JP2020170020A - 常温核融合装置、常温核融合による発熱方法および発熱体 - Google Patents

常温核融合装置、常温核融合による発熱方法および発熱体 Download PDF

Info

Publication number
JP2020170020A
JP2020170020A JP2020123285A JP2020123285A JP2020170020A JP 2020170020 A JP2020170020 A JP 2020170020A JP 2020123285 A JP2020123285 A JP 2020123285A JP 2020123285 A JP2020123285 A JP 2020123285A JP 2020170020 A JP2020170020 A JP 2020170020A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal
site
molecule
heating element
hydrogen storage
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020123285A
Other languages
English (en)
Inventor
児玉 紀行
Noriyuki Kodama
紀行 児玉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Publication of JP2020170020A publication Critical patent/JP2020170020A/ja
Priority to JP2021009701A priority Critical patent/JP2022007951A/ja
Priority to PCT/JP2021/014437 priority patent/WO2021206036A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E30/00Energy generation of nuclear origin
    • Y02E30/10Nuclear fusion reactors

Landscapes

  • Fuel Cell (AREA)

Abstract

【課題】Tサイト内D-にD+が移動する確率を高くし、フェムトD2分子の振動運動を持続させることで常温核融合を安定的かつ再現性良く実現できる新規な常温核融合装置、発熱方法および発熱体を提供する。【解決手段】常温核融合はTサイト内D-にD+が移動して((1)、(2))、そこでD2分子を形成し((3))、そのD2分子が金属格子からの圧力で縮小されてフェムトD2分子に遷移する((3)、(4))。このフェムトD2分子の伸縮振動で核子間最短距離が狭くなり核融合する((4)、(5))。本発明は、重水素ガスを吸蔵した水素吸蔵金属(101)の表面電位を対向電極(102)により制御し、金属表面(101a)の自由電子濃度を低下させることで、核子間クーロン引力の自由電子による遮蔽を低減し、かつフェムトD2分子の振動速度の低下を抑え、核融合の確率を高くする。【選択図】図17

