JP2020192577A - プレス装置、プレス装置の負荷異常検知方法及び負荷異常検知プログラム - Google Patents
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Description
これら外部要因による負荷パターン(波形)の変化では、図9に示すように、実線で示す正常な負荷パターンが、破線で示すオフセットした波形となったり、一点鎖線で示すパターンそのものが変化した波形となったりする。オフセットしただけの波形であれば従来の負荷監視であっても異常を検知できる可能性はあるが、負荷パターンそのものが変化した場合には、負荷だけの単純な監視では異常の検知が難しい。例えば、図10に示すように、負荷が急激に変化した場合、実際には異常が発生しているにも関わらず、それが負荷の上下閾値の範囲内であると、これを正常と判定してしまう。また、稼働初期において金型温度や金型潤滑状態が遷移状態にある場合、この遷移状態であることに起因して一時的に負荷が上下閾値の範囲内から外れてしまうために、実際には異常ではないにも関わらず、負荷異常と判定してしまう。
所定のプレス方向に進退可能なスライドと、
前記スライドに作用する前記プレス方向の機械的な負荷を計測する負荷計測手段と、
前記プレス方向における前記スライドの位置に相当する位置パラメータを計測する位置パラメータ計測手段と、
前記負荷計測手段が計測した負荷と、前記位置パラメータ計測手段が計測した位置パラメータとに基づいて、負荷を位置パラメータで微分した負荷上昇率と、負荷を位置パラメータで二回微分した負荷上昇変化率との少なくとも一方を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した負荷上昇率及び負荷上昇変化率の少なくとも一方に基づいて、負荷の異常を検知する負荷異常検知手段と、
を備えるように構成される。
所定のプレス方向に進退可能なスライドを備えるプレス装置の負荷異常検知方法であって、
前記プレス装置の制御手段が、
前記スライドに作用する前記プレス方向の機械的な負荷を計測する負荷計測工程と、
前記プレス方向における前記スライドの位置に相当する位置パラメータを計測する位置パラメータ計測工程と、
前記負荷計測工程で計測された負荷と、前記位置パラメータ計測工程で計測された位置パラメータとに基づいて、負荷を位置パラメータで微分した負荷上昇率と、負荷を位置パラメータで二回微分した負荷上昇変化率との少なくとも一方を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された負荷上昇率及び負荷上昇変化率の少なくとも一方に基づいて、負荷の異常を検知する負荷異常検知工程と、
を実行するものである。
所定のプレス方向に進退可能なスライドを備えるプレス装置の負荷異常検知プログラムであって、
前記プレス装置の制御手段を、
前記スライドに作用する前記プレス方向の機械的な負荷を計測する負荷計測手段、
前記プレス方向における前記スライドの位置に相当する位置パラメータを計測する位置パラメータ計測手段、
前記負荷計測手段が計測した負荷と、前記位置パラメータ計測手段が計測した位置パラメータとに基づいて、負荷を位置パラメータで微分した負荷上昇率と、負荷を位置パラメータで二回微分した負荷上昇変化率との少なくとも一方を算出する算出手段、
前記算出手段が算出した負荷上昇率及び負荷上昇変化率の少なくとも一方に基づいて、負荷の異常を検知する負荷異常検知手段、
として機能させるものである。
図1は、本実施形態に係るプレス装置1の装置本体100を示す図である。
この図に示すように、本実施形態に係るプレス装置1は、鍛造成形を行う鍛造プレス装置であり、装置本体100を備える。装置本体100は、ベッド23、複数のアップライト22、クラウン21、ボルスタ24、スライド18、駆動部10、移動量計測器35、複数の荷重計36、シャットハイト調整装置37(図2参照)を備える。
スライド18は、アップライト22に設けられたガイド19により、上下方向に進退可能に支持される。スライド18の下部には複数の上金型31が固定される。複数の上金型31と複数の下金型32とは、互いに対応して組をなすととともに、それぞれ装置の左右方向に沿って配列されており、それぞれ組をなすものと上下に対向している。スライド18が下降することで、上金型31と下金型32とが近接し、これらの間で被成形物が鍛造成形される。なお、スライド18が進退する方向は特に制限されないが、本実施形態では、上下方向に進退するものとして説明する。
