ10の吐出状態を半吐出状態とする制御が行われ、診断用目標ライン圧として、半吐出状態での最大圧よりも高い値が設定され、ライン圧が診断用目標ライン圧と一致するように調圧される際(すなわち、半吐出高圧状態となる際)に、セカンダリリニアソレノイド53の目標電流値を補正する補正値の絶対値、又は、積分項の値の絶対値が所定値以上の場合には、禁止・中断条件が満足されたと判断されて、オイルポンプ10が固着しているか否かを判定する固着判定の実行が禁止又は中断される。すなわち、目標ライン圧設定部150b、ライン圧調圧部150c、吐出状態切替部150a、及び、固着判定部150dによる固着判定の実行が禁止又は中断される。そのため、例えば、ライン圧センサ153が実際のライン圧(実ライン圧)より高い値を出力し、セカンダリ圧センサ154が実際のセカンダリ圧(実セカンダリ圧)より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついており、上記補正値又は積分項の値の絶対値が所定値以上に大きくなっている場合には、固着判定の実行が禁止又は中断される。よって、固着判定の実行に伴うライン圧の上昇につられてセカンダリ圧が上昇することが防止される。その結果、例えば、ライン圧センサ153が実際のライン圧より高い値を出力し、セカンダリ圧センサ154が実際のセカンダリ圧より低い値を出力するように夫々のセンサ特性がばらついている場合であっても、運転者などの搭乗者に対して、オイルポンプ10の固着診断に起因する違和感を与えることを防止することが可能となる。
一方、本実施形態によれば、オイルポンプ10が全吐出状態又は半吐出状態で固着しているか否かを判定する固着判定が行われるときに、まず、オイルポンプ10の吐出状態を全吐出状態とするように制御が行われ、オイルポンプ10が全吐出状態又は半吐出状態で固着しているか否かを判定するための診断用目標ライン圧として、半吐出状態の最大圧よりも高い値が設定され、第1ライン圧油路70Aのライン圧が診断用目標ライン圧と一致するように調圧される。すなわち、診断用目標ライン圧と一致するように実ライン圧を上昇させる際に、全吐出状態に制御することにより、正常時(すなわち半吐出固着していないとき)には、半吐出高圧状態となる時間を削減することができる。
そして、その後、オイルポンプ10の吐出状態を全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われ、ライン圧が半吐出状態の最大圧以下に低下した場合は全吐出状態で固着していないと判定され、ライン圧が半吐出状態の最大圧以下に低下しなかった場合は全吐出状態で固着していると判定される。そのため、全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われた後、比較的短時間で全吐出固着の有無を判定することができる。以上のようにして、半吐出状態かつ高圧状態となる時間を短くすること、すなわち、部分吐出高圧状態で発生し得る異音の発生時間を短くすることができる。
また、本実施形態によれば、オイルポンプ10の吐出状態を全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われた後、所定時間以内に、ライン圧が所定値以上低下し、かつ、ライン圧が半吐出状態の最大圧以下に低下した場合は全吐出状態で固着していないと判定され、ライン圧が所定値以上低下しなかった場合、又は、ライン圧が半吐出状態の最大圧以下に低下しなかった場合は全吐出状態で固着していると判定される。すなわち、ライン圧の低下量に加えてライン圧の値に基づいて全吐出固着の判定が行われる。そのため、比較的短時間で(すなわち、半吐出状態での高圧保持時間を短縮しつつ)、より確実に全吐出固着の判定を行うことが可能となる。なお、その際に、エンジン回転数と油温とに基づいて、上記所定値が設定されるため、より精度よく全吐出固着の判定を行うことが可能となる。
また、本実施形態によれば、オイルポンプ10の吐出状態が全吐出状態となるように制御されているときに、調圧されたライン圧が半吐出状態での最大圧を超えて上昇した場合は半吐出状態で固着していないと判定され、ライン圧が半吐出状態での最大圧を超えて上昇しない場合は半吐出状態で固着していると判定される。そのため、正常時(すなわち半吐出固着していないとき)には、全吐出状態を維持したままで半吐出固着の有無を判定することにより、半吐出高圧状態となる時間を削減することができる。
また、本実施形態によれば、診断用目標ライン圧が半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇された後、当該診断用目標ライン圧が保持(固定)され、診断用目標ライン圧が半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇した後、所定時間が経過したときに、半吐出状態で固着しているか否かの判定が開始される。よって、実ライン圧の追従性(遅れ)を考慮して判定を開始することにより、誤判定を防止することが可能となる。
本実施形態によれば、固着判定を行う際に、実ライン圧が追従できるように、一定の傾きを持って、半吐出状態の最大圧を超える値まで、診断用目標ライン圧が徐々に上げられる。よって、実ライン圧の追従性(遅れ)を考慮して診断用目標ライン圧を上昇することにより、誤判定を防止することが可能となる。
また、本実施形態によれば、エンジン回転数と油温とに基づいて、半吐出最大圧が求められるとともに、診断用目標ライン圧が設定されるため、より精度よく固着判定を行うことが可能となる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、固着診断の禁止・中断を判断するために、セカンダリ圧を調圧するセカンダリリニアソレノイド53の目標電流値の補正値(又は積分項の値)を用いたが、セカンダリリニアソレノイド53の目標電流値の補正値(又は積分項の値)に代えて、又は、加えて、プライマリ圧を調圧するソレノイドバルブの目標制御値の補正値(又は積分項の値)を用いてもよい。
上記実施形態では、セカンダリリニアソレノイド53として、リニアソレノイドを用いたが、リニアソレノイドに代えて、例えば、デューティソレノイド等を用いてもよい。同様に、スイッチ圧ソレノイド50として、オン・オフソレノイドを用いたが、オン・オフソレノイドに代えて、例えば、デューティソレノイドやリニアソレノイド等を用いてもよい。
上記実施形態では、全吐出状態での固着を判定するために、2つの方法(すなわち、ライン圧の値を用いる方法と、ライン圧の低下量(低下幅)を用いる方法)を併用したが、いずれか一方の方法のみを用いる構成としてもよい。また、上記実施形態では、全吐出状態で診断用目標ライン圧(及び実ライン圧)を上昇させたが、半吐出状態で診断用目標ライン圧(及び実ライン圧)を上昇させてもよい。
なお、部分吐出状態は半吐出状態に限定されず、全吐出状態よりも吐出量(容量)の小さい運転状態であればよい。
上記実施形態では、2つの吐出口107A,107Bを有する2ポート型のオイルポンプ10を例にして説明したが、2ポート型のオイルポンプ10に代えて、3つ以上の吐出口を有するオイルポンプを用いてもよい。また、上記実施形態では、オイルポンプ10としてベーンポンプを用いたが、ベーンポンプに代えて、例えば、内接歯車式ギヤポンプやトロコイドポンプ等を用いることもできる。