Description

本発明は常温核融合装置、その発熱方法および発熱体に関する。
フライシュマンとポンズ(Fleischmann and Pons)は、室温で核融合反応が発生するという衝撃的な論文を1989年3月に発表し世界中で注目を浴びたが、再現性の問題があり、当初、主流学会では認められなかった。それでも一部の研究者の地道な研究により現象の再現性が改善され、多くの実験事実の蓄積に基づいて、今では、常温核融合(Cold Fusion)や低エネルギ核反応(LENR:Low Energy Nuclear Reaction)等と呼ばれ、活発な研究が続けられている。
それにもかかわらず、常温核融合のメカニズムは解明されたとは言えず、理論的には昏迷状態が続いているのが現状である。これまでの実験結果から、重水素吸蔵率(D/Pd比)が体積平均で0.85を超すと過剰熱が発生し、指数関数的に増大することが分かっており(非特許文献1)、このことから、常温核融合には水素吸蔵合金の重水素密度が一定以上が必要であり、また種々の実験で、表面反応であることや、特に表面のナノサイズの構造が非常に重要であると考えられている(非特許文献1、非特許文献2)。
たとえば、特許文献1には、パラジウム等の金属粒子のサイズを1nm以下にすると、水素吸収量が急激に増大することが記載されており、ナノサイズの金属粒子を重水素環境下で加圧することで過剰エンタルピーを発生させる方法が開示されている。
また、特許文献2によれば、支持体としてジルコニア( Z r O ) を用い、この支持体にパラジウム(Pd)ナノ超微粒子を埋め込み、重水素( D ) を注入の後、加圧によりこれを吸蔵させることで核融合反応体(超高密度重水素化ナノ粒子)を調製する;次いで衝撃エネルギを核融合反応体に加えることにより核融合反応を行い、多量の発熱とヘリウムとを生成させたことが記載されている。
さらに、特許文献3によれば、水素吸蔵金属の表面にナノサイズの複数の金属ナノ凸部を形成することで「トンネル核融合反応の発生確率が上昇する」と説明されている。さらに特許文献3によれば、ヒータで加熱した反応体に重水素ガスを供給することで、反応体表面にある「金属ナノ粒子内に水素原子が吸蔵され、当該金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、トンネル核融合反応の起こる確率を上げる」と説明されている。
なお、一般に、「核融合」とは軽い元素同士が融合して重い元素に変換する発熱反応と定義されており、二重水素(D)と三重水素(T)とが反応するD−T反応、2つの二重水素が反応するD−D反応など種々の核融合反応が知られている。D−D反応では“灰”としてヘリウム(He)が生成されるが、Heが常温核融合で生成されるとする研究結果が出てきている(たとえば非特許文献3)。
「常温核融合」高橋亮人(電気学会雑誌、1993年12月号、113巻、pp.1016-1026) 「展望 低エネルギー核反応による新しい核エネルギーへの期待」 田中栄一(Isotope News 2013年1月号 No.705、pp.13-18) "Search for 4He Production from Pd/D2 Systems in Gas Phase" E. Botta et al.
米国特許第9182365B2号明細書 特開2008−261868号公報 国際公開第2015/008859号
しかしながら、上記特許文献に開示されたナノ構造は、ナノサイズの金属粉体であったり、プロセス条件でたまたま発生した金属粒子であったりするものであり、実用上、常温核融合の再現性や性能向上における不安定要因となる。
また、特許文献3には、反応体を加熱することで「金属ナノ粒子内に水素原子が吸蔵され、・・・トンネル核融合反応の起こる確率を上げる」と説明されているが、水素吸蔵金属を加熱して常温核融合を制御性良く再現することはできないと考える。次に述べるように、常温核融合を発生させるには金属格子内に閉じ込められたフェムト水素分子の振動エネルギを高く維持することが重要である。しかしながら、加熱ではそのエネルギー分布が広いために十分な制御性が得られない。また、金属内には自由電子が存在するために、加熱だけではフェムト水素分子の振動エネルギを高く維持できない。後述するように、高エネルギの陽イオンDを直接金属表面に導入することが最適といえる。
以下、図1を参照しながら、本発明者が提案する常温核融合発生のメカニズムについて説明し、上記背景技術が常温核融合を安定的に再現できない理由について詳細に説明する。
1.常温核融合の原理的説明
本発明者は常温核融合が次のようなプロセスで発生すると考える。なお、図1に示す金属格子内のTサイト、水素分子およびフェムト水素分子については後述する。
a)DとDの接近
金属表面の膨張した格子内の空間(Tサイト)に陰イオンDが入り、その近傍の陽イオン(Dの核子)Dと結合して重水素分子D2を形成すること(図1(A)および(B)参照)。
b)フェムトD2分子の形成
膨張したTサイトの金属格子が元のサイズに戻ろうとする応力を受けてD2が圧縮され、核子間が接近することで重水素分子D2がフェムト重水素分子(フェムトD2分子)に遷移する(図1(C)および(D)参照)。
c)フェムトD2分子の伸縮運動
フェムトD2分子がTサイト内の空間で安定的に伸縮振動する(図1(E)参照)。後述するように、Tサイト内接球の直径1Å、フェムト水素分子は大きさ6fm(femto meter)程度なので、フェムトD2分子はTサイト内でほぼ自由振動をする。その伸縮運動により核子間距離が非常に狭くなる可能性が高くなる。
d)核融合
フェムトD2分子の振動運動により核子間の最近接距離が十分狭くなったときに核融合を起こす(図1(E)および(F)参照)。
2.常温核融合のメカニズム
上記常温核融合のメカニズムについて、これまでの知見(参照文献1〜14)を参照しながら詳細に説明する。なお、参照文献1〜14は本項「発明が解決しようとする課題」の最後に列挙する。
2.1)水素原子の金属内での挙動
参照文献1によれば、パラジウム固体内に吸収された水素原子は金属格子の配列を乱すことなく格子中の間隙サイトを占める。たとえば、図2に示す面心立方格子(fcc)には正四面体間隙サイト(以下、Tサイトという。)と正八面体間隙サイト(以下、Oサイトという。)とがあり、水素原子は安定状態ではより広いOサイトを占め、それを経てTサイトに水素イオンが導入されると考えられる。つまり、最初に、より広いサイトであるOサイトに水素イオンが入り、周囲の原子を押し広げて結晶格子全体を膨張させる。そのために周囲のポテンシャルが変化して、このパラジウムと水素イオンの位置とその系のエネルギーが安定になるように水素イオンの位置が決定される。これが原因でOサイトの水素イオンがTサイトに入ることができるようになる。パラジウム格子内に侵入した水素原子は規則配列せずに固溶体を形成する。なお、最表面のTサイトにはD2が金属表面で乖離し、そのまま表面のTサイトに直接導入される経路もある。
参照文献2によれば、金属原子1個あたりのサイトの数は、fccおよび最密六方格子(hcp)ではOサイトが1個、Tサイトが2個であり、体心立方格子(bcc)ではOサイトが3個、Tサイトが6個である。水素化物の規則構造については、一般的に水素−水素原子間距離が0.2nm以下にはならないという経験則に従うことが分かっており、通常はこれらのサイトの一部だけが占有されている。
以下、図面を簡略化するために、金属格子内のTサイトの配置を図3のように模式的に示すものとする。すなわち、金属格子内のTサイトを形成する格子を三角形で示す。
図4は、金属表面のTサイトの配列を模式的に示したものである。後述するように、金属表面のTサイトを占有する二重水素(デューテリウム: D)が本発明の主役である。
参照文献5によれば、金属中に存在する水素の電子状態については、完全に水素原子は電子を放しH状態になるというプロトンモデルと、逆に電子を余分に1個取り込みH状態になるというアニオン・モデルの両者が従来は考えられていて、水素吸収による電気抵抗・帯磁率・電子比熱の変化などがその場に応じて都合のよい方のモデルによって説明されてきた。ところが、近年のSwitendickを開祖とする金属水素化物の電子構造の理論計算の結果によって、上記の2つのモデルはどちらも事実の一面だけを捕えていることに過ぎないことが判った。つまり金属中の水素はHであったりHであったりという二面性を持つと考えられ、本発明者は、それらが同時に金属内に存在できると考える。この仮説が成り立たないと常温核融合は成立しないし、水素吸蔵金属中の水素の研究結果から考えると妥当な仮説だといえる。
図5に示すように、水素原子Hの半径を1×10−10m=1Åとすれば、負に帯電したヒドリドHの半径は、電子がE以上の高いエネルギー準位を埋めているので、約2倍の2×10−10m=2Åとなる。言うまでもなく、図5は模式的に描かれており、実際には、水素原子核Hの荷電半径Rが0.87×10−15m=0.87fmであるから、Hの半径上の電子は水素原子核Hの半径Rを基準にすれば9万倍近く離れた位置にある。ちなみに、水素分子Hの原子核間距離rは0.74Åである。したがって、水素原子Hの半径1Åを考慮すれば、水素分子Hのサイズは〜2.74Å、D2のサイズも〜2.74Åとなる。
Tサイトのサイズは内接球が1Åなので、Tサイトには単一のDが収納できる程度である。ここにD2分子が入ると、Dと同じ大きさになって核子間隔がゼロになるはずであるが、実際は核子間のクーロン斥力が非常に大きいためにそのようにはならない。通常の水素原子では、その核子間クーロン斥力が非常に高く、核子間をfmオーダまで接近させることは困難であることが参考文献8で示されている。
2.2)水素原子の深い電子軌道
通常の金属格子からの応力では、核子間クーロン斥力がその応力より勝るので、核融合は発生しない。しかしながら、核融合が発生するためには、この核子間クーロン斥力が何らかの理由で想定より小さいと考えざるを得ず、その理由があるはずである。そこで、水素原子の電子軌道計算の精度、クーロン斥力計算の精度に何らかの問題があると考えた。
特に、核間距離がfmオーダでのクーロン力の計算を考えると、クーロン力はr=0で発散するのでr=0近傍の精度が低いはずである。これに関して文献調査を行ったところ、水素原子には深い電子軌道が存在することが理論的に予言されており、その実証が従来の物理学での課題となっていること、その深い軌道が常温核融合の原因であると考える先行文献を発見した(参照文献10、11、12など)。
核子間クーロン斥力の遮蔽は、水素原子の電子軌道がより深い軌道を持つと考えることで解決できる。核子間クーロン斥力遮蔽の観点から考えると、通常の水素分子では、その軌道電子の共有結合部分が核子間クーロン斥力を遮蔽する可能性はある。しかしながら、共有結合時の核子間距離が0.74Å=7.4x10−11m=74000fmの距離で、その軌道が1Å程度の範囲に広がっているとすれば、この核子間距離が数10fm程度になると、その軌道の広がりが核子間以外の部分にまである。このために、核子間距離が狭くなると核子間に電子が存在しなくなり、その共有結合電子の遮蔽効果は高々数分の一程度の遮蔽効果となって核融合を起こすまでの遮蔽効果を期待できない。
これに対して水素原子の深い電子軌道を考慮に入れると、深い軌道に電子をもつフェムト原子でフェムト水素分子を構成すると考えることができる。すなわち、図5に示す水素分子およびフェムト水素分子のサイズを参照すると、電子雲の広がりも数fm程度の範囲なので、核子間クーロン斥力をほぼ完全に遮蔽するということが理解できる。以下、深い電子軌道に関する文献内容を説明する。
水素(HあるいはD)の原子核の周りには電子の深い軌道の存在が理論的に知られており(参照文献6および7)、その半径rは約1.4fmであると計算されている。この深い電子軌道は、DDL(Deep Dirac Level)、DEO(Deep Electron Orbit)と略記されるが、本明細書ではDEOと記すものとする。後述するように、本発明者はDEOに遷移した電子が常温核融合の理解に必須であると考えるので、以下、深い電子軌道DEOについて図6および図7を参照して説明する。
上述したように、水素原子の電子軌道では深い軌道の存在が理論的に予測されていたが、水素原子の電子遷移スペクトルからはその軌道が実証されていなかったために深い軌道の存在は肯定はされていなかった。しかしながら、常温核融合が発生していることを考えると、この深い電子軌道の存在なしには常温核融合を説明できない。
図6を参照して、従来の量子力学的理論では、クーロンポテンシャルが核子間距離rに反比例するモデルを用いてシュレディンガー方程式を計算しており、r=0で特異点をもつ(図6の曲線5a・5b)。常温核融合には核子間クーロン斥力遮蔽が必要であるという理論的前提では、約15fmまで核子間を接近させる必要があると計算されている。
DEO理論は古くから、物理学会内で浮かんでは消えてゆくという過程を繰り返していたが、近年、r=0で特異点をもたない新たなモデルを採用することで新たな展開を見せ始めた(参照文献13)。このモデルでは、クーロンポテンシャルが、陽子内は一定電荷を有するものとして計算され、陽子外は1/rに比例するとモデル化される(図6の曲線5a・5c)。このモデルを用いて相対論的なシュレディンガー方程式を数値計算することで、上述した深い電子軌道DEOが算出される。具体的には、参照文献12のTABLE I.A(310ページ)に水素原子の相対論的シュレーディンガーレベルが計算されている。図7に示すように、参照文献12のTABLE I.Aには深い電子軌道DEO1〜DEO3の存在が計算結果として明らかに示されている。
DEO理論が広く認められていないのは、その軌道が水素の電子軌道遷移のスぺクトルで発見されていないためであるが、参照文献13では高出力レーザでその実験的な検証が計画されている。
2.3)ナノ金属粒子の水素吸蔵サイトの分析と「ナノ構造」の解釈
図8は金属格子内の2つの隣接するTサイトにそれぞれDとDとが入った状態を模式的に示している。パラジウムナノ粒子に吸蔵された重水素がOサイトおよびTサイトを占有するモデルについては参照文献3に記載されている。参照文献3では金属水素化物のナノサイズ化および表面効果の重要性が指摘されており、97ページ「4.Pdナノ粒子中の重水素原子位置」の項では、ナノ粒子のコア領域(内部領域)ではOサイトのみ、シェル領域(外皮領域)ではOサイトおよびTサイトの両方にD原子が占有されるモデルが最も信頼性が高いと結論づけられている。また、このモデルによれば、吸蔵された重水素の約1/3はTサイトを占有している。さらに、D原子(Tサイト)の原子変位パラメータBD(T)が異常に大きい値(14.1Å)を示すのは、Tサイト(1/4, 1/4, 1/4)からわずかにずれた位置にいくつかの安定サイトがあり、D原子がこれらのサイト間でdisorderしているため、と推測されている。これらは、表面Tサイトが応力緩和しやすくその位置がずれることに対応していると考える。
参照文献2によれば、金属格子中に水素原子が1個入ると、隣接した水素原子と金属原子の間に斥力ポテンシャルが働き、全系のエネルギが高くなる。他方、金属原子が水素原子から遠方に押しやられる変位(格子の膨張)による基底エネルギーの減少と、ほぼ原子の変位の2乗に比例する格子歪みエネルギ増加とのバランスにより全系のエネルギを最小にする原子の変位が決まる。これにより、水素の固溶により水素原子周囲の金属原子が膨張する。膨張する体積の大きさは金属と格子間位置の種類によって異なるが、遷移金属であればほぼ一定で0.0026±0.0005nmの範囲に入ることが分かっている。
上述したDのサイズとTサイトのサイズを考慮すると、DがTサイトに入りにくいが、実際は、金属表面では上側に金属原子がないために、TサイトにDが入っても応力緩和が可能であり、そのため格子が膨張して空隙が広くなる。言い換えれば、格子の膨張による系のエネルギの増加が少ないので膨張幅が大きくなり、バルクよりも表面のTサイトにDが入りやすくなる。これが常温核融合が表面反応たる理由である。
しかしながら、Dが入ったTサイトと隣接するTサイトに同様のDが入るとは考えにくい。Dが入って一方の格子が膨張すると、その隣接Tサイトは狭くなるからである。したがって、図8に示すように、隣接するTサイトの一方に大きなDが入ると、他方には小さなDが入りやすくなるはずである。隣接するTサイトにDとDが入ることで、ナノ構造における凝集系クラスタの元となる構造が形成される。特許文献3や学会の共通認識では、常温核融合は表面反応であり、核融合が発生している場合、SEM(走査顕微鏡)観察では電極に凹凸が観察されている場合が大半であるから、これらの凹凸などの「ナノ構造」で核融合が発生していると認識されている。すなわち、正負(DとD)の両方のイオンが隣接するTサイトに存在すること、これが常温核融合を発生させる基本的な「ナノ構造」である。なお、OサイトのDが移動することも否定はしえないが、上記説明が可能性としては高いと考える。ここで核融合が起こるためには、Tサイト内のD2分子がフェムトD2分子に遷移することで発生する。
なお、凹凸などが製膜プロセスにおいて作成されたナノ構造を括弧付き、すなわち「ナノ構造」と記し、制御されたプロセスで作成したナノ構造を括弧なしで記して区別するものとする。
2.4)金属内の自由電子の影響
隣接するTサイトにDとDが入るとクーロン力により両者が引き合うので、たとえば熱励起によりポテンシャルを超えて小さなDが大きなD側へ移動すれば核融合が発生する確率が高くなると考えられる。しかしながら、実際には、必ずしも、そのようにはならない。その理由は、金属内の自由電子の存在がクーロン力を遮蔽するように作用するからである。以下、金属内の自由電子の影響について図9を参照しながら説明する。
参照文献4によれば、金属を自由電子の海のように近似するジェリウムモデルを用いて、金属中に水素を入れた時のH−H間距離に対するエネルギの変化が図9のグラフで示されている。すなわち、電子密度が小さい(rが大きい)Naでは2つのHは結合状態であるが、電子密度が大きい(rが小さい)Alでは2つのHは全ての距離で反発しあい原子状になっている。この理由は、金属の伝導電子がH分子の反結合軌道に入り、結合を切るからである。さらに、金属中ではプロトンの電荷がわずか0.6Åで遮蔽されることも記載されている。この理由は簡単で、その狭い空間には計算上、自由電子数はゼロになるからである。
このように、金属内の自由電子の存在はクーロン力を遮蔽するように作用するために、たとえ図8に示すように隣接するTサイトにDとDとがそれぞれ入ったとしても、DがD側へ移動しにくいので、核融合を起こす確率は低下する。
本発明者は、以上の知見に基づいて、金属表面のナノ構造において常温核融合を生じさせるには、少なくとも金属表面の自由電子を減少させることが必要であると結論した。さらに、金属表面の自由電子は、後述するD−D間振動運動の抵抗力になるために、その速度が減速させる効果があり、核融合確率が低下する原因となりうる。この観点からも金属表面の自由電子を減少させることが必要であると結論した。
2.5)ホッピングによる水素イオンの移動
図8に示すように水素吸蔵金属の表面にDとDがそれぞれ入った隣接Tサイトが生成されているものとする。この状態で、加熱によりDが熱励起すると、DはDの存在する隣接Tサイトへホッピングにより移動する。これによりTサイト内に閉じ込められたDとDとが結合してD2ガス状の凝集系クラスタを形成する。
このように、DがDの存在する隣接Tサイトへホッピングにより移動することが常温核融合に関する重要なパラメータである。このホッピング確率は、DとDとの間のクーロン引力がポテンシャル障壁を低下させることで高くなる。つまり、常温核融合を効率的に発生させるためには、このクーロン引力を大きくすることが重要である。しかしながら、従来の常温核融合炉では、金属表面に電子が誘導されて自由電子密度が金属表面で高くなる場合があり、この自由電子の存在がDとDとの間のクーロン引力を遮蔽して常温核融合確率が低くなるという課題があった。
2.6)共有結合によるD2分子の形成
図10に模式的に示すように、DがDの隣接Tサイトへホッピングすると、そのTサイト内で接近して共有結合を形成する。
図11において、DにDが十分近くなると、DはDのS核電子を共有する状態になり、DとDとの間の電子雲1を共有する共有結合的な構造となる。Dの正電荷とDの負電荷とを考えると、本来的に共有結合的な状態を取るはずである。すなわち、DとDとの間で共有結合によりD2分子が形成されると、その結合は引力2となり、DとDとの間に共有されている電子雲1は、両方の原子核に対して、水素原子核間のクーロン斥力に対するクーロン遮蔽の効果を発揮し、D側の原子核にDの原子核が極めて近距離に接近するまで共有結合の軌道は維持される。
しかしながら、図5に示す水素分子(H)のサイズから分かるように、核子間隔が数10fm程度の接近すると、上述したように核子間の電子がなくなり、核子間クーロン斥力を十分に遮蔽できなくなる。そこで、本発明者は、核子間クーロン斥力の完全な遮蔽にはフェムトD2分子の存在が不可欠であると考えた。以下、本発明者による理論的考察を詳細に述べる。
2.7)フェムトD2分子の形成
従来では、上述した図6の曲線5aおよび5bに示すように、静電的斥力は原子核距離が小さくなると急激に増大すると考えられてきた。たとえば、2個の原子核が融合するためには、トンネリングで核融合する可能性が高くなる程度の距離〜10fm程度まで、クーロン力に逆らって2個の原子核を近づけなければならない。そのために必要なエネルギは0.1MeV(10eV)程度である。このために、本発明者は、当初、プロトン同士の相互作用を全てn=1軌道のクーロン遮蔽を行う方向で常温核融合の原理であると考察していた。なお、上述したように、曲線5a、5bはプロトンを点電荷として扱っているために、核子間距離r=0で発散してしまうが、核子内部が均一に帯電した球として扱うことで発散を回避できる。この結果が、図5の曲線5cである。
しかしながら、図5に示す水素分子(H)のサイズから分かるように、n=1の電子軌道はÅ程度と非常に大きいために、核子間を15fm程度まで接近させることはできない。したがって、より効率的に核子間クーロン斥力を遮蔽するためにはその電子分布がより小さく、fm程度になっている必要がある。この点について過去の研究結果を調査したところ、原子にはより深い軌道が存在する可能性があるという理論が議論されていることを発見した(参照文献10、11、12)。このより深い軌道(DEO)がフェムト原子、フェムト分子の存在を理論的に示しており、その研究者等もフェムト原子が常温核融合の原因となっていることを主張している。
本発明者は、金属格子内のTサイト内に閉じ込められたD2が常温核融合を起こすまでの過程を次のように考える。
a) Tサイト内でDとDとが共有結合的な状態(D2分子)になると、共有結合の性質上、核子間が引き合うような引力2が発生し、金属格子から圧縮応力を受けて縮小する。さらにDEOの理論的考察から、距離数10fm以内になると、電子がn=1の軌道からDEO軌道(n=0)に遷移し、D2分子がフェムトD2分子に遷移する。
b) Tサイト内に閉じ込められたフェムトD2分子が伸縮振動することでd−d間の距離が最短から最長の間で変化する。これにより、d−d間距離の最短時にトンネリングが発生し、それによって核融合が発生する確率が高くなる。
以下、金属格子のTサイト内に閉じ込められたDとDとがどのような力を受けて核融合に至るかを詳しく説明する。
<金属格子からの圧縮応力>
まず、Tサイトの金属格子は4個の金属原子に囲まれた立体構造を有し、その中にDとDとの共有結合D2が形成されているものとする。すでに述べたように、Tサイトの金属格子が膨張して、その中にDが入っているので、金属原子が四面体の中心に向かって正四面体を縮小するような、変位の二乗に比例する復元力がD2にかかると考えられる。
そこで、図12に示すように、Tサイト金属格子とそこから受ける圧縮方向の力を模式化して表すものとする。すなわち、4つの金属原子11〜14で囲まれたTサイト15内にD2が閉じ込められており、破線で示す金属原子14は紙面に垂直方向の手前に位置する。図12では、D2には3つの金属原子11、12および13から3方向の圧力Fが掛っている様子が図示されている。
Tサイトはもともと内接球の直径が1Å(オングストローム)程度の狭い空間である。これに対してTサイトを占有するDのサイズは図5のHが示すようにもともとの直径が4Å程度と大きい。したがって、DはTサイトの金属格子を押し広げた状態で占有していると考えられ、この状態で、上述したように、隣接TサイトからDが移動してDに接近し共有結合D2を形成する。D2のサイズは図5のHが示すようにほぼ1Å×2.74Åであるから、D2もTサイトの金属格子を押し広げた状態で占有していると考えられ、したがって金属格子から応力Fを受けているはずである。この応力Fが図13に例示するようにD2を縮小する原因と考える。
図13(A)に示すように、Tサイトの異なる方向から圧力Fを受けることで、D2の核子間はクーロン斥力により反発しても物理的に圧縮される。すでに述べたように、金属格子中に水素原子が1個入ると隣接した水素原子と金属原子の間に斥力ポテンシャルが働くために、全系のエネルギが高くなる。格子の膨張による基底エネルギの減少と、ほぼ原子の変位の2乗に比例する格子歪みエネルギ増加のバランスとにより全系のエネルギを最小にする原子の変位が決まる。つまり、このシミュレーションで核子間ポテンシャルをいれて計算すると核子間距離がどの程度まで近くなるかを知ることができる。
図13(B)に示すように、Tサイトの異なる方向から圧力Fを受けることでD2の核間距離は縮小する。より詳しくは、次のように説明することができる。図13(A)において、金属原子11〜14はD2に接近する方向に3次元的に縮小する。下側の3つの金属原子11、12および13はそれぞれD2へ向けて縮小し、D2はその上に乗り上げる状態となるが、D2の上側にある金属原子14もD2へ向けて移動するので、D2は上側への移動が妨げられる。これによりD2の核子間隔d−dはTサイト内で極めて小さくなる。
参照文献8によれば、一般的にはd−d間隔は15fm程度まで接近することが理論上要求されているが、金属内の応力でd−d間隔をこの程度まで接近させることはできないとされている。なぜならば、この核子間斥力の値は概算で1x10−6Nであるが、Pd原子の弾性定数はこの値に比して2桁小さいからである。しかしながら、膨張したTサイト内に封じ込められたD2分子は、上述したように共有結合が核子間クーロン斥力を遮蔽し、さらに次に述べるようにDEO電子の存在が核子間クーロン斥力を完璧に遮蔽する。これによりポテンシャルが小さくなり、d−d間距離10fm程度まで容易に縮小すると考えられる。このように、膨張したTサイトがもともとのサイズ(1Å)まで縮小すると、理論的にD2分子は図5に示す大きさのフェムトD2分子に遷移すると考えられる。
2.8)DEO電子によるクーロン斥力の遮蔽
以下、図14〜図16を参照してDEO電子によるクーロン斥力の遮蔽について説明する。
参照文献10、11および12によれば、水素原子(DあるいはH)の深い電子軌道が常温核融合の理解に重要であると指摘されている。また、上述したように、図7における参照文献12のTABLE I.A(310ページ)には深い電子軌道DEOの存在が計算結果として明らかに示されている。
通常、深い電子軌道に電子は存在しないが、参照文献7によれば、DEOに電子が入ると、安定的に留まることが示されている。図14は参照文献7の11ページにあるFig.4と同じグラフである。図14において、横軸は陽子(半径R=0.87fm)の中心からの距離(すなわち半径)ρであり、縦軸はエネルギである。図14に示すように、ρ>26.5pmのゾーンと1fm<ρ<2.8fmのゾーンではポテンシャルエネルギが運動エネルギより大きくなっている。DEOは1fm<ρ<2.8fmのゾーンにあるので、DEOに入った電子は安定的に留まることが分かる。すなわち、DEOに電子が遷移すると、図4で説明したように、半径約0.87fmの陽子は半径約1.4fmのDEO電子に覆われ、ひとつの原子の構造(以下、フェムト原子という。)となる。参照文献6によれば、DEO電子は光速に近い速度で移動しており、また陽子がDEO電子で覆われることで全体を一つの「中性子」のように扱うことができるので、DEO電子はクーロン斥力を非常に効率よく遮蔽することができると指摘されている。このクーロン遮蔽は次のように説明することができる。
参照文献9によれば、空洞内に閉じ込められたD2分子は金属格子の振動により振動していると考えられ、空洞内の振動が図15に示すようにモデル化されている。狭い空洞内では、図15の矢印で示す伸縮振動成分のみが発生し、縮んだときにd−d間隔が一定値より狭くなり得る。空洞を形成する金属原子の重量はDと比べて大きいので、金属格子に振動エネルギが散逸するには長時間を要する。したがって、狭い空洞内で振動運動が継続し、それによってd−d間隔が小さくなる回数が多くなる。
図16に模式的に示すように、Tサイト内に閉じ込められたD2分子が振動し、それぞれの核子が接近するものとする。参照文献6によれば、核子が接近すると、DEOに遷移した電子が系全体のエネルギを最小にするように再分布する。すなわち、2つの陽子の向かい合った側でそれぞれのDEO電子の密度が大きくなり、さらに、参照文献7で導出されているように距離が2.8fmより小さくなるとフェムト原子の共有結合状態が形成されると考えられる。このようにフェムトD2分子が形成されると、図11で説明したメカニズムにより核子間クーロン斥力の遮蔽効果が顕著に現れる。こうしてDEO電子によりクーロン斥力が完全に遮蔽される。
2.9)フェムトD2分子の伸縮振動
フェムトD2分子は、図5に示すように、その幅が6fm(6x10−15m)程度に小さくなる。Tサイトの大きさは1Å(10−10m)程度なので、フェムトD2分子はTサイトに比較して遙かに小さい。したがって、フェムトD2分子に遷移した後は、フェムトD2分子の振動運動のエネルギが高くなるに従ってd−d間の最接近距離が小さくなり、その最接近状態が伸縮振動により複数回繰り返されることとなる。DEO電子によりクーロン斥力が完全に遮蔽されているので、図6の曲線5dに示すように、従来の説明より遙かに小さなエネルギを与えることで核子間がトンネリングするほどに近接することができ、その結果、核融合発生の確率が大幅に向上する。
したがって、核融合の発生確率を高くするには、D2分子の振動エネルギを高くすることが好ましい。そのために、Dをイオン注入で導入すると核融合確率が高くなるという利点がある。特許文献3に記載されたような基板温度を上昇させる方法では振動エネルギを高くすることに限界があり、核融合の発生確率を十分に高くすることができなかった。
基板温度を高くしてホッピングを起こす場合は、そのDのエネルギが熱分布に従うために、高エネルギのDの割合が小さく、大部分が低エネルギのDである。このためにフェムト水素分子の運動エネルギーが低い値に分布して、核子間間隔が十分狭くなるまでのエネルギに達しにくく、核融合を起こす確率が低くなる。つまり高エネルギDを直接金属表面に導入するイオン注入法が最適といえる。
3.常温核融合発生のプロセス
以上まとめると、図5に示すフェムト水素分子については、DEOの理論的考察から、核子間隔が数10fm以内に近接すると、電子がn=1軌道からDEO軌道(n=0)に遷移する。さらに、参照文献7に理論的に導出されているように、核子間が2.8fmより小さくなると、水素分子からフェムト水素分子へ遷移すると考えられる。この理論的考察は自由なフェムト水素分子についてだが、実際にはDイオンで拡張したTサイトにDが入って、そこで水素分子を形成し振動運動する。そのTサイトは本来のサイズ(内接径〜1Å)まで縮小する応力があり、その縮小応力が水素分子間の斥力よりは高い範囲で水素分子は縮小される。これによって、Tサイト内のD2分子がフェムトD2分子に遷移する。
フェムトD2分子はTサイトの本来のサイズ(〜1Å)よりも小さく、Tサイト内で安定した振動運動をする。この振動運動が大きな場合に核子間がトンネリングするほど近接し核融合が発生するので、そのフェムトクラスタ分子の運動エネルギが高いことが重要である。
4.課題
以上詳細に説明したように、常温核融合を発生させるには、
・DとDとを金属格子内の狭い空間(Tサイト)に閉じ込めること、
・Tサイトの縮小によりD2分子がフェムトD2分子へ遷移すること、
・Tサイト内でフェムトD2分子の振動エネルギが高く維持されること、
が重要であり、特に核融合発生確率を高くするにはフェムトD2分子の振動エネルギを高く維持することが重要である。
しかしながら、上述したように金属内には自由電子が存在するために、Tサイト内でフェムトD2分子の振動エネルギを十分に高く維持することができない。特許文献3に記載された加熱方法では振動エネルギを十分に高く維持するには制限がある上に、エネルギ分布が広いために十分な制御性が得られない難点がある。
また、核融合を継続的・安定的に発生させるためには、水素分子、水素イオンの濃度を一定値以上に保つ必要がある。しかしながら従来例では基板温度が数百度と高いために水素分子、水素イオンが外方拡散する。そこで、従来例では水素吸蔵金属内の水素濃度を一定値以上に保持するために真空チャンバにガス状態の水素で供給しており、基板面での濃度分布、温度分布を補正できないという課題があった。
そこで、本発明の目的は常温核融合を安定的かつ再現性良く実現できる新規な常温核融合装置、発熱方法および発熱体を提供することにある。
<参照文献>
(1)「パラジウムによる水素吸収と水素化反応」有賀哲也(日本表面科学会誌「表面科学」Vol.27, No.6, pp.341-347, 2006、公益社団法人 日本表面科学会発行)
(2)「中性子散乱による原子・分子のダイナミクスの観測」大友季哉、池田一貴(日本アイソトープ協会学術誌「RADIOISOTOPES」Vol.63, No.10, pp.489-500, Oct 2014、公益社団法人 日本アイソトープ協会発行)
(3)「パラジウムナノ粒子の特異な水素吸蔵」秋葉宙、古府麻衣子、山室修(日本中性子科学会誌「波紋」Vol.27, No.3, pp.95-98, 2017、日本中性子科学会発行)
(4)「金属における吸着水素と吸蔵水素の電子状態と反応性」福西快文、波田雅彦、中辻博(触媒学会会誌「触媒(Catalysits and Catalysis)」 Vol.33, No.4, pp.270-277, 1991、一般社団法人 触媒学会発行)
(5)「金属水素化物の応用物性」山口益弘(水素エネルギー協会(HESS)協会誌「水素エネルギーシステム」1986 vol.11, No.2, pp.30-41)
(6)A. Meulenberg and K.P. Sinha,“Deep-electron Orbits in Cold Fusion” Journal of Condensed Matter Nuclear Science 13 (2014) pp. 368-377
(7)Jean-Luc Paillet and Andrew Meulenberg,“Highly relativistic deep electrons and the Dirac equation”(22nd International Conference on Condensed Matter Science ICCF-22, at Assisi (Italy), September 8-13, 2019)
(8)「「常温核融合」昨今」深井 有(日本物理学会誌 Vol. 48, No. 5, 1993, pp.354-360)
(9)Jozsef Garai “Physical Model for Lattice Assisted Nuclear Reactions”
(https://vixra.org/pdf/1901.0262v2.pdf)
(10)J. L. Paillet and A. Meulenberg, “Relativity and Electron Deep Orbits of the Hydrogen Atom” Journal of Condensed Matter Nuclear Science 21 (2016) pp. 40-58
(11)J. L. Paillet and A. Meulenberg, “Arguments for the Anomalous Solutions of the Dirac Equations”Journal of Condensed Matter Nuclear Science 18 (2016) pp. 50-75
(12)Jaromir A. Maly and Jaroslav Vavra,“Electron Transitions on Deep Dirac Levels I”FUSION TECHNOLOGY Vo. 24, Nov. 1993, pp. 307-318
(13)Andrew Meulenberg and Jean-Luc Paillet“Nature of the Deep-Dirac Levels” Journal of Condensed Matter Nuclear Science 19 (2016) pp. 192-201
(14)X.P.Zhang, C.B. Fu and D.C.Dai“Experimentally Study the Deep Dirac Levels with High-Intensity Lasers” Nuclear Experiment (arXiv:1703.07837 Submitted on 22 Mar 2017 (v1), last revised 24 Mar 2017 (this version, v2))
本発明の第1の形態によれば、常温核融合装置が、反応炉内に水素吸蔵金属からなる発熱体と前記発熱体に対向して設けられ前記発熱体の表面電位を制御するための対向電極とを有し、重水素ガスを吸蔵した水素吸蔵金属の表面電位を前記対向電極により制御し、前記発熱体の表面に重水素イオンDあるいは重水素ガスを供給することで常温核融合を発生させ、前記発熱体を発熱させる。
本発明の第2の形態によれば、発熱方法が、重水素ガスを吸蔵した水素吸蔵金属の表面電位を制御し、前記水素吸蔵金属の表面に重水素イオンDあるいは重水素ガスを供給する、ことで常温核融合を発生させる。
本発明の第3の形態によれば、発熱体が、金属層上に形成され、当該金属層と電気的に接続された複数のナノ構造体からなり、前記ナノ構造体が水素吸蔵金属からなり、重水素ガスを吸蔵した前記ナノ構造体の表面電位を制御し、重水素イオンDあるいは重水素ガスが供給されることで常温核融合を発生させる。
本発明の上記第1〜第3形態によれば、発熱体あるいは水素吸蔵金属の表面電位を制御することで、吸蔵された重水素イオンDと供給された重水素イオンDとの結合を容易にし、核融合の確率を向上させることができる。
特に、水素吸蔵金属の表面電位を表面電子濃度が低下する方向に低下させることが望ましい。これによって、DとDとの結合を容易にし、結合されたD2分子の振動およびフェムトD2分子の振動を高いエネルギで持続させて核融合の確率を高めることができる。
さらに、重水素イオンDあるいは重水素ガスを発熱体の表面に対して注入することが望ましい。重水素イオンDの注入エネルギーを調節することで、そのTサイト内D2分子、フェムトD2分子の振動エネルギを高く設定することができ、核融合の確率をさらに高めることができる。
以上述べたように、本発明によれば、発熱体あるいは水素吸蔵金属の表面電位を制御することで常温核融合の発生確率を向上させることができ、常温核融合を連続的、安定的かつ再現性良く実現できる。
金属格子内で発生する常温核融合の過程を説明するための模式的状態遷移図である。 金属格子におけるOサイトおよびTサイトを示す図である。 図2に例示するTサイトの配置を模式的に示す図である。 金属表面における金属格子中のTサイトの配列を模式的に示す図である。 水素、水素イオンおよび水素分子のサイズを模式的に示す図である。 核子間距離と核子間で働く力との関係を模式的に示すグラフである。 水素原子に対する相対論的シュレディンガー方程式とディラック方程式の計算結果であって、相対論的シュレディンガーレベルのなかに深い電子軌道(DEO)の存在を示すテーブルである。 金属表面における金属格子中のTサイトに二重水素が入った状態を模式的に示す図である。 自由水素とジェリウムモデルでの水素における水素間距離に対する結合エネルギの変化を示すグラフである。 二重水素の陽イオン(D)が陰イオン(D)のある隣接Tサイトに引き込まれてD2分子を形成する過程を模式的に示す図である。 二重水素の陰イオン(D)に陽イオン(D)が引き込まれる様子を模式的に示す図である。 Tサイトの金属格子とその間の二重水素に働く力を模式的に示す図である。 Tサイトの金属格子に挟まれた二重水素を模式的に示す図(A)と、二重水素に働く力によりTサイトに入った二重水素が縮小された状態を模式的に示す図(B)である。 半径ρに対する運動エネルギおよびポテンシャルエネルギの変化を示すグラフである。 TサイトのDにDが注入されて二重結合の状態D2を形成した時のサイト内での振動状態を説明するための模式図である。 DEOの存在によりクーロン遮蔽が有効になることを説明するための電子分布の変化を示す図である。 本発明の第1実施形態による常温核融合装置の概略的構成と常温核融合発生過程を説明する模式図である。 図17において金属表面を正電位にした場合の金属表面の状態を説明する模式図である。 図17において金属表面を負電位にした場合の金属表面のTサイトでの二重水素イオン(D)の移動を説明する模式図である。 本発明の第2実施形態による常温核融合装置の概略的構成と金属表面のTサイトの状態を説明する模式図である。 図20に示す常温核融合装置におけるDの注入による常温核融合の発生を説明するためのTサイトの模式図である。 図20に示す常温核融合装置におけるD2ガスを吹き付けることで常温核融合の発生を説明するためのTサイトの模式図である。 の注入法による常温核融合の過程を模式的に示す図である。 本発明の第1実施例による常温核融合装置の概略的構成を示す図である。 図24に例示する発熱体における体積膨張のメカニズムを説明するための模式的断面図である。 本発明の第2実施例による常温核融合装置の概略的構成図である。 本発明の第3実施例による常温核融合装置の概略的構成図である。 本発明の第4実施例による常温核融合装置における発熱体の構造を模式的に示す図である。 図28に示す発熱体の製造方法を示す工程図である。 図29に続く発熱体の製造方法を示す工程図である。 本発明の第3または第4実施例による常温核融合装置の概略的構成を示す図である。 本発明の第5実施例による常温核融合装置の概略的構成図である。 本発明の第6実施例による常温核融合装置を用いたシステムの一例を概略的に示す図である。 図33に示す発熱体の構造の一例を模式的に示す図である。 図33に示す常温核融合装置の構成を模式的に示す図である。
本発明の実施形態によれば、水素吸蔵金属の表面電位を制御することで、金属格子内の狭い空間(内接球の直径が〜1Å程度)内でDとDとを結合させたD2分子の振動運動を維持することにより、水素吸蔵金属の表面で常温核融合を安定的に生じさせることができる。上述した考察に基づけば、以下の条件を満たすことで常温核融合を高い確率で生起させることができる。なお、金属格子内の狭い空間としては図3に示すTサイトが典型例であるが、これに限定されるものではなく、同程度の大きさの金属格子内の空間であってDを吸蔵して膨張しD2分子を縮小させる力が働く金属格子の空間であればよい。
(1)発熱体の金属表面がナノ構造あるいは「ナノ構造」であること。これによりDがTサイトに入りやすくなる。金属の表面ナノ構造において、Dの充填率が高い場合に常温核融合が起きる。つまり上述したようにD−がTサイトに入っている場合に起きる。たとえば水素吸蔵金属がパラジウムPdの場合、重水素吸蔵率(D/Pd比)が0.85を超すと発生する。ナノ粒子の場合はバルクの割合が小さく早期に重水素吸蔵率(D/Pd比)が高くなる。
(2)金属表面の電位制御により、少なくとも金属表面の自由電子を減少させること。ただし、金属表面の電位を正確に制御するには、金属表面が成膜プロセスで自然に形成される「ナノ構造」ではなく、制御されたナノ構造であることが望ましい。
(3)Dが存在するTサイト内にDを供給すること。これによりTサイト内に重水素分子D2を閉じ込め、Tサイトの縮小によってD2分子をフェムトD2分子に遷移させる。
(4)Tサイト内でフェムトD2分子が伸縮振動すること。これによりフェムトD2分子の核子間が周期的に接近して核融合の確率が向上する。すでに説明したように、フェムト陽子は、そのDEO軌道が非常に深いので(すなわちプロトン表面のfmオーダの近傍なので)、クーロン斥力遮蔽がほぼ完璧となり、実質的には中性子として扱える。したがって、このときのd−d間のDEO電子が核子間クーロン斥力を遮蔽し、核融合の発生確率を向上させると考えられる。図6のグラフを参照すれば、d−d間のDEO電子が核子間クーロン斥力を遮蔽することで、曲線5dに示すように、核子間距離d−dが2.8fm以下になってもクーロン斥力が抑制され、より小さなエネルギで核融合が発生し得る。
Tサイト内でのフェムトD2分子の伸縮振動のエネルギは、Dのイオン加速手段による運動エネルギにより制御可能である。上述したように、加熱による熱励起方法は十分な伸縮運動を生起させることができないので、イオン加速手段による方法が有利である。以下、本発明の実施形態および実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態によれば、水素吸蔵金属の表面電位を制御して少なくとも金属表面の自由電子の濃度を低下させることにより常温核融合を安定して効率的に発生させることができる。
1.1)構成
図17に例示するように、本発明の第1実施形態による常温核融合装置100は、発熱体としての水素吸蔵金属101と、水素吸蔵金属101に対して所定距離gを隔てて設けられた表面電位制御用の対向電極102と、水素吸蔵金属101に対して対向電極102が負電位となる電圧を印加する直流電源103と、を有し、水素吸蔵金属101が支持基板104上に積層されているものとする。また、水素吸蔵金属101の少なくとも表面を所定温度まで加熱する加熱手段としてヒータ105が設けられている。
水素吸蔵金属101の表面101aはナノ構造を有し、水素吸蔵金属としては、種々の材料、たとえばパラジウムPd、ニッケルNi等を用いることができる。
続いて、真空装置内に重水素ガスを流し、水素吸蔵金属101に重水素を吸蔵させる。これにより、上述したように水素吸蔵金属101の表面ナノ構造にDとDがそれぞれ入った隣接Tサイトが生成される。この状態で、対向電極102に対して水素吸蔵金属101より低い電圧を印加するとともに、水素吸蔵金属101を所定温度まで加熱する。加熱温度は、水素吸蔵金属101の種類により異なるが、少なくとも300℃以上、好ましくは500℃以上、さらに好ましくは600℃以上である。
対向電極102に負電圧を印加することで、金属内の自由電子が水素吸蔵金属101の表面側からバルク側へ移動し、水素吸蔵金属101の表面101aのナノ構造において電子の濃度が低下する。それに伴いDとDとの間のクーロン力を遮蔽する効果も低下するので、Tサイトを占有しているDは熱励起により隣接するTサイトのDへ容易に移動することができる。
TサイトにDとDが入ることで、図1で説明したメカニズムにより共有結合を通して核融合が発生すると考えられる。この核融合により、供給されたエネルギ(たとえばヒータ105および電源103により供給されたエネルギなど)を超える熱エネルギが発生すると考えられる。
1.2)表面電位制御
まず、比較例として図18を参照し、対向電極102を正電位にして対向電極102から水素吸蔵金属101の表面(ナノ構造)101aへ向かう電界Eを印加した場合を説明する。この場合、図18に示すように、金属内の自由電子は表面側へ移動し、隣接するTサイト間も自由電子101bに満たされた状態となる。これにより、金属101の表面近傍の電子濃度がバルク内より大幅に高くなり、隣接するTサイトを占有するDとDとの間のクーロン力が遮蔽される。参照文献4によれば、金属中ではプロトン間の距離がわずか0.6Åでクーロン力が遮蔽されるので、対向電極102に正電圧を印加した場合、Dが隣接するTサイトのDへ移動する確率は極めて小さくなる。
これに対して、図19に示すように、対向電極102の負電位にして水素吸蔵金属101の表面ナノ構造から対向電極102へ向かう電界Eを印加した場合、金属内の自由電子が水素吸蔵金属101の表面側からバルク側へ移動する。これにより、金属101の表面近傍のナノ構造の電子濃度がバルク内より大幅に低くなり、自由電子のクーロン引力の遮蔽効果が小さくなり、隣接するTサイトを占有するDとDとの間のクーロン力が十分大きくなる。本実施形態では水素吸蔵金属101は所定温度に加熱されているので、熱励起されたDがTサイト間の電位障壁をポッピングして隣接TサイトのDへ移動する確率が高くなり、それによって常温核融合の発生確率を高くすることができる。
1.3)効果
本実施形態によれば、発熱体表面の電位を制御して自由電子の濃度を低下させることでクーロン引力遮蔽を低減でき、それによって熱励起によりDが隣接TサイトへホッピングしてDと結合しやすくなり、Tサイト内にD2ガスを効率的に封じ込めることができる。すでに述べたように、Tサイト内のフェムト水素分子の伸縮運動において、核子間の距離が最接近した時の距離が核融合可能な位置まで縮まると核融合が生じると考えられる。ここで、フェムト水素分子の周辺に自由電子が存在すると、自由電子がフェムト水素分子の運動の抵抗となり、徐々に運動速度が低下して最接近時の間隔が遠ざかる。これに対して、Tサイト内のフェムト水素分子の振動が長期で継続すると、振動による核子間の最接近回数が多くなり、それによって核子間距離が核融合可能距離まで接近する確率も大きくなる。したがって、フェムト水素分子周辺の自由電子濃度を低減することは、常温核融合の発生確率を上げることになるという利点がある。
2.第2実施形態
本発明の第2実施形態によれば、金属表面のD−が入ったTサイトへ外部からD+を注入することで常温核融合を安定して効率的に発生させることができる。以下、D+の注入をトリガとする常温核融合装置および方法について詳細に説明する。
2.1)構成
図20に例示するように、本発明の第2実施形態による常温核融合装置200は、第1実施形態と同様に、発熱体としての水素吸蔵金属101と、水素吸蔵金属101に対して所定距離gを隔てて設けられた表面電位制御用の対向電極102と、水素吸蔵金属101に対して対向電極102が負電位となる電圧を印加する直流電源103と、を有する。 水素吸蔵金属101の表面101aはナノ構造を有し、水素吸蔵金属としては、種々の材料、たとえばパラジウムPd、ニッケルNi等を用いることができる。水素吸蔵金属101のナノ構造は、後述する既存の方法で形成することができる。より詳しい製法は後述する。
図21に例示するように、真空装置内に重水素ガスを流し、これにより水素吸蔵金属101の表面101aのTサイトにDが吸蔵されているものとする。続いて、対向電極102に負電圧を印加することで、金属内の自由電子を水素吸蔵金属101の表面側からバルク側へ移動させ、水素吸蔵金属101の表面101aのナノ構造での電子の濃度を低下させる。この状態で、重水素イオンDのビームを所定のエネルギ以上となる速度で水素吸蔵金属101の表面101aに注入する。Dの注入エネルギは、参照文献8によれば、少なくとも数keVであればよい。
金属中の荷電粒子の運動は伝導電子と相互作用してエネルギを失うので、数keV以上で注入されたDがD−のあるTサイトに入ってD2を形成し、さらに上述したフェムトD2分子の伸縮振動を継続するには、対向電極102を負電位にすることで水素吸蔵金属101の表面101aの電子濃度を低下させることが必要である。
図22に例示するように、重水素イオンDのイオンビームではなくD2ガスを用いることもできる。D2ガスを表面101aに吹き付けることで同様に室温核融合を発生させることができる。この場合、吹き付けられたDは解離して金属表面101aに吸着し、Tサイトに導入される。表面101aのTサイトにDが存在しない状態でもDを導入できるので連続的に核融合を継続させることが可能となる。
2.2)D+イオン注入
図23に模式的に示すように、水素吸蔵金属101に対して対向電極102が負電位となる電圧を印加することで、水素吸蔵金属101の表面101aの電子濃度を低下させた状態で、DがあるTサイトにDを所定のエネルギで注入する。これにより、第1実施形態と同様のプロセスにより核融合が発生する。すなわち、上述したようにTサイト内でDとDとが共有結合的な状態(D2分子)になり、さらに金属格子から圧縮応力を受けて縮小し、フェムトD2分子となる。Tサイト内のフェムトD2分子は原子核d−d間が伸縮振動し、d−d間のDEO電子による核子間クーロン斥力の遮蔽効果により核子間が最接近して核融合が発生する。フェムトD2分子になった後はTサイト空間内での伸縮振動が核融合にとって重要であり、この点からDの注入時の運動エネルギは高い方が有利である。
また、すでに述べたように基板温度を高くすることをトリガとして核融合を発生させ継続させる加熱方式では水素が金属内から脱離するために定期的に水素供給をすることが必要であった。これに対して、本実施形態ではトリガを外部から注入されるDとすることで、金属発熱体表面のTサイトにはDが入ればよいので、D、Dを近接させる条件を探す必要がなく、核融合の制御がより簡易であり、また核融合が容易に継続できるという利点がある。
2.3)効果
本実施形態によれば、発熱体表面の電位を制御して自由電子の濃度を低下させることでクーロン引力遮蔽を低減でき、それによって注入されたDがTサイト内のDと結合しやすくなり、Tサイト内にD2ガスを効率的に封じ込めることができる。さらに、Dの注入速度を制御することでD2ガスの運動エネルギを高く設定することが容易となり、金属表面の自由電子の濃度が低いのでD2の振動運動を長期間継続させることができる。
このように発熱体あるいは水素吸蔵金属の表面電位を制御することで、表面の自由電子濃度を下げて注入DがTサイト内のDと結合しやすくなり、D2分子の振動を長期間継続させることができるために、常温核融合の発生確率を高めることができる。また、D2分子の振動エネルギが、注入されるDイオンの打ち込み速度により調整可能であるから、常温核融合の制御性を高めることができる。
3.実施例
上述した第1実施形態または第2実施形態による常温核融合装置のより具体的な実施例について図面を参照しながら詳述する。
3.1)第1実施例
金属表面のナノ構造としては、ドット寸法および間隔が数nm〜数100nmに制御されたナノドットアレイを使用することができる。たとえば特許第5652817号(ナノドット形成方法)や特許第5875066号(ナノドットアレイ板製造方法)によれば、大きさや密度を所望に制御可能なナノドットおよびナノドットアレイの製法が開示されている。以下、本発明の第1実施例として、ナノドットを発熱体として用いた常温核融合装置について説明する。
図24に例示するように、本発明の第1実施例による常温核融合装置200aは、発熱体として半球状(以下、ドーム状という。)のナノドーム201のアレイが支持基板202の表面上に形成された構成を有する。言うまでもなく図24では説明のためにナノドーム形状が拡大して記載されており、ナノオーダに制御された多数のナノドーム201が支持基板202の表面全体に形成されている。ナノドーム201は水素吸蔵金属からなり、たとえばパラジウム(Pd)である。支持基板202は、望ましくは水素拡散速度が遅く且つ熱伝導率の高い金属材料で構成され、たとえば鉄(Fe)を用いることができる。
また、支持基板202の表面から所定距離gを隔てた位置に表面電位制御用の対向電極102が設けられ、直流電源103がナノドームアレイが形成された支持基板202に対して対向電極102が負電位となる電圧を印加する。ナノドーム201は図示しない加熱手段(ヒータ105)によって所定温度まで加熱されてもよい。
各ナノドーム201がドーム状であることは次の利点を有する。ナノドーム201の表面では上側に金属原子がないためにTサイトにDが入っても応力緩和が可能である。このために格子の膨張による系のエネルギの増加が少なくなり、膨張幅が大きくなってTサイトにDが入りやすくなる。
より詳しくは、図25に模式的に示すように、ドーム状のナノドーム201は半球状であり、表面の曲率が正で大きい。このために、元のナノドーム201aからナノドーム201bへ格子が外側(バルクとは反対側)に膨張しても、元の単位格子当たりの体積210aはより大きい体積210bへと容易に大きくなることができ、その際に他格子から応力を受けにくい。すなわち、球体のような曲率が正で大きな外面では膨張が容易になる。このようにドーム状のナノドーム201ではTサイトに膨張する余地があり、Dの吸蔵に極めて適した形状である。
上述したドーム状のナノドーム201は、支持基板202上に水素吸蔵金属層を形成した後、等方性エッチングの条件を深さ方向で段階的に変化させエッチングの横方向の進行速度を深さ方向で変更することにより形成可能である。
本発明の第1実施例によれば、対向電極102に支持基板202に対して負電位を印加することで、上述したようにナノドーム201からなるナノ構造の電子濃度が大幅に低くなり、熱励起されたDがTサイト間の電位障壁をポッピングして隣接TサイトのDへ移動する。こうしてTサイトの縮小によりD2分子がフェムトD2分子に遷移し、振動運動が持続することにより常温核融合の発生確率が高くなる。
3.2)第2実施例
図26に例示するように、本発明の第2実施例による常温核融合装置200bは、上述した第1実施例と同様に、発熱体201のアレイ、支持基板202、表面電位制御用の対向電極102および直流電源103を有するが、さらにDのイオンを注入する加速手段(図示せず)が設けられている。Dのイオン注入以外は第1実例態と同様の構成および機能を有するので、詳細な説明は省略する。
本発明の第2実施例によれば、対向電極102に支持基板202に対して負電位を印加することで、上述したようにナノドーム201からなるナノ構造の電子濃度が大幅に低くなり、注入されたDがTサイト内のDと結合し、Tサイトの縮小によりD2分子がフェムトD2分子に遷移し、振動運動が持続することにより常温核融合の発生確率が高くなる。このように発熱体の表面電位を制御することで表面の自由電子濃度を下げて注入DがTサイト内のDと結合しやすくなり、さらに注入されるDイオンの打ち込み速度を調整することでTサイト内のD2分子の振動を長期間継続させることができ、常温核融合の発生確率を高めることができる。
3.3)第3実施例
上記第1実施例および第2実施例における金属表面のナノ構造は上記ドーム状に限定されるものではない。以下、本発明の第3実施例として、ナノコーンを発熱体として用いた常温核融合装置について説明する。なお、第3実施例は、上述した表面電位制御による第1実施例あるいはDイオン注入による第2実施例にも適用可能である。
図27に例示するように、本発明の第3実施例による常温核融合装置300は、発熱体としてナノコーン301のアレイが支持基板302の表面上に形成された構成を有する。ナノコーン301は先端が半球状の円錐形状を有し、たとえばパラジウム(Pd)等の水素吸蔵金属からなる。支持基板302は、望ましくは熱伝導率の高い金属材料で構成され、たとえば銅(Cu)を用いることができる。また、支持基板302の表面から所定距離gを隔てた位置に表面電位制御用の対向電極102が設けられ、直流電源103がナノコーン301のアレイに対して対向電極102が負電位となる電圧を印加する。さらに、Dのイオンビームを打ち込む加速手段(図示せず)が設けられている。なお、第1実施例のように加熱手段(図示せず)を設けてナノコーン301を所定温度まで加熱してもよい。
ナノコーン301は先端部が半球状であるから、上記第1実施例および第2実施例と同様にDの吸蔵に適している。さらに、ナノコーン301の半球状の先端部と円錐状の側面に電界がかかるために、電界の先端部への集中を避けることができ、ナノコーン301のアレイ全体に均一な電界かけることができる。これにより、さらに制御性の良い常温核融合を実現できる。
本発明の第3実施例によれば、対向電極102に支持基板202に対して負電位を印加することで、上述したようにナノコーン301からなるナノ構造の電子濃度が大幅に低くなり、熱励起あるいは注入されたDがTサイト内でDと結合し、Tサイトの縮小によりD2分子がフェムトD2分子に遷移し、振動運動が持続することにより常温核融合の発生確率が高くなる。
3.4)第4実施例
金属表面のナノ構造としてのナノコーン301には別のバリエーションも可能である。以下、本発明の第4実施例による発熱体に用いられるナノコーンとその製造方法について説明する。なお第4実施例は上述した第1〜第3実施例にも適用可能である。
図28に例示するように、本発明の第4実施例による常温核融合装置の発熱体は、上記第3実施例と同形状のナノコーン301から構成されるが、各ナノコーン301は金属層302に形成されたナノピラー302aの上に積層されている。このようなナノ構造は、たとえば東北大学プレスリリース(「3次元量子ドット構造の形成実現によるInGaAsナノ円盤構造を世界で初めて観察」令和元年9月2日発表)で使用されたバイオテンプレートと中性粒子ビームを用いた製造技術を応用して製造することができる。以下、製造方法の一例を示す。
図29(A)および(B)において、支持基板403上に金属層402を積層し、さらにその上に必要な膜厚dの水素吸蔵合金層401を積層する。積層方法はCVD等の成膜方法を利用できる。続いて、水素吸蔵合金層401上に、鉄コア501を内包したタンパク質502を配列する。
図30において、タンパク質502を除去することで、鉄コア501が一定間隔で水素吸蔵合金層401上に残る(工程A)。続いて、中性粒子ビームエッチングにより鉄コア501をマスクとして水素吸蔵合金層401と金属層402の一部を除去し、さらにエッチングにより円錐側面を有する金属層402および水素吸蔵合金層401を形成する(工程B)。最後に、鉄コア501を除去することで、所定間隔に配列されたナノコーン301を形成することができる(工程CおよびD)。なお、図30(C)は、図30(D)に示す平面図のA−A線断面図である。
このようなナノコーン構造体にすることで、バルクと表面積の比では圧倒的に表面積の割合が大きくなる。ナノコーン301は熱伝導率の高い金属層402上に形成されるので、熱交換効率が良く、発熱体であるナノコーン301から効率よくエネルギーを取り出すことができる。
図31に示すように、上述した第3実施例または第4実施例による常温核融合装置300は、支持基板403上に金属層402を介して形成された発熱体であるナノコーン301と、ナノコーン301が形成された金属層402の表面から所定距離gだけ離れた位置に設けらた対向電極102と、対向電極102に負電位を与える直流電源103と、を有する。さらに、Dのイオンビームを打ち込む加速手段(図示せず)が設けられている。なお、常温核融合装置300は第1実施例あるいは第2実施例による常温核融合装置200aあるいは200bであってもよい。
常温核融合装置300は反応炉601内に設置され、真空状態で重水素ガスを導入することで、発熱体であるナノコーン301の表面のTサイトに吸蔵される。続いて、対向電極102に支持基板403に対して所定の負電圧を印加する。これによりナノコーン301の表面から自由電子がバルク側へ移動して表面での電子濃度が低下し、注入されたDのTサイト内で伸縮振動が持続し、上述したメカニズムにより核融合の発生確率が高くなる。核融合により発生した熱は金属層402により外部に取り出される。
3.5)第5実施例
本発明の第5実施例によれば、水素吸蔵金属表面のTサイトにDが入っており、そのTサイトに外部からDをスキャンしつつ注入することで常温核融合をトリガする。
図32に例示するように、本発明の第5実施例による常温核融合装置700は、第2実施例と同様に、発熱体として半球状(以下、ドーム状という。)のナノドーム201のアレイが支持基板202の表面上に形成されている。各ナノドーム201は水素吸蔵金属からなり、たとえばパラジウム(Pd)である。支持基板202は、望ましくは水素拡散速度が遅く且つ熱伝導率の高い金属材料で構成され、たとえば鉄(Fe)を用いることができる。なお、第4実施例の発熱体は、第3および第4実施例におけるナノコーン301からなる発熱体であってもよい。
また、支持基板202の表面から所定距離gを隔てた位置に表面電位制御用の対向電極102が設けられ、直流電源103がナノドーム201のアレイに対して対向電極102が負電位となる電圧を印加する。これにより水素吸蔵金属のナノドーム201における電子の濃度を低下させる。この状態で対向電極102を通して重水素イオンDあるいはD2ガスをナノドーム201のアレイ全体に照射することで、すでに述べた核融合反応を生起させることができる。詳しくは、D/D2ガスを支持基板202に対して相対的にスキャンすることによりナノドーム201のアレイ全体にDを注入する。その際、支持基板202を固定してD/D2ガスを移動させてもよいし、D/D2ガスの照射位置を固定して、X−Yステージ上の基板202を移動させてもよい。なお、常温核融合装置700にDビームとD2ガスの2系統の導入部を設けてもよい。
本発明の第5実施例によれば、対向電極102に支持基板202に対して負電位を印加することでナノドーム201(あるいはナノコーン301)からなるナノ構造の電子濃度が大幅に低くなり、スキャン注入されたDがTサイト内でDと結合し、Tサイトの縮小によりD2分子がフェムトD2分子に遷移し、スキャン注入されたDの運動エネルギによりTサイト内での振動運動が持続することで常温核融合の発生確率が高くなる。
3.6)第6実施例
図33に例示するように、常温核融合システムは、前処理チャンバ910と、常温核融合装置920と、それらの間を接続する搬送部930とからなる。発熱体基板800は、前処理チャンバ910で前処理され、搬送部930を通して常温核融合装置920へ搬送される。常温核融合装置920で発熱体基板800にD/D2ガスが照射されることで、すでに述べたように核融合反応が発生する。
前処理チャンバ910内には、発熱体基板800を載置するステージ911とステージ911に対向してRF電極912とが設けられ、アルゴンガスあるいは原料ガスを導入しながら酸化膜の除去あるいは水素吸蔵金属の積層を行う。搬送部930は、前処理された発熱体基板800を真空中でベルト等の搬送手段により常温核融合装置920へ搬送する。常温核融合装置920は、発熱体基板800を載置するステージ921、発熱体基板800の表面電位を制御するための対向電極922、DビームあるいはD2ガスを発熱体表面に照射するための照射部923を有する。なお、対向電極922には直流電源103によりステージ921に対する負電圧が印加される。
図34に例示するように、本実施例における発熱体基板800は、金属基板801の表面にアレイ状のナノドーム802からなるナノ構造が形成され、その上に水素吸蔵金属803が積層された構成を有する。本実施例では水素吸蔵金属803としてチタンを用いる。チタンは自然酸化膜がかなり厚いために、実際に核融合を発生させる前に酸化膜の除去処理が必要である。なお、本実施形態における前処理チャンバ910において、チタンの酸化膜除去の処理あるいはチタンの積層処理を実行することができる。
図34に示すような金属基板801上に水素吸蔵金属803が形成されている場合には、その発熱体基板800をステージ911に載置し、アルゴンガス雰囲気中でRFパワーを対向電極912に印加してアルゴンプラズマを発生させ、水素吸蔵金属803の表面から自然酸化膜を除去する。
また、前処理チャンバ910内でナノ構造を有する金属基板801上に水素吸蔵金属803をプラズマCVD(化学気相堆積)法あるいは低圧CVD法により積層させてもよい。たとえば、原料ガスの雰囲気中でRFパワーを印加し、金属基板801上に水素吸蔵金属を積層させる。
図35に示すように、図34に示す発熱体基板800を搬送部930を通して常温核融合装置920へ搬送し、ステージ921上に載置する。以下、すでに述べたように、対向電極922にステージ921に対して負電位となる電圧を印加し、ナノ構造を有する水素吸蔵金属803の表面での電子濃度を低下させる。この状態で対向電極922を通して重水素イオンDあるいはD2ガスを水素吸蔵金属803に照射することで核融合反応を生起させる。
図33に示すような前処理チャンバ910と常温核融合装置920との分離は、特にチタンのように酸化膜が形成されやすい金属を水素吸蔵金属として用いる場合に適している。
100、200、300、700、920 常温核融合装置
101、803 水素吸蔵金属
101a 金属表面
102、922 対向電極
103 直流電源
104 支持基板
105 ヒータ
201 ナノドーム
202 支持基板
301 ナノコーン
302 支持基板(金属層)
912 RF電極

Claims (10)

  1. 反応炉内に、水素吸蔵金属からなる発熱体と、前記発熱体に対向して設けられ前記発熱体の表面電位を制御するための対向電極と、を有し、
    重水素ガスを吸蔵した水素吸蔵金属の表面電位を前記対向電極により制御し、前記発熱体の表面に重水素イオンDあるいは重水素ガスを供給することで常温核融合を発生させ、前記発熱体を発熱させることを特徴とする常温核融合装置。
  2. 前記対向電極に、前記水素吸蔵金属の表面で自由電子の濃度が低下する方向に低下させる電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の常温核融合装置。
  3. 前記重水素イオンDあるいは重水素ガスを前記発熱体の表面に対して注入することを特徴とする請求項1または2に記載の常温核融合装置。
  4. 重水素ガスを吸蔵した水素吸蔵金属の表面電位を制御し、
    前記水素吸蔵金属の表面に重水素イオンDあるいは重水素ガスを供給することで常温核融合を発生させる発熱方法。
  5. 前記水素吸蔵金属の表面で自由電子の濃度が低下する方向に低下させる請求項4に記載の発熱方法。
  6. 前記重水素イオンDあるいは重水素ガスを前記発熱体の表面に対して注入することを特徴とする請求項4または5に記載の発熱方法。
  7. 金属層上に形成され、当該金属層と電気的に接続された複数のナノ構造体からなり、前記ナノ構造体が水素吸蔵金属からなり、重水素ガスを吸蔵した前記ナノ構造体の表面電位を制御し、重水素イオンDあるいは重水素ガスが供給されることで常温核融合を発生させる発熱体。
  8. 前記複数のナノ構造体の各々が半球状のナノドームからなる請求項7に記載の発熱体。
  9. 前記複数のナノ構造体の各々が円錐形状のナノコーンからなり、前記ナノコーンの先端部が半球状である請求項7に記載の発熱体。
  10. 前記発熱体の表面に前記重水素イオンDあるいは重水素ガスが注入されることを特徴とする請求項7−9のいずれか1項に記載の発熱体。
JP2020123285A 2020-04-07 2020-07-17 常温核融合装置、常温核融合による発熱方法および発熱体 Pending JP2020170020A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021009701A JP2022007951A (ja) 2020-04-07 2021-01-25 常温核融合装置、常温核融合による発熱方法および発熱装置
PCT/JP2021/014437 WO2021206036A1 (ja) 2020-04-07 2021-04-05 常温核融合装置、常温核融合による発熱方法および発熱装置

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020069438 2020-04-07
JP2020069438 2020-04-07

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2020170020A true JP2020170020A (ja) 2020-10-15

Family

ID=72745373

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020123285A Pending JP2020170020A (ja) 2020-04-07 2020-07-17 常温核融合装置、常温核融合による発熱方法および発熱体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2020170020A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20090230318A1 (en) Target design for high-power laser accelerated ions
EA006325B1 (ru) Способ и устройство магнитного и электростатического удержания плазмы в конфигурации с обращенным полем
KR102513127B1 (ko) 핵융합 반응을 위한 방법, 장치 및 시스템
JP2007500349A (ja) 光子バンドギャップトラップを使用する励起ポジトロニウムの高密度蓄積
Kodama Novel Cold Fusion reactor with deuterium supply from backside and metal surface potential control
US20150294743A1 (en) Fusion power based on a symmetrical plasma beam configuration
JP2020170020A (ja) 常温核融合装置、常温核融合による発熱方法および発熱体
Jiang et al. Simulations of the effects of pre-seeded magnetic islands on the generation of runaway current during disruption on J-TEXT
JP2022007951A (ja) 常温核融合装置、常温核融合による発熱方法および発熱装置
CA2763696A1 (en) Interactions of charged particles on surfaces for fusion and other applications
WO2021206036A1 (ja) 常温核融合装置、常温核融合による発熱方法および発熱装置
Jiang et al. An AIMD+ U simulation of low-energy displacement events in UO2
Kodama Cold Fusion mechanism of bond compression
Gruenwald Proposal for a novel type of small scale aneutronic fusion reactor
Oku Possible applications of nanomaterials for nuclear fusion devices
Lou et al. Vibrational properties of hydrogen chemisorbed on W (001) and Mo (001)
CA2887762C (en) Fusion power based on a symmetrical plasma beam configuration
RU2540853C2 (ru) Способ осуществления столкновительных ядерных реакций на основе эффекта каналирования ядерных частиц и излучений в фазах внедрения и эндоэральных структурах
EP3893250A1 (en) Method and apparatus for energy conversion
Arellano Adsorption of molecular hydrogen in a graphene-carbon nanotube system
BR102020007026A2 (pt) Dispositivo de fusão nuclear por confinamento eletrostático inercial assistido por campo magnético
Kishimoto et al. High energy density plasma produced by the interaction between high intensity laser and structured medium െ A new platform studying MCF plasmas using laser െ
Allain et al. Multi-scale hierarchical high-temperature tungsten-low Z nanocomposites as adaptive fusion plasma-facing components
Matsukawa Generation of high brightness ion beam from insulated anode PED
Bychenkov Spectral–Dynamic Model of the Hot Plasma Layer Expansion