上金型31と下金型32の近傍には搬送機器40が設けられている。この搬送機器40は、上金型31と下金型32とが離間したときに、一列に配列された複数組の上金型31と下金型32に対して、被成形物を順次搬送する。
モータ11は、ベルト11aを介してフライホイール12に連結され、その動力によりフライホイール12を回転させる。クラッチブレーキ13は、フライホイール12と伝動軸14との連結及び連結解除の切り替えと、伝動軸14の制動とを行う。クラッチブレーキ13によりフライホイール12と伝動軸14が連結されると、フライホイール12の回転運動が伝動軸14、減速機15、エキセン軸16の順に伝達された後に、コンロッド17を介してスライド18の並進運動に変換されて、スライド18が上下方向に進退する。
この図に示すように、プレス装置1は、装置本体100の動作を制御する制御装置50を備える。
制御装置50は、表示部54、警報部51、記憶部52、制御部53を備える。
警報部51は、装置本体100の異常を報知する警報出力を行うものである。その警報態様は特に限定されず、例えば、表示部54に警報表示を出力させたり、図示しないスピーカーから警報音声を出力させたりする。
負荷異常検知プログラム520は、後述の負荷異常検知処理(図3参照)を実行するためのプログラムである。
続いて、スライド18の負荷異常を検知する負荷異常検知処理について説明する。
図3は、負荷異常検知処理の流れを示すフローチャートであり、図4は、後述する負荷F、負荷上昇率dF、負荷上昇変化率d2Fの時間変化の一例を示すグラフである。
この負荷異常検知処理は、例えばプレス装置1の運転開始に伴って、制御部53が記憶部52から負荷異常検知プログラム520を読み出して展開することで実行される。
具体的に、制御部53は、移動量計測器35からの出力に基づいてスライド位置Sを計測するとともに、各荷重計36からの出力に基づいて負荷Fを計測し、これらを記憶部52に記憶させる。
具体的に、制御部53は、負荷Fをスライド位置Sで1回微分して負荷上昇率dFを算出するとともに、2回微分して負荷上昇変化率d2Fを算出し、これらを記憶部52に記憶させる。
なお、このステップでは、負荷上昇率dF及び負荷上昇変化率d2Fの少なくとも一方が算出されればよい。
ここで、閾値の設定は特に限定されず、例えば上限の閾値だけが設定されてもよい。本実施形態においては、予め実施された試験運転により、正常な負荷パターン(波形)が実測により取得され、この負荷パターンに基づいて、負荷F、負荷上昇率dF、負荷上昇変化率d2Fの各々における上限閾値と下限閾値とが予め設定されている。ただし、負荷パターンは実測でなくシミュレーションで予め取得してもよい。いずれにしろ、予め負荷パターンを取得し、どのような現象(品質悪化の要因)が起こっているか事前に把握しておくことが望ましい。
例えば、負荷上昇率dFの変化を検知することで、負荷Fが比較的に小さい状況であっても、微妙な素材の変化も検知することができる。また、金型の損傷などにより負荷Fが減少する場合等には、負荷上昇率dFの変化を検知することで、たとえ負荷Fが上下限の閾値の範囲内であっても、異常を検知することができる。
さらに、負荷上昇率dFの変化を検知することで、より明確に負荷Fの変化を捉えることができる。
なお、このステップでは、負荷上昇率dF及び負荷上昇変化率d2Fの少なくとも一方を用いて負荷異常の検知が行われればよい。
このときには、検知内容(負荷F、負荷上昇率dF、負荷上昇変化率d2Fのいずれが閾値を超えたか)に応じて報知態様を変えてもよいし、当該検知内容に応じた緊急性での対応を採ってもよい。また、装置本体100は停止させずに異常発生の報知だけを行うこととしてもよい。
そして、例えば装置本体100の運転終了やステップS4での装置停止等により、負荷異常検知処理を終了させると判定した場合には(ステップS5;Yes)、制御部53は、負荷異常検知処理を終了させる。
以上のように、本実施形態によれば、スライド18に作用する負荷Fとスライド位置Sとが計測され、これらに基づいて、負荷Fをスライド位置Sで微分した負荷上昇率dFと、負荷Fをスライド位置Sで二回微分した負荷上昇変化率d2Fとの少なくとも一方が算出される。そして、この負荷上昇率dFと負荷上昇変化率d2Fとの少なくとも一方に基づいて、負荷異常が検知される。
これにより、負荷Fを監視する場合に比べ、精度良く異常を検知することができる。したがって、負荷Fの異常を好適に検知することができ、ひいては、製品の品質に及ぼすような負荷Fの異常も検知することができる。
上記実施形態では、負荷Fの異常検知をプレス装置1の運転中に随時行うこととしたが、少なくとも1つの所定の監視ポイントのみで負荷の異常検知を行うこととしてもよい。
この場合、例えば図4に示すように、負荷上昇率dFが極値をとるか、又は負荷上昇変化率d2Fがゼロとなるスライド位置Sを監視ポイントP1〜P3とすればよい。そして、この監視ポイントP1〜P3における負荷上昇率dFや負荷上昇変化率d2Fを算出して、当該監視ポイントP1〜P3における負荷の異常を検知すればよい。
このように、所定の監視ポイントのみで負荷の異常検知を行うことにより、プレス装置1の運転中に随時行う場合に比べ、計測・演算処理をシンプルにし、処理時間を短縮することができる。また、負荷上昇率dFや負荷上昇変化率d2Fに応じて監視ポイントが設定されるようにしておけば、例えば正常な負荷パターンを装置に読み込ませるだけで自動的に監視ポイントを設定することができる。
なお、負荷の異常検知を行う監視ポイントには、特定のポイントだけでなく、その前後近傍領域を含めてもよい。
また、図5に示すように、機械的な許容最大負荷に対する実負荷の裕度が最も小さくなるスライド位置Sの点を、監視ポイントP4としてもよい。この場合、偏心負荷も含めて許容限界に対する裕度が最も小さい点を、監視ポイントP4とすることが好ましい。これにより、機械的な許容限界に対して負荷F(トルク)が最も厳しいポイントにおいて、異常検知を行うことができる。
あるいは、ユーザが監視ポイントを任意に設定できることとしてもよい。この場合、例えば表示部54に正常な負荷パターンを表示させた状態で、ユーザがこの負荷パターン上の所望の点を監視ポイントとして選択すればよい。
また、監視ポイントはシミュレーションで求めた負荷パターンをベースに設定することとしてもよい。
そこで、シャットハイト調整装置37からシャットハイトの調整量を取得し、この調整量に応じた監視ポイントの変化を考慮して、当該変化した監視ポイントにおける負荷の異常を検知するのが好ましい。具体的には、例えば図7に示すように、運転当初には実線の負荷パターンであり、この負荷パターンの変曲点を監視ポイントとしていた場合に、時間の経過とともにシャットハイトの変化に伴って監視ポイントが徐々に図中の右側に移動していくことが考えられる。このときには、シャットハイト調整装置37から取得したシャットハイトの調整量に応じた監視ポイントの変化を考慮して、そのときの負荷、負荷上昇率及び負荷上昇変化率を当該監視ポイントでの上限及び下限の閾値と比較することにより、好適に負荷異常を検知することができる。
例えば、第1工程(潰し)、第2工程(粗仕上げ)、第3工程(仕上げ)の3工程が順次行われたときの第1工程での負荷F1、第2工程での負荷F2、第3工程での負荷F3、合計の負荷Ft、負荷Ftの負荷上昇率dF及び負荷上昇変化率d2Fを図8に示す。この図に示すように、負荷上昇率dF又は負荷上昇変化率d2Fが大きく変化して異常の可能性が疑われたときには、このときに負荷が最も大きく変動している工程に異常が発生している可能性が高い。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、スライド位置Sに基づいて負荷異常を検知することとしたが、このスライド位置Sに代えて、当該スライド位置Sに相当する位置パラメータを用いてもよい。このような位置パラメータは、例えば、エキセン軸16の回転角度や、これに対応する時間などである。
またこの場合、スライド18の移動量を計測する移動量計測器35に代えて、当該位置パラメータの計測手段(エキセン軸16の回転角度を用いる場合には、エキセン軸16の回転量(回転角度)を計測する回転量計測器)を設ける必要がある。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
16 エキセン軸
18 スライド
22 アップライト
35 移動量計測器
36 荷重計
37 シャットハイト調整装置
50 制御装置
53 制御部
100 装置本体
520 負荷異常検知プログラム
d2F 負荷上昇変化率
dF 負荷上昇率
F 負荷
P1〜P4 監視ポイント
S スライド位置
Claims (10)
- 所定のプレス方向に進退可能なスライドと、
前記スライドに作用する前記プレス方向の機械的な負荷を計測する負荷計測手段と、
前記プレス方向における前記スライドの位置に相当する位置パラメータを計測する位置パラメータ計測手段と、
前記負荷計測手段が計測した負荷と、前記位置パラメータ計測手段が計測した位置パラメータとに基づいて、負荷を位置パラメータで微分した負荷上昇率と、負荷を位置パラメータで二回微分した負荷上昇変化率との少なくとも一方を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した負荷上昇率及び負荷上昇変化率の少なくとも一方に基づいて、負荷の異常を検知する負荷異常検知手段と、
を備える、
プレス装置。 - 前記負荷異常検知手段は、前記算出手段が算出した前記負荷上昇率及び負荷上昇変化率の少なくとも一方が、予め設定された上限閾値及び下限閾値の範囲内から外れた場合に、負荷異常が発生したと判定する、
請求項1に記載のプレス装置。 - 負荷の異常検知を行う少なくとも1つの前記位置パラメータを監視ポイントとして設定する監視点設定手段を備え、
前記算出手段は、前記監視ポイントにおける前記負荷上昇率及び負荷上昇変化率の少なくとも一方を算出し、
前記負荷異常検知手段は、前記算出手段が算出した前記負荷上昇率及び負荷上昇変化率の少なくとも一方に基づいて、前記監視ポイントにおける負荷の異常を検知する、
請求項1又は請求項2に記載のプレス装置。 - 前記監視ポイントは、前記負荷上昇率が極値をとるか、又は前記負荷上昇変化率がゼロとなる前記位置パラメータの点である、
請求項3に記載のプレス装置。 - 前記監視ポイントは、前記負荷上昇率が変曲点となるか、又は前記負荷上昇変化率が極値をとる前記位置パラメータの点である、
請求項3又は請求項4に記載のプレス装置。 - 前記監視ポイントは、機械的な許容最大負荷に対する裕度が最も小さくなる前記位置パラメータの点である、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のプレス装置。 - シャットハイトを調整するシャットハイト調整手段を備え、
前記負荷異常検知手段は、前記シャットハイト調整手段による前記シャットハイトの調整量に応じた前記監視ポイントの変化を考慮し、当該変化した前記監視ポイントにおける負荷の異常を検知する、
請求項3から請求項6のいずれか一項に記載のプレス装置。 - 前記負荷異常検知手段により負荷異常が発生したと判定された場合に、当該プレス装置を停止させる装置停止手段を備える、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプレス装置。 - 所定のプレス方向に進退可能なスライドを備えるプレス装置の負荷異常検知方法であって、
前記プレス装置の制御手段が、
前記スライドに作用する前記プレス方向の機械的な負荷を計測する負荷計測工程と、
前記プレス方向における前記スライドの位置に相当する位置パラメータを計測する位置パラメータ計測工程と、
前記負荷計測工程で計測された負荷と、前記位置パラメータ計測工程で計測された位置パラメータとに基づいて、負荷を位置パラメータで微分した負荷上昇率と、負荷を位置パラメータで二回微分した負荷上昇変化率との少なくとも一方を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された負荷上昇率及び負荷上昇変化率の少なくとも一方に基づいて、負荷の異常を検知する負荷異常検知工程と、
を実行する、
プレス装置の負荷異常検知方法。 - 所定のプレス方向に進退可能なスライドを備えるプレス装置の負荷異常検知プログラムであって、
前記プレス装置の制御手段を、
前記スライドに作用する前記プレス方向の機械的な負荷を計測する負荷計測手段、
前記プレス方向における前記スライドの位置に相当する位置パラメータを計測する位置パラメータ計測手段、
前記負荷計測手段が計測した負荷と、前記位置パラメータ計測手段が計測した位置パラメータとに基づいて、負荷を位置パラメータで微分した負荷上昇率と、負荷を位置パラメータで二回微分した負荷上昇変化率との少なくとも一方を算出する算出手段、
前記算出手段が算出した負荷上昇率及び負荷上昇変化率の少なくとも一方に基づいて、負荷の異常を検知する負荷異常検知手段、
として機能させる、
プレス装置の負荷異常検知プログラム。